2015年12月14日月曜日

トポロジー入門演習(ヒント集)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

発表の残っている問題に解説やヒントを書いていきます.
第2,3回の問題のヒントは (こちら) に書きました.

第4回のプリントで残っている問題

35(3)
$(X, d)$ を距離空間とし、$\mathcal{O}$  を $d$ によって定まる距離位相とする.位相空間 $(X,\mathcal{O})$ において、
$$B(x) =\left\{U\left(x,\frac{1}{n}\right)|n\in{\mathbb N}\right\}$$
は点 $x$ の近傍基であることを示せ.

問題では $U$ ではなく、 $N$ が用いられていますが、同じ、$x$ を中心とした半径 $1/n$ の開球を表します.出典の本がその記号を採用していたのでそのように書いていました.

(問題解説)
$\mathcal{B}$ がある点 $x$ の近傍基であると言うことは、

任意の $x$ の近傍 $U$ において、ある近傍基の元 $B\in \mathcal{B}$ が存在して、$x\in B\subset U$ となること

をいいます.
この $B(x)$ も、任意の $x$ の近傍 $U$ において、そのような $B$ として $U\left(x,\frac{1}{n}\right)$
が取れることをいいます.
指定教科書では、近傍 $U$ は開近傍しか考えていませんので、開近傍の中には、距離空間の場合必ずその点を中心とした開球が取れます.
(開近傍でなければ、まず、近傍の中に、$x$ を含む開集合 $V$ で、$x\in V\subset U$ となる開集合を取れば議論は開集合の話に帰着されます.)

問題36
次を示せ.

(1)   ${\mathbb R}$ 上の通常の距離位相において、任意の開区間 $(a, b)$ がその開基になる.
(3)    n 次元ユークリッド空間 ${\mathbb R}^n$ において、有理点(座標が全て有理数となる点)の$1/m$ 近傍の全体
$$\beta=\{U((r_{1},\cdots,r_{n});1/m)|r_{i}\in {\mathbb Q},i=1,\cdots,n,m\in {\mathbb N}\}$$
は${\mathbb R}^{n}$の開基である.
(4)    $\beta$ を集合 $X$ の部分集合の族とする.$\beta$ がある位相空間の開基となるための必要十分条件は、
(a)  $X$は$\beta$ に属する集合の和となる.
(b)  $\beta$ に属する任意の2つの集合の共通部分は、$\beta$ に属する集合の和となる.
を満たすことである.

(略解答もしくはヒント)
(1) $U$ を任意の ${\mathbb R}$ の開集合とすると、任意の $x\in U$ に対して、ある$x$ を中心とする $\epsilon$-近傍で $U(x,\epsilon)\subset U$ となるものが存在する. $U(x,\epsilon)$ は開区間になります.
(3) ${\mathbb R}^n$ の任意の開集合 $U$ と、$U$ 上の、任意の点 $(x_1,\cdots,x_n)$ において、距離位相から、ある $\epsilon>0$ に対して、$U((x_1,\cdots,x_n),\epsilon)\subset U$ となる.
また、$U((x_1,\cdots,x_n),\epsilon)$ の中に成分全てが有理数の点が存在することを示せ.
その点を使って、$\beta$の元で、$(x_1,\cdots,x_n)$ を含むものを探す.
(4) $\beta$ の任意個の和集合によって得られる部分集合の族を $\mathcal{O}$ とおく.
$\mathcal{O}$ が $X$ 上の位相を与えることと、この条件が同値であることを示す.

問題37
次を示せ.
(1) 実数直線 ${\mathbb R}$ において、部分集合の族
$${\mathcal L}=\{(a,\infty),(-\infty,b)|a,b\in{\mathbb Q}\}$$
は ${\mathbb R}$を生成する.
(2) ゾルゲンフライ直線 ${\mathbb S}$ において、部分集合の族
$${\mathcal L}=\{[a,\infty),(-\infty,b)|a,b\in{\mathbb Q}\}$$
は ${\mathbb S}$ を生成する.
(ヒント)
(1,2)  これらの共通集合によって、${\mathbb R},{\mathbb S}$ の開基が作れるか?

問題38
$X=\{1,2,3,4\},\ {\mathcal T}=\{\{1,2\},\{2,3\},4\}$ とする.
${\mathcal T}$ によって生成される集合 $X$ の位相を求めよ.
(解説)
$\mathcal{T}$ のいくつかの共通集合によって作れらるものを開基とし、その開基の和集合によって作られるものを求めよ.その集合 $\mathcal{O}$ が $X$ 上のある位相となる.
$\mathcal{O}$ を全て列挙せよ.

問題39
$X={\mathbb Z},\ {\mathcal L}=\{\{[3n-1,\infty)\cap X|n\in{\mathbb Z}\},\{(-\infty,2n]\cap X|n\in{\mathbb Z}\}\}$ とする.
${\mathcal L}$ によって生成される $X$ 上の位相は離散位相か?\\
(解説)
この$\mathcal{L}$ から全ての ${\mathbb Z}$ の任意の一点集合を生成することができるかどうか調べよ.$\mathcal{L}$ の有限個の共通集合によって全ての一点集合が構成できるか.


問題40
ゾルゲンフライ直線(下限位相(右半開区間位相))、上限位相(左半開区間位相)、において以下の問題に答えよ.
(1) 上(及び下)限位相に近傍系を導入せよ.(導入した集合族が近傍系であることを示し、その位相がゾルゲンフライ直線の位相と一致することを確かめよ.)
(2) ${\Bbb R}$ 上の上限位相と下限位相は普通の ${\Bbb R}$ 上の距離位相より大きいことを示せ.
(3) ゾルゲンフライ直線は離散直線よりは粗いことを示せ.
(4) 上限位相と下限位相は同相であることを示せ.
(5) 上限位相もしくは下限位相より大きい位相は離散位相だけであることを示せ.

(ヒント)
下限位相とは、開基として $[a,b)$ なる区間全体を取るものである.
(1) このような開基の元を近傍系として用いよ.
(2) 普通の距離位相にない開集合をみつけよ.
(3) ゾルゲンフライ曲線は一点が和集合になることを示せ.他に、${\mathbb R}$ 上の離散空間に見られない位相的特徴をあげてもよい.
(4) 実数の向きを逆にしてみよ.
(5) 上限位相の開集合と下限位相の開集合から一点集合を生成せよ.

問題41

離散空間 $(X,{\mathcal O})$ 上の任意の関数 $X\to {\Bbb R}$ は連続であることを示せ.
また、逆に任意の関数$X\to {\Bbb R}$ が連続なら、$(X,{\mathcal O})$ は離散空間であることを示せ.

(ヒント)
開集合の逆像が開集合であることが、位相空間の間の連続写像の定義.
離散空間なので、$X$ の任意の部分集合が開集合となることを用いよ.
逆は、任意の一点集合が開集合を要請するような写像を作れ.


問題42
$f:X\to X'$ を位相空間 $(X,{\mathcal O})$と$(X',{\mathcal O}')$ の間の写像とし、$A,B$ を位相空間$(X,{\mathcal O})$ 上の閉集合とし、$X=A\cup B$ とする.
$f_A:A\to X'$と$f_B:B\to X'$を制限写像とする.
このとき、以下を示せ.
$$f:(X,{\mathcal O})\to (X',{\mathcal O}')\text{が連続}\Leftrightarrow f_A:(A,{\mathcal O}_A)\to(X',{\mathcal O}')\text{と}f_B:(B,{\mathcal O}_B)\to (X',{\mathcal O}')\text{が両方連続}$$

(ヒント)
右向きは部分位相の定義から明らか.
左向き.$F$ を任意の閉集合であるとき、$f^{-1}(F)$ が $(X,\mathcal{O})$ の
閉集合であることをしめす.


問題48
ある位相空間上の連続関数 $f:X\to Y$ がある.
$X,Y$ の位相をそれぞれ大きくするか、小さくするかどちらの場合において
$f$ の連続性が保たれるか?

(問題解説)
$X,Y$ の任意の任意の位相において開集合の数を増やしたり、減らしたりしても
$f$ が連続のままであるのはどちらか?考えよという問題です .
連続の定義が分かっていれば分かると思います.
例えば、$X$ の位相は $f$ を連続にするような最小の位相を入れてみよ.

0 件のコメント:

コメントを投稿