2017年11月27日月曜日

トポロジー入門演習(第7回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今日は、
  • 開基について
についてのプリントを配りましたが、トポロジー入門の講義の方では、
まだやっていない部分だったようです。
私の勘違いにより、少し先取りして演習で取り上げてしまいました。
来週は一つ戻って、相対位相などについての演習をします。

とりあえず、ここでは、開基について書いておきます。

ベクトル空間には、基底の概念が重要でした。
位相にも開基とよばれる概念が重要となります。


線形代数では、

ベクトル空間基底とは、ベクトル空間の部分集合で、
ベクトル空間の任意のベクトルはいくつかの基底線形結合によって得られる。


位相分野では、

位相空間開基とは、位相の部分集合で、
位相の任意の開集合はいくつかの開基和集合によって得られる。


との類似があります。
(ただ、任意のベクトルは基底の線形結合によって一意的に書くことができますが、
任意の開集合は開基の和集合によって一意的に書けるわけではありません。)

つまり、開基とは位相空間の基底の役割を果たしています。

ここで、開基の定義をしておきます。

定義(開基)
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。
$\mathcal{B}\subset \mathcal{O}$ が開基であるとは、
$\forall U\in \mathcal{O}$ に対して、$\mathcal{S}_U\subset \mathcal{B}$ が存在して、
$U=\cup_{V\in \mathcal{S}_U}V$ となることをいう。


$\mathcal{B}$ が開基かどうかわかる判定条件として次があります。

$U\in \mathcal{O}$ に対して、$\forall x\in U$ に対して、
$V\in\mathcal{B}$ が存在して、$x\in V\subset U$ となること。

です。

例1
$(X,\mathcal{O}_d)$ を距離位相とします。
このとき、任意の開集合 $U\in \mathcal{O}$ に対して、
距離位相の定義から、$\epsilon>0$ が存在して、$x\in B_d(x,\epsilon)\subset U$ となります。
開基であることの判定条件から、これは、
$\{B_d(x,\epsilon)|x\in X,\epsilon>0\}$ が、$\mathcal{O}_d$ の開基である
ことを意味しています。


例2
$(X.\mathcal{O})$ を離散位相とします。
このとき、$\mathcal{B}=\{\{x\}|x\in X\}$ とすると、
これは、$\mathcal{O}$ の部分集合であり、
任意の $A\in \mathcal{O}=\mathcal{P}(X)$ とすると、
$A=\cup_{x\in A}\{x\}$ であるので、$\mathcal{B}$ も離散位相 $X$ の
開基となります。


このように、位相の部分集合で、その和集合を取れば、位相の全ての開集合を
復元することができるとき、その部分集合を開基と言います。

2017年11月14日火曜日

トポロジー入門演習(第6回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今日はテストをしてもらいました。
これから採点します。

今回は、近傍の定義について少し説明を加えました。

$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とします。


近傍
$V\subset X$ が $x$ の近傍であるとは、$U\in \mathcal{O}$ が存在し $x\in U\subset V$ となることである。


つまり、以下が同値となります。(1) は上の定義を言葉で言い換えたもの。

(1) $x$ を含むような開集合が $V$ に包まれる。
(2) $x\in V^\circ$ である。
(3) $x$ が $V$ の内点である。

(証明)
(1) $\Rightarrow$ (2)
$x$ を含むような開集合 $A$ が $V$ に包まれているのだから、
$x\in A\subset V$ である。
また、$V^\circ$ は $V$ に包まれる開集合で最大のものだから、
$A\subset V^\circ$ であり、とくに、$x\in V^\circ$ である。

(2) $\Rightarrow$ (1)
$x\in V^\circ \subset V$ であり、$V^\circ$ が $V$ に包まれ、$x$ を
含む開集合である。

(2) $\Leftrightarrow$ (3)
$x$ が $V$ の内点であることは、$x\in V^\circ$ であることの定義。

位相 $\mathcal{O}$ 上の開集合と閉集合について
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の部分集合 $A$ が開集合であるための必要充分条件をまとめました。
下のどれもが $A$ が開集合であることと必要充分です。
  • $A\in \mathcal{O}$ である。
  • $A=A^\circ$  であること。
  • $\forall x\in A$ に対して、$\exists U\in \mathcal{O}$ があり、$x\in A\subset U$ が成り立つ。
  • $\forall x\in A$ に対して、$A\in \mathcal{N}(x)$  ($x$ の近傍) が成り立つ。
$\mathcal{O}$ が距離位相 $\mathcal{O}_d$ であるときには、
  • $\forall x\in A$ に対して、$\epsilon>0$ が存在して、$x\in B_d(x,\epsilon)\subset  U$ が成り立つ。
また、$B$ が閉集合であることは、
  • $B^c$ ($B$ の補集合) が開集合であること。
を使うことで、閉集合の条件を開集合の条件として言い換えることができます。
しかし、よく考えず、$B\not\in \mathcal{O}$ や $B^\circ \neq B$ ということは意味しません。


注意してください。

例えば、上の2番目の条件に相当する、$B$ が閉集合であるための条件は、

  • $\bar{B}=B$ であること


となります。

なので、$B$ が開集合でないからといって閉集合というわけではありません。
あくまで、閉集合は、補集合が開集合になっている集合をいいます。

つまり、位相空間の任意の部分集合は以下のように4つのパターンに分けられます。

開集合である 開集合でない
閉集合である A B
閉集合でない C D

上のA, B, C, D に当てはまる例として以下のものがあります。

A 空集合や全体集合
B ユークリッド距離空間の閉円盤
C ユークリッド距離空間の開円盤
D ${\mathbb R}$ 上の通常の距離位相としての半開区間 $(a,b]$

Dの例としては、$\{0,1\}$ 上の密着位相 $\{\emptyset, \{0,1\}\}$ における一点集合 $\{0\}$ もその例です。

2017年11月7日火曜日

トポロジー入門演習(第5回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今回は、連続性についての課題でしたが、4の課題を取り組んでもらいました。
課題4-2-4の共通部分と和集合が逆になっていました。

課題4-1
近傍について以下を示せ。
(1)   ${\mathbb R}$ 上の距離位相 $\mathcal{O}_d$ において、$\mathcal{N}(x)$ には
いくらでも直径が小さい近傍が存在することを示せ。
(2) $U$が $X$ の開集合であることと$\forall x\in U$ に対して、$U\in \mathcal{N}(x)$
であることは同値であることを示せ。

(1) 距離空間において部分集合 $A$ の直径は、$\text{diam}(A)=\sup\{d(x,y)|x,y\in A\}$ と定義されます。
この $\sup$ は存在すれば、$A$ は有界といい、そうでない場合は $\text{diam}(A)=\infty$ となります。

存在を示せば良いので、全ての近傍を考える必要はありません。
例えば、 $\epsilon$-近傍は、$B_d(x,\epsilon)$ です。この近傍の直径は $2\epsilon$ です。

また、いくらでも小さい....のような言葉を証明するには、
$\forall t>0$ に対して、$t$ より小さい直径の $\epsilon$-近傍を作ればよいことになります。

(2) 課題3-1-2 を思い出してください。
$A\in\mathcal{O}$ であることは、$\forall x\in A$ に対して、ある $U\in \mathcal{O}$ が存在して、$x\in U\subset A$ となることと同値。

でした。この後半の条件は、$U$ が $x$ の近傍になっていることを意味しています。

課題4-2
次の等式を示せ。
(1) $(A\cap B)^{\circ}=A^{\circ} \cap B^{\circ}$
(2) $\overline{A\cup B}=\overline{A}\cup \overline{B}$
また、以下が成り立たない例があるか?もしあれば、それが反例であることを示し、
そうでないなら証明を与えよ。
(3) $(A\cup B)^\circ=A^\circ \cup B^\circ$
(4) $\overline{(A\cap B)}=\overline{A} \cap \overline{B}$

集合の演算と 開集合をとる操作、閉集合をとる操作がどのような関係になるか?
という問題です。

(1,2) は成り立つので証明ができます。
証明の方針は、$\subset$ と $\supset$ を満たすことを示すことです。

$A$ の内点とは、$A$ の内部 $A^\circ$ の点のことです。
つまり内点は、$A$ に包まれる開集合全ての和集合なので、$x\in A^\circ$ なら、
${}^\exists U\subset A$ なる開集合 $U$ に対して $x\in U$ となります。
$x\in (A\cap B)^\cap$ なら、$x\in U\subset A\cap B$ となる開集合が存在する
ことになります。$A\cap B \subset A,B$ であるので、$x\in A^\circ$ かつ $x\in B^\circ$
となります。
逆の $\supset$ の方も示してください。

$A$ の触点とは、$A$ の閉包 $\bar{A}$ の点のことです。
つまり触点とは、$A$ を包む閉集合の共通集合なので、$x\in \bar{A}$ なら、
${}^\forall V\supset A$ なる閉集合 $V$ に対して、$x\in V$ となります。
これも上と同じように示すことができます。

(3,4)ですが、これらは一般に成り立ちません。
よく考えれば反例は思いつくと思います。
(この4は共通部分、和集合が逆になっていたので訂正して下さい。)


課題4-3
$B_d(x;\epsilon)=\{y|d(x,y)<\epsilon\}$を$x$での $\epsilon$-近傍という。
実数上の実数値関数 $f(x)$ の $x=a$ での連続性は、$\epsilon-\delta$ 論法によって
以下のような関係として定義されていた。
$\forall \epsilon,\exists\delta>0$($\forall x\in {\mathbb R}(|x-a|<\delta)\Rightarrow |f(x)-f(a)|<\epsilon$)
この命題を $\epsilon$-近傍と集合の記号 $\subset$ を用いてどのように書き換えよ。


例えば、$\forall x\in {\mathbb R}(|x-a|<\delta)$ であるような $x$ は、$x\in B_d(x;\epsilon)$ 
と言い換えられますね。
また、$U\subset V$ であることの定義は、$\forall x\in U\Rightarrow x\in V$ であること
なりますので、これを用いて、集合の言葉だけで連続性の定義を言い換えましょう。


最後は集積点・孤立点の問題です。
$x$ が $A$ の集積点とは、$x$ のいくらでも近くに、$x$ 以外の $A$ の点が
存在することをいいます。つまり、
$x$ の任意の近傍 $U$ で、$(U-x)\cap A\neq \emptyset $
$A$ の集積点の集合を $A^d$ とかいて、導集合と言います。

$x\in A$ が $A$ の孤立点とは、$x$ のある近くに、$x$ 以外の $A$ の点が
存在しないことをいいます。つまり
$x$ のある近傍 $U$ で、$(U-x)\cap A= \emptyset $

課題4-4
$(X,\mathcal{O})$を位相空間とする。$A\subset X$とする。
(1) $\bar{A}$は$A^d$と$A$の孤立点からなることを示せ。
(2) $X={\mathbb R}$とし、$\mathcal{O}$を通常のユークリッド距離位相とする。${\mathbb Q}$の閉包は${\mathbb R}$であることを示せ。
(3) 上の問題は、位相を変えると$\bar{{\mathbb Q}}={\mathbb Q}$ともなることを示せ。

(1) $x\in \bar{A}$ であることは、$\forall U$ で $x\in U$ に対して、
$U\cap A\neq \emptyset$ であるものを言います。
上の孤立点と集積点の定義からすぐわかると思います。

(2) $X$ が有理数全体とするとき、$X$ の閉包とは、$x\in U$ として $U\cap X\neq \emptyset$
となる点 $x$ 全体です。
$x$ が $X$ の閉包の元であることは、 $X$ を包む任意の閉集合 $F$ に $x$ が含まれる
ということです。

$F^c\neq \emptyset$ であると仮定します。
$F$ が閉集合であることから、$\forall y\in F^c$ に対して、$y$ の開近傍 $N$ が存在し、
$N\cap F^c=\emptyset$ となります。
${\mathbb R}$ の任意の開集合において、必ず有理数が存在することを示すことができれば、
$N\cap F^c=\emptyset$ に矛盾するので、$F^c=\emptyset$ となります。
つまり、$F={\mathbb R}$ となります。
ゆえに、$X$ を包む任意の閉集合は、 ${\mathbb R}$ となります。

上で不十分な部分を証明することで証明が完了します。

(3) ${\mathbb Q}$ の閉包が ${\mathbb Q}$ であるということは、${\mathbb Q}$ が
閉集合となるような位相を入れてください。
同じことですが、無理数全体の集合が開集合であるように定義して下さい。