2015年12月23日水曜日

微積分II演習(第10回)

[場所1E103(金曜日5限)]
HPに行く.

今日は
  • ガンマ関数の等式
  • ベータ関数の等式
についてやりました.
それに基づいてn次元球体の体積についてやる予定でしたが、時間がありませんでした.

ガンマ関数とベータ関数

ガンマ関数

ガンマ関数の定義は、
$$\Gamma(x)=\int_0^\infty e^{-t}t^{x-1}dt$$
となります.

この積分は、0 においても、無限大においても広義積分になりますが、$x>0$ の領域では、(絶対)収束します.
ちゃんとした証明ではありませんが、無限大の方では、$e^{-t}$ という多項式より強い収束性を持つものがありますので大丈夫で、0 の付近では、$0<x<1$ の時が広義積分ですが、これも収束します.

つまり、$x>0$ の領域で、上の積分値が確定し、$\Gamma(x)$ が定義されます.
この定義から、$\Gamma(x)>0$ となります.

他の満たす性質として、
(1) $\Gamma(1)=1$
(2) $\Gamma(x+1)=x\Gamma(x)$   $x>0$
(3) $\Gamma(1/2)=\sqrt{\pi}$ 

などです.(1,2)から、整数 $n$ のとき、$\Gamma(n)=(n-1)!$ が成り立ちます.
よって、ガンマ関数の半整数での値、$\frac{2n+1}{2}$ も
$\Gamma(n+\frac{1}{2})=\frac{(2n-1)!!}{2^n}\sqrt{\pi}$
となります.

ベータ関数

ベータ関数は
$$B(p,q)=\int_0^1x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx$$
として定義されます.
このとき、

(1) $B(p,q)=B(q,p)$ 
(2) $B(p,q+1)=\frac{q}{p}B(p+1,q)$
(3) $B(p,q)=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2p-1}\theta\cos^{2q-1}\theta d\theta$
(4) $B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$

が成り立ちます.
(4) を使えば、(2) はすぐにわかりますし、(1) もすぐにわかります.
変数変換を使っても証明できます.(1) の宿題の証明は変数変換を使って行ってください.

基本的に、ベータ関数は、ガンマ関数としてかけるので、ガンマ関数がわかればベータ関数もわかることになります.

授業では、$\int_{0}^\infty\frac{x^{b-1}}{1+x^a}dx$ なる積分をガンマ関数を使って書くということを行いました.
授業中では、
$\int_{0}^\infty \frac{x^2}{1+x^2}dx$ をしましたが、よく見たらこの積分は収束しませんね.

$\int_0^\infty (1-\frac{1}{1+x^2})dx$ となり、$\int_0^\infty \frac{1}{1+x^2}dx$ は広義積分可能ですので、もし $\int_{0}^\infty \frac{x^2}{1+x^2}dx$ に値があれば、無限大 $\int_0^\infty dx$
が広義積分可能でないことに矛盾します.

$\int_{0}^\infty\frac{x^{b-1}}{1+x^a}dx$ が収束するには、$a>b>0$ が必要です.


このような積分を計算するには、変数変換が命なのですが、ここでは、$t=\frac{1}{1+x^a}$ とおくことでガンマ関数に直しました.

もう一度やっておきます.
$a=3$ かつ $b=2$ としておくと、

$t=\frac{1}{1+x^3}$ とおくと、$x=\sqrt[3]{\frac{1}{t}-1}$ となり、
このとき、$dx=\frac{1}{3}\frac{-1}{t^2}\sqrt[3]{\left(\frac{t}{1-t}\right)^2}dt=-\frac{1}{3}t^{-\frac{1}{3}}(1-t)^{-\frac{2}{3}}dt$
$$\int_{0}^\infty\frac{x}{1+x^3}dx=\int_1^0(1-t)^{\frac{1}{3}}t^{-\frac{1}{3}}\frac{1}{3}t^{-\frac{1}{3}}(1-t)^{-\frac{2}{3}}=\frac{1}{3}\int_0^1t^{-\frac{2}{3}}(1-t)^{-\frac{1}{3}}dt=\frac{1}{3}B\left(\frac{1}{3},\frac{2}{3}\right)=\frac{1}{3}\Gamma\left(\frac{1}{3}\right)\Gamma\left(\frac{2}{3}\right)$$
となります.この値はさらに後で具体的に求めます.


また、$\int_{0}^1\frac{x}{\sqrt{1-x^4}}dx$ も、
$t=1-x^4$ とすると、$x=(1-t)^{\frac{1}{4}}$ となり、
$dx=\frac{-1}{4}(1-t)^{-\frac{3}{4}}dt$ となり、
$$\int_{0}^1\frac{x}{\sqrt{1-x^4}}dx=\int_1^0(1-t)^{\frac{1}{4}}t^{-\frac{1}{2}}\frac{-1}{4}(1-t)^{-\frac{3}{4}}dt=\frac{1}{4}\int_0^1t^{-\frac{1}{2}}(1-t)^{-\frac{1}{2}}dt=\frac{1}{4}B\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right)=\frac{1}{4}\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)^2=\frac{\pi}{4}$$

また $x=\sqrt{\sin\theta}$ として変数変換することもできます.
このとき、$dx=\frac{1}{2}\frac{\cos\theta}{\sqrt{\sin\theta}}d\theta$ となるので、
$$\int_{0}^1\frac{x}{\sqrt{1-x^4}}dx=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\sqrt{\sin\theta}}{\cos\theta}\frac{1}{2}\frac{\cos\theta}{\sqrt{\sin\theta}}d\theta=\frac{1}{2}\int_0^{\frac{\pi}{2}}d\theta=\frac{1}{2}\frac{\pi}{2}=\frac{\pi}{4}$$
となります.

他にも演習問題を作ったので、これは次回とします.

ガンマ関数の他の表示

ガンマ関数は積分で定義しましたが、積分で定義するのはあまりリーズナブルではありません.というのも、$x>0$ (複素数に広げても $\text{Re}(x)>0$ )でしか収束しないからです.積分表示というのは、関数を一面的にしか捉えられないことがあります.

解析関数(各点においてテイラー展開可能の関数)という立場に立つと、関数を定義できない範囲にまで広げて考えることができます.つまり、解析接続という考え方です.

無限級数
$$1+z+z^2+z^3+\cdots$$
は、$|z|<1$ では収束しますが、$z=1$ になったとたん、無限大に発散してしまいます.もちろん、
$z<-1$にしても収束はしません.$z=-1$ に至っては値が振動したりします.

しかし、この級数は、 $|z|<1$において、
$$1+z+z^2+z^3+\cdots=\frac{1}{1-z}$$
という別の書き方をすることができます.

この等式は $|z|<1$ において満たされます.また右辺は $|z|<1$ にかぎらず、$z=1$ ではない全ての実数や複素数においても定義されています.つまり、複素数で考えれば、$|z|<1$ なる開円盤上での関数が $z=1$ 以外の全ての複素数上の関数として定義域が広がったことになります.逆に考えれば、無限級数というのは、$z=1$ 以外の全複素平面上で定義された関数を $|z|<1$ に制限して見ていたということができます.
このように、関数の定義域を広げる方法を解析接続といいます.関数の表示の方法を変えることで自然に広がったり、狭くなったりします.

そして重要な性質として、解析関数の範疇では、この広げ方は一意的という性質があります.いわゆる一致の定理です.

一致の定理
ある ${\mathbb C}$ の連結開集合 $D$ で、集積点を $D$ に含む2つの解析関数は $D$ で一致する.

一致の定理で、定義域を増やすには、表示の仕方を変える必要があります.

$$G(z)=ze^{\gamma z}\prod_{n=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\right\}$$
とします.

実は、$\Gamma(z)=\frac{1}{G(z)}$ の等式が成り立ちます.
左辺は、$\text{Re}(x)>0$ ではイコールが成り立ちますが、$G(z)$ は複素平面上で定義できる形(正則関数)です.(無限積は、収束すれば、関数となります.)

この等式を認めれば、

$$\Gamma(z)=z^{-1}e^{-\gamma z}\prod_{i=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{\frac{z}{n}}\right\}$$

となります.
この式から、$z=0,-1,-2,\cdots$ と非正の整数では  $\Gamma(-n)=\infty$ となります.

また、

$$\Gamma(z)\Gamma(-z)=-\frac{1}{z^2}\prod_{i=1}^\infty\left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{-\frac{z}{n}}\right\}\left\{\left(1-\frac{z}{n}\right)^{-1}e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
$$=-\frac{1}{z^2}\prod_{i=1}^\infty\left(1-\frac{z^2}{n^2}\right)$$
ここで、項を入れ替えていますが、無限積が絶対収束しますので大丈夫です.

また、$\sin(\pi z)$ の無限積表示
$$\sin(\pi z)=z\prod_{i=1}^{\infty} \left\{\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\right\}\left\{\left(1-\frac{z}{n}\right)e^{\frac{z}{n}}\right\}$$
を使えば、

$$\Gamma(z)\Gamma(-z)=-\frac{\pi}{z\sin(\pi z)}$$

となります.両辺に $z$ をかけて、
$$z\Gamma(z)\Gamma(-z)=\Gamma(z+1)\Gamma(-z)=-\frac{\pi}{\sin(\pi z)}$$ となり、
$z+1$ を $z$ に置き換えることで、
$$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=-\frac{\pi}{\sin(\pi(z-1))}=-\frac{\pi}{-\sin(\pi z)}=\frac{\pi}{\sin (\pi z)}$$

となります.
ガンマ関数の負の値を計算するには、この公式を使うとよいです.

$\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\Gamma(z)\sin(\pi z)}$
なので、負の整数の場合は無限大に発散しますが、
$$\Gamma\left(-n+\frac{1}{2}\right)=\Gamma\left(1-\frac{2n+1}{2}\right)=\frac{\pi}{\Gamma(\frac{2n+1}{2})\sin\frac{(2n+1)\pi}{2}}$$
$$=\frac{2^n\sqrt{\pi}}{(2n-1)!!}(-1)^n$$

なので、$\Gamma(-\frac{1}{2})=-2\sqrt{\pi}$ となります.
また、$\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\Gamma(z)\sin(\pi z)}=\frac{z\pi}{z\Gamma(z)\sin(\pi z)}=\frac{z\pi}{\Gamma(z+1)\sin(\pi z)}=-\frac{z\pi}{\Gamma(z+1)\sin(\pi(z+1))}=-z\Gamma(-z)$

ゆえに、ガンマ関数の性質の2つ目は、負の数でも
$$\Gamma(1-z)=-z\Gamma(-z)$$
のように成り立つことがわかります.

先ほどの積分計算は、
$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\sin(\pi z)}$ を使って、
$\int_0^1\frac{x}{1+x^3}dx$ の値は、
$\int_0^1\frac{x}{1+x^3}dx=\frac{1}{3}\Gamma(\frac{1}{3})\Gamma(\frac{2}{3})=\frac{\pi}{\sin(\frac{\pi}{3})}=\frac{2\pi}{3\sqrt{3}}$
と計算できます.

あとは、$\Gamma(z)=\frac{1}{G(z)}$ であることと、$\sin(\pi z)$ の無限積表示だけ残りましたが、
それはまたどこかで書きたいと思います.

2015年12月22日火曜日

線形代数II演習(第10回)

[場所1E103(水曜日4限)]


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今日は計量ベクトル空間を扱いました.
講義の方では双対空間を扱ったようですね.
商空間に引き続き新しいベクトル空間の登場ですね.
演習で扱うかどうかはまだ決めていませんが、よい題材があればやろうと思います.

計量ベクトル空間

スカラーが実数の場合

以下の性質を満たす実ベクトル空間 $V$ 上の積 $(\cdot,\cdot )$ のことです.
積は、$V\times V\to {\mathbb R}$ であって、以下の性質を満たします.

(i) $({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w})=({\bf v}_1,{\bf w})+({\bf v}_2,{\bf w})$
(ii) $(\lambda {\bf v},{\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})$
(iii) $({\bf v},{\bf w})=({\bf w},{\bf v})$
(iv) $({\bf v},{\bf v})\ge 0$ となり、等号を満たすのは ${\bf v}=0$ のときのみ.

この最後の (iv) を満たすかどうか重要です.$({\bf v},{\bf v})\ge 0$ としなくても
よい内積もありますが、それは、不定値内積とよばれ、相対論などで登場します.
そのような場合は、もちろん等号を満たすようなベクトルは無数に存在することになります.
ここでは、不定値内積ではなく、定値内積(さらにいえば正定値内積)を考えています.
実内積の場合は、(i)と(ii) の条件から、

$({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w})=({\bf v}_1,{\bf w})+({\bf v}_2,{\bf w})$
$({\bf v},{\bf w}_1+{\bf w}_2)=({\bf v},{\bf w}_1)+({\bf v},{\bf w}_2)$
$(\lambda {\bf v},{\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})$
$({\bf v},\lambda {\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})$
が成り立ち、このような線形性のことを双線形性といいます.

(iii) のことは、対称といいます.
なので、内積のことを、正定値対称双線形形式ということもあります.
形式というのは、一般に $V\times V\times \cdots \times V\to {\mathbb R}$ のような関数のことをいます.
さらにそれをベクトル空間に広げたものをテンソルといいます.


スカラーが複素数の場合

スカラーを ${\mathbb C}$ にして複素ベクトル空間上に複素内積を考えることもできますが、その場合、上の性質は少し違って、以下のようになります.

$V\times V\to {\mathbb C}$ であって、以下の性質を満たすことです.
(i) $({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w})=({\bf v}_1,{\bf w})+({\bf v}_2,{\bf w})$
(ii) $(\lambda {\bf v},{\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})$
(iii)' $({\bf v},{\bf w})=\overline{({\bf w},{\bf v})}$
(iv) $({\bf v},{\bf v})\ge 0$ となり、等号を満たすのは ${\bf v}=0$ のときのみ.

のように(iii)の性質ではなく、(iii)' のように、成分をひっくり返して
複素共役(ふくそきょうやく)をとることで等号が成り立ちます.
なので、(ii)と(iii)'を組み合わせれば、
$({\bf v},\lambda{\bf w})=\bar{\lambda}({\bf v},{\bf w})$ と計算されます.
また、$||{\bf v}||=\sqrt{({\bf v},{\bf v})}$ として定義し、ノルムといいます.

数ベクトル空間上の内積と標準内積

数ベクトル空間 ${\mathbb R}^n$ や ${\mathbb C}^n$ 上に標準基底があったように、標準内積があります.

$$({}^t(a_1,a_2,\cdots,a_n),{}^t(b_1,b_2,\cdots,b_n))=\sum_{i=1}^na_ib_i$$
が ${\mathbb R}^n$ の標準内積とよばれます.
${\mathbb C}^n$ の場合は、
$$({}^t(a_1,a_2,\cdots,a_n),{}^t(b_1,b_2,\cdots,b_n))=\sum_{i=1}^na_i\bar{b_i}$$
となります.

複素共役を取らないと、$({\bf v},{\bf v})$ が実数にならず、複素数のままになってしまうことがあります.


数ベクトル空間で内積を考えると、自然に
$$({\bf v},{\bf w})=(v_1,v_2,\cdots,v_n)A\begin{pmatrix}\bar{w_1}\\\bar{w_2}\\\vdots\\\bar{w_n}\end{pmatrix}$$
なる行列が出てきます.
ここで、${\bf v}=(v_1,v_2,\cdots,v_n)$ かつ ${\bf w}=(w_1,w_2,\cdots,w_n)$ です.
実数の場合は、$A$ は対称行列ですが、複素数の場合は、エルミート行列になります.
エルミート行列とは、${}^tA=\bar{A}$ となる行列のことです.

また、$A$ が実対称行列やエルミート行列のときは、固有値は必ず実数になりますが、
条件 (iv) を満たすためには、固有値は必ず正の数でなければなりません.
つまり、正定値行列でなければならないのです.
標準内積の場合は、この行列 $A$ が丁度単位行列の場合に相当します.

また、そのような行列をもってこれば、必ず正定値内積を構成することができます.

ベクトル空間の内積

一般のベクトル空間でも、基底を固定しておけば、数ベクトル空間と同一視できますので、このような行列がでてきます.

一般のベクトル空間上で内積をすることは、あまりなれないかもしれませんが、
定義することができます.その、最初にでてくるのが、積分を使ったものです.

$f,g\in C[0,1]$ もしくは、$f,g\in {\mathbb C}[x]_n$ などでも、
$$(f,g)=\int_{0}^1f(x)g(x)dx$$
として、内積を考えることができます.
双線形性はすぐわかると思いますが、正定値性は関数の連続性を使うので少し難しいです.


直交射影(正射影)

ベクトル ${\bf v}$ の ${\bf w}\neq 0$ への直交射影 ${\bf a}$ とは、${\bf w}$ と平行で、$({\bf v}-{\bf a},{\bf w})=0$ を満たすベクトルのことで、一意的に定まります.

計算の仕方は、

$${\bf a}=\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w}$$

となります.${\bf w}$ と平行になっていることはよいと思いますが、
直交性は、
$$({\bf v}-{\bf a},{\bf w})=({\bf v}-\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w},{\bf w})=({\bf v},{\bf w})-\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}({\bf w},{\bf w})$$
となり、この値は $0$ になります.

この直交射影により、ベクトル ${\bf v}$ を
$${\bf v}=\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w}+({\bf v}-\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w})$$
のように分解することができます.
一つ目の項は ${\bf w}$ と平行な成分、二つ目の項は ${\bf w}$ と直交する成分です.

複素ベクトル空間の等式

${\bf v}_1,{\bf v}_2$ を複素ベクトル空間のベクトルとして、
$||{\bf v}_2||=2$ かつ、$({\bf v}_1+2{\bf v}_2,{\bf v}_1-{\bf v}_2)=-4-3i$
かつ $({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf v}_1+3{\bf v}_2)=22+2i$ のとき、
$||{\bf v}_1||$ を求めよ.

解答
$({\bf v}_2,{\bf v}_2)=4$かつ
$({\bf v}_1,{\bf v}_1)-({\bf v}_1,{\bf v}_2)+2({\bf v}_2,{\bf v}_1)-2({\bf v}_2,{\bf v}_2)=-4-3i$
$({\bf v}_1,{\bf v}_1)+3({\bf v}_1,{\bf v}_2)+({\bf v}_2,{\bf v}_1)+3({\bf v}_2,{\bf v}_2)=22+2i$
第2項目から第3項目を引くことで、
$-4({\bf v}_1,{\bf v}_2)+({\bf v}_2,{\bf v}_1)-5({\bf v}_2,{\bf v}_2)=-26-5i$
より、
$-4({\bf v}_1,{\bf v}_2)+({\bf v}_2,{\bf v}_1)=-6-5i$
(iii)' を使えば、 $-4({\bf v}_1,{\bf v}_2)+\overline{({\bf v}_1,{\bf v}_2)}=-6-5i$
となる.$({\bf v}_1,{\bf v}_2)=a+bi$ とおくと、$-4(a+bi)+(a-bi)=-6-5i$ となり、
$-3a=-6$ かつ $-5b=-5$ となります.
ゆえに、$({\bf v}_1,{\bf v}_2)=2+i$ となります.
よって、$({\bf v}_1,{\bf v}_1)=-4-3i+({\bf v}_1,{\bf v}_2)-2({\bf v}_1,{\bf  v}_2)+2({\bf v}_2,{\bf v}_2)=-4-3i+(2+i)-2(2-i)+2\cdot 4=2$
よって、$||{\bf v}_1||=\sqrt{2}$ となります.

2015年12月21日月曜日

トポロジー入門演習(ヒント集4)

[場所1E103(月曜日4限)]

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問題69
$(X,{\frak T}_X)$, $(Y,{\frak T}_Y)$を位相空間とする.写像$(X,{\frak T}_X)\to (Y,{\frak T}_Y)$がある.次の条件は同値であることを示せ.
(1)  $f$は$(X,{\frak T}_X)$から$(Y,{\frak T}_Y)$への連続写像である.
(2)  $Y$の任意の開集合$H$に対して$f^{-1}(H)$が$X$の開集合である.
(3)  $Y$の任意の閉集合$K$に対して$f^{-1}(K)$が$X$の閉集合である.

(略解答)
(1) から (2) $f$ が連続であるとは、任意の $x\in X$ と任意の $f(x)$ の任意の近傍 $U$ において、ある $x$ の近傍 $V$ が存在して、$f(V)\subset U$ となること.
これは、(2) を意味している.なぜか?
(2) から (3) 補集合をとって考えよ.
(3) から (1) 任意の $f(x)$ とその近傍 $V$ において、$V$ に含まれる $f(x)$ の開近傍をとって(3)の条件を使うことで、$x$ に開近傍で、$V$ に写されるものが取れる. 

問題70
$(X,{\frak T}_X)$, $(Y,{\frak T}_Y)$ を位相空間とする.
写像 $(X,{\frak T}_X)\to (Y,{\frak T}_Y)$ がある.
次の条件は同値であることを示せ.
(1) $f$ は $(X,{\frak T}_X)$ から $(Y,{\frak T}_Y)$ への連続写像である.
(2) $A\subset X$ に対し、$f(\text{Cl} A)\subset \text{Cl}f(A)$ ここで、Clはそれぞれの位相空間における閉包である.
(3) $Y$ の一つの開基 $\beta$ に関する各開集合 $W$ に対し、$f^{-1}(W)$ は $X$ の開集合である.

(略解答)
(1) から (2) :$y$ が $f(A)$ の閉包であることは、任意の $y$ の近傍 $V$ に対して、$V\cap f(A)\neq \emptyset$ であることを言えばよい.
(1) と (3) の同値性: 開基の性質(全ての開集合は開基に含まれる開集合の幾つかの和集合である)を使えば自明にできる.
(2) から 問題70の(3) :$y\in V$ を閉近傍とし、$f^{-1}(V)=:A$ が閉集合であることを示す.つまり $\text{Cl}(A)=A$ を示せばよい.

(注)
配ったプリントでは、(2) の条件が $A\subset Y$ となっていましたが、正しくは、$A\subset X$ ですのでご注意 を.

問題71
$\beta$ を位相空間 $(X,{\frak T})$ の開基とする.
$\beta\cap Y=\{B\cap Y|B\in \beta\}$ は部分空間 $(Y,{\frak T}\cap Y)$ の開基となることを示せ.

(ヒント)
開基の定義と部分空間の位相の定義を思い出せ.

問題76
(引用:$X$ を位相空間 $A\subset X$ とし、$G$ は $X$ の開集合であるとする.
このとき、$\text{Cl}(A\cap G)\supset \text{Cl}(A)\cap G$ が成り立つことを示せ.
特に、 $A\cap G =\emptyset\Rightarrow \text{Cl}(A)\cap G=\emptyset $
を示せ.)
は $G$ が開集合でないと成り立たない.そのような例を挙げよ.

(略解答)
$A$ として開集合で、その集積点が $G$ に含まれるようにすればよい.


問題77
$X$を集合とする.$X$ の各部分集合 $A$ に対し $X$ の部分集合 $u(A)$ を対応させる写像$u:\rho(X)\to \rho(X)$($\rho(X)$ は $X$ のべき集合)があって
$A,B$ を $X$ の任意の部分集合とするとき、次の4条件を満たすものとする.
(i) $A\subset u(A)$
(ii) $u(u(A))=u(A)$
(iii) $u(A\cup B)=u(A)\cup u(B)$
(iv) $u(\emptyset)=\emptyset$
このとき、${\frak T}=\{X-A|A\in\rho(X),u(A)=A\}$ は $X$ の一つの位相となり、この位相空間 $(X,{\frak T})$ における閉包 $\text{Cl}(A)$ は $u(A)$ と一致する.

(略解答)
${\frak T}$ が位相となることを示せ.
$B$ が $A$ の閉包であるとは、任意の $x\in B$ と任意の近傍 $U$ に対して、$U\cap A\neq \emptyset$ となること.$x\in u(A)$ となる任意の $x$ に対して、ある $x$ の開集合 $U$ が存在して、$U\cap A=\emptyset$ であるとすると矛盾することを示す.
 $U$ は開集合なので、この補空間をとると、$u(B)=B$ となる閉集合となる.
いま、$x\not\in B$ なので、$x$ は $A^c$ に入ることになって矛盾.

(注)問題文で、${\frak T}$ の定義に $u(A)=A$ であることが抜けていました.
修正したプリントはホームページの方にアップしました.
問題78
位相空間 $(X,{\frak T})$が近傍系 ${\mathcal U}=\{{\mathcal U}(x)|x\in X\}$ によって
定められている場合、 $y\in Y$ に対して、
$${\mathcal U}(y)\cap Y=\{U\cap Y|U\in {\mathcal U}(y)\}$$
とおけば、$\mathcal{V}=\{\mathcal{U}(y)\cap Y|y\in Y\}$ は $Y$ の近傍系となり、この近傍の
定める $Y$ の位相は ${\frak T}$ によって定められる $Y$ 上の相対位相と一致することを示せ.


(ヒント)
これが $Y$ の近傍系であることはすぐに確かめられる.また、相対位相は、任意の $Y$ の開集合 $V$ は、$X$ の開集合 $U$ を使って、$V=U\cap Y$ とかけることを使う.

トポロジー入門演習(第9回)(ヒント集3)

[場所1E103(月曜日4限)]

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開基について

開集合には空集合が含まれていますが、開基には空集合をふくみません.
これも、約束だけのことですので、もしかしたら含まれると書いてある本もあるかもしれません.

というのも、

位相空間の開基 $\beta$ とは、開基に含まれる開集合の集合 $\{B_a|a\in A\}\subset \beta$ の和集合 $\cup_{a\in A}B_a$ によって作られる開集合全体が位相となるような集合のことです.$A$ として空集合をとったときは、この和集合も空集合となり、形式的に空集合も開基から作ることができるわけです.

なので、開集合にはいつでも空集合が含まれますが、開基には含まれていないことがあります.

第6回で残った問題

問題60
${\mathbb R}^2$に通常の距離位相を入れる.このとき、部分集合${\mathbb R}$を考える.
(1) $a,b\in {\mathbb R}$に対して、開区間$(a,b)$は$(a,b)=B\cap {\mathbb R}$となるような${\mathbb R}^2$上の開集合$B\subset {\mathbb R}^2$が存在することを示せ.
(2) $\beta$を${\mathbb R}^2$上の位相のある開基とする.このとき、$\beta\cap{\mathbb R}=\{B\cap {\mathbb R}|B\in \beta\}$が${\mathbb R}$の通常の距離位相の開基になっていることを示せ.
(3) ${\mathbb R}^2$における${\mathbb R}$の相対位相は通常の${\mathbb R}$の距離位相であることを示せ.

(略解答orヒント)
(1) 四角形でよい.
(2) $\{B\cap {\mathbb R}|B\in \beta\}$ を開基とする開集合 $U$ を任意に取ったときに、$U={\mathbb R}\cap V$ となる${\mathbb R}^2$ の開集合 $V$ が存在することを示せ.
(3) ${\mathbb R}$ や ${\mathbb R}^2$ において開区間や開円盤を開基とするような位相は通常の距離空間であることから、(1,2)を使う.


問題61

$S_+^1=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2=1,x>0\}$と実数全体は同相であることを示せ.
ただし、$S^1_+$には${\mathbb R}^2$上の通常の距離位相からくる相対位相が入っているとする.

(ヒント)
$y\mapsto (\sqrt{1-y^2},y)$ なる関数で、$(-1,1)$ と同相であることを示せ.問題95も参考にせよ.
一対一連続(逆写像も連続)を示す.$\sqrt{1-y^2}$ は連続であることは使ってもよい.
また、$(-1,1)$ と実数全体を何かの関数で同一視せよ.
問題27を使って直接実数全体と連続な写像を作ってもよい.

問題62

各$\frak{T}_a\ (a\in \Omega)$を集合$X$の位相とするとき、$\cap_a\frak{T}_a$も$X$の位相となることを
証明せよ.$\cup_{a}\frak{T}_a$についてはどうか?

(ヒント)
位相の定義に戻るとできると思います.


問題65
 $X$を位相空間、$A\subset X$とするとき、$\text{Cl}(A)-A$が閉集合となるためには、$A=G\cap F$となる開集合$G$と閉集合$F$が存在することが必要十分であることを証明せよ.

(略解答)
必要性は、$\text{Cl}(A)=A\cup V$ なる閉集合 $V$ が存在する.ただし、$A\cap V=\emptyset$ としてよい.よって、$A=\text{Cl}(A)-V$ となる.
十分性は、$\text{Cl}(G\cap F)-(G\cap F)=\text{Cl}(G\cap F)\cap (G\cap F)^c$ が閉集合であることを示せばよい.
$\text{Cl}(A)\cap F=\text{Cl}(A)$ であることに気づけば閉集合であることは、閉包が自分自身と一致することを使わなくてもできる.

問題66

$A_i\ (i=1,...,n)$は位相空間$X$の閉集合で、$X=\cup_i(A_i)$とする.
$G$ は$X$ の開集合 $\Leftrightarrow$ $G\cap A_i$が部分空間$A_i$の開集合$(1\le i\le n)$
を証明せよ.

(略解答)
 $\Rightarrow$ は部分位相の定義から.$\Leftarrow$ は $A_i-A_i\cap G$ が $A_i$ の中で閉集合であることからわかる.

問題67

$X$ を位相空間、$A$ を $X$ の閉集合とする.$U$ を部分空間 $A$ の開集合、 $V$ を、$U\subset V$ を満たす $X$ の開集合とすると、$U\cup(V-A)$ は $X$ の開集合となることを証明せよ.

(略解答)
$U^c\cap A$ は$A$ の閉集合。よって、$U^c\cap A$ は$X$ で閉集合.
$U^c=(U^c\cap A)\cup A^c$ は$X$ で閉集合.
$U^c\cap (V-A)^c$ が閉集合であることを示す.

問題68

$A=\{0\}\cup\{x\in{\mathbb R}||x|>1\}$とし、$A\ni x$に対し、
$$A\cap\{(a,b)  \ \ \ (a<x<b;a,b\in A)$$
を$x$の近傍として定まる$A$の位相は、実数空間${\mathbb R}$の部分空間としての$A$の相対位相と異なることを証明せよ.

 (略解答)
もし相対位相なら、$\{0\}$ が開集合として入っていることになる.
この事実と、上記の位相の中に $\{0\}$ が入らないことを示す.

2015年12月15日火曜日

微積分II演習(第9回)

[場所1E103(金曜日5限)]
HPに行く.

今日は、
  • 積分計算
に入りました.積分は、重積分が主ですが、それを累次積分に直して計算します.

長方形領域

$D=[a,b]\times[c,d]$ 上の積分は、
$$\int\int_Df(x,y)dxdy=\int_a^b\left(\int_c^df(x,y)dx\right)dy$$
となおして計算します.


積分の変数変換ですが、
求めたい積分の領域に移るような、求めやすい領域からの写像を考えてください.
つまり、
$$\varphi:D\to \varphi(D)\subset {\mathbb R}^2$$
求める積分の領域 $\varphi(D)$ に写ってくるように、$D$ と$\varphi$
を構成すればよい.
そうすると、積分 $\int\int_{\varphi(D)}f(x,y)dxdy$ は
$\int\int_Df(x(u,v),y(u,v))|\frac{\partial (x,y)}{\partial (u,v)}|dudv$
として計算できます.

三角形領域

原点と $(a,0),(0,b)$ を頂点とする三角形で囲まれる領域 $D$ とすると、
斜辺の方程式は、$\frac{x}{a}+\frac{y}{b}=1$ なので、
$$\int\int_Df(x,y)dxdy=\int_0^b(\int_0^{(1-\frac{y}{b})a}f(x,y)dx)dy$$
のように累次積分に帰着されます.

一般に $(a,b),(c,d),(e,f)$ を頂点とする3角形領域を $D$ とすると、
$$(x,y)\mapsto ((c-a)x+(e-a)y+a,(d-b)x+(f-b)y+b)$$
なる変換により、$(0,0),(1,0),(0,1)$ がそれぞれ、$(a,b),(c,d),(e,f)$ となるような変形が作られます.
このような、原点が原点に移るとは限らない一次式による変換をアフィン変換といいます.

また、アフィン変換により直線は直線にうつり、三角形は三角形に写ります.
よって、平面上のどんな三角形もこの変換により、$(0,0),(1,0),(0,1)$ を頂点とする三角形に写ります.

この変換のヤコビアンを計算すると、
$$\det\begin{pmatrix}c-a&e-a\\d-b&f-b\end{pmatrix}=(c-a)(f-b)-(e-a)(d-b)=cf-ed-af+ad-cb+eb=:\Delta$$
となり、積分は
$$\int\int_Df(x,y)dxdy=\Delta\times\int_0^1(\int_0^yf((c-a)x+(e-a)y+a,(d-b)x+(f-b)y+b)dx)dy$$
となります.


円盤領域
円盤領域の場合、ほとんどの場合、極座標表示により求めます.
$D=\{(x,y)|x^2+y^2\le r^2\}$ であるとすると、
$x=r\cos\theta,y=r\sin\theta$ とする.
$$\frac{\partial (x,y)}{\partial(r,\theta)}=\det\begin{pmatrix}\cos\theta&\sin\theta\\-r\sin\theta&r\cos\theta\end{pmatrix}=r$$
が求まり、積分計算は、
$$\int\int_Df(x,y)dxdy=\int_0^r\int_0^{2\pi}f(r\cos\theta,r\sin\theta)rdrd\theta$$
となります.

円盤の中心がずれているがずれている場合は平行移動します.(宿題C-9-1)
また、楕円の場合は、$(x/a)^2+(y/b)^2=1$ のとき、
$$(x,y)\to (ax,by)$$
 なるアフィン変換で半径 1 の円盤に帰着させます.
ヤコビアンは $ab$ です.

平行四辺形領域
$D=\{(x,y)||x-2y+1|\le 1,|x+2y-1|\le 3|\}$
は平行四辺形の領域になります.
$x/2\le y \le x/2+1$
かつ、
$-x/2-1\le y\le -x/2+2$
が成り立ちます.
この平行四辺形の内部で積分します.
平行四辺形をゆがんだ正方形として考えれば、アフィン変換で、$[0,1]\times[0,1]$ に持っていくことができます.

原点を $(-2,0)$ に、 $(1,0)$ を $(-1,-1/2)$ に、$(0,1)$ を $(1,3/2)$ に持っていきます.
このとき、変換は、$(x,y)\mapsto(-2,0)+x((-1,-1/2)-(-2,0))+y((1,3/2)-(-2,0))=(-2+x+3y,-x/2+3y/2)$
ヤコビアンは $\det\begin{pmatrix}1&3\\-1/2&3/2\end{pmatrix}=\frac{1}{2}\det\begin{pmatrix}1&3\\-1&3\end{pmatrix}=3$
このヤコビアンは上の平行四辺形領域の面積に相当します.
よって、積分は、
$$\int\int_Df(x,y)dxdy=3\int_0^1(\int_0^1f(-2+x+3y,-x/2+3y/2)dx)dy$$
となります.
宿題は $x^2+xy+y^2=1$ となる傾いた楕円についての積分でしたが
原点を中心とした $\theta$ 回転は
$$\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}\mapsto \begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$$
なる線形変換となります. 
回転は面積を変えませんから、ヤコビアンは1です.

2015年12月14日月曜日

トポロジー入門演習(ヒント集2)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

発表の残っている問題に解説やヒントを書いていきます.

第2,3回のヒント
第4回のヒント

第5回のプリントで残っている問題

問題49
(1) 第2可算公理を満足する位相空間は、第1可算公理を満足し、可分な位相空間であることを示せ.
(2) ${\Bbb R}^n$ 上に通常の距離位相を入れた空間は可分な位相空間であることを示せ.
(3)  ヒルベルト空間 $\ell_1,\ell_2$ は可分であることを示せ.


(ヒント)
(1) 第1可算公理については、任意の点  $x$ に対して $x$ を含む開基の元が近傍基となることを示す.可分であることは、開基に含まれる開集合 $U$ に対して、含まれる点 $p\in U$ を任意に決めて可算個の点をつくれ.この点集合が稠密になることを示せ.
(2) ${\mathbb Q}^n$ が稠密可算集合であることを示せ.
(3) $\ell_p$ 空間とは、複素数の数列 $\{a_i\}$ の空間で、$\sum_{i=1}^\infty|a_i|^p<\infty$ を満たすもの全体のなす集合です.距離を $d(\{a_i\},\{b_i\})=\sqrt{\sum_{i=1}^\infty|a_i-b_i|^p}$  として定義される.$\ell_2$ はヒルベルト空間ですが、$\ell_1$ はヒルベルト空間ではありません.
どちらの空間も、数列の全ての項が有理数であるようなものをとると、可算無限ではなくなります.なので、有限個以外全て0となるような数列の元で、かつ、有理数を成分にもつものだけで、任意の $\ell_2,\ell_1$ の数列に収束するような点列を取ります.


問題50
$\{{\mathcal U}(x)|x\in X\}$ を位相空間 $X$ の近傍系であるとする.
このとき、${\mathcal U}(x)$ は $x$ にける $X$ の近傍基になることを示せ.

(略解答)
近傍系は全ての近傍を取ってきているので、特に近傍基になる.

問題52
${\mathbb R}$ 上の通常の位相として、有限個の開集合によっては生成されないことを示せ.

(略解答)
有限個の開集合によって生成されるとすると、開基全体の集合は有限集合となる.
${\mathbb R}$ の開集合は有限個しかないことになり矛盾.

問題53
${\mathbb R}$ 上に存在する位相において、$\{(a,b)|a,b\in{\mathbb R}\}\cup {\mathbb Q}$ を開基とする位相は離散位相か?

(略解答)
離散位相とすると、任意の無理数も開集合としなければならない.

問題54
$p$-進距離によって定義された ${\mathbb Z}$ 上の位相における近傍基を求めよ.

(ヒント)
$p$-進距離は、$n,m\in {\mathbb Z}$ に対して、$n-m=p^rs$ とおき、$\gcd(p,s)=1$ とする.
このとき、$d(n,m)=2^{-r}$ とする.$p$-進距離では、2数の差が大きい $p^r$ について割れれば割れるほど、2数は近くなる.$n$ に(この距離に関して)いくらでも近い整数が入るような開球の集合を求めよ.
問題55
${\Bbb R}^2$において
$${\mathcal B}=\{[a,b)\times [c,d)|a,b,c,d\in {\Bbb R};a<b,c<d\}$$
を開基とする位相空間を ${\mathbb S}^{2}$ とする.
次のことを示せ.
(1) 位相空間 ${\mathbb S}^{2}$ は第1可算公理を満足し、可分である.
(2) ${\mathbb S}^{2}$ の部分集合 $A=\{(x,x)\in{\Bbb R}^2|x+y=1\}$ の上の相対位相は離散位相である.
(3) ${\mathbb S}^{2}$ は第2可算公理を満足しない.

(略解答)
(1) ${\mathbb S}$ の要領で、可算近傍基と稠密可算集合をつくれ.
(2) 相対位相の定義から直ちに導かれる.
(3) ${\mathbb S}$ と同じ議論でもよいが、第2可算の任意の部分空間も第2可算であることを使ってもよい.

問題56
実数全体の集合${\Bbb R}$において、通常の距離位相を ${\mathcal O}$ で表し、上限位相を ${\mathcal O}_u$
で表す.
写像 $f:{\Bbb R}\to {\Bbb R} $を
$$f(x)=\begin{cases}x&(x\le 1)\\x+2&(x>1)\end{cases}$$
によって定義する.このとき、$f$ が連続であるのは
$f$の定義域の位相と値域の位相として、
${\mathcal O}$ もしくは ${\mathcal O}_u$ のどちらを選べばよいか?
連続となる全ての場合を見つけよ.
(ヒント)
連続の定義は、任意の開集合の逆像が開集合になるようにする.


問題57
離散空間 $X$ において、点列 $\{x_n\}_{n\in{\Bbb N}}$ が点 $x\in X$ に収束するためには、次の条件が必要十分であることを示せ.
$$\exists n_0\in {\Bbb N}\text{ s.t. }n\ge n_0\Rightarrow x_n=x$$
(ヒント)
一般に、点列 $\{x_n\}$ が $x$ に収束するとは、任意の $x$ の近傍 $U$ において、ある $N\in{\mathbb N}$ が存在して、$N$ より大きい任意の $n$ において、$a_n\in U$ となること.


問題58
$S^1=\{(x,y)\in {\Bbb R}^2|x^2+y^2=1\}$ に ${\Bbb R}^2$ 上の通常の距離位相の相対位相から決まる位相を入れる.$S^1$ 上の任意の点列 $\{x_n\}$ は収束する部分列を持つことを示せ.

(ヒント)
$S^1$ を $\frac{2\pi k}{2^m}\le \theta\le \frac{2\pi (k+1)}{2^m}$ のように小さく分割していき、無限個 $\{x_n\}$ の点列が含まれる領域を選べ.

トポロジー入門演習(ヒント集)

[場所1E103(月曜日4限)]

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発表の残っている問題に解説やヒントを書いていきます.
第2,3回の問題のヒントは (こちら) に書きました.

第4回のプリントで残っている問題

35(3)
$(X, d)$ を距離空間とし、$\mathcal{O}$  を $d$ によって定まる距離位相とする.位相空間 $(X,\mathcal{O})$ において、
$$B(x) =\left\{U\left(x,\frac{1}{n}\right)|n\in{\mathbb N}\right\}$$
は点 $x$ の近傍基であることを示せ.

問題では $U$ ではなく、 $N$ が用いられていますが、同じ、$x$ を中心とした半径 $1/n$ の開球を表します.出典の本がその記号を採用していたのでそのように書いていました.

(問題解説)
$\mathcal{B}$ がある点 $x$ の近傍基であると言うことは、

任意の $x$ の近傍 $U$ において、ある近傍基の元 $B\in \mathcal{B}$ が存在して、$x\in B\subset U$ となること

をいいます.
この $B(x)$ も、任意の $x$ の近傍 $U$ において、そのような $B$ として $U\left(x,\frac{1}{n}\right)$
が取れることをいいます.
指定教科書では、近傍 $U$ は開近傍しか考えていませんので、開近傍の中には、距離空間の場合必ずその点を中心とした開球が取れます.
(開近傍でなければ、まず、近傍の中に、$x$ を含む開集合 $V$ で、$x\in V\subset U$ となる開集合を取れば議論は開集合の話に帰着されます.)

問題36
次を示せ.

(1)   ${\mathbb R}$ 上の通常の距離位相において、任意の開区間 $(a, b)$ がその開基になる.
(3)    n 次元ユークリッド空間 ${\mathbb R}^n$ において、有理点(座標が全て有理数となる点)の$1/m$ 近傍の全体
$$\beta=\{U((r_{1},\cdots,r_{n});1/m)|r_{i}\in {\mathbb Q},i=1,\cdots,n,m\in {\mathbb N}\}$$
は${\mathbb R}^{n}$の開基である.
(4)    $\beta$ を集合 $X$ の部分集合の族とする.$\beta$ がある位相空間の開基となるための必要十分条件は、
(a)  $X$は$\beta$ に属する集合の和となる.
(b)  $\beta$ に属する任意の2つの集合の共通部分は、$\beta$ に属する集合の和となる.
を満たすことである.

(略解答もしくはヒント)
(1) $U$ を任意の ${\mathbb R}$ の開集合とすると、任意の $x\in U$ に対して、ある$x$ を中心とする $\epsilon$-近傍で $U(x,\epsilon)\subset U$ となるものが存在する. $U(x,\epsilon)$ は開区間になります.
(3) ${\mathbb R}^n$ の任意の開集合 $U$ と、$U$ 上の、任意の点 $(x_1,\cdots,x_n)$ において、距離位相から、ある $\epsilon>0$ に対して、$U((x_1,\cdots,x_n),\epsilon)\subset U$ となる.
また、$U((x_1,\cdots,x_n),\epsilon)$ の中に成分全てが有理数の点が存在することを示せ.
その点を使って、$\beta$の元で、$(x_1,\cdots,x_n)$ を含むものを探す.
(4) $\beta$ の任意個の和集合によって得られる部分集合の族を $\mathcal{O}$ とおく.
$\mathcal{O}$ が $X$ 上の位相を与えることと、この条件が同値であることを示す.

問題37
次を示せ.
(1) 実数直線 ${\mathbb R}$ において、部分集合の族
$${\mathcal L}=\{(a,\infty),(-\infty,b)|a,b\in{\mathbb Q}\}$$
は ${\mathbb R}$を生成する.
(2) ゾルゲンフライ直線 ${\mathbb S}$ において、部分集合の族
$${\mathcal L}=\{[a,\infty),(-\infty,b)|a,b\in{\mathbb Q}\}$$
は ${\mathbb S}$ を生成する.
(ヒント)
(1,2)  これらの共通集合によって、${\mathbb R},{\mathbb S}$ の開基が作れるか?

問題38
$X=\{1,2,3,4\},\ {\mathcal T}=\{\{1,2\},\{2,3\},4\}$ とする.
${\mathcal T}$ によって生成される集合 $X$ の位相を求めよ.
(解説)
$\mathcal{T}$ のいくつかの共通集合によって作れらるものを開基とし、その開基の和集合によって作られるものを求めよ.その集合 $\mathcal{O}$ が $X$ 上のある位相となる.
$\mathcal{O}$ を全て列挙せよ.

問題39
$X={\mathbb Z},\ {\mathcal L}=\{\{[3n-1,\infty)\cap X|n\in{\mathbb Z}\},\{(-\infty,2n]\cap X|n\in{\mathbb Z}\}\}$ とする.
${\mathcal L}$ によって生成される $X$ 上の位相は離散位相か?\\
(解説)
この$\mathcal{L}$ から全ての ${\mathbb Z}$ の任意の一点集合を生成することができるかどうか調べよ.$\mathcal{L}$ の有限個の共通集合によって全ての一点集合が構成できるか.


問題40
ゾルゲンフライ直線(下限位相(右半開区間位相))、上限位相(左半開区間位相)、において以下の問題に答えよ.
(1) 上(及び下)限位相に近傍系を導入せよ.(導入した集合族が近傍系であることを示し、その位相がゾルゲンフライ直線の位相と一致することを確かめよ.)
(2) ${\Bbb R}$ 上の上限位相と下限位相は普通の ${\Bbb R}$ 上の距離位相より大きいことを示せ.
(3) ゾルゲンフライ直線は離散直線よりは粗いことを示せ.
(4) 上限位相と下限位相は同相であることを示せ.
(5) 上限位相もしくは下限位相より大きい位相は離散位相だけであることを示せ.

(ヒント)
下限位相とは、開基として $[a,b)$ なる区間全体を取るものである.
(1) このような開基の元を近傍系として用いよ.
(2) 普通の距離位相にない開集合をみつけよ.
(3) ゾルゲンフライ曲線は一点が和集合になることを示せ.他に、${\mathbb R}$ 上の離散空間に見られない位相的特徴をあげてもよい.
(4) 実数の向きを逆にしてみよ.
(5) 上限位相の開集合と下限位相の開集合から一点集合を生成せよ.

問題41

離散空間 $(X,{\mathcal O})$ 上の任意の関数 $X\to {\Bbb R}$ は連続であることを示せ.
また、逆に任意の関数$X\to {\Bbb R}$ が連続なら、$(X,{\mathcal O})$ は離散空間であることを示せ.

(ヒント)
開集合の逆像が開集合であることが、位相空間の間の連続写像の定義.
離散空間なので、$X$ の任意の部分集合が開集合となることを用いよ.
逆は、任意の一点集合が開集合を要請するような写像を作れ.


問題42
$f:X\to X'$ を位相空間 $(X,{\mathcal O})$と$(X',{\mathcal O}')$ の間の写像とし、$A,B$ を位相空間$(X,{\mathcal O})$ 上の閉集合とし、$X=A\cup B$ とする.
$f_A:A\to X'$と$f_B:B\to X'$を制限写像とする.
このとき、以下を示せ.
$$f:(X,{\mathcal O})\to (X',{\mathcal O}')\text{が連続}\Leftrightarrow f_A:(A,{\mathcal O}_A)\to(X',{\mathcal O}')\text{と}f_B:(B,{\mathcal O}_B)\to (X',{\mathcal O}')\text{が両方連続}$$

(ヒント)
右向きは部分位相の定義から明らか.
左向き.$F$ を任意の閉集合であるとき、$f^{-1}(F)$ が $(X,\mathcal{O})$ の
閉集合であることをしめす.


問題48
ある位相空間上の連続関数 $f:X\to Y$ がある.
$X,Y$ の位相をそれぞれ大きくするか、小さくするかどちらの場合において
$f$ の連続性が保たれるか?

(問題解説)
$X,Y$ の任意の任意の位相において開集合の数を増やしたり、減らしたりしても
$f$ が連続のままであるのはどちらか?考えよという問題です .
連続の定義が分かっていれば分かると思います.
例えば、$X$ の位相は $f$ を連続にするような最小の位相を入れてみよ.

2015年12月13日日曜日

線形代数II演習(第9回)

[場所1E103(水曜日4限)]


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今日は、
  • 表現行列の続きと、
  • 商空間
について演習をおこないました。

表現行列

線形写像 $f:V\to W$ の表現行列とは、$V$ と $W$ の基底 $\{{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n\}$
$\{{\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_n\}$ を両方用意したときに、$f({\bf v}_j)$ を基底で一次結合表示します.このとき、
$$f({\bf v}_j)=\sum_{i=1}^ma_{ij}{\bf w}_i$$
となったときにできる行列 $A=(a_{ij})$ を $f$ のこれらの基底に関する表現行列といいます.

例えば、$f=\partial+x:{\mathbb C}[x]_2\to {\mathbb C}[x]_3$
の表現行列を計算します.
$\partial$ は多項式を微分する写像で、$x$ は$x$ をかける写像とします.
基底を $\{1,x,x^2\}$ $\{1,x,x^2,x^3\}$ とし、基底の行き先を計算すると、
$$f(1)=x,f(x)=1+x^2, f(x^2)=2x+x^3$$
このベクトルを、基底 $\{1,x,x^2,x^3\}$ の基底でかくと、
$$(f(1),f(x),f(x^2))=(1,x,x^2,x^3)\begin{pmatrix}0&1&0\\1&0&2\\0&1&0\\0&0&1\end{pmatrix}$$
よって、$f(a+bx+cx^2)$ の行き先を $1,x,x^2,x^3$ で書いたときの成分表示は
$$\begin{pmatrix}0&1&0\\1&0&2\\0&1&0\\0&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}$$
となります.
線形性があるので、$a+bx+cx^2$ の像が何であるかは計算を再びしなくても、
$b+(a+2c)x+bx^2+cx^3$ とすぐにわかります.

基底の変換による表現行列の変化

$({\bf v}_1',\cdots,{\bf v}_n')=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)P$
$({\bf w}_1',\cdots,{\bf w}_m')=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)Q$
と、基底を変換したとき、
$\{{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n\}, \{{\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m\}$
による表現行列を $A$ とすると、
$\{{\bf v}_1',\cdots,{\bf v}_n'\}, \{{\bf w}_1',\cdots,{\bf w}_m'\}$
による表現行列は、$Q^{-1}AP$ となります.

今回の宿題は、
$2\times 2$ 行列 $A$ の多項式が作る線形空間です.
なので、$V$ の基底は $E,A,A^2,A^3,...$ が基底となります、
$A$ にはケイリーハミルトンの定理がありますので、 $E,A,A^2,....$ には
関係式があります.

商空間

商空間については、このブログ上でいくつか書きました.

ベクトル空間の商空間
ベクトル空間の準同型定理

商空間 $V/W$ の書き方として、$[{\bf v}]$ もしくは、${\bf v}+W$ と2種類あります.

授業では、$[{\bf v}]$ の書き方に統一しました.

$V={\mathbb C}[x]_2$ とし、
$W=\langle 1+x+x^2\rangle$ とします.
そのとき、$V/W$ の基底として、$[1],[x]$ が取れることを示します.

一次独立性

商空間の和、スカラー倍の定義から、
$c[1]+d[x]=[c+dx]=[0]$
とすると、$c+dx=e(1+x+x^2)$ となるスカラー $e$ が存在します.
よって、両辺を比べて $e=0, c=d=0$ となり、$[1],[x]$ 、が一次独立であることがわかる.


任意の $V/W$ の元がこの2つの元の一次結合で書けるかどうか

任意の $V/W$ の元は $[c+dx+ex^2]$ とかけます.
$c+dx+ex^2=(c-e)+(d-e)x+e(1+x+x^2)$
よって、
$[c+dx+ex^2]=[(c-e)+(d-e)x+e(1+x+x^2)]=[(c-e)+(d-e)x]=(c-e)[1]+(d-e)[x]$
となり、全ての $V/W$ の元は一次結合でかけました.

よって、$[1],[x]$ は $V/W$ の基底ということが分かりました.

同じことを ${\bf v}+W$ の書き方で書けば、

一次独立性


 $c(1+W)+d(x+W)=(c+dx)+W$ となり、この元が $V/W$ の元として ${\bf 0}$ であるとき、
$(c+dx)+W=W$ が成り立つ.
これは、$c+dx\in W$ であることを意味しており、
$c+dx=e(1+x+x^2)$ となるような $e$ となる ${\mathbb C}$ が存在する.

よって、係数を比べて、$c=d=0$ となる.

任意の $V/W$ の元がこの2つの元の一次結合で書けるかどうか

$V/W$ の任意の元は、$a+bx+cx^2+W$ とかけ、
$c(1+x+x^2)\in W$ であるので、
$(a+bx+cx^2)+W=(a+bx+cx^2-c(1+x+x^2))+W=a-c+(b-c)x+W=((a-c)+W)+((b-c)x+W)=(a-c)(1+W)+(b-c)(x+W)$
が成り立つ.
よって、任意の $V/W$ の元は、 $1+W$ と $x+W$ の一次結合でかけました.


このような計算は、高校数学のときもたしかにありました.

例えば、

$\alpha$ を $x^2+x+1=0$ の解とするとき、
(1) $\alpha^3$ を $\alpha$ の式で求めなさい
(2) $\alpha+1$ を計算しないさい
(3) $\alpha^{100}$ を計算しなさい.

などの問題があったと思いますが、今では、この問題は、$V={\mathbb C}[x]$ において、
$W=\{(1+x+x^2)f(x)\in V|f(x)\in {\mathbb C}[x]\}$
による部分空間の商空間 $V/W$ を考えます.
このとき、$x^n\in V$ を $W$ の部分空間で代表元で取り替えてその指数を小さくして、$V/W$ の基底である $1,x$ の一次結合で書くということになります.

商空間では

一応コメントしておくと、商空間では、代表の元のとりかたによって、
ゼロベクトルの表示の仕方が変わることがあります.
例えば、$V={\mathbb C}[x]_2$ のとき、 $W=\langle 1-x^2,x+x^2\rangle$
としておき、$V/W$ とすると、$W$ の元は全て $V/W$ のゼロベクトルを表しますから、
$[1-x^2]=[0]$ や $[x+x^2]=[0]$ も成り立ちますが、これらを足した元も $[1+x]=0$ となります.
一般に、$[a+bx-(a-b)x^2]$ も全て $V/W$ においてゼロベクトルになります.

よって、$1+x-x^2$ と $2x$ は、${\mathbb C}[x]_2$ においては線形独立ですが、
$V/W$ においては、$[1+x-x^2]=[x]=\frac{1}{2}[2x]$ となり、線形従属となります.


宿題(C-9-2)の問題について

$W$ の元をあるベクトルで生成する形に直しておきます.
補空間の基底をとります.補空間の基底の取り方は、線形代数II演習(第5回)でやりました. 
その基底 ${\bf v}_1,{\bf v}_2$ が $V/W$ において $[{\bf v}_1],[{\bf v}_2]$ が基底となることを示してください.

また、$\dim(V/W)=\dim(V)-\dim(W)$ なる次元公式もありますので、
任意の元が、いくつかのべくトルの線形結合で書けるかどうかについての議論は
サボれることがあります。

上の例でいえば、$[1],[x]$ が線形独立であることがわかれば、
$2=\dim(\langle[1],[x]\rangle)\le \dim(V/W)=\dim(V)-\dim(W)=3-1=2$
となり、部分空間の次元が全体の次元と一致するので、$\langle[1],[x]\rangle=V/W$ となります.
これは、$V/W$ の任意の元が $[1],[x]$ の一結合で書けることがわかります.

トポロジー入門演習(第8回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.


だんだん問題を解く人がすくなって来ました.
皆さん忙しくて解く暇がないのではなくて、問題が難しくなってきているのだ
ということを、この前、学生から教えてもらいました.

ここでは、解かれていない問題について解説をしていきます.
以下はヒントもしくは略解です.

第2回の問題で残っている問題

問題11
  • $x\in  A $が$A$ の触点であるための必要十分条件は、$d(x,A) = 0$ となることであることを示せ.
(略解)
$x\in A$ が $A$ の触点であるとします.

もし、$x\in A$ ならば、定義から $d(x,A)=0$ が成り立つ.
もし、$x\not\in A$ ならば、任意の整数 $n$ に対して、$U(x,1/n)\cap(A-\{x\})\neq \emptyset)$
なので、そのような点を $x_n$ とすると、点列 $\{x_n\}$ が得られます.
この点列は、$A$ の点列で、 $x$ に収束しますので、$d(x,A)=\inf\{d(x,a)|a\in A\}$
という定義から $d(x,A)=0$ となります.

もし、$d(x,A)=\inf\{d(x,a)|a\in A\}=0$ なら、
$A$ の点列で、$x$ に収束するものがとれます.
これは、$x\in A$ であれば、当然成り立ち、この条件から $A$ の集積点にもなります.

問題13
  • (d) $A = \{(1/m,1/n)|n,m\in {\mathbb Z},n,m > 0\}\subset {\mathbb R}^2$ を考える.${\mathbb R}^2$ には通常の距離が入っているとして、$A$ の集積点は、$(0, 1/n), (1/m; 0)$、および $(0, 0)$ と一致することを示せ.
    ヒント:触点であれば、$A$ から距離零になる.つまり、いくらでも近い点が存在することを
    示せ.
  • (e) 有理数全体の閉包は実数全体であることを示せ.
  • (f) $(X, d)$ を距離空間とする.部分集合 $A\subset  X$ に対して収束する $A$ の点列 $x_n$ の収束点 $x$ は $A$ の触点であることを示せ.
(略解)
(d) $A$ の集積点全体を $A^d$ とする.$(1/m,1/n)$ の収束先として $(0,1/n)$ が構成できるので、$(0,1/n),(1/m,0)\in A^d$ となることはわかる.また、$(0,0)\in A^d$ となることも、任意の $\epsilon>0$ に対して、$1/n^2+1/n^2<1/\epsilon^2$ となる $n$ が存在することが言えれば、
そのような $(1/n,1/n)$ は $(0,0)$ に収束先として取れるので、$(0,0)\in A^d$ となる.
逆に、$A^d\subset \{(0,1/m),(1/n,0),(0,0)|n,m>0\}$ となることも示す必要があります.
$(0,0),(1/n,0),(0,1/m)$ 以外の点 $(p,q)\not\in A$ を取ったときに、$(p,q)$ は $A$ の点列では近づけないことを示してください.つまり、そのような $(p,q)$ のある近傍をとれば、$A$ の元
が一つも入らないことを示せばよいのです.簡単だと思います.

(e) 有理数が実数全体の中で稠密であることを言えばよいです.言い換えれば、全ての実数 $r$ は、その任意の近傍を取れば、必ず有理数が存在することをいえばよいわけです.$r$ の近傍の中にはある $\epsilon$ 近傍が存在しますので、$(r-\epsilon,r+\epsilon)$ のなかに有理数が含まれることを言えば十分です.

(f)  $x$ が $A$ の触点であるとき、 $A$ の点か、任意の近傍 $U$ において、$U\cap(A-\{x\})\neq \emptyset$ であるかということですから、距離空間の場合、近傍として、任意の $n$ に対して、$U=U(x,1/n)$ をとることができますね.これから点列を作ることができるわけです.
$x$ に収束する点列 $A$ の点列 $\{x_n\}$ を取ったときに、任意の近傍 $U\cap (A-\{x\})$ に点を作ることができます.収束するという定義を思い出してください.

問題14
次の写像 $f$  が連続であることを示せ.ただし、${\mathbb R}^n$ には普通のユークリッド距離が入っているとする.$C(I)$ 上の距離は $d(\phi,\psi) = \sup\{|\phi(x)-\psi(x)||x\in I\}$ とする.
  • (d) $f : (C(I); d) \to {\mathbb  R}: f(\phi) =\int_0^1(f(t)dt$
  • (e) 距離空間 $(X,d)$ において、$A,B$ を互いに素な空でない閉集合とする.このとき、
    $$f(x)=\frac{d(x,A)}{d(x,A)+d(x,B)}$$
    が成り立つことを示せ.
(略解答)
(d) 問題81にも同じ問題を作ってしまったようです。どちらかで結構です.
$\phi(x)\in C(I)$ とする. $f(\phi(x))$ の近傍 $U(f(\phi(x)),\epsilon)$ に対して、$C(I)$ の近傍 $U_d(\phi,\epsilon')$ が存在して、 $f(U_d(\phi,\epsilon'))\subset U(f(\phi(x)),\epsilon)$
が成り立つことを示せ.
$U_d(\phi,\epsilon')$ の任意の関数 $\psi$ は $d(\phi,\psi)<\epsilon'$ となるが、これを言い換えれば、$\sup\{|\phi(x)-\psi(x)|\}<\epsilon'$ であり、特に、任意の $x\in I$ に対して $|\phi(x)-\psi(x)|<\epsilon'$ が成り立つ.

(e) $d(x,A)$ が連続関数であることはつかってもよい.連続関数の加減乗除も連続関数であることは使ってもよい.任意の $x$ に対して $d(x,A)+d(x,B)=0$ とはならないことを示す必要がある.

(注意) 距離空間において、互いに交わらない空ではない閉集合 $A,B$ に対して、$d(A,B)=0$ となることはあるが、$d(x,A)=d(x,B)=0$ となることはない.

問題18
$\rho$ が $X$  の非アルキメデス距離関数ならば、$U(p, \epsilon)$ は $(X,\rho)$ の閉集合となることを示せ.

(ヒント)
$X-U(p,\epsilon)$ が開集合であることを示せばよいです.
$q\not\in U(p,\epsilon)$ をとってくると、$\rho(p,q)\ge \epsilon$ を満たします.
$\rho$ は非アルキメデス距離関数の三角不等式を使って、
$q$ を中心として $\epsilon$ より小さい任意の点は、$U(p,\epsilon)$ に含まれません.

第3回の問題で残っている問題

問題22(c)
  • 順序位相 $(X;\mathcal{O} )$ は位相空間となることを確かめよ.
(略解答)
順序位相とは、全順序集合 $(X,\le)$ に対して、この順序からくる位相 $\mathcal{O}_\le$ は
$$\mathcal{O}_{\le} = \{U \subset  X|\forall x\in U,\exists a,b\in X \cup \{\pm\infty\}\text{に対して},x\in (a,b)\subset U\}$$
を満たすものとして定義されます.説明のしようがありませんが、定義に戻って示すだけだと思います.

問題24
  • 次の集合の上に定義される位相の同相類を求めよ.
    (1) $\{1,2\}$
    (2) $\{1,2,3\}$
(略解答)
(1),(2)はどちらも有限点集合です.この時点で点集合上にはまだ、位相が定義されていません.位相というのは、ある集合 $X$ 上に、その部分集合族を決めたものを言います.
部分集合族というのは、$X$ 上のいくつかの部分集合をいいます.
つまり、$X$ からいくつかの部分集合を定めた点集合ということになります.
それを $\mathcal{O}$  とかきます.$\mathcal{O}$ の中には $X$ の"定められた"部分集合が全て
入っています.

$\mathcal{O}$ を位相といい、$\mathcal{O}$ の任意の元を開集合といいます.

"定められた"というのは、こちらで定める場合もあるし、ある手続きによって自然に定められている場合もあります.

別の言葉でいえば、$X$ の部分集合全体を $\mathcal{P}(X)$ とかくとき、
$\mathcal{O}\subset \mathcal{P}(X)$ となります.

また、$\mathcal{O}$ は $\mathcal{P}(X)$ の任意の部分集合を選べばよいのではなく、いくつか条件があります.

それが、位相の条件
[1], 全体集合 $X$ と空集合は $\mathcal{O}$ に入れる.
[2] 任意の有限個の開集合の共通集合も $\mathcal{O}$ の中の開集合である.
[3] 任意個の開集合の和集合も $\mathcal{O}$ の中の開集合となる.

です.
いま、$\{1,2\}$ のべき集合は、 $\mathcal{P}(X)=\{\emptyset,\{1\},\{2\},\{1,2\}\}$ の4個元からなります.個の4個の元の中から選んで開集合全体 $\mathcal{O}$ を何か作ります.
なので、$\mathcal{O}$ の候補は $2^4=16$ 個あるはずです.
しかし、位相の条件がありますから、それよりはちいさくなるかも知れません.

実際、位相の条件 [1] から、$\emptyset\in \mathcal{O}$ であるし、$\{1,2\}\in \mathcal{O}$ でなければなりませんから、4個のうち2つは確定です.他の2個の $\mathcal{P}(X)$ の元が入るかどうかを考え、それが位相の条件[2],[3]を満足するかを考える必要があります.

さらに、この問題は、同相類を求めよという問題です.
そのようにして作られたいくつかの $\mathcal{O}_1,\mathcal{O}_2,\cdots$ の
うち、$X$ の変換(一対一写像)で、さらに、$\mathcal{O},\mathcal{O}'$ にもその写像によって一対一写像写像が作れたとき、同相といって、$(X,\mathcal{O})\cong (X,\mathcal{O}') $
と書きます.類というのは、同値類の類と同じ意味で、同相類を全て求めるということは
お互い同相ではないものを区別して全て求めなさいということです.

問題25
  • 有限集合上の距離空間は離散空間であることを示せ.
(ヒント)
離散位相であることをいうには、任意の一点が開集合であることを言えば十分です.(問題26)
つまり、任意の点において、ある正の数 $\epsilon$ が存在して、距離 $\epsilon$ 以内にはその点
以外に点が存在しないことを言えばよいわけです.

また、距離空間では、任意の異なる2点の間の距離は正の数です.

問題26
位相空間X が離散空間であるためには, 一点集合がすべて開集合となることが必要十分であるこ
とを示せ.

(ヒント)
離散空間であるということは位相 $\mathcal{O}$ がべき集合 $\mathcal{P}(X)$ と一致するときを言います.なので、$\mathcal{O}$ の中に全ての一点集合が入っていないといけません.
一点集合が全て入っていれば十分であることを示す.


問題29

$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする.$(Y,\mathcal{O}_Y )$ をその部分空間とする.すべての $X$  の部分集合 $A$ に対して $\text{Int}_X(A) \cap Y$ が $Y$ の中で $A$ の内部になることと $Y$ が $X$ の中で開集合であることは同値であることを示せ.

(ヒント)
全ての部分集合 $A$ に対して、$\text{Int}_X(A) \cap Y=\text{Int}_Y(A)$

$Y$ が $X$ の開集合である.
が同値であることをを示す問題.

$A=Y$ とすると $Y$ が $X$ で開集合が導かれます.
逆は部分空間の定義と $\text{Int}(A)$ は $A$ に含まれる最大の開集合であることを使う.

問題30
$(X_1,d_1)$ および $(X_2, d_2)$ を距離空間とし、$\mathcal{O}_j$ を $d_j$ によって定まる距離位相とする.写像 $f : X_1 \to  X_2$ について、$f$  が距離空間 $(X_1, d_1)$ から $(X_2,d_2)$  への連続写像であることと、$f$  が位相空間 $(X_1,\mathcal{O}_1)$ から $(X_2,O_2)$  への連続写像であることは、同等(同値)であることを確かめよ.

(ヒント)
距離空間として連続であるとは、任意の点 $x\in X_1$ に対して、任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta$ が存在して、$f(U(x,\delta))\subset U(f(x),\epsilon)$ が成り立つこと.
距離空間から定められる位相空間の任意の開集合の各点には、含まれる 開球 $U(p,\epsilon)$ が存在することを使う.

問題31,32
$X$  を任意の2(または3) 点集合上の位相空間とする.$x \in X$ に対して、$U_x$  を $x$ を含む最小の開集合とする.任意の $x, y \in X$ において、$y \in U_x$ となるとき、$x\le y$ と定義することで、$X$ 上の順序集合を明らかにせよ.

(ヒント)
問題23,24で得られた全ての位相において、$U_x$ を求め、その順序集合をハッセ図によって表す.
以前のこちらのブログ(←)に例や絵などを書きました.

2015年12月11日金曜日

PSL(2,7) を使って8点を動かしてみよう

群PSL(2,7)について
群PSL(2,7)についてII
群PSL(2,7)についてIII


にPSL(2,7)について群の表示とその共役類まで詳しく観察しました.
今日はこの群を使ってもの(8点)を動かしてみようと思います.
群は何かを動かして、一人前になるのです.
 
 
有限体上の世界

有限体とは、有限個の数 $\{0,1,2,\cdots,p-1\}$ からなる数字で、
足し算、掛け算に関して、その数を足して、もしくは掛け、
その答えに $p$ の倍数を足すことで、再び $\{0,1,\cdots,p-1\}$ の数とする.

このようにして和積を作ってやると、この $p$ 個の元からなる数字に
算術を展開することができます.

また、$p$ を素数とすることで、$0$ 以外の数で割り算を行うこともできるように
なります.
$0$ 以外の元で割り算もできる、和積の入った集合を体というのでした.
(本当は、分配法則や可換性などもろもろの性質を満たす必要があります...)

このような体を有限体といいます.

${\Bbb F}_7^2$ 平面上の直線

線形代数でやったように、有限体 ${\Bbb F}_7$ をスカラーとする有限体上の数ベクトル平面
${\Bbb F}_7^2$ を考えます.つまり、
$${\Bbb F}_7^2=\{(x,y)|x,y\in {\Bbb F}_7\}$$
となる集合です.平面といっても、有限個(49個)しか点がありません.
しかし、${\Bbb F}_7$ をスカラーとするベクトル空間であり、
${\Bbb C}^2$ や ${\Bbb R}^2$ と同じように、線形代数でやるベクトル空間の公理を
満たしています.

この ${\mathbb F}^2_7$ の 1次元部分空間は直線を意味しますが、これも有限集合です.

${\Bbb C}^2$ や ${\Bbb R}^2$ では1次元の部分空間は無数にありましたが、
${\Bbb F}_7^2$ の世界では、有限個しかありません.

書き出してみると、
$L_0=\{(0,0),(1,0),(2,0),(3,0),(4,0),(5,0),(6,0)\}$
$L_1=\{(0,0),(1,1),(2,2),(3,3),(4,4),(5,5),(6,6)\}$
$L_2=\{(0,0),(1,2),(2,4),(3,6),(4,1),(5,3),(6,5)\}$
$L_3=\{(0,0),(1,3),(2,6),(3,2),(4,5),(5,1),(6,4)\}$
$L_4=\{(0,0),(1,4),(2,1),(3,5),(4,2),(5,6),(6,3)\}$
$L_5=\{(0,0),(1,5),(2,3),(3,1),(4,6),(5,4),(6,2)\}$
$L_6=\{(0,0),(1,6),(2,5),(3,4),(4,3),(5,2),(6,1)\}$
$L_{\infty}=\{(0,0),(0,1),(0,2),(0,3),(0,4),(0,5),(0,6)\}$

の8本あり、これで全部です.
8本しかないということは以下のようにしてわかります.

原点を通る直線は、原点とそれ以外の点を一つ決め、それを直線で結ぶことで
ただ一つ決まります

任意の直線は ${\Bbb F}_7$ と線形同型ですので、一つの直線の中には7つの点が
含まれていることになります.

2つの異なる直線は原点でのみ共有点をもつので、
49-1を 原点以外の6点で割ればよいので、$49-1=6\cdot 8$ という計算から、
8本あるということになるのです.

${\Bbb F}_p^2$ の中には、原点を通る直線は、
$p^2-1=(p-1)(p+1)$ ですから、 $p+1$ 本あることになります.
文脈は異なりますが、このような算数の計算は、ここでやっていました.

このような直線全体のことを、$P^1(p)$ と書くことにします.今示したように、
$P^1(7)=\{L_0,L_1,L_2,L_3,L_4,L_5,L_6,L_\infty\}$
となります.これが今日動かしたい8点です.


平面 ${\Bbb F}_7^2$ 上の線形写像

つぎに、${\Bbb F}_7^2$ 上の線形写像を考えます.
$A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ とすると、
$\begin{pmatrix}x,y\end{pmatrix}\in {\Bbb F}^2$ に対して、
$$A\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$$
として行列を考えます.
係数は全て ${\Bbb F}_7$ です.

${\Bbb F}_7^2$ の線形写像の中で、行列式が $1$ なるもの全体を
$$SL(2,7)=\left\{\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}|ad-bc=1,a,b,c,d\in {\Bbb F}_7\right\}$$
とします.
集合は有限群です.

さらに、$\begin{pmatrix}6&0\\0&6\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-1&0\\0&-1\end{pmatrix}$ なるスカラー行列は、$SL(2,7)$ の中で、
群をなし、${\Bbb Z}/2{\Bbb Z}$ と同型です.この ${\Bbb Z}/2{\Bbb Z}$ と同型な
群で割ったものを $PSL(2,7)$ と書きます.

線形写像によって直線全体がどう移るか
この位数168の群を使って先ほどの $P^1(7)$ (8点)を動かします(作用します).

$PSL(2,7)$ の生成元は、
$$S=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix},T=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix}$$
で、$PSL(2,7)$ の中では、$S^7=E$、$T^2=E$、$(TS)^3=I$ が成り立ちました.
$PSL(2,7)$ が8点集合を動かすので、
$$\varphi:PSL(2,7)\to S_8$$
という写像によって、自然と、PSL(2,7) は対称群 $S_8$ の部分集合とみなすことができます.

対称群 $S_n$ というのは、$n$ 点を置換する群で、以前のブログ(←がリンクになっています

にもかいたことがあります.
対称群の書き方についてはそちらを参照してください.


話を戻すと、この写像 $\varphi$ は準同型写像です.
つまり、$\varphi(xy)=\varphi(x)\varphi(y)$ を満たす写像です.
さらに、単射にもなっています.
つまり、PSL(2,7)は $S_8$ の中の部分群ということになります.

$S_8$ の群の位数は40320で、PSL(2,7)は168ですので、PSL(2,7)は $S_8$ の中で
大分と小さい部分群だということになります.


$\varphi$ が単射であること

$\varphi$ が単射であることは、すぐにわかります.
8本全ての直線を動かさなうような $PSL(2,7)$ を求めればよいわけですから、
とくに、 $L_0$ と $L_\infty$ を動かしません.
これらを動かさないような $PSL(2,7)$ は、行列の成分を見れば分かるとおり、
対角行列しかありません.$PSL(2,7)$ 上の対角行列は、
$e=\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}$ か $\begin{pmatrix}2&0\\0&4\end{pmatrix}$ か $\begin{pmatrix}3&0\\0&5\end{pmatrix}$
の3つですが、$L_1$ も動かさないとなると、単位元 $e$ しかありません.
他は、$(1,1)$ を $(3,5)$ や $(2,4)$ に写し、$L_1$ 上の点 $(i,i)$ に戻ってきません.

よって、$\text{Ker}(\varphi)$ が単位元のみからなるので、$\varphi$ は単射であることが
わかりました.

いよいよPSL(2,7) を使って8点を動かしてみる

行列を使って、実際に、$L_0,L_1,\cdots,L_{\infty}\in P^1(7)$ を動かしてみましょう.
$L_i$ は $(1,i)$ を通る直線、$L_\infty$ は $(0,1)$ を通る直線だから、
$$S\begin{pmatrix}1\\i\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}i+1\\i\end{pmatrix}$$
$$S\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}$$
$$T\begin{pmatrix}1\\i\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-i\\1\end{pmatrix}$$
となり、
$$S(L_0)=L_0,S(L_1)=L_4,S(L_2)=L_3,S(L_3)=L_6,S(L_4)=L_5,S(L_5)=L_2,S(L_6)=L_\infty,S(L_\infty)=L_1$$
つまり、$\varphi(S)=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\0&4&3&6&5&2&\infty&1\end{pmatrix}=(1,4,5,2,3,6,\infty)$
となり、
$$T(L_0)=L_\infty,T(L_1)=L_6,T(L_2)=L_3,T(L_3)=L_2,T(L_4)=L_5,T(L_5)=L_4,T(L_6)=L_1,T(L_\infty)=L_0$$
つまり、
$\varphi(T)=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&6&3&2&5&4&1&0\end{pmatrix}=(0,\infty)(1,6)(2,3)(4,5)$ となります.

群PSL(2,7) についての群の表示の仕方 $[a_n,a_{n-1},\cdots,a_1]$ を使って $[a_1]=TS^{a_1}$
を動かすと、以下のようになります.

$\varphi([0])=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&6&3&2&5&4&1&0\end{pmatrix}=(0,\infty)(1,6)(2,3)(4,5)$ 位数2
$\varphi([1])=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&5&2&1&4&3&0&6\end{pmatrix}=(0,\infty,6)(1,5,3)$ 位数3
$\varphi([2])=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&4&1&0&3&2&6&5\end{pmatrix}=(0,\infty,5,2,1,4,3)$ 位数7
$\varphi([3])=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&3&0&6&2&1&5&4\end{pmatrix}=(0,\infty,4,2)(1,3,6,5)$ 位数4
$\varphi([4])=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&2&6&5&1&0&4&3\end{pmatrix}=(0,\infty,3,5)(1,2,6,4)$ 位数4
$\varphi([5])=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&1&5&4&0&6&3&2\end{pmatrix}=(0,\infty,2,5,6,3,4)$ 位数7
$\varphi([6])=\begin{pmatrix}0&1&2&3&4&5&6&\infty\\\infty&0&4&3&6&5&2&1\end{pmatrix}=(0,\infty,1)(2,4,6)$ 位数3

となります.

この書き方でわかるように、$\varphi$ の像は全て、$S_8$ の偶置換の部分群
に入っていることもわかります.
偶置換とは、 $S_8$ の中で、偶数個の置換によって書かれているものです. 
これらは自然に $S_8$ の部分群になり、普通 $A_8$ などとかかれ、交代群といいます.
$A_8\subset S_8$ は指数2の部分群で、位数は、$S_8$ の半分になります.

よって、
$$PSL(2,7)\hookrightarrow A_8$$
がいえました.
ちなみに、$A_8$ も単純群ですので、この部分群は、正規ではありません.

実際、PSL(2,7) はもう少し小さく7点を(忠実に)動かすことができます.
つまり、$PSL(2,7)\hookrightarrow S_7$ となります.
ある既約な7次方程式の解を使います.

忠実というのは、$PSL(2,7)\to S_n$ に、単射準同型が構成できるということです. 

共役類が分解すること

ここで、前回 $PSL(2,7)$ の共役類を考えたとき、$[1],[6]$ は PSL(2,7) で共役であり、
確かに、$S_8$ で表示したときも、同じ共役類にいることがわかります.
(disjointな)巡回置換の積の書き方 $(\cdot,\cdot,\cdot)(\cdot,\cdot,\cdot)$ が一致していることからわかります.

一方、$[2],[5]$ は PSL(2,7) では共役ではありませんでした.(群PSL(2,7)についてIII)
しかし、$S_8$ にしてしまうと、共役になっています.
対称群 $S_8$ の中では位数7の元は巡回置換1つの形で書け、全て共役だからです.
これは、部分群 $\varphi(PSL(2,7))\subset S_8$ の中で共役であることと、
入っている大きな群において共役ということが、異なるということを意味しています

一般に、ある群における共役類 $C$ を、部分群の中で制限して共役類を
考えると、$C$ がいくつかの小さな共役類に分解します.

2015年12月10日木曜日

群PSL(2,7)についてIII

前回(群PSL(2,7)についてII)の続きです.
分からない人(かつ読みたい人)はそちらはまず見てください.

位数が7の元

位数が7の元は、次の48個です.
$[2],[5]$
$[0,1],[0,2],[0,3],[0,4],[0,5],[0,6],[1,0],[1,4],[2,0],[2,2],[3,0],[3,6],[4,0],[4,1],[5,0],[5,5],[6,0],[6,3]$
$[0,2,0],[0,2,3],[1,2,1],[1,2,5],[2,2,2],[2,2,3],[3,2,0],[3,2,2],[5,2,1],[5,2,6],[6,2,5],[6,2,6],[0,3,2],[0,3,6],[1,3,1],[1,3,3],[2,3,0],[2,3,2],[3,3,1],[3,3,4],[4,3,3],[4,3,4],[6,3,0],[6,3,6]$
$[0,4,2,3],[0,4,2,5],[0,5,3,1],[0,5,3,2]$

これらの元の共役類を考えます.

長さが4のもの
$[0,4,2,3]\sim[3,0,4,2]=[7,2]\sim[0,2]$
$[0,4,2,5]\sim[5,0,4,2]=[2,2]\sim[1,-1,1]\sim[1,-2,-1,0]\sim[-2,-1,0,1]\sim[-2,0]$
$[0,5,3,1]\sim[1,0,5,3]\sim[6,3]\sim[-1,3]$
$[0,5,3,2]\sim[2,0,5,3]=[7,3]=[0,3]$

すべて長さ2の元と共役です.

長さが3のもの
$[0,2,0]\sim[0,0,2]=[2]$
$[0,2,3]\sim [2,3,0]\sim[3,0,2]=[5]$
$[1,2,1]\sim[1,1,2]=[0,1]$
$[1,2,5]\sim[5,1,2]=[4,1]$
$[2,2,2]=[1,-1,1,2]=[1,-2,1]\sim[1,1,-2]\sim[0,-3]=[0,4]$
$[2,2,3]\sim[3,2,2]\sim[2,3,2]=[1,-1,2,2]\sim[2,1,-1,2]=[1,-2,2]\sim[2,1,-2]=[1,-3]=[1,4]$
$[3,2,0]\sim[0,3,2]\sim[2,0,3]=[5]$
$[5,2,1]\sim[2,1,5]=[1,4]$
$[5,2,6]=[2,-1,5]=[3,6]$
$[6,2,5]=[5,-1,2]=[6,3]$
$[6,2,6]\sim[2,-1,-1]=[3,0]$
$[0,3,6]\sim[6,0,3]=[2]$
$[1,3,1]\sim[1,1,3]=[0,2]$
$[1,3,3]\sim[3,3,1]\sim[3,1,3]=[2,2]$
$[3,3,4]\sim[4,3,3]=[4,0,-3,-3,0]=[1,-3,0]\sim[-3,0,1]=[-2]$
$[4,3,4]\sim[3,4,4]=[3,0,3,3,0]=[-1,3,0]\sim[3,0,-1]=[2]$
$[6,3,0]\sim[3,0,6]=[2]$
$[6,3,6]=[-1,-1,3]=[0,4]$

全て長さ2もしくは1の元に共役です.

長さが2のもの
$[0,1]\sim[1,0]\sim[0,-1,-1,0,0]=[0,-1,-1]\sim[-1,0,-1]=[-2]$
$[0,2]\sim[2,0]\sim[1,-1,-1]\sim[-1,1,-1]=[-2,-2]$
$[0,3]\sim[3,0]\sim[0,-3,-3,-3,0,0]=[0,-3,-3,-3]=[-3,0,-3,-3]=[-6,-3]=[1,4]$
$[0,4]\sim[4,0]=[0,3,3,3,0,0]=[0,3,3,3]=[3,0,3,3]=[6,3]$
$[0,5]\sim[5,0]=[-2,0]=[-1,1,1]=[1,-1,1]=[2,2]$
$[0,6]\sim[6,0]=[-1,0]=[0,1,1,0,0]=[0,1,1]=[1,0,1]=[2]$
$[1,4]\sim[4,1]=[3,-1,0]\sim[-1,0,3]=[2]$
$[2,2]\sim[0,-4,1,0][2,2][-1,4]=[0,-4,1,0,2,2,-1,4]=[0,-4,3,2,-1,4]=[0,3,3,2,-1,4]=[-3,-3,0,2,-1,4]=[-3,-1,-1,4]=[-2,0,4]=[2]$
$[3,6]\sim[6,3]=[-1,3]=[0,1,4]=[4,0,1]=[5]$
$[5,5]\sim[0,-3,-1,0][5,5][1,3]=[0,-3,4,5,1,3]=[0,-3,4,4,2]=[0,-3,0,3,3,0,2]=[0,0,3,0,2]=[5]$

よって、全て長さ1の元と共役になります.

長さ1の元は $[2],[5]$ の2つあり、実はそれら2つは、共役ではありません.
なぜなら、
もし、$TS^2\sim TS^5$ であるとするなら、ある行列 $X\in PSL(2,7)$ が存在して、
$TS^2X=XTS^5$ となるはずです.
$X=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ とすると、
$\begin{pmatrix}0&1\\-1&-2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&1\\-1&-5\end{pmatrix}$
となり、両辺を計算すると、
$\begin{pmatrix}c&d\\-a-2c&-b-2d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-b&a-5b\\-d&c-5d\end{pmatrix}$

ここで、この式が等しくなるはずですが、

$c=-b, d=a-5b, -a-2c=-d, -b-2d=c-5d$
もしくは、
$c=b, d=-a+5b, -a-2c=d, -b-2d=-c+5d$
という連立一次方程式が成り立ちます.
もちろんこの等式は${\mathbb F}_7$ の元としてです.
前半が成り立つとすると、
$$\begin{pmatrix}0&1&1&0\\1&-5&0&-1\\-1&0&-2&1\\0&-1&-1&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\\d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\\0\end{pmatrix}$$
後半が成り立つとすると、
$$\begin{pmatrix}0&1&-1&0\\1&-5&0&1\\-1&0&-2&-1\\0&-1&1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\\d\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\\0\end{pmatrix}$$
が成り立ちます.
ここで、最初の $4\times 4$ 行列の行列式を計算すると、$-9=5$ なので、解は $(a,b,c,d)=(0,0,0,0)$ しか存在しません.
これは、$PSL(2,7)$ の元を定めないので、後半を方程式を調べます.

この解空間は、$(a,b,c,d)=C_1(-2,1,1,0)+C_2(-1,0,0,1)$ という2つのパラメータを 
使って表せます.ただし、$C_1,C_2\in{\mathbb F}_7$ です.
つまり、
$$X=\begin{pmatrix}-2C_1-C_2&C_1\\C_1&C_2\end{pmatrix}$$
となります.$\det(X)=1$ なので、計算をしてみると、$(-2C_1-C_2)C_2-C_1^2=-C_1^2-2C_1C_2-C_2^2=1$
よって、$(C_1+C_2)^2=-1$ となります.
平方剰余の相互法則を用いて、ルジャンドルシンボル $(\frac{-1}{7})$ を計算すると、
$(\frac{-1}{7})=(-1)^{\frac{7-1}{2}}=-1$ となり、
${\mathbb F}_7$ の中では、$(C_1+C_2)^2=-1$ の解が存在しないことになります.

よって、この場合も、やはり、解けないことになります.
つまり、そのような行列 $X$ は $PSL(2,7)$ には存在しません.

よって、$TS^2=[2]$ と $TS^5=[5]$ は $PSL(2,7)$ において共役ではないことになります.

位数7の元はこのどちらかに共役でしたから、位数7 の元の共役類は2つあって

上の同値関係を辿ると、

$[2]$ と同じ同値類に属するもの
$[0,3],[3,0],[0,5],[5,0],[0,6],[6,0],[1,4],[4,1],[2,2]$
$[0,2,0],[2,2,3],[3,2,2],[2,3,2],[1,2,5],[5,2,1],[6,2,6],[0,3,6],[1,3,3],[3,3,1],[4,3,4],[6,3,0]$
$[0,5,3,1],[0,5,3,2]$

$[5]$ と同じ同値類に属するもの
$[0,1],[0,2],[2,0],[1,0],[0,4],[4,0],[3,6],[6,3],[5,5]$
$[0,2,3],[2,3,0],[1,2,1],[2,2,2],[3,2,0],[0,3,2],[1,3,1],[5,2,6],[6,2,5],[3,3,4],[4,3,3],[6,3,6]$
$[0,4,2,3],[0,5,3,1]$

となり、2つの共役類が全て分類されました.
それぞれ、共役類の個数は、24と24です.
位数が同じでも同じ共役類に属すとはかぎらないという前回のブログ
言及した反例がこの例ということになります.

まとめると、
位数が1の元は
1個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は1
位数が2の元は
21個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は21
位数が3の元は
56個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は56
位数が4の元は
42個で、1つの共役類をもち、共役類に属する元の個数は42
位数が7の元は
48個で、2つの共役類をもち、共役類に属する元の個数はそれぞれ24個ずつ.
となりました.

つまり、PSL(2,7) の全ての元の個数 168 はこの分類により、
$$168=1+21+56+42+24+24$$
となるわけです.このような式を類等式といいます.

PSL(2,7) が単純群であること

PSL(2,7)は単純群です.
単純群とは、PSL(2,7) の内部に、非自明な正規部分群を含まないものです.
$H$ が群 $G$ の正規部分群というのは、$G$ の部分集合で、 積により閉じており、
全ての$g\in G$ に対して、
$gHg^{-1}=H$ が成り立つことです.

$PSL(2,7)$ が正規部分群 $H$ を持てば、$H$ はいくつかの共役類の和集合となります.
$H$ に属するある元 $x$ と同値な共役類の任意の元 $gxg^{-1}$ は正規部分群の
定義により再び、$H$ に入っていないといけないからです.

また、一方、$H$ が PSL(2,7) の部分群であるということは、$H$ に属する元の数は、168を割らなければなりません.
非自明ということは、単位元と PSL(2,7) 自身は除きます.

$1, 21, 56, 42, 24, 24$
の中からいくつかとって 168を割るように
する必要があります.ただし、どんな部分群にも単位元は存在するので、1は必ず必要です.
1と168以外の約数を列挙すると、
2, 3, 4, 6, 7, 8, 12, 14, 21, 24, 28, 42, 56, 84
となります.少なくとも22以上なので、24, 28, 42, 56, 84 のみ.
また、偶数なので、21は必要.22をひくと、残りは、2,6,20,34,62
この数を 56,42.24,24 の和を使って作るのは無理です.
これは、PSL(2,7) には非自明な正規部分はないということを意味し、
PSL(2,7) は確かに単純群であるということになります.

2015年12月9日水曜日

群PSL(2,7)についてII

PSL(2,7)

以前のブログで紹介しこの群 PSL(2,7) についてくわしく見ていきます.
ここでは共役類を考えようと思います.

PSL(2,7)について簡単に書いておくと、
$$PSL(2,7)=\left\{\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}|a,b,c,d\in{\mathbb F}_7,ad-bc=1\bmod 7\right\}/I\sim-I$$

という、7元体での $2\times2$ 行列で、行列式が1となる群 $SL(2,7)$ を $I$ と $-I$ を同一視して
得られる商群です.
つまり、$\langle I,-I\rangle\subset SL(2,7)$ という部分群によって割られる群ということになります.
$PSL(2,7)$ の単位元は $e$ と書くことにします.

このような群は、 $S=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ と $T=\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}$ によって生成され、全ての元は、

$$[a_n,a_{n-1},\cdots,a_1]=TS^{a_n}TS^{a_{n-1}}\cdots TS^{a_1}$$
のような形に表示できます.

このような書き方は一意的ではなく、$T^2=S^7=(TS)^3=e$ や、$(TS^3)^4=e$ なる関係式もあります.

また、群 $G$ の元のこの書き方をしたときの $n$ のことを、この表示の長さということにします.
長さは、群の元から決まる不変な物ではなく、表示の仕方によって変わりえます.

この群の位数(元の個数)は、168個です.
その168個は、以前のブログ で全て書き出しました.

共役類

群 $G$ において、$x,x'\in G$ が共役であるとは、ある $y\in G$ が存在して、$yxy^{-1}=x'$
となることをいいます.
共役という関係は、同値関係になります.
共役によって結んだ関係によって群 $G$ の全ての元をいくつかにクラスにわけたものを共役類といいます.
$x,x'$ が共役であるということを今後
$$x\sim x'$$
という記号を使っていきます.この記号は大変便利です.
$PSL(2,7)$ の元の表示でいうと、$[a_1,a_2,\cdots,a_n]\sim [a_2,a_3,\cdots,a_n,a_1]$
なる巡回置換は共役となります.
この巡回置換による共役は下で多数使われることになります.


位数
$e$ を群 $G$ の単位元とします.
元 $x\in G$ の位数とは、$x^n=e$ となる最小の正の整数のことをいいます.


共役な元同士は
$x^n=e$ ならば、
$(yxy^{-1})^n=yx^ny^{-1} =yey^{-1}=e$
となり、(最小性は別にやる必要がありますが...)
位数が等しくなりますが、逆は一般に正しくありません.


$x,x'$ が共役 ⇨ $x,x'$ の位数が同じ

つまり、位数が同じという元同士の関係は、共役であるという関係より、弱いことがわかります.
弱い関係の方が、多くの元を分類することができるので、より細かい分類ができます.

また、$x\sim x'$ で、$y\sim y'$ だからといって、$xy\sim x'y'$ となるとはかぎりません.

PSL(2,7) の長さ1の

$G=PSL(2,7)$ の表示において、
$[a_1,\cdots,a_{n-1}]\cdot[a_n]=[a_1,\cdots,a_n]$
であることに注意しましょう.

長さ1の元は以下になります.
$[0]=TS^0$ 位数2
$[1]=TS$ 位数3
$[2]=TS^2$ 位数7
$[3]=TS^3$ 位数4
$[-3]=TS^4$ 位数4
$[-2]=TS^5$ 位数7
$[-1]=TS^6$ 位数3

この逆元をとると、一般に、$[a]^{-1}=[0,-a,0]$ を使って、
$[0]^{-1}=[0]$
$[1]^{-1}=[0,-1,0]=[1,1,0,0]=[1,1]$
$[2]^{-1}=[0,-2,0]=[1,1,-1,0]=[1,2,1]$
$[3]^{-1}=[0,-3,0]=[1,1,-2,0]=[1,1,-1,1,1]=[1,2,1]$
$[4]^{-1}=[0,-4,0]=[0,3,0]$
$[5]^{-1}=[0,-5,0]=[0,2,0]$
$[6]^{-1}=[0,-6,0]=[0,1,0]=[-1,-1]$

一般に逆元をとる操作は、$[a_1,a_2,\cdots,a_n]^{-1}=[0,-a_n,-a_{n-1},\cdots,-a_1,0]$
となり、巡回置換が共役になることをつかうと、
$[a_1,a_2,\cdots,a_n]^{-1}\sim[-a_n,-a_{n-1},\cdots,-a_1]$
がいえます.

位数のことを考えると、
$[2]=[2,2,2,2,2,2]^{-1}=[0,-2,-2,-2,-2,-2,-2,-2,0]$ や同様にして
$[3]=[3,3,3]^{-1}=[0,-3,-3,-3,0]$ や
$[4]=[0,-4,-4,-4,0]$
$[5]=[0,-5,-5,-5,-5,-5,-5,0]$

これから PSL(2,7) の中の168個の元の共役類を手作業で調べます.

そのとき、巡回置換以外で次の関係式がよく使われています.

$$[\cdots,a_i,a_{i+1},\cdots]=[\cdots,a_i\pm1,\pm1,a_{i+1}\pm1,\cdots]$$
$$[\cdots,a_i,a_{i+1},\cdots]=[\cdots,a_i,0,0,a_{i+1},\cdots]$$
$$[\cdots,a_{1},\pm1]=[\cdots,a_1\mp1,\mp1,0]$$
$$[\cdots,a_i,\cdots]=[\cdots,a_i+7n,\cdots]$$
$$[\cdots,\pm3,\cdots]=[\cdots,0,\mp3,\mp3,\mp3,0,\cdots]$$


結論として、位数が 1,2,3,4の元は、それぞれ共役類が一つしかないということです.
位数が7の元はココにかききれないので、またどこかでかくことにします.
ちなみに、PSL(2,7) の元は、位数が1,2,3,4,7 のどれかです.

位数が1の元
$e=[0,0]$ しかありませんので
当然
共役類はこれを含む類一つだけ.

位数が2の元

位数が2の元は、以下の21個存在します.
$[0]$
$[2,1],[1,2],[-1,-2],[-2,-1],[3,3],[-3,-3]$
$[0,2,2],[-2,2,0]$
$[-3,3,0],[0,3,-3]$
$[0,-3,2,-3],[0,-2,3,-2]$
$[1,2,3],[1,3,2],[2,3,1].[3,2,1]$
$[2,2,-1],[-1,2,2]$
$[3,3,-1],[-1,3,3]$

以下、これらはすべて共役であることを調べます.

$[0]=[1,0,-1]\sim[0,-1,1]=[1,1,0,1]=[1,2]\sim[2,1]$
$[0]\sim[-1,0,1]\sim[0,1,-1]=[-1,-2]\sim[-2,-1]$
$[3,3]=[1,0,2,3]\sim[2,3,1,0]=[2,2,-1]\sim[-1,2,2]$
$[0]=[-2,0,2]\sim[0,2,-2]$
$[0]=[2,0,-2]\sim[-2,2,0]$
$[0]=[-3,0,3]\sim[0,3,-3]$
$[0]=[3,0,-3]\sim[-3,3,0]$
$[0]\sim[1,2]\sim[-3,0,-3,2]\sim[0,-3,2,-3]$
$[2,3,1]\sim[1,2,3]\sim[0,-1,1,3]\sim[1,3,0,-1]\sim[1,2]$
$[1,3,2]\sim[3,2,1]\sim[3,1,-1,0]\sim[1,-1,0,3]\sim[1,2]$
$[-1,3,3]\sim[3,3,-1]=[3,4,1,0]\sim[4,1,0,3]\sim[4,4]\sim[-3,-3]$
$[-3,-3]\sim[-2,1,-2]\sim[-1,1,2,-2]\sim[-2,-1,1,2]=[-1,2,2]$
$[-1,3,3]=[-1][3,3]^{-1}=[-1][0,-3,-3,0]=[-1,0,-3,-3,0]=[-4,-3,0]\sim[-3,0,-4]\sim[0]$

のように示されます.

位数が2の元は全て共役です.

位数3の元

位数がの元は、次の 56個です。

$[1],[-1]$
$[1,1],[1,3],[2,4],[2,5],[3,1],[3,5],[4,2],[4,6],[5,2],[5,3],[6,4],[6,6]$
$[0,2,4],[0,2,6],[1,2,2],[1,2,4],[2,2,1],[2,2,4],[3,2,4],[3,2,5],[4,2,0],[4,2,1],[4,2,2],[4,2,3],[4,2,4],[4,2,5],[4,2,6],[5,2,3],[5,2,4],[6,2,0],[6,2,4],[0,3,3],[0,3,5],[1,3,5],[1,3,6][[2,3,4],[2,3,5],[3,3,0],[3,3,5],[4,3,2],[4,3,5],[5,3,0],[5,3,1],[5,3,2],[5,3,3],[5,3,4],[5,3,5],[5,3,6],[6,3,1],[6,3,5]$
$[0,4,2,0],[0,4,2,1],[0,5,3,0],[0,5,3,3]$

これらの互いに共役であることを示します.
長さが大きいものから小さいものへ順に簡単にしていきます.

長さ4のもの
$[0,4,2,0]\sim[0,0,4,2]\sim[4,2]$
$[0,4,2,1]\sim[1,0,4,2]\sim[5,2]$
$[0,5,3,0]\sim[0,0,5,3]\sim[5,3]$
$[0,5,3,3]\sim[3,0,5,3]\sim[1,3]$

長さ3で、0,1,6 をふくむもの
$[0,2,4]\sim[4,0,2]\sim[1]$,  $[0,2,6]\sim[6,0,2]\sim[1]$,  $[4,2,0]\sim[2,0,4]\sim[-1]$,
$[6,2,0]\sim[2,0,6]\sim[1]$,  $[0,3,3]\sim[3,0,3]\sim[-1]$,  $[0,3,5]\sim[5,0,3]\sim[1]$
$[1,2,2]\sim[2,1,2]\sim[1,1]$,  $[1,2,4]\sim[4,1,2]=[3,1]$, $[2,2,1]\sim[2,1,2]=[1,1]$
$[4,2,1]\sim[2,1,4]=[1,3]$,  $[4,2,6]\sim[2,-1,4]=[3,5]$,  $[6,2,4]\sim[4,-1,2]=[5,3]$
$[1,3,5]\sim[5,1,3]=[6,4]$,  $[1,3,6]\sim[6,1,3]=[5,2]$,  $[5,3,1]\sim[3,1,5]=[2,4]$
$[5,3,6]\sim[3,-1,5]=[4,6]$,  $[6,3,1]\sim[3,1,6]\sim[2,5]$,  $[6,3,5]\sim[5,-1,3]=[6,4]$

長さ3で0,1,6をふくまないもの
$[4,2,2]\sim[2,2,4]\sim[1,-1,1,4]\sim[1,-2,3]\sim[3,1,-2]=[2,-3]=[2,4]$
$[3,2,4]\sim[4,3,2]\sim[4,0,-3,-3,-3,0,2]\sim[-1,-3,-1]\sim$
$[3,2,5]\sim[5,3,2]\sim[5,0,-3,-3,-3,0,2]\sim[2,-3,-1]\sim[-3,-1,2]\sim[-2,3]$
$[4,2,3]\sim[2,3,4]\sim[2,0,-3,-3,-3,0,4]\sim[-1,-3,1]\sim[1,-1,-3]\sim[2,-2]$
$[4,2,4]\sim[2,4,4]=[2,0,3,3,3,0,4]=[5,3,7]=[5,3,0]\sim[3,0,5]=[1]$
$[4,2,5]=[0,3,3,3,0,2,5]\sim[5,0,3,3,5]=[1,3,5]\sim[5,1,3]\sim[4,2]$
$[5,2,3]\sim[2,3,5]\sim[2,0,-3,-3,-3,0,5]\sim[-1,-3,2]\sim[2,-1,-3]\sim[3,-2]$
$[5,2,4]=[5,2,0,3,3,3,0]=[5,5,3,3,0]\sim[5,3,3,0,5]=[5,3,1]\sim[3,1,5]\sim[2,4]$
$[3,3,5]\sim[5,3,3]\sim[5][3,3]^{-1}=[5][0,-3,-3,0]\sim[2,-3,0]\sim[-1]$
$[4,3,5]\sim[4,0,-3,-3,-3,0,5]\sim[1,-3,2]\sim[2,1,-3]\sim[1,-4]$
$[5,3,4]\sim[5,0,-3,-3,-3,0,4]\sim[2,-3,1]\sim[-3,1,2]\sim[-4,1]$
$[5,3,5]\sim[-2,-2,3]=[-1,1,-1,3]\sim[-1,2,4]\sim[4,-1,2]=[5,3]$

長さが2のもの
$[1,1]\sim[0,-1,0]\sim[0,0,-1]\sim[-1]$
$[1,3]\sim[3,1]\sim[2,-1,0]\sim[-1,0,2]\sim[1]$
$[3,5]\sim[5,3]\sim[5,0,-3,-3,-3,0]\sim[2,-3,-3,0]\sim[-3,-3,0,2]\sim[-3,-1]\sim[-2,1,0]\sim[-1]$
$[6,6]\sim[0,0,-1,-1]\sim[0,1,0]\sim[1,0,0]\sim[1]$
$[4,6]\sim[6,4]\sim[-1,4]\sim[0,0,-1,4]\sim[0,1,5]\sim[1,0,5]\sim[-1]$
$[2,4]\sim[4,2]\sim[3,-1,1]\sim[3,-2,-1]=[-2,-1,3]\sim[-1,4]$
$[2,5]\sim[5,2]\sim[6,1,3]=[1,3,-1]\sim[1,4,1,0]\sim[4,1,0,1]\sim[4,2]$

長さが1のもの.
$[1]=[4,0,-3]=[4,0,-3,0,0]=[4,3,3,3,0]\sim[3,3,3,0,4]\sim[3,3,7]\sim[3,0,3]=[-1]$

位数が4の元

位数が4の元は、次の42個です.
$[3],[4]$
$[1,5],[1,6],[2,3],[2,6],[3,2],[3,4],[4,3],[4,5],[5,1],[5,4],[6,1],[6,2]$
$[0,2,1],[0,2,2],[1,2,0],[1,2,6],[2,2,0],[2,2,5],[3,2,3],[3,2,6],[5,2,2],[5,2,5],[6,2,1],[6,2,3],[0,3,0],[0,3,1],[1,3,0],[1,3,4],[2,3,3],[2,3,6],[3,3,2],[3,3,3],[4,3,1],[4,3,6],[6,3,2],[6,3,4]$
$[0,4,2,2],[0,4,2,6],[0,5,3,4],[0,5,3,6]$

同じように長さが小さいもの帰着させていくことで、
これらが互いに共役であることを示します。

長さが4のもの
$[0,4,2,2]\sim[2,0,4,2]\sim[6,2]$
$[0,4,2,6]\sim[6,0,4,2]\sim[3,2]$
$[0,5,3,4]\sim[4,0,5,3]\sim[2,3]$
$[0,5,3,6]\sim[6,0,5,3]\sim[11,3]\sim[4,3]$

長さが3のもので0,1,6を含むもの.
$[0,2,1]\sim[1,0,2]=[3]$
$[0,2,2]\sim[2,0,2]=[4]$
$[1,2,0]\sim[2,0,1]=[3]$
$[1,2,6]\sim[2,-1,1]=[3,2]$
$[2,2,0]\sim[2,0,2]=[4]$
$[0,3,0]\sim[0,0,3]=[3]$
$[0,3,1]\sim[1,0,3]=[4]$
$[1,3,0]\sim[3,0,1]=[4]$
$[6,2,1]\sim[2,1,6]=[1,5]$
$[1,3,4]\sim[4,1,3]=[3,2]$
$[4,3,1]\sim[3,1,4]=[2,3]$
$[4,3,6]\sim[3,-1,4]=[4,5]$
$[3,2,6]\sim[6,3,2]\sim[2,-1,3]=[3,4]$
$[6,2,3]\sim[2,3,6]\sim[3,-1,2]=[4,3]$
$[6,3,4]\sim[4,-1,3]=[5,4]$

長さが3で0,1,6を含まないもの.
$[2,2,5]\sim[1,-1,1,5]=[1,-2,4]\sim[4,1,-2]=[3,-3]$
$[3,2,3]\sim[2,3,3]\sim[3,3,2]=[0,-3,-3,-3,0,2]=[0,-3,-3,-1]\sim[-1,0,-3,-3]=[-4,-3]$
$[5,2,2]\sim[5,2,5]\sim[2,5,5]=[2,-1,1,-1]=[3,2,-1]\sim[2,-1,3]=[3,4]$
$[3,3,3]\sim[0,-3,0]\sim[0,0,-3]=[-3]$

長さが2のもの
$[1,5]\sim[5,1]=[4,-1,0]\sim[-1,0,4]=[3]$
$[1,6]\sim[6,1]=[5,-1,0]\sim[-1,0,5]=[4]$
$[2,3]\sim[3,2]=[0,-3,-3,-3,0,2]=[0,-3,-3,-1]\sim[-1,0,-3,-3]\sim[-4,-3]=[3,4]$
$[2,6]\sim[6,2]=[2,-1]=[3,1,0]=[1,0,3]=[4]$
$[3,4]\sim[4,3]=[4,0,-3,-3,-3,0]=[1,-3,-3,0]\sim[-3,-2]=[4,5]$
$[4,5]\sim[5,4]\sim[-2,-3]=[-1,1,-2]\sim[-2,-1,1]=[-1,2]\sim[0,1,3]\sim[3,0,1]=[4]$

長さが1のもの
$[3]\sim[0,-5,-2,0][3][2,5]=[0,-5,-2,0,3,2,5]=[0,-5,1,2,5]=[0,-6,1,5]=[0,-7,4]\sim[0,0,4]=[4]$

2015年12月8日火曜日

微積分II演習(第8回)

[場所1E103(金曜日5限)]
HPに行く.

今日はラグランジュの未定乗数法を行いました。

ラグランジュの未定乗数法については、去年のページ

2014年微積分II演習(第7回)

があります.詳しくはそちらをみてください.


前半はラグランジュの未定乗数法がどうして出てきたのかついて書かれています.
わからなければ無視してください.
条件式2つの2変数関数とするときは、教科書(P.140)に載っていますので
そちらを参照してください.

2014年微積分II演習(第7回)には、途中の、条件付き関数の極値というところでは、授業中にやっていた計算を
少し効率よくやっています.
また、円盤上の関数の極値についても例も解説しています.
そちらは授業中にやる時間がありませんでしたので
詳しいやり方がみたい人はそちらを読んでください.


このページでは、少し一般的な書き方をします.


ラグランジュの未定乗数法
ラグランジュの未定乗数法というのは、
条件式一つ、で2変数関数の場合にかけば、

条件式 $g(x,y)=0$ があったときに、関数 $f(x,y)$ があったときに
その条件の元での関数の極値を求めるには、
$$H(x,y,\lambda)=f(x,y)-\lambda g(x,y)$$
という関数を立てて、その3変数関数 $H(x,y,\lambda)$ の極値を考えればよいですよ.

ということになります.
つまり、
$$\left\{\begin{array}{l}H_x(x,y,\lambda)=0\\H_y(x,y,\lambda)=0\\H_\lambda(x,y,\lambda)=0\end{array}\right.$$
なる方程式を解けばよいわけです.

ただ、これは、極値の候補を出しているだけので、本当に極値かどうかは
ちゃんと判定する必要があります.

授業中に難しそうにしていたものは、これは、単に、微分が消えているところだから、本当に極値になりますか?ということを示していたわけです.


去年のページでも
条件式 $g(x,y)=x^2+y^2-2$ であり、
関数 $f(x,y)=y-x$ の場合に少し効率よくやってあります.


ここでは、大まかな流れだけ書いておきます.


まずは極値を出す
条件式が $g(x,y)=0$ があり、関数を $f(x,y)$ とします.

ラグランジュの未定乗数法により、極値の候補を $(a_1,b_1),\cdots,(a_n,b_n)$
とします.
$(a_i,b_i)$ についてやれば、

$f_x(a_i,b_i)-\lambda_ig_x(a_i,b_i)=0$
$f_y(a_i,b_i)-\lambda_ig_y(a_i,b_i)=0$
$-g(a_i,b_i)=0$

です.
この $n$ 個の点の周辺で、陰関数 $y=\varphi_i(x)$ を作っておきます.
(これは、$g_y(a_i,b_i)\neq 0$ の場合です.)
そうすると、陰関数だから、$g(x,\varphi_i(x))=0$ が成り立ち、

合成関数の微分法から、
$g_x(x,\varphi_i(x))+g_y(x,\varphi_i(x))\varphi_i'(x)=0$
が成り立ちます.
とくに、$g_x(a_i,\varphi_i(a_i))+g_y(a_i,\varphi_i(a_i))\varphi_i'(a_i)=0$
です.

よって、
$$\varphi_i'(a_i)=-\frac{g_x(a_i,b_i)}{g_y(a_i,b_i)}$$
となります.また、2回微分も計算しておくと、
$$\varphi_i''(a_i)=\frac{-g_{xx}(a_i,b_i)g_y(a_i,b_i)^2-g_x(a_i,b_i)^2g_{yy}(a_i,b_i)+2g_x(a_i,b_i)g_{xy}(a_i,b_i)g_y(a_i,b_i)}{g_y(a_i,b_i)^3}$$
が成り立ちます.


$$F_i(x)=f(x,\varphi_i(x))$$
とおきます.
問題は、$F_i(x)$ の微分が消えている、$x=a_i$ の周りで、極値となるか、
つまり、2回微分が正か負になっているかということです.
そのとき、正であれば、極小値、負であれば、極大値となります.

微分が 0 であること

まずは、微分が消えているかどうかチェックすると、

$$F_i'(a_i)=f_x(a_i,\varphi_i(a_i))+f_y(a_i,\varphi_i(a_i))\varphi_i'(a_i)=f_x(a_i,b_i)+f_y(a_i,b_i)\varphi_i'(a_i)=\lambda_ig_x(a_i,b_i)+\lambda_ig_y(a_i,b_i)\varphi_i'(a_i)$$
$$=\lambda_i(g_x(a_i,b_i)+g_y(a_i,b_i)\varphi_i'(a_i))$$
であり、$\varphi_i(x)$ が $g(x,y)=0$ の陰関数であることから、
$g_x(a_i,b_i)+g_y(a_i,b_i)\varphi_i'(a_i)=0$ であるので、

$$F_i'(a_i)=0$$

が示されました.

2回微分について

次は2回微分です.
$F'_i(x)=f_x(x,\varphi_i(x))+f_y(x,\varphi_i(x))\varphi_i'(x)$ を微分すると、
$$\begin{eqnarray*}F''_i(x)&=&f_{xx}(x,\varphi_i(x))+f_{xy}(x,\varphi_i(x))\varphi_i'(x)+f_{yx}(x,\varphi_i(x))\varphi_i'(x)+f_{yy}(x,\varphi_i(x))\varphi_i'(x)^2+f_y(x,\varphi_i(x))\varphi_i''(x)\\&=&f_{xx}(x,\varphi_i(x))+2f_{xy}(x,\varphi_i(x))\varphi_i'(x)+f_{yy}(x,y)\varphi_i'(x)^2+f_y(x,\varphi_i(x))\varphi_i''(x)\end{eqnarray*}$$
となります.
$(a_i,b_i)$ を入れると、
$$F_i''(a_i)=f_{xx}(a_i,b_i)+2f_{xy}(a_i,b_i)\varphi_i'(a_i)+f_{yy}(a_i,b_i)\varphi_i'(a_i)^2+f_y(a_i,b_i)\varphi_i''(a_i)$$
ここで、上の $\varphi'_i(a_i)$ と $\varphi_i''(a_i)$ の式を使います.

この計算をして、$F_i(x)$ の $x=a_i$ での極値の判定ができるようになります.

2015年12月5日土曜日

線形代数II演習(第8回)

[場所1E103(水曜日4限)]


HPに行く.

今日は、全員の発表を行いました.
ほとんどが自明にできるような問題ばかりでしたが、2問ほど若干思考力のいる
問題が含まれていました.

残った2問は次回解いてください.


最後に、大急ぎで表現行列のところを行いました.
表現行列のことに関しては、去年のページがあります.
そちらを読んでもらうことにして、ブログ上の解説はさぼろうと思います.

授業では配布プリントはありませんでしたが、返したレポートの
答えを後で作って今回の8回のプリントとしました.上の配布プリントから取ってください.


ちなみに、今回の講義の方では、本年度の京大の特色入試(コインの問題)を扱ったようですね.
入試問題を見てみましたが、いかにも京大の問題という感じですね.

授業ではそれを線形代数を使って解くということをやったようで.
大学の数学を使えば、そのような解答ができますね.
高校生として解くにはやはり、パターンを詳しく解析したらよいのでしょうか.


n元体

大学生っぽく簡潔に解くためには2元体 ${\mathbb F}_2$ を扱う必要があります.
一般に素数 $n$ に対して、${\mathbb F}_n$ という体を定義することができます.
${\mathbb F}_n$ は、PSL(2,7) の記事(←)にも書きました.

$\{0,1,2,\cdots,n-1\}$ なる $n$ 個からなる元からできており、和と積はその足し算、掛算であって、もしその答えが $n$ 以上になったら、その余りをとるという約束で定義されています.
$n$ が素数という条件により、実は、$0$ 以外の元で割ることもできます.
そのような、加減乗除が入った $n$ 個の数を ${\mathbb F}_n$ とし $n$ 元体といいます.

まとめれば、$n$ が素数であれば、${\mathbb F}_n$ は体になるわけです.

${\mathbb F}_2$ は、$\{0,1\}$ からなる体で、和は
+|0|1
0|0|1
1|1|0
となり、積は
x|0|1
0|0|0
1|0|1
となります.
問題はこの${\mathbb F}_2$ を基礎体とした $n$ 次元ベクトル空間 ${\mathbb F}_2^n$
での話になります.コインの裏を $0$ とし、表を $1$ として考えていけばよいわけですね.
こうしたわくぐみにしてしまえば問題は全く線形代数の問題となります.

最後の問題は全ての ${\mathbb F}_2^n$ の元が $(1,1,1,0,0)$ などの並んだベクトルだけで
生成するかという問題になります.

詳しいところは講義の方でやったと思うのでここでは省略します.

2015年12月4日金曜日

ベクトル空間の準同型定理

ベクトル空間の商空間の続きで準同型定理について書きます.

線形写像

ベクトル空間 $V,W$ があり、その間の線形写像 $f:V\to W$ が与えられているとします.
線形写像とは、$f({\bf v}+{\bf w})=f({\bf v})+f({\bf w})$ かつ、$f(\lambda{\bf v})=\lambda f({\bf v})$
が成り立つような写像のことです.
このような線形写像のことを準同型写像と言ったりします.

準同型写像というのは、元々代数の群論という分野で使われるもののことで、
2つの群の間の写像で、$f(g_1g_2)=f(g_1)f(g_2)$ という条件を満たすもののことを指します.
群については、このブログ上のこの記事(←ここ)にも書きましたが、2項演算(積)が定義されており、
その他もろもろの性質 (結合律、単位元の存在、逆元($g$ に対して $g^{-1}$ が存在する))
を満たすものです.

ベクトル空間も、実は群のひとつです.
群としての2項演算を和だとして定義すると、和は可換なので、結合律が自然に成り立ち、
単位元(ゼロベクトル)の存在、
逆元(${\bf v}$ に対して $-{\bf v}$ の存在)です.
ですので、線形写像は準同型写像と言ってもよいわけです.

また、$\text{Ker}(f)$ を $f$ により、$0$ に行くような $V$ の部分空間のことをいいます.
また、$\text{Im}(f)$ は、$W$ の部分空間で、$f$ の像となっているものをいいます.
集合の言葉で書けば、
$$\text{Ker}(f)=\{{\bf v}\in V|f({\bf v})=0\}$$
$$\text{Im}(f)=\{f({\bf v})\in W|{\bf v}\in V\}$$
となります.
これらは、自然に、$V,W$ の部分ベクトル空間です.


準同型定理

まずは、準同型定理を述べておきます.

定理(準同型定理)
線形写像 $f:V\to W$ に対して、
$$V/\text{Ker}(f)\cong \text{Im}(f)$$
が成り立つ.


ということです.
ここで、$\cong$ は2つのベクトル空間が同型であることを意味します.
$V/\text{Ker}(f)$ は部分ベクトル空間 $\text{Ker}(f)$ による商空間です.

よって、特に $V,W$ が有限次元ベクトル空間の場合、両辺は次元が等しくなりますから、
$\dim(V/\text{Ker}(f))=\dim\text{Im}(f)$ が成り立ちます.

商空間の次元の計算式を使って、$\dim(V)-\dim(\text{Ker}(f))=\dim\text{Im}(f)$ となりますが、
この右辺は $\text{rank}(f)$ (線形写像のランク)で、$\dim\text{Ker}(f)=\text{null}(f)$ は
線形写像の退化次数といいます.
つまり、
$$\text{null}(f)+\text{rank}(f)=\dim(V)$$
という線形写像におなじみの次元等式となります.

この準同型定理が意味しているのは、さらにあります.
$f:V\to W$ という線形写像は自然に、$\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to W$ を定義しており、
この写像の値域を $\text{Im}(f)$ に制限したものを同じ $\tilde{f}$ で表すと、上の同型写像
$$\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to \text{Im}(f)$$
が作れるということです.


準同型定理の証明

まずは、$f:V\to W$ が自然に線形写像 $\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to W$ が存在する、
というのは、次のような意味です.

写像の定義

$\tilde{f}$ を $\tilde{f}([{\bf v}])=f({\bf v})$ と定義します.
これが自然に定義されるという意味です.
この定義がwell-definedかどうかということがこの定理の最重要なポイントです.

つまり、代表元を取り替えてもこの定義でうまくいっているかどうかを示します.

Well-defined性

$[{\bf v}]=[{\bf w}]$ とします.つまり、${\bf w}-{\bf v}={\bf u}\in \text{Ker}(f)$ が成り立ちます.
$[\cdot]$ の書き方については、こちらの記事もしくは教科書をみてください.
よって、
$$\tilde{f}([{\bf w}])=f({\bf w})=f({\bf v}+{\bf u})=f({\bf v})+f({\bf u})=f({\bf v})=\tilde{f}([{\bf v}])$$
となります.
つまり、代表元を取り替えても、同じ元に写ることがわかりました.

よって、$\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to W$ は写像が定義できたことになります.

線形写像であること

この写像が線形であることを示すと、

$$\tilde{f}([{\bf v}]+[{\bf w}])=\tilde{f}([{\bf v}+{\bf w}])=f({\bf v}+{\bf w})=f({\bf v})+f({\bf w})=\tilde{f}([{\bf v}])+\tilde{f}([{\bf w}])$$
$$\tilde{f}(\lambda[{\bf v}])=\tilde{f}([\lambda{\bf v}])=f(\lambda{\bf v})=\lambda f({\bf v})=\lambda\tilde{f}([{\bf v}])$$
この一つ一つのイコールは、商空間のベクトル空間の定義、上の写像 $\tilde{f}$ の定義などを一つずつ
使ったものです.
全てのイコールの意味を考えながら進んで下さい.

線形写像 $\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to W$ が定義できました.

単射性

次に、$\text{f}:V/\text{Ker}(f)\to W$が単射であることを示します.
線形写像が単射であることは、$0$ の逆像が $0$ であることを示せばよいです.
つまり、$\text{Ker}(\tilde{f})=\{0\}$ です.

$\tilde{f}([{\bf v}])=0$ とすると、$\tilde{f}$ の定義から、$\tilde{f}([{\bf v}])=f({\bf v})=0$
となり、${\bf v}\in \text{Ker}(f)$ となります.つまり、$[{\bf v}]=[0]$ となり、$[0]$ 
は $V/\text{Ker}(f)$ のゼロベクトルです.

これは、$\tilde{f}$ が単射であることを意味しています.

全射性

値域を $\text{Im}(f)$ に制限すれば、$\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to \text{Im}(f)$ は全射になります.



ゆえに、$\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to \text{Im}(f)$ は同型写像ということになり、
$V/\text{Ker}(f)\cong \text{Im}(f)$ が成り立ちます.



最後だけ取り出せば、
もし単射線形写像 $f:U\to W$ があれば、$U\cong \text{Im}(f)$ となるということです.
単射でなければ、さらに、$U$ を $\text{Ker}(f)$ で商をとればよいということになり、
準同型定理を意味します.

例や使い方など

例1

$f:{\mathbb C}[x]\to {\mathbb C}[x]_n$
を、多項式 $p(x)\in {\mathbb C}[x]$ に対して、$p(x)$ の $n$ 次以下の部分をとる写像とします.
つまり、$m>n$ のとき、
$$a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots+a_mx^m\mapsto a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots+a_nx^n$$
$m\le n$の場合は恒等写像という写像です.
テイラー展開の $n$ 次以下の部分の項という言い方もできます.

このとき、$f$ は線形写像です(証明はしませんが).
この $f$ は全射であり、$\text{Ker}(f)=\{a_{n+1}x^{n+1}+a_{n+2}x^{n+2}+\cdots+a_mx^m|a_i\in {\mathbb K}\}$
です.これを $W$ とすると、
${\mathbb C}[x]/W\cong{\mathbb C}[x]_n$
なる同型写像が成り立ちます.


例2

$V/W$ という商空間とします.
ここで、$W\subset V$ は部分空間ですので、$W$ を連立一次方程式の解空間とするベクトル空間を作ることができます.
(その作り方は、数ベクトル空間の場合に演習の授業でやりましたね.)

つまり、$V\to {\mathbb K}^r$ となる線形写像で、$\text{Ker}(f)=W$ となります.
作り方により、$f$ は全射になります.

準同型定理から、同型 $\tilde{f}:V/\text{Ker}(f)\to{\bf K}^r$ が成立します.
これにより、$V/W\cong {\mathbb K}^r$ という数ベクトル空間が構成できることになります.


$V={\mathbb R}^3$, $W=\langle {}^t(2,3,-1)\rangle$
のときに、$V/W$ と同型となるような自然な線形写像を作ります.

$W$ を線形写像の解空間となるような線形写像を作ると、
$\begin{pmatrix}2&3&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&3/2&-1/2\end{pmatrix}$
なる簡約化を使って、$x_1=c, x_2=3c/2, x_3=-c/2$ となり、代入して、
$x_2=3x_1/2, x_3=-x_1/2$ となる2つの式がでるので、これを行列でかけば、
$\begin{pmatrix}3&-2&0\\1&0&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}={\bf 0}$
となります.
$A=\begin{pmatrix}3&-2&0\\1&0&2\end{pmatrix}$ とおけば、
$L_A:V\to {\mathbb R}^2$ なる線形写像を使って、$W=\text{Ker}(L_A)$ となり、$\text{rank}(A)=2$ なので、$L_A$ は全射となります.
よって、自然な同型写像 $\tilde{L_A}:V/W\to {\mathbb R}^2$ が作られたことになります.

2015年12月3日木曜日

トポロジー入門演習(第7回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今日は、トポロジー入門演習を行いました.
皆さん問題を解いていますが、だんだん解く数が減って来ているような
気がします.

特に新しい事も進んでいないし書くこともないので、解かれていない問題の一部について
少し書きます.

位相空間論において、位相空間の性質とその性質を満たす(or満たさない)位相空間の例が重要です.

有限補集合位相

有限補集合位相 $(X,{\mathcal O})$ とは、有限個の点集合の補集合を開集合とする位相空間の例です.
この定義が、位相空間を定義することを確認する問題があったはずです.

この位相が成り立つ性質について書いていきます.
  • まず、$X$ が有限集合であれば、この位相空間は有限離散空間と同じです.ですので、自然に $X$ は無限集合で、可算無限か、非可算無限か
    で2通りあります.以下 $X$ は無限集合を考えます.
  • 任意の点 $p\in X$ は任意の無限部分集合 $A\subset X$ の集積点になります.というのも、任意の開集合は $A$ と交わりを持つという事実からわかります.つまり、任意の無限集合は $X$ の中で稠密ということになります.
  • つまり、$X$ 無限集合 $A$ の閉包は $X$ に一致しますので、$(X,{\mathcal O})$ は可分な空間ということになります.
  • $X$ はコンパクトになり、任意の部分空間もコンパクトになります.
位相空間 $X$ がコンパクトというのはまだやっていませんが、いかのような定義です.

位相空間の任意の開被覆、つまり、$X=\cup_{A\in {\mathcal A}} A$ ($A$ は開集合)となるように $X$ 全体がいくつかの開集合によって覆われていることとします.
このとき、必ず ${\mathcal A}$ の部分集合 ${\mathcal A}^0\subset {\mathcal A}$ が存在して、
$X=\cup_{A\in {\mathcal A}^0} A$ のように、なっていること.

つまり、どんなふうに$X$ を覆っていても、${\mathcal A}$ の中の有限個あれば覆うのに事足りるという条件です.短く言えば、任意の開被覆はその部分被覆をもつ、ということです.

この性質も、そのうち講義や演習ででてきます.

$X$ がどうしてコンパクトであることの証明をしておきます.
$X=\cup_{A\in{\mathcal A}}A$ となっているとします.任意に $A\in {\mathcal A}$ を選んでこれば、$X-A$ は有限個しかありません.したがって、$X-A$ を覆っている ${\mathcal A}$ の元を有限個 $A_1,A_2,\cdots,A_n$ を選んでこれます.このとき、$X=A\cup A_1\cup A_2\cdots\cup A_n$ は $X$ と一致しますので、任意の $X$ の開被覆は部分開被覆をもちました.
  • $X$ が可算無限集合であれば、${\mathcal O}$ は可算無限集合なので、第1可算かつ第2可算ということになります.準開基としては $X-p$なる開集合をとればよいです.
  • $X$ が非可算無限集合であれば、任意の開集合は非可算無限集合になり、$F_\sigma$ 集合ではありません.補集合を取れば、任意の閉集合は $G_\delta$ 集合にはなりません.
ここで、$F_\sigma$ 集合とは、閉集合の可算無限和集合のことで、$G_\delta$ 集合とは、開集合の可算無限共通集合のことです.
  • $X$ が非可算無限集合のとき、第1可算を満足しません.有限補集合位相は可分ですから、第2可算も満足しないということになります.
$X$ が第1可算でないことは以下のようにして示します.

任意の $x$ に対して、$X$ が可算近傍基を持つとします.それを ${\mathcal B}_x$ とすると、
$\cap_{B\in {\mathcal B}_x}B=x$ となるので、
$$X-\{x\}=X-\cap_{B\in {\mathcal B}_x}B=\cup_{B\in {\mathcal B}_x}(X-B)$$
$X-B$ は有限集合になります.有限集合の可算無限集合なので、$X-x$ は高々可算無限集合になります.これは $X$ が非可算無限集合であることに反します.
  • 無限集合の有限補集合位相 $X$ は $T_1$ を満たしますが、$T_i(i=2,3,4,5)$ は満足しません.
$T_i$ という公理は位相空間の分離公理と呼ばれるものですが、ここでは、$T_1$ と $T_2$ の定義だけします.

位相空間が $T_1$ であるとは、
$a,b\in X$ が2点の集合とします.そのとき、
$a\in O$ かつ $b\not\in O$ なる開集合 $O$ と、
$a\not\in O'$ かつ $b\in O'$ なる開集合 $O'$ が存在するとき
をいいます.

位相空間が $T_2$ (ハウスドルフ)であるとは、
$a,b\in X$ が2点の集合とします.そのとき、
$a\in O$ かつ $b\not\in O$ なる開集合 $O$ と
$a\not\in O'$ かつ $b\in O'$ なる開集合 $O'$ が存在し、さらに、$O\cap O'\neq\emptyset$
が成り立つことをいいます.

有限補集合位相の場合、
$a,b\in X$ に対して、$O=X-b,O'=X-a$ が $T_1$ の条件を満しています.
また、任意の開集合は共通部分を必ず持ちますので、$T_2$ は満しません.

$T_3$ 以降は定義をしませんでしたが、自動的に満たしません.
またどこかで定義したいと思います.

  • Lynn Arthur Steen and J. Arthur Seebach, Jr. Counterexamples in topology, Dover