2015年10月29日木曜日

線形代数II演習(第4回)

[場所1E103(水曜日4限)]

HPに行く.

今日は、ベクトル空間の幾つかのベクトルから一次独立なベクトルを選び出す方法を学びました.また、成り立つ一次関係を導き出す方法も学びました.

まず、次のことを説明します.

幾つかのベクトルの基底に関する行列表示

ベクトル空間 $V$ と $\{{\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n\}$ をその基底とします.
ベクトルの表示として中かっこを使っていますが、ここでは集合の要素の意味だけでなく、その並び方も考慮しています.

このとき、いくつかのベクトルを $\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\}$ をとったときに、
これらをこの基底を使って

$$({\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)A$$

のようにかける行列 $A$ を幾つかのベクトルの基底に関する行列表示ということにします.
この用語は私が勝手に去年あたりから使っているものです.

この行列の $i$ 番目の縦ベクトルは、${\bf x}_i$ の数値化(数ベクトル化)を意味しています.

${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m$ として基底をとったときに、この行列表示は、
基底の変換行列といわれるものと同じものになります.

このように、ベクトル空間の元に行列を書ける場合、もしくはベクトルの係数として行列を使って書く場合は、行列は右からかけるのが一般的です.

ベクトルをたてに並べるようなことは、ここではあまり出てきません.


そして、以下に行きます.

一次独立なベクトルを最大数とること

ベクトル空間 $\langle {\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m\rangle$ における基底を探したいとします.
一般にこのようないくいくつかのベクトルで張られる(生成される)ベクトル空間はそれらが基底でない場合があります.ベクトル空間を作るだけなので、そのベクトル同士に一次関係が存在するかもしれません.もし零ベクトルがあればすぐに排除できますね.

 $\{ {\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m\}$
から一次独立なベクトルを最大数とることを考えます.

まず、上に書いたように、基底を使って

$$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)A$$
のように行列表示させておきます.
そうすると、これらのベクトルの行列表示が $A$ となり、べクトル ${\bf x}_i$ に対応するのが $A$ の第 $i$ 番目たてベクトル ${\bf a}_i$ です.

このように対応させたベクトル同士
$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$
は単なる対応だけではなくて、一次関係においても対応しています.
つまり、式で書けば、

$$c_1{\bf x}_1+c_2{\bf x}_2+\cdots+c_m{\bf x}_m$$
$$\Leftrightarrow c_1{\bf a}_1+c_2{\bf a}_2+\cdots+c_m{\bf a}_m$$
という同値性が成り立つのです.
なので、$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$ で成り立つ一次関係は
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$ でも成り立つし、その逆も成り立ちます.

なので、$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$ で一次関係が存在しなければ
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$ でも存在しない.

一次関係が存在しないとは、一次独立であるということと同じです.

この同値性はどうしてかというと(これは授業ではやらなかったような気がしますね)、

$$c_1{\bf x}_1+c_2{\bf x}_2+\cdots,+c_m{\bf x}_m=0$$
$$\Leftrightarrow ({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots{\bf x}_m)\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$$
$$\Leftrightarrow ({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$$
ですが、${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ が基底(一次独立性)であるので、
$$\Leftrightarrow A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$$
となるためです.(この最後の証明は自分で考えてください.どこかで演習でも出します。)

よって、
$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$ から一次独立なベクトルを探すことは
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$ から一次独立なべクトルを探すことと同値です.

行列のたてベクトルから一次独立なベクトルを探すことは簡単です.
簡約化を使えばよいからです.

基本変形により
$$A\to A_1\to \cdots\to B$$
と簡約行列 $B$ が得られたときに、$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$ なる関係式は、
$B\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$ なる関係式と全く同値です.

これはどこかで演習問題を解いている人がいましたね.
基本変形が正則行列の左からの掛け算に対応しているからです.

よって、$A$ を簡約化した行列 $B$ に対して、一次独立なベクトルを探せばよいわけですが、

$B$ は簡約化されているので、一次独立なベクトルを探すことは容易です.
たとえば、$B$ が
$$B=\begin{pmatrix}1&0&0&-1&0&-2\\0&1&0&1&0&0\\0&0&1&-2&0&1\\0&0&0&0&1&-4\end{pmatrix}=({\bf  b}_1{\bf b}_2,\cdots,{\bf b}_6)$$
のように簡約階段行列になったとすると、一次独立なベクトルは、${\bf b}_1,{\bf b}_2,{\bf b}_3,{\bf b}_5$ となります.

また、簡約化は、一次関係もあぶりだしています.
つまり、${\bf b}_4, {\bf b}_6$ は他のベクトルのの一次関係でかくことができて、
$${\bf b}_4=-{\bf b}_1+{\bf b}_2-2{\bf b}_3$$
$${\bf b}_6=-2{\bf b}_1+{\bf b}_3-4{\bf b}_5$$
となるのです.
このような一次独立性、一次関係性はもとの行列 $A$ のたてベクトル、さらには、元のベクトルの集まり ${\bf x}_1,\cdots{\bf x}_m$ に引き継がれます.


一次独立なベクトルをどのようにして選んでいるのか

注意として、いくつかのベクトルの中から一次独立なベクトルを選びましたが、これは、最初のベクトル ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m$ を並び替えてから行うと、選ぶ一次独立なベクトルは違うものになることがあります.

一次独立なベクトルを選ぶとき、絶対的に一次独立なものが選べるわけではないからです.

もっといえば、いくつかのベクトル ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m$ を並べたときに、そこからどのようなベクトルを一次独立なベクトルとして選んでいるかというと、次のようにしているのです.

${\bf x}_1$ が非ゼロベクトルまずそれを選ぶ.ゼロベクトルであれば選ばない、
${\bf x}_2$ が ${\bf x}_1$ と平行と同値であれば選ばない、平行でなければ(${\bf x}_1$ のスカラー倍でなければ)選ぶ、
${\bf x}_3$ が ${\bf x}_1,{\bf x}_2$ の一次結合で書けていなければ選ぶ、そうでなければえらばない.
.....

このようなアルゴリズムを繰り返して、${\bf x}_1,\cdots, {\bf x}_m$ の中から一次独立なベクトルを取っているのです.
よって、とられた一次独立なベクトルは、そのベクトルの集まりから取れる最大数であることは分かると思います(この辺もそのうち演習で取り上げたいと思います).

よって、これによって分かることは実は、

行列 $A$ を簡約化して得られる行列 $B$ は簡約化の方法によらず一意である.

ということです.

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