2018年11月26日月曜日

トポロジー入門演習(第7回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今回は第7回目だったんですが、演習の予習をしている人が少なくなりました。
必ず自宅で問題を解くようにしてください。

開基
位相空間の理解のためには開基についてマスターする必要があります。

問題6-1
相空間 $(X,\mathcal{O})$ の $\mathcal{B}\subset \mathcal{O}$ について、以下の同値性を証明せよ。
(1) $\forall U\in \mathcal{O}$対してある$\mathcal{B}_U\subset \mathcal{B}$が存在して $U=\cup\mathcal{B}_U$ を満たす。($\mathcal{B}$ が $(X,\mathcal{O})$ の開基であることの定義。)
(2) $\forall U\in \mathcal{O}$ と $\forall x\in U$ に対して $x\in V\subset U$ となる $V\in \mathcal{B}$ が存在する。

この問題をやっている人はあまりいませんでした。

(1) は $\mathcal{B}$ が $\mathcal{O}$ の開基であることの定義です。
(2) はそれと同値な性質です。

この言い換えは重要なので、是非とも理解していただきたいと思っています。

もし、$\mathcal{B}$ が $\mathcal{O}$ の開基である((1)を満たす)とします。
このとき、$\forall U\in \mathcal{O}$ とします。
$\mathcal{B}_U\subset \mathcal{B}$ が $U=\cup \mathcal{B}_U$ となる集合とします。

よって、$\forall x\in U$ に対して $V\in \mathcal{B}_U$ が存在して、
$x\in V\subset U$ となります。

逆に、$\forall U\in \mathcal{O}$ に対して、$\forall x\in V\subset U$ となる開集合 $V\in \mathcal{B}$
が存在するとする。
このとき、$\mathcal{B}_U$ として、そのような $V$ を集めた集合とします。
そうすると、$\mathcal{B}_U\subset \mathcal{B}$ であり、
$\cup\mathcal{B}_U=U$ となります。

最後の等式を一応示しておきます。
$\forall x\in U$ に対して $x\in V\in \mathcal{B}_U$ かつ $V\subset U$ であったので、
$x\in V \subset \cup\mathcal{B}_U$ 、つまり、$U\subset \cup\mathcal{B}_U$
であることはわかります。
逆に $x\in \cup\mathcal{B}_U$ であるとします。
このとき、$x\in V\in \mathcal{B}_U$ であり、$V\subset U$ であったので、
$x\in U$ が成り立ちます。よって、$\cup\mathcal{B}_U\subset U$ が成り立ちます。

基本近傍系
基本近傍系も位相空間において重要なものです。
まず、$x\in X$ に対して $V$ が $x$ の近傍であるとは、$x$ が $V$ の内点となることです。
$x$ の近傍全体の集合を $\mathcal{N}(x)$ とします。

$\mathcal{N}^\ast(x)\subset \mathcal{N}(x)$ が基本近傍系であるとは、
任意の近傍 $V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
$W\in \mathcal{N}^\ast(x)$ が存在して、
$x\in W\subset V$ となることです。

つまり、基本近傍系とは、いくらでも小さい近傍
(任意の近傍に包まれる基本近傍系に含まれる近傍)
が存在する近傍の部分集合ということです。
問題6-2は基本近傍系についての問題です。
距離空間の開集合 $U$ は、任意の点 $x\in U$ にある $\epsilon$ 球が包まれるので
$\epsilon$ 球全体は基本近傍系になります。

また、開基とは、問題6-1で言い換えたように、任意の開集合 $U$ に
対して、$x\in V\subset U$ となる開集合の集まりとも思えるので、
各点の開集合からなる基本近傍系集めてこれば開基になります。

準開基
準開基とはその有限共通部分をとったとき、開基となるものをいいます。
準開基の理解には、例をいくつかみることがよいと思います。
${\mathbb R}$ の開基とは、例えば開区間全体 $\{(a,b)|a,b\in{\mathbb R}\}$
がそうですが、開区間は、$(-\infty,b)$ と$(a,\infty)$ の2つの
開集合の共通部分となります。つまり、このような形の開集合の集合は
準開基になります。
また、${\mathbb R}\times (a,b)$ や $(a,b)\times {\mathbb R}$
のような開集合は、${\mathbb R}^2$ 上の通常の距離位相において準開基となります。

2018年11月18日日曜日

トポロジー入門演習(第6回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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今回の演習をした時に、あまり理解ができていなさそうだったところを書いておきます。


問題4-1
$f$ が連続であることと
任意の部分集合 $A$ が $f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ であることは
同値であることを示せ。

補足ですが、連続写像 $f:X\to Y$ に対して、$A$ は $X$ の部分集合です。

$f:X\to Y$ が連続であるとすると、任意の開集合 $U\subset Y$ に対して $f^{-1}(U)$ も
開集合であることと同値です。
さらに言い換えて、任意の閉集合 $F\subset Y$ に対して $f^{-1}(F)$ も
$X$ の閉集合であること同値です。

この関係を使いましょう。

もし $f$ が連続であるとします。
$X$ の任意の部分集合を $A$ とします。
$A\subset f^{-1}(f(A))\subset f^{-1}(\overline{f(A)})$  が成り立ちます。
$f^{-1}(\overline{f(A)})$  は閉集合であり、$\bar{A}$ は $A$ を包む閉集合の中で
最小のものだから、$\bar{A}\subset f^{-1}(\overline{f(A)})$ となり、
両辺に $f$ をかけて、
$f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ となります。

つぎに、任意の部分集合 $A\subset X$ に対して $f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$
が成り立つと仮定しましょう。
このとき、
$F$ を任意の $Y$ の閉集合とします。
このとき、$f(\overline{f^{-1}(F)})\subset \overline{f(f^{-1}(F))}=\bar{F}=F$ となり、
$\overline{f^{-1}(F)}\subset f^{-1}(F)\subset \overline{f^{-1}(F)}$ より、
$f^{-1}(F)=\overline{f^{-1}(F)}$ が成り立ちます。
よって、$f^{-1}(F)$ も閉集合であるから、$f$ が連続である
ことになります。


問題4-3
$x\in X$ が $A\subset X$ の触点であることと、$d(x,A)=0$ であることは
同値であることを示せ。


この問題の証明についてまだあまりできていませんでした。
$d(x,A)$ の定義は inf を使って次のように定義します。

$$d(x,A)=\inf \{d(x,a)|a\in A\}$$

つまり、$A$ のある点 $a$ からの距離 $d(x,a)$ の下限として定義されます。

$d(x,A)=0$ とは、$A$ のある点からの距離の下限が $0$
ということなのですが、
$d(x,A)=0$ から言えることは、$d(x,A)\ge 0$ なので当然
$d(x,A)=\epsilon>0$ではないので、
$\epsilon$ より近い $x$ からある $A$ までの元は必ず存在します。

よって、$\forall \epsilon>0$ について、$d(x,a)< \epsilon$ となる $a\in A$ が存在します。
もう少し言い換えれば、任意の $\epsilon>0$ に対して、$B_d(x,\epsilon)\cap A$ の元は
存在することになります。

$\forall \epsilon>0$ に対して、$B_d(x,\epsilon)\cap A\neq \emptyset$ であることは
$x\in \bar{A}$ であることの定義でしたので、よって、$x\in \bar{A}$ となります。

また、逆に、$x\in \bar{A}$ であるとすると、任意の $\epsilon>0$ に
対して、$B_d(x,\epsilon)\cap A\neq \emptyset$ であることより、
$\forall \epsilon>0$ に対して、$d(x,a)<\epsilon$ かつ $a\in A$ であることになるので、
$0$ より大きい実数は $\{d(x,a)|a\in A\}$ の下界になりません。
また、$0$ より小さい実数は、下界の最大にもなりません。
$d(x,a)\ge 0$ であるので、$0$ より小さい実数 $-\delta$ より大きい実数でも
$0$ 以下であれば、$\{d(x,a)|a\in A\}$ の下界になります。
よって、 $0$ が $\{d(x,a)|a\in A\}$ の下界の最大になります。

よって、$d(x,A)=\inf\{d(x,a)|a\in A\}=0$ となります。


これで証明はおわりです。
少し丁寧すぎるくらい長々と証明をしました。

また、$d(x,A)=0$ だからといって、$x\in A$ にはならないので気をつけてください。
問題4-2でそのような例を与えました。
$A=B((0,0),1)$ 、$x=(1,0)$ とするとき、$d(x,A)=0$ ですが、$x\not\in A$ です。

今回渡した問題の基本近傍系ですが、まだ、講義では行なっていないかもしれません。

定義はこうです。

$x\in X$ に対して、$\mathcal{R}(x)$ を $x$ の近傍系( $x$ の近傍全体の集合) とし、
$N(x)\subset \mathcal{R}(x)$ が $x$ の基本近傍系であるとは、
$\forall V\in \mathcal{R}(x)$ に対して、ある $W\in N(x)$ が存在して、
$W\subset V$ となることです。

どんな近傍にもそれに含まれる基本近傍系の元が含まれることになります。
とくに、基本近傍系の中にはいくらでも小さい近傍が存在することになります。

2018年11月11日日曜日

トポロジー入門演習(第5回)

[場所1E202(月曜日4限)]

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位相空間
講義の方は位相空間に入りました。
距離空間の距離の概念を用いると、部分集合の内部、閉包、境界、
開集合、閉集合、などが定義できるようになりました。

また、開集合と閉集合が定義できれば、近傍が定義できます。
この近傍を用いて写像の連続性が定義できるようになるのです。
正確に言えば近傍を用いなくても開集合だけでも連続性は定義はできます。

距離を用いることで写像の連続性について議論できるようになったのですが
距離空間の連続性は、距離の性質ではなく、距離から作られた
開集合の性質と捉えることができます。

例えば、${\mathbb R}^n$ 上の距離として、ユークリッド距離
$$d^{(n)}({\bf x},{\bf a})=\sqrt{(x_1-a_1)^2+\cdots +(x_n-a_n)^n}$$
を用いても、
$$d_{MH}({\bf x},{\bf a})=|x_1-a_1|+\cdots+|x_n-a_n|$$
を用いても、${\mathbb R}^n$ の中の開集合全体は変わりません。
${\bf x}=(x_1,\cdots, x_n)$ かつ ${\bf a}=(a_1,\cdots, a_n)$ です。
すなわちどちらの意味の距離を用いても写像の連続性には変わりはないということに
なります。

つまり、連続性の本質は距離関数には依存せず、距離から作られた開集合にのみ
依存するということになります。
開集合さえ存在すれば連続性の議論ができるのですから、
最初から距離はなくとも、ある一定の性質をもつ開集合の存在が仮定されていれば
連続性を議論することができるはずです。

そこで、位相空間という概念が登場します。
距離なしに、最初から開集合が存在する状況とは以下の状況です。

$X$ を集合とし、以下のような冪集合の部分集合 $\mathcal{O}\subset \mathcal{P}(X)$
を考えます。

(1) $\emptyset \in \mathcal{O}$ かつ $X\in \mathcal{O}$ である。
(2) 有限個の $O_1,\cdots, O_n\in \mathcal{O}$ をとると $O_1\cap \cdots \cap O_n\in \mathcal{O}$
(3) $\{O_\lambda\in \mathcal{O}|\lambda\in \Lambda\}$ を$\mathcal{O}$ の族とすると、$\underset{\lambda\in \Lambda}\cup O_\lambda\in \mathcal{O}$ である。

この3つを満たす $\mathcal{O}$ を $X$ の位相と言います。
$\mathcal{O}$ の元のことを開集合と言います。
位相 $\mathcal{O}$ をもつ空間 $X$ のことを位相空間と言います。
位相空間を $(X,\mathcal{O})$ と書きます。

位相空間の定義には、もはや距離がなくなります。
距離 $d$ から作られる開集合全体を $\mathcal{O}_d$ とすると、
$\mathcal{O}_d$ はこの3つの性質を満たします。
このような位相空間 $(X,\mathcal{O}_d)$ を距離位相空間といいます。
距離から作られない位相空間もあります。

例えば、$X$ を任意の集合とし、$\mathcal{O}=\{\emptyset,X\}$ とすると、
$(X,\mathcal{O})$ は定義から位相空間となります。
この位相を密着位相と言います。

しかし、この位相空間は一般に距離からくるものではありません。
$X$ を2点以上ある集合とします。
このとき、$p,q\in X$ を異なる2点とします。$p$ を含む開集合は、密着位相なら唯一つ $X$
しかありませんが、
距離空間からくる距離位相空間なら、$\delta=d(p,q)$ とすると、
$B_d(p,\delta)$ も $p$ を含む開集合であり、 $q$ を含まないので、$X$ とは
違う開集合となります。
なので、$p$ を含む開集合は、$X$ 以外に $B_d(p,\delta)$ もあります。

よって、密着位相は、一般に距離位相とは同じにはなりません。

このように、位相空間を定義したことによって距離位相空間とは違う位相空間が山ほど
構成できるようになります。

距離空間から、部分集合の内部、閉包、境界が得られていましたが、
位相空間においてもこれらを定義することができます。

$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とします。
内部 $A\subset X$ を部分集合とする。$A$ の内部 $A^i$ を $A$ に包まれる開集合のうち最大のものと定義する。$A^i$ の点を $A$ の内点という。

閉包 $A\subset X$ を部分集合とする。$A$ の閉包 $\bar{A}$ を $A$ を包む閉集合のうち最小のものと定義する。$\bar{A}$ の点を $A$ の触点という。

境界 $A\subset X$ を部分集合とする。$A$ の境界 $A^f$ を $\bar{A}\setminus A^i$ と定義する。$A^f$ の点を境界点という。

また、位相空間 $(X,\mathcal{O}_X)$ と $(Y,\mathcal{O}_Y)$ の間の写像 $X\to Y$
が連続であるとは、
$\forall U\in \mathcal{O}_Y$ に対して、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$ を満たす写像を言います。

このようにして距離がなくても、部分集合の内部、閉包、境界、連続性について
議論することができるようになりました。