2015年10月19日月曜日

トポロジー入門演習(第3回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今日は位相空間であることの示し方をやりました.
距離空間から位相空間への橋渡しとしてこちら(←ココ)に文章を書きました.

数学の証明をキチンと書く上で誤解しているところや、問題となる場所が今日はたくさん見られたようで、学生たちは大変勉強になったと思います.最後にまとめてかきました.


位相空間とは、集合 $X$ と、3つの条件を満たす集合の族 ${\mathcal O}$
との対(ペア) $(X,{\mathcal O})$ のことです. ${\mathcal O}$ の元のことを開集合と言います.


開集合であるための3つの条件
3つの条件はプリントでも書きましたが、ここでも書きます.
(a) 全体集合と空集合が ${\mathcal O}$ に入る。
(b) 任意の、有限この開集合の共通集合が ${\mathcal O}$ にはいる.
(c) 任意この開集合の和集合が ${\mathcal O}$ に入る.

です.

距離空間の場合は開集合を距離を使って定義すると上記のような性質をもつよいものが作れましたが、一般の位相空間を構成する場合(特に距離空間とはかぎらないような場合)は、普通には開集合を定める方法が明確ではありません。なので、開集合であるための上記の必須条件を満たすものをこちらで宣言してやれば、それでよいということなのです.

開集合と閉集合は大分性質が違うものですので、こちらで開集合として宣言したものが開集合としてうまくいっている必要があります.それがこの3つの条件といえます.

逆に、この3つの条件を満足している集合族は、開集合と言えるし、その補集合は閉集合といえるようになります.


数学の定義について後に書きました。

開集合、閉集合の主な性質
開集合は、すべての点が内点になっていなければならない.その補集合は閉集合.

閉集合のすべての収束する点列はその点の中で収束する.その開集合は開集合.


代表的な位相
任意の集合 $X$ に対して、${\mathcal O}=\{X,\emptyset\}$ とすると、
この集合の族は位相の定義を満たしています.これを密着位相といいます.

任意の集合 $X$ に対して、${\mathcal O}$ をすべてのべき集合とすると、
この集合の族は、位相の定義を満たしています.これを離散位相といいます.

ですので、あらゆる集合上に位相を入れることができます.

密着位相は一番 ${\mathcal O}$ の数を少なくしたもので、
離散位相は全てのなかで一番 ${\mathcal O}$ が大きいものです.

位相として、${\mathcal O}_1\subset{\mathcal O}_2$ かつ、${\mathcal O}_1\neq{\mathcal O}_2$ であるとき、${\mathcal O}_1$ は ${\mathcal O}_2$ .より粗い
と ${\mathcal O}_2$ は ${\mathcal O}_1$ .より細かいといいます.

よって、密着位相は一番粗い位相であり、離散位相は一番細かい位相ということになります.

位相の決め方

位相の決める方法として、距離を用いていれる以外に、近傍系を使っていれる方法があります.
任意の $x\in X$ に対して ${\mathcal U}(x)$ が $x$ の近傍系とは、

(a) 任意の $U\in {\mathcal U}(x)$ は $x\in U$ である.
(b) $U_1,U_2\in {\mathcal U}(x)$ であれば、$U_3\subset U_1\cap U_2$ なる $U_3\in {\mathcal U}(x)$ が存在する.
(c) $U\in {\mathcal U}(x)$ ならば、任意の $y\in U$ に対してある $y\in V\subset U$ が存在して、$V\in {\mathcal U}(y)$ となること.

を満たすことです.
このような近傍系 $\{{\mathcal U}(x)|x\in X\}$ から、$X$ 上に位相を ${\mathcal O}$ を以下のようにいれることができます.
$A\in {\mathcal O}$ であることを、

任意の $x\in A$ に対して、ある近傍系の元 $O\in {\mathcal U}(x)$ が存在して、
$x\in O\subset A$ とできる

として定義するのです.
そのようにして集めてきた ${\mathcal O}$ は位相の条件を満たします.


数学の発表もしくは証明をかくことに関して
今日の発表を見ていると、特徴的だったのは、

[1] 今から示そうとしていることを用いている.
[2] 自分なりのイメージだけで当たり前だからと推論している.

でした.
これは、いつもトポロジー演習をやって、3回目くらいで起こる現象です.
毎年のように同じことを言っている気がします.

[1] は、例えば、$x>0$ を示そうとしているのに、$x>0$ を使ってしまっているような例です.このような証明は明らかに間違いです.

そういう自覚があるわけではないのに、よくよく考えればやってしまっていると思います.

[2] は言葉の定義に戻らずに、明らかとしてそのギャップに気づかないようです.
結果合っていたとしても、推論の過程で間違っています.一般の位相空間では変な例が山ほどあるので、適当な推論(いつでも距離空間のようなイメージとか)ではキチンとした証明はできません.数学の証明では、数学の言葉として定義されたものだけを用いて議論しています.なので、自分なりのイメージだけで証明を進めることはできません.

このような証明のダメ出しはよくあることなので、論理的な思考ができるようになるチャンスだと思ってめげずにもう一度チャレンジして下さい.



数学ができるようになる唯一のコツは、

あきらめないこと

です.



数学の定義についてもう少し

[2]の間違いに気づかない人は、「じゃあどうしてですか?」と聞くと、「だってそうでしょう.」、「そういうものだから」といいます.

そういうものだからでは、論理思考はできません。


位相空間やその開集合であるというのは、全くの数学の定義です.つまり、開集合と呼べそうなもの(上記の3つの条件を満たすということ)を全て開集合と呼んでしまえ.つまり、そのようなものを位相空間というのだと決めてしまうわけです.(個人的な意見には左右されません.)

それが数学の定義というものです。
なんとなくこんな性質をもつものが位相空間というのだから....というのは数学の議論ではありません.ある空間が位相空間であるというのなら、定義に帰れば誰でもチェックできなければしょうがないのです.

「私にはそれが位相空間にみえる」と散々言ってみても意味がありません。


呑んだ勢いで、「あいつは天才だからさぁ」とくだを巻くような人は到底数学者にはなりそうにはありません.少なくとも数学科の学生であれば、まずやることは、天才の定義にかえることです.天才の定義がしっかりしていないところでそのような議論をすることは、ざるで水をつくっているようなものです.これこれの条件(基準)を満たす人を全て天才と呼ぶということに決めておけば、(たとえばノーベル賞をとった人を天才とするとかしておけば)、あとは、誰が天才かはその人がその条件を満足するかをチェックすればよいだけです.


たまに、しょうもない議論で人同士でもけんかになってしまうのは、それぞれの立場で言葉の定義が微妙に違うからでしょうか.


しょうもない議論をする前に、お互いの言葉の定義を確認し合ってはいかがでしょうか?お互い傷つくようなけんかより、あなたの定義とわたしの定義とどこが違うかを比べる方がより理性てきです.

自然と多くの定義が一致するような間柄は親友や恋愛に発展しやすいのかもしれませんね。

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