[場所1E103(金曜日5限)]
HPに行く.
ガンマ関数は積分で定義しましたが、積分で定義するのはあまりリーズナブルではありません.というのも、$x>0$ (複素数に広げても $\text{Re}(x)>0$ )でしか収束しないからです.積分表示というのは、関数を一面的にしか捉えられないことがあります.
解析関数(各点においてテイラー展開可能の関数)という立場に立つと、関数を定義できない範囲にまで広げて考えることができます.つまり、解析接続という考え方です.
無限級数
$$1+z+z^2+z^3+\cdots$$
は、$|z|<1$ では収束しますが、$z=1$ になったとたん、無限大に発散してしまいます.もちろん、
$z<-1$にしても収束はしません.$z=-1$ に至っては値が振動したりします.
しかし、この級数は、 $|z|<1$において、
$$1+z+z^2+z^3+\cdots=\frac{1}{1-z}$$
という別の書き方をすることができます.
この等式は $|z|<1$ において満たされます.また右辺は $|z|<1$ にかぎらず、$z=1$ ではない全ての実数や複素数においても定義されています.つまり、複素数で考えれば、$|z|<1$ なる開円盤上での関数が $z=1$ 以外の全ての複素数上の関数として定義域が広がったことになります.逆に考えれば、無限級数というのは、$z=1$ 以外の全複素平面上で定義された関数を $|z|<1$ に制限して見ていたということができます.
このように、関数の定義域を広げる方法を解析接続といいます.関数の表示の方法を変えることで自然に広がったり、狭くなったりします.
そして重要な性質として、解析関数の範疇では、この広げ方は一意的という性質があります.いわゆる一致の定理です.
一致の定理
ある ${\mathbb C}$ の連結開集合 $D$ で、集積点を $D$ に含む2つの解析関数は $D$ で一致する.
一致の定理で、定義域を増やすには、表示の仕方を変える必要があります.
$$G(z)=ze^{\gamma z}\prod_{n=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\right\}$$
とします.
実は、$\Gamma(z)=\frac{1}{G(z)}$ の等式が成り立ちます.
左辺は、$\text{Re}(x)>0$ ではイコールが成り立ちますが、$G(z)$ は複素平面上で定義できる形(正則関数)です.(無限積は、収束すれば、関数となります.)
この等式を認めれば、
$$\Gamma(z)=z^{-1}e^{-\gamma z}\prod_{i=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
となります.
この式から、$z=0,-1,-2,\cdots$ と非正の整数では $\Gamma(-n)=\infty$ となります.
また、
$$\Gamma(z)\Gamma(-z)=-\frac{1}{z^2}\prod_{i=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{-\frac{z}{n}}\right\}\left\{\left(1-\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
$$=-\frac{1}{z^2}\prod_{i=1}^\infty\left(1-\frac{z^2}{n^2}\right)$$
ここで、項を入れ替えていますが、無限積が絶対収束しますので大丈夫です.
また、$\sin(\pi z)$ の無限積表示
$$\sin(\pi z)=z\prod_{i=1}^{\infty} \left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\right\}\left\{\left(1-\frac{z}{n}\right)e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
を使えば、
$$\Gamma(z)\Gamma(-z)=-\frac{\pi}{z\sin(\pi z)}$$
となります.両辺に $z$ をかけて、
$$z\Gamma(z)\Gamma(-z)=\Gamma(z+1)\Gamma(-z)=-\frac{\pi}{\sin(\pi z)}$$ となり、
$z+1$ を $z$ に置き換えることで、
$$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=-\frac{\pi}{\sin(\pi(z-1))}=-\frac{\pi}{-\sin(\pi z)}=\frac{\pi}{\sin (\pi z)}$$
となります.
ガンマ関数の負の値を計算するには、この公式を使うとよいです.
$\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\Gamma(z)\sin(\pi z)}$
なので、負の整数の場合は無限大に発散しますが、
$$\Gamma\left(-n+\frac{1}{2}\right)=\Gamma\left(1-\frac{2n+1}{2}\right)=\frac{\pi}{\Gamma(\frac{2n+1}{2})\sin\frac{(2n+1)\pi}{2}}$$
$$=\frac{2^n\sqrt{\pi}}{(2n-1)!!}(-1)^n$$
なので、$\Gamma(-\frac{1}{2})=-2\sqrt{\pi}$ となります.
また、$\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\Gamma(z)\sin(\pi z)}=\frac{z\pi}{z\Gamma(z)\sin(\pi z)}=\frac{z\pi}{\Gamma(z+1)\sin(\pi z)}=-\frac{z\pi}{\Gamma(z+1)\sin(\pi(z+1))}=-z\Gamma(-z)$
ゆえに、ガンマ関数の性質の2つ目は、負の数でも
$$\Gamma(1-z)=-z\Gamma(-z)$$
のように成り立つことがわかります.
先ほどの積分計算は、
$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\sin(\pi z)}$ を使って、
$\int_0^1\frac{x}{1+x^3}dx$ の値は、
$\int_0^1\frac{x}{1+x^3}dx=\frac{1}{3}\Gamma(\frac{1}{3})\Gamma(\frac{2}{3})=\frac{\pi}{\sin(\frac{\pi}{3})}=\frac{2\pi}{3\sqrt{3}}$
と計算できます.
あとは、$\Gamma(z)=\frac{1}{G(z)}$ であることと、$\sin(\pi z)$ の無限積表示だけ残りましたが、
それはまたどこかで書きたいと思います.
HPに行く.
今日は
- ガンマ関数の等式
- ベータ関数の等式
についてやりました.
それに基づいてn次元球体の体積についてやる予定でしたが、時間がありませんでした.
ガンマ関数とベータ関数
ガンマ関数
ガンマ関数の定義は、
$$\Gamma(x)=\int_0^\infty e^{-t}t^{x-1}dt$$
となります.
この積分は、0 においても、無限大においても広義積分になりますが、$x>0$ の領域では、(絶対)収束します.
ちゃんとした証明ではありませんが、無限大の方では、$e^{-t}$ という多項式より強い収束性を持つものがありますので大丈夫で、0 の付近では、$0<x<1$ の時が広義積分ですが、これも収束します.
つまり、$x>0$ の領域で、上の積分値が確定し、$\Gamma(x)$ が定義されます.
この定義から、$\Gamma(x)>0$ となります.
他の満たす性質として、
(1) $\Gamma(1)=1$
(2) $\Gamma(x+1)=x\Gamma(x)$ $x>0$
(3) $\Gamma(1/2)=\sqrt{\pi}$
などです.(1,2)から、整数 $n$ のとき、$\Gamma(n)=(n-1)!$ が成り立ちます.
よって、ガンマ関数の半整数での値、$\frac{2n+1}{2}$ も
$\Gamma(n+\frac{1}{2})=\frac{(2n-1)!!}{2^n}\sqrt{\pi}$
となります.
ベータ関数
ベータ関数は
$$B(p,q)=\int_0^1x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx$$
として定義されます.
このとき、
(1) $B(p,q)=B(q,p)$
(2) $B(p,q+1)=\frac{q}{p}B(p+1,q)$
(3) $B(p,q)=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2p-1}\theta\cos^{2q-1}\theta d\theta$
(4) $B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$
が成り立ちます.
(4) を使えば、(2) はすぐにわかりますし、(1) もすぐにわかります.
変数変換を使っても証明できます.(1) の宿題の証明は変数変換を使って行ってください.
基本的に、ベータ関数は、ガンマ関数としてかけるので、ガンマ関数がわかればベータ関数もわかることになります.
授業では、$\int_{0}^\infty\frac{x^{b-1}}{1+x^a}dx$ なる積分をガンマ関数を使って書くということを行いました.
授業中では、
$\int_{0}^\infty \frac{x^2}{1+x^2}dx$ をしましたが、よく見たらこの積分は収束しませんね.
$\int_0^\infty (1-\frac{1}{1+x^2})dx$ となり、$\int_0^\infty \frac{1}{1+x^2}dx$ は広義積分可能ですので、もし $\int_{0}^\infty \frac{x^2}{1+x^2}dx$ に値があれば、無限大 $\int_0^\infty dx$
が広義積分可能でないことに矛盾します.
$\int_{0}^\infty\frac{x^{b-1}}{1+x^a}dx$ が収束するには、$a>b>0$ が必要です.
このような積分を計算するには、変数変換が命なのですが、ここでは、$t=\frac{1}{1+x^a}$ とおくことでガンマ関数に直しました.
もう一度やっておきます.
$a=3$ かつ $b=2$ としておくと、
$t=\frac{1}{1+x^3}$ とおくと、$x=\sqrt[3]{\frac{1}{t}-1}$ となり、
このとき、$dx=\frac{1}{3}\frac{-1}{t^2}\sqrt[3]{\left(\frac{t}{1-t}\right)^2}dt=-\frac{1}{3}t^{-\frac{1}{3}}(1-t)^{-\frac{2}{3}}dt$
$$\int_{0}^\infty\frac{x}{1+x^3}dx=\int_1^0(1-t)^{\frac{1}{3}}t^{-\frac{1}{3}}\frac{1}{3}t^{-\frac{1}{3}}(1-t)^{-\frac{2}{3}}=\frac{1}{3}\int_0^1t^{-\frac{2}{3}}(1-t)^{-\frac{1}{3}}dt=\frac{1}{3}B\left(\frac{1}{3},\frac{2}{3}\right)=\frac{1}{3}\Gamma\left(\frac{1}{3}\right)\Gamma\left(\frac{2}{3}\right)$$
となります.この値はさらに後で具体的に求めます.
また、$\int_{0}^1\frac{x}{\sqrt{1-x^4}}dx$ も、
$t=1-x^4$ とすると、$x=(1-t)^{\frac{1}{4}}$ となり、
$dx=\frac{-1}{4}(1-t)^{-\frac{3}{4}}dt$ となり、
$$\int_{0}^1\frac{x}{\sqrt{1-x^4}}dx=\int_1^0(1-t)^{\frac{1}{4}}t^{-\frac{1}{2}}\frac{-1}{4}(1-t)^{-\frac{3}{4}}dt=\frac{1}{4}\int_0^1t^{-\frac{1}{2}}(1-t)^{-\frac{1}{2}}dt=\frac{1}{4}B\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right)=\frac{1}{4}\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)^2=\frac{\pi}{4}$$
また $x=\sqrt{\sin\theta}$ として変数変換することもできます.
このとき、$dx=\frac{1}{2}\frac{\cos\theta}{\sqrt{\sin\theta}}d\theta$ となるので、
$$\int_{0}^1\frac{x}{\sqrt{1-x^4}}dx=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\sqrt{\sin\theta}}{\cos\theta}\frac{1}{2}\frac{\cos\theta}{\sqrt{\sin\theta}}d\theta=\frac{1}{2}\int_0^{\frac{\pi}{2}}d\theta=\frac{1}{2}\frac{\pi}{2}=\frac{\pi}{4}$$
となります.
他にも演習問題を作ったので、これは次回とします.
ガンマ関数の他の表示
ガンマ関数は積分で定義しましたが、積分で定義するのはあまりリーズナブルではありません.というのも、$x>0$ (複素数に広げても $\text{Re}(x)>0$ )でしか収束しないからです.積分表示というのは、関数を一面的にしか捉えられないことがあります.
解析関数(各点においてテイラー展開可能の関数)という立場に立つと、関数を定義できない範囲にまで広げて考えることができます.つまり、解析接続という考え方です.
無限級数
$$1+z+z^2+z^3+\cdots$$
は、$|z|<1$ では収束しますが、$z=1$ になったとたん、無限大に発散してしまいます.もちろん、
$z<-1$にしても収束はしません.$z=-1$ に至っては値が振動したりします.
しかし、この級数は、 $|z|<1$において、
$$1+z+z^2+z^3+\cdots=\frac{1}{1-z}$$
という別の書き方をすることができます.
この等式は $|z|<1$ において満たされます.また右辺は $|z|<1$ にかぎらず、$z=1$ ではない全ての実数や複素数においても定義されています.つまり、複素数で考えれば、$|z|<1$ なる開円盤上での関数が $z=1$ 以外の全ての複素数上の関数として定義域が広がったことになります.逆に考えれば、無限級数というのは、$z=1$ 以外の全複素平面上で定義された関数を $|z|<1$ に制限して見ていたということができます.
このように、関数の定義域を広げる方法を解析接続といいます.関数の表示の方法を変えることで自然に広がったり、狭くなったりします.
そして重要な性質として、解析関数の範疇では、この広げ方は一意的という性質があります.いわゆる一致の定理です.
一致の定理
ある ${\mathbb C}$ の連結開集合 $D$ で、集積点を $D$ に含む2つの解析関数は $D$ で一致する.
一致の定理で、定義域を増やすには、表示の仕方を変える必要があります.
$$G(z)=ze^{\gamma z}\prod_{n=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\right\}$$
とします.
実は、$\Gamma(z)=\frac{1}{G(z)}$ の等式が成り立ちます.
左辺は、$\text{Re}(x)>0$ ではイコールが成り立ちますが、$G(z)$ は複素平面上で定義できる形(正則関数)です.(無限積は、収束すれば、関数となります.)
この等式を認めれば、
$$\Gamma(z)=z^{-1}e^{-\gamma z}\prod_{i=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
となります.
この式から、$z=0,-1,-2,\cdots$ と非正の整数では $\Gamma(-n)=\infty$ となります.
また、
$$\Gamma(z)\Gamma(-z)=-\frac{1}{z^2}\prod_{i=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{-\frac{z}{n}}\right\}\left\{\left(1-\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
$$=-\frac{1}{z^2}\prod_{i=1}^\infty\left(1-\frac{z^2}{n^2}\right)$$
ここで、項を入れ替えていますが、無限積が絶対収束しますので大丈夫です.
また、$\sin(\pi z)$ の無限積表示
$$\sin(\pi z)=z\prod_{i=1}^{\infty} \left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\right\}\left\{\left(1-\frac{z}{n}\right)e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
を使えば、
$$\Gamma(z)\Gamma(-z)=-\frac{\pi}{z\sin(\pi z)}$$
となります.両辺に $z$ をかけて、
$$z\Gamma(z)\Gamma(-z)=\Gamma(z+1)\Gamma(-z)=-\frac{\pi}{\sin(\pi z)}$$ となり、
$z+1$ を $z$ に置き換えることで、
$$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=-\frac{\pi}{\sin(\pi(z-1))}=-\frac{\pi}{-\sin(\pi z)}=\frac{\pi}{\sin (\pi z)}$$
となります.
ガンマ関数の負の値を計算するには、この公式を使うとよいです.
$\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\Gamma(z)\sin(\pi z)}$
なので、負の整数の場合は無限大に発散しますが、
$$\Gamma\left(-n+\frac{1}{2}\right)=\Gamma\left(1-\frac{2n+1}{2}\right)=\frac{\pi}{\Gamma(\frac{2n+1}{2})\sin\frac{(2n+1)\pi}{2}}$$
$$=\frac{2^n\sqrt{\pi}}{(2n-1)!!}(-1)^n$$
なので、$\Gamma(-\frac{1}{2})=-2\sqrt{\pi}$ となります.
また、$\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\Gamma(z)\sin(\pi z)}=\frac{z\pi}{z\Gamma(z)\sin(\pi z)}=\frac{z\pi}{\Gamma(z+1)\sin(\pi z)}=-\frac{z\pi}{\Gamma(z+1)\sin(\pi(z+1))}=-z\Gamma(-z)$
ゆえに、ガンマ関数の性質の2つ目は、負の数でも
$$\Gamma(1-z)=-z\Gamma(-z)$$
のように成り立つことがわかります.
先ほどの積分計算は、
$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\sin(\pi z)}$ を使って、
$\int_0^1\frac{x}{1+x^3}dx$ の値は、
$\int_0^1\frac{x}{1+x^3}dx=\frac{1}{3}\Gamma(\frac{1}{3})\Gamma(\frac{2}{3})=\frac{\pi}{\sin(\frac{\pi}{3})}=\frac{2\pi}{3\sqrt{3}}$
と計算できます.
あとは、$\Gamma(z)=\frac{1}{G(z)}$ であることと、$\sin(\pi z)$ の無限積表示だけ残りましたが、
それはまたどこかで書きたいと思います.