2022年2月14日月曜日

トポロジー入門(第15回)

   [場所:オンライン(月曜日3限)]



最終回は、完備距離空間についてやりました。

完備距離空間

定義15.1
距離空間 $(X,d)$ において点列 $(x_x)$ が、$\forall \epsilon>0$ に対して、
$\exists N\in {\mathbb N}$ と、$\forall m,n>N$ に対して、$d(x_n,x_m)<\epsilon$
を満たすとき、$(x_n)$ をコーシー列という。


この定義は ${\mathbb R}$ 上のコーシー列の一般化になっています。
一般に、コーシー列は収束列とは限りません。
たとえば、$a_n=1/n$ とすると、$(0,1)$ において、$a_n$ は
コーシー列ですが、$(0,1)$ に収束先はありません。

 つぎに、距離空間の完備性の定義をします。

定義15.2
$(X,d)$ を距離空間とする。任意のコーシー列が収束するとき、
$(X,d)$ は完備という。

先ほどの例 $(0,1)$ は完備距離空間ではないということになります。
完備距離空間の例は以下のものがあります。

定義15.1 ${\mathbb R}$ は完備距離空間である。

定理15.2 コーシー列 $(a_n)$ は有界である。

(証明) $\forall \epsilon>0$ に対して、
$\exists N\in {\mathbb N}$ において、$n_0,m>N$ となる自然数で
$n_0$ を固定しておきます。
このとき、$d(a_{n_0},a_m)<\epsilon$ です。
$\{d(a_{n_0},a_{n})|n\le N\}$ は高々有限集合なので、その最大が存在して、
それを $\delta$ とします。よって、
$d(a_{n_0},a_n)<\max\{\delta,\epsilon\}$となります。
$n,m\in {\mathbb N}$ に対して、
$d(a_n,a_m)\le d(a_n,a_{n_0})+d(a_{n_0},a_m)\le 2\max\{\delta,\epsilon\}$
$\text{diam}(\{a_n|a\in {\mathbb N}\})\le 2\max\{\delta,\epsilon\}$
よってコーシー列 $(a_n)$ は有界となります。$\Box$ 

次の定義をしておきます。

定義15.3
$(a_n)$ を 位相空間 $X$ の点列 $(a_n)$に対して、
$${\mathbb N}\ni k\mapsto n_k\in {\mathbb N}$$
を単射とする。
このとき、$(a_{n_k})$ を $(a_n)$ の部分列という。

定理15.3(ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理)
${\mathbb R}$ の任意の有界数列は収束する部分列をもつ。

(証明) $(x_n)$ を${\mathbb R}$ の有界数列とします。
このとき、$\{x_n|x\in {\mathbb N}\}\subset [-M,M]$ とします。
拡大縮小、平行移動をして $\{x_n|n\in{\mathbb N}\}\subset [0,1]$ としておきます。
定理13.8 (こちらのページ)と同様に、区間を半分にしていくことで、
$$[0,1]\supset[a_1,b_1]\supset [a_2,b_2]\supset \cdots $$
各 $n\in{\mathbb N}$ に対して、$[a_n,b_n]$ において、
点列 $(x_n)$ が無限個入るようにしておきます。
このとき、$x_{n_1}\in [a_1,b_1]$ とし、$n_1<n_2$
かつ $x_{n_2}\in [a_2,b_2]$ となるようにします。
同様に、$n_{k-1}<n_{k}$ であって、$x_{n_k}\in [a_k,b_k]$ を満たすように
します。 
そうすると、上の区間の減少列において、
$a_n,b_n\to x$ が成り立ち、$\{x\}=\cap_{n=1}^\infty [a_n,b_n]$ となります。
$(x_n)$ の部分列 $(x_{n_k})$ であって $a_k\le x_{n_k}\le b_k$ を満たします。
また、$a_k,b_k\to x$ を満たすので、$x_{n_k}\to x$ となります。
よって、$(x_n)$ の部分列 $(x_{n_k})$ は $x$ に収束する部分列になります。$\Box$

また、次の定理が成り立ちます。

定理15.4 
コーシー列 $(a_n)$ が収束する部分列をもつなら、$(a_n)$ は収束列である。

この証明は $\epsilon$-$N$ 論法を使って簡単に証明できるので、ここでは省略します。

この定理を用いることで、上の$ {\mathbb R}$ は完備距離空間であることがわかります。

(定理15.1の証明)
$(a_n)$ を任意の ${\mathbb R}$ のコーシー列とします。
このとき、$(a_n)$ は有界数列なので、ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの
定理により、収束する部分列を持ちます。
$(a_n)$ が収束する部分列をもつので、定理15.4から$(a_n)$ は収束列ということに
なります。よって、${\mathbb R}$ は完備距離空間になりました。$\Box$

ここで以下を示しましょう。

定理15.5
距離空間において以下が同値である。
・コンパクト空間
・全有界かつ完備

まず、上から下の条件を導きましょう。

定理15.6
コンパクト距離空間は全有界かつ完備である。

(証明) コンパクト距離空間は全有界であることは既に示したので、
完備性を示そう。
$(a_n)$ を任意のコーシー列とします。
$A=\{a_n|n\in {\mathbb N}\}$ 
とします。
$A$ が集積点を持たないとします。
このとき、$B_d(x,\epsilon_x)\cap A=\emptyset $ または $\{x\}$ 
であり、$\{B_d(x,\epsilon_x)|x\in X\}$ は $X$ の開被覆であり、
コンパクト性から、$\{B_d(x_i,\epsilon_{x_i})|i=1,\cdots, n\}$ が
部分開被覆となります。
よって、$A=\cup_{i=1,\cdots,n}(B_d(x_i,\epsilon_{x_i}\cap A)\subset \{x_i|i=1,\cdots,n\}$
より、$A$ は有限集合になります。
そうすると、ある $p\in A$ に対して、無限個の $(a_n)$ が存在して、
$a_n=p$ となります。
よって、収束する部分列を持ちます。

一方、
$A$ に集積点を持つとします。
それを $x\in X$ とします。
このとき、$a_{n_1}\in B_d(x,1)\cap (A\setminus \{x\})$ 
とします。このとき、$\delta_1=d(a_{n_1},x)/2$ とします。
条件から $\delta_1<\frac{1}{2}$ です。
$a_{n_2}\in B_d(x,\delta_1)\cap (A\setminus\{x\})$
として、$\delta_2=\frac{d(a_{n_2},x)}{2}$ とすると、
$\delta_2<\frac{\delta_1}{2}<\frac{1}{4}$
$a_{n_3}\in B_d(x,\delta_2)\cap(A\setminus \{x\})$
より、これを続けることで、$\delta_n<\frac{1}{2^n}$ です。
また、選び方から、$a_{n_1},a_{n_2}, a_{n_3},\cdots$ は全て違う点であるから、
$a_{n_k}$ は部分列であることがわかります。
また、$d(a_{n_k},x)<\delta_k<\frac{1}{2^k}$ であるから、
$a_{n_k}\to x$ であることが分かります。
どちらにしても、コーシー列 $(a_n)$ に対して 収束する部分列 $(a_{n_k})$ 
が存在します。
よって、定理15.4から、$(a_n)$ は収束する列になります。
よって、$(X,d)$ は完備になります。$\Box$

次に上の逆を示しましょう。その前に次を示しておきます。

定理15.7 全有界な距離空間は、任意の点列は、コーシー列となる部分列をもつ。

(証明) $(X,d)$ を全有界な距離空間とします。
今、$\forall n\in {\mathbb N}$ に対して、
有限点 $\{x_1^n,\cdots, x_{m_n}^n\}$ が存在して、
$$X=\cup_{k=1}^{m_n}B_d\left(x^n_k,\frac{1}{n}\right)$$
が成り立ちます。

ここで、$(a_n)$ を任意の点列とします。
$B_1=B_d(x_{k_1}^1,1)$
$B_2=B_d(x_{k_1}^1,1)\cap B_d(x_{k_2}^2,\frac{1}{2})$
$B_3=B_d(x_{k_1}^1,1)\cap B_d(x_{k_2}^2,\frac{1}{2})\cap B_d(x_{k_3}^3,\frac{1}{3})$
$\cdots$
のようにして、$B_i$ には、$(a_n)$ のうち無限個の点列を含むようにすることが
できます。同じことですが、そのような $k_i$ を選ぶことができます。
そうすると、
$$B_1\supset B_2\supset B_3\cdots$$
となることがわかります。

こうすることで、$a_{n_1}\in B_1, a_{n_2}\in B_2,\cdots$ 
のように点列を選ぶことができて、$n_1<n_2<\cdots$ と仮定することができます。
よって、部分列 $a_{n_k}$ をとることができます。

今、$\epsilon>0$ に対して、$\frac{1}{2N}<\epsilon$ となる自然数 $N$ が存在して、
$\forall k,l>N$ に対して、
$d(a_{n_k},a_{n_l})\le d(a_{n_k},x^N_{n_k})+d(x^N_{n_k},a_{n_l})<\frac{1}{N}+\frac{1}{N}<\epsilon$ 
を満たします。
よって、$a_{n_k}$ はコーシー列となります。$\Box$


では、先ほどの定理15.5の下から上を示しましょう。

定理15.8
全有界かつ完備距離空間はコンパクト空間である。

(証明) $(X,d)$ が全有界完備であるとします。
このとき、$(X,\mathcal{O}_{d})$ は全有界かつ完備であるから、
$X$ はリンデレフ空間になります。
よって、任意の開被覆 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}_d$ に対して、
高々可算部分被覆 $\mathcal{V}\subset \mathcal{U}$ が
存在します。$\mathcal{V}$ が有限であれば、証明が終わるので、
可算(無限)集合であるとします。

$\mathcal{V}$ にどんな有限部分集合も $X$ を被覆しないと仮定しておきます。
どんな $n\in {\mathbb N}$ に対しても、
$x_n\not\in V_1\cup \cdots \cup V_n$ をとり、点列 $(x_n)$ を構成します。
$\forall i\in {\mathbb N}$ に対しても $V_i$ には高々有限個の $x_n$ のみしか
含みません。
この点列 $(x_n)$ には定理15.7 から部分コーシー列 $(x_{n_k})$ が存在します。
よって、完備性から $(x_{n_k})$ は収束し、その収束先を $x$ とおくと、
$x\in V_n$ に対して、$V_n$ は $x$ の近傍であるから、$V_n$ に含まれる
無限個の $x_{n_k}$ が存在することになります。
これは、$V_n$ には高々有限個の $x_{n_k}$ しか存在しないことに矛盾します。
よって、$\mathcal{V}$ は、有限部分被覆が存在します。
これは $\mathcal{U}$ の有限部分被覆でもあるから、
$X$ はコンパクトであることになります。$\Box$

これにより、定理15.5のコンパクト距離空間が全有界かつ完備であること
と同値であることが証明できました。

ベールの定理
ここで、完備距離空間の性質としてベールの定理を示しておきます。

そのために以下の定義をしておきます。

定義15.4
位相空間 $(X,d)$ に対して、$A\subset X$ が
$\text{Int}(\text{Cl}(A))=\emptyset$ であるとき、$A$ は疎集合であるという。
また、疎集合の可算個の和集合のことを第1類という。
また、第1類ではない集合を第2類という。

疎集合であることは、上と同値な条件に、
$\text{Cl}(\text{Int}(A^c))=X$ があります。
これは、以前示した、
$(\text{Int}(B))^c=\text{Cl}(B^c)$
$(\text{Cl}(B))^c=\text{Int}(B^c)$
により導けます。

また、条件から、疎集合の部分集合は全て疎集合であることが分かります。

注意すべきことは、疎集合というのは、入っている位相空間に依存しますし、
どのように入っているかにも依存します。
たとえば、$[0,1]\subset {\mathbb R}$ は疎集合ではありませんが、
$[0,1]\subset [0,1]\times [0,1]$ は疎集合となります。
特に、疎集合かどうかは位相的性質ではありません。

例15.2
疎集合の例としては、$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})$ 上の
有限点集合は疎集合です。
よって、${\mathbb R}$ 上の可算集合は全て第1類ということになります。
例えば有理数全体の集合 ${\mathbb Q}\subset {\mathbb R}$ 
は通常のユークリッド距離位相空間において第1類となります。
ただ、疎集合ではありません。

ここで、疎集合を特徴づけましょう。

命題15.1
稠密開集合の補集合は疎集合である。

(証明) $D$ を稠密開集合であるとします。
条件から、
$\text{Int}(D)=D$ かつ $\text{Cl}(D)=X$ であるから、
$\text{Int}(\text{Cl}(D^c))=\text{Int}((\text{Int}(D))^c)=\text{Int}(D^c)=(\text{Cl}(D))^c=X^c=\emptyset$
となります。
よって、$D^c$ が疎集合ということになります。$\Box$ 

次の命題を示しましょう。

命題15.2
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とするとき、以下は同値。
・$A\subset X$ が疎集合である
・稠密開集合 $D$ が存在して、$A\subset D^c$ となる。

(証明) $(\Rightarrow)$ を示します。
$A\subset X$ を疎集合とします。
このとき、$D=(A^c)^\circ$ とおくと、$D$ は開集合であり、
$\text{Cl}(D)=\overline{(A^c)^\circ}=X$ となります。
よって、$D$ は稠密開集合となります。

また、$D\subset A^c$ であるので条件を満たします。

($\Leftarrow$) を示します。
$D$ を稠密開集合とし、$A\subset D^c$ とします。
このとき、命題15.1から、$D^c$ は疎集合であり、
疎集合の部分集合は疎集合であるから
$A$ が疎集合であることになります。$\Box$

ここで、ベールの定理を書いておきます。

定理15.9(ベールの定理)
$(X,d)$ を完備距離空間とする。
$D_i$ が可算個の稠密開集合のとき、
$\cap_{i=1}^\infty D_i$ は $X$ で稠密集合になる。

この証明を考える前に、いくつか説明をしておきます。
まずこの定理が補集合では何を言っているか考えましょう。

するとこうなります。

完備距離空間において、
$A_i$ を可算個の稠密開集合の補集合とする。
このとき、
$A=\cup_{i=1}^\infty A_i$ は、$A^\circ=\emptyset$ である。

また、その部分集合を取ると、
完備距離空間において、
$A_i$ を可算個の疎集合とする。
このとき、
$A=\cup_{i=1}^\infty A_i$ は、$A^\circ=\emptyset$ である。

つまり、ベールの定理は、
完備距離空間において、
$A\subset X$ が第1類ならば、 $A^\circ =\emptyset$ となる。

さらに、対偶を取れば、
$A$ が内点を持つとすると、$A$ は可算個の疎集合の和集合で書けない。
つまり、第2類集合である。

特に、$X$ が完備距離空間であれば、
$A=X$ は可算個の疎集合の和によって書くことができない。

評語的に言えば、
「チリ(疎集合)もつもれど(可算和集合をとっても)(内点を持つ集合)にならない」
ということが言えます。

例15.3 例えば、${\mathbb R}^2$ は完備距離空間ですが、
可算個の直線によって覆うことができない。

また、
例15.4 有理数空間は、完備距離空間に同相ではない。
なぜなら、もし同相なら、1点集合は、疎集合であるから、${\mathbb Q}$ 
は、疎集合の可算和集合になってしまうからです。

また、一般化して、孤立点を含まなければ完備距離空間は非可算個の点を含みます。
もちろん、離散距離空間は、可算個でも完備距離空間になります。

ではここで、ベールの定理の証明をしておきます。

(証明) $(X,d)$ を完備距離空間とします。
$D_i$ を稠密開集合とします。($i=1,2,\cdots$)
この時、$\cap_{i=1}^nD_i$ が $X$ において稠密であることを示します。

$\forall x\in X$ として、$\forall \epsilon>0$ に対して、
$\epsilon_0=\epsilon$ とし、$x_0=x$ とおきます。
このとき、

$B_d(x_0,\epsilon)\cap D_i\neq \emptyset$ 
であるから、$x_1\in B_d(x_0,\epsilon_0)\cap D_i$ を取ります。
また、
$0<\epsilon_1<\frac{1}{2}$ かつ、
$$\text{Cl}(B_d(x_1,\epsilon_1))\subset B_d(x_0,\epsilon_0)\cap D_1$$
とすることができます。
それは、$B_d(x,\epsilon)$ かつ $D_i$ がどちらも開集合であり、
距離空間が正則空間であることからわかります。

また、$B_d(x_1,\epsilon_1)\cap D_2\neq \emptyset$ であることから、
$x_2\in B_d(x_1,\epsilon_1)\cap D_2$ を取り、
$0<\epsilon_2<\frac{1}{4}$ を取り、
$$\text{Cl}(B_d(x_2,\epsilon_2))\subset B_d(x_1,\epsilon_1)\cap D_2$$
とすることができます。このようにして、
任意の $n\in {\mathbb N}$ に対して、

$$\text{Cl}(B_d(x_n,\epsilon_n))\subset B_d(x_{n-1},\epsilon_{n-1})\cap D_n$$
かつ $0<\epsilon_n<\frac{1}{2^n}$ を取ることができます。
よって、
$\forall m>n\in {\mathbb N}$ に対して、
$B_d(x_m,\epsilon_m)\subset B_d(x_{m-1},\epsilon_{m-1})\subset \cdots\subset B_d(x_n,\epsilon_n)$
となります。
このことから、$d(x_m,x_n)<\epsilon_n<\frac{1}{2^n}$ より、
$(x_n)$ はコーシー列であり、
完備性から、ある $x_\infty$ に収束します。

また、$\forall n\in {\mathbb N}$ に対して $\forall m>n$ に対して、
$x_m\in B_d(x_n,\epsilon_n)$ であるから、
$x_\infty\in \text{Cl}(B_d(x_n,\epsilon_n))$ となります。
よって $x_\infty\in D_n$ かつ、$B_d(x_n,\epsilon)$ であることがわかります。
特に、$x_\infty\in B_d(x,\epsilon)$ であるから、$x_\infty\in B_d(x,\epsilon)\cap_{n=1}^\infty  D_n$ 
であり、
$x_\infty\in \overline{\cap_{n=1}^\infty D_n}$ であることがわかります。
よって、$\cap_{n=1}^\infty D_n$ は $X$ で稠密であることがわかります。 $\Box$

完備化
最後に、完備化の話をして終わります。

完備化の定義をしておきます。

$(X,d)$ を距離空間とします。
このとき、ある完備距離空間 $(\hat{X},\hat{d})$ が存在して、
$h(X)\subset \hat{X}$ が稠密となる単射連続写像 $h:X\to \hat{X}$ が存在するとき、
$(\hat{X},h)$ を $X$ の完備化と言います。

例えば、以下の例ががあります。

例15.6
$({\mathbb R},d_1)$ における $({\mathbb Q},d_1)$ の通常の埋め込みは完備化である。

また、次の例を考えます。

$C^\ast(X)$ を $X$ 上の有界な実数値連続関数全体とします。

$f,g\in C^\ast(X)$ に対して、
$$d_{\sup}^X(f,g)=\sup\{|f(x)-g(x)||x\in X\}$$
と定義すると、$(C^\ast(X),d_{\sup}^X)$ は完備距離空間となります。

完備化についての定理を与えて証明することで終わります。

 定理15.10 
$(X,d)$ を距離空間とする。
このとき、$X$ の完備化 $(\hat{X},h)$ が存在し、
完備化は等長写像を除いて一意的である。


(証明) $(X,d)$ を距離空間とします。
$a,x\in X$ に対して、 
$\varphi_x(z)=d(a,z)-d(x,z)$ 
とすることで、$\varphi_z\in C^\ast(X)$ が構成します。
ここで、$\Phi(x)=\varphi_x$ とします。

$\Phi$ が単射であることを示しておきます。
$\Phi(x)=\Phi(y)$ であるとします。
このとき、任意の $z\in X$ に対して、$d(x,z)=d(y,z)$ であり、
特に $z=x$ とおくことで、$0=d(x,y)$ であるから、$x=y$ となります。
よって、単射
$$\Phi:X\to C^\ast(X)$$
を得ます。
このとき、$|\varphi_x(z)-\varphi_y(z)|=|d(a,z)-d(x,z)-(d(a,z)-d(y,z))|=|d(x,z)-d(y,z)|\le d(x,y)$
より、
$d_\sup^X(\varphi_x,\varphi_y)\le d(x,y)$ 
が成り立ちます。この不等式から $\Phi$ が連続であることがわかり、同様に、$d(x,y)\le d_\sup^X(\varphi_x,\varphi_y)$
も成り立つことがわかります。
$\Phi:X\to C^\ast(X)$ は距離を保つ連続写像であることがわかります
$\hat{X}=\text{Cl}(\Phi(X))\subset C^\ast(X)$ とすることで、
$\hat{X}$ は完備距離空間であり、$X\subset \hat{X}$
は完備化となります。

一意性に対してはここでは省略します。$\Box$ 

ここで使ったのは、完備距離空間の中の閉集合はまた完備距離空間であることでした。

2022年2月11日金曜日

トポロジー入門(第14回)

  [場所:オンライン(月曜日3限)]



今回は、コンパクト空間についての後半部分をやりました。
コンパクト空間の前半はこちらを見てください。

コンパクト空間
まず、次の定理を示しました。

定理14.1(チコノフの定理)
$X,Y$ をコンパクト空間であれば、
$X\times Y$ もコンパクト空間

証明
$\mathcal{U}$ を $X\times Y$ の開被覆とします。
このとき、$(x,y)\in X\times Y$ に対して、$U_{(x,y)}\in \mathcal{U}$ 
を選んでおきます。
また、$U_{(x,y)}$ に対して、$A_y(x)\times B_x(y)\subset U_{(x,y)}$
となる$x$ の開近傍 $A_y(x)$ と $y$ の開近傍 $B_x(y)$ が存在します。
この時、$\{B_x(y)|y\in Y\}$ は $Y$ の開被覆であり、コンパクト性から、
$B_x(y_1^x),\cdots, B_x(y_{n_x}^x)$
が存在して、それらは$Y$ の被覆になります。
ここで、$x\in X$ を固定して、$\{A_{y_j^x}(x)\times B_x(y_j^x)|j=1,\cdots, n_x\}$
は $\{y\}\times Y$ の被覆になっていて、
$V(x)=\cap_{i=1}^{n_x}A_{y_j^x}(x)$
は有限個の共通部分なので、$x$ の開近傍になります。
また、$V(x)\times Y\subset \cup_{j=1}^{n_x}A_{y_j^x}(x)\times B_x(y_j^x)$
となります。

ここで、$\{V(x)|x\in X\}$ は $X$ の開被覆なので、$X$ のコンパクト性から
$x_1,\cdots, x_s$ が存在して、
$\{V(x_1),\cdots,V(x_s)\}$ は $X$ の開被覆となります。

今、$\mathcal{V}=\{U_{(x_i,y_j^{x_i})}|1\le i\le s,1\le j\le n_{x_i}\}$ 
が $X\times Y$ の有限被覆であることを示します。

$(x,y)\in X\times Y$ に対して、
$x\in V(x_i)$ となる $x_i$ が存在して、
$y\in B_{x_i}(y_j^{x_i})$ となる $1\le j\le n_{x_i}$ が存在して、
$(x,y)\in V(x_i)\times B_{x_i}(y_j^{x_i})$ となります。
つまり、$V(x_i)\times B_{x_i}(y_j^{x_i})\subset A_{y_j^{x_i}}(x_i)\times B_{x_i}(y_j^{x_i})\subset U_{(x_i,y_j^{x_i})}$ がなりたつので、
$\mathcal{V}$ は有限開被覆になり、$\mathcal{V}\subset\mathcal{U}$ であるから、
$X$ はコンパクトになります。$\Box$

このことから、このチコノフの定理を有限回繰り返すことで、
各 $X_i$ がコンパクトであるとき、有限直積位相 $X_i\times X_2\times \cdots\times X_n$ 
もまたコンパクトであることがわかります。

例として、区間の直積 $(I^1,\mathcal{O}_{d_1})$ や $(I^n,\mathcal{O}_{d_n})$ はコンパクトであることがわかります。

実は、このチコノフの定理は、
有限だけではなく、任意個の直積に対しても、
同じ主張が成り立ちます。
ここでは証明はしません。

定理14.2(チコノフの定理)
$X_\lambda$ ($\lambda\in \Lambda$)$ がコンパクト空間である時、
$$\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$$
もコンパクト空間。

このことから、

$(I^{\mathbb N},\mathcal{O}_{d_1}^{\mathbb N})$ がコンパクトとなります。
この空間は、
$d_{\infty}((x_n),(y_n))=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{2^n}|x_n-y_n|$
を距離関数として距離空間になり、その時、
$\mathcal{O}_{d_1}^{\mathbb N}=\mathcal{O}_{d_\infty}$ が成り立ちます。

また、直積空間 $\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$ がコンパクトであれば、
標準射影 $\text{pr}_\lambda$ が全射連続であることから、因子空間
$\text{pr}_{\lambda}(\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda)=X_\lambda$ 
もコンパクトであることがわかります。


これ以降、コンパクト空間の性質についてまとめておきます。

まず、次の定理は今後よく使います。

定理14.3
コンパクト空間の閉集合はコンパクト。

(証明) $(X,\mathcal{O})$ をコンパクト空間とします。
$A\subset X$ を閉集合として、$A$ の開被覆を $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ とします。
この時、$\mathcal{U}\cup\{A^c\}$ は $X$ の開被覆であるから、
$\mathcal{U}$ の有限部分集合 $\mathcal{V}$ が存在して、$\mathcal{V}\cup\{A^c\}$ は
$X$ の被覆になります。

このとき、$\mathcal{V}$ は $A$ の被覆になっていますので、
$A$ の任意の開被覆に対して、有限部分被覆が存在したことになります。
これは、$A$ がコンパクトであることを意味します。$\Box$

次の定理を示しました。

定理14.4
$X$ をハウスドルフ空間とする。
$A\subset X$ をコンパクト集合とし、
$x\in X$ で、$x\not\in A$ となる $x$ に対してある開集合 $U,V$ が存在して、
$x\in U$ かつ $A\subset V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ を満たす。
つまり、$x,A$ は開集合で分離できる。

(証明) $\forall p\in A$ をとります。
$x,p$ を分離する開集合 $U_p,V_p$ をとり、
$x\in U_p, p\in V_p$ かつ $U_p\cap V_p=\emptyset$
を満たします。 
この時、$\mathcal{V}=\{V_p|p\in A\}$ は $A$ の開被覆となります。

よって、$p_1,\cdots ,p_n\in A$ が存在して、$\{V_{p_1},V_{p_2},\cdots,V_{p_n}\}$
は $A$ は開被覆となります。
つまり、$A\subset \cup_{i=1}^{n}V_{p_i}=:V$ とする。
$\cap_{i=1}^nU_{p_i}=:U\in \mathcal{O}$ とおくことで、
$x\in U$ かつ、$U\cap V=\emptyset$ となります。
もし、$U\cap V\neq \emptyset$ となるとすると、
$y\in U\cap V$ に対して、 ある $i$ が存在して、$y\in U_{p_i}\cap V_{p_i}$
となるので、これは、一般に、$U_p, V_p$ が共通部分を持たないことに反します。

これにより、$U,V$ は、$x,A$ を分離する開集合となります。$\Box$

さらに、この定理を使って、次の定理を示すことができます。

定理14.5
$X$ をハウスドルフ空間とする。
互いに交わらないコンパクト集合 $A,B\subset X$ は
開集合によって分離できる。

(証明) $A,B\subset X$ を互いに交わらないコンパクト集合とします。
この時、定理14.4に対して、$x\in A$ と $B$ に対して、交わらない開集合 $U_x,V_x$
が存在して、
$x\in U_x, B\subset V_x, U_x\cap V_x=\emptyset$ 
となります。
ここで、$\{U_x|x\in A\}$ は $A$ の開被覆であり、
$A$ はコンパクトであるから、$x_1,x_2,\cdots,x_m\in A$ が存在して
$\{U_{x_i}|i=1,\cdots, m\}$ が $A$ の有限開被覆となります。
ここで、$B\subset \cap \{V_{x_i}|i=1,\cdots, m\}\in \mathcal{O}$ 
となるので、
$$U=\cup\{U_{x_i}|i=1,\cdots, m\}$$
$$V=\cap\{V_{x_i}|i=1,\cdots, m\}$$
 
とすることで、$U,V$ は前と同じ議論により、$U,V $は $A,B$ を分離する
開被覆となります。$\Box$

この定理を用いると、
コンパクトハウスドルフ空間は、正規空間であることがわかります。
なぜなら、コンパクトハウスドルフ空間の任意の閉集合は定理14.3からコンパクトになり、
それらは開集合によって分離できるからです。

次の定理を示しました。

定理14.6
$X$ をハウスドルフ空間とする。
この時、任意のコンパクト集合 $A\subset X$ は閉集合となる。

(証明) $A$ をコンパクト集合します。
$x\not\in A$ となる $x$ に対して、
$x\in U, A\subset V, U\cap V=\emptyset$ 
となる開集合 $U,V$ が存在します。
特に、$x\in U\in A^c$ となり、 $x$ は $A^c$ の内点であることが
わかります。
よって、$A$ は閉集合であることがわかります。$\Box$

距離空間はハウスドルフ空間なので、
距離空間のコンパクト集合は閉集合であることがわかりました。

次に位相空間論で必ず習う次の定理を紹介しておきます。

定理14.7
コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像は閉写像となる。

(証明). $f:X\to Y$ をコンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像
とします。この時、$F\subset X$ を閉集合とします。
$X$ はコンパクトであるから、$F$ はコンパクト集合になります。
よって、コンパクト集合の連続像はコンパクトであるから、
$f(F)$ はコンパクトとなります。
定理14.6からハウスドルフ空間の中のコンパクト集合は閉集合であったから、
$f(F)$ は閉集合となります。$\Box$

この定理を用いると、次を証明することができます。
・コンパクト空間からハウスドルフ空間への全射連続写像は商写像となる。
・コンパクト空間からハウスドルフ空間への全単射連続写像は同相写像となる。

ここで、コンパクト空間を少し一般化しておきます。

定理14.1
位相空間 $X$ の任意の開被覆は高々可算個の部分被覆をもつとき、
$X$ はリンデレフ空間という。


この時、リンデレフ空間の例を与えます。

定理14.8
位相空間は第2可算公理を満たすならリンデレフ空間である。

(証明) $(X,\mathcal{O})$ を $X$ の可算開基とします。
この時、$\mathcal{U}$ を任意の
開被覆とします。この時、$\forall U\in \mathcal{U}$ に対して、
$\exists \mathcal{B}_U\subset \mathcal{B}(U=\cup\mathcal{B}_U)$
となります。
$$\mathcal{V}=\{B\in \mathcal{B}_U|U\in \mathcal{U}\}$$
と置きます。このとき、$\mathcal{V}$ は $X$ の高々可算被覆となります。
このとき、$B\in \mathcal{V}$ に対して、$B\subset U_B\in \mathcal{U}$
をとると、
$$X=\cup_{B\in \mathcal{V}}B\subset \cup_{B\in \mathcal{V}}U_B=X$$
であるから、 
$\{U_B\in\mathcal{U}|B\in \mathcal{V}\}$ は $\mathcal{U}$ の可算部分被覆。

例14.5
コンパクト空間は任意の
開被覆は高々可算被覆をもつから、リンデレフ空間の例になります。
また、可分距離空間は第2可算公理を満たしますので、リンでレフの例になります。

リンデレフ空間の閉集合もリンデレフ(定理14.3と同様に証明できる)になります。
 
また、次の定理が成り立ちます。

定理14.9
第2可算公理を満たすコンパクトハウスドルフ空間は距離空間となる。

(証明) $X$ を第2可算公理を満たすコンパクトハウスドルフ空間とすると、
先ほど書いたことから、正規空間となります。
第2可算公理を満たし、正規空間であるなら、ウリゾーンの距離化定理から、
$X$ は距離空間になります。$\Box$


コンパクト距離空間
距離空間のコンパクト集合についての性質について
考えます。

すぐわかることは、以下の定理です。

定理14.10
コンパクト距離空間は有界

$(X,d)$ をコンパクトな距離空間とします。
このとき、$x\in X$ をとると、$\cup_{n=1}^\infty B_d(x,n)=X$ 
であるから、コンパクト性より、
$\cup_{n=1}^mB_d(x,n)=B_d(x,m)=X$ であるから、
$\text{diam}(X)=\sup\{d(x,y)|x,y\in X\}\le 2m$

となり、$X$ が有界であることがわかります。

また、コンパクト性は、有界より強い性質を持ちます。
まず、以下の定義をしておきます。

定義14.2 
距離空間 $(X,d)$ は、任意の $\epsilon>0$ に対して、ある有限集合
$\{x_1,\cdots,x_n\}\subset X$ が存在して、
$$X=\cup_{i=1}^nB_d(x_i,\epsilon)$$
を満たすとき、$(X,d)$ は全有界と言う。

実は次の定理が成り立ちます。

定理14.11
コンパクト距離空間は全有界である。

(証明) $(X,d)$ をコンパクト距離空間とします。
この時、$\epsilon>0$ に対して、
$\mathcal{U}=\{B_d(x,\epsilon)|x\in X\}$ は $X$ の開被覆であるから、
有限部分集合 $\{B_d(x_i,\epsilon)|i=1,\cdots, n\}$ が $X$ の被覆となります。
よって、これは $X$ が全有界であることを意味しています。

実際、全有界であることと、有界であることは違っていて、
一般に、全有界なら有界ですが、逆は成り立ちません。

(全有界 $\Rightarrow$ 有界)
全有界性から、$\forall \epsilon>0$ より、
$X=\cup_{i=1}^nB_d(x_i,\epsilon)$ が成り立ちます。
ここで、$\epsilon$ を固定しておきます。
このとき、$\{x_1,\cdots, x_n\}$ は $\{d(x_i,x_j)|i,j=1\cdots, n\}$ が最大値を持つので、
有界です。それを $K$ としておきます。このとき、$\epsilon$ は固定された
実数なので $K$ も固定された実数です。
このとき、$p,q\in X$ に対して、
$p\in B_d(x_i,\epsilon), q\in B_d(x_j,\epsilon)$ となる $x_i,x_j$ が存在するから、
$d(p,q)\le d(p,x_i)+d(x_i,x_j)+d(x_j,q)\le \epsilon +K+\epsilon=K+2\epsilon$ が成り立つから
$X$ は有界となります。 

また全有界性は位相的性質ではありません。
$(0,1)$ は全有界ですが、それと同相な ${\mathbb R}$ は全有界ではありません。

よって距離空間において、コンパクト集合は全有界閉集合ということになります。
もちろん全有界閉集合は有界閉集合になります。
${\mathbb R}$ ではこの逆が成り立ちます。

それを示していきます。それをハイネボレルの被覆定理と言います。

定理14.12(ハイネボレルの被覆定理)
${\mathbb R}$ において $A\subset {\mathbb R}$ がコンパクトであることと
有界閉集合であることは同値である。

(証明) ${\mathbb R}$ において、コンパクトなら有界閉集合であることは
これまで示していました。なので、今回は逆の、
有界閉集合ならコンパクトであることを示していきます。

$A\subset {\mathbb R}$ が有界閉集合であるとします。
このとき、$\exists M>0(A\subset[-M,M])$ となります。

$[-M,M]$ は ${\mathbb R}$ においてコンパクトであるから、
$A$ はコンパクトかつ閉集合であるから、
定理14.3 から $A$ はコンパクトであることがわかりました。$\Box$ 

この証明は、${\mathbb R}^n$ においても同様にすることができるので、この定理を
一般化して、以下のようにいうことができます。

定理14.13(ハイネボレルの被覆定理)
${\mathbb R}^n$ において $A\subset {\mathbb R}^n$ がコンパクトであることと、
有界閉集合であることは同値である。

一般の距離空間の場合には、この同値性は成り立ちません。
つまり、コンパクトではないが、有界閉集合のものは存在します。

例14.8
$({\mathbb R},d)$ を通常のユークリッド距離位相空間ではなく、離散距離位相空間とします。
つまり、
$$d(x,y)=\begin{cases}1&x\neq y\\0&x=y\end{cases}$$
となる距離を入れておきます。

このとき、
${\mathbb R}$ の全ての部分集合が閉集合であり、
さらに、全てのことなる点の距離は1なので、${\mathbb R}$ の直径は1です。 
${\mathbb N}\subset{\mathbb R}$ をとれば、${\mathbb N}$ も有界で、
閉集合となります。
一方、$\{\{n\}|n\in {\mathbb N}\}$ は ${\mathbb N}$ の開被覆ですが、
どの有限部分集合も被覆にはなりません。

よって、この距離空間において、コンパクトではないが、有界閉集合になっています。 

次に、全有界である距離位相空間の性質を述べておきます。

定理14.14
全有界な距離空間は可分である。

(証明) $(X,d)$ を全有界であるとします。この時、$n\in {\mathbb N}$ に対して、
$$X=\underset{k=1,\cdots,n}{\cup }B_d\left(x_k^n,\frac{1}{n}\right)$$ 
となり、$D=\{x^n_k|n\in {\mathbb N},1\le k\le m_n\}$
とおくことで、$D$ が $X$ の可算稠密集合になっています。
まず、可算であることはすぐわかります。
稠密であることを以下示します。

$\forall x\in X$ を取ります。この時、任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に
対して、$B_d(x,\frac{1}{n})\subset V$ となる $n\in {\mathbb N}$ が存在します。
上記の被覆性から、
$x\in B_d(x^n_k,\frac{1}{n})$ となる $x^n_k$ が存在します。
また、$x^n_k\in B_d(x,\frac{1}{n})$ であることから、
$x^n_k\in V\cap D$ であることから、$V\cap D=\emptyset$ であることがわかります。
よって、$D$ は稠密集合であることがわかります。$\Box$

定理14.15
コンパクト距離位相空間は第2可算公理を満たす。

(証明) コンパクト距離空間であれば、可分であり、
可分距離空間ならば第2可算公理を満たします。$\Box$

最後に以下を示して終わりました。

定理14.16
次は同値になります。
コンパクト距離空間であること
$I^{\mathbb N}$ の閉集合であること

(証明) $X$ がコンパクト距離空間であるとします。このとき、
第2可算公理を満たす正規空間であるから、ウリゾーンの距離化定理により
$I^{\mathbb N}$ に埋め込み可能になります。
よって、$I^{\mathbb N}$ のコンパクト集合なので、閉集合なります。

逆に、$I^{\mathbb N}$ の閉集合とすると、$I^{\mathbb N}$ は距離空間であるから
その部分集合も距離化可能であり、コンパクト空間の中の閉集合だから
コンパクト集合になります。$\Box$

2022年2月7日月曜日

トポロジー入門(第13回)

 [場所:オンライン(月曜日3限)]



今回は、分離公理の後半と、コンパクト空間についての説明を行いました。
前回は分離公理としてハウスドルフ空間を行いました。
基本的に分離公理とは、2つの交わらない部分集合が開集合を使って
分離できるかどうかについての公理でした。
分離するとは、$A,B$ を部分集合として、$A\subset U$ のような
開集合 $U$ が存在して、$A\subset U$ かつ $U\cap B=\emptyset$
となることをいいます。
場合によっては、$B$ の方にも同じように開集合 $V$ が取れ、
$B\subset V$ となり、 $A\cap V=\emptyset$ となります。
この場合、さらに強い分離公理を満たすことになります。
また、さらに、$U,V$ に共通部分が内容に取れることもあり、
このことを、$A,B$ を開集合で分離するともいいます。

分離公理(正則空間・正規空間)
ハウスドルフ空間 ($T_2$ 公理) の次に行う分離公理は、
$T_3, T_4$ 公理です。

定義13.1, 13.3($T_3$-公理、$T_4$-公理) 
「$x\in X$ と $x\not\in F$ となる閉集合 $F$ 
に対して、開集合 $U,V$ が存在して、
$$x\in U,\ F\subset V,\ U\cap V=\emptyset$$
を満たす」を $T_3$-公理という。

「$A\cap B=\emptyset$ を満たす閉集合 $A,B \subset X$
に対して、開集合 $U,V$ が存在して、
$$A\subset U,\ B\subset V,\ U\cap V=\emptyset$$
を満たす」を $T_4$-公理という。

定義13.2,13.4
$T_1$ かつ $T_3$ 公理を満たす空間を正則空間といい、
$T_1$ かつ $T_4$ 公理を満たす空間を正規空間という。

ここで、正則空間の言い換えを与えておきます。

定理13.1
$X$ が $T_3$空間であることと、以下が同値、
$\forall x\in X$ と、$x\in U$ となる開集合 $U$ に対して、
$x\in V\subset \overline{V}\subset U$ となる開集合 $V$ が
存在する。

(証明) ($\Rightarrow$)
$X$ が $T_3$空間とする。
このとき、$x\in U$ となる開集合 $U$ に対して
$x,F=U^c$ は1点とそれを含まない閉集合となるから、$T_3$公理から
$x\in V,F\subset W$ が存在して、$V\cap W=\emptyset$ を満たします。

よって、$x\in V\subset W^c\subset U$ を満たします。
ここで、$W^c$ は閉集合であるから、
$x\in V\subset \overline{V}\subset W^c\subset U$ となります。
つまり、条件が成立することになります。

($\Leftarrow$)
下の条件が成り立ったとします。
このとき、$x\not \in F$ となる閉集合 $F$ に対して、
$x\in F^c=U$ は開集合であり、条件から、$x\in V\subset \overline{V}\subset U$ を
満たす開集合 $V$ が存在します。
このとき、$x\in V$ かつ、$F\subset (\overline{V})^c$ は
$V\cap (\overline{V})^c=\emptyset$ であるから
$x,F$ を開集合によって分離していることになります。
つまり $X$ は $T_3$ 空間であることがわかりました。$\Box$

同じように、以下の定理も成り立ちます。

定理13.2
$T_4$ 空間であることと以下は同値.
$X$ の互いに交わらない閉集合 $F$ と$F\subset G$ を満たす
開集合 $G$ に対して、$F\subset V\subset\overline{V}\subset G$
となる開集合 $V$ が存在する。

このことから、以下の関係が成り立つことがすぐにわかります。

正規空間 $\Rightarrow$ 正則空間 $\Rightarrow$ ハウスドルフ空間

この関係のどの逆も成り立ちません。

まず、次の例があります。

定理13.3
距離位相空間は正規空間。

(証明) $A,B$ を交わらない閉集合とします。
このとき、
$U=\{x|d(x,A)<d(x,B)\}$
$V=\{x|d(x,A)>d(x,B)\}$
とすると、$A\subset U$ かつ $B\subset V$ であり、
定義から $U\cap V=\emptyset$ となります。
$\forall x\in A$ とすると、$d(x,A)=0$ であり
$d(x,B)>0$ となります。
もし $d(x,B)=0$ なら、$x\in \overline{B}=B$ となり矛盾するからです。

また、$U,V$ が開集合であることは、$\varphi(x)=d(x,B)-d(x,A)$ は $\varphi:X\to{\mathbb R}$
となる連続関数となる。
よって $U=\varphi^{-1}((0,\infty))$ となるので、$U,V$ は開集合となる。
よって、$U,V$ は $A,B$ を分離する開集合となります。$\Box$

よって、

距離空間 $\Rightarrow $ 正規空間
となります。
この、逆は成り立ちません。反例は、ゾルゲンフライ直線です。

また、正規空間が成り立つ性質についてまとめておきます。
証明はしません。

定理13.4(ウリゾーンの補題)
位相空間 $X$ において以下は同値。
$T_4$ 空間である。
互いに交わらない閉集合 $F,G$ に対して、
連続関数 $f:X\to I$ が存在して $f(F)=0$ かつ $f(G)=1$ 
を満たす。

定理13.5(ウリゾーンの距離化定理)
正規かつ第2可算公理を満たす空間は距離化可能

定理13.6(ティーチェの拡張定理)
$X$ を正規空間とする。
このとき、閉集合 $A\subset X$ に対して
任意の連続関数 $f:A\to X$ に対して連続関数
$\tilde{f}:X\to [0,1]$ が存在して、$\tilde{f}|_A=f$ となる。

ゾルゲンフライ平面 ${\mathbb R}^2_l$
を考えましょう。こちら にてゾルゲンフライ直線、平面についての解説を
書いたことがあったのでリンクをはりました。
ゾルゲンフライ直線の2つの直積としてゾルゲンフライ平面を定義します。

ティーチェの拡張定理を使うと、
${\mathbb R}^2_l$ は正規空間ではないことが分かります。
また、正則空間の2つの直積空間も正則空間
であるから、
${\mathbb R}^2_l$ は正則空間となります。
よって、${\mathbb R}^2_l$ は正則だが、正規な位相空間ということになります。

他にも、ハウスドルフだが、正則空間ではない空間も存在しますが
ここでは紹介しません。

コンパクト空間
次にコンパクト空間について解説します。

$\mathcal{U}\subset \mathcal{P}(X)$ が被覆であるとは、
$\forall x\in X$ に対して、$\exists U\in \mathcal{U}$ となる
ときをいう。
つまり、$X=\cup \mathcal{U}$ のことと同値。

$\mathcal{U}$ が被覆かつ $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ となるとき、
$\mathcal{U}$ は開被覆という。

$\mathcal{U}$ が被覆かつ $\mathcal{U}\subset \mathcal{C}$ となるとき、
$\mathcal{U}$ は閉被覆という。

また、$\mathcal{U}$ が被覆かつ $|\mathcal{U}|<\infty$ を満たすとき、
有限被覆という。

また、被覆 $\mathcal{U}$ が $\mathcal{V}\subset \mathcal{U}$
を満たす $\mathcal{V}$ が被覆であるとき、部分被覆という。

$\mathcal{V}\subset\mathcal{U}$ が部分被覆かつ有限被覆であるとき、
有限部分被覆という。

ここでコンパクト空間の定義をしましょう。

定理13.5
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ に対して、
$X$ の任意の開被覆 $\mathcal{U}$ に対して、有限部分被覆が存在するとき、
$(X,\mathcal{O})$ はコンパクト空間という。

同様に、 $A\subset X$ がコンパクト集合であることは、
$A$ が部分空間としてコンパクト空間であることである。

言い換えれば、位相空間 $(X,\mathcal{O})$ において、
$\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ が
$A\subset \cup\mathcal{U}$ を満たすとき、有限部分集合 $\mathcal{V}\subset \mathcal{U}$ 
が存在して、$A\subset \cup\mathcal{V}$ を満たすことをいいます。

コンパクト空間 $X$ に対して、以下の定理が成り立ちます。

定理13.7
$X$ がコンパクト空間であり、
$f:X\to Y$ が連続写像であるとき、$f(X)$ もコンパクトである。

(証明) $\mathcal{U}$ を $f(X)$ の開被覆とする。
$f(X)\subset \cup\mathcal{U}$ を満たすとする。
$\{f^{-1}(U)|U\in \mathcal{U}\}=\mathcal{A}$ は $X$ の開被覆となります。
$X$ のコンパクトであるから、有限集合 $\mathcal{V}\subset\mathcal{U}$  
が存在して、$\cup\{f^{-1}(V)|V\in \mathcal{V}\}$ は $X$ の開被覆
となります。
よって、$\mathcal{V}$ は $f(X)$ の開被覆となります。
つまり、$f(X)$ はコンパクトとなります。$\Box$ 

この定理から、$X$ の任意のコンパクト集合の連続写像による像(つまり連続像)
もコンパクト集合ということになります。

例として、${\mathbb R}$ のコンパクト集合を考えます。

例13.7
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})$ のコンパクト集合は有界である。

(証明) $A$ を有界でない集合とします。
$\forall n$ に対して、$U_n=(-n,n)$ とします。
このとき、$\mathcal{U}=\{U_n|n\in {\mathbb N}\}$ は $A$ の開被覆である。
$\mathcal{U}$ の任意の有限集合 $\mathcal{V}\subset \mathcal{U}$ の和集合
は、ある開区間$(-M,M)$ に包まれ、$\cup\mathcal{V}=(-M,M)$ となる。$A$ は有界ではないから、$A\not\subset\cup\mathcal{V}$ となります。
これは $\mathcal{V}$ は $A$ の被覆ではない。
つまり、$\mathcal{U}$ には有限部分被覆が存在しないことになります。
よって、$A$ はコンパクトではありません。
この対偶をとることで、$A$ がコンパクト集合なら有界ではないということが
成り立ちます。$\Box$

例13.8
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})$ のコンパクト集合は
閉集合である。

$A\subset {\mathbb R}$ をコンパクト集合とする。
$A$ が閉集合でないとする。
$x\in \overline{A}\setminus A$ をとる。
このとき、$\forall \epsilon >0(Cl(B_{d_1}(x,\epsilon))\cap A\neq\emptyset))$
とする。このとき、
$U_\epsilon=[Cl(B_{d_1}(x,\epsilon))]^c$
とする。
このとき、$\{x\}=\cap_{\epsilon\in {\mathbb R}_{>0}}Cl(B_{d_1}(x,\epsilon))$
($X$ がハウスドルフ空間であることと同値の主張になります。こちらを見てください。)
であるから、${\mathbb R}\setminus\{x\}=\cup_{x\in {\mathbb R}_{>0}}U_\epsilon$
となる。
よって、$\mathcal{U}=\{U_\epsilon|\epsilon>0\}$
は $A$ の開被覆となります。

$\mathcal{V}=\{U_{\epsilon_i}|i=1,2,\cdots, n\}$ は 
$\mathcal{U}$ の任意の有限部分集合とする。
$\epsilon=\min\{\epsilon_i|i=1,\cdots, n\}$ とする。このとき、
$$(\cup\mathcal{V})^c=\cap_{i=1}^nCl(B_{d_1}(x,\epsilon_i))=Cl(B_{d_1}(x,\epsilon))$$

よって、$\cup\mathcal{V}=U_\epsilon$ となります。
$Cl(B_{d_1}(x,\epsilon))\cap A\neq \emptyset$ であり、
$A\setminus U_\epsilon\neq\emptyset$ つまり、$A\not\subset\cup\mathcal{V}$ であるから、
$\mathcal{V}$ は $A$ の開被覆にならないので、
$\mathcal{U}$ は有限部分被覆をもたないことになります。
ゆえに $A$ はコンパクトではありません。$\Box$

${\mathbb R}$ のコンパクト集合はどんなものがあるでしょうか。

最後に次の定理を示します。

定理13.8
閉区間 $[0,1]$ はコンパクト集合

(証明) $[0,1]$ がコンパクトでないとする。
$\mathcal{U}$ が $[0,1]$ の開被覆で、どんな有限部分集合も
被覆にならないとする。

$[0,1/2],[1/2,1]$ のうち、どちらかは、有限部分被覆を持ちません。
もし、両方とも部分被覆を持つとすると、
それらを合わせて、$[0,1]$ の有限部分被覆を持つからです。

よって、それを $[a_1,b_1]$ とします。
また、$[a_1,\frac{a_1+b_1}{2}],[\frac{a_1+b_1}{2},b_1]$ のうち、
どちらかは有限部分被覆を持たないことになります。もし持つとすると、
それらを合わせて、$[a_1,b_1]$ の有限部分被覆をもちます。
それを $[a_2,b_2]$ とします。
このようにして、$[a_1,b_1]\supset [a_2,a_2]\supset [a_3,b_3]\supset \cdots $
を作っていきます。
$[a_n,b_n]\supset[a_{n+1},b_{n+1}]$ は、有限部分被覆を持ちません。

このとき、$a_n$ は単調増加であり、$b_n$ は単調減少です。
$0\le a_n\le b_n\le 1$ であるから、数列 $a_n,b_n$ は実数列の条件から
収束します。
$\text{diam}([a_n,b_n])=|a_n-b_n|=\frac{1}{2^n}\to 0$ であるから、
$a_n,b_n$ は同じ実数 $x$ に収束します。

このとき、$x\in U\in \mathcal{U}$ となる開集合 $U$ が存在して、
$x\in B_{d_1}(x,\epsilon)\subset U$ となる $\epsilon$ も存在します。
また、$1/2^n\to 0$ であるから、$1/2^{n}<\epsilon$ となる自然数 $n$ が
存在するから、
$[a_n,b_n]\subset B_{d_1}(x,\epsilon)\subset U$ です。
しかし、$[a_n,b_n]$ は $\mathcal{U}$ の有限部分被覆 $\{U\}$ が
存在することになります。これは、$[a_n,b_n]$ が有限部分被覆が存在しないことに
反します。

ゆえに、$\mathcal{U}$ は有限部分被覆を持つということになり、
$[0,1]$ はコンパクト集合ということになります。$\Box$

2022年1月27日木曜日

トポロジー入門(第12回)

[場所:オンライン(月曜日3限)]



今回は、連結性の残りと分離公理についてやりました。

連結性

連結に対して、連結成分があったように、
弧状連結に対しても弧状連結成分があります。
位相空間に対して、$a\in X$ に対して
弧 $f:[0,1]=I\to X$ で $f(0)=a$ となるもので、
$f(1)$ を集めたもの $\{f(1)|f:I\to X,f(0)=a\}$ を
$a$ の弧状連結成分といい、$C_{\text{path}}(a)$ とかきます。

例えば、前回の定理11.8で構成した$I\cup J$ は
$I, J$ がそれぞれが弧状連結成分になります。
ゆえに、弧状連結成分は閉集合になるとは限らず、開集合になるとも
限りません。
また、$a$ の弧状連結成分は、$a$ を含む弧状連結集合の中で最大のもの
となります。

また、次の連結性についても解説しました。

定義12.3
位相空間$(X,\mathcal{O})$ が $\forall x\in X$ と、
任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
ある連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$U\subset V$ を
満たすとき、$(X,\mathcal{O})$ は局所連結であるという。

局所連結であることは、
基本近傍系として連結なものが取れることと同値になります。
特に、近傍として連結なものが取れる必要があります。

同様に、以下の定義をすることもできます。

定義12.4
位相空間$(X,\mathcal{O})$ が $\forall x\in X$ と、
任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
ある弧状連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$U\subset V$ を
満たすとき、$(X,\mathcal{O})$ は局所弧状連結であるという。


連結ならば弧状連結であり、
局所連結ならば局所弧状連結になることも同様です。
また、同様に、各点において弧状連結な近傍が取れます。
これ以外に関係がないのかと思われるかもしれませんが
以下の定理があります。

定理12.1
連結かつ局所弧状連結なら弧状連結である。

証明
$a\in X$ に対して、$C_{\text{path}}(a)$ が開かつ閉集合であることを示せば、
連結性から $C_{\text{path}}(a)=X$ となり $X$ が弧状連結であることがわかります。
$\forall x\in C_{\text{path}}(a)$ に対して、弧状連結な近傍が取れるので、
それを $V$ とすると、最大性から、
$V\subset C_{\text{path}}(x)$ であることがわかります。
よって、$x\in C_{\text{path}}(a)$ は内点であるから、$C_{\text{path}}(a)$ は
開集合となります。

$x\in\overline{ C_{\text{path}}(a)}$ とします。
任意の近傍 $V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
弧状連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、
$U\subset V$ であることがわかります。
ここで、$U\cap C_{\text{path}}(a)\neq \emptyset$
であり、$U\cup C_{\text{path}}(a)$ も弧状連結であるから、
弧状連結成分の最大性から、$U\subset C_{\text{path}}(a)$ が成り立ちます。
特に、$x\in C_{\text{path}}(a)$ が成り立ちます。
よって、$\overline{C_{\text{path}}(a)}\subset C_{\text{path}}(a)$ であることがわかります。
また、$C_{\text{path}}(a)\subset \overline{C_{\text{path}}(a)}$ であることから、
$\overline{C_{\text{path}}(a)}=C_{\text{path}}(a)$ であることがわかります。
よって、$C_{\text{path}}(a)$ が閉集合であることがわかります。

よって、$C_{\text{path}}(a)$ が開かつ閉集合であることがわかりました。$\Box$

以上より、連結性を4つ紹介して、その間に成り立つ定理について
まとめましたが、実際、以下のようにそれらが成り立つ位相空間が存在します。
以下にそのような位相空間の例を挙げておきます。


 連結局所連結弧状連結局所弧状連結
1点 
(※) ◯  ◯ ×
ワルシャワ円××
${\mathbb L}’$××
定理11.8×××

連結性を満たさない例については、各例に1点を加えれば実現できますので省略しています。
ワルシャワ円(ワルシャワサークル)とは、定理11.8(トポロジストのサインカーブ)の $I,J$ 
をつなげて連結にしたものを言います。こちらにその絵があります。
(※) の空間は ${\mathbb R}$ 上の補可算位相空間の cone があります。
位相空間 $X$ のcone $C(X)$とは $X\times I$ に $X\times \{1\}$ を1点に
潰して得られる商位相空間です。

また、補可算位相空間とは、開集合として補集合が高々可算個の点集合のものとする位相空間で、
${\mathbb R}$ 上で考えたものは、連結かつ局所連結だが、弧状連結ではなく局所弧状連結ではない空間になります。そのconeをとることで弧状連結だけが満たされて、
この条件を満たす空間ということになります。

また、${\mathbb L}$ は長い直線と呼ばれ、$[0,1)$ を非可算無限個つなげてできる
位相空間です。可算無限個つなげてできる位相空間は${\mathbb R}$ と同相になります。
それもこちらに解説があります。
ここで、 ${\mathbb L}'$ は無限遠点 $\{\infty\}$ を付け加えてできる空間になります。
付け加える(コンパクト化と言います)ことはまだ習っていませんが、$(0,1)$ に
1を加えて $(0,1]$ を作る操作だと考えてください。


分離公理

後半はハウスドルフ空間についておこないました。
位相空間の部分集合 $A,B$ が開集合によって分離されるとは、
$U,V$ を開集合として、$A\subset U$, $V\subset B$ を満たし、$U\cap V=\emptyset$
を満たすことを言います。

定義12.5
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の任意の相異なる点 $p,q\in X$ に対して、
開集合 $U,V$ が存在して、$p\in U,q\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$
を満たす時、 $X$ はハウスドルフ空間という。

つまり、任意の相異なる2点が開集合によって分離される時にハウスドルフ空間と
言うのです。
公理「任意の相異なる2点が開集合によって分離される」を $T_2$ 公理ともいうので、
ハウスドルフ空間のことを $T_2$ 空間ということもあります。

例12.4
距離空間はハウスドルフ空間になります。
距離空間の相異なる点 $p,q\in X$ に対して、
$2\delta=d(p,q)$ とすることで、$p,q$ には、$B_d(p,\delta)$ と $B_d(q,\delta)$
が $p,q$ を分離することがわかります。

例12.5
$n$ 点集合が離散位相を持つならそれはハウスドルフ空間であることもすぐわかります。
逆に、有限点集合がハウスドルフなら離散位相空間になります。

よって、有限点集合上の離散位相ではないものは皆 $T_2$ 公理を満たさないことになります。

また、ハウスドルフ空間は位相的性質であることは簡単にわかります。

定理12.3 
ハウスドルフ性は位相的性質である。

また、ハウスドルフ空間の同値な言い換えがsいくつかあります。

定理12.3, 12.4
ハウスドルフ空間であることは以下のそれぞれと同値
  • $\Delta=\{(x,x)|x\in X\}$ が閉集合である。
  • $\{x\}=\cap \{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$ である。

(証明)ハウスドルフ空間であれば、$(p,q)\in \Delta^c$ は、$p\neq q$ であるから、
開集合 $U,V$ が存在して、$p\in U,q\in V$ を満たし、$U\cap V=\emptyset$ を満たす。
よって、$U\times V\subset \Delta^c$ であるから、$(p,q)\in \Delta^c$ は
内点。つまり$\Delta^c$ は閉集合。

逆に$\Delta^c$が閉集合であれば、$p\neq q\in X$ に対して、
$(p,q)\in W\subset \Delta^c$ となる開集合 $W$ が存在して、
直積位相から、$(p,q)\subset  U\times V\subset W$ が成り立ちます。
$U\times U\cap \Delta^c=\emptyset$ であるから、
$U\cap V=\emptyset$ となり、$X$ はハウスドルフ空間であることがわかります。

$X$ がハウスドルフ空間であるとします。
このとき、$x\in X$ に対して $x\neq y$ となる $y$ を取ります。
この時、開集合$U,V$ が存在して、$x\in U,y\in V$ とし、
$U\cap V=\emptyset$ となります。$x\in U\subset V^c$ であり、
$V^c$ は閉集合であるから、
$x\in U\subset \overline{U}\subset V^c$ であるから、
$y\not\in \overline{U}$ であるから特に、
$y\not\in \{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$
となる。

に、$\forall x\in X$ に対して、$\{x\}=\cap\{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$
が成り立つとすると、$y\neq y$ とすると、
$W\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$y\not\in \overline{W}$ となります。
$V=(\overline{W})^c$ また、$x\in U\subset W$ となる開集合 $U$ が存在するので、
$x\in U$ かつ $y\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ となります。
よって$X$ がハウスドルフ空間となります。$\Box$


また、次の定理を示しました。

定理12.5
$X$ を位相空間、$Y$ ハウスドルフ空間とする。
$F:G:X\to Y$ を連続写像とする。今、$D\subset X$ を稠密集合とする。
$F|_{D}=G|_{D}$ であるとすると、$F=G$ が成り立つ。

関数 $F,G$ が等しいというのは、$\forall x\in X$ に対して、
$F(x)=G(x)$ となることを意味します。

(証明) 
$F,G:X\to Y$ に対して、ハウスドルフ空間 $Y$ に対して、$F\neq G$
であるとします。
この時、$F(x)\neq G(x)$ となる $x\in X$ が存在します。
ハウスドルフ性から、$Y$ の開集合 $U,V$ が存在して、$F(x)\in U$, $G(x)\in V$
かつ $U\cap V=\emptyset$ となります。

$x\in F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ であり、$F,G$ が連続であることから、
$F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ は $X$ の開集合となります。

よって、$F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)\cap D\neq \emptyset$ ですから、
$d\in D$ であって、$d\in F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ を満たします。
よって、$F(d)\in U$ かつ $G(d)\in V$ となります。$U\cap V=\emptyset$ であることから
少なくとも、$F(d)\neq G(d)$ であるから $F|_D\neq G|_D$ となります。$\Box$

この定理から、$X$ 上の ${\mathbb R}$ に値をもつ連続関数の集合 $C(X)$
の濃度を決定することができます。

$X={\mathbb R}$ とすると、可算集合 ${\mathbb Q}$ からの連続関数
によって一意的に決定されるから、

$$|C({\mathbb R})|\le |{\mathbb R}^{\mathbb Q}|= (2^{\aleph_0})^{\aleph_0}\le 2^{\aleph_0\times \aleph_0}\le 2^{\aleph_0}$$

となります。一方、$C({\mathbb R})$ には定数関数が ${\mathbb R}$ の分だけ存在するので、
$|C({\mathbb R})|\ge |{\mathbb R}|=2^{\aleph_0}$ となり、
$|C({\mathbb R})|=2^{\aleph_0}=|{\mathbb R}|$ が成り立ちます。

つまり、$C({\mathbb R})$ は 連続体濃度存在することがわかります。


又、ハウスドルフ空間に対して以下の性質が成り立ちます。

定理12.6
ハウスドルフ空間の任意の部分空間もハウスドルフ空間である。

定理12.7
全ての因子空間がハウスドルフ空間であるような任意の直積位相空間も
ハウスドルフ空間である。

これらの証明はそれほど難しくないので、証明はここでは省略します。

また、$T_2$ 公理を弱くした次の $T_1$ 公理もあります。

定義12.6
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ が相異なる $x,y$ に対して、
$\exists U,V\in \mathcal{O}((x\in U,y\not\in U)\wedge(x\not\in V,y\in V))$
$T_1$ 公理と言う。$T_1$ 公理を満たす空間を
$T_1$ 空間という。

$T_1$ 公理は、$\exists U,V\in \mathcal{O}(x\in U,y\not\in U))$
というだけで同じことです。
というのも、$x,y$ を $y,x$ にするだけで、もう一つの条件も満たすからです。

ここで $T_1$ 空間には次の性質があります。

定理12.8
$(X,\mathcal{O})$ が $T_1$ 空間であることと、 $X$ の各点が閉集合であることは
同値である。


(証明) $X$ が$T_1$ 空間であるとします。
$\forall x\in  X$ に対して、$y\in\{x\}^c$ をとります。
この時、$\exists U\in\mathcal{O}$ が存在して、$y\in U$ かつ$x\not\in U$ 
つまり、$U\subset \{x\}^c$ となる。つまり、$y$ は $\{x\}^c$ の内点。
よって、$\{x\}^c$ は開集合であるから、$x$ は閉集合となります。

$\forall x\in X$ に対して $\{x\}$ が閉集合であるとします。
このとき、$x,y\in X $を $x\neq y$ とします。
$U=\{y\}^c$ と $V=\{x\}^c$ とおきます。
この時、$U,V$ は開集合であり、$x\in U,y\not\in U$ かつ $y\in V,x\not\in V$
となります。つまり、$X$ は $T_1$ 空間となります。 $\Box$

例12.8
$T_1$ 空間であってハウスドルフ空間ではないものが存在します。
例えば、無限集合上の補有限位相 $(X,\mathcal{O}_{\text{cf}})$ を取りますと、
$(X,\mathcal{O}_{\text{cf}})$ は $T_1$ 空間にはなりますが、
ハウスドルフ空間にはなりません。
実際、空ではない任意の開集合が交わりを持つことがわかります。

2022年1月5日水曜日

トポロジー入門(第11回)

[場所オンライン(月曜日3限)]


今回は、連結性と弧状連結性についてやりました。

連結性
位相空間が連結であることは前回定義しました。

定義10.3
位相空間 $X$ が空でも $X$ でもない開集合 $U,V$ 
を用いて、$X=U\sqcup V$ と表せないとき、 $X$ は
連結といい、$X$ が連結ではないとき
$X$ は不連結という。

この定義を次のように言い換えることができます。

定理10.6
$X$ が連結であることは、$X$ の開かつ閉集合は $X$ もしくは 
$\emptyset$ のみであることと同値である。

となる。
連結集合について定義しておきます。

定義11.1
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。
$A\subset X$ が連結集合であるとは、相対位相
$(A,\mathcal{O}_A)$ が連結空間であることとして
定義する。

つまり、このことは言い換えれば、

任意の開集合 $U,V\in \mathcal{O}$ に対して、
$A\subset U\cup V$ かつ
$A\cap U\cap V=\emptyset$ 
なら、$A\subset U$ もしくは $A\subset V$
ということになります。

これは、
$(A\cap U)\cup(A\cap V)=A$ であることは、$A\subset U\cup V$ と同値
$(A\cap U)\cap (A\cap V)=\emptyset$ であることは $A\cap U\cap V=\emptyset$ と同値
$A\cap U=A$ であることは $A\subset U$ と同値
$A\cap V=A$であることは $A\subset V$ と同値
であることからわかります。

最終的に、$A\subset U$ もしくは $A\subset V$ が成り立つのですが、
このうちどちらかしか成り立ちません。

いくつかの例の前に以下を示しておきます。

定理11.1
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})$ は連結である。

(証明) ${\mathbb R}$ が連結でないとします。
${\mathbb R}=U\sqcup V$ となる空ではない開集合 $U,V$ が
存在することになります。
$a\in U$ かつ $b\in V$ をとり、
$a<b$ としておきます。もしそうでなかったら、$U,V$ の役目を入れ替えれば
実現出来ます。
$c=\sup\{x\in U|x\le b\}$
とおきましょう。
このとき、$\epsilon >0$ が存在して、$B_{d_1}(c,2\epsilon )\subset U$ となります。
しかし、$c+\epsilon\in U$ であり、$c+\epsilon<b$ であることから、
$c=\sup\{x\in U|x\le b\}$ であることに反します。
よって、$c\in V$ ということになります。
同様に、$\delta>0$ が存在して、$B_{d_1}(c,\delta)\subset V$  となり
$(c-\delta,c]\subset V$ が成り立ちます。
これは、$c$ が$\{x\in U|x\le b\}$ の上限であることに反します。
もし上限であるなら、$\forall \epsilon>0$ に対して、$c-\epsilon <x\le c$
となる$x\in U$ が存在するからです。
よって $c$ は $U,V$ のどちらも含まれないので ${\mathbb R}=U\cup V$
であることに反します。
よって、${\mathbb R}$ が連結になるということになります。$\Box$

ここで次の定理を示しておきましょう。

定理11.2
$X,Y$ を位相空間とする。$f:X\to Y$ を全射連続写像とする。
$X$ が連結なら $Y$ も連結である。

(証明) $U\subset Y$ を開かつ閉集合とします。
このとき、$f^{-1}(U)$ も開かつ閉集合です。
$X$ は連結なので 
$f^{-1}(U)=\emptyset$ か $f^{-1}(U)=X$ となります。
$Y$ が全射であることから、$U=\emptyset$ もしくは $Y$ となります。
これは $Y$ が連結であることを意味します。$\Box$

このことから、$f$ が全射でなくても、$X$ が連結なら
$f(X)$ も連結であることが分かります。

また、$A\subset X$ が連結集合であるなら、$f(A)$ は連結
ということになります。

つまり、
連結集合の連続写像による像(連続像といいます)は連結ということになります。

このことから、連結性は位相的性質になることも分かります。
なぜなら
$f:X\to Y$ が同相であるとします。
このとき、$X$ が連結とすると、定理11.2から $Y$ も連結になります。
よって、連結性は位相的性質になるからです。

次の定義をしましょう。

定義11.2
$a\in X$ に対して、$a$ を含む連結集合の内最大のものを
$a$ の連結成分といい、$C_X(a)$ と書く。
また簡単に $C(a)$ と書くこともある。

$a\sim x$ は同じ連結成分に属するとして $X$ 上に同値関係を定めることができます。
そうすると、
$X$ のこの同値関係の同値類によって、分解
$$X=\sqcup_{\lambda\in \Lambda}C_X(a_\lambda)$$
を与えることができます。
これを連結成分分解といいます。

$X$ が連結であることは、$X=C_X(a)$
のように$X$ の任意の元がただ1つの連結成分に属することと同値になります。

ここで次の定理を示しておきます。

命題11.2
$A\subset X$ が開かつ閉集合であれば、
$A$ は $X$ の連結成分のいくつかの和集合となる。

(証明) $A$ が開かつ閉集合とします。このとき、
$\forall a\in A$ に対して、$A\cap C_X(a)\subset C_X(a)$
より、$A\cap C_X(a)$ は $C_X(a)$ の開かつ閉集合になります。
$C_X(a)$ は連結であり、$a\in A\cap C_X(a)$ は空ではないから
$A\cap C_X(a)=C_X(a)$ となります。
よって、$C_X(a)\subset A$ ととなり、よって、$\forall a\in A$ に対して、$C_X(a)\subset A$ であるから
$\cup_{a\in A}C_X(a)\subset A$ また、$A\subset \cup_{a\in A}C_X(a)$
であるから
$$A=\cup_{a\in A}C_X(a)$$
となり、$A$ はいくつかの連結成分の和集合となります。$\Box$

この証明の途中で用いたことを復習しておきます。

相対位相の閉集合について
$A\subset X$ での相対位相において、
$A$ における開集合は $X$ の開集合 $U$ を用いて $A\cap U$ と書き表されます。

(証明) $A$ における閉集合 $F$ は、$A-F=A\cap F^c$ より $A$ における開集合だから、
$A\cap F^c=A\cap U$ となる $X$ の開集合 $U$ が存在します。
よって、この補集合を取ると、
$A^c\cup F=A^c\cup U^c$
$A^c\cap F=\emptyset$ であるから、$A^c$ の部分を取ると、
$F=(A^c\cup U^c)\cap A=(A^c\cap A)\cup (U^c\cap A)=A\cap U^c$
よって、$A$ 上の閉集合は、$X$ のある閉集合 $G$ を用いて、
$A\cap G$ とかけることがわかります。

次の定理を示しましょう。

定理11.4
連結集合 $A$ に対して、$A\subset B\subset \overline{A}$ 
を満たす任意の集合 $B$ は連結である。

(証明) $B\subset U\cup V$ を満たす $X$ の開集合
が $B\cap U\cap V=\emptyset$ を満たすとします。
このとき、
$B\cap U\neq \emptyset$ を満たすと仮定します。
このとき、 $B\subset \overline{A}$ であるから
$\overline{A}\cap U\neq \emptyset$ です。
$x\in\overline{A}\cap U$ をとります。
このとき、$U$ は開集合だから $U\in \mathcal{N}(x)$ となります。
よって、$A\cap U\neq \emptyset$ を満たします。
$A$ は連結だから、
$A\subset U\cup V$ かつ $A\cap U\cap V=\emptyset$ より
$A\subset U$ もしくは $A\subset V$ です。
しかし、$A\cap U\neq \emptyset$ であるから $A\subset U$ です。
よって、$A\cap V=\emptyset$ であるから $\overline{A}\cap V=\emptyset$
である。つまり、$B\cap V=\emptyset$ です。
このことから、$B\subset U$ が分かります。

また、$B\cap V\neq \emptyset$ である場合からも、
同じように $B\subset V$ が証明することができます。$\Box$

この定理から次が成り立ちます。

定理11.5
任意の $a\in X$ に対して、連結成分 $C(a)$ は閉集合である。

(証明) $C(a)\subset \overline{C(a)}$ が成り立つ。
また定理11.4から $\overline{C(a)}$ は連結になります。
連結成分の最大性により、$\overline{C(a)}\subset C(a)$ 
が成り立ちます。この包含関係から、
$C(a)=\overline{C(a)}$ が成り立つ、つまり $C(a)$ が閉集合になります。

$(a,b)\subset {\mathbb R}$ は ${\mathbb R}$ と同相であるから、
連結は位相的性質なので、$(a,b)$ も連結性になります。
この閉包 $[a,b]$ も同相になります。

命題11.3
$\forall r\in {\mathbb Q}$ に対して、$r$ の連結成分 $C(r)$ について
$C(r)=\{r\}$ が成り立ちます。

(証明) $\forall r,s\in {\mathbb Q}$ に対して、
$r<s$ に対して、$r<q<s$ となる無理数 $q$ が存在して、
${\mathbb Q}\cap (-\infty,q)={\mathbb Q}\cap (-\infty,q]$
は開かつ閉集合であるから、${\mathbb Q}\cap (-\infty,q]$ は
連結成分の和集合つまり、$C(r)\subset {\mathbb Q}\cap (-\infty,q]$
であり、
同様に、$C(s)\subset {\mathbb Q}\cap [q,\infty)$
であるから、$C(r)\cap C(s)=\emptyset$ であるから、
$\forall r\in{\mathbb Q}$ の連結成分は $r$ のみとなります。$\Box$

このように、$\forall a\in X$ に対して、$C_X(a)=\{a\}$
であるとき、$X$ は完全不連結であるという。

よって、$({\mathbb Q},\mathcal{O}_{d_1})$ は完全不連結であり、
ゾルゲンフライ直線 $({\mathbb R},\mathcal{O}_{l})$ も完全不連結となります。

また、連結性の最後に中間値の定理を示しました。

定理11.6
位相空間 $X$ と連続関数 $f:X\to {\mathbb R}$ をとる。
$X$ の連結な部分集合 $A$ に対して、
$a,b\in A$ が $f(a)<f(b)$ を満たすとする。
このとき、$f(a)<\forall  c <f(b)$ となる $c$ に対して、
$f(x)=c$ となる $x\in A$ が存在する。

(証明)$A$ は連結なので、$f(A)\subset {\mathbb R}$ も連結であり、
$f(a),f(b)\in f(A)$ が成り立ちます。
よって、このとき、$f(a)<c<f(b)$ が $f(x)=c$ となる $x$ が存在しないとする。
このとき、$B=f(A)\cap (-\infty, c)=f(A)\cap (-\infty ,c]$ より、
$B$ は空でも全体でもない $f(A)$ の開かつ閉集合であるから矛盾する。
よって、$f(x)=c$ となる $x\in A$ が存在する。$\Box$


弧状連結性
弧状連結の定理をしましょう。

定義11.4
位相空間 $X$ が弧状連結であるとは以下を満たすことを意味します。
$\forall a,b\in X$ に対して、ある連続写像 $f:I\to X$ が
存在して、$f(0)=a$ かつ $f(1)=b$ を満たす。

ここで、$I$ は閉区間 $[0,1]$ です。
すぐにわかるのは次の定理です。

定理11.7
弧状連結なら連結である。

(証明)$X$ が弧状連結であるとします。
このとき、$\forall a,b \in X$ に対して、連続写像 $f:I\to X$ が存在して
$f(0)=a$ かつ $f(1)=b$ を満たし、つまり、$a,b\in f(I)\subset X$ を満たします。
$I$ が連結であるから、$f(I)$ も連結になり、$f(I)\subset C(b)$ であるから
$a$ は $b$ の連結成分に属します。
つまり、$a\in C(b)$ であり、つまり $X\subset C(b)$ より
$X=C(b)$ となります。つまり $X$ は連結となります。$\Box$

この定理の逆は一般には成り立ちません。
つまり、連結だが、弧状連結であるものが存在します。

定理11.8
$J=\left\{\left(x,\sin\frac{1}{x}\right)|x\in {\mathbb R}_{>0}\right\}$
とし、
$I=\{(0,t)|-1\le t\le 1\}$
とする。このとき $X=I\cup J$ は連結であるが、弧状連結ではない。

$J$ は下の図のようなグラフになっており、
$I$ はこの $y$ -軸の $[-1,1]$ の区間です。




(証明)連結性について
$J$ は ${\mathbb R}_{>0}$ 上の連続関数 $\sin \frac{1}{x}$ のグラフであり
連続像になります。よって、定理11.2から $J$ は連結。
また、$\forall (0,t)\in I$ に対して、数列 $\left(\frac{1}{2n\pi+\text{arcsin}t},t\right)$
は、$J$ 上の点列であり、$n\to \infty$ において $(0,t)$ に収束するので、
$(0,t)\in \overline{J}$ となります。
これは、$I\cup J\subset \overline{J}$ であることを示しており、
$$I\subset I\cup J\subset \overline{J}$$
から、定理11.4 から $X=I\cup J$ も連結ということになります。

非弧状連結について
$O\in X$ を ${\mathbb R}^2$ の原点とし $A=(\frac{1}{\pi},0)$ がある連続写像
$f:I\to X$ によって $f(0)=O$ かつ $f(1)=A$ とならないことを示します。
もし結べるとすると、連続写像 $f:[0,1]\to X$ が存在して、
$f(0)=O$かつ $f(1)=A$ を満たします。
そうすると、今、$f^{-1}(O)=0$ と仮定しておきます。
このとき、
$B_{d_2}(O,\frac{1}{2})$をとり、
$0\in f^{-1}(B_{d_2}(O,\frac{1}{2}))$ の近傍$[0,\delta)$ が存在して、
$[0,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_2}(O,\frac{1}{2}))$を満たします。

ここで、$B$ は下の円の内側になります。



そうすると $f^{-1}(O)=0$ と仮定したことから $\text{pr}_1(f([0,\delta)))=[0,a)$ となる
$a>0$ が存在します。
よって、$\frac{2}{(4n+1)\pi}<a$ を満たす$n$ が存在し、
$(\frac{2}{(4n+1)\pi},1)\in f([0,\delta))\subset B$ を満たします。
しかし、$(\frac{2}{(4n+1)\pi},1)\not\in B$ であるので、
矛盾します。
よって、$X$ は弧状連結ではないということになります。$\Box$ 

途中で、$f^{-1}(O)=0$ と仮定しましたが、
これは簡単に証明できます。$\{t\in I|f(t)=O\}$ となるものの
$\sup$ を $t_0$ を取り、$[t_0,1]$ を $[0,1]$ に線形に引き伸ばしたものを
$f$ に合成したものを再び $f$ とおけば良いです。