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2015年12月22日火曜日

線形代数II演習(第10回)

[場所1E103(水曜日4限)]


HPに行く.

今日は計量ベクトル空間を扱いました.
講義の方では双対空間を扱ったようですね.
商空間に引き続き新しいベクトル空間の登場ですね.
演習で扱うかどうかはまだ決めていませんが、よい題材があればやろうと思います.

計量ベクトル空間

スカラーが実数の場合

以下の性質を満たす実ベクトル空間 V 上の積 (\cdot,\cdot ) のことです.
積は、V\times V\to {\mathbb R} であって、以下の性質を満たします.

(i) ({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w})=({\bf v}_1,{\bf w})+({\bf v}_2,{\bf w})
(ii) (\lambda {\bf v},{\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})
(iii) ({\bf v},{\bf w})=({\bf w},{\bf v})
(iv) ({\bf v},{\bf v})\ge 0 となり、等号を満たすのは {\bf v}=0 のときのみ.

この最後の (iv) を満たすかどうか重要です.({\bf v},{\bf v})\ge 0 としなくても
よい内積もありますが、それは、不定値内積とよばれ、相対論などで登場します.
そのような場合は、もちろん等号を満たすようなベクトルは無数に存在することになります.
ここでは、不定値内積ではなく、定値内積(さらにいえば正定値内積)を考えています.
実内積の場合は、(i)と(ii) の条件から、

({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w})=({\bf v}_1,{\bf w})+({\bf v}_2,{\bf w})
({\bf v},{\bf w}_1+{\bf w}_2)=({\bf v},{\bf w}_1)+({\bf v},{\bf w}_2)
(\lambda {\bf v},{\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})
({\bf v},\lambda {\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})
が成り立ち、このような線形性のことを双線形性といいます.

(iii) のことは、対称といいます.
なので、内積のことを、正定値対称双線形形式ということもあります.
形式というのは、一般に V\times V\times \cdots \times V\to {\mathbb R} のような関数のことをいます.
さらにそれをベクトル空間に広げたものをテンソルといいます.


スカラーが複素数の場合

スカラーを {\mathbb C} にして複素ベクトル空間上に複素内積を考えることもできますが、その場合、上の性質は少し違って、以下のようになります.

V\times V\to {\mathbb C} であって、以下の性質を満たすことです.
(i) ({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w})=({\bf v}_1,{\bf w})+({\bf v}_2,{\bf w})
(ii) (\lambda {\bf v},{\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})
(iii)' ({\bf v},{\bf w})=\overline{({\bf w},{\bf v})}
(iv) ({\bf v},{\bf v})\ge 0 となり、等号を満たすのは {\bf v}=0 のときのみ.

のように(iii)の性質ではなく、(iii)' のように、成分をひっくり返して
複素共役(ふくそきょうやく)をとることで等号が成り立ちます.
なので、(ii)と(iii)'を組み合わせれば、
({\bf v},\lambda{\bf w})=\bar{\lambda}({\bf v},{\bf w}) と計算されます.
また、||{\bf v}||=\sqrt{({\bf v},{\bf v})} として定義し、ノルムといいます.

数ベクトル空間上の内積と標準内積

数ベクトル空間 {\mathbb R}^n{\mathbb C}^n 上に標準基底があったように、標準内積があります.

({}^t(a_1,a_2,\cdots,a_n),{}^t(b_1,b_2,\cdots,b_n))=\sum_{i=1}^na_ib_i
{\mathbb R}^n標準内積とよばれます.
{\mathbb C}^n の場合は、
({}^t(a_1,a_2,\cdots,a_n),{}^t(b_1,b_2,\cdots,b_n))=\sum_{i=1}^na_i\bar{b_i}
となります.

複素共役を取らないと、({\bf v},{\bf v}) が実数にならず、複素数のままになってしまうことがあります.


数ベクトル空間で内積を考えると、自然に
({\bf v},{\bf w})=(v_1,v_2,\cdots,v_n)A\begin{pmatrix}\bar{w_1}\\\bar{w_2}\\\vdots\\\bar{w_n}\end{pmatrix}
なる行列が出てきます.
ここで、{\bf v}=(v_1,v_2,\cdots,v_n) かつ {\bf w}=(w_1,w_2,\cdots,w_n) です.
実数の場合は、A は対称行列ですが、複素数の場合は、エルミート行列になります.
エルミート行列とは、{}^tA=\bar{A} となる行列のことです.

また、A が実対称行列やエルミート行列のときは、固有値は必ず実数になりますが、
条件 (iv) を満たすためには、固有値は必ず正の数でなければなりません.
つまり、正定値行列でなければならないのです.
標準内積の場合は、この行列 A が丁度単位行列の場合に相当します.

また、そのような行列をもってこれば、必ず正定値内積を構成することができます.

ベクトル空間の内積

一般のベクトル空間でも、基底を固定しておけば、数ベクトル空間と同一視できますので、このような行列がでてきます.

一般のベクトル空間上で内積をすることは、あまりなれないかもしれませんが、
定義することができます.その、最初にでてくるのが、積分を使ったものです.

f,g\in C[0,1] もしくは、f,g\in {\mathbb C}[x]_n などでも、
(f,g)=\int_{0}^1f(x)g(x)dx
として、内積を考えることができます.
双線形性はすぐわかると思いますが、正定値性は関数の連続性を使うので少し難しいです.


直交射影(正射影)

ベクトル {\bf v}{\bf w}\neq 0 への直交射影 {\bf a} とは、{\bf w} と平行で、({\bf v}-{\bf a},{\bf w})=0 を満たすベクトルのことで、一意的に定まります.

計算の仕方は、

{\bf a}=\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w}

となります.{\bf w} と平行になっていることはよいと思いますが、
直交性は、
({\bf v}-{\bf a},{\bf w})=({\bf v}-\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w},{\bf w})=({\bf v},{\bf w})-\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}({\bf w},{\bf w})
となり、この値は 0 になります.

この直交射影により、ベクトル {\bf v}
{\bf v}=\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w}+({\bf v}-\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w})
のように分解することができます.
一つ目の項は {\bf w} と平行な成分、二つ目の項は {\bf w} と直交する成分です.

複素ベクトル空間の等式

{\bf v}_1,{\bf v}_2 を複素ベクトル空間のベクトルとして、
||{\bf v}_2||=2 かつ、({\bf v}_1+2{\bf v}_2,{\bf v}_1-{\bf v}_2)=-4-3i
かつ ({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf v}_1+3{\bf v}_2)=22+2i のとき、
||{\bf v}_1|| を求めよ.

解答
({\bf v}_2,{\bf v}_2)=4かつ
({\bf v}_1,{\bf v}_1)-({\bf v}_1,{\bf v}_2)+2({\bf v}_2,{\bf v}_1)-2({\bf v}_2,{\bf v}_2)=-4-3i
({\bf v}_1,{\bf v}_1)+3({\bf v}_1,{\bf v}_2)+({\bf v}_2,{\bf v}_1)+3({\bf v}_2,{\bf v}_2)=22+2i
第2項目から第3項目を引くことで、
-4({\bf v}_1,{\bf v}_2)+({\bf v}_2,{\bf v}_1)-5({\bf v}_2,{\bf v}_2)=-26-5i
より、
-4({\bf v}_1,{\bf v}_2)+({\bf v}_2,{\bf v}_1)=-6-5i
(iii)' を使えば、 -4({\bf v}_1,{\bf v}_2)+\overline{({\bf v}_1,{\bf v}_2)}=-6-5i
となる.({\bf v}_1,{\bf v}_2)=a+bi とおくと、-4(a+bi)+(a-bi)=-6-5i となり、
-3a=-6 かつ -5b=-5 となります.
ゆえに、({\bf v}_1,{\bf v}_2)=2+i となります.
よって、({\bf v}_1,{\bf v}_1)=-4-3i+({\bf v}_1,{\bf v}_2)-2({\bf v}_1,{\bf  v}_2)+2({\bf v}_2,{\bf v}_2)=-4-3i+(2+i)-2(2-i)+2\cdot 4=2
よって、||{\bf v}_1||=\sqrt{2} となります.

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