2018年7月23日月曜日

外書輪講I(第13回)

[場所1E503(月曜日5限)]


現在外書輪講では、Matousekの33-Miniaturesをみんなで読んでいます。
今回は、Miniature 14, 15をやりました。

Miniature 14

内周が $g$ で、最小次数が $r$ となるグラフの中で最小頂点数を
もつグラフの頂点数を $n(r,g)$ とします。

内周が $g=2k+1$ のとき、
$$1+r+r(r-1)+r(r-1)^2+\cdots +r(r-1)^{k-1}\le n(r,g)$$
となります。このイコールが成り立つグラフのことを
Mooreグラフ(ムーアグラフ)といいます。

例えば、内周が5 の場合、ムーアグラフの頂点数は、
$1+r+r(r-1)=r^2+1$ となります。

内周が偶数 $g=2k$ の場合もありますが、そのときは、
$$1+r+r(r-1)+r(r-1)^2+\cdots+r(r-1)^{k-2}+(r-1)^{k-1}\le n(r,g)$$
が成り立ちます。このイコールが成り立つグラフのことを generalized polygon
といいます。

このminiatureでは、内周が5となるムーアグアフの
最小次数 $r$ がスペクトラルグラフ理論により高々3種類に絞られる
という定理について紹介されています。


定理
$G$ が内周が5のムーアグラフであるなら、$G$ の最小次数 $r$ が
$r\ge 3$ であるならば $r\in \{3,5,57\}$ である。


$r=3$ の場合は、前回も登場したペテルセングラフであり、$r=5$ の場合は、
ホフマン-シングルトングラフといいます。

$r=57$ の場合だけ、その存在が未だ保証さていません。
もし存在すれば、頂点数 $3250$ で、最小次数が $57$ で、内周が $5$ の
グラフになります。
もし発見できれば、発見者の名前が付けられて 誰々のグラフということに
なるのではないでしょうか?

ムーアグラフは、正則グラフになることを注意しておきます。
つまり、最小次数とはいえ、すべての頂点で同じ次数を持ちます。


上の定理を証明するには、以下の補題を証明する必要があります。

補題
内周が $5$ で、最小次数 $r$ が $3$ 以上のムーアグラフの頂点 $u,v$
が辺で結ばれていないとき、$u,v$ の共通の近傍はちょうど1点である。

この補題はよく考えればわかりますから、省略します。


しかし、この性質が今後定理を証明するのに生きてきます。
また、$u,v$ が隣接しているとき、$u,v$ の共通の近傍は存在しませんので、
ムーアグラフの隣接行列 $A$ の2乗 $B$ を $B=(b_{ij})$ とするとき
$$b_{ij}=\begin{cases}r&i=j\\1&\{i,j\}\not\in E(G)\\0&\{i,j\}\in E(G)\end{cases}$$
が成り立ちます。ここで、$E(G)$ はグラフの辺の集合です。
ここで上の補題を使いました。

よって、
$$B=A^2=rI_n+J_n-I_n-A$$
が成り立ちます。
この関係式から、$r$ 以外の固有値 $\lambda$ は、$\lambda^2+\lambda-(r-1)=0$
を満たします。

つまり、固有値 $r$ の固有空間の次元は、1であり、
この2つの解とトレースゼロ条件とランクの式から、
$m_1\rho_1+m_2\rho_2+r=0$ かつ
$m_1+m_2+1=n=r^2+1$
となります。

これらの式から、$r=3,5,57$ しかないことがわかります。

$r=57$ の場合のデータをもう一度書いておくと、
頂点数 3250
最小次数 57
隣接行列の固有値は、$57$, $7$, $-8$
その重複度は $1$, $1729$, $1520$
となります。

Miniature 15
${\mathbb R}^d$ の中へのいくつかの点の埋め込みで、点同士の距離が
2種類のものを求めるとき、その頂点の最大値 $n(d)$ が $d$ によって
上から

$$n(d)\le \frac{1}{2}(d^2+5d+4)$$
による不等式が成り立つという内容です。

2018年7月21日土曜日

外書輪講I(第12回)

[場所1E503(月曜日5限)]

HPに行く

現在外書輪講では、Matousekの33-Miniaturesをみんなで読んでいます。
今回は、Miniature 13, 14をやりました。

その前に、12で出されている下の主張を詳しく証明してもらいました。

Miniature 12

$R$ を平面上の長方形とする。
その互いに垂直な2辺の長さを $a,b$ とする。
${\mathbb R}$ を ${\mathbb Q}$ 上のベクトル空間とする。
このとき、 $f$ を線形写像 ${\mathbb R}\to {\mathbb R}$ とする。
平面上の長方形から ${\mathbb R}$ への写像 $v$ を、
$v(R)=f(a)f(b)$ として定義する。

$R$ の1辺に平行な直線で $R$ を二分したとき、できる長方形を $R_1, R_2$ とする。
このとき、$f$ の線型性により、$v(R)=v(R_1)+v(R_2)$ が成り立ちます。

一般に、$R$ がいくつかの長方形 $R_1,R_2,\cdots, R_n$ によって
タイリングされているとします。
タイリングとは、$R_i$ と $R_j$ に対して、$i\neq j$ となるなら、
$R_i\cap R_j$ は、$R_i,R_j$ の境界のある線分に含まれることをいいます。

主張
このとき、$v(R)=\sum_{i=1}^nv(R_i)$ となります。

これは、$v(R)=v(R_1)+v(R_2)$ の性質だけを使って
証明をすることができます。
証明は授業中にした通りですので、ここでは省略します。
ヒントは、長方形の各辺と平行な直線を使って区切られた長方形の
網目 $R=R_{11}\cup\cdots \cup R_{1n}\cup R_{21}\cup\cdots R_{m1}\cup\cdots \cup R_{mn}$
によって $R$ がタイリングされている場合について証明することです。

Miniature 13
をやりました。これはスペクトラルグラフ理論の話です。
グラフの隣接行列を使って、グラフの性質を引き出します。
グラフ $G$ に対してその頂点を $v_1,v_2,\cdots,v_n$ とするとき、
隣接行列 $A=(a_{ij})$ とは、

$v_i,v_j$ が辺で結ばれているとき、$a_{ij}=1$
となり、そうでなければ、$a_{ij}=0$ である

として定義される行列です。

また、隣接行列は、自然に実対称行列であって、その主要な性質は、
以下となります。

  • 固有値は全て実数
  • 対角化可能
  • 相異なる固有空間は互いに直交
  • トレース(対角成分の和)はゼロ

ここでの話は、頂点数が 10 のグラフの話です。
前回(リンク) に基礎的な用語については書きました。
$K_{10}$ は、頂点数が $10$ の完全グラフです。
ペテルセングラフというのは、頂点数が10で、各辺からは、
3つの辺が存在する(次数が3という)正則グラフです。
また、内周は5です。証明してもらったのは、以下の定理です。


定理
$K_{10}$ を頂点数 10 の完全グラフとします。
ペテルセングラフと同型な3つ部分グラフによって $K_{10}$
を覆うことができない。

覆うの意味については、前回の外書輪講のページを見てください。

このペテルセングラフの隣接行列は、$A^2+A=J_{10}+2I_{10}$
を満たすことがわかるのですが、その理由は次のMiniature 14を読むとわかります。
$J_{10}$ はすべての成分が 1 のサイズが 10 の正方行列です。

注意したいのは、この関係式から、$A$ の固有値がわかるということです。
$\lambda$ を $A$ の固有値とし、その固有ベクトルを ${\bf v}$ とすると、
$A$ が次数が3の正則グラフであることから、直ちに、$\lambda=3$ となることが
できて、その固有ベクトルは、${\bf 1}=(1,1,\cdots,1)^T$ となります。
また、この固有ベクトルと独立な固有ベクトルは、${\bf 1}$ に直交し、
${\bf 1}\cdot {\bf v}=0$ となります。
とくに、$J_{10}{\bf v}={\bf 0}$ となります。
そのような固有値は、$(\lambda^2+\lambda ){\bf v}=2{\bf v}$ であり、${\bf v}\neq {\bf 0}$ であるので、$\lambda^2+\lambda-2=0$ が成り立ちます。
よって、固有値3の固有空間は1次元で、${\bf 1}$ がその基底となります。
それ以外の固有値は $1$ か $-2$ となります。

固有値の重複度込みの和は、隣接行列のトレースと言われ、隣接行列の場合
いつもゼロです。
$m_1,m_{-2}$ を 固有値 $1,-2$ のそれぞれの重複度とすると、
3 の重複度は $1$ であるから、$m_1-2m_{-2}+3=0$ であり、
$m_1+m_{-2}=9$ がなりたち、この方程式から、$m_1=5$ と $m_{-2}=4$ がわかります。

というわけで、次の補題が証明されます。

補題
ペテルセングラフの隣接行列 $A$ は、$1$ を固有値にもち、
その固有空間の次元は $5$ であり、$-3$ を固有値にもたない。



また、完全グラフが3つの部分グラフで覆われる時、
$J_{10}-I_{10}=A_P+A_Q+Q_R$ となるペテルセングラフと同型なグラフの隣接行列$A_P,A_Q,A_R$ がでます。
ここで、$J_{10}-I_{10}$ が $K_{10}$ の隣接行列です。

$A_P,A_Q,A_R$ の固有値 3 の固有空間は、 ${\bf 1}$ から生成され、
そのほかの固有空間は、${\bf 1}$と直交する9次元部分空間です。
$A_P$ と$A_Q$ の固有値 1 の固有空間は、5次元ずつあるので、
9次元の中で、それぞれの固有値1 の固有空間になっている
ゼロでないベクトル ${\bf w}$ が存在することになります。
$A_P{\bf w}={\bf w}$ かつ、$A_Q{\bf w}={\bf w}$
です。このベクトルを使って、
$A_R{\bf w}=(J_{10}-I_{10}-A_P-A_Q){\bf w}=-{\bf w}-{\bf w}-{\bf w}=-3{\bf w}$
となります。よって上に書いたことから矛盾となります。

Miniature 14
は、Miniature 13 からのつづきのグラフの話です。

内周が $g=2k+1$ 最小次数(頂点に関して最小の次数)が $r$ のグラフで、
頂点数が $1+r+r(r-1)+\cdots+r(r-1)^{k-1}=\frac{r(r-1)^k-2}{r-2}$ となるグラフを
Moore グラフといいます。
内周 $2k+1$ で、最小次数が $r$ のグラフの頂点数は、$\frac{r(r-1)^k-2}{r-2}$
を下回ることはありません。
つまり、そのようなグラフの頂点はこの値以上となるのです。
それについては、マトウセク

また、この数がちょうど頂点数となるグラフが存在するかどうかは
難しい問題となります。
また、上からのboundを求めることもグラフ理論での興味深い問題の1つですが、
その決定も難しいです。

Miniature 13で出てくるペテルセングラフは、内周が $5$ で、最小次数が3の
Mooreグラフとなります。これは、各次数が全て3となる正則グラフにもなっています。

2018年7月17日火曜日

数学類特別セミナーI(第1回)

[場所1E203(金曜日6限)]

HPに行く
スライド

フレッシュマンセミナーの続きの内容についてやりました。
前回は、いくつかの多項式関数の連続性について示しました。
今回は、指数関数の連続性についてやりました。
まずは、下の問題を見ておきましょう。


(例題)
$y=e^x$ が $x=a$ で連続であることを示せ。



まず、$x=a$ で関数 $f(x)$ が連続であるとは、
関数 $f(x)$ が下の定義を満たすことをいいます。

(連続関数の定義)
任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$|x-a|<\delta$ が成り立つ任意の $x$ に対して、
$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ を満たす。



つまり、値域の点 $f(a)$ のどんなに近く $|f(a)-y|<\epsilon$ にしても、その
その中に、$a$ のある近くの全ての点 $|x-a|<\delta$ が像として入れることができる
ということです。


$y=e^x$ が $x=a$ において、連続であることを証明しましょう。

その前に、$ |e^x-1|\le e^{|x|}-1$ を満たすことを示しましょう。

$x\ge 0$ とすると、$e^{|x|}-1=e^x-1=|e^x-1|$ となる。
また、$x<0$ とすると、$e^{|x|}-1=e^{-x}-1=-1+\frac{1}{e^x}=e^{-x}(1-e^{x})=e^{-x}|e^{x}-1|\ge |e^x-1|$
となる。

(例題の証明)
$\forall \epsilon>0$ をとります。
今、$\delta=\log(1+\epsilon e^{-a})$ としましょう。
このとき、$|x-a|<\delta$ となる任意の $x$ に対して
$|f(x)-f(a)|=e^a|e^{x-a}-1|\le e^a(e^{|x-a|}-1)<e^a(e^\delta-1)=\epsilon$

となるので、$x=a$ において、$y=e^x$ が連続であることがわかる。


授業中では、以下の問題を解いてもらいました。

(問題)
$y=e^{x^2}$ が $x=a$ で連続であることを示せ。

以下のように、同じように解くことができます。

(問題の証明)
$\forall \epsilon>0$ に対して、
$\delta=\min\left\{1,\frac{\log(1+e^{-a^2}\epsilon)}{1+2|a|}\right\}$ とします。
このとき、$|x-a|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$|x+a|\le |x-a|+2|a|\le 1+2|a|$ を満たします。
よって
$$|e^{x^2}-e^{a^2}|=e^{a^2}|e^{x^2-a^2}-1|=e^{a^2}|e^{x^2-a^2}-1|\le  e^{a^2}(e^{|x-a||x+a|}-1)$$
$$<e^{a^2}(e^{\delta(1+2|a|)}-1)\le \epsilon$$
となりますので、$y=e^{x^2}$ は $x=a$ で連続となります。(証終)

2018年7月9日月曜日

外書輪講I(第11回)

[場所1E503(月曜日5限)]


現在外書輪講では、Matousekの33-Miniaturesをみんなで読んでいます。
今回は、Miniature -11, 12, 13をやりました。

Miniature-11
は行列の検算ついての話でした。

2つの $n\times n$ 行列を掛けるには、通常では $O(n^3)$ の手間がかかります。
その計算の確かめる確率的な方法があります。
この方法だと、$O(n^2)$ のオーダーくらいの手間です。

たとえば、${\bf x}\in \{0,1\}^n$ を適当に(確率$ 1/2^n$ )持ってくるとき、
$AB$ とその計算結果を $C$ としたとき、$AB{\bf x}$ と $C{\bf x}$ を
計算して、値が違えば、間違えているということがわかります。

この方法だと、ベクトルに行列を掛け算して得られる手間だけ、つまり
$O(n^2)$ の手間で検算ができることになります。

このMiniature の中に次の主張が含まれています。


$AB\neq C$ であるとき、この手法を使えば、少なくとも確率1/2で $AB\neq C$
を見出せる。


 $D=C-AB$ として、$D$ がゼロ行列でないとします。
このとき、${\bf x}\in \{0,1\}^n$ を同確率で選ぶ時、
$D{\bf x}\neq 0$ となる確率は、少なくとも 1/2 であることを示せばよいです。

今、$D=(d_{kl})$ とし、${\bf y}=D{\bf x}$ とし
${\bf y}=(y_1,\cdots, y_n)^T$ とします。

$d_{kl}\neq 0$ とします。
このとき、$D{\bf x}=d_{k1}x_1+\cdots+d_{kn}$ とします。
今、$l=n$ としてもかまいません。
$y_n=d_{k1}x_1+\cdots+d_{kn}x_n=S+d_{kn}x_n$ とします。
$x_1,\cdots, x_{n-1}$ を固定して、$x_n$ を確率1/2で0か1を出すとします。

よって、$S$ は固定されており、$S$ か $S+d_{kn}$ のどちらかは $0$ ではないので、
そのどちらかで $y_n\neq 0$ が検出できます。
つまり、$D\neq 0$ が検出できます。
$x_1,\cdots, x_{n-1}$ が動いても同じ状況なので、
確率は少なくとも1/2で$y_n\neq 0$ かつ、${\bf y}\neq 0$ つまり、$D\neq O$ が検出できます。

Miniature 12
この話は、${\mathbb Q}$ 上のベクトル空間 ${\mathbb R}$ を用いることで、
次の幾何学的な定理を示します。

定理
$x$ を無理数とします。$1,x$ を辺に持つ長方形 $R$ に対して、この長方形を
任意の有限個の正方形によって埋め尽くすことができない。


という内容です。ここで、有限個の正方形 $Q_1,Q_2,\cdots, Q_n$
によって埋め尽くすとは、
$R=Q_1,Q_2,\cdots, Q_n$ かつ、$i\neq j$ に対して、$Q_i\cap Q_j$ が、
$Q_i$, $Q_j$ の境界に含まれる。
ということを指します。

(証明)
有限個の正方形 $Q_1,Q_2,\cdots, Q_n$ によって $R$ を埋め尽くすとします。
$Q_i$ の辺の長さを $s_1,s_2,\cdots, s_n$ とします。

このとき、$V$ を $1,x,s_1.\cdots, s_n$ によって生成されれているベクトル空間
とします。

$x$ が無理数なので、$1,x$ は一次独立であり、
線形写像 $f:V\to {\mathbb R}$ で$f(1)=1$, $f(x)=-1$
を満たすものが存在します。

例えば、$b_1,b_2,\cdots, b_k$ を$V$ の基底とし、$b_1=1, b_2=x$ とすることができます。
$f(b_i)=0$, $i\ge 3$ とすればよいのです。
$s_1,s_2,\cdots, s_n$ は $1,x$ の ${\mathbb Q}$ 上の1次結合となる可能性は
あるので、改めて、$f(s_1)$ の行き先を自由に決めることはできるかどうかわかりません。
$s_1$ が有理数なら、$f(s_1)=s_1$ となります。

この写像を用いて、上の定理を示します。
$R$ を辺の長さが $a,b$ の長方形とします。
このとき、$v:\{\text{長方形}\}\to {\mathbb R}$ を
$v(R)\to f(a)f(b)$ と定義します。

このとき、
$v(R)=f(1)f(x)=-1=\sum_{i=1}^n(Q_i)=\sum_{i=1}^nf(s_i)^2\ge 0$
となり矛盾します。

ここで、示さなければならないのは、$Q_1,\cdots, Q_n$
が $R$ を埋め尽くしているとすると、$v(R)=\sum_{i=1}^n(Q_i)$ となることです。

Miniature 13
は、グラフ理論の話ですが、途中まででした。

内容は、以下となります。

定理
$K_{10}$ を頂点数 10 の完全グラフとします。
ペテルセングラフを $P$ とすると、$K_{10}$
を $P$ と同型な 3個の部分グラフによって覆うことができない。

ここで、グラフ $G$ がその部分グラフ $G_1,\cdots ,G_n$ で覆うとは、
$G_1,\cdots ,G_n$ が $G$ の部分グラフで、$G_1,\cdots,G_n$
の辺集合の和集合は、ちょうど $G$ の辺集合と一致します。
つまり、それらは、お互いに重複はありません。

ペテルセングラフについては、ここにリンクを貼っておきます。
リンクではピーターセンとなっていますが、どっちの発音が正しいのかは
知りません。

完全グラフ $K_n$ とは、どの2つの頂点も辺で結ばれるものをいいます。
頂点 $v$ に対して、$v$ に1つの辺でつながる頂点全体の集合を $v$ の
近傍といい、その個数を次数といいます。
$G$ が正則グラフとは、$G$ の各頂点の次数が一定のグラフのことをいいます。

また、$G$ の内周とは、$G$ に含まれる最小のサイクル(閉路)
の辺の数のことをいいます。

うえの定理を証明するのには、スペクトラルグラフ理論を用います。
スペクトラルグラフ理論で活躍するのは、隣接行列です。
隣接行列 $A=(a_{ij})$ を以下で定義します。

グラフ $G$ の頂点の個数を $n$ とし、$G$ の頂点に $1,2,\cdots, n$ の名前をつける。
$A$ は $n\times n$ 行列であって、
$$a_{ij}=\begin{cases}1&i,j\text{が辺で結ばれる}\\0&\text{上記以外}\end{cases}$$
としたものをいいます。

ペテルセングラフは頂点数が10で、次数が3の正則グラフです。
なので、ペテルセングラフの辺の数は、$10\times 3/2=15$ であり、
$K_{10}$ の辺の数は、$\binom{10}{2}=45$ すので、 ペテルセングラフで
$K_{10}$ を覆えるとすると、3つということになります。


次数が $r$ の正則グラフの隣接行列の固有値の絶対値の最大は
ちょうど $r$ ということが知られています。

2018年7月2日月曜日

フレッシュマンセミナー(第10回)

[場所1E202-203(金曜日6限)]

HPに行く
スライド

今回は、イプシロンエヌ論法とイプシロンデルタ論法についてやりました。

イプシロン-エヌ論法

数列 $a_n$ が $a$ に収束することを $\epsilon$ と $N$ を使って、以下のように定義します。


任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し、
$n>N$ なる任意の自然数 $n$ に対して、
$$|a_n-a|<\epsilon$$
が成り立つとき、
$$\lim_{n\to \infty}a_n=a$$
とかく。


つまり、数列 $a_n$ が $a$ に収束するということは、
ある番号から先は全て任意に決めた $a$ の近くの範囲 $(a-\epsilon,a+\epsilon)$ の中に
入っているということです。
確かに、このような定義だと、数列の収束をうまく言い表していますね。


これにより、数列 $a_n$ が収束するかどうかを調べることができます。
$a_n=\frac{1}{n}$ や $a_n=\frac{1}{1+e^n}$ $a_n=\sqrt{n+1}-\sqrt{n}$
などを解いてもらいました。
解き方などは、上のスライドを見てください。

$a_{n+1}=1+\frac{1}{a_n}$ かつ $a_1=1$ を満たす数列が
$a=\frac{1+\sqrt{5}}{2}$ に収束することを示しましょう。
$\frac{\sqrt{5}-1}{2}=\frac{1}{a}$ を用いると、

$$|a_{n+1}-a|=|1+\frac{1}{a_n}-\frac{1+\sqrt{5}}{2}|=\frac{1}{a_n}|a_n(\frac{\sqrt{5}-1}{2})-1|$$
$$=\frac{1}{a_na}|a_n-a|<\frac{1}{a}|a_n-a|$$
となります。
よって、この不等式を用いることで、

$|a_n-a|<\frac{1}{a^{n-1}}|a_1-a|=\frac{1}{a^n}$ となります。

今、$\epsilon>0$ を任意に取ります。
このとき、$N=\lceil -\log_a\epsilon\rceil$ とすると、
$a^N>a^{-\log_a\epsilon}>1/\epsilon$

$n>N$ となる任意の $n$ に対して、
$$|a_n-a|<\frac{1}{a^n}<\frac{1}{a^N}<\epsilon$$
となるので、$\epsilon$-$N$ 論法により、
数列 $a_n$ は $a$ に収束する。


イプシロン-デルタ論法
関数の連続性についての話もやりました。

関数 $y=f(x)$ が $x=a$ において連続であることは、



任意の $\epsilon$ に対して、ある $\delta$ が存在して、
$|x-a|<\delta$ を満たす任意の $x$ に対して、$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ を満たす



となります。
つまり、値域の $f(a)$ の(どんなに縮めた)近くの領域 $|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に対しても、
そこに入って来る $a$ の近くの領域 $|x-a|<\delta$ がある。
ただし、$|x-a|<\delta$ の全ての $x$ が $|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に入って
こなければなりません。

つまり、連続ではないというのは、ある程度 $\epsilon$ で狭めた
$f(a)$ の近くの領域には、$|x-a|<\delta$ となる $x$ で、
$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に全て入ってこれないものが存在することを言います。

例えば、

$f(x)$ を $x$ の符号を与える関数とします。
つまり、$x>0$ なら、$f(x)=1$、$x=0$ なら $f(x)=0$、かつ、$x<0$ なら $f(x)=-1$
とします。

このとき、$x=0$ で、この関数が不連続であることを示します。
感覚としては明らかですが。

$\epsilon=1/2$ としましょう。
このとき、$|y-0|<1/2$ において、いかなる $\delta>0$ に
対しても、$|x-0|<\delta$ となる $x$ が存在して、その像 $y$ が
$|y|<1/2$ にすることができないものが存在します。
例えば、$x>0$ ならば、$f(x)=1$ ですから、$|f(x)|<1/2$ にすることができません。
$x<0$ でもそうです。

ですので、この関数は不連続となります。


次に、$\epsilon$-$\delta$ 論法を用いて関数が連続であることを示してみましょう。

(証明)
$y=x^2$ が $x=a$ で連続であることを示します。
まず、$\epsilon>0$ を任意に取ります。

次に、$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$ とします
$|x-a|<\delta$ となる $x$ を任意に取ります。
このとき、

$|x+a|\le |x-a+2a|\le |x-a|+2|a|\le \delta+2|a|\le 1+2|a|$

となります。よって、
$|f(x)-f(a)|=|x-a||x+a|< \delta(1+2|a|)\le \epsilon$
となるので、
$f(x)$ は $x=a$ で連続となります。


この証明はわかるけれども、何をしているかわからないという人のために
書いておきます。

$|f(x)-f(a)|$ は、$|x-a|<\delta$ の$\delta$ が小さくなるに従って、
小さくなっていかなければならないが、
$|x-a||x+a|$と分けたことで、小さくなる部分 $|x-a|$ とそうでもない部分 $|x+a|$
が明確になる。$|x-a|<\delta$ となる $x$ を任意にとったとき、

$|x+a|$ はそれほど大きくはならない。しかし、$|x-a|$ の部分はどんどん小さくできる。

実際、任意に与えた $\epsilon$ に対してそれよりは小さくできる。

連続性を示すには、$\epsilon$ に対して、$\delta$ をどれほど小さくとっておけばよいか?
が問題でした。

いきなり、$\delta$ として、$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$
としていますが、これはいきなり思いつくのではなく、

最後の式から、$\delta(1+2|a|)\le \epsilon$ を満たすように、$\delta$ を取っておけばよい
ことがわかるので、
$\delta\le \frac{\epsilon}{1+2|a|}$ とすればよいということがわかります。

証明の途中で $|x+a|$ がそれほど大きくならないことを示すために、
$|x+a|$ が $\delta$ の評価式が入っていると少し面倒なので、
$\delta\le 1$ を使いました。$\delta\le 2$ でもかまいません。
結局、そのどちらよりも小さくしておけばよいのだから、
$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$ としたわけです。