2019年12月12日木曜日

トポロジー入門(第7回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]



前回は開基を定義しました。
開基とは開集合の集合ですが、
任意の開集合が開基に属する開集合を使って覆えるものをいいます。

今回は
可算公理
についてやりました。

定義7.1
$(X,\mathcal{O})$ が第2可算公理を満たすとは、
$X$のある開基として、可算個のものが取れるときをいう。

定義7.2
$(X,\mathcal{O})$ が可分であるとは、ある可算部分集合 $D\subset X$ が存在して、
$X=\overline{D}$ となることをいう。

このような部分集合 $\overline{D}=X$ となる部分集合のことを稠密部分集合といいます。
まず、次の定理を示しました。

定理7.1
$(X,\mathcal{O})$ が第2可算公理をみたすとき、$X$ は
第1可算公理を満たし、可分である。

(証明)
$\mathcal{B}$ を $X$ の可算開基とします。
$\mathcal{N}^\ast(x)=\{U\in \mathcal{B}|x\in U\}$ とします。
このとき、$\mathcal{N}^\ast(x)$ が $x$ の基本近傍系であることを示します。
$\forall U\in \mathcal{N}(x)$ とします。
このとき、$x\in V\subset U$ となる開集合$V$ が存在して、さらに開基の定義から
$x\in W\subset V$ となる $W\in \mathcal{B}$ がなりたち、
$\mathcal{N}^\ast(x)$ の定義から、$W\in \mathcal{N}^\ast(x)$ が成り立ちます。
ゆえに、$\mathcal{N}^\ast(x)$ は基本近傍系です。
$\mathcal{N}^\ast(x)$ は可算集合の部分集合なので、高々可算集合です。
つまり、$X$ は第1可算公理を満たします。

$\forall U\in \mathcal{B}$ に対して、$a_U\in U$ を選んでおきます。
このとき、$D=\{a_U|U\in \mathcal{B}\}$ とすると、$D$ は可算集合です。
$\forall x\in X $ と$\forall U\in\mathcal{N}(x)$ を取ると、$x\in V\in \mathcal{B}$ が存在して、
$V\subset U$ となります。よって、$a_V\in V$ を満たし、$\emptyset\neq V\cap D\subset U\cap D$ ですので、とくに$U\cap D\neq \emptyset$ となります。

よって、$D$ は $X$ の稠密部分集合ですので、$X$ は可分空間となります。$\Box$
さらに次の定理を示します。

定理7.2 距離位相空間 $(X,\mathcal{O}_d)$ は、可分であることと第2可算であることは
同値である。

(証明)定理7.1から可分であるなら、第2可算であることをしめせばよい。
$A\subset X$ を可算稠密集合とします。
$\mathcal{B}=\{B_d(x,\frac{1}{n}|x\in A,n\in\mathcal{N}\}$ 
は可算集合なので、$\mathcal{B}$ が開基であることを示せばよいことになります。
$\forall U\in \mathcal{O}$ と $\forall x\in U$ に対して、
$B_d(x,\frac{1}{n})\subset U$ となるような$n\in {\mathbb N}$ が存在します。
また、$A$ は稠密なので、$a\in B_d(x,\frac{1}{2n})$ となる $a$ が存在します。
よって、$x\in B_d(a,\frac{1}{2n})$ がなりたち、
$B_d(a,\frac{1}{2n})\subset B_d(x,\frac{1}{n})$ がなりたちます。
なぜなら、$z\in B_d(a,\frac{1}{2n})$ なら、
$d(z,x)\le d(z,a)+d(a,x)<\frac{1}{2n}+\frac{1}{2n}=\frac{1}{n}$ となるからです。
よって、$x\in B_d(x,\frac{1}{2n})\subset B_d(x,\frac{1}{n})\subset U$ となるので
$\mathcal{B}$ が開基であることがわかります。$\Box$


例を考えましょう。

例1
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^1})$ を考えると、距離位相空間なので、${\mathbb Q}$
が可算稠密集合なので、可分空間になります。
よって、第2可算公理を満たし、かつ第1可算公理も満たします。
開基として $\mathcal{B}=\{B_d(q,\frac{1}{n})|q\in {\mathbb Q},n\in{\mathbb N}\}$ を
とれますが、実際、$\{(a,b)|a,b\in {\mathbb R}\}$を取っておいても
開基となります。つまり、開区間が開基となる位相空間です。

例2
$({\mathbb R},\mathcal{O}_l)$ を以下のように定義します。
$\mathcal{O}_l$ を $\mathcal{B}_l=\{[a,b)|a,b\in {\mathbb R}\}$ を開基とする
位相空間とし、下限位相もしくはゾルゲンフライ直線といいます。
このときも、${\mathbb Q}$ が可算稠密集合になるので可分な位相空間です。
しかし、第2可算を満たしません。

なぜなら、$\mathcal{B}$ を可算開基として矛盾を導きます。
開集合 $[x,x+1)$ に対して $x\in U_x\subset [x,x+1)$ となる開基 $U_x\in \mathcal{B}$ 
が存在します。よって、$\{U_x|x\in{\mathbb R}\}$ は $\mathcal{B}$ の
部分集合ですが、可算濃度ではありません。
というのも、$x\neq x’$ に対して $\min(U_x)=x$ であり、$\min(U_{x’})=x’$ であり
$U_x\neq U_{x’}$ であるからです。

よって、可分で第2可算公理を満たさないので、$({\mathbb R},\mathcal{O}_l)$ 
は距離化できない位相空間ということになります。

ここで次の定義をします。

定義7.3
$X$ 上の位相 $\mathcal{O}_1$ と $\mathcal{O}_2$ が
集合として $\mathcal{O}_1\subset \mathcal{O}_2$ を満たすとき、
$\mathcal{O}_2$ は $\mathcal{O}_1$ より強い位相、また、
$\mathcal{O}_1$ は $\mathcal{O}_2$ より弱い位相といいます。
そのとき、$(X,\mathcal{O}_1)\le (X,\mathcal{O}_2)$ とかいたり、
単に、$\mathcal{O}_1\le \mathcal{O}_2$ と書いたりします。
$\mathcal{O}_1\subset \mathcal{O}_2$ かつ $\mathcal{O}_1\neq \mathcal{O}_2$
が成り立つとき、$\mathcal{O}_2$ は $\mathcal{O}_1$ より真に強い
位相といい、$\mathcal{O}_1<\mathcal{O}_2$ と書きます。

$X$ 上の位相はこの $<$ および $\le$ によって順序集合となります。
一番強い位相は離散位相空間で、一番弱い位相は、密着位相空間です。

実は、$\mathcal{O}_{d^1}<\mathcal{O}_l$ がなりたちます。
これはレポート問題に出したので解いてみてください。

最後に次の例を挙げて終わります。

例3
$(X,\mathcal{O}_{cf})$ を $\mathcal{O}_{cf}=\{U\subset X||U^c|<\aleph_0\}$
とします。
この位相を補有限位相といいます。
$X={\mathbb R}$ として考えます。
この位相空間 $({\mathbb R},\mathcal{O}_{cf})$ は第1可算でないことがわかります。
このとき、$\forall x\in {\mathbb R}$ に対して、基本近傍系 $\mathcal{N}^\ast(x)$ 
が可算集合であるとします。

このとき、
$\{x\}=\cap_{U\in \mathcal{N}(x)}U$ であることを示します。
$\subset $ は明らかです。$y\neq x$ を取ると、
$X\setminus\{y\}\in \mathcal{N}(x)$ であるから、$y\not\in \cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U$
となります。よって、$\supset$ がなりたちます。

また、$\{x\}=\cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U=\cap_{U\in\mathcal{N}^\ast(x)}U$ 
がなりたちます。最後の等式は $\subset$ であることは、基本近傍系が
近傍系の部分集合であることからわかります。
$\supset$ であることは、$y\in \cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U$ に対して、
$\forall U\in \mathcal{N}(x)$ に対して、ある $V\in \mathcal{N}^\ast(x)$ が
存在して、$z\in V\subset U$ であるから、$z\in U$ となります。
つまり、$z\in \cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U$ であることになります。

よって、
$$\{x\}=\cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U=\cap_{U\in\mathcal{N}^\ast(x)}U$$
であり、この補集合をとると、
$$\{x\}^c=\cup_{U\in \mathcal{N}(x)}U^c=\cup_{U\in\mathcal{N}^\ast(x)}U^c$$
となります。ここで、$X$ が実数の場合、最左辺は非可算集合であり、
最右辺は、高々可算集合であり、矛盾します。
よって、$({\mathbb R},\mathcal{O}_{cf})$ は第1可算ではないということになります。
つまり、距離化可能でもありません。

トポロジー入門(第6回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]


今回は近傍系を元に位相空間を構成することを行いました。
前回最後に以下を定義しました。

定義5.5
$X$ を集合とする。$\forall x\in X$ に対して $\mathcal{N}(x)\subset \mathcal{P}(X)$
を次を満たすものとする。
(1) $\mathcal{N}(x)\neq \emptyset\land (V\in \mathcal{N}(x)\to x\in V)$
(2) $\forall V_1,V_2\in \mathcal{N}(x)(V_1\cap V_2\in \mathcal{N}(x))$
(3) $\forall V\in \mathcal{N}(x)(V\subset W\to W\in \mathcal{N}(x))$
(4) $\forall V\in \mathcal{N}(x)\exists W\in \mathcal{N}(x)(y\in W\to V\in \mathcal{N}(y))$
このとき、$\mathcal{N}(x)$ を$x$ の近傍系といい、$\mathcal{N}(x)$ の元を
$x$ の近傍という。

また、近傍系を集めた集合 $\mathcal{N}=\{\mathcal{N}(x)|x\in X\}$ を$X$ の近傍系という
ことにします。

ここでの話題は
近傍系と開集合系の同値性
です。

開集合系をもつ位相空間 $(X,\mathcal{O})$ から、
ある近傍系を定義することができます。

定義6.1 $(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。$\mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ を
$$\{V\in \mathcal{P}(X)|\exists U\in \mathcal{O}(x\in U\subset  V)\}$$
として定義する。

このとき、以下を証明をしました。

定理6.1 $(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。$\forall x\in X$ に対して
$\mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ は $x$ の近傍系である。

(証明) まず、開集合 $U\in \mathcal{O}$ と $x\in U$ に対して
$U\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ であることは簡単にわかります。

近傍系の条件(1)から(4)を満たすことを示します。
(1) $X\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ を満たすので、成り立ちます。
(2) $V_1,V_2\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ とすると、
$x\in U_1\subset V_1$ かつ $x\in U_2\subset V_2$ を満たす $U_i\in \mathcal{O}$ を
が存在します。よって
$x\in U_1\cap U_2\subset V_1\cap V_2$ かつ $U_1\cap U_2\in \mathcal{O}$
を満たすので、$V_1\cap V_2\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ となります。
(3) $V\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ に対して、$U\in \mathcal{O}$ が存在して、
$x\in U\subset V$ が存在します。$V\subset W$ とすると、
$U\subset V\subset W$ が成り立ち、とくに、$x\in U\subset W$ となるので、
$W\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ となります。
(4) $\forall V\in\mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ に対して $x\in W\subset V$ を満たす
$W\in \mathcal{O}$ が存在します。
証明の最初の記述から $\forall y\in W$ に対して、
$W\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(y)$ となります。
よって、$W\subset V$ であるから、$V\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(y)$ となります。
$\Box$


各点 $x$ に対して $x$ の近傍系 $\mathcal{N}(x)$ を
定義したとき、逆に $X$ に位相を定義することができます。

定義6.2   各点 $x$ に対して $\mathcal{N}(x)$ を近傍系とすると、
$\mathcal{O}_{\mathcal{N}}$を $\{U\subset X|\forall x\in U(U\in\mathcal{N}(x))\}$ と定義する。

 そのとき、以下を示しました。

定理6.2 $\mathcal{O}_{\mathcal{N}}$ は開集合系である。

(証明) (I) の成立は省略します。
(II) を証明をします。$U_1,U_2\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}}$ とします。
$\forall x\in U_1\cap U_2$ とすると、$x\in U_1$ かつ $x\in U_2$ が成り立ち、
$U_1\in \mathcal{N}(x)$ かつ  $U_2\in \mathcal{N}(x)$ を満たします。
よって、近傍系の定義の(2)から $U_1\cap U_2\in \mathcal{N}(x)$ を満たすので、
$U_1\cap U_2\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}}$ が成り立ちます。
(III) を証明します。$\{U_\lambda\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}}|\lambda\in \Lambda\}$ とします。
このとき、$x\in \cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda$ とすると、
$\exists \lambda\in \Lambda(x\in U_\lambda)$ となり、$U_\lambda\in \mathcal{N}(x)$
となります。よって 近傍の条件(3) から$\cup_{\lambda\in\Lambda}U_\lambda\in \mathcal{N}(x)$ ですから、
$\cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}}$ が成り立ちます。
よって、位相の条件が満たされるので、$\mathcal{O}_{\mathcal{N}}$ は開集合系となります。$\Box$

まとめると $X$ を集合としたとき、写像
$$\{\mathcal{O}|\mathcal{O}\text{は $X$ 上の開集合系}\}\to \{\mathcal{N}|\mathcal{N}\text{は$X$ の近傍系}\}$$
$$\mathcal{O}\mapsto \mathcal{N}_{\mathcal{O}}$$
を定義しました。また、この逆向きの写像
$\mathcal{N}\mapsto \mathcal{O}_{\mathcal{N}}$ も定義できました。

実際、これらの写像が逆写像の関係であることを示しましょう。

定理6.3 $\mathcal{O}_{\mathcal{N}_{\mathcal{O}}}=\mathcal{O}$ である。

(証明) $U\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}_{\mathcal{O}}}$ とします。
このとき、$\forall x\in U$ に対して $U\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ が成り立ちます。
よって $x\in V_x\subset U$ となる $V_x\in \mathcal{O}$ が存在して、
$U=\cup_{x\in U}V_x$ が成り立ちます。
(このイコールの証明は省略します。)
位相の条件 (III) より、$U\in \mathcal{O}$ となります。

逆に、$U\in \mathcal{O}$ が成り立つとすると、$\forall x\in U$ に対して $U\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}}(x)$ 
が成り立ちます。これは、$U\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}_{\mathcal{O}}}$ 
が成り立つことを意味します。$\Box$

また、次が示されます。

定理6.4 $\mathcal{N}_{\mathcal{O}_{\mathcal{N}}}=\mathcal{N}$ である。

$\forall x$ に対して、$V\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}_{\mathcal{N}}}(x)$ とします。
このとき、$\exists U\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}}(x\in U\subset V)$ が成り立ちます。
また、$U\in \mathcal{N}(x)$ ですから、(3)から $V\in \mathcal{N}(x)$ が成り立ちます。

逆に、$V\in\mathcal{N}(x)$ とします。
$V’=\{y\in X|V\in \mathcal{N}(y)\}$ と定義します。
このとき、$z\in V’$ に対して $V\in \mathcal{N}(z)$ であるから、とくに $z\in V$ であり、
$V’\subset V$ が成り立ちます。
また、$\forall y\in V’$ とすると、$V\in \mathcal{N}(y)$ が成りたち、(4)から
$\exists W\in \mathcal{N}(y)$ かつ $z\in W\to V\in \mathcal{N}(z)$ が成り立ちます。
よって、$z\in V’$ であるから、
$W\subset V’$ が成り立ちます。(3) より、$V’\in \mathcal{N}(y)$ が成り立ちます。
これは、$V’\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}}$ であることがわかります。
よって、$V\in \mathcal{N}_{\mathcal{O}_{\mathcal{O}}}$ がわかりました。$\Box$

ここで以下を示します。
定理6.5
$O=\{\mathcal{O}|\mathcal{O}\text{は $X$ 上の開集合系}\}$
とし、
$M=\{\mathcal{N}|\mathcal{N}\text{は$X$ の近傍系}\}$
としたとき、$\phi:O\to M\ \ (\mathcal{O}\mapsto \mathcal{N}_{\mathcal{O}})$
としたとき $\phi$ は全単射である。

(証明)
$\forall \mathcal{O}_1, \mathcal{O}_2\in O$ を取ります。
このとき、$\phi(\mathcal{O}_1)=\phi(\mathcal{O}_2)$ であるとすると、
$\mathcal{N}_{\mathcal{O}_1}=\mathcal{N}_{\mathcal{O}_2}$ であるから、$\mathcal{O}_{\mathcal{N}_{\mathcal{O}_1}}=\mathcal{O}_{\mathcal{N}_{\mathcal{O}_2}}$ 
であり、定理6.3から $\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ が成り立ちます。
よって $\phi$ は単射であることがわかります。$\phi$ が全射であることは
定理6.4からわかります。 $\Box$

定理6.6 
$(X,\mathcal{N}_X)$ と $(Y,\mathcal{N}_Y)$ を $X,Y$ 上の位相空間とする。
このとき、$f:X\to Y$ が連続であることの必要十分条件は、$\forall x\in X$
において、$\forall V\in \mathcal{N}_Y(f(x))\to \forall f^{-1}(V)\in \mathcal{N}_X(x)$
が成り立つことである。

(証明) 
$f$ が連続であるとします。
このとき、$\forall V\in \mathcal{N}(f(x))$ とすると、
$f(x)\in U\subset V$ となる $U\in \mathcal{O}_{\mathcal{N}_Y}(f(x))$ が存在して、
$x\in f^{-1}(U)\subset f^{-1}(V)$ が成り立ち、連続性から $f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$ となります。
$f^{-1}(V)\in \mathcal{N}(x)$ が成り立ちます。

逆を示します。$\forall U\in \mathcal{O}_Y$ とします。
このとき、$\forall x\in f^{-1}(U)$ に対して $U\in \mathcal{N}_Y(f(x))$
ですから条件より、$f^{-1}(U)\in \mathcal{N}_X(x)$ となるので、
$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}$ が成り立ちます。
よって $f$ は連続となります。$\Box$


次に
基本近傍系
について言及しました。

定義6.3
$\mathcal{N}(x)$ を $x$ の近傍系とする。
$\mathcal{N}^\ast(x)\subset \mathcal{N}(x)$ が基本近傍系であるとは、
$\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に対して $\exists V’\in \mathcal{N}^\ast(x)(V’\subset V)$ を
満たすものをいう。

つまり、基本近傍系とは、近傍系の部分集合で近傍として基本的なものを
含んでいるものです。基本的というのは、いくらでも小さい近傍が含まれるということを意味します。


例えば、$X$ 上の距離位相空間 $\mathcal{O}_d$ において、
$\mathcal{N}_d=\mathcal{N}_{\mathcal{O}_d}$ と定義します。
$\mathcal{N}^\ast_d(x)=\{B_d(x,\epsilon)\subset X|\epsilon>0\}$ としますと、
$\mathcal{N}^\ast_d(x)$ は$\mathcal{N}_d$ の基本近傍系となります。

定義6.3.5
$(X,\mathcal{O})$ が第1可算空間であるとは $\forall x\in X$ に
対して高々可算個の基本近傍系をもつことをいう。


例えば、任意の距離位相空間 $\mathcal{O}_d$ は第1可算空間です。
基本近傍系 $\mathcal{N}^\ast(x)$ として、$\mathcal{N}^\ast(x)=\{B_d(x,\frac{1}{n})|n\in\mathcal{N}\}$ とすると
$\mathcal{N}^\ast(x)$ は基本近傍系になります。
というのは、$U\mathcal{N}(x)$ に対して、$B_d(x,\epsilon)\subset U$ となる$\epsilon>0$
が存在しますが、$\frac{1}{n}<\epsilon$ を取れば、$B_d(x,\frac{1}{n})\subset B_d(x,\epsilon)\subset U$ となるからです。

開基を定義します。

定義6.4
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とし、$\mathcal{B}\subset \mathcal{O}$ が開基
であるとは、$\forall U\in \mathcal{O}$ と $\forall x\in U$ に対して、$B\in \mathcal{B}$
が存在して、$x\in B\subset U$ となることをいう。

最後に次の定理を示して終わりました。

定理6.7
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。$\mathcal{B}\subset \mathcal{O}$
が開基であることは、$\forall U\in \mathcal{O}$ に対してある $\mathcal{B}’\subset \mathcal{B}$
が存在して、$U=\cup\mathcal{B}’$ とできることをいう。

証明
$\mathcal{B}\subset \mathcal{O}$ を開基とします。
このとき $\forall U\in \mathcal{O}$ に対して、$\mathcal{B}’=\{V\subset X|V\in \mathcal{B},x\in V\subset U\}$
とすると、$\cup\mathcal{B}’=U$ となります。
というのは、$\subset$ は、$\forall V\in \mathcal{B}’$ に対して、$V\subset U$
となり、$\supset$ は、$\forall x\in U$ に対して$x\in V\in \mathcal{B}’$
からです。
逆を示します。$\forall U\in \mathcal{B}$ に対して $U=\cup\mathcal{B}’$ かつ $\mathcal{B}’\subset \mathcal{B}$
となる$\mathcal{B}’$ が存在するので、
$\forall x\in U$ に対して、$V\in \mathcal{B}’$ が存在して、$x\in V$ となるので、
$x\in V\subset U$ となります。$\Box$

2019年11月23日土曜日

トポロジー入門(第5回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]


前回残した定義があったのでそれを説明をしました。

定義5.1
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。
$F\subset X$ が $F^c\in\mathcal{O}$ であるとき、$F$ を閉集合という。

定義5.2
閉集合全体からなる集合を閉集合系という。
閉集合系とは、$\mathcal{C}=\{F\subset X|F^c\in \mathcal{O}\}$ であり、
以下を満たす。
(I) $X,\emptyset\in \mathcal{C}$
(II) $F_1\cdots, F_n$ が有限個の閉集合とすると、$F_1\cup\cdots \cup F_n\in \mathcal{C}$
を満たす。
(III) $\{F_\lambda\in \mathcal{C}|\lambda\in \Lambda\}$ を閉集合族とすると$\cup_{\lambda\in \Lambda}F_\lambda\cap \in \mathcal{C}$を満たす。


定義5.3
$(X,\mathcal{O}_X)$ と $(Y,\mathcal{O}_Y)$ を位相空間とする。
$\mathcal{C}_X,\mathcal{C}_Y$ を $X,Y$ の閉集合系とする。
写像 $f:X\to Y$ が 
$\forall U\in \mathcal{O}_X\Rightarrow f(U)\in \mathcal{O}_Y$ を満たすとき$f$ は開写像という。
また、
$\forall F\in \mathcal{C}_X\Rightarrow f(F)\in \mathcal{C}_Y$ を満たすとき $f$ は閉写像という。

また、$f$ が全単射であり、$\forall U\in \mathcal{O}_X\Leftrightarrow f(U)\in \mathcal{O}_Y$
が成り立つとき、$f$ は同相写像という。

$(0,1)\to {\mathbb R}_{>0}$ を
$x\mapsto \tan(x)$ は $(0,1)$ と ${\mathbb R}_{>0}$ の間の同相写像を与えます。
全単射であることはすぐわかります。
また、連続であることは、$\tan (x)$ が連続関数であることからわかります。
(連続関数であることは位相空間同士の連続写像であることと同値であるから)
また、$\text{Arctan}(x)$ が連続であることから、 $\tan(x)$ の逆写像も連続となります。
このようにして$(0,1)$ と ${\mathbb R}_{>0}$ が連続であることがわかります。

また、${\mathbb R}\to {\mathbb S}^1=\{(x,y)\in{\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\}$ 
が全射な連続な開写像であることがわかるのですが、
これはまた後日行います。

$(X,\mathcal{O})$ を密着位相ではない位相空間とします。
このとき、
$i:(X,\mathcal{O})\to (X,\{\emptyset,X\})$ を恒等写像とすると、
$i$ は連続な全単射で、同相写像ではありません。
もし同相なら、開集合系の濃度は特に等しくなります。

次の定理を示しました。

定理5.1
$(X,\mathcal{O}_X)$ と $(Y,\mathcal{O}_Y)$ $(Z,\mathcal{O}_Z)$ を位相空間とする。
$f:X\to Y$ と $g:Y\to Z$ が連続写像とする。
このとき、$g\circ f$ も連続写像となる。

(証明)
$\forall U\in \mathcal{O}_Z$ とすると、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_Y$ が成り立ち、
さらに、$g^{-1}(f^{-1}(U))=(f\circ g)^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$ が成り立つので、
$g\circ f$ は連続写像となります。


今回は、
位相空間の内部、閉包、境界
についてやりました。

まずは、内部と閉包と境界を定義します。
定義5.4 $(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。
$A^\circ$ を $A$ に包まれる最大の開集合と定義する。
$\bar{A}$ を $A$ を包む最小の閉集合と定義する。
$\partial A=\bar{A}\setminus A^\circ$ と定義する。

とくに、$A^\circ$ は開集合であり、$\bar{A}$ は閉集合になります。
ここで次の定理を示しておきます。

定理5.2
(1) $A^\circ=\{a\in X|\exists U\in \mathcal{O}(a\in U\subset A)\}$
(2) $\bar{A}=\{a\in X|\forall U\in\mathcal{O}(a\in U\to A\cap U\neq \emptyset\}$
(3) $\partial A=\{a\in X|\forall U\in \mathcal{O}(a\in U\to (A\cap U\neq \emptyset\land A^c\cap U\neq \emptyset)\}$

(証明)
(1) まず、(1) の右辺を $A’$ とします。
$A’=\cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$ となることを示します。
$x\in  A’$ ならば、$U\in \mathcal{O}$ が存在して $x\in U\subset A$ を満たします。
とくに、$x\in \cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$ が成り立ちます。
一方、$x\in \cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$とすると、$\exists U\in \mathcal{O}$
であり、$x\in U$ であるが、$U\subset A$ であることから $x\in A’$ となり、
合わせて、$A’=\cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$ が示せました。

最後に、$A’$ が $A$ に包まれる最大の開集合であることを証明をします。
まず、$A’$ は開集合の和集合なので、開集合です。
もし、$A'\subset A''\subset A$ となる開集合 $A’’$ が存在したとすると、
$A’’$ は $A’’\subset A$ かつ $A\in \mathcal{O}$ を満たすので、
$A’’\subset \cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U=A'$ であるから、
$A’’=A’$ となります。
つまり、$A’’$ は$A$ に包まれる最大の開集合ということになります。

(2) この(2) の右辺を $B’$ とすると、
$B’=\cap_{A\subset F,F\in \mathcal{C}}F$ となることを示します。
$(B’)^c=\{a\in X|\exists U\in \mathcal{O}(a\in U\to A\cap U=\emptyset)\}=\{a\in X|\exists U\in \mathcal{O}(a\in U\subset A^c)\}=\cup_{U\subset A^c,U\in\mathcal{O}}U$
よって、
$B’=\cap_{U\subset A^c,U\in\mathcal{O}}U^c=\cap_{A\subset F,F\in\mathcal{C}}F$
となります。
ここで、$A\subset B’’\subset B’$ となる閉集合とすると、
$B’’\supset \cap_{A\subset F,F\in \mathcal{C}}F=B’$ となるので、
$B’=B’’$ となります。
よって、$B’$ は $A$ を包む最小の閉集合ですので、$B’=\bar{A}$ となります。
ゆえに(2) が成り立ちます。

(3) は省略します。

このとき、
$A^\circ$ を $A$ の内部といい、$A^\circ$ の点を $A$ の内点といい、
$\bar{A}$ を $A$ の閉包といい、$\bar{A}$ の点を $A$ の触点といいます。
また、$\partial A$ を $A$ の境界といい、$\partial A$ の点を $A$ の境界点といいます。

次を証明をしました。
定理5.3
$A\in \mathcal{O}\Leftrightarrow A=A^\circ$
$A\in \mathcal{C}\Leftrightarrow A=\bar{A}$

(証明)
$A\in \mathcal{O}$ であるとすると、$A$ に包まれる開集合の最大は $A$ 自身であり、
$A^\circ =A$ がなりたち、逆に $A=A^\circ$ であるなら $A^\circ$ は開集合であるから
$A\in \mathcal{O}$ が成り立ちます。

$A\in\mathcal{C}$ であるなら、$A$ を包む最小の閉集合は $A$ 自身が
存在するので、$\bar{A}=A$ となります。逆に、
$\bar{A}=A$ であるなら、$\bar{A}$ は閉集合であるから $A\in \mathcal{C}$ です。


定理5.4
$f:X\to Y$ が連続であることは以下とそれぞれ同値である。
(i) $\forall V\in \mathcal{C}_Y$ ならば $f^{-1}(V)\in \mathcal{C}_X$ である。
(ii) $A\subset X\Rightarrow f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ である。

(証明) (i) と同値であることはすぐわかるので省略します。
(ii) と同値であることを示します。
もし $f$ が連続であるとします。$A\subset X$ に対して
$f^{-1}(\overline{f(A)})$ は閉集合であり、$A$ を包むので、
$\bar{A}\subset f^{-1}(\overline{f(A)})$ となります。
よって、$f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ となります。

もし、$f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ を満たすとします。
 $\forall F\in \mathcal{C}_Y$ とします。
$f(\overline{f^{-1}(F)})\subset\overline{f(f^{-1}(F))}=\overline{F}=F$
よって、$\overline{f^{-1}(F)}\subset f^{-1}(F)\subset \overline{f^{-1}(F)}$ となりますので
$f^{-1}(F)$ は閉集合となります。
よって $f$ は連続となります。$\Box$

最後に近傍系を定義しました。
定義5.5
$X$ を集合とする。$\forall x\in X$ に対して $\mathcal{N}(x)\subset \mathcal{P}(X)$
を次を満たすものとする。
(1) $\mathcal{N}(x)\neq \emptyset\land (V\in \mathcal{N}(x)\to x\in V)$
(2) $\forall V_1,V_2\in \mathcal{N}(x)(V_1\cap V_2\in \mathcal{N}(x))$
(3) $\forall V\in \mathcal{N}(x)(V\subset W\to W\in \mathcal{N}(x))$
(4) $\forall V\in \mathcal{N}(x)\exists W\in \mathcal{N}(x)(y\in W\to V\in \mathcal{N}(y))$
このとき、$\mathcal{N}(x)$ を $x$ の近傍系といい、$\mathcal{N}(x)$ の元を
$x$ の近傍という。

2019年11月22日金曜日

トポロジー入門(第4回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]


今日は位相空間に入ったのですが、その前に
前回で残されていた部分をやりました。

定理4.1 $(X,d)$ を距離空間とする。
$A\subset X$ を部分集合とする。
$\bar{A}=\{x|d(x,A)=0\}$である。

(証明) $A’=\{x|d(x,A)=0\}$ と定義します。$\bar{A}=A’$ であることを
示します。
$x\in \bar{A}$ ならば、$\forall \epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\cap A\neq \emptyset)$
ですから、$a\in B_d(x,\epsilon)\cap A$ とすると、
$0\le d(x,a)<\epsilon$ が成り立ちます。
よって、$0\le \inf\{d(x,a)|a\in A\}\le d(x,a)<\epsilon$ であり、$\epsilon>0$ は
任意にとることにより、
$\inf\{d(x,a)|a\in A\}=0$ でなければならない。
よって、$x\in A’$ である。
逆に、$x\in A’$ であるとすると、$\forall \epsilon>0$ に対して、
$\epsilon$ は、$\{d(x,a)|a\in A\}$ の下界にはならないから
ある $a\in A$ が存在して、
$0\le d(x,a)<\epsilon$ となります。
(もし任意の $a\in A$ に対して、$\epsilon\le d(x,a)$ なら、$\epsilon$ は、$\{d(x,a)|a\in A\}$ の下界ということになって $\epsilon>0$ が下界でないということに矛盾します。)

よって、$a\in B_d(x,\epsilon)\cap A$ であるから、$B_d(x,\epsilon)\cap A\neq \emptyset$
となる。よって、$a\in \bar{A}$ であることがわかります。

よって、$\bar{A}=A’$ であることがわかりました。$\Box$

ここからいよいよ位相空間を始めます。

位相空間
定理3.2では距離空間の間の連続写像を定義しました。
そのとき、距離を用いて定義されましたが
そのあと、連続性の条件を、距離を直接使うのではなく、開集合系についての条件として
書き直しました(定理3.2)。
つまり連続性というのは、距離ではなく、開集合が大事だということになります。

このことから、なんらかの開集合の定義があれば、
連続性というのは定義できるのだということが
わかります。
距離空間の定義からくる開集合の性質(I),(II),(III)をもつ集合の
集まりを開集合として定義できないか?
となるのです。そして、次の定義に至ります。

定義4.1
$X$ を集合とする。$\mathcal{O}\subset \mathcal{P}(X)$ が開集合系であるとは
以下を満たすものをいう。
(I) $\emptyset\in \mathcal{O}$ かつ $X\in \mathcal{O}$
(II) $n\in {\mathbb N}$ に対して、$U_1,\cdots,\cap U_n\in \mathcal{O}$ であるとき、$U_1\cap \cdots U_n\in \mathcal{O}$である。
(III) $\{U_\lambda\in \mathcal{O}|\lambda\in \Lambda\}$ であるなら、$\cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O}$である。
$\mathcal{O}$ を開集合系としたとき、空間と開集合系のペア $(X,\mathcal{O})$
位相空間という。

定義4.2
$(X,\mathcal{O}_X)$, $(Y,\mathcal{O}_Y)$ が位相空間とします。
写像 $f:X\to Y$ が連続であるとは、
$\forall U\in \mathcal{O}_Y$ に対して $f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
を満たすものをいう。

次の定理を示しましょう。

定理4.2
$A\in \mathcal{O}\Leftrightarrow \forall a\in A\exists U\in \mathcal{O}(a\in U\subset A)$

この定理は、距離空間の開集合の定義、
$U\subset X\Leftrightarrow \forall x\in U\exists\epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\subset U)$ 
を一般の位相空間に拡張したものと考えられます。

(証明)
$\Rightarrow$ ですが、$U$ として $A$ 自信をとればよい。
$\Leftarrow$ は、$A\subset X$ が $x\in A\exists U\in \mathcal{O}(x\in U\subset A)$
を満たす $U$ を $U_x$ としておきます。
このとき、$A=\underset{x\in A}\cup U_x$ が成り立ちます。
$A\supset \underset{x\in A}\cup U_x$ かつ $A\subset \underset{x\in A}\cup U_x$ 
が成り立つことを示します。

(というのも、$U_x\subset A$  であることから $\supset$  が成り立ち、
$\forall x\in A$ に対して、$x\in U_x$ であることから、$\subset$ が成り立ちます。
よって、$A=\underset{x\in A}{\cup}U_x$ であり、$A$ は開集合のいくつかの
和集合によって得られるから、$A\in \mathcal{O}$  が
成り立ちます。$\Box$

ここで位相空間の例を与えます。

例1
$X$ を集合とし、$(X,\mathcal{P}(X))$ は位相の条件を満たすので位相空間です。
このような位相空間を離散位相空間といいます。

例2
$X$ を集合とし、$(X,\{\emptyset,X\})$ は位相の条件を満たすので位相空間です。
このような位相空間を密着位相空間といいます。

例3
$(X,d)$ を距離空間とします。$\mathcal{O}_d$ を距離空間の開集合とします。
距離空間の開集合の定義は前回を見てください。
このとき、$(X,\mathcal{O}_d)$ は位相空間としての開集合系の条件を満たすので、
位相空間となります。
このような位相空間を距離位相空間といいます。

ある位相空間 $(X,\mathcal{O})$ がこのように $X$ 上の何かの距離 $d$ からくる
距離位相空間と一致するつまり、$\mathcal{O}=\mathcal{O}_d$ となるとき、
$(X,\mathcal{O})$ は距離化可能であるといいます。

距離の性質をもつ空間を考えたのだから、距離空間が自然に位相空間になることは
わかりますが、距離化可能ではない空間が構成できるのでしょうか。
実際、距離化可能ではない例が存在することを証明します。

例4
$X=\{1,2\}$ とします。$X$ の上に位相空間を考えます。
$\mathcal{P}(X)=\{\emptyset,\{1\},\{2\},X\}$ ですから、この部分集合として
位相を与えるものを考えることで位相空間が構成できます。
まず、(I)から、$\mathcal{O}$ には $\emptyset$ と $X$ は必ずふくまれるので、
$\{1\}$ が含まれるか含まれないか、$\{2\}$ が含まれるか含まれないか
4パターンあります。
そのうち、どちらも含む場合が離散位相空間で、
どちらも含まない場合は密着位相空間です。

$\mathcal{O}=\{\emptyset,\{1\},X\}$ としてやると、これも位相の条件を満たします。
この位相空間は、離散位相空間でも密着位相空間でもないですが、
実際距離化可能ではありません。




定理4.3
$X$ を有限集合とする。$X$ 上の開集合 $\mathcal{O}$
が距離位相空間であるなら、$X$ は離散位相空間である。

そのために次の命題を用意します。

命題
$X$ が離散位相空間であることの必要十分条件は、
$\forall x\in X(\{x\}\in \mathcal{O})$ であることである。

 (証明)$\Rightarrow$ は、離散位相は、$\mathcal{O}=\mathcal{P}(X)$ ですから
当然 $\forall \{x\}\in \mathcal{O}$ が成り立ちます。
$\Leftarrow$ は、$\forall U\in \mathcal{P}(X)$ に対して、
$U=\underset{x\in U}{\cup}\{x\}$ であり、位相の条件(III)から
$U\in \mathcal{O}$ が成り立ちます。

上の定理4.2を証明をしましょう。
(証明)$X$ が有限集合とし、その上の距離空間を考えます。
$\delta=\min\{d(x,y)|x,y\in X,x\neq y\}$ をとります。
$X$ の有限性から$\delta>0$ が成り立ちます。
このとき、$B_d(x,\delta/2)=\{x\}$ であることがわかります。

故に、任意の1点は開集合ですから、上の命題から、$X$ 上のこの位相は
離散位相空間となります。

よって例4の位相空間 $(\{1,2\},\{\emptyset,\{1\},\{1,2\}\})$ は
距離空間とは一致しないことになります。

このようにして、距離空間を見本にして距離空間を一般化した位相空間
を定義しましたが、距離空間とは違う空間を位相空間として取り入れることが
できたことになります。

最後に次の例を考えます。

例5
距離空間 $({\mathbb R}^2,d_M)$ と $({\mathbb R}^2,d_2)$ を
$d_2({\bf x},{\bf y})=\sqrt{(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2}$ と定義し一方、
$d_M({\bf x},{\bf y})=\sum_{i=1}^2|x_i-y_i|$ と定義します。
ここで、${\bf x}=(x_1,x_2)$, ${\bf y}=(y_1,y_2)$ です。
このとき、この2つの距離が決める距離位相空間は一致します。
つまり、$\mathcal{O}_{d_M}=\mathcal{O}_{d_2}$ となります。

(証明) $U\in \mathcal{O}_{d_M}$ とします。
$\forall x\in U$ に対して $x\in B_{d^2}(x,\epsilon)\subset U$ となる $\epsilon>0$ が
存在します。また、$x\in B_{d_M}(x,\epsilon)\subset B_{d_2}(x,\epsilon)$ が成り立ちます。
なぜなら、$\forall z\in B_{d_M}(x,\epsilon)$ とし、$z=(z_1,z_2)$ とすると、
$(|z_1-x_1|+|z_2-x_2|)^2-((z_1-x_1)^2+(z_2-x_2)^2)=2|z_1-x_1||z_2-x_2|\ge 0$
が成りたつからです。

よって、
$$\epsilon\ge |z_1-x_1|+|x_2-x_2|\ge \sqrt{(z_1-x_1)^2+(z_2-x_2)^2}$$
が成り立ち、$z\in B_{d_2}(x,\epsilon)$ となり、$B_{d_M}(x,\epsilon)\subset B_{d_2}(x,\epsilon)$ となります。
よって、$\mathcal{O}_{d_2}\subset \mathcal{O}_{d_M}$ が成り立ちます。

一方、$U\in \mathcal{O}_{d_M}$ に対して、
$\forall x\in U$ に対して $B_{d_M}(x,\epsilon)$ となる$\epsilon>0$ が存在し、
$B_{d_M}(x,\epsilon)\subset U$ が成り立ちます。
このとき、$B_{d_2}(x,\frac{\epsilon}{\sqrt{2}})\subset B_{d_M}(x,\epsilon)$ が成り立ちます。
なぜなら、$\forall z\in B_{d_2}(x,\epsilon)$ とすると、
$$2((z_1-x_1)^2+(z_2-x_2)^2)-(|z_1-x_1|+|z_2-x_2|)^2$$
$$=(z_1-x_1)^2+(z_2-x_2)^2-2|z_1-x_1||z_2-x_2|$$
$$\ge (|z_1-x_1|-|z_2-x_2|)^2\ge 0$$
が成りたつからです。

よって、
$$\frac{\epsilon}{\sqrt{2}}\ge \sqrt{(z_1-x_1)^2+(z_2-x_2)^2}\ge\frac{1}{\sqrt{2}}(|z_1-x_1|+|z_2-x_2|)$$
が成り立つので、$z\in B_{d_M}(x,\epsilon)$
よって、$U\in \mathcal{O}_{d_M}$ が成り立ちます。
つまり、$\mathcal{O}_{d_2}\subset \mathcal{O}_{d_M}$ となり、

$\mathcal{O}_{d_2}=\mathcal{O}_{d_M}$ が成り立ちます。$\Box$

このようにして、違う距離でも同じ距離位相空間になってしまう例があります。

微積分演習F(第2回)

[場所1E102(水曜日5限)]


今回はガンマ関数とベータ関数についてやりました。

ガンマ関数とベータ関数の定義
$s>0$を満たす実数とし、$p,q>0$を満たす実数とします。
このとき、ガンマ関数とベータ関数を広義積分
$$\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}dx$$
$$B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$
として定義します。

まず、この広義積分ですが、条件 $s>0$ $p,q>0$ において
これらの広義積分は収束します。

まずガンマ関数の方からいきます。
$x=\infty$ で広義積分を考えます。
$\int_1^\infty e^{-x}x^{s-1}dx$ が収束するかどうか考えます。

$s+1<n$ となる自然数 $n$ を取ります。
そのとき、指数関数のテイラー展開から、$e^x\ge \frac{x^{n}}{n!}$
が成り立つので、
$|e^{-x}x^{s+1}|\le |e^{-x}x^n|\le \frac{x^n}{\frac{x^{n}}{n!}}\le n!$
が成り立ちます。
よって、$|e^{-x}x^{s-1}|\le \frac{n!}{x^2}$
であり、広義積分 $\int_1^{\infty}\frac{n!}{x^2}dx$ は収束するので、
優関数法から $\int_1^\infty e^{-x}x^{s-1}dx$ は収束します。

$x=0$ での広義積分を考えます。
$\int_0^1e^{-x}x^{s-1}dx$ を考えますが、
$s\ge 1$ であれば、$e^{-x}x^{s-1}$ は有限な値ですから広義積分ではなく
通常の積分となり、値は求まります。
$0<s<1$ の場合は $|e^{-x}x^{s-1}|\le \frac{1}{x^{1-s}}$
であり、広義積分 $\int_0^1\frac{1}{x^{1-s}}dx$ は収束するので
やはりこのときも広義積分は収束します。

ベータ関数についてもやってみます。
$p,q\ge 1$ であれば、
$$\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$
の被積分関数は $x=0,1$ でも有限な値を持つので、
広義積分ではありません。
つまり、通常の積分として求めることができます。
よって、$0<p,q<1$ であると仮定しておきます。
例えば、$t= 0$ のときの広義積分を考えましょう。
$\int_0^{\frac{1}{2}}t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$
を考えますと、$|\frac{1}{t^{1-p}}(1-t)^{q-1}|\le \frac{1}{2^{q-1}t^{1-p}}$
となり、この積分
$$\int_0^{\frac{1}{2}}\frac{1}{2^{q-1}t^{1-p}}dt=\frac{1}{2^{q-1}}\int_0^{\frac{1}{2}}\frac{1}{t^{1-p}}dt$$
は前回書いたように収束する広義積分でした。
よって、広義積分 $\int_0^{\frac{1}{2}}t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$ も収束することがわかります。

この関数 $\Gamma(s)$ や $B(p,q)$ を用いて多くの積分を書いていきましょう。
まず、この関数の性質を調べてみると、
以下のことが知られています。

$$B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$$
$$\Gamma(a+1)=a\Gamma (a)\ \ (a>0)$$
$$\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi},\ \ \Gamma(1)=1$$
とくに、$n$ が自然数のときに、
$$\Gamma(n)=(n-1)!$$
となります。
この中で比較的わかりやすいのは、$\Gamma(1)$ であり、
$$\Gamma(1)=\int_0^\infty e^{-x}dx=\left[-e^{-t}\right]_0^\infty=1$$
として直接計算できます。
また、$\Gamma(a+1)=a\Gamma(a)$ も、
$$\Gamma(a+1)=\int_0^\infty x^{a}t^{-x}dx=\left[-x^{a}e^{-x}\right]_0^\infty+a\int_0^\infty x^{a-1}t^{-x}dx=a\Gamma(a)$$
として部分積分だけで求められます。
ここで、$\lim_{x\to \infty }x^{a}e^{-x}=0$
なる極限を使いましたが、これは、$a<n$ となる自然数を取っておいて
$$|x^{a}e^{-x}|=\frac{x^n}{e^x}<\frac{x^n}{\frac{x^{n+1}}{(n+1)!}}\le\frac{(n+1)!}{x}\to 0\ \ (x\to \infty)$$
となるので、挟み撃ちの原理により
$x\to \infty$ において
$$x^ae^{-x}\to 0$$
となることがわかります。
その他の公式についてはここでは詳しくできませんが、この演習の中で
そのうちでてくる方法を用いれば証明をすることができます。
注意してほしいことは、$\Gamma(0)$ の値は求まらないことです。
今のところ、ガンマ関数 $\Gamma(s)$ は $s>0$ だけです。
上の公式を用いると、
$$\Gamma(s)=\frac{\Gamma(s+1)}{s}$$
ですが、$s\to 0$  とすると、右辺の分子は $1$  の有限の値に
収束しますが、分母は $0$  に近づいてしまうので、
結局、$\lim_{s\to 0}\Gamma(s)=\infty$ となってしまいます。

ガンマ関数やベータ関数の公式を用いて積分を計算する
実際、これらの公式を用いていろいろな積分を求めてみます。
授業中やった計算をもう一度してみます。
$\sin^2x=t$ とおきます。すると、$dt=2\sin x\cos x=2\sqrt{t(1-t)}dx$ ですから、
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2n}xdx=\int_0^1t^{n}\frac{dt}{2\sqrt{t(1-t)}}=\frac{1}{2}\int_0^1t^{n-\frac{1}{2}}(1-t)^{-\frac{1}{2}}dt$$
$$=\frac{1}{2}B\left(n+\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right)=\frac{\Gamma\left(n+\frac{1}{2}\right)\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)}{2\Gamma\left(n+1\right)}=\frac{(n-\frac{1}{2})(n-\frac{3}{2})\cdots \frac{1}{2}\Gamma(\frac{1}{2})\Gamma(\frac{1}{2})}{2(n!)}$$
$$=\frac{(2n-1)!!}{2^{n+1}n!}\pi=\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}\frac{\pi}{2}$$
となります。ここで、二重階乗は
$(2n-1)!!=(2n-1)(2n-3)\cdots 3\cdot 1$
$(2n)!!=(2n)(2n-2)\cdots 4\cdot 2$
を表します。

また、$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ も、$x^2=t$ とすると、
$dt=2xdx$
$$\int_0^\infty e^{-x^2}dx=\int_0^\infty e^{-t}\frac{1}{2\sqrt{t}}dt=\frac{1}{2}\int_0^\infty t^{-\frac{1}{2}}e^{-t}dt=\frac{\sqrt{\pi}}{2}$$
となります。

また $\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{1-x^3}}$ は、$x^3=t$ とすることで、$dt=3x^2dx$ であり、
$$\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{1-x^3}}=\int_0^1\frac{1}{3\sqrt[3]{t^2}}(1-t)^{-\frac{1}{2}}dt$$
$$=\frac{1}{3}B(\frac{1}{3},\frac{1}{2})=\frac{\Gamma(\frac{1}{3})\Gamma(\frac{1}{2})}{3\Gamma(\frac{5}{6})}=\frac{\Gamma(\frac{1}{3})}{\Gamma(\frac{5}{6})}\frac{\sqrt{\pi}}{3}$$
となります。

曲線の長さ
次に、曲線の長さについての演習を行いました。
平面上に $(x(t),y(t))$ のパラメータをもつ曲線 $C$ の $a\le t\le b$ のときの長さ $l(C)$ を
$$l(C)=\int_a^b\sqrt{(x'(t))^2+(y'(t))^2}dt$$
として計算できます。

授業中に最後まで計算できなかった計算をしておきます。
(すいません、三角関数で置換し、計算を間違えました。)

以下もう一度計算しなおしました。
$(t,t^2)$ として定義できる2次関数のグラフの
 $0\le t\le 1$ の部分 $C$ の長さ $l(C)$ は
$l(C)=\int_0^1\sqrt{1+4t^2}dt$ のように計算できます。
また、$2t=\sinh \theta$ とおくと、$2dt=\cosh \theta d\theta$ であり、
$2=\sinh \theta$ となるとき、
$4=e^{\theta}-e^{-\theta}\Leftrightarrow e^{2\theta}-4e^\theta-1=0\Leftrightarrow e^\theta=2+\sqrt{5}\Leftrightarrow \theta=\log (2+\sqrt{5})$
なので、$\text{Arcsinh}(2)=\log(2+\sqrt{5})$ となります。
ここで、$\text{Arsinh}(x)$ は $\sinh(x)$ の逆関数を表すことにします。

また、$\sinh(2z)=2\sinh(z)\cosh(z)$ や、$\cosh^2(z)-\sinh^2(z)=1$ であることを用いると、
$$l(C)=\int_0^{\text{Arsinh}(2)}\frac{\cosh^2\theta}{2} d\theta=\frac{1}{2}\int_0^{\text{Arsinh}(2)}\frac{1+\cosh (2\theta)}{2}d\theta $$
$$=\frac{1}{2}\left[\frac{\theta}{2}+\frac{2\sinh(\theta)\cosh(\theta)}{4}\right]_0^{\text{Arsinh}(2)}=\frac{\log(2+\sqrt{5})}{4}+\frac{4\sqrt{1+4}}{8}$$
$$=\frac{\log(2+\sqrt{5})}{4}+\frac{\sqrt{5}}{2}$$
となります。

2019年11月21日木曜日

微積分演習F(第1回)

[場所1E102(水曜日5限)]


微積分演習が始まりました。
広義積分から始まります。

広義積分
積分区間が無限区間であったり、積分区間に被積分関数が
定義されない(値の求まらない)点が含まれている場合の積分を広義積分いいます。

例えば、
$$\int_0^\infty e^{-x}dx$$
のような積分のことを言います。
また、積分区間に定義されていない点がある積分とは、
$$\int_0^1\frac{1}{\sqrt{x}}dx$$ 
などの積分ことで、たしかに、被積分関数 $\frac{1}{\sqrt{x}}$ は $x=0$ で値を持ちません。

また、$\int_0^\infty e^xdx$ などを考えると、
このような関数は $x=\infty$ で関数が無限大に発散してしまうので、
積分も無限大に発散して意味のないものになってしまいます。

しかし、
$\int_0^\infty e^{-x}dx$は
$$\lim_{R\to \infty}\int_0^R e^{-x}dx=\lim_{R\to \infty}\left[-e^{-x}\right]_0^R=\lim_{R\to \infty}(-e^{-R}+1)=1$$
のようにして求めることができます。
このように、極限が存在して積分を求めることができるとき、
広義積分は収束するもしくは、広義積分が存在するといいます。
また、広義積分が収束しない場合、広義積分は発散する
もしくは広義積分は存在しないといいます。

上の例のように無限大で 0 に収束するような関数でないと、広義積分は収束
しませんが、被積分関数が無限大で0に収束する関数だからといって
広義積分が収束するとはかぎりません。

例えば、$\frac{1}{x}$ は無限大で $0$ に収束しますが、
$$\int_1^\infty\frac{1}{x}dx=\lim_{R\to \infty }\int_1^R\frac{1}{x}dx=\lim_{R\to \infty}\left[\log x\right]_1^R=\lim_{R\to \infty}\log R=\infty$$
となり、広義積分は収束しません。
同様に
$$\int_0^1\frac{1}{x}dx=\lim_{R\to 0}\left[\log x\right]_R^1=\lim_{R\to 0}(-\log R)=\infty$$
となって、$\int_0^1\frac{1}{x}dx$ は$x=0$ でも収束しません。

広義積分が収束するかどうかをどのようにして判定したらよいでしょうか?

広義積分の収束判定法
実際値を求めることが難しくても、広義積分が収束することはわかる
場合があります。それは次のようにして判定します。

広義積分
$$\int_a^bf(x)dx$$
があったとします。
もし、$|f(x)|\le g(x)$ なる関数 $g(x)$ があり、$\int_a^bg(x)dx$ が広義積分可能であれば、
$\int_a^bf(x)dx$ は広義積分可能となります。
これを優関数法といいます。

同じように、$|f(x)|\ge g(x)\ge 0$ となる関数 $g(x)$ が存在して、
$$\int_a^bg(x)dx$$
が発散する場合、
$$\int_a^bf(x)dx$$
も発散します。


例えば、広義積分 $\int_0^1\frac{\sin x}{\sqrt{x^3}}dx$ を考えます。
$0<x \le 1$ において $|\sin x|\le x$ が成り立ちます

よって、$|\frac{\sin x}{\sqrt{x^3}}|\le \frac{x}{\sqrt{x^3}}=\frac{1}{\sqrt{x}}$
となり、$\int_0^1\frac{1}{\sqrt{x}}dx=\left[2 x^{\frac{1}{2}}\right]_0^1=2$
となります。
つまり、$\int_0^1\frac{1}{\sqrt{x}}dx$ は広義積分として収束するので、
広義積分 $\int_0^1\frac{\sin x}{\sqrt{x^3}}dx$ は収束します。

ここで、$|\sin x|\le 1$ という不等式は使えません。そうすると、
$\int_0^1\frac{1}{\sqrt{x^3}}dx$ が広義積分として収束することを
示さなねばならず、実際、これは収束しないのです。

$\int_0^1\frac{1}{x^\alpha}dx$ が収束するかどうかは、実際計算してみることで、
$$\int_0^1\frac{1}{x^\alpha}dx=\begin{cases}\text{収束する}&\alpha<1\\\text{発散する}&\alpha\ge 1\end{cases}$$
のようにしてわかります。

おなじように、無限区間の場合にも考えると、
$$\int_1^\infty \frac{1}{x^\alpha}dx=\begin{cases}\text{収束する}&\alpha>1\\\text{発散する}&\alpha\le 1\end{cases}$$
となります。

多くの場合、このようなべき乗の関数と比べることによって広義積分が収束する
ことを証明をするということを覚えておきましょう。

2019年10月25日金曜日

トポロジー入門(第3回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]


前回は距離空間の内点、内部、触点、閉包についてやりました。
その続きと、距離空間の連続性について行いました。
前回に引き続き $X$ とすると、適当な距離 $d$ を持つ距離空間とします。

命題
$A\subset X$ に対して、
$(\bar{A})^c=(A^c)^\circ$ が成り立つ。

(証明) $\forall x\in (\bar{A})^c\Leftrightarrow x\not\in \bar{A}$
$\Leftrightarrow \exists\epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\cap A=\emptyset)\Leftrightarrow  \exists\epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\subset A^c)$
$\Leftrightarrow x\in (A^c)^\circ$
となるため、$(\bar{A})^c=(A^c)^\circ$ が成り立ちます。

前回、
$D=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2< 1\}$ と定義したときに、
$D'=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2\ge 1\}\subset\bar{D}$
であることを示したので、今日は、その逆
$\bar{D}\subset D'$
を示しました。

上の例題を用いれば、
$(D')^c\subset (\bar{D})^c=(D^c)^\circ$ であることを示せば十分です。

${\bf x}\in (D')^c=\{{\bf x}\in {\mathbb R}^2|d^2({\bf x},{\bf 0})>1\}$とし、
$\epsilon=d^2({\bf x},{\bf 0})-1$ とします。
このとき、$d^2({\bf x},{\bf 0})\le d^2({\bf x},{\bf y})+d^2({\bf y},{\bf 0})$
であり、
$d^2({\bf y},{\bf 0})\ge d^2({\bf x},{\bf 0})-d^2({\bf x},{\bf y})>d^2({\bf x},{\bf 0})-\epsilon=1$
であるから、${\bf y}\in D^c$ となります。
よって、$B_d({\bf x},\epsilon)\subset D^c$ であるから、
${\bf x}\in (D^c)^\circ$ が成り立ちます。
よって、$D'\subset (D^c)^\circ=(\bar{D})^c$ となります。

つまり、$D'=\bar{D}$ であることがわかりました。


ここで、$A\subset X$ に対して、$\bar{A}\setminus A^\circ$ を$\partial A$ とかき、
境界、また$\partial A$ の点を境界点といいます。

よって今の場合、$\partial D=\bar{D}\setminus D^\circ=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\}$
となり、直感でいうところの"境界"の概念と一致します。

次の定理を示しました。

定理
$A\subset X$ とする。
$A^\circ$ は $A$ に包まれる最大の開集合である。
$\bar{A}$は $A$ を包む最小の閉集合である。


(証明)$A^\circ \subset A'\subset A$ となる開集合 $A'$ をとります。
$x\in A'$ とすると、開集合であることから、$\exists\epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\subset A')$
を満たします。$A'\subset A$ であるから、$x$ は $A$ の内点です。
よって$x\in A^\circ$ となります。つまり、$A^\circ =A'$ となります。
故に、$A^\circ$ は $A$ に包まれる最大の開集合です。

同じように、
$A\subset A''\subset \bar{A}$ を満たす閉集合 $A''$ を取ります。
この補空間をとることで、
$(\bar{A})^c\subset (A'')^c\subset A^c$ となります。
特に、$(A'')^c$ は開集合になります。
命題から $(\bar{A})^c=(A^c)^\circ$ であり、$(A^c)^\circ$ は$A^c$ に包まれる最大の開集合であったから、$(A'')^c=(A^c)^\circ$ となります。よって、$A''=\bar{A}$ であることがわかります。


距離空間の連続性
$X,Y$ を距離空間として、 $f:X\to Y$ を写像とします。
$X,Y$ の距離を $d_X,d_Y$ としておきます。
このとき、$f$ の連続性について考えます。

連続性とは、直感的には「$a\in X$ に近い点は、$Y$ の $f(a)$ の近い点に写っている」
ということなのですが、近い点という言葉を明確にする必要あります。
最初の近い点は、2つ目の近い点とどのような関係になっているのか?
どれほど近いのなら繋がっていると言えるのか?
などすぐに答えにくいことがわかります。

よって、連続性を扱うのを一度放棄して、非連続性について考えるとすっきりします。

つまり、非連続性とは、
$a$ のどんなに近くにも、$f$ で写したときに、$f(a)$ から遠く離れた点のままになっている点があるということです。

遠く離れた点のままになっていることは、$a$ の近より方に寄らずに決める必要がありますから、

最初に遠くの距離 $E>0$ がとれて、そのときに、
$a$ のどんな近くにも点 $x$ が存在して、$f(x)$ が、$f(a)$ から $E$ より近くにいない。
式で言えば、
$\exists E>0 \forall \Delta>0(f(B_{d_X}(a,\Delta))\cap B_{d_Y}(f(a),E)^c\neq \emptyset)$
となります。

この命題を否定すれば連続性が得られるはずです。
よって、否定命題を書き記すと、
$\forall E>0\exists  \Delta>0(f(B_{d_X}(a,\Delta))\cap B_{d_Y}(f(a),E)^c= \emptyset)$
$\equiv \forall \epsilon>0\exists  \delta>0(f(B_{d_X}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
$\equiv \forall \epsilon>0\exists  \delta>0\forall x\in X(x\in B_{d_X}(a,\delta)\to f(x)\in  B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
となります。

ここで連続性について定義しておきます。

定義3.1
$(X,d_X),(Y,d_Y)$ を距離空間とする。
写像 $f:X\to Y$ が $a\in X$ で連続であることを、
$\forall \epsilon>0$ に対して、ある$\delta>0$ が存在して、
$$f(B_{d_{X}}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon)$$
を満たすことをいう。
任意の $a\in X$ に対して $f$ が連続であるとき、$f$ は
連続であるという。

定義の中の $f(B_{d_{X}}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon)$ という条件は、
$f^{-1}$ を取って $B_{d_{X}}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
としても同じことです。


$(X,d_X)=(Y,d_Y)=({\mathbb R},d_1)$ であるとき、
$f$ は実数上の関数となりますが、
これが、連続であるとは、
$ \forall \epsilon>0\exists  \delta>0\forall x\in X(x\in B_{d_1}(a,\delta)\to f(x)\in  B_{d_1}(f(a),\epsilon))$
となりますが、$(x\in B_{d_1}(a,\delta)$ は言い換えれば、$|x-a|<\delta$ と書き直せますから、
$ \forall \epsilon>0\exists  \delta>0\forall x\in X(|x-a|<\delta \to |f(x)-f(a)|<\epsilon)$
となります。この定義は微積分の授業ででてきた関数の連続性のことを言っています。


次の定理を示しておきます。

定理3.2
$f:(X,d_X)\to (Y,d_Y)$ が連続であるとは、
$\forall U\in \mathcal{O}_Y$ ならば、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
をみたすことと同値である。

ここで、$\mathcal{O}_d$ は距離 $d$ による開集合全体(開集合系)
を表します。また、$\mathcal{O}_{d_X}=\mathcal{O}_X$ と略記しています。

(証明)
$f$ が連続であると仮定します。
$\forall U\in \mathcal{O}_{X}$ とし、$\forall a\in f^{-1}(U)$ とすると、
$f(a)\in U$ であり、$U$ が開集合であるから、$\epsilon>0$ が存在して、
$B_{d_Y}(f(a),\epsilon)\subset U$ を満たし、
$f$ の連続性からある$\delta>0$ が存在して、
$B_{d_X}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))\subset f^{-1}(U)$ となります。
よって、$f^{-1}(U)$ が開集合ということになります。

逆に $\forall U\in \mathcal{O}_Y\Rightarrow f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
が成り立つとします。
$a\in X$ に対して、
$\forall \epsilon>0$ に対して、
$B_{d_X}(a,\epsilon)$ は開集合であるから、
$f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$ は開集合ですから、
$a\in f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$ に対してある  $\delta>0$ が存在して。
$B_{d_X}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
が成り立つので、$f$ の $a$ での連続性が成り立ちます。
よって $f$ が連続となります。

$d(x,A)=\inf\{d(x,a)|a\in A\}$
とします。
このとき、
$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$ を
$\varphi_A(x)=d(x,A)$ と定義します。
このとき、最後に次の定理を示しました。

定理3.3
$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$
は連続である。

(証明)
$\forall x,y\in X(\varphi_A(x)-\varphi_A(y)\le d(x,y))$
が成り立つことを示します。
$\forall z\in A$ に対して $d(x,A)\le d(x,z)\le d(x,y)+d(y,z)$ が成り立ち、
$d(x,A)-d(y,z)\le d(x,y)$ であり、$d(x,y)$ は $\{d(x,A)-d(y,z)|z\in A\}$ の上界であるから、
$d(x,A)-d(y,A)\le d(x,y)$ が成り立ちます。
$x,y$ を入れ替えれば、
$-d(x,y)\le d(x,A)-d(y,A)$ も成り立つので、
$|\varphi_A(x)-\varphi_A(y)|\le d(x,y)$ が成り立ちます。

ここで、$\epsilon>0$ に対して、$\delta=\epsilon$ としておけば、
$d(x,a)\le \delta$ となる任意の $x$ に対して、
$|\varphi_A(x)-\varphi_A(y)|\le d(x,a)\le \epsilon$ であるから、
$\varphi_A(x)$ は $x=a$ で連続である。
よって、$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$ は連続写像であることがわかりました。

距離空間 $(X,d)$ において、$A=\{a\}$ と $r>0$ に対して、
$\varphi_A^{-1}((-\infty,r))=B_d(a,r)$ となります。
$(-\infty ,r)$ は開集合であるから、$B_d(a,r)$ が開集合であることが
確認できます。
(ただ、$B_d(a,r)$ はすでに開集合であることは定義からわかるので
証明というわけではありません)

一般に、$\varphi_A^{-1}((-\infty,r))=\cup_{a\in A}B_d(a,\epsilon)$
であることがわかります。
この右辺も開集合であることが確認できます。
これも任意個の和集合が開集合であることが示されていた
ことでした。

2019年10月21日月曜日

トポロジー入門(第2回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]

トポロジー入門演習のHP

今日は開集合の性質を使って距離空間
の開集合の性質について以下の6つの定理を示しました。
ここでも証明を書いておきます。
講義中は証明したものでも以下では少し省略しているものもあります。

$U\subset X$ が開集合である定義は、
$\forall x\in U\exists\epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\subset U)$
を満たすものをいいいました。

以下、$(X,d)$ を距離空間として共通して用います。
$X$ と書けばすべてこの距離空間とします。
また、$(X,d)$ の開集合をすべて合わせた集合を
開集合系といい、$\mathcal{O}_d$ と表すことにします。

定理2.1
$\emptyset,X\in \mathcal{O}_d$ である。

(証明) 空集合は元が取れないので、開集合の条件は無条件に成り立ちます。
よって空集合は開集合です。
$x\in X$ に対して、$B_d(x,\epsilon)\subset X$
であるので $X$ は開集合です。

注 空集合 $\emptyset$ は $\forall x(x\not\in \emptyset)$
を満たす唯一の集合です。
また、$A$ が開集合かどうかは、$x\in A$ が存在するときの条件しか
ありませんが、ということは元がとれない場合は無条件だということです。

定理2.2
$U,V\in \mathcal{O}_d$ とすると、$U\cup V$ と $U\cap V\in \mathcal{O}_d$ である。

(証明)
$U,V$ を開集合とします。
$\forall x\in U\cup V$ とすると、$x\in U$ もしくは $x\in V$ です。
仮に、$x\in U$ としたら、
$\exists \epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\subset U)$ です。
$U\subset U\cup V$ であるから、
$B_d(x,\epsilon)\subset U\cup V$ となり、$U\cup V$ が開集合であることが
わかります。
$x\in V$ であるときも同様です。
よって $U\cup V$ は開集合です。

同じように証明することで $U\cap V$ も開集合となります。

定理2.3
$x\in X$ と$\epsilon>0$ に対して、
$B_d(x,\epsilon)$ は開集合である。

(証明)
$y\in B_d(x,\epsilon)$ とし、$\delta=\epsilon-d(y,x)$ とおきます。
このとき、$\delta>0$ となります。
$\forall z\in B_d(y,\delta)$ とすると、
$d(z,x)\le d(z,y)+d(y,x)< \delta+d(y,x)=\epsilon$
となり、$z\in B_d(x,\epsilon)$ です。
ゆえに、$B_d(y,\delta)\subset B_d(x,\epsilon)$ が成り立ち、
$B_d(x,\epsilon)$ は開集合であることがわかります。


定理2.4
$x\in X$ に対して、$\{x\}$ は閉集合である。

(証明)
$\{x\}^c$ が開集合であることを示せば十分です。
$\forall y\in \{x\}^c$ とします。
$\delta=d(x,y)>0$ とします。
このとき、$\forall z\in B_d(y,\frac{\delta}{2})$
とすると、$d(x,y)\le d(x,z)+d(z,y)$ であり、
$d(x,z)\ge d(x,y)-d(z,y)=\delta-d(z,y)\ge \delta-\frac{\delta}{2}=\frac{\delta}{2}>0$
ですから、$x\neq z$ となります。
よって、$B_d(y,\frac{\delta}{2})\subset \{x\}^c$ であるから、
$\{x\}^c$ は開集合であることがわかりました。

この証明から、帰納法を使えば、開集合を有限個集めて共通集合を
とっても開集合であることがわかるし、
$\{U_\lambda\in \mathcal{O}_d|\in \lambda\in \Lambda\}$ のように
開集合を任意に持ってきたとしたら、
$\cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O}_d$ となります。

上のことをまとめますと、以下のようになります。
(I) $\emptyset,X\in \mathcal{O}_d$ となる。
(II) $n\in {\mathbb N}$ に対して、$U_1,U_2,\cdots, U_n\in \mathcal{O}_d$ である。
(III) 開集合の集まり $\{U_\lambda\in \mathcal{O}_d|\lambda\in \Lambda\}$ に対して、$\cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda\in \mathcal{O}_d$ となる。


定義2.1
$(X,d)$ を距離空間とし、$A\subset X$ とする。
$x\in A$ が $A$ の内点であるとは、
$\exists\epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\subset A)$
を満たすことである。
$A^\circ$ を $A$ の内点全体の集合を表し、
$A$ の内部という。

定義2.2
$(X,d)$ を距離空間とし、$A\subset X$ とする。
$x\in X$ が $A$ の蝕点であるとは、
$\forall \epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\cap A\neq \emptyset)$
を満たすことである。
$\bar{A}$ を $A$ の蝕点全体の集合を表し、
$A$ の閉包という。

定理2.5
$A^\circ$ は開集合であり、$\bar{A}$ は閉集合である。

証明
$x\in A^\circ$ とすると、内点の定義から
$\exists \epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\subset A)$ がわかります。
$B_d(x,\epsilon)$ は開集合であるから $\forall y\in B_d(x,\epsilon)$ に対して、
$\epsilon’>0(B_d(y,\epsilon')\subset B_d(x,\epsilon))$
が成り立ちます。
よって $B_d(y,\epsilon’)\subset A$ であるから $y\in A^\circ$ となります。
つまり、$B_d(x,\epsilon)\subset A^\circ$ ですから、
$A^\circ$ は開集合であることがわかります。

$(\bar{A})^c$ が開集合であることを示します。
$\forall x\in (\bar{A})^c$ とすると、$x\not\in \bar{A}$ であり、
$\exists \epsilon>0$ に対して、$B_d(x,\epsilon)\cap A= \emptyset$
となります。$y\in B_d(x,\epsilon)$ に対して、
$\exists \epsilon'>0(B_d(y,\epsilon’))$ であり、$B_d(y,\epsilon’)\cap A=\emptyset$
ですから、$y\in (\bar{A})^c$ となります。
つまり、$B_d(x,\epsilon)\subset (\bar{A})^c$ がわかりました。

定理2.6
$A$ が開集合 $\Leftrightarrow A=A^\circ$
$A$ が閉集合 $\Leftrightarrow A=\bar{A}$
を満たす。

(証明)
$A$ を開集合とします。$A^\circ\subset A$ ですから、$A^\circ\subset A$ を示せばよい
ことになります。このとき、$\forall x\in A$ としますと、
$\exists \epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\subset A)$
が成り立ち、$x\in A^\circ$ となります。
よって、$A=A^\circ$ が成り立ちます。
逆に $A=A^\circ$ であるとすると、$A^\circ$ は開集合であったから $A$ は開集合
となります。

閉集合の場合も同様の証明なのでここでは省略します。


2019年10月14日月曜日

トポロジー入門(第1回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]


今学期からトポロジー入門の授業をもつことになりました。
教科書は今のところ数理科学で連載している
「例題形式で探求する集合・位相」(第6章~)
です。

距離空間
今回は距離空間から始めました。
「例題形式で探求する集合・位相」でいえば、第6章の内容にあたります。
その前に集合の復習をしたのですが、それはここでは省略します。

定義[距離空間]
集合 $X$ に対して、関数 $d:X\times X\to {\mathbb R}$ が以下を満たすとき、
$d$ を距離関数という。
任意の$x,y,z\in X$ に対して
(1) $d(x,y)=0 \Leftrightarrow x=y$
(2) $d(x,y)=d(y,x)$
(3) $d(x,y)+d(y,z)\ge d(x,z)$
である。

距離関数 $d$ をもつ集合 $(X,d)$ を距離空間という。
(3)の不等式を三角不等式といいます。

数理科学では、
(1) $\forall x,y\in X(d(x,y)\ge 0\land d(x,y)\to x=y)$
と書いていますが、
この定義は間違っています。
この定義であると、$d(x,x)=0$ であることが示せません。

また、上の定義では $d(x,y)\ge 0$ であることは、
仮定されていませんが、
(2),(3)と、$d(x,x)=0$ であることから、
$d(x,y)+d(y,x)=2d(x,y)\ge d(x,x)=0$ であることから $d(x,y)\ge 0$
であることが示されます。
このことは数理科学のサポート情報にも載せました。
たまに、間違いを犯しているのでもしおかしいなと思ったら
このサポート情報をみてください。
また、サポート情報にもない場合は下のコメント欄やメールにて情報を
お寄せください。

開集合・閉集合
まず、開球体を定義します。

定義[開球体]
$(X,d)$ を距離空間とする。
$x\in X$ に対して、実数 $r>0$ に対して、$r$-開球体
$B_d(x,r)=\{y\in X|d(x,y)<r\}$ と定義する。

つぎに、以下を定義します。

定義[開集合・閉集合]
$(X,d)$ を距離空間とする。
$U\subset X$ が開集合であるとは、
$\forall x\in U\exists \epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\subset U)$ である。
$F\subset X$ が閉集合であるとは、
$F^c$ が開集合であることである。


注意として、ある距離空間において、ある部分集合が開集合であるかどうかは、
その距離 $d$ に依存し、集合だけに依存しません。

距離空間の例を与えておきます。

例1
${\mathbb R}^n$ にの2つ元
${\bf x}=(x_1,x_2,\cdots, x_n), {\bf y}=(y_1,y_2,\cdots y_n)$
に対して $d^n({\bf x},{\bf y})=\sqrt{\sum_{i=1}^n(x_i-y_i)^2}$
と定義すると、距離関数 $d:X\times X\to {\mathbb R}$
が与えられます。この距離関数によって与えられる距離空間を
ユークリッド空間 $({\mathbb R}^n,d^n)$ といいます。

例2
集合 $X$ に対して、$d:X\times X\to {\mathbb R}$ を
$$d(x,y)=\begin{cases}1&x\neq y\\0&x=y\end{cases}$$
と定義したとき、$d$ は $X$ 上の距離関数となり、
$(X,d)$ を離散距離空間いいます。

これらが距離空間であることは、上の距離空間であるための条件を
確かめればよいですが、ここでは省略します。
証明は例えば数理科学の「例題形式で...」の記事を見てください。

例2では、任意の1点集合 $\{x\}$ は $B_d(x,\frac{1}{2})$
ですので開集合ですが、例1ではどんな1点集合も開集合にはなりません。

というのも、実数空間 $({\mathbb R},d^1)$ において、$\forall x\in {\mathbb R}$ に
対して、 $B_d(x,\epsilon)\subset \{x\}$ である $\epsilon$ が
存在したとすると、$x+\frac{\epsilon}{2}\in B_d(x,\epsilon)$
であり、$x+\frac{\epsilon}{2}\not\in \{x\}$ ですから、
$B_d(x,\epsilon)\not\subset \{x\}$ となり矛盾します。
よって $\{x\}$ は開集合ではありません。

2019年10月13日日曜日

数学外書輪講I(第15回)

[場所1E501(月曜日5限)]


このページは7/29に行われた授業に基づいています。

完全グラフを完全二部グラフによって分割すること
についてやりました。
前々回(こちら)も同じ定理について証明してもらいましたが、
今回はマトウセクに書かれている線形代数を用いた方法です。

定理をもう一度書いておくと、次のようになります。

定理
もし、完全グラフ $K_n$ が部分完全二部グラフ $H_1,\cdots ,H_m$
によって分割することができるなら、$m\ge n-1$ である。

完全二部グラフによって分割できるとは、
完全グラフ $K_n$ の頂点と辺を用いて完全二部グラフ $H_j$ を
$m$ 個つくったとき、$K_n$ の辺の集合が、$H_1,\cdots, H_m$ の
辺の集合によってちょうど分割されるということになります。

つまり、$H_1,H_2,\cdots, H_m$ のそれぞれの辺の数の和は、ちょうど
${}_nC_2=n(n-1)/2$ 個ということになります。

$H_j$ の頂点の集合を $V(H_j)=X_j\sqcup Y_j$ とします。
いま、$n\times n$ 行列 $A_k=(a_{ij}^{(k)})$ を
$$a_{ij}^{(k)}=\begin{cases}1&i\in X_k\text{かつ}j\in Y_k\\0&otherwise\end{cases}$$
とします。
すると、$\text{rank}(A_k)=1$ であることはすぐわかります。

$A=\sum_{k=1}^mA_k$ とすると、
また、$A+A^t=J_n-I_n$ が成り立ちます。
ここで、$I_n$ は $n\times n$ 単位行列で、$J_n$ は $n\times n$ 行列で、
すべての成分が $1$ となる行列とします。

ここで、$\text{rank}(A)\le \sum_{i=1}^m\text{rank}(A_i)=m$
であり、$n-1\le \text{rank}(A)$ であることを示せればよいです。

$\text{rank}(A)\le n-2$ であるとします。
${\bf 1}$ をすべて $1$ からなる横ベクトルとします。
すると、$\begin{pmatrix}A\\{\bf 1}\end{pmatrix}$ のランクは $n-1$ 以下であるから、
このとき、${\bf x}\in {\mathbb R}^n$ が存在して、
$A{\bf x}={\bf 1}\cdot {\bf x}={\bf 0}$ かつ ${\bf x}\neq {\bf 0}$ となります。

このベクトル ${\bf x}$ を用いて、
$${\bf x}^t(A+A^t){\bf x}={\bf x}^t(J_n-I_n){\bf x}={\bf x}^tJ_n{\bf x}-{\bf x}^t\cdot {\bf x}=-{\bf x}^t\cdot {\bf x}<0$$
かつ、
$${\bf x}^t(A+A^t){\bf x}={\bf x}^tA{\bf x}+{\bf x}^tA^t{\bf x}={\bf x}^t\cdot {\bf 0}+{\bf 0}^t\cdot {\bf x}=0$$
となり、矛盾します。

背理法から、$n-1\le \text{rank}(A)$ であることがわかります。

よって、$n-1\le m$ であることがわかります。