2015年12月9日水曜日

群PSL(2,7)についてII

PSL(2,7)

以前のブログで紹介しこの群 PSL(2,7) についてくわしく見ていきます.
ここでは共役類を考えようと思います.

PSL(2,7)について簡単に書いておくと、
$$PSL(2,7)=\left\{\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}|a,b,c,d\in{\mathbb F}_7,ad-bc=1\bmod 7\right\}/I\sim-I$$

という、7元体での $2\times2$ 行列で、行列式が1となる群 $SL(2,7)$ を $I$ と $-I$ を同一視して
得られる商群です.
つまり、$\langle I,-I\rangle\subset SL(2,7)$ という部分群によって割られる群ということになります.
$PSL(2,7)$ の単位元は $e$ と書くことにします.

このような群は、 $S=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ と $T=\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}$ によって生成され、全ての元は、

$$[a_n,a_{n-1},\cdots,a_1]=TS^{a_n}TS^{a_{n-1}}\cdots TS^{a_1}$$
のような形に表示できます.

このような書き方は一意的ではなく、$T^2=S^7=(TS)^3=e$ や、$(TS^3)^4=e$ なる関係式もあります.

また、群 $G$ の元のこの書き方をしたときの $n$ のことを、この表示の長さということにします.
長さは、群の元から決まる不変な物ではなく、表示の仕方によって変わりえます.

この群の位数(元の個数)は、168個です.
その168個は、以前のブログ で全て書き出しました.

共役類

群 $G$ において、$x,x'\in G$ が共役であるとは、ある $y\in G$ が存在して、$yxy^{-1}=x'$
となることをいいます.
共役という関係は、同値関係になります.
共役によって結んだ関係によって群 $G$ の全ての元をいくつかにクラスにわけたものを共役類といいます.
$x,x'$ が共役であるということを今後
$$x\sim x'$$
という記号を使っていきます.この記号は大変便利です.
$PSL(2,7)$ の元の表示でいうと、$[a_1,a_2,\cdots,a_n]\sim [a_2,a_3,\cdots,a_n,a_1]$
なる巡回置換は共役となります.
この巡回置換による共役は下で多数使われることになります.


位数
$e$ を群 $G$ の単位元とします.
元 $x\in G$ の位数とは、$x^n=e$ となる最小の正の整数のことをいいます.


共役な元同士は
$x^n=e$ ならば、
$(yxy^{-1})^n=yx^ny^{-1} =yey^{-1}=e$
となり、(最小性は別にやる必要がありますが...)
位数が等しくなりますが、逆は一般に正しくありません.


$x,x'$ が共役 ⇨ $x,x'$ の位数が同じ

つまり、位数が同じという元同士の関係は、共役であるという関係より、弱いことがわかります.
弱い関係の方が、多くの元を分類することができるので、より細かい分類ができます.

また、$x\sim x'$ で、$y\sim y'$ だからといって、$xy\sim x'y'$ となるとはかぎりません.

PSL(2,7) の長さ1の

$G=PSL(2,7)$ の表示において、
$[a_1,\cdots,a_{n-1}]\cdot[a_n]=[a_1,\cdots,a_n]$
であることに注意しましょう.

長さ1の元は以下になります.
$[0]=TS^0$ 位数2
$[1]=TS$ 位数3
$[2]=TS^2$ 位数7
$[3]=TS^3$ 位数4
$[-3]=TS^4$ 位数4
$[-2]=TS^5$ 位数7
$[-1]=TS^6$ 位数3

この逆元をとると、一般に、$[a]^{-1}=[0,-a,0]$ を使って、
$[0]^{-1}=[0]$
$[1]^{-1}=[0,-1,0]=[1,1,0,0]=[1,1]$
$[2]^{-1}=[0,-2,0]=[1,1,-1,0]=[1,2,1]$
$[3]^{-1}=[0,-3,0]=[1,1,-2,0]=[1,1,-1,1,1]=[1,2,1]$
$[4]^{-1}=[0,-4,0]=[0,3,0]$
$[5]^{-1}=[0,-5,0]=[0,2,0]$
$[6]^{-1}=[0,-6,0]=[0,1,0]=[-1,-1]$

一般に逆元をとる操作は、$[a_1,a_2,\cdots,a_n]^{-1}=[0,-a_n,-a_{n-1},\cdots,-a_1,0]$
となり、巡回置換が共役になることをつかうと、
$[a_1,a_2,\cdots,a_n]^{-1}\sim[-a_n,-a_{n-1},\cdots,-a_1]$
がいえます.

位数のことを考えると、
$[2]=[2,2,2,2,2,2]^{-1}=[0,-2,-2,-2,-2,-2,-2,-2,0]$ や同様にして
$[3]=[3,3,3]^{-1}=[0,-3,-3,-3,0]$ や
$[4]=[0,-4,-4,-4,0]$
$[5]=[0,-5,-5,-5,-5,-5,-5,0]$

これから PSL(2,7) の中の168個の元の共役類を手作業で調べます.

そのとき、巡回置換以外で次の関係式がよく使われています.

$$[\cdots,a_i,a_{i+1},\cdots]=[\cdots,a_i\pm1,\pm1,a_{i+1}\pm1,\cdots]$$
$$[\cdots,a_i,a_{i+1},\cdots]=[\cdots,a_i,0,0,a_{i+1},\cdots]$$
$$[\cdots,a_{1},\pm1]=[\cdots,a_1\mp1,\mp1,0]$$
$$[\cdots,a_i,\cdots]=[\cdots,a_i+7n,\cdots]$$
$$[\cdots,\pm3,\cdots]=[\cdots,0,\mp3,\mp3,\mp3,0,\cdots]$$


結論として、位数が 1,2,3,4の元は、それぞれ共役類が一つしかないということです.
位数が7の元はココにかききれないので、またどこかでかくことにします.
ちなみに、PSL(2,7) の元は、位数が1,2,3,4,7 のどれかです.

位数が1の元
$e=[0,0]$ しかありませんので
当然
共役類はこれを含む類一つだけ.

位数が2の元

位数が2の元は、以下の21個存在します.
$[0]$
$[2,1],[1,2],[-1,-2],[-2,-1],[3,3],[-3,-3]$
$[0,2,2],[-2,2,0]$
$[-3,3,0],[0,3,-3]$
$[0,-3,2,-3],[0,-2,3,-2]$
$[1,2,3],[1,3,2],[2,3,1].[3,2,1]$
$[2,2,-1],[-1,2,2]$
$[3,3,-1],[-1,3,3]$

以下、これらはすべて共役であることを調べます.

$[0]=[1,0,-1]\sim[0,-1,1]=[1,1,0,1]=[1,2]\sim[2,1]$
$[0]\sim[-1,0,1]\sim[0,1,-1]=[-1,-2]\sim[-2,-1]$
$[3,3]=[1,0,2,3]\sim[2,3,1,0]=[2,2,-1]\sim[-1,2,2]$
$[0]=[-2,0,2]\sim[0,2,-2]$
$[0]=[2,0,-2]\sim[-2,2,0]$
$[0]=[-3,0,3]\sim[0,3,-3]$
$[0]=[3,0,-3]\sim[-3,3,0]$
$[0]\sim[1,2]\sim[-3,0,-3,2]\sim[0,-3,2,-3]$
$[2,3,1]\sim[1,2,3]\sim[0,-1,1,3]\sim[1,3,0,-1]\sim[1,2]$
$[1,3,2]\sim[3,2,1]\sim[3,1,-1,0]\sim[1,-1,0,3]\sim[1,2]$
$[-1,3,3]\sim[3,3,-1]=[3,4,1,0]\sim[4,1,0,3]\sim[4,4]\sim[-3,-3]$
$[-3,-3]\sim[-2,1,-2]\sim[-1,1,2,-2]\sim[-2,-1,1,2]=[-1,2,2]$
$[-1,3,3]=[-1][3,3]^{-1}=[-1][0,-3,-3,0]=[-1,0,-3,-3,0]=[-4,-3,0]\sim[-3,0,-4]\sim[0]$

のように示されます.

位数が2の元は全て共役です.

位数3の元

位数がの元は、次の 56個です。

$[1],[-1]$
$[1,1],[1,3],[2,4],[2,5],[3,1],[3,5],[4,2],[4,6],[5,2],[5,3],[6,4],[6,6]$
$[0,2,4],[0,2,6],[1,2,2],[1,2,4],[2,2,1],[2,2,4],[3,2,4],[3,2,5],[4,2,0],[4,2,1],[4,2,2],[4,2,3],[4,2,4],[4,2,5],[4,2,6],[5,2,3],[5,2,4],[6,2,0],[6,2,4],[0,3,3],[0,3,5],[1,3,5],[1,3,6][[2,3,4],[2,3,5],[3,3,0],[3,3,5],[4,3,2],[4,3,5],[5,3,0],[5,3,1],[5,3,2],[5,3,3],[5,3,4],[5,3,5],[5,3,6],[6,3,1],[6,3,5]$
$[0,4,2,0],[0,4,2,1],[0,5,3,0],[0,5,3,3]$

これらの互いに共役であることを示します.
長さが大きいものから小さいものへ順に簡単にしていきます.

長さ4のもの
$[0,4,2,0]\sim[0,0,4,2]\sim[4,2]$
$[0,4,2,1]\sim[1,0,4,2]\sim[5,2]$
$[0,5,3,0]\sim[0,0,5,3]\sim[5,3]$
$[0,5,3,3]\sim[3,0,5,3]\sim[1,3]$

長さ3で、0,1,6 をふくむもの
$[0,2,4]\sim[4,0,2]\sim[1]$,  $[0,2,6]\sim[6,0,2]\sim[1]$,  $[4,2,0]\sim[2,0,4]\sim[-1]$,
$[6,2,0]\sim[2,0,6]\sim[1]$,  $[0,3,3]\sim[3,0,3]\sim[-1]$,  $[0,3,5]\sim[5,0,3]\sim[1]$
$[1,2,2]\sim[2,1,2]\sim[1,1]$,  $[1,2,4]\sim[4,1,2]=[3,1]$, $[2,2,1]\sim[2,1,2]=[1,1]$
$[4,2,1]\sim[2,1,4]=[1,3]$,  $[4,2,6]\sim[2,-1,4]=[3,5]$,  $[6,2,4]\sim[4,-1,2]=[5,3]$
$[1,3,5]\sim[5,1,3]=[6,4]$,  $[1,3,6]\sim[6,1,3]=[5,2]$,  $[5,3,1]\sim[3,1,5]=[2,4]$
$[5,3,6]\sim[3,-1,5]=[4,6]$,  $[6,3,1]\sim[3,1,6]\sim[2,5]$,  $[6,3,5]\sim[5,-1,3]=[6,4]$

長さ3で0,1,6をふくまないもの
$[4,2,2]\sim[2,2,4]\sim[1,-1,1,4]\sim[1,-2,3]\sim[3,1,-2]=[2,-3]=[2,4]$
$[3,2,4]\sim[4,3,2]\sim[4,0,-3,-3,-3,0,2]\sim[-1,-3,-1]\sim$
$[3,2,5]\sim[5,3,2]\sim[5,0,-3,-3,-3,0,2]\sim[2,-3,-1]\sim[-3,-1,2]\sim[-2,3]$
$[4,2,3]\sim[2,3,4]\sim[2,0,-3,-3,-3,0,4]\sim[-1,-3,1]\sim[1,-1,-3]\sim[2,-2]$
$[4,2,4]\sim[2,4,4]=[2,0,3,3,3,0,4]=[5,3,7]=[5,3,0]\sim[3,0,5]=[1]$
$[4,2,5]=[0,3,3,3,0,2,5]\sim[5,0,3,3,5]=[1,3,5]\sim[5,1,3]\sim[4,2]$
$[5,2,3]\sim[2,3,5]\sim[2,0,-3,-3,-3,0,5]\sim[-1,-3,2]\sim[2,-1,-3]\sim[3,-2]$
$[5,2,4]=[5,2,0,3,3,3,0]=[5,5,3,3,0]\sim[5,3,3,0,5]=[5,3,1]\sim[3,1,5]\sim[2,4]$
$[3,3,5]\sim[5,3,3]\sim[5][3,3]^{-1}=[5][0,-3,-3,0]\sim[2,-3,0]\sim[-1]$
$[4,3,5]\sim[4,0,-3,-3,-3,0,5]\sim[1,-3,2]\sim[2,1,-3]\sim[1,-4]$
$[5,3,4]\sim[5,0,-3,-3,-3,0,4]\sim[2,-3,1]\sim[-3,1,2]\sim[-4,1]$
$[5,3,5]\sim[-2,-2,3]=[-1,1,-1,3]\sim[-1,2,4]\sim[4,-1,2]=[5,3]$

長さが2のもの
$[1,1]\sim[0,-1,0]\sim[0,0,-1]\sim[-1]$
$[1,3]\sim[3,1]\sim[2,-1,0]\sim[-1,0,2]\sim[1]$
$[3,5]\sim[5,3]\sim[5,0,-3,-3,-3,0]\sim[2,-3,-3,0]\sim[-3,-3,0,2]\sim[-3,-1]\sim[-2,1,0]\sim[-1]$
$[6,6]\sim[0,0,-1,-1]\sim[0,1,0]\sim[1,0,0]\sim[1]$
$[4,6]\sim[6,4]\sim[-1,4]\sim[0,0,-1,4]\sim[0,1,5]\sim[1,0,5]\sim[-1]$
$[2,4]\sim[4,2]\sim[3,-1,1]\sim[3,-2,-1]=[-2,-1,3]\sim[-1,4]$
$[2,5]\sim[5,2]\sim[6,1,3]=[1,3,-1]\sim[1,4,1,0]\sim[4,1,0,1]\sim[4,2]$

長さが1のもの.
$[1]=[4,0,-3]=[4,0,-3,0,0]=[4,3,3,3,0]\sim[3,3,3,0,4]\sim[3,3,7]\sim[3,0,3]=[-1]$

位数が4の元

位数が4の元は、次の42個です.
$[3],[4]$
$[1,5],[1,6],[2,3],[2,6],[3,2],[3,4],[4,3],[4,5],[5,1],[5,4],[6,1],[6,2]$
$[0,2,1],[0,2,2],[1,2,0],[1,2,6],[2,2,0],[2,2,5],[3,2,3],[3,2,6],[5,2,2],[5,2,5],[6,2,1],[6,2,3],[0,3,0],[0,3,1],[1,3,0],[1,3,4],[2,3,3],[2,3,6],[3,3,2],[3,3,3],[4,3,1],[4,3,6],[6,3,2],[6,3,4]$
$[0,4,2,2],[0,4,2,6],[0,5,3,4],[0,5,3,6]$

同じように長さが小さいもの帰着させていくことで、
これらが互いに共役であることを示します。

長さが4のもの
$[0,4,2,2]\sim[2,0,4,2]\sim[6,2]$
$[0,4,2,6]\sim[6,0,4,2]\sim[3,2]$
$[0,5,3,4]\sim[4,0,5,3]\sim[2,3]$
$[0,5,3,6]\sim[6,0,5,3]\sim[11,3]\sim[4,3]$

長さが3のもので0,1,6を含むもの.
$[0,2,1]\sim[1,0,2]=[3]$
$[0,2,2]\sim[2,0,2]=[4]$
$[1,2,0]\sim[2,0,1]=[3]$
$[1,2,6]\sim[2,-1,1]=[3,2]$
$[2,2,0]\sim[2,0,2]=[4]$
$[0,3,0]\sim[0,0,3]=[3]$
$[0,3,1]\sim[1,0,3]=[4]$
$[1,3,0]\sim[3,0,1]=[4]$
$[6,2,1]\sim[2,1,6]=[1,5]$
$[1,3,4]\sim[4,1,3]=[3,2]$
$[4,3,1]\sim[3,1,4]=[2,3]$
$[4,3,6]\sim[3,-1,4]=[4,5]$
$[3,2,6]\sim[6,3,2]\sim[2,-1,3]=[3,4]$
$[6,2,3]\sim[2,3,6]\sim[3,-1,2]=[4,3]$
$[6,3,4]\sim[4,-1,3]=[5,4]$

長さが3で0,1,6を含まないもの.
$[2,2,5]\sim[1,-1,1,5]=[1,-2,4]\sim[4,1,-2]=[3,-3]$
$[3,2,3]\sim[2,3,3]\sim[3,3,2]=[0,-3,-3,-3,0,2]=[0,-3,-3,-1]\sim[-1,0,-3,-3]=[-4,-3]$
$[5,2,2]\sim[5,2,5]\sim[2,5,5]=[2,-1,1,-1]=[3,2,-1]\sim[2,-1,3]=[3,4]$
$[3,3,3]\sim[0,-3,0]\sim[0,0,-3]=[-3]$

長さが2のもの
$[1,5]\sim[5,1]=[4,-1,0]\sim[-1,0,4]=[3]$
$[1,6]\sim[6,1]=[5,-1,0]\sim[-1,0,5]=[4]$
$[2,3]\sim[3,2]=[0,-3,-3,-3,0,2]=[0,-3,-3,-1]\sim[-1,0,-3,-3]\sim[-4,-3]=[3,4]$
$[2,6]\sim[6,2]=[2,-1]=[3,1,0]=[1,0,3]=[4]$
$[3,4]\sim[4,3]=[4,0,-3,-3,-3,0]=[1,-3,-3,0]\sim[-3,-2]=[4,5]$
$[4,5]\sim[5,4]\sim[-2,-3]=[-1,1,-2]\sim[-2,-1,1]=[-1,2]\sim[0,1,3]\sim[3,0,1]=[4]$

長さが1のもの
$[3]\sim[0,-5,-2,0][3][2,5]=[0,-5,-2,0,3,2,5]=[0,-5,1,2,5]=[0,-6,1,5]=[0,-7,4]\sim[0,0,4]=[4]$

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