2015年12月10日木曜日

群PSL(2,7)についてIII

前回(群PSL(2,7)についてII)の続きです.
分からない人(かつ読みたい人)はそちらはまず見てください.

位数が7の元

位数が7の元は、次の48個です.
$[2],[5]$
$[0,1],[0,2],[0,3],[0,4],[0,5],[0,6],[1,0],[1,4],[2,0],[2,2],[3,0],[3,6],[4,0],[4,1],[5,0],[5,5],[6,0],[6,3]$
$[0,2,0],[0,2,3],[1,2,1],[1,2,5],[2,2,2],[2,2,3],[3,2,0],[3,2,2],[5,2,1],[5,2,6],[6,2,5],[6,2,6],[0,3,2],[0,3,6],[1,3,1],[1,3,3],[2,3,0],[2,3,2],[3,3,1],[3,3,4],[4,3,3],[4,3,4],[6,3,0],[6,3,6]$
$[0,4,2,3],[0,4,2,5],[0,5,3,1],[0,5,3,2]$

これらの元の共役類を考えます.

長さが4のもの
$[0,4,2,3]\sim[3,0,4,2]=[7,2]\sim[0,2]$
$[0,4,2,5]\sim[5,0,4,2]=[2,2]\sim[1,-1,1]\sim[1,-2,-1,0]\sim[-2,-1,0,1]\sim[-2,0]$
$[0,5,3,1]\sim[1,0,5,3]\sim[6,3]\sim[-1,3]$
$[0,5,3,2]\sim[2,0,5,3]=[7,3]=[0,3]$

すべて長さ2の元と共役です.

長さが3のもの
$[0,2,0]\sim[0,0,2]=[2]$
$[0,2,3]\sim [2,3,0]\sim[3,0,2]=[5]$
$[1,2,1]\sim[1,1,2]=[0,1]$
$[1,2,5]\sim[5,1,2]=[4,1]$
$[2,2,2]=[1,-1,1,2]=[1,-2,1]\sim[1,1,-2]\sim[0,-3]=[0,4]$
$[2,2,3]\sim[3,2,2]\sim[2,3,2]=[1,-1,2,2]\sim[2,1,-1,2]=[1,-2,2]\sim[2,1,-2]=[1,-3]=[1,4]$
$[3,2,0]\sim[0,3,2]\sim[2,0,3]=[5]$
$[5,2,1]\sim[2,1,5]=[1,4]$
$[5,2,6]=[2,-1,5]=[3,6]$
$[6,2,5]=[5,-1,2]=[6,3]$
$[6,2,6]\sim[2,-1,-1]=[3,0]$
$[0,3,6]\sim[6,0,3]=[2]$
$[1,3,1]\sim[1,1,3]=[0,2]$
$[1,3,3]\sim[3,3,1]\sim[3,1,3]=[2,2]$
$[3,3,4]\sim[4,3,3]=[4,0,-3,-3,0]=[1,-3,0]\sim[-3,0,1]=[-2]$
$[4,3,4]\sim[3,4,4]=[3,0,3,3,0]=[-1,3,0]\sim[3,0,-1]=[2]$
$[6,3,0]\sim[3,0,6]=[2]$
$[6,3,6]=[-1,-1,3]=[0,4]$

全て長さ2もしくは1の元に共役です.

長さが2のもの
$[0,1]\sim[1,0]\sim[0,-1,-1,0,0]=[0,-1,-1]\sim[-1,0,-1]=[-2]$
$[0,2]\sim[2,0]\sim[1,-1,-1]\sim[-1,1,-1]=[-2,-2]$
$[0,3]\sim[3,0]\sim[0,-3,-3,-3,0,0]=[0,-3,-3,-3]=[-3,0,-3,-3]=[-6,-3]=[1,4]$
$[0,4]\sim[4,0]=[0,3,3,3,0,0]=[0,3,3,3]=[3,0,3,3]=[6,3]$
$[0,5]\sim[5,0]=[-2,0]=[-1,1,1]=[1,-1,1]=[2,2]$
$[0,6]\sim[6,0]=[-1,0]=[0,1,1,0,0]=[0,1,1]=[1,0,1]=[2]$
$[1,4]\sim[4,1]=[3,-1,0]\sim[-1,0,3]=[2]$
$[2,2]\sim[0,-4,1,0][2,2][-1,4]=[0,-4,1,0,2,2,-1,4]=[0,-4,3,2,-1,4]=[0,3,3,2,-1,4]=[-3,-3,0,2,-1,4]=[-3,-1,-1,4]=[-2,0,4]=[2]$
$[3,6]\sim[6,3]=[-1,3]=[0,1,4]=[4,0,1]=[5]$
$[5,5]\sim[0,-3,-1,0][5,5][1,3]=[0,-3,4,5,1,3]=[0,-3,4,4,2]=[0,-3,0,3,3,0,2]=[0,0,3,0,2]=[5]$

よって、全て長さ1の元と共役になります.

長さ1の元は $[2],[5]$ の2つあり、実はそれら2つは、共役ではありません.
なぜなら、
もし、$TS^2\sim TS^5$ であるとするなら、ある行列 $X\in PSL(2,7)$ が存在して、
$TS^2X=XTS^5$ となるはずです.
$X=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ とすると、
$\begin{pmatrix}0&1\\-1&-2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&1\\-1&-5\end{pmatrix}$
となり、両辺を計算すると、
$\begin{pmatrix}c&d\\-a-2c&-b-2d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-b&a-5b\\-d&c-5d\end{pmatrix}$

ここで、この式が等しくなるはずですが、

$c=-b, d=a-5b, -a-2c=-d, -b-2d=c-5d$
もしくは、
$c=b, d=-a+5b, -a-2c=d, -b-2d=-c+5d$
という連立一次方程式が成り立ちます.
もちろんこの等式は${\mathbb F}_7$ の元としてです.
前半が成り立つとすると、
$$\begin{pmatrix}0&1&1&0\\1&-5&0&-1\\-1&0&-2&1\\0&-1&-1&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\\d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\\0\end{pmatrix}$$
後半が成り立つとすると、
$$\begin{pmatrix}0&1&-1&0\\1&-5&0&1\\-1&0&-2&-1\\0&-1&1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\\d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\\0\end{pmatrix}$$
が成り立ちます.
ここで、最初の $4\times 4$ 行列の行列式を計算すると、$-9=5$ なので、解は $(a,b,c,d)=(0,0,0,0)$ しか存在しません.
これは、$PSL(2,7)$ の元を定めないので、後半を方程式を調べます.

この解空間は、$(a,b,c,d)=C_1(-2,1,1,0)+C_2(-1,0,0,1)$ という2つのパラメータを 
使って表せます.ただし、$C_1,C_2\in{\mathbb F}_7$ です.
つまり、
$$X=\begin{pmatrix}-2C_1-C_2&C_1\\C_1&C_2\end{pmatrix}$$
となります.$\det(X)=1$ なので、計算をしてみると、$(-2C_1-C_2)C_2-C_1^2=-C_1^2-2C_1C_2-C_2^2=1$
よって、$(C_1+C_2)^2=-1$ となります.
平方剰余の相互法則を用いて、ルジャンドルシンボル $(\frac{-1}{7})$ を計算すると、
$(\frac{-1}{7})=(-1)^{\frac{7-1}{2}}=-1$ となり、
${\mathbb F}_7$ の中では、$(C_1+C_2)^2=-1$ の解が存在しないことになります.

よって、この場合も、やはり、解けないことになります.
つまり、そのような行列 $X$ は $PSL(2,7)$ には存在しません.

よって、$TS^2=[2]$ と $TS^5=[5]$ は $PSL(2,7)$ において共役ではないことになります.

位数7の元はこのどちらかに共役でしたから、位数7 の元の共役類は2つあって

上の同値関係を辿ると、

$[2]$ と同じ同値類に属するもの
$[0,3],[3,0],[0,5],[5,0],[0,6],[6,0],[1,4],[4,1],[2,2]$
$[0,2,0],[2,2,3],[3,2,2],[2,3,2],[1,2,5],[5,2,1],[6,2,6],[0,3,6],[1,3,3],[3,3,1],[4,3,4],[6,3,0]$
$[0,5,3,1],[0,5,3,2]$

$[5]$ と同じ同値類に属するもの
$[0,1],[0,2],[2,0],[1,0],[0,4],[4,0],[3,6],[6,3],[5,5]$
$[0,2,3],[2,3,0],[1,2,1],[2,2,2],[3,2,0],[0,3,2],[1,3,1],[5,2,6],[6,2,5],[3,3,4],[4,3,3],[6,3,6]$
$[0,4,2,3],[0,5,3,1]$

となり、2つの共役類が全て分類されました.
それぞれ、共役類の個数は、24と24です.
位数が同じでも同じ共役類に属すとはかぎらないという前回のブログ
言及した反例がこの例ということになります.

まとめると、
位数が1の元は
1個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は1
位数が2の元は
21個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は21
位数が3の元は
56個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は56
位数が4の元は
42個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は42
位数が7の元は
48個で、2つの共役類をもち、共役類に属する元の個数はそれぞれ24個ずつ.
となりました.

つまり、PSL(2,7) の全ての元の個数 168 はこの分類により、
$$168=1+21+56+42+24+24$$
となるわけです.このような式を類等式といいます.

PSL(2,7) が単純群であること

PSL(2,7)は単純群です.
単純群とは、PSL(2,7) の内部に、非自明な正規部分群を含まないものです.
$H$ が群 $G$ の正規部分群というのは、$G$ の部分集合で、 積により閉じており、
全ての$g\in G$ に対して、
$gHg^{-1}=H$ が成り立つことです.

$PSL(2,7)$ が正規部分群 $H$ を持てば、$H$ はいくつかの共役類の和集合となります.
$H$ に属するある元 $x$ と同値な共役類の任意の元 $gxg^{-1}$ は正規部分群の
定義により再び、$H$ に入っていないといけないからです.

また、一方、$H$ が PSL(2,7) の部分群であるということは、$H$ に属する元の数は、168を割らなければなりません.
非自明ということは、単位元と PSL(2,7) 自身は除きます.

$1, 21, 56, 42, 24, 24$
の中からいくつかとって 168を割るように
する必要があります.ただし、どんな部分群にも単位元は存在するので、1は必ず必要です.
1と168以外の約数を列挙すると、
2, 3, 4, 6, 7, 8, 12, 14, 21, 24, 28, 42, 56, 84
となります.少なくとも22以上なので、24, 28, 42, 56, 84 のみ.
また、偶数なので、21は必要.22をひくと、残りは、2,6,20,34,62
この数を 56,42.24,24 の和を使って作るのは無理です.
これは、PSL(2,7) には非自明な正規部分はないということを意味し、
PSL(2,7) は確かに単純群であるということになります.

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