2018年4月24日火曜日

外書輪講I(第2回)

[場所1E503(月曜日5限)]

HPに行く

今回は、先週の線形代数の問題について担当した人に解いてもらいました。

線形代数II演習の内容をここでもう一度復習しておきましょう。
このような内容の復習は2年生の後期以降ではなくなっていきますので
注意して下さい。


今回の学生たちのハイライト

(1)  $\text{rank}(AB)\le \text{rank}(A)$を示せ。

$A$ の両側からある正則行列 $P,Q$ をかけてやると、
$PAQ=\begin{pmatrix}E_r&O\\O’&O''\end{pmatrix}$
となります。ここで、$O,O’,O’'$ は何らかのサイズのゼロ行列で、$E_r$ は単位行列。
また、ランクは、両側から正則行列をかけても変わりませんから、

$\text{rank}(AB)=\text{rank}(PABQQ^{-1}B)=\text{rank}(\begin{pmatrix}E_r&O\\O’&O''\end{pmatrix}Q^{-1}B)=\text{rank}(\begin{pmatrix}B’\\O’’’\end{pmatrix})\le r=\text{rank}(A)$

となります。

(2) ベクトル空間の基底の定義をいえ。
ほぼできていたので省略します。

(3)  平面上の任意の3つのベクトルが1次従属であることを示せ。
(下)


(4) $V,W$ をベクトル空間のとき $\dim(V+W)=\dim(V)+\dim(W)-\dim(V\cap W)$ を示せ。

$V\cap W$ の基底を$v_1,\cdots ,v_r$ とする
$V$ の基底を $v_1,\cdots, v_r,a_1,\cdots,a_s$
$W$ の基底を $v_1,\cdots, v_r,b_1,\cdots, b_t$
とすると
$v_1,\cdots, v_r,a_1,\cdots,a_s,b_1,\cdots, b_t$ が
1次独立になることを証明する。
$l_1v_1+\cdots+l_r v_r+m_1a_1+\cdots+m_sa_s+n_1b_1+\cdots +n_tb_t=0$ 
が成り立つとすると、
$l_1v_1+\cdots+l_r v_r+m_1a_1+\cdots+m_sa_s=-n_1b_1-\cdots -n_tb_t\ \ \ \ (\ast)$ 
となり、右辺は $W$ 左辺は $V$ であり、
$(\ast)$ のベクトルは $V\cap W$ なので、$v_1,\cdots, v_r$ の1次結合によって
書き表されるが、それを $L_1v_1+\cdots+L_rv_r$ とすると、
それらの1次結合性から、任意の$i$ で $L_i=l_i$ かつ、$m_i=0$ がいえる。
よって
$$l_1v_1+\cdots+l_r v_r=-n_1b_1-\cdots -n_tb_t$$
だが、同じようにして、任意の$i$ で  $n_i=0$ がいえる。

$$l_1v_1+\cdots+l_r v_r=0$$ 
となるが、$v_1,\cdots ,v_r$ は1次独立であることから、任意の$i$ で $l_i=0$ がいえる。


(5) $n$ 次元のベクトル空間 $V$ の $n$ このベクトルが1次独立であれば、それは基底である。

$V=\langle v_1,\cdots, v_n\rangle $を示せばよい。
$\subset $ であること、
$x\in V$ が $x\not\in \langle v_1,\cdots, v_n\rangle $ とすると、
$\{x,v_1,\cdots, v_n\}$ は1次独立である。
もし1次従属とすると、$(c_0,c_1,\cdots, c_n)\neq(0,0,\cdots, 0)$ なる実数の組が、$c_0x+c_1v_1+\cdots+c_nv_n=0$ を満たすとする。
もし、$c_0\neq 0$ とすると、$c_0$ で全体を割って、
$v_1,\cdots, v_n$ の項を移項することで
$x\in \langle v_1,\cdots, v_n\rangle$ となるが、これは仮定に反する。
よって、$c_0=0$ となる、しかし、$v_1,\cdots, v_n$ は1次独立であるから
任意の $i$ で $c_i=0$ となる。これも仮定に反する。
$\dim(V)$ には1次独立な個数の最大は $n$ であるが、今、$n+1$ 個の1次独立な
ベクトルがとれたのでこれも反する
よって、$x\in \langle v_1,\cdots, v_n\rangle $ がいえる。

(7) 3つのベクトルのうちどの2つも1次独立であるとき、この3つのベクトルも1次独立であるか?

3つの空間ベクトルで、線形関係式のあるものを持ってきて、
それらが一次独立であることを示した。

(8) 2次以下の実多項式からなるベクトル空間 ${\mathbb R}[t]_2$ からそれ自身への
微分を元にした写像の表現行列を求めよ。
(下)

今回注意すべき点もしくは次回以降にもう一度発表する点

(1)
上のランクの等式で、最後の $\le r$ がうまく答えられませんでした。
これは、$\text{rank}(\begin{pmatrix}B’\\O’’’\end{pmatrix}=\text{rank}(B’)$
とでもしておいて、
「$B’$ の行ベクトルの数が $r$ で、定義により行列のランクは行ベクトルの数を超えることができなので $r$ 以下になる」
とでも答えればよいでしょう。

(3) ${\mathbb R}^2$ 上の任意の3つのベクトルを選ぶところを、任意にとって
いなかった点がまずかった。問題文をもう一度読んで解く。

(4) 残すところは以下の点。
$V+W$ の任意のベクトル $v$ が $v_1,\cdots, v_r, a_1,\cdots, a_s, b_1,\cdots, b_t$ の
1次結合で表されること。

(5) $\supset$ の包含関係をいえばよいが、ベクトル空間の定義を使えば(思い出せば)明らかではないだろうか?
明らか・・・瞬時に言えるということ。言わなくても良いということではない。

また、$V=\langle v_1,\cdots, v_r\rangle$ であることを示すのではなく、
(同じことではあるが....)
$V$ の任意の元 $v$ が $\{v_1,\cdots, v_r\}$ の1次結合で表されることを言えばよいので
(基底の定義を思い出せ。)
$V\supset \langle v_1,\cdots, v_r\rangle$ は本来は言う必要はない。
包含関係を示すという観点で始めてしまえば言う必要はある。

(7) 自分で用意した3つのベクトルのうち任意の2つがそれぞれ1次独立であることを
示すことが残りました。

示すべきこと(3つのベクトルが1次独立でないとき)
(i) ある3つのベクトルを用意する。
(ii) 3つのベクトルのどの2つも一次独立であること
(iii) 3つのベクトルが一次従属であること。

(i) と(iii) はできたが、(ii) が不十分だった。
例題として、「平面上の1次独立なベクトルの例をあげよ」という問題を与えたが、
答えられなかった。

(8) 表現行列の定義を知らなかった。

やるべきことは、${\mathbb R}[t]_2$ の基底を選ぶこと。
$v_1,\cdots, v_n$ をその基底とする。

このとき、
$(f(v_1),\cdots ,f(v_n))$ のそれぞれを $v_1,\cdots, v_n$ の1次結合で表しておく。
$f(v_i)=a_{i1}v_1+\cdots+a_{in}v_n$ と書くとすると、
$(f(v_1),\cdots ,f(v_n))=(v_1,\cdots,v_n)\begin{pmatrix}a_{11}&\cdots&a_{n1}\\\vdots&\ldots&\vdots\\a_{1n}&\cdots&a_{nn}\end{pmatrix}$
と書くことができて、この行列 $(a_{ij})$ を表現行列といいます。


発表方法に関して気づいた点
発表を兼ねそなえた授業の場合、
言われたことや問題として要求されていることに明確に答えるようにして下さい。

黒板に板書しただけで「わかりますよね?」
のようなニュアンスでこちらを見るだけなのもやめましょう。

また、1, 2年生の発表では、自分が理解していることをなるべく
アピールするようにして下さい。
式だけ書いて終わりではなく、どのように計算をしたのか?
論理展開も明確にしましょう。

最初は慣れないと思いますが、そのうち自分なりにやり方もわかってくると思います。

また、発表するときは、正しいと確信がある場合は自信を持って正しいと言いましょう。
あやふやなときや、聴衆に問いかけるような場合は、理解していないという
ことですから、もう一度考えてみましょう。
自信を持って正しいと言っても、こちらから見ると正しくない時がありますが
そのときは正しくないといいますので、どこが正しくないのかもう一度
考えてみて下さい。

2018年4月21日土曜日

フレッシュマン・セミナー(第2回)

[場所1E202-203(金曜日6限)]

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スライド

今回のフレッシュマンセミナーでは、いくつかのお知らせと、
スライド(学類の授業の紹介)など話をしました。
内容について詳しく知りたい人は上のスライドを見てください。

演習で講義の内容を実践し、理解する。

ちなみにこのページでは、(数学の)講義、演習、授業を
以下のように使い分けをしています。

授業・・・以下の講義や演習をまとめたものをいいます。
講義・・・数学の教科書に沿って、定義、定理、命題などを証明したり解説する授業で、問題を解いたりすることを主眼としない授業のこと。
演習・・・基本的に問題練習中心の授業のこと。定義や定理などの解説はあるが、それも、例題や問題を使える形にして解説することが多い。証明問題練習も含む。


学年ごとに、ざっと授業をまとめると以下のようになります。
書いていないものについては私はあまり担当していないので、よくわかりません。

1年生
必修の授業は落とさないようにする。
定期試験や中間テストは、「少なくともこれくらいはできて欲しい」という
授業担当者からのメッセージ。過去問などもあるとよい。
日々の課題は、多くのパターンや計算練習あり充実しているので
怠けることなく取り組むこと。

演習と講義の順番が逆転する謎とその対処について
 演習は講義の内容の復習として使いたいと思えるのだが、
その順番がある時期逆転する場合がある。つまり問題練習が先に来てしまうということ。
その理由は教員において様々ですが...
 これは先生たちの不備ではなく、演習を講義の予習と思って取り組むものである。
講義の予習は、そもそも学習を積極的に進めるうえで欠かせないし、
本来の学習の意味(自ら学ぶ力を養うことこそが真の学習である)と合致する。
授業とは、受動的に聞くだけのものだと思い込んでいませんか?
例えば、問題を解くのに、まだ習っていない教科書を読むことになります。
つまり、予習が自然と身につくことになります。

なお、逆転が起こっている状況がわからず、
さらに解き方を熟知していると思い込んでいる授業中の演習の先生には、
『その内容はまだ講義では習っていないところなので、易しく(優しく)教えてください。』
と発言し、そのように授業を進めてもらうといいでしょう。


1年生の数学の授業は、2年生以降の内容に深く関わるので、
大事な部分は押さえておくこと。
微積分、線形代数の最も大事な部分(一言でいえば)
  • 連続・微分などの定義がわかり、様々な微分積分の手法が実行できること。
  • 連立一次方程式が解けること。
数学基礎の内容は、高校とのギャップを埋める授業なので心してかかること。

2年生

線形続論授業は、ペースが他よりゆっくりなので、
線形代数IIを復習しながら学習できる。
ベクトル解析と幾何は、それほど余裕がないかもしれない。
しかしそれでも1年次の復習も同時に進めれば、理解は深まるはず。

(後期)代数入門・トポロジー入門は(今までの授業と直接はつながらないという意味で)初めての分野だと思うので、最初から丁寧に学習を進めること。
微分方程式入門は、常微分方程式の解の存在と一意性、方程式の形から求積法を学ぶ。理論と実践の両輪のしっかりした深い授業。
関数論は、1年生の微積分の複素版、留数定理を用いて広義積分が色々と計算できてうれしい。
スライドの計算機演習の説明は照井先生本人からいただいた文章です。
Mathematicaに興味をもって取り組みましょう。

2年で挫折するパターン
  • 1年生の授業が分かっていないから先に進めない。
  • 新しく学んだ部分がまだ分かっていない。
  • そのどちらも
分かってないところまでもどって、もう一度教科書を読むか、問題を
解いてみよう。


3年生、4年生
自分の興味の赴くまま授業をとればよい。
演習がついてない授業も多いので講義で話されている例や例題などの答えを
自分で考えて理解していくこと。

外書輪講IIは必須科目。
卒業予備研究、卒業研究は卒業に必要な科目なので受講すること。

2018年4月17日火曜日

フレッシュマン・セミナー(第1回)

[場所1E202-203(金曜日6限)]

HPに行く
スライド

今年度から1年生の担任をすることになりました。
というわけで、フレッシュマンセミナーというのをやらないと
いけないのですが、内容は担任に一任されているようです。

他の学類は施設見学などもあるようですが、数学でそのようなものも
ないし、とりあえず、今回は、私はスライドを自由に作りました。
上のHPのリンク先にあります。

大学では何を考えるところか?
大学にはいったものの何を考えればよいのでしょうか?

何も考えず、とりあえず大学にはいればよいと思っている人がほとんどかもしれません。
特に目的もなく、大学自体入ってから楽しめばよいというのも正しいと思います。

何かをやって、これが自分なりに正解だと思えるものであればそれで正解なのです。

むしろ、何をしたらよいか、自分で問い、答えに向かって進むことができれば
それでよいのです。

大事なことは、自発的にこれらのことを行うということです。
自分自身見つめてみて、今何をしたいのか?また何をするとよいのか?
どのような計画で行えばよいのか?
などどれをとってみても自分一人で考えることばかりです。

しかし、自分だけで考えると、大抵つまずき、わからなくなるものです。
まだ若いし、見識もないので、判断に迷いがあるということも多いにあります。
そのときは、近くにいる友達や先生、親、先輩などに
聞くと有効な考えに至ることがあります。特に、先輩などは、
身近で、少しだけ成長した自分自身だと思えるので、受け入れやすいでしょう。
しかし判断するのは自分自身の心であることは忘れないで下さい。

私が大学時代にやっていたことは、何かわからないことが
あると、本(文庫本、小説など、その他なんでもいい)などを
読んでスッキリさせていました。
自分で考えられない場合、何か、他の人が考えている文章を
読むことで、なぜか、全く関係がない文章なのに、解決したりすることが
ありました。
迷っている時こそ、一人で落ち込まずに視野を広げてみることが大切です。
いつも食べているコンビニ弁当を変えて、食堂のパスタにしてみるとか
したときに、何気ないきっかけで何か目覚めるかもしれません。

また、自発的に自分自身のことを行うことが苦手な人は、
まずは、人のために何かをしてみてはどうでしょうか?
例えば、ボランティアをしてみるとか(この行為自身かなり自発的な活動ですが...)、
席を譲ってみるとか、ゴミを拾ってみるとか、実家の夕食を一人で作ってみるとか
日常的なことでかまいません。
自分が何をすればよいのか分かるかもしれません。
これらも、自分で真剣に何をしたらよいのか考えなければやはり
答えは得られません。

私は、大学に入る前は、大学に入ったら数学をもっとやりたいなぁと
思っていましたので、入ってから積極的にいろいろ本を読んだり、
友達と勉強や自主ゼミをしたり話したりしていました。
数学の理解は他の友達と比べてそれほど早いものではありませんでしたけれど。
(実はいまもそうです...)

大学での友達は....
大学で出会った友達は、一生の友達になることがほとんどです。
人生最後の学園生活といってもよいでしょう。そこで
人生として多くのことを学び、多くのことを助け合った仲間です。
今後大切にしていくことがよいでしょう。

数学でつまづく時と、数学ではばたく時
岡潔という人は数学をする上で情緒を大切にしたようです。
数学者がすべてそのような情緒を持っていて、そうでないと
数学者になれないということはありません。
それは、数学という学問の懐の深さかもしれません。
数学の内容が腑に落ちるということは、
一種の情緒的体験とも言えなくもないですが、
それは強制できるものでもありません。
ごく一般的な内容をここに書いておきます。

つまり、数学の理解をするだけなら、特に難しいことは
ないということです。

数学の授業を受けたあと、理解しているかどうかは、
まずは、その内容の定義が言えるかどうかです。
定義は普通よく考えて作られていますので、それ言えれば
とりあえず合格です。

例えば、基底とその性質について習ったとき、家に帰ってから、
もう一度基底の定義を復習してみます。
このとき、すらすらと書けるようであれば、
基底について理解したということであり、
一方、なんとなくこんなものというだけの理解であれば、
まだ基底について理解していないということです。
ここで、覚えていて書けるということと理解して、基底の定義
はこうでなくてはいけないと確信しながら書くことはだいぶん違います。
もちろん後者の理解が必要です。

なんとなくの理解のままほっておいても、次の段階には(正常には)進めません。
例えば、線形写像の行列表現などはいったい何をやっているのかさっぱり
わからないと思います。

同じように、出てきた定理やその証明についても同じようにします。
このように、自分自身見つめることができる能力がここで発揮されるのです。

しかし、自分がわからなくなったと気付いたとき、つまずいたところ
がどこかわかれば、その部分の定義や定理(証明をこみで)などに戻って
自分一人でそれらを書けるようにすることでまた理解が進みます。
このように、定義や定理が自分一人で完全に書けるようになるまで続けます。

数学は有機的には繋がっていますが、なぜか、さきの勉強をすれば
前の部分がわかってくるということは(ほぼ)ありません。
内容の不理解ということになると、
「前の部分がわからないから先がわからない」
というもっとも典型的なパターンがほどんどです。

そうしていけば、線形代数や微積などわからないところが
ないくらいクリアにわかるようになるでしょう。
また、1年生のうちにわかっていなくても、ある程度進んでから、もういちど
見直した時に、さらに理解が進むこともあります。
(そのきっかけとしてはやはり先に進めなくなったときに、1年生の
内容に立ち戻るという行為があるからこそです。)

これらのことは、スポーツや芸術などでいう、基礎練習の部分です。
体得するまで繰り返しやるという点では、大抵のアスリートや
アーティストが実施しているところと同じです。

しかし、基礎練習をしているだけではそのスポーツや芸術には入りません。
基礎練習ではない数学を(研究)するということは、数学の定義、定理がわかり、
問題を解けるだけではなく、

どうしてその方法で問題が解けたのか?
どの部分の議論が本質的だったのか?
ではもっと一般化する方法はないのか?
この方法を他の状況に応用することはできないのか?

といったことまで考えることです。
機械的な数学の勉強に飽きたら、このような自由な発想も
たまに考えてみるとよいかもしれません。
学部時代であっても、数学の授業の中でそうした状況がでてくると思います。
そのような場面に出会えば、自由思考を実践してみてください。
少し数学の研究のような体験ができるはずです。
もし、大学院などにいって数学を研究することになれば、
そのような体験が貴重であったことに気づくことになります。
もし、そのようなとき、迷ったら、大学の教員などに相談してみると
よいかもしれません。

外書輪講I (第1回)

[場所1E503(月曜日5限)]

HPに行く
配布プリント

今回は、外書輪講1回目です。
外書は、今年はMatousekの
33-miniatures を一年かけて読もうかと思います。
この本は、線形代数を使った面白い話題を33個集めています。
Matousekはもう亡くなっていますが、ホームページは
生きているようで、こちらに33-Miniaturesについての
ページがあります。

後期に引き継がれる梁先生も前期で終わらなければ、
この本を使うことをおっしゃっていました。

今回の内容は発表についての心構え、英文和訳と線形代数の復習をしました。


発表の準備について
かならずノートを作ること。
ノートの作り方は自由ですが、必ず、話す相手に
どのような内容なのか、必ず理解できるようなレベルに準備をしてくること。
慣れないうちは、一人でもいいので、発表の予習をしてくること。

また、その定理のために必要な定義や補題、命題などがあれば
調べてくること。
初めて登場する定義については必ず聞きますので、必ず調べてくること。
もし、定理があれば、証明をすること。

川東先生のページにもあるように、
「こういうことなんですかねぇ?」
「これでいいんでしょうか?」
といった発言は禁句です。「私は分かっていません。」
ということをアピールしているようなものです。
わからなかった場合は、
「ここまで考えましたが、○○の部分がわかりませんでした。」
と明確に述べて下さい。
(まぁ、明確に述べられるくらいなら、すぐに答えは出せるのですが...)

理解しているのか、理解していないか自分で判断できるようにして下さい。
これは絶対正しい。Anyway it is true.といえる(もちろん正しい理由がないといけません)
ようになるまで考えましょう。

このように、発表の準備は完璧を目指してください。
完璧になるまで、考えたり、本で調べたり、人(友達、や先生)に聞いたりしてください。

英語について
また、昨日の授業では何人かの人に少し和訳をしてもらいましたが、
それに関してはそれほどは問題はなかったようです。
また、数学英語についての最初の単語帳を例文付きでプリントに載せました。
数学特有の言い回し(例えば、「order」は普段は「注文」という意味で用いられるし、
日本語でオーダーといえば、「料理のオーダー」のように用いられますが、
もちろん数学では「注文」で用いられることはまずなく、「順序」や「(群などの)位数」
の意味で用いられます。)や特別な使い方がありますが、それをいくつか覚えてしまえば
それほど難しい構文はありません。実際、中学英語くらいの知識があれば論文を
書くことはできます。
今後わからない言い回しがあれば、随時、プリントに載せていきます。

線形代数
この授業は、外書読み、線形代数とその応用、発表練習などの融合された授業です。
少なくとも既知とされている線形代数の部分はできるようになってください。
数学以外の部分は場数を踏めばできるようにできますが、数学の部分は
自分の頭でしっかりと考えてください。

しかし、現段階で、線形代数について理解が不足していた人が多かったようです。
以下の問題を与えましたが、1人しか授業時間に発表できませんでした。
この問題はこの講義が終わるまでには少なくとも10人全員に
解けるようになってもらうために、繰り返し出します。

(1) 正方行列$A,B$に対して $\text{rank}(A\cdot B)\le \text{rank}(A)$ であることを示せ。
(2) ベクトル空間 $V$の基底の定義をいえ。
(3) 2次元ベクトル空間 $V$ の任意の3つのベクトルは一次従属であることを示せ。
(4) $V,W\subset {\mathbb R}^n$ は部分ベクトル空間とする。このとき、
$$\dim(V+W)=\dim(V)+\dim(W)-\dim(V\cap W)$$
を示せ。
(5) $v_1,v_2\cdots, v_n\in V$を$\dim(V)=n$ のベクトルとする。このとき、これらが一次独立であれば、基底であることを示せ。
(6) $A$ を $n$ 次正方行列とし、$v\in {\mathbb C}^n$ とする。このとき、連立方程式 $Av=0$
に自明でない解があることと、$\det(A)=0$ であることは同値であることを示せ。
(7) 3つのベクトル $v_1,v_2,v_3$ のうちどの2つをとっても一次独立であるとき、これらは一次独立か?
(8) $d/dt:{\mathbb R}[t]_2\to {\mathbb R}[t]_2$ を微分写像とする。このとき、線形写像 $d/dt$ を適当な基底によって表現せよ。
(9) $\begin{pmatrix}1&2\\2&1\end{pmatrix}$ を直交行列によって対角化せよ。
(10) $2\times2$ 正方行列で、対角化できない行列の例をあげよ。

ただし、${\mathbb R}[t]_2$ は2次以下の(実数係数の)多項式からなるベクトル空間である。

では、発表は、来週から始めます。