2015年10月31日土曜日

微積分II演習(第5回)

[場所1E103(金曜日5限)]
HPに行く.

第3回のレポートの結果は以下になります.
満点3
平均点1.93点、最高得点3点、最低得点1.5点

1.5点や2点の人が多いのですが、基本合格点は2.5点以上と考えています.

やはり $\lim_{(h,k)\to (0,0)}\frac{hk}{\sqrt{h^2+k^2}}=0$ と
理由なく書いている人がいました.ちゃんとした証明としてはこれでは不十分です.

その部分をもう一度今回の宿題に出しました.
$\frac{hk}{\sqrt{h^2+k^2}}$ の部分を絶対値をつけて、$(a,b)$ からの距離関数 $r$ の式($r$ が $0$ にいくとき、$0$ に行くような式)で上から押さえられることを示してください.

今日の $t^{2t^3}$ の微分を求める問題は教科書にあるので間違えた人は教科書で確認しておいてください.

平均点は4.23点です.最高得点は5点で、最低点は0点でした.


今日は、合成関数の微分法を用いた応用をやりました.

合成関数の微分法II

合成関数の微分法Iは先週やりましたが、それを2回使う形です.
式で書けば、関数 $f(x,y)$ に $x=\varphi(s,t)$, $y=\psi(s,t)$ を代入した関数を $F(s,t)=f(\varphi(s,t),\psi(s,t))$ とすると、

$$\begin{pmatrix}\frac{\partial F}{\partial s}&\frac{\partial F}{\partial t}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\frac{\partial f}{\partial x}&\frac{\partial f}{\partial y}\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}\frac{\partial \varphi}{\partial s}&\frac{\partial \varphi}{\partial t}\\\frac{\partial \psi}{\partial s}&\frac{\partial \psi}{\partial t}\end{pmatrix}$$

となります.証明は今日やりましたので省きます.

この式を使って、$\frac{\partial z}{\partial x}$ や $\frac{\partial f}{\partial y}$ などの式を、
$\frac{\partial z}{\partial s}$ や $\frac{\partial z}{\partial t}$ などの式に直す操作ができるようになるとよいと思います.

やり方は実際、今日やって見せた通りです.

接平面の方程式

全微分可能な関数は、関数のグラフの各点において接平面が存在することになります.その式は、関数を一次近似されたものとも一致します.

つまり、全微分可能であれば、$f(x,y)$ は、
$$f(x,y)=f(a,b)+f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)+o(\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2})$$
とかけて、$o(\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2})$ の部分は、一次式より早く $0$ に向かうので、
$(x,y)=(a,b)$ の付近では、主要な項ではありません.$(x,y)=(a,b)$ に近くなればなるほどその差が顕著になります.

つまり、$z=f(x,y)$ をその点で主要でない項を取り除いて近似すると、
$$z=f(a,b)+f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)$$
となります.近似された関数は一次関数ですから、これを関数の一次近似というわけです.

もし、関数はさらに微分可能(二回微分可能)であれば、二次の項まで近似できることになります.
特に、いくらでも微分可能であれば、どれだけでも精密な近似を作ることができます.


変数変換

変数変換の方法も今日教えました.
$x,y$ での偏微分の関数を $s,t$ での偏微分の関数に書きなおす操作です.

たとえば、$x=r\cos\theta$, $y=r\sin\theta$ などのような局所座標表示での変換とすると、

$$-y\frac{\partial z}{\partial x}+x\frac{\partial z}{\partial y}=\frac{\partial z^\ast}{\partial \theta}$$

などのような等式が成り立ちます.

$\frac{\partial }{\partial x}$ や $\frac{\partial }{\partial y}$ は関数を偏微分をするという操作ですが、${\mathbb R}^2$ 上の $x$ 軸に沿ったベクトルに沿った微分、$y$ 軸に沿ったベクトルに沿った微分という言い方もできます.

基底で表せば、
$$\frac{\partial }{\partial x}\mapsto (1,0)$$

$$\frac{\partial }{\partial y}\mapsto (0,1)$$
という対応関係があります.
それ以外の中途半端なベクトル $(a,b)$ に対しては何が対応するかというと、
$$a\frac{\partial }{\partial x}+b\frac{\partial }{\partial y}$$
という微分に対応します.

合成関数の微分法を使えば、
$$\frac{d}{dt}f(x+at,y+bt)|_{t=0}=f_x(x,y)\cdot a+f_y(x,y)\cdot b$$
となりますので、$(x,y)$ において、 $(a,b)$ 方向に沿った微分を表しているからです.

偏微分操作の一次結合ですが、結局これも方向が $(a,b)$ の偏微分を表すのです.方向微分という言い方もします.

上の偏微分は、微分する各点で方向が $(a,b)$ と一定ですが、各点 $(x,y)$ で $(-y,x)$ と方向を変えたもの
$$-y\frac{\partial}{\partial x}+x\frac{\partial }{\partial y}$$
は、 $(x,y)$ において、$(-y,x)$ 方向の偏微分を表しています.ベクトル $(-y,x)$ はベクトル $(x,y)$ と直交しており、さらに、$(-y,x)$ は $(x,y)$ を90度左に回転してできるベクトルです.
そのようなベクトルを始点を $(x,y)$ に持っていけば、原点を中心とした同心円に沿ったベクトルになっています.

つまり、ちょうど

のような形になります.$-y\frac{\partial}{\partial x}+x\frac{\partial }{\partial y}$ のような方向微分は同心円の接方向に沿って関数を微分するということなのです.つまり、この方向微分は、平面の極座標表示をしておいて、$\theta$ の方向に微分をすること、つまり、$\frac{\partial}{\partial \theta}$ とまさに同じなのです.

上の図のように、各点において方向が指定されているもののことを、ベクトル場といいます.
場とは、その点での状態を表し、今はそれがベクトルとしての状態を表しているのです.

また、最後にやろうとしていた問題のベクトル場は、

となります.式で書けば、
$$x\frac{\partial}{\partial x}-y\frac{\partial }{\partial y}$$
となります.この式を極座標表示するとどのようになるか.

微分作用素の間の基底の変換行列

線形代数IIとの関係でいえば、$\frac{\partial }{\partial x},\frac{\partial }{\partial x}$ を基底とする実ベクトル空間において、
$\frac{\partial}{\partial r}, \frac{\partial }{\partial \theta}$ を新しい基底とする変換行列がまさに上の合成関数の微分の式からくるもの

$$\begin{pmatrix}\frac{\partial }{\partial s}&\frac{\partial }{\partial t}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\frac{\partial }{\partial x}&\frac{\partial }{\partial y}\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}\frac{\partial \varphi}{\partial s}&\frac{\partial \varphi}{\partial t}\\\frac{\partial \psi}{\partial s}&\frac{\partial \psi}{\partial t}\end{pmatrix}$$

となるのです.

2015年10月29日木曜日

線形代数II演習(第4回)

[場所1E103(水曜日4限)]

HPに行く.

今日は、ベクトル空間の幾つかのベクトルから一次独立なベクトルを選び出す方法を学びました.また、成り立つ一次関係を導き出す方法も学びました.

まず、次のことを説明します.

幾つかのベクトルの基底に関する行列表示

ベクトル空間 $V$ と $\{{\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n\}$ をその基底とします.
ベクトルの表示として中かっこを使っていますが、ここでは集合の要素の意味だけでなく、その並び方も考慮しています.

このとき、いくつかのベクトルを $\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\}$ をとったときに、
これらをこの基底を使って

$$({\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)A$$

のようにかける行列 $A$ を幾つかのベクトルの基底に関する行列表示ということにします.
この用語は私が勝手に去年あたりから使っているものです.

この行列の $i$ 番目の縦ベクトルは、${\bf x}_i$ の数値化(数ベクトル化)を意味しています.

${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m$ として基底をとったときに、この行列表示は、
基底の変換行列といわれるものと同じものになります.

このように、ベクトル空間の元に行列を書ける場合、もしくはベクトルの係数として行列を使って書く場合は、行列は右からかけるのが一般的です.

ベクトルをたてに並べるようなことは、ここではあまり出てきません.


そして、以下に行きます.

一次独立なベクトルを最大数とること

ベクトル空間 $\langle {\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m\rangle$ における基底を探したいとします.
一般にこのようないくいくつかのベクトルで張られる(生成される)ベクトル空間はそれらが基底でない場合があります.ベクトル空間を作るだけなので、そのベクトル同士に一次関係が存在するかもしれません.もし零ベクトルがあればすぐに排除できますね.

 $\{ {\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m\}$
から一次独立なベクトルを最大数とることを考えます.

まず、上に書いたように、基底を使って

$$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)A$$
のように行列表示させておきます.
そうすると、これらのベクトルの行列表示が $A$ となり、べクトル ${\bf x}_i$ に対応するのが $A$ の第 $i$ 番目たてベクトル ${\bf a}_i$ です.

このように対応させたベクトル同士
$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$
は単なる対応だけではなくて、一次関係においても対応しています.
つまり、式で書けば、

$$c_1{\bf x}_1+c_2{\bf x}_2+\cdots+c_m{\bf x}_m$$
$$\Leftrightarrow c_1{\bf a}_1+c_2{\bf a}_2+\cdots+c_m{\bf a}_m$$
という同値性が成り立つのです.
なので、$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$ で成り立つ一次関係は
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$ でも成り立つし、その逆も成り立ちます.

なので、$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$ で一次関係が存在しなければ
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$ でも存在しない.

一次関係が存在しないとは、一次独立であるということと同じです.

この同値性はどうしてかというと(これは授業ではやらなかったような気がしますね)、

$$c_1{\bf x}_1+c_2{\bf x}_2+\cdots,+c_m{\bf x}_m=0$$
$$\Leftrightarrow ({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots{\bf x}_m)\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$$
$$\Leftrightarrow ({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$$
ですが、${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ が基底(一次独立性)であるので、
$$\Leftrightarrow A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$$
となるためです.(この最後の証明は自分で考えてください.どこかで演習でも出します。)

よって、
$({\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_m)$ から一次独立なベクトルを探すことは
$({\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m)$ から一次独立なべクトルを探すことと同値です.

行列のたてベクトルから一次独立なベクトルを探すことは簡単です.
簡約化を使えばよいからです.

基本変形により
$$A\to A_1\to \cdots\to B$$
と簡約行列 $B$ が得られたときに、$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$ なる関係式は、
$B\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_m\end{pmatrix}=0$ なる関係式と全く同値です.

これはどこかで演習問題を解いている人がいましたね.
基本変形が正則行列の左からの掛け算に対応しているからです.

よって、$A$ を簡約化した行列 $B$ に対して、一次独立なベクトルを探せばよいわけですが、

$B$ は簡約化されているので、一次独立なベクトルを探すことは容易です.
たとえば、$B$ が
$$B=\begin{pmatrix}1&0&0&-1&0&-2\\0&1&0&1&0&0\\0&0&1&-2&0&1\\0&0&0&0&1&-4\end{pmatrix}=({\bf  b}_1{\bf b}_2,\cdots,{\bf b}_6)$$
のように簡約階段行列になったとすると、一次独立なベクトルは、${\bf b}_1,{\bf b}_2,{\bf b}_3,{\bf b}_5$ となります.

また、簡約化は、一次関係もあぶりだしています.
つまり、${\bf b}_4, {\bf b}_6$ は他のベクトルのの一次関係でかくことができて、
$${\bf b}_4=-{\bf b}_1+{\bf b}_2-2{\bf b}_3$$
$${\bf b}_6=-2{\bf b}_1+{\bf b}_3-4{\bf b}_5$$
となるのです.
このような一次独立性、一次関係性はもとの行列 $A$ のたてベクトル、さらには、元のベクトルの集まり ${\bf x}_1,\cdots{\bf x}_m$ に引き継がれます.


一次独立なベクトルをどのようにして選んでいるのか

注意として、いくつかのベクトルの中から一次独立なベクトルを選びましたが、これは、最初のベクトル ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m$ を並び替えてから行うと、選ぶ一次独立なベクトルは違うものになることがあります.

一次独立なベクトルを選ぶとき、絶対的に一次独立なものが選べるわけではないからです.

もっといえば、いくつかのベクトル ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m$ を並べたときに、そこからどのようなベクトルを一次独立なベクトルとして選んでいるかというと、次のようにしているのです.

${\bf x}_1$ が非ゼロベクトルまずそれを選ぶ.ゼロベクトルであれば選ばない、
${\bf x}_2$ が ${\bf x}_1$ と平行と同値であれば選ばない、平行でなければ(${\bf x}_1$ のスカラー倍でなければ)選ぶ、
${\bf x}_3$ が ${\bf x}_1,{\bf x}_2$ の一次結合で書けていなければ選ぶ、そうでなければえらばない.
.....

このようなアルゴリズムを繰り返して、${\bf x}_1,\cdots, {\bf x}_m$ の中から一次独立なベクトルを取っているのです.
よって、とられた一次独立なベクトルは、そのベクトルの集まりから取れる最大数であることは分かると思います(この辺もそのうち演習で取り上げたいと思います).

よって、これによって分かることは実は、

行列 $A$ を簡約化して得られる行列 $B$ は簡約化の方法によらず一意である.

ということです.

2015年10月27日火曜日

トポロジー入門演習(第4回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今日は、近傍系や、開基のあたりのプリントを配りました.
講義の方もその辺りの授業ではないかと思います.

少し体調が良くなかったせいもあり、プリントにいくつか不備がありました.
すいません.上のリンクでは直してあります.問題番号が気持ち悪い人は上のプリントを印刷してください.


近傍系とは

近傍とは、森田先生の教科書では、P43定義9.1に、
${\mathcal U}(x)$ は $x$ の近傍の集まりで、以下を満たすものとして
定義されています.

1. 任意の $U\in {\mathcal U}(x)$ は $x\in U$ を満たす.
2. $U,V\in {\mathcal U}(x)$ ならば、ある $U_3\in {\mathcal U}(x)$ が存在して、$U_3\subset U_1\cap U_2$ となる.
3 $U\in {\mathcal U}(x)$ に対して、任意の $y\in U$ となるとき、$V\subset U$ なる $V\in {\mathcal U}(y)$ が存在する

この定義では、近傍の中に開近傍のようなものしか入らないことになります.

教科書に書かれているように、$x$ の近傍とは、$x$ を含むある開集合を含んでいる集合(つまり、$x$ が内点となるような集合のこと)ということもあると書いてあります.
つまり、閉近傍も近傍として含めることもあるということです.
一般的には、このような定義の方が多いような気がします.

近傍の集まりのことを近傍系といいます.

近傍基(基本近傍系)とは

近傍系の部分集合なのですが、その中に、いくらでも小さい近傍が含まれているというものです.近傍全体を持ってこなくても近傍を特徴づけられるということです.

ちゃんと定義を述べると、

${\mathcal U}(x)$ が $x$ の近傍系であるとする.${\mathcal V}(x)$ が近傍基であるとは、
任意の近傍 $U\in {\mathcal U}(x)$ に対して、
$V\in {\mathcal V}(x)$ が存在して、$V\subset U$ となる.

開基とは

開集合全体がその位相空間を特徴づけていますが、その開集合全体を持ってこなくても、開集合全体を特徴づけられます.それが開基です.ベクトル空間は基底があればすべてのベクトルをかき下せるようなものです.英語でも (open) base を使います.

$\beta$ が $(X,{\mathcal O})$ の開基であるとは、$\beta$ は ${\mathcal O}$ の部分集合であり、任意の $U\in {\mathcal O}$ に対して、$\beta$ のいくつかの集合 $\{B_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ が存在して、
$$U=\cup_{\lambda\in \Lambda}B_\lambda$$
として表されることです.

例えば、${\mathbb R}$ の通常の位相のとき、${\mathcal O}$ には、すべての開集合が入っていますが、開基として、$\beta=\{(a,b)|a,b\in {\mathbb R}\}$ ととることができます.また、この $a,b$ として有理数のみ用いたものも開基とすることができます.さらに小さい開基というわけです.

準開基とは

任意の開基の元を幾つかの開集合の共通部分としてかくものです.
つまり、${\mathcal W}$ が位相空間 $(X,{\mathcal O})$ の準開基とは、それらのいくつかの共通部分を使って、${\mathcal O}$ のすべての開基の元を作っているものです.このようにすると、基本となる開集合の族がさらに小さくできます.
上の ${\mathbb R}$ の例では、${\mathcal W}=\{(a,\infty)|a\in {\mathbb R}\}\cup \{(-\infty,b)|b\in {\mathbb R}\}$ とすることができます.
${\mathcal W}\subset {\mathcal V}$ ですが、${\mathcal W}$ は通常の ${\mathbb R}$ の準開基となりますが、開基とはなりません.

2015年10月24日土曜日

微積分II演習(第4回)

[場所1E103(金曜日5限)]



HPに行く.

第2回のレポートの成績について
満点4
平均点2.45 最高得点3.5 最低得点 1

でした.

今日の小テスト(偏微分の計算)は
平均点4.19点(5点満点)最高点5点、最低点0点
よくできていました。
ほとんどの人が満点ですが、若干ですが、0点、1点の人がいます.

合成関数の微分法

きょうは、合成関数の微分法をやりました。
関数 $f(x,y)$ に、2つの関数 $x=x(t)$ と $y=y(t)$ を代入したときに、できる関数 $F(t)=f(x(t),y(t))$ を $t$-微分するときに使う公式です.

$$\frac{dF}{dt}=\frac{\partial f}{\partial x}\frac{dx}{dt}+\frac{\partial f}{\partial y}\frac{dy}{dt}$$
となります.
この公式を用いた演習は授業時間中にやったので、ここでは省略します.
ひとつ注意すべき点がありました.

$z=f(x,y)$ という関数において、

$$\frac{\partial f}{\partial x}(x^2,xy)$$
と、
$$\frac{\partial}{\partial x}f(x^2,xy)$$
は意味が違います.

前者は、$z=f(x,y)$ を $x$ に沿って偏微分してから $x$ に $x^2$ を代入し、 $y$ に $xy$ を代入するということですが、
後者は、$z=f(x,y)$ に $x$ に $x^2$ を、$y$ に $xy$ を代入しててできる関数 $f(x^2,xy)$ を改めて$x,y$ の関数と思ったときにできる関数を $x$ に沿って偏微分しています.

例で言えば、

$f(x,y)=e^x+e^y$ とすると、
前者は、$\frac{\partial f}{\partial x}=e^x$ であり、
 $\frac{\partial f}{\partial x}(x^2,xy)=e^{x^2}$ となります。
後者は、$f(x^2,xy)=e^{x^2}+e^{xy}$ であり、
$\frac{\partial}{\partial x}f(x^2,xy)=\frac{\partial}{\partial x}(e^{x^2}+y^{xy})=2xe^{x^2}+ye^{xy}$ となります.


連続性に関して

また、連続性を示す問題ですが、
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}f(x,y)$ を計算が難しいですね.

原点に収束するあらゆる点列を取ること

今日はレポートを提出する前に半ば点列 $(x_n,y_n)$ をとることを強制しましたが、
しかし、点列を取るとか、どうして出てきたの?とか分からないと思いますよね.
近づき方のバリエーションの全てをこの書き方で行っているのです.
たとえば、近づき方を連続的な曲線として、$(x(t),y(t))$ としてみてもよいです.
ただ、近づく方法が連続でないといけないのか?これもよくわかりません.
なので、自然数でパラメータ付けた $(x_n,y_n)$ によってあらわしたのです.

(実際、点列を取って連続であることと、普通の $\epsilon-\delta$ を用いた連続性の同値性は自明ではありません.)

いろいろと考えた結果、

以下、点列を取らなくても、以下のような解答でもよいと思います.

$x=r\cos\theta,y=r\sin\theta$ とかく.
$f(x,y)=f(r\cos\theta,r\sin\theta)$ とする.
このとき、
$|f(x,y)-\alpha|\le A(r)$
となる $r$ のみによる関数 $A(r)$ が存在して、$A(r)\to 0$  ($r\to 0$) となる
とする.

このとき、$(x,y)\to (0,0)$ となるどのような近づけ方によっても、
$r\to 0$ である.

よって、どのような $(x,y)\to (0,0)$ の近づけ方によっても
$|f(x,y)-\alpha|\le A(r)\to 0$
となるので、$f(x,y)\to \alpha$ がいえる.

このような解答だとすっきりしますね。
つまり、上から挟むための $r$ の関数 $A(r)$ ($\theta$ に依存しない)を
見つけよということになります.

もちろん $-B(r)\le F(r,\theta)-\alpha\le A(r)$
となる $0\le A(r),B(r)\to 0$ となる関数を見つけてもよいです.

ただ、絶対値を取ってはさむ事と、あらゆる近づけ方をするという点は変わらずです.

2015年10月22日木曜日

微積分II演習第2回のレポートについて

レポートを採点していますが、

連続であることを示す方法がわかっていないようです.

ほとんどの人が証明をかけていません.
今回の宿題にも関わりますので少し書き方を書いておきます.


2-1の問題でやりましょう.

宿題2-1
まず、特定の近づき方のみで連続であることを述べているのは論外です.

たとえば、$x$ を $0$ にしてから $y$ を $0$ にするという近づき方で
原点に近づくときと、
$y$ を $0$ に近づいてから $x$ を $0$ に近づくときに一致するからといって
連続であるとは限りません.

2-1の問題の証明

$f(x,y)=\frac{xy\sin(xy)+(x^2+y^2)\cos(x^2+y^2)}{x^2+y^2}$
が1に近づくことを証明します.
何を証明すれば良いかというと、任意の $(0,0)$ に近づく点列 $(x_n,y_n)$ を
とったときに、

$|f(x_n,y_n)-1|$ の値が $n$ を十分大きくしたときに限りなく $0$ に近くなることを言えばよいです.

また、2項ありますので、それぞれ収束することを示すことで、極限の和の公式を使うこともできます.

$$\lim_{n\to \infty }(a_n+b_n)=\lim_{n\to \infty}a_n+\lim_{n\to \infty}b_n$$
です.
このとき、この和公式が成り立つには、それぞれが収束していないといけません.


ここで、$(0,0)$ に近づく任意の点列を取ります.
それを、$(x_n,y_n)=(r_n\cos\theta_n,r_n\sin\theta_n)$ とします.
そのとき、

今、第一項は、
$|\frac{r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n\sin(r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n)}{r_n^2}|=|\cos\theta_n\sin\theta_n\sin(r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n)|$
$\le| \sin(r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n)|$   (*)

ここで、$z_n=r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n$ とおくと、
$n\to \infty $ により、$z_n\to 0$ になります.
証明すると、
$|z_n|\le r_n^2\to 0$ となるので、$z_n\to 0$ となります.

$\sin $が連続関数であることを使えば、

$\sin(z_n)\to 0$
がいえます.

よって、$|\frac{r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n\sin(r_n^2\cos\theta_n\sin\theta_n)}{r_n^2}|\to 0$
がいえる.今、任意の点列をとって収束が示されたので、
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{xy\sin(xy)}{x^2+y^2}\to 0$ が示された.

また、第2項目は、
$\frac{(x^2+y^2)\cos(x^2+y^2)}{x^2+y^2}=\cos(x^2+y^2)$ であり、
$\cos(x^2+y^2)$ は原点で連続です.

$\cos$ 関数も $x^2+y^2$ 関数も連続なので、その合成関数も連続
よって、極限も存在し、

$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\cos(x^2+y^2)=1$ となる.
よって上の和公式により、$\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{xy\sin(xy)+(x^2+y^2)\sin(x^2+y^2)}{x^2+y^2}=1$
となる.

よって連続の流れとしては、
任意の点列をとる.
$(x_n,y_n)=(r_n\cos\theta_n,r_n\sin\theta_n)$ とする.
関数 $|f(x_n,y_n)-a|$ がいくらでも小さい(0に近い)数列 $A_n$ で抑えられることを示す.

つまり、$|f(x_n,y_n)-a|\le A_n$
たとえば、$A_n=r_n$ や、 $3r_n^2$ などなど.
よって、$f(x_n,y_n)\to a$ がいえる.
任意の点列をとっていたので、
$\lim_{(x,y)\to (0,0)}f(x,y)\to a$ がいえる.
です.
今回の宿題にも連続性を示す箇所があるのでこのページを参考に証明を考えて下さい.

さらに、例題を追加します.


別の例題
$f(x,y)=\frac{3x^2y+y^3}{x^2+y^2}$
が原点でも連続であることの証明。

原点以外での連続性は、連続関数の和、積、商、合成ですので連続です.
原点での連続性を示します.

$(0,0)$ に収束する点列 $(x_n,y_n)=(r_n\cos\theta_n,r_n\sin\theta_n)$ とします.
この点列は、原点に収束しますので、$r_n\to 0$ です.
このとき、
$$|f(x_n,y_n)|=|\frac{3r_n^3(\cos^2\theta_n\sin\theta_n+\sin^3\theta_n)}{r^2_n}|$$
$$\le r_n|3\cos^3\theta_n\sin\theta+\sin^3\theta_n|$$
(ここでのポイントは絶対値をとることです。
絶対値を取らないと、たとえ右辺が $0$ に収束するとしても、$f(x_n,y_n)$ の値が負の数に向かっているというだけで、収束するともそうでないとも言っていません.

ですので、絶対値は必ずです.)

続けます.三角不等式を使うと、

$$\le r_n|3\cos^3\theta_n\sin\theta+\sin^3\theta_n|\le r_n(3|\cos^2\theta_n\sin\theta|+|\sin^3\theta_n|)\le 4r_n$$
となります.
(ここでのポイントは、右辺を何でもよいから、収束する数列で抑えることです.その際、余分な$\theta_n$ などの収束に無関係なものが排除できるとよいです.)

よって、$r_n\to 0$ ですので、
$|f(x_n,y_n)|\to 0$ がいえます.このことから、$\lim_{n\to \infty}f(x_n,y_n)=0$
がいえます。

よって、任意の $0$ に収束する点列 $(x_n,y_n)$ に対して $f(x_n,y_n)$ が収束するので、$f(x,y)$ の $(0,0)$ への極限が存在して、
$$\lim_{(x,y)\to (0,0)}f(x,y)=0$$
となります。

線形代数II演習(第3回)

[場所1E103(水曜日4限)]

HPに行く.

今日はベクトル空間に入りました.やったことは、

  • ベクトル空間であることの示し方.
  • 部分ベクトル空間であることの示し方.
  • 基底であることの示し方.
です.
そして、最後の方にベクトル空間を扱う上で重要なことを述べました.
また、後期になってから、とたんにわからなくなったという人が結構いることがわかりました.抽象的な問題が多いことと、証明問題が多くなったことでしょうか.


ベクトル空間であること

ベクトル空間であることや部分ベクトル空間であることの示し方は
別のページ(←のリンク)にも書いています.再びここでも書きます.

ベクトル空間であることを示す方法をあげておくと、
ベクトル空間の定義に戻って、教科書の8個の条件を示すこと、
もしくは、
ベクトル空間であることが既に分かっている空間の部分ベクトル空間であることを示すこと.

です.
2次以下の多項式全体の集合 ${\mathbb C}[x]_2$ がベクトル空間であることを示すとします.
やることは、${\mathbb C}[x]_2$ のベクトルの和の定義とスカラー倍の定義だけを用いて
VS1 から VS8 までの式が成り立つか示すのです.

$f,g,h\in {\mathbb C}[x]_2$ とし、$\alpha,\beta,\gamma\in {\mathbb C}$ とします.
$f=a_0+a_1x+a_2x^2, g=b_0+b_1x+b_2x^2, h=c_0+c_1x+c_2x^2$
とします.

使って良いのは、
$f+g=a_0+a_1x+a_2x^2+b_0+b_1x+b_2x^2=(a_0+b_0)+(a_1+b_1)x+(a_2+b_2)x^2$

$\alpha\cdot f=(\alpha a_0)+(\alpha a_1)x+(\alpha a_2)x^2$
の変形のみです.
もちろんイコールですから、逆の変形も許されています.

VS1 $(f+g)+h=f+(g+h)$ であることを示します.
$\begin{eqnarray*}(f+g)+h&=&((a_0+b_0)+(a_1+b_1)x+(a_2+b_2)x^2)+c_0+c_1x+c_2x^2\\&=&((a_0+b_0)+c_0)+((a_1+b_1)+c_1))x+((a_2+b_2)+c_2)x^2\\&=&(a_0+(b_0+c_0))+(a_1+(b_1+c_1))x+(a_2+(b_2+c_2))x^2\\&=&(a_0+a_1x+a_2x^2)+((b_0+c_0)+(b_1+c_1)x+(b_2+c_2)x^2)\\&=&a_0+a_1x+a_2x^2+(b_0+b_1x+b_2x^2+c_0+c_1x+c_2x^2)\\&=&f+(g+h)\end{eqnarray*}$

のようになります.ここでは、上の和の演算とスカラー倍の演算しか使っていないことに注意して下さい.さらに、VS2, VS3, VS4,  ... も同じように示してください.それがレポート問題です.レポートを解く際には、同じようにとサボることは許されませんので注意して下さい.

部分ベクトル空間であること

また、部分ベクトル空間であるということを示す方法でも、ある集合がベクトル空間であることを示す方法もあります.問題 C-3-1はあるベクトル空間の部分ベクトル空間になっているということも注目すべきことです.まず、大きい方の空間がベクトル空間であることを示してから、小さい方の空間が部分ベクトル空間であることを示せばよいことになります.

C-3-1の場合は、3次以下の多項式全体がベクトル空間であることを示す必要があります.それは示してください.

その前提のもとで、部分ベクトル空間であるということを示すのは簡単です.
2つしか条件がありません.

$W\subset V$ がスカラー ${\mathbb K}$ のもと、$V$ の部分ベクトル空間であることは

任意の ${\bf v}_1,{\bf v}_2\in W$ に対して、${\bf v}_1+{\bf v}_2\in W$ .
任意の ${\bf v}\in W$ と$\alpha\in {\mathbb K}$ に対して、$\alpha{\bf v}\in W$.

を示せばよいです.


基底であること

幾つかのベクトル ${\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n$ が $V$ の基底であるとは、以下の条件を満たすものです.

  • ${\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n$ が一次独立であること.
  • 任意の ${\bf v}\in V$ に対して、${\bf v}=c_1{\bf v}_1+\cdots +c_n{\bf v}_n$ となる $c_i\in {\mathbb K}$ が存在すること.
一次独立性も、同じように、
$c_1{\bf v}_1+\cdots+c_n{\bf v}_n=0$ ならば、全ての $i$ に対して $c_i=0$ が成り立つ.

です.先週数ベクトル空間の場合に教えたものと条件は同じですね.



ここで質問が出たところをもう一度書いておきます.
数ベクトル空間においての命題です.

定理
数ベクトル空間 ${\mathbb C}^n$ において数ベクトル(縦ベクトルとする)を
${\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n$ とする.
このとき、${\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n$  が基底になっていることと、
$A=({\bf a}_1\cdots {\bf a}_n)$ が正則であることとは同値.
この $A$ は、縦ベクトルを並べてできる正方行列のことです.
前期の復習を兼ねて、この定理について考えていきます.
この定理は結構重要です.


基底であることの1つ目を一次独立性、
2つ目のを一次結合性と呼ぶことにします.

(一次独立性)
$c_1{\bf a}_1+\cdots+c_n{\bf a}_2=({\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n)\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_n\end{pmatrix}={\bf 0}$

とすると、一次独立性とは、

$A{\bf x}=0$ となる方程式の解が ${\bf x}={\bf 0}$  のみであるかどうかということです.
それは$A$ が正則であることが必要十分です.(*)


ここで、$A$ は ${\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n$ を並べた行列とします.

(*)で書いたことを証明してみます.
もし、$A$ が正則であるとすると、その逆行列をかけることで、$A{\bf x}=0$ の解は
${\bf x}=0$ のみです.

逆に、$A{\bf x}=0$ の解が  ${\bf x}=0$ のみであるとする.
ここで、$A$ が正則でないとすると、$A$ を基本変形で簡約化して、$B$ となる行列が
得られたとします.行列が正則でないので、行列のランクが $n$ より小さくなります.
なので、$B$ の第 $n$ 行目は全て $0$ であることに注目して下さい.


つまり、$B=({\bf b}_1\cdots{\bf b}_n)$ の 第 $n$ 列目 ${\bf b}_n$ は 先頭列ではないことになります.先頭列の定義は教科書をみよ.

先頭列ではないベクトルは先頭列のベクトルの一次結合でかけますから、
${\bf b}_n=c_1{\bf b}_1+\cdots+c_{n-1}{\bf b}_{n-1}$
となります.
つまり、$B\begin{pmatrix}c_1\\\vdots\\c_{n-1}\\-1\end{pmatrix}=0$
となります.この式は、同じベクトルを用いて、
$A\begin{pmatrix}c_1\\\vdots\\c_{n-1}\\-1\end{pmatrix}=0$
となります.つまり、$A{\bf x}=0$ ならば ${\bf x}=0$ となるという仮定が成り立たないですので、矛盾です.
よって、$A$ は正則ということになります.


基本変形や簡約化をしてもベクトルの条件は変わらない.つまり、
$$A{\bf x}=0\Leftrightarrow B{\bf x}=0$$
が成り立つ.ということは先週の発表で誰か証明していましたね.
証明は当たり前だけど、重要なことだと強調しました.

つまり、基本変形や簡約化は方程式の同値変形です.

(一次結合性)
次に一次結合性についていきます.$A$ を正方行列とします.

任意の ${\bf v}\in {\mathbb C}^n$ に対して、ある ${\bf x}\in {\mathbb C}^n$ が存在して、
$${\bf v}=A{\bf x}$$
であることは、$A$ が正則であることと同値である.

を証明します.
もし $A$ が正則であるとすると、$A$ の逆行列を使って、${\bf x}=A^{-1}{\bf v}$ となるので、解となる ${\bf x}$ がつくれます.

逆に、任意の ${\bf v}$ に対して、${\bf v}=A{\bf x}$ となるベクトル ${\bf x}$ が存在したとします.
$A$ が正則でないとします.そうすると、$A$ を簡約化して、$B$ という行列が得られたとします.
そうすると、任意の ${\bf v}$ に対して、$B{\bf x}=PA{\bf x}=P{\bf v}={\bf w}$ となる ${\bf x}$
が存在することになります.しかし、$B$ は正則ではない階段行列ですので、やはり、第 $n$ 行は全て $0$ です.
今、${\bf w}$ の第 $n$ 成分 $w_n$ が $0$ でないものを選びます.そうすると、${\bf v}=P^{-1}{\bf w}$ を ${\bf v}$ として、${\bf v}=A{\bf x}$ となる方程式を解こうとすると、$B{\bf x}={\bf w}$ を解くことと同じになって、この第 $n$ 成分目の式は、$0=w_n\neq 0$ となり、仮定に反します.

よって、$A$ が正則でないとすると、任意の ${\bf v}$ に対して、$A{\bf x}={\bf v}$ に解が存在しいことになります.

よって、 $A$ は正則でないといけないということになるのです.



以上より、数ベクトル空間 ${\mathbb C}^n$ の場合に、ある $n$ 個のベクトルが基底となることは、その$n$ 個のベクトルを並べてできる行列が正則であることと同値になるのです.
$n$ 個のベクトルを取ると、一次独立性と一次結合性は同じ条件になることも分かりました.


なので、数ベクトル空間 ${\bf C}^n$ の中の $n$ 個のベクトルが基底であるかどうかは、それから作られる行列の正則性を言えばよいことになります.つまり行列式が非ゼロということですね.

問題C-3-2 について
書かれた3つのベクトル ${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_3$ が基底であることを確かめてください.

$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+c_3{\bf v}_3=0$ という式は、ある行列 $A$ が出てきて、$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=0$ となりますね(←実際この$A$を計算で導いて下さい.)

また、
$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+c_3{\bf v}_3={\bf x}$ という式は、同じ行列を用いて、
$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}b_0\\b_1\\b_2\end{pmatrix}$ となります.(←同じ $A$ になることを計算で導いて下さい.)
ここで、$b_0,b_1,b_2$ は、${\bf x}=b_0+b_1x+b_2x^2$ となるはずです.示して下さい.

そうすると、${\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3$ が基底であるかどうかは、行列 $A$ の
縦ベクトル ${\bf a}_1,{\bf a}_2,{\bf a}_3$ が基底であるかどうかということになります.
(←これもちゃんと説明して下さい.上に書かれた定理を使っても構いません)

従って、それは、上で書いたことから、$A$ が正則であることと同値です.

以上がC-3-2の解き方の説明です.

レポートでは証明は省略せずに、上のことを全て説明する気になって書いて下さい.

2015年10月21日水曜日

数学の定義と恋愛の関係について

 数学の定義の、恋愛や人間関係における用法について書いてみたいと思います.

 以下、恋愛に全て一本化していますが、単なる人との関係についても、以下の恋愛を全て人間関係に置き換えれば、同じことが成り立ちます.


数学科の学生のための恋愛対策(前置き)

 数学の学生は恋愛には縁がないようなことは、今も昔も変わらないかと思いますが、
そのようなことはさておき、数学の学生の一番の武器は自分の頭脳ではないでしょうか?

 では、どのような戦略で望むのが数学科の学生らしいのか?

 以下、日々数学を使って自らの頭脳を鍛えている人に向けて、どのような対策であれば、数学の学生でも恋愛が可能なのかについて考えることで、縁がないどころか、恋愛は実は全く、数学向きのアクティビティであるとする他ないような結論に至ります.


一般に、なぜ恋愛でうまくいかないのか?

 いくら好きで告白しても成功しないということはよくあることだとは思いますが、
なぜなのでしょうか?


魅力がないから?力に自信がないから?
化粧が濃いせい?目が二重でないから?


 こんな議論は、果てしない昔から、それこそ今もどこかで、恋愛相談として展開している人がいるかもしれません.(いや、いるでしょう.)

人それぞれ、もてるためには努力を怠らないとは思うのですが、努力だけではどうしようもないところもあります.それに、好き嫌いは所詮日々変わってくるものです.
好き嫌いのような表層的なところで議論(および恋愛)していても何も本質はわかりません.それは恋愛ではないかもしれません.恋愛が何かは余り述べないことにします.

しかし、自然とうまくいく為の科学がそこにはあるのです.宗教ではありませんので、これは布教活動でもありません.

ちょっと話がそれたので修正します.ここで、少し数学の話をします.


数学における定義とは

 ところで、数学には必ず定義があります.どうしてかというと、数学もサイエンスの一種でありますから、数学の何かを使って議論をするものなのです.なぜ議論するかというと、数学にも、恋愛にも負けないくらい分からないことがたくさんあり、数学者はそれが分かりたいからです.そして、何かを議論するためには、基本的な事柄に対して共通認識、(直線はこういうもの、整数とは、演算とは、などなど)がなければなりません.言葉なければ、話ができないように、定義がなければ、数学者同士であっても数学の話はできません.


 たとえば、円の定義は、

距離が定義された平面があるとする.その平面上の一点から等距離 $c>0$ にある点の集合

として定義されます.
もちろん、円の定義の前に、距離、平面の定義がいります.

(数学をやるのはかなりめんどくさい作業なのです.....)

 このように円の定義を決めておけば、ある集合が円かどうかは、円いとか感覚にとらわれず、この定義を満たしているかどうかが問題の焦点になります.簡単な例であれば、単なる確認くらいで済みます.

 逆に、定義を決めておけば、ある集合が円でないということもまた分かることもあります(それが難しいかどうかはおいておいて).
定義を決めてしまえば、それ以外を排除することも容易ということです.

 難しい例であれば、ある性質をもつかどうかをチェックするだけで数学の論文が一つ書けてしまうようなものもあります.

また、円かどうか現段階では判断できないと言うこともあります.たとえば、用意された集合に距離が定義されていないような状況とすると、そのような集合が円かどうか判定できないわけです、むしろ、その集合が円となるように距離を定義できるか?という別の問題とすることもできるようになります.


 また、数学の学習の過程でわからなくなったら、このようによく分かっている定義に戻るのが早道です.定義にはこのような便利な側面もあります.

なので、数学における定義の役割は数学の学習や、まだ見ぬ数学のための道しるべといったらよいかと思います.




人との相性と共感覚について

 人と仲良しになれるかどうかは、あらゆるものに対する感じ方が共通しているかどうかです.ものに対して感覚が全く違う人と仲良くなれる気がしません.つまり、その人同士の感覚が共通している(共感覚というか)ことが大事です.感覚が共通するとはどういうことか.数学で言えば、お互いのもつ定義が同じ(もしくは少なくとも似ている)ということができます.

たとえば、その人がもつ、ネコの定義.その人がもつ毛虫の定義....(もちろんこれらは単なる例です)
そのような定義の積み重ねがその人を作り上げているといえます.

 ということは、人と相性がよいかどうかは、そうした定義が大部分で一致しているかどうかなのです.大抵の場合、共通認識の違いが諍いやストレスを生んでいます.

 生化学の分野でしたらここでDNAを比べてみれば?とするところかもしれませんが、数学科としては、そのような手法ではなく、論理思考のみを用いた、人間的かつ極アナログ的な恋愛対策を以下にあげます.

 人間(および人との相性)は、DNAだけでは決まらない、外部要因(教育や環境など)も影響していると考えられます.


数学科らしい、定義を用いた恋愛成功法?

以上のことから、難しいことはさておき、

恋愛で成功するには、仲良しになりたい人との、互いの持つの定義の確認をすることです.
確認するには、数学演習の発表と同じ要領で、言葉で明示してみればわかります.


最初のレベルでは、多くの共通認識を得そうな

「あなたにとって、ネコ(の定義)はなんですか?」

「あなたにとって、キュウリ(の定義)はなんですか?」

「あなたにおける、ネギ(の定義)はなんですか?」
.....

と10ほど質問を投げかけることから始めるとよいでしょう.(上の例はあくまで一例にすぎません.ネコとキュウリとネギが大事ではありません).そして、自分のもつ定義と一致しているかどうかの確認をします.最初にどのようなものの定義を聞けばよいかということはその人のセンスでしょうか.そこはランダムに聞くのがよいのかもしれません.


 もし、一致しているとすると、その定義を用いてさらに話を進め、高度な話の展開を始めます.
さらに、もう少し高度なものの定義を聞いてみるとよいかもしれません.


「あなたにおける、休日(の定義)はなんですか?」

「あなたにおける、音楽(の定義)はなんですか?」

....


 それが一致しているとすると、それらを用いてさらに次の段階の話に.

 もし、どこかのレベルで、決定的に定義が違っていれば、そのような考え方もありますか、と向学のための肥やしとするとよいでしょう.さらに話をするかどうかはその人次第ということになります.

 もし、この話がどこまでも続くのなら、お互いの話は尽きず、大恋愛に発展する可能性があります.もし大恋愛中の2人がいるとすると、毎日、お互いの定義の確認を怠っていないということになるでしょうか.


 愛を告白して、気持ちを伝える、というよくある一発勝負の手法で成功することが少ないということは確率論の基礎を学ぶことでわかるのではないでしょうか.
もちろん、期待値を増やすには、頻度を大きくすれば済むという話かもしれませんが、少ない集合体でそれを行うと信用という別のファクターを失いかねません.


 結局のところ、告白をしあう前に、お互いに話をして同じかどうか確認をしてみるという、言うなれば当たり前の結論に至りましたが、それは、数学者でさえ、日々日頃から怠っていない数学発展方法なのです.よって、数学をがんばって学んでいる学生が恋愛ができないということは全くありえないということにもなります.

2015年10月19日月曜日

トポロジー入門演習(第3回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今日は位相空間であることの示し方をやりました.
距離空間から位相空間への橋渡しとしてこちら(←ココ)に文章を書きました.

数学の証明をキチンと書く上で誤解しているところや、問題となる場所が今日はたくさん見られたようで、学生たちは大変勉強になったと思います.最後にまとめてかきました.


位相空間とは、集合 $X$ と、3つの条件を満たす集合の族 ${\mathcal O}$
との対(ペア) $(X,{\mathcal O})$ のことです. ${\mathcal O}$ の元のことを開集合と言います.


開集合であるための3つの条件
3つの条件はプリントでも書きましたが、ここでも書きます.
(a) 全体集合と空集合が ${\mathcal O}$ に入る。
(b) 任意の、有限この開集合の共通集合が ${\mathcal O}$ にはいる.
(c) 任意この開集合の和集合が ${\mathcal O}$ に入る.

です.

距離空間の場合は開集合を距離を使って定義すると上記のような性質をもつよいものが作れましたが、一般の位相空間を構成する場合(特に距離空間とはかぎらないような場合)は、普通には開集合を定める方法が明確ではありません。なので、開集合であるための上記の必須条件を満たすものをこちらで宣言してやれば、それでよいということなのです.

開集合と閉集合は大分性質が違うものですので、こちらで開集合として宣言したものが開集合としてうまくいっている必要があります.それがこの3つの条件といえます.

逆に、この3つの条件を満足している集合族は、開集合と言えるし、その補集合は閉集合といえるようになります.


数学の定義について後に書きました。

開集合、閉集合の主な性質
開集合は、すべての点が内点になっていなければならない.その補集合は閉集合.

閉集合のすべての収束する点列はその点の中で収束する.その開集合は開集合.


代表的な位相
任意の集合 $X$ に対して、${\mathcal O}=\{X,\emptyset\}$ とすると、
この集合の族は位相の定義を満たしています.これを密着位相といいます.

任意の集合 $X$ に対して、${\mathcal O}$ をすべてのべき集合とすると、
この集合の族は、位相の定義を満たしています.これを離散位相といいます.

ですので、あらゆる集合上に位相を入れることができます.

密着位相は一番 ${\mathcal O}$ の数を少なくしたもので、
離散位相は全てのなかで一番 ${\mathcal O}$ が大きいものです.

位相として、${\mathcal O}_1\subset{\mathcal O}_2$ かつ、${\mathcal O}_1\neq{\mathcal O}_2$ であるとき、${\mathcal O}_1$ は ${\mathcal O}_2$ .より粗い
と ${\mathcal O}_2$ は ${\mathcal O}_1$ .より細かいといいます.

よって、密着位相は一番粗い位相であり、離散位相は一番細かい位相ということになります.

位相の決め方

位相の決める方法として、距離を用いていれる以外に、近傍系を使っていれる方法があります.
任意の $x\in X$ に対して ${\mathcal U}(x)$ が $x$ の近傍系とは、

(a) 任意の $U\in {\mathcal U}(x)$ は $x\in U$ である.
(b) $U_1,U_2\in {\mathcal U}(x)$ であれば、$U_3\subset U_1\cap U_2$ なる $U_3\in {\mathcal U}(x)$ が存在する.
(c) $U\in {\mathcal U}(x)$ ならば、任意の $y\in U$ に対してある $y\in V\subset U$ が存在して、$V\in {\mathcal U}(y)$ となること.

を満たすことです.
このような近傍系 $\{{\mathcal U}(x)|x\in X\}$ から、$X$ 上に位相を ${\mathcal O}$ を以下のようにいれることができます.
$A\in {\mathcal O}$ であることを、

任意の $x\in A$ に対して、ある近傍系の元 $O\in {\mathcal U}(x)$ が存在して、
$x\in O\subset A$ とできる

として定義するのです.
そのようにして集めてきた ${\mathcal O}$ は位相の条件を満たします.


数学の発表もしくは証明をかくことに関して
今日の発表を見ていると、特徴的だったのは、

[1] 今から示そうとしていることを用いている.
[2] 自分なりのイメージだけで当たり前だからと推論している.

でした.
これは、いつもトポロジー演習をやって、3回目くらいで起こる現象です.
毎年のように同じことを言っている気がします.

[1] は、例えば、$x>0$ を示そうとしているのに、$x>0$ を使ってしまっているような例です.このような証明は明らかに間違いです.

そういう自覚があるわけではないのに、よくよく考えればやってしまっていると思います.

[2] は言葉の定義に戻らずに、明らかとしてそのギャップに気づかないようです.
結果合っていたとしても、推論の過程で間違っています.一般の位相空間では変な例が山ほどあるので、適当な推論(いつでも距離空間のようなイメージとか)ではキチンとした証明はできません.数学の証明では、数学の言葉として定義されたものだけを用いて議論しています.なので、自分なりのイメージだけで証明を進めることはできません.

このような証明のダメ出しはよくあることなので、論理的な思考ができるようになるチャンスだと思ってめげずにもう一度チャレンジして下さい.



数学ができるようになる唯一のコツは、

あきらめないこと

です.



数学の定義についてもう少し

[2]の間違いに気づかない人は、「じゃあどうしてですか?」と聞くと、「だってそうでしょう.」、「そういうものだから」といいます.

そういうものだからでは、論理思考はできません。


位相空間やその開集合であるというのは、全くの数学の定義です.つまり、開集合と呼べそうなもの(上記の3つの条件を満たすということ)を全て開集合と呼んでしまえ.つまり、そのようなものを位相空間というのだと決めてしまうわけです.(個人的な意見には左右されません.)

それが数学の定義というものです。
なんとなくこんな性質をもつものが位相空間というのだから....というのは数学の議論ではありません.ある空間が位相空間であるというのなら、定義に帰れば誰でもチェックできなければしょうがないのです.

「私にはそれが位相空間にみえる」と散々言ってみても意味がありません。


呑んだ勢いで、「あいつは天才だからさぁ」とくだを巻くような人は到底数学者にはなりそうにはありません.少なくとも数学科の学生であれば、まずやることは、天才の定義にかえることです.天才の定義がしっかりしていないところでそのような議論をすることは、ざるで水をつくっているようなものです.これこれの条件(基準)を満たす人を全て天才と呼ぶということに決めておけば、(たとえばノーベル賞をとった人を天才とするとかしておけば)、あとは、誰が天才かはその人がその条件を満足するかをチェックすればよいだけです.


たまに、しょうもない議論で人同士でもけんかになってしまうのは、それぞれの立場で言葉の定義が微妙に違うからでしょうか.


しょうもない議論をする前に、お互いの言葉の定義を確認し合ってはいかがでしょうか?お互い傷つくようなけんかより、あなたの定義とわたしの定義とどこが違うかを比べる方がより理性てきです.

自然と多くの定義が一致するような間柄は親友や恋愛に発展しやすいのかもしれませんね。

2015年10月16日金曜日

微積分II演習(第3回)

[場所1E103(金曜日5限)]

HPに行く.

今日は第1回のレポートを返します.
以下のような成績になりました.
3点満点:平均2.60 最高得点3、最低点1

前回の小テストの結果は、
5点満点:平均1.57点 最高得点3、最低点0
でした.


1-1(1)ですが、
arctan(x) のマクローリン展開を求めなさいという問題でしたが、3項目くらいまではあっているものを丸にしました。一般項を求めているものもありましたが、あっていれば丸です.$arctan(x)$ を一回微分すると、$\frac{1}{1+x^2}$ になりますので、そのマクローリン展開 $1-x^2+x^4+\cdots$ を用いることで、$f'(x)$ のマクローリンがもとまって、それを積分すればよいでしょう.その際 $f(0)=0$ を使ってください.

1-1(2)も
同じようにして、微分してから積分するという手法を用いましょう.

1-2ですが、
計算が面倒くさかったのか、途中の式を飛ばしているものが多かったです.そのようなものは結果があっていても三角にしました.計算問題もある種証明問題として考えてください.ちゃんと計算して見せることで証明完了となります.

$x=\cos^3\theta,y=\sin^3\theta$ のようにパラメータ表示してから、
$dx=3\cos^2\theta(-\sin\theta)d\theta$ を使って、
$4\int_{0}^1ydx=4\int_{\frac{\pi}{2}}^0\sin^3\theta( 3\cos^2\theta(-\sin\theta))d\theta$
としましょう.

小テストについては前のページに書いてあります.

どの問題も教科書に答えが載っているのでそちらを参照してください.



今日の小テストですが、

5点満点:平均3.2点 最高得点5、最低点0

できた人と、できなかった人が両極だったようです.
0の人が何人かいたようでしたが、できなかった人は、
もう一度関数の連続性について見直しておきましょう.

中には、極座標表示をしておいて、$\theta$ が $x,y$ によらないと書いた人が
いたようですが、??? でした.どういうことでしょうか.


問題は、関数 $\frac{\sin(xy)}{x^2+y^2}$ の関数の極限の存在についての問題でした.

$\frac{\sin(xy)}{x^2+y^2}$ は、$(0,0)$ での極限が存在するなら極座標表示をして
示す(今日の全微分の問題のように)必要がありますが、極限が存在しないとすると、
近づき方を変えてみる方法が一般的です.(その点で発散するような近づき方があればそれでもいいです。)

しかし、この場合、一番簡単な近づき方 $x=0$ とする、もしくは、$y=0$ とするとしても、値は $0$ で変わりません.つまり、軸に沿って近づいても値が変わらないのです.

問題はあらゆる近づき方で収束しなければならないので、さらに方向を工夫する必要があります.たとえば、$x=y$ となる方向から近づいてみてください.

そうすると、$\frac{\sin(x^2)}{2x^2}$ となり、$x\to 0$ として $\frac{1}{2}$ に近づくことになってしまいます.これは、近づき方によって、$0$ になったり、 $\frac{1}{2}$ になったりしていますので、この関数の極限は原点では存在しないということになります.


今日は、
偏微分、偏微分係数、偏導関数、全微分可能、全微分可能であるための十分条件
などを教えました.

偏微分
偏微分は、ある変数以外を全部固定して(定数と思って)残った変数に沿って一変数微分を行う方法です.

つまり、$f(x,y)$ の $(a,b)$ での $x$ に関する偏微分係数は、$f(x,y)$ に $y=b$ に代入しておいて、$f(x,b)$ の $x=a$ での微分係数と定義されます.
それを、$f_x(a,b)$ と書いたり、または、$\frac{\partial f}{\partial x}$ と書いたりします.

この偏微分係数を関数としたものを偏導関数といいます.つまり、$f_x(x,y)$ としてその関数を表します.

偏微分可能であるとは、そのような偏微分係数が存在することを言います.


全微分可能

関数 $f(x,y)$ が $(a,b)$ で全微分可能であるとは、$f(x,y)$ が
$$f(x,y)=f(a,b)+\alpha(x-a)+\beta(y-b)+o(\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}))\ \ (x,y)\to (a,b)$$
となるような $\alpha,\beta$ が存在することです.

このランラウの記号についての解説はこちら
ささっと終わってしまったので、今日の計算の意味がわからなかった人は、
もう一度教科書を見るか、上のリンクを見るかしておくこと.

もし存在したとすると、$\alpha=f_x(a,b), \beta=f_y(a,b)$ が成り立ちます.
授業では、$f(x,y)=x^2+y^2$ の場合に定義に戻って全微分可能を示したわけです.

最後は、ランダウの記号についての議論をする必要がありましたが、これまでの
連続性についての議論を応用すればよいことになります.


ちなみに、一次元の場合の微分可能の定義は、
$f(x)=f(a)+\alpha(x-a)+o(x-a)$ なる$\alpha$ が存在する.
$\Leftrightarrow$
$\frac{f(x)-f(a)}{x-a}$ に極限が存在する.

となります.この同値性については授業では端折りましたが、自分で考えてください.


授業では、$x^2+y^2$ という関数について全微分可能性について定義に基づいて示しました.


全微分可能であるための十分条件

全微分可能であることを示す方法を他に一つ教えました.
次の定理を使うことです.

定理
$f(x,y)$ の偏導関数 $f_x(x,y)$ と $f_y(x,y)$ がいずれも、 $(x,y)=(a,b)$ で連続であるなら、$f(x,y)$ は $(a,b)$ で全微分可能である.

この定理を用いて、宿題をなんとか解いてみてください!
連続性の性質を使うので、前回の復習にもなると思います.

2015年10月15日木曜日

トポロジー入門演習(第2回)

[場所1E103(水曜日4限)]

HPに行く.

今日は距離空間の続きの演習を行いました.
講義の方ではそれほど進んでいない様子ですが、演習では、距離空間の間の写像の連続性や、集積点、内点などの問題を含めました.講義の方とそれほど離れないように、少しずつ先取りしながら行こうと思います.

積極的に問題を解いてくれる人多いですね.

演習では、幾つかの不等式や距離空間の性質などの問題を解く人が多かったです.
解いた問題8,10などは、後ろの問題14の中の問題のヒントになるような問題になっています.

演習の前に少しだけ説明したことをもう一度ここで書いておきます.


集積点
ある点 $p$ が部分集合 $A$ の集積点であることを示すには、その部分集合 $A$ の中の点列 $x_n$ で $x$ にいくらでも近いものが存在することを言えばよいことになります.
つまり、$p$ に収束する $A$ の点列が選べればよいことになります.

例えば、$(0,\infty)$ なる区間において、$0$ がこの区間の(実数全体の中における)集積点であることを
いうには、任意の $\epsilon>0$ に対して、$U(0;\epsilon)=(-\epsilon,\epsilon)$
が $(0,\infty)$ と交わることを言えばよいでしょう.
つまり、$(-\epsilon,\epsilon)\cap (0,\infty)=(0,\epsilon)$ となり、この開区間には、
必ず $\epsilon/2$ が含まれています.
よって空ではありませんので、この $0$ は集積点の一つということになります.

$(0,\infty)$ の点は必ず、集積点であることは明らかです.任意の $\epsilon>0$ において、$U(x,\epsilon)$ が $(0,\infty)-\{x\}$ と交わっています.

それ以外の点(任意の負の実数)が集積点にならないことを示す必要があります.
$x\in (-\infty,a)$ が $(0,\infty)$ の集積点でないことを示すには、ある $\epsilon>0$ が
存在して、$U(x;\epsilon)\subset (-\infty,0) \neq \emptyset $ を示せば十分です.
これは、$\epsilon$ を $|x|$ より小さくしておけばよいでしょう.

連続写像

距離空間の間の写像の連続性は、$f:(X_1,d_1)\to (X_2,d_2)$ が $\epsilon-\delta$-論法を用いた微積分で習ったものと同様の性質を持つことです.
つまり、$x=x_0$ で連続であることは、任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、$d_1(x,x_0)<\delta$ なる任意の $x$ は $d_2(f(x),f(x_0))<\epsilon$ を満たすことです.

つまり、
$$\forall x\in U(x_0;\delta)\Rightarrow f(x)\in U(f(x_0);\epsilon)$$
が成り立つように、$\delta$ が取れるかということになります.

つまり、$\delta>0$ が存在して、$U(x_0;\delta)\subset f^{-1}( U(f(x_0);\epsilon))$ となることです.
これは、$x_0$ が $f^{-1}( U(f(x_0);\epsilon))$ において内点であるということと同値です.

これが、任意の $x_0$ について成り立つならば、
もう少しスッキリした形で書くと、$p\in f(X_1)$ なる点を持ってきたときに、
$f^{-1}(U(p;\epsilon))$ が各点で内点であることと言い換えることができます.

各点が内点であるということは、結局、たとえ、$p\not\in f(X)$ としても、空集合が開集合であることから、

$f$ が連続であることは、
任意の $\epsilon>0$ に対して、どんな $p\in X_2$ に対しても、
$$f^{-1}(U(p;\epsilon))$$
が $X_1$ において開集合であるということと同値です.


p進付値
p進付値について問題を解いた人がいたのでまとめておきます.

$0$ ではない整数を $n=ap^r$ なる素因数分解をしたとします.$a$ は $p$ と互いに素です.
このとき、
$\varphi_p(n)=2^{-r}$ として定義します.
このことを $p$ 進付値ということにします.教科書では、これを $p$-進付値としていますが、一般的には、$r$ の方を付値というような気がします.
多項式で言えば次数のような数のことです.

このとき、$\varphi_p(n+m)\le \max\{\varphi_p(n),\varphi_p(m)\}$ が成り立ちます.
$n,m$ をどちらも $0$ でない整数として、$n=ap^r$ $m=bq^s$ と分解しておきます、
さらに、適当に $n,m$ を入れ替えれば、$r\le s$ と仮定できます.このとき、
$n+m=(a+bp^{s-r})p^r$ と分解できて、$s>r$ であれば、$a+bp^{s-r}$ は再び $p$ と互いに素になりますので $\varphi_p(n+m)=2^{-r}$ となります.つまり、
$\varphi_p(n+m)=\varphi_p(n)=\max\{\varphi_p(r),\varphi_p(s)\}$
が成り立ちます.
$s=r$ の場合、$n+m=(a+b)p^r$ となり、$r$ は少なくとも、$n+m$ を割り切る素因数ということになり、$\varphi_p(n+m)\le r=\max\{\varphi_p(n),\varphi_p(m)\}$ となります.

2015年10月14日水曜日

線形代数II演習(第2回)

[場所1E103(水曜日4限)]

HPに行く.

今日は、線形写像の核、像を求める問題。
ベクトルが一次独立もしくは基底であることを示す問題を
やりました.

線形写像の核と像

線形写像 $f:{\mathbb C}^n\to {\mathbb C}^m$ は、ある行列 $A$ を用いて、$L_A$
と書くことができます.
ですので、線形写像の核 Ker$(L_A)$ は、
$$\{{\bf v}\in{\mathbb C}^n|A{\bf v}={\bf 0}\}$$
のように連立一次方程式を解くことに帰着します.

また連立一次方程式 $A{\bf x}={\bf 0}$ を解くということは、あるベクトル
${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_k$ を用いて、
Ker($L_A)=\{c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+\cdots+c_k{\bf v}_k|c_i\in {\mathbb C}\}$
となる表示を与えなさいということです.この右辺のことを、
$$\langle {\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_k\rangle$$
と書いて、${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_k$ で張る部分空間(ベクトル空間)といいます.


また、像 $\text{Im}(L_A)=\{A{\bf x}|{\bf x}\in {\mathbb C}^n\}$ の方は、$A=({\bf a}_1\cdots{\bf a}_m)$ と縦ベクトル表示してやると、
$A{\bf x}=x_1{\bf a}_1+x_1{\bf a}_2+\cdots+x_m{\bf a}_m$ と書けます.
ここで ${\bf x}={}^t(x_1,x_2,\cdots,x_m)$ です.
Im$(A)$ を求めると、
$$\langle {\bf a}_1,{\bf a}_2,\cdots,{\bf a}_m\rangle$$
となります.

一次独立性

$\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\}$ が一次独立であるとは、
$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+\cdots+c_n{\bf v}_n=0$ であるならば、
$c_1=\cdots =c_n=0$ であること

をいいます.
数ベクトル空間の場合、これは、$$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\ \vdots\\c_n\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\ \vdots\\0\end{pmatrix}$$
となりますので、これも連立一次方程式を解く問題に帰着します.
よって、$L_A$ の核が0個のベクトルの一次結合で書けている、つまり $\{0\}$ であるならば、これらのベクトルは一次独立であるということになります.

基底

$\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\}$ が数ベクトル空間 $V$ の基底であるとは、
$\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\}$ が一次独立であり、かつ、
任意の ${\bf v}\in V$ が、
$${\bf v}=c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+\cdots +c_n{\bf v}_n$$
のような一次結合で書けること

をいいます.

一次独立性は、$A=({\bf v}_1{\bf v}_2\cdots{\bf v}_n)$ としたときに、
 ($A$ は $m\times n$ 行列)必ず、$m\ge n$ が成り立ちます.
もしそうではないとすると、ある非自明な解 $(c_1,\cdots,c_n)\neq (0,0,\cdots,0)$
が存在して、$A{\bf x}={\bf 0}$ の解になります.

この最後の条件をやはり行列の言葉で書けば、
$$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\ \vdots\\c_n\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}v_1\\v_2\\ \vdots\\v_m\end{pmatrix}={\bf v}$$

となります.ここで、上のように、 $A$ を、${\bf v}_i$ を縦ベクトルとして、並べた行列のこととします.
この連立一次方程式に解があるかどうかは、$\text{rank}(A)=\text{rank}(A;{\bf v})$
となることが必要十分です(教科書にもあります).しかし、今は、この条件が強く、
任意のベクトル ${\bf v}$ に対して成り立たないといけません.

ですので、もし、$A$ が full rank つまり、行列のサイズ $m\times n$ だったときに、
$m,n$ のうち小さい方(同じだったらそれそのもの)より小さいとすると、${\bf v}$ として $A$ の縦ベクトルで張られるベクトル空間の補空間のベクトルをとることで、

$\text{rank}(A)<\text{rank}(A;{\bf v})$ が成り立ってしまいますので、
特に、$m\le n$ が成り立つことになります.

上のことを合わせると、 $n=m$ でないといけなります.
つまり、正方行列です.さらに、A は full rank でないといけないので、$A$ 
は正則ということになります.つまり、基底であるためには、上記の $A$ が
正則行列でないといけないのです.

行列 $A$ が正則であるための必要十分条件は、$\det(A)\neq 0$ となることです.

2015年10月10日土曜日

微積分II演習(第2回)

[場所1E103(金曜日5限)]

HPに行く.

今日は、面積の公式、内点、外点、境界点、関数の極限値、関数の連続性
についてやりました.

まずは、小テストについてすが、

$\arcsin x$ のテイラー展開を求めるために、$(1+t)^\alpha$ の
テイラー展開を求める必要がありました。

これを計算するためには、2項定理
$$(1+t)^\alpha=\sum_{n=0}^\infty \binom{\alpha}{n}t^n$$
を使いました.
ここで、 この係数は、$\binom{\alpha}{n}=\frac{\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)}{n!}$
です.
今の場合、$\alpha=-\frac{1}{2}$ とすると、

$$\binom{-\frac{1}{2}}{n}=\frac{-\frac{1}{2}(-\frac{1}{2}-1)\cdots(-\frac{1}{2}-n+1)}{n!}=(-1)^n\frac{1\cdot3\cdot\cdots(2n-1)}{2^n\cdot n!}$$
$$=(-1)^n\frac{(2n-1)!!}{2^n\cdot n!}=(-1)^n\frac{(2n-1)!!}{2n!!}$$

ゆえに、$(1-x^2)^{-\frac{1}{2}}=\sum_{n=0}^\infty(-1)^n\frac{(2n-1)!!}{2^nn!}(-1)^nx^{2n}$
となるので、これを積分してやって、
$$\text{arcsin}(x)=\sum_{n=0}^\infty\frac{(2n-1)!!}{2^nn!}\frac{x^{2n+1}}{2n+1}$$
となります.

面積公式

平面上の極座標表示 $(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ された曲線
で囲まれた部分の面積
$$r=f(\theta)$$
を求めると、公式は、
$$\frac{1}{2}\int_0^{2\pi}f(\theta)^2d\theta$$
となります.

その証明は、微小量を$\theta$ を動かしたときにできる三角形領域の
面積が、$\frac{1}{2}r^2d\theta=\frac{1}{2}f(\theta)^2d\theta$ であるからです.

この公式を使って心臓形(カージオイドと呼ばれる図形の面積を求めました)


内点、外点、境界点
復習をすると、ある部分集合 $D\subset {\mathbb R}^2$ に対して、

$D$ の内点 $p$ とは、$p$ を中心としたある半径 $\epsilon$ の円盤
$U(p,\epsilon)$ が$D$ の中に含まれるときをいいます.

$p$ の外点 $p$ とは、 ある $p$ を中心とする半径 $\epsilon$ の円盤
$U(p,\epsilon)$ が、すべて $D$ に含まれていないことをいいます.

それ以外の点のことを境界点といいます.つまり、境界点 $p$ は、
任意の $\epsilon$ に対して、$D\cap U(p,\epsilon)\neq \emptyset$ となることである.

ちなみに、授業では、$\{(x,y)|x^2+y^2\le 1\}$ を $D$ としてその内点、
外点、境界点を求めましたが、
$D$ として、$\{(x,y)|x^2+y^2<1\}$ としても同じものが内点、外点、
境界点になります.

開集合と閉集合

部分集合 $D$ が閉集合であるとは、$D$ の全ての点が内点であるような集合のことです.
また、
部分集合 $D$ が閉集合であるとは、$D$ の補集合の全ての点が $D$ の外点であることをいいます.

2変数関数の極限について

$d((x,y),(a,b))=\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}$ として2点 $(x,y),(a,b)$ の距離を定義
しておきます.

2変数関数の極限 $\lim_{(x,y)\to (a,b)}f(x,y)$ が存在する(収束する)とは、

ある数 $\alpha$ が存在して、任意の $\epsilon>0$ に対して、$d((x,y),(a,b))<\delta$ ならば、$|f(x,y)-\alpha|<\epsilon$
となるような $\delta>0$ が存在すること.

です.そのような$\alpha$ のことを
極限値といい、$\lim_{(x,y)\to (a,b)}f(x,y)=\alpha$ とかきます.

よって、極限が存在する(収束する)場合、 $\alpha$ は下に書くように、
$(a,b)$ への近づき方によりません.

極限の定義として、ユークリッド空間の場合(今の場合はそれにあたりますが)
には、点列収束、つまり、任意の $(a,b)$ に収束する点列 $(x_n,y_n)\ (n=1,2.,,)$ に対して、
$(x_n,y_n)$ がある一定の値に収束することと同値になります.

したがって、$\lim_{(x,y)\to (a,b)}f(x,y)$ が存在しないとは、

ある点列 $(x_n,y_n)$ に対して、
$f(x_n,y_n)$ が収束しないか、

点列に関しては収束しても、別の点列 $(x_n',y_n')\ \ (n=1,2,...)$ をとってくると、
$f(x_n,y_n)$ と$f(x_n',y_n')$ の収束値が違う

のどちらかを言えばよいわけです.


多変数の連続性について

2変数関数 $f(x,y)$ が $(a,b)$ で連続であるとは、
その点において、上の意味で極限が存在して、

$$\lim_{(x,y)\to (a,b)}f(x,y)=f(a,b)$$

がいえることをいいます.

よって、

$f(x,y)$ が $(a,b)$ が連続であることを示すためには、

点列収束で収束した値が、$f(a,b)$ に一致すればよい.
(点列連続という)が満たされればよいわけです.

ゆえに、まず、任意の点列をとること.

$d((x_n,y_n),(a,b))\to 0$ となる点列 $\{(x_n,y_n)|n=1,2,...\}$
は、任意の $(a,b)$ に収束する点列を一つ取っています.

この点列で議論すればよいことになります.


授業中にやった例をもう一度やると、

$(0,0)$ で連続な例

$$\frac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$$
で、$(0,0)$ に収束する点列は、必ず、$(r_n\cos\theta_n,r_n\sin\theta_n)\ \ (r_n\to 0)$ と
極座標表示できます.
そうすると、$|f(x_n,y_n)|=r_n|\cos^3\theta_n+\sin^3\theta_n|\le 2r_n\to 0$
となり、$f(x_n,y_n)$ は $0$ に収束します.
よって、連続がいえます.

$(0,0)$ で不連続な例

$$\frac{x^2-y^2}{x^2+y^2}$$
これは、あらゆる近づき方で、極限が存在します.
そこで、近づき方を変えてみて、$x$ 軸に沿った近づき方、$y$ 軸に沿った近づき方を両方
考えてみると、その収束先が違うことが分かるでしょう.


ちなみに、授業中の最後の方で解いていた、
$\frac{\log\cos(xy)}{x^2+y^2}$ の連続性の問題ですが、

$\frac{\log\cos(z_n)}{z_n}\ \ (z_n\to 0)$ が収束すればよいです.
ロピタルの定理を用いれば、$f(z)=\frac{\log\cos(z)}{z}$ が収束する
ことを言えばよい.

$\lim_{z\to }\frac{\log\cos(z)}{z}=\lim_{z\to 0}\frac{-\tan z}{1}=0$

2015年10月7日水曜日

線形代数II演習(第1回)

[場所1E103(水曜日4限)]

HPに行く.

このページでは、線形代数II演習に関することを日記風に
書いていきます.
去年も線形代数II演習(物理学類向け)のブログを書いています.

やっている問題は去年と同じ問題とは限りませんが、同じ題材を今年も
扱っていこうと思っています.
去年度のものを見るには、横のカテゴリーの中のリンクから辿ってみてください.

ちなみに、去年の今日と同じ授業では、連立一次方程式の解き方をしてから、抽象ベクトル空間に入っていました.
http://motochans.blogspot.jp/2014/10/ii1.html


また、秋学期も数学手習い塾をやるはずです(曜日は未定)ので、是非とも活用
してください.場所は同じ1E403だと思います.
私も時間があるときは行くようにしています.


さて、
今日は主に連立一次方程式の復習をしました.
授業中にやったのでここでは書きません.
もし連立一次方程式を解くことに自信がなければ、今日配った問題を
解くか、宿題を解くかして理解してください.


宿題についてですが、
C-1-1は連立一次方程式を解く問題です.
C-1-2は行列式について理解する問題で、$2\times 2$ 行列について今日発表してもらったものの $3\times 3$ 行列のバージョンです.
本当は、$n\times n$ 行列についてやる問題だったのですが、簡単にしました.$n\times n$ 行列について同じように証明しても構いません.
C-1-3は数ベクトル空間の間の線形写像を行列によって表示する問題です.



数ベクトル空間の間の線形写像の行列表示

数ベクトル空間の間の線形写像 $f:{\mathbb K}^m\to {\mathbb K}^n$ を $n\times m$ 行列 $A$ によって表示するということは、任意の ${\bf x}\in {\mathbb K}^m$ に対して、線形写像 $f$ を
$$f({\bf x})=A\cdot{\bf x}$$
というような行列の左からの積として表しなさいということです.
一般に、数ベクトル空間の間に線形写像があれば、必ず、このような行列 $A$ をただ一つ定めることができます.
(抽象的なベクトル空間の場合にはただ一つに定めることが難しい場合があります.)

後から出てくる用語で言えば、ある特殊な基底による表現行列ということができます.

求め方は、一つは今日発表でやってもらったもので、

$$f({\mathbf v}_i)=A{\mathbf v}_i={\mathbf w}_i\ \ (i=1,..,m)$$
としておいたときに、
$$AV=W$$
となる行列 $A$ を求める問題にすることです.
ここで、
$V=({\mathbf v}_1{\mathbf v}_2,\cdots,{\mathbf v}_m)$
$W=({\mathbf w}_1{\mathbf w}_2,\cdots,{\mathbf w}_m)$
となる行列です.
行列 $A$ が求められるためには、$V$ が正則な行列であることが必要です.
特に、$V$ 正方行列です.
よって、$V$ 逆行列を求めることで、
$A=WV^{-1}$ となります.

この行列 $A$ が何かというと、

まず、
標準基底ベクトルを ${\bf e}_1={}^t(1,0,\cdots,0),{\bf e}_2={}^t(0,1,\cdots,0),...,{\bf e}_1={}^t(0,0,\cdots,1)$ としており、$A$ を縦ベクトルを使って、
$A=({\bf a}_1{\bf a}_2\cdots{\bf a}_m)$ と書くことにすると、
$f({\bf e}_i)=A\cdot{\bf e}_i={\bf a}_i$ となり、
 がいえることになります.つまり、表示された行列は、
$f({\bf e}_i)=A\cdot{\bf e}_i={\bf a}_i$ として、標準基底ベクトルの行き先を並べたものということになります.
一般の基底に関してはまた、後の授業でやることになると思います.




2015年10月5日月曜日

トポロジー入門演習(第1回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今日は距離空間であることを示す方法について主に学びました.
また、距離空間の例についても実際自分の手で動かして、その感じをつかんだと思います.


距離空間の定義と満たすべき性質
距離空間 $(X,\rho)$ というのは、下の条件を満たす距離関数 $\rho :X\times X\to {\mathbb R}$ をもつ集合のことです.
その条件(性質)とは、
(1) $\rho(x,y)\ge 0$、(正値性)
(2) $\rho(x,y)=0\Leftrightarrow x=y$、
(3) $\rho(x,y)=\rho(y,x)$、(対称性)
(4) $\rho(x,z)\le \rho(x,y)+\rho(y,z)$ (三角不等式)
であり、これを満たすかどうかをチェックすればよいのでした.

結局、距離空間とは、集合の中の任意の2点に対してその間の距離が適切に測れるような空間という
ことです.
何を示せばよいか分かっても、実際示すのは面倒くさいです.

ほとんどの場合、(1)-(3) は示すのは簡単ですが、(4) は示すのが結構面倒なことも多いです.
ヒルベルト空間、${\mathbb R}^\infty$ の場合でさえ、実は、数列の絶対収束を使っています.


ヒルベルト空間 ${\mathbb R}^\infty$ が三角不等式を満たすこと
つまり、${\mathbb R}^\infty$ 上で、$d_\infty(x,y)=\sqrt{\sum_{n=1}^\infty(x_i-y_i)^2}$ として距離を入れると、
$(d_\infty(x,y)+d_\infty(y,z))^2-d_\infty(x,z)^2$
$=\sum_{i=1}^\infty(x_i-y_i)^2+\sum_{i=1}^\infty(y_i-z_i)^2-\sum_{i=1}^\infty(x_i-z_i)^2+2\sqrt{{\sum_{i=1}^\infty(x_i-y_i)^2\sum_{i=1}^\infty(y_i-z_i)^2}}$
$=-2\sum_{i=1}^\infty(x_iy_i+y_iz_i-y_i^2-x_iz_i)+2\sqrt{\sum_{i=1}^\infty(x_i-y_i)^2\sum_{i=1}^\infty(y_i-z_i)^2}$
$=-2\sum_{i=1}^\infty(x_i-y_i)(y_i-z_i)+2\sqrt{\sum_{i=1}^\infty(x_i-y_i)^2\sum_{i=1}^\infty(y_i-z_i)^2}$
となり、さらに、2乗をして引いて、一般的なコーシーシュワルツの不等式を用いると
$\sum_{i=1}^\infty(y_i-z_i)^2\sum_{i=1}^\infty(x_i-z_i)^2-(\sum_{i=1}^\infty(x_i-y_i)(y_i-z_i))
\ge0$
となります.

ここで、途中で、項の順番を変えてよいのは、$\sum_{i=1}^\infty x_n^2$ が収束するため、この級数は絶対収束しているからです.
また、$\sum_{i=1}^\infty y_i^2$ も絶対収束しますから、
$\sum_{i=1}^\infty x_iy_i$ も絶対収束します.


$\sum_{i=1}^\infty x_iy_i$ が絶対収束していること
$\sum_{i=1}^\infty x_i^2$ や $\sum_{i=1}^\infty y_i^2$ が(絶対)収束するので、
$(\sum_{i=1}^\infty|x_iy_i|)^2\le \sum_{i=1}^\infty|x_i|^2\sum_{i=1}^\infty|y_i|^2<\infty$
となり、$\sum_{i=1}^\infty x_iy_i$ も絶対収束します.

コーシーシュワルツの不等式
コーシーシュワルツの不等式とは、内積空間 $(V,\langle,\rangle)$ において、
$$||v||^2||w||^2\ge (\langle v,w\rangle)^2$$

が成り立つということです.ここで、$||v||=\sqrt{\langle v,w\rangle)}$
です.
ヒルベルト空間 ${\mathbb R}^\infty$ が内積空間であることを使えば、ヒルベルト空間が距離空間であることの最初の3つまでは正しくなります.



これから、距離空間の概念を一般化して、さらに位相空間にそのうち進んでいきます.そのあたりのことは、こちらに昔かきました.
(少し書き直しました.)
昔は一般の位相空間を3年生で習っていましたが、今回からは、2年生の後半に習うことになっています.

群 PSL(2,7) について

PSL(2,7) という群について説明します.

体${\mathbb F}_7$ について

まず、${\mathbb F}_7$ を $\{0,1,...,6\}$ からなる集合であり、その上の足し算や掛け算を普通の整数としての足し算や掛け算をしておいてから、$7$ で割った余りをとって得られるものとします.
$0$ は足し算における単位元ですが、掛け算において零元の役割を果たしています.

足し算だけ見れば、${\mathbb F}_7$ は ${\mathbb Z}/7{\mathbb Z}$ という巡回群と同型です.今は、積の構造も入っています.巡回群や群の定義、群の同型などは、ここに書きました.

また、${\mathbb F}_7$ は割り算の構造も入っています.分数を取るのではなく、${\mathbb F}_7$ の中で積の逆の操作ができるということです.
つまり、$0$ 以外の元 $0<a<7$ をとってくると、その数は、$7$ と互いに素です.なので、ある整数$x,y$ が存在して、$ax-7y=1$ とすることができます.
つまり、${\mathbb F}_7$ での等式 $ax=1$ を得ることができます.よって、$x$ が $a$ の逆元となります.
よって、${\mathbb F}_7$ の世界では、
$$1\cdot 1=1,\ \ 2\cdot 4=1,\ \ 3\cdot5=1$$
が成り立ちます.
よって、零元 $0$ 以外の数において逆元が存在します.
このような性質をもつ集合を体といいます.
線形代数で出てくる、${\mathbb C}$ や ${\mathbb R}$ は複素数体や実数体と呼ばれ、同じ性質を持っていました.ここでは元の個数が有限個の有限体ということになります.

記号の約束として、${\mathbb F}_7^\times$ として、逆元を持つものだけを考えた集合をさすことにします.

$PSL(2,7)$ について
$PSL(2,7)$ は
$$PSL(2,7)=\left\{\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}|a,b,c,d\in{\mathbb F}_7,ad-bc=1\right\}\Big/-I$$
として定義されます.$I$ は単位行列 $\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}$ を意味します.
$2\times 2$行列の各成分が ${\mathbb F}_7$ になっているもので、行列式が 1 であり、但し、スラッシュの後の意味は、行列全体の$-I$倍は無視したものを考えるということです.
無視するという同値関係 $\sim$ を結ぶとすると、$A\in PSL(2,7)$ においては、
$$A\sim -A$$
となります.つまり、$PSL(2,7)$ においては、任意の行列 $A$ に対して、$-A$ は $A$ と同値(同じ)だとして扱っていきます.

この群は、普通の行列の積によって群になっています.この群の位数はどうなるかというと、
$-I$ 倍を無視しないとするときの集合 $SL(2,7)$ の半分のはずです.どうしてかというと、$SL(2,7)$ の元は、$-I$ 倍してやると、必ず、各成分が $-1$ 倍された別の元 $SL(2,7)$ の元に移るからです.

$SL(2,7)$ の元の個数(位数)を求めます.
$$\begin{pmatrix}x&a\\b&y\end{pmatrix}\ \ \ (x\neq 0)$$
$$\begin{pmatrix}0&a\\b&y\end{pmatrix}$$
という形を別に考えてやると、前者の方は、任意の$a,b\in {\mathbb F}_7$ と$x\in{\mathbb F}_7^\times $ に対して$y$ がただひとつ定まります.$xy=1+ab$ となる等式を満たす $y$ をは一意的に見つけられます.

次に後者は、$y$ は${\mathbb F}_7$ の何でもよく、$a,b$ の方は、$ab=-1$ が成り立たなければなりませんので、$a\in {\mathbb F}_7^\times$ を持ってこれば、$b$ の方は一意に決まります. 

まとめると、、前者の形の行列は、$7\times 7\times 6$ 個あり、後者の形の行列は、$7\times 6$ 個あります.
これらを足して、$294+42=336$ となります.

ゆえに、$PSL(2,7)$ の位数はその半分の $168$ となります.


$PSL(2,7)$ の群の表示


さて、群の位数がわかったところで、この群がわかったわけではありません.その全体としての群の構造が大事なのです.
まず、$SL(2,7)$ の生成元は、
$$S=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix},\ \ T=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix}$$
です.よって、同値関係を入れた $PSL(2,7)$ もそうです.
このとき、実際計算をしてやることで、
$$S^7=I,\ \ T^2=I,\ \ (ST)^3=I$$
がいえます.ここで、$I$ と書いたのは、$SL(2,7)$ において、$-I$ 倍を無視して書かれています.実際の $2\times 2$ 行列の計算においては、この計算は $-I$ になるかもしれません.
最後の等式は、$STS=TS^{-1}T$ と書くこともできます.

この、$S,T$ を何回か繰り返しかけることで全ての $PSL(2,7)$ を表すことができるのですが、
その表示がこのページの最終目標です.

まず、$T^2=I$ や $STS=TS^{-1}T$ を使えば、
$$TS^{a_n}TS^{a_{n-1}}\cdots TS^{a_1}$$
と書き表すことができます.これを単に $[a_n,a_{n-1},\cdots,a_1]$ と書くことにします.
$S^7=I$ がありますので、この $a_i$ は$0$ から $6$ までの整数とすることができます.
また、この数 $n$ のことを表示の長さということにします.

公式を整理しておけば、
$$[a_n,...]=[0,0,a_n,...]$$
$$[...,a_{1}]=[...,a_1,0,0]$$
$$[...,a_{i+1},0,a_{i-1},...]=[...,a_{i+1}+a_{i-1},....]$$
$$[...,a_{i+1},a_{i},...]=[...,a_{i+1}\pm1,\pm1,a_{i-1}+\pm1,....]$$
がいえます.

まず、$[a_1]$ は $(1,1)$ 成分が $0$ となり、$(2,1)$ 成分が $1$ となる $7$ この行列です.
つまり、
$$\begin{pmatrix}0&-1\\1&a_1\end{pmatrix}$$
となります.
次に、$[a_2,a_1]$ は、$(1,1)$ 成分が $6=-1$ になる行列で、
$$\begin{pmatrix}1&-a_1\\a_2&a_1a_2-1\end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix}-1&a_1\\-a_2&-a_1a_2+1\end{pmatrix}$$
となり、$(a_1,a_2)$ が違えば、別の行列を表すことになります.
つまり、この形の行列は全部で $7\times 7=49$ 個あることになります.

これでもまだ、7+49=56 なので、長さが 3 の表示も考える必要があります.
$[a_3,b,a_1]$ とすると、
$b=0$ とすると、上の公式を用いて、$[a_1+a_3]$ に一致します.
$b=\pm1$ とすると、上の公式から、$[a_1\mp1,a_2,\mp1]$ となり、
長さが 2 のものに帰着します.
よって、新しく現れる元は、$b=2,3,4,5$ に限ります.

$b=2$ のとき、
$$TS^{a_3}TS^2TS^{a_1}=\begin{pmatrix}-2&-2a_1+1\\2a_3-1&\ast\end{pmatrix}$$
となり、
$b=3$ のとき、
$$TS^{a_3}TS^3TS^{a_1}=\begin{pmatrix}-3&-3a_1+1\\3a_3-1&\ast\end{pmatrix}$$
となり、これは、今まで表示しなかった新しいものです.
また、$\ast$ のところは、他の 3つの係数から自動的に決まります.
$a_1, a_3$ は何でもよいですから、この2つのパターンで $49\times 2$ の元が表示できました.

また$b=4,5$ の場合は 成分が ${\mathbb F}_7$ であることから、上の $b=3,2$の場合にそれぞれ帰着します.

これによって、$56+98=154$ となり、さらにまだ表示されていないもの14あります.
それは、$\begin{pmatrix}0&-2\\3&\ast\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0&-4\\5&\ast\end{pmatrix}$
という形です.この $\ast$ のところは ${\mathbb F}_7$ の任意の元を入れることができるので、丁度14個あります.
これらの元は、長さ4の
$$[0,4,2,a_1]$$
$$[0,5,3,a_1]$$
として表示することができます.

よって、これで、$PSL(2,7)$ の元は全て長さ 4 までの数列によって表すことができました.

まとめ

まとめると、$PSL(2,7)$ の全ての元は、
$$[a_1],[a_2,a_1],[a_3,2,a_1],[a_3,3,a_1],[0,4,2,a_1],[0,5,3,a_1]$$
と表示できることがわかります.
もう一度総数を計算してやると、
$$7+7\times 7+7\times 7\times 2+7+7=168$$
となります.


実は、この群は、有限群をいくらかの単純なブロックの積み上げとして分けたときの基本ピースの一つです.つまり、単純群です.また、5次の交代群の次に位数が高い非可換単純群でもあります.単純群であることはここでは証明しません.

群について

代数学の群の話です.


まずは定義

定義を書きます.

集合 $G$ があって、その集合に、2項演算 $\cdot$ が定義されており、
この演算で閉じているとします.つまり、任意の $g,h\in G$ に対して、この演算による
積が $g\cdot h$ も $G$ の元になっているとします.

このことを積によって閉じているといいます.この閉じているという操作が代数学では重要となります.

さらにこの積が以下を満たすとき、 $G$ はといいます.
  1. $f\cdot(g\cdot h)=(f\cdot g)\cdot h$  を満たす.
  2. $e\cdot g=g\cdot e=g$ を満たす$e\in G$ が存在する.
  3. $g\in G$ に対して$g\cdot g^{-1}=g^{-1}\cdot g$ を満たす $g^{-1}\in G$ が存在する.
2. の $e$ のことを 単位元 といい、3. にある $g^{-1}$ を $g$ の逆元 といいます.

さらに、群の特徴のひとつとして、逆元が取れることがあります.



定義から

便宜上ここでは群の元のことを操作ということにします.
1. は掛け算の仕方は順番さえ変えなければ、どこから掛けても同じということを言っています.
2. は何もしない操作が含まれていることを言っています.
3. は逆の操作も含まれていることを言っています.


群が存在するところ


もの(集合)を動かすときは、

動かすもの、動かされるもの

をセットにして考えます.群というのは、動かすもの(前者)の方です.

何かが動いているとき、何かを動かしている方が群の存在するところです.
大抵は動いているものに目を奪われがちですが、動かす仕組みの方に、焦点を当てるのです.動動かす仕組みがわかれば、その働きがわかるということなのです.

数学では、群によって集合を動かすことを、作用といいます.
集合 $X$ を群 $G$ を使って動かすことを $G$ の $X$ への作用といいます.


群の大事なところ

また、群の哲学は、群を調べるとき、個々の動き方だけではなく、その群全体が大事であるということです.
群(Group)という名称も、群はその集団(全体)としての動きが重要であるということを意味しています.

その哲学がまさに生きたのが、群論を創り出したガロアによる、ガロア理論です.
ガロア理論が出てくる源泉についてはコチラに書きました.

方程式が如何様に解けるのかということを見るためには、ガロア群の個々の操作を見るのではなく、ガロア群の群全体としての動き(構造)を見ることが重要であるというのです.


可換性と非可換性

群が可換であるとは、任意の元 $g,h\in G$ に対して、
$$gh=hg$$
を満たすことです.そのような群は可換群、またはアーベル群といいます.そうでない群は非可換群または、非アーベル群といいます.

非可換性は、ここでいう、群全体の構造の複雑さに関係があります.

$g\in G$ に対して、$g^n=e$ となる最小の正の整数 $n$ のことを $g$ の位数といいます.
群 $G$ が可換群であるとします.そうすると、その群は、個々の元の位数によって全て決定されます.

しかし、非可換群の場合はそうではありません.


ガロア群が可換群である場合、その方程式はべき根を使って表示することができますが、非可換群の場合にはその積の順番を変えたときにどのように変化するかを詳細に見る必要があります.その差がさらに可換群であるなら、方程式はべき根を使って解くことができます.



生成元

群 $G$ の生成元の集合 $S$ とは、任意の $G$ の元 $g$ が $S$ のいくつかの積によって書けることをいいます.つまり、生成元 $x_i\in S$ を幾つかとってこれば、任意の元 $g$ は
$g=x_1^{n_1}x_2^{n_2}\cdots x_m^{n_m}$
のように書き表されます.ここで、$n_1,\cdots,n_m$ はある整数です.
ベクトル空間における基底のようなものです.しかし、基底のように表し方が一意である必要はありません.普通は生成元の間には関係式が存在します.

位数

群 $G$ の位数とは、その群の中に入っている、操作の数のことをいいます.


対称群

対称群とは、群の例の中で、もっとも最初にでてくるものです.
定義は、$1$ から $n$ までの数字を並び替えるという操作をする群です.
上の、動かすものと、動かされるものの構図でいうと、

対称群 が動かすもの
$\{1,..., n\}$ が動かされるもの

です.群を集合として書くと、
$\{\sigma|\sigma:\{1,\cdots,n\}\to \{1,\cdots,n\}:\text{ 全単射 }\}$
となります.対称群が集合 $\{1,...,n\}$ に作用していることになります.
これを $n$ 次対称群といい、 $S_n$ と表すのが一般的です.
また、対称群のひとつの元を置換ということがあります.

$n$ 枚のカードを並び替えるというシャッフルの群です.あるカードのシャッフルのさせ方がある対称群の元に対応します.

対称群の元はカードからカードへの全単射を表しますので、それを $\sigma$ とすると
つまり、
$i$ 番目のカード → $\sigma(i)$ 番目のカード
シャッフルをしてもカードは増えたり減ったりしませんし、$k$ 番目にはたった一つのカードしかこれませんから、この写像は全単射となります.

群の積 $\cdot$ は、写像としての合成を取ります.
これは、シャッフルを続けて行うことを意味します.
記号としては、$\sigma,\tau\in S_n$ とするとき、$\sigma\cdot \tau$ を$\sigma\cdot\tau(i)=\sigma(\tau(i))$ として表します.また、
$\sigma$ の表し方として、$\sigma(k)=i_k$ となる置換を、記号として、
$\sigma=\begin{pmatrix}1&2&3&\cdots&n\\i_1&i_2&i_3&\cdots&i_n\end{pmatrix}$
と書くことがあります.

ちょっと高度な内容ですが、こちらに対称群の自己同型群について書いたことがあります.


巡回群

位数が $n$ の巡回群 $C_n$ とは、正 $n$ 角形を用意し、それを 平面上動かして、再び同じ正 $n$ 角形の位置に合わせる操作の群です.つまり、

位数 $n$ の巡回群が動かすもの
正 $n$ 角形が動かされるもの

です.積は、操作の合成とします.

正 $n$ 角形の頂点に $0,1,2,,...,n-1$ と番号を振っていったとき、この操作で、$0$ の行き先は $n$ 種類あります.そして、その他の頂点はその位置関係から自動的に決まってしまいます.1は0の隣、2は0の隣のとなり....という風に.

そうすると、$C_n$ の操作の個数が $n$ 個だけあることがわかります.

この操作は、たとえば、0 の行き先を $k$ としたとき、そのような操作は 角度 $2k\pi/n$ だけ回転させたものと同じであることがわかると思います.

つまり、巡回群 $C_n$ の操作はすべて回転によって表されます.

このとき、$C_n$ を回転する角度だけ書けば、
$$0, 2\pi/n,\ 4\pi/n,\ 6\pi/n,\ \ ....,  (n-1)2\pi/n$$
となります. つまり $C_n$ の元の個数は $n$ で、それぞれは、$2k\pi/n$ だけの回転となるのです.

この群の生成元は、$2\pi/n$ 回転の操作です.この回転を何回かしてやると、全ての位数 $n$ の巡回群の元を作ることができます.

また、上の角度を、下のように生成元の倍数だけを簡略化して書くと、

$$0,1,2,\cdots,n-1$$

のようになります.つまり、$C_n$ の元はこの $n$ この整数と思っても問題ないことになります.
このとき、群の積は、この整数同士の足し算になります.つまり、
$4\pi/n$ 回転と $6\pi/n$ 回転の積は、$10\pi/n$ 回転の元を生みます.

よって、整数で表したときは、$2+3=5$ となり、整数の足し算とも符合します.
また、足し算した結果が $n$ 以上になるときは、$n$ で割った余りをとれば、よいこともすぐわかるでしょう.

整数の上の足し算の規則において、普通に整数として足したあと、$n$ で割った余りを取るような規則で得られるものを ${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ と書きます.${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ は、集合としては $0$ から $n-1$ までの整数からなり、足し算を上のように入れたものを表します.この集合は、足し算を群の積と考えることで、群になります.

よって、この ${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ は群として $C_n$ と全く同じ構造を持ちます.そのことを同型といいます.ちゃんと同型の定義を書きます.
群 $G,G'$ が同型であるとは、全単射な写像 $f:G\to G'$ が存在して、任意の $x,y\in G$ に対して、
$$f(xy)=f(x)f(y)$$
が成り立つことです.つまり、群の積の構造を含めて全単射が存在することです.

$C_n$ と ${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ は同型となり、
$$C_n\cong {\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$$
と書きます.

よって、足し算は可換ですから、位数 $n$ の巡回群も可換となることがわかると思います.よって、群を調べるときは、この同型対応をみることで、その性質が判明することがあります.

ちなみに、正 $n$ 角形を動かす操作として裏返しの操作もありとしてやると、この操作全体はもはや巡回群ではありません.位数 $2n$ の非可換群になります.

2015年10月3日土曜日

微積分II演習(第1回)

[場所1E103(金曜日5限)]

HPに行く.

2015年度秋学期に筑波大学の物理類1年生向けに行った微積分II演習の内容を
このブログ上で書いていきたいと思います。授業中に変なことを言ったりすることもありますので、その訂正とかです.


去年も同じ授業を数学類向けに行い、そのときの様子もブログに残してありますので、
横のカテゴリーから「微積分II演習(2014)」を探して参照してみてください.

ちなみに、今日行った授業の1年前のバージョンは
http://motochans.blogspot.jp/2014/10/ii1_4.html
にあります.

また、今学期の手習い塾はまだ時間が決まっていないそうですが、直に始まると
思います.



さて、

今日は前期の復習をしました.

関数の連続性の復習

関数 が $x=a$ で連続であるとは、

任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$|x-a|<\delta$ を満たす任意の $x$ に対して、$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ が成り立つ.

ということです.
つまり、どんな実数 $\epsilon>0$ に対しても、「何か」を満たすような
$\delta>0$ がとれますよ.
ということを言っています.

どうしてそのことが、関数の連続性を言うのかについては、
少しだけ数学の深い内容ですし、
春学期にやっている(?)と思うので省略します.
気になる人は自分で考えてみてください.
きっとわかると思います.


この授業ではその手順の方を教えました.

授業でやった通りのことをここでもやってみます.

$y=2x$ が $x=a$ で連続であること.

まず、任意に $\epsilon>0$ を取ります
次に $\delta>0$ を「何か」を満たすようにうまくとる必要がありますが、
あとで  $\delta$ を考える都合上先に進みます.

何を満たす $\delta$ が必要かというと、
任意の $|x-a|<\delta$ に対して、$|2x-2a|<\epsilon$ を満たす.
ような $\delta>0$ です.

式変形すると、$|x-a|<\delta$ ならば、$2|x-a|<\epsilon$ を満たすものです.

そのような $\delta$ は $\delta\le \frac{\epsilon}2$ であればよいはずです.
よってそのような $\delta$ はいくらでも取れますから、$y=2x$ は
$x=a$ で連続であることがわかります.

次は

$y=x^2$ の $x=a$ での連続性を示します.

最初に、$\epsilon>0$ を取ってきます.

次に、
$|x-a|<\delta$ ならば、$|x^2-a^2|<\epsilon$ を満たすように
$\delta>0$ が取れるかという問題です.

最初の条件は、$a-\delta<x<a+\delta$ ですから、$2a-\delta<x+a<2a+\delta$
となり、もし、$a>0$ と仮定すれば、$\delta<2a$ を満たすように $\delta$ をとって
おくことができます.

$2a-\delta<|x+a|<2a+\delta$ がいえます.

よって、

$|x^2-a^2|<(2a+\delta)\delta<\epsilon$

を満たすようにとるためには、2次不等式 $\delta^2+2a\delta-\epsilon<0$ を満たすように
$\delta$ が取れれば十分です.
実際これを解いて、

$$-a-\sqrt{a^2+\epsilon}<\delta<-a+\sqrt{a^2+\epsilon}$$
をみたすような、$\delta>0$をとってこれば、
$(2a+\delta)\delta<\epsilon$ を満たし、$|x^2-a^2|<\epsilon$ を満たします.

実際、$0<\delta<-a+\sqrt{a^2+\epsilon}$ なる実数は存在します.
上と合わせれば、$\delta<\min(-a+\sqrt{a^2+\epsilon},2a)$ なる $\delta$ をとってこれば
よいのです.

よって、そのような $\delta$ をとってこれば、$|x-a|<\delta$ ならば、$|x^2-a^2|<\epsilon$
を満たすように取れます.

授業では、2次不等式の時点で、$\delta<a+\sqrt{a^2+\epsilon}$ とやってしまって、
$\delta=a$ としてしまった気がします.

$a<0$ ではどのようになるか?
$\delta<-2a$ となるような $\delta$ をとれば、
$$-2a-\delta<|x+a|<-2a+\delta$$
となり、$|x^2-a^2|<\delta(-2a+\delta)<\epsilon$ を満たす $\delta>0$ が取れるか
という問題になります.

このように連続性を $\epsilon-\delta$ を使って定義に戻るのは
大変ですから、来週以降からは、少し違った形で連続性を扱っていきます.

しかし、このように、$\epsilon-\delta$ でも議論できることは重要です.


微分法

微分法についてはあまりやりませんでしたが、春学期にやった、
積の微分法、合成関数の微分法、逆関数の微分法、などなどは
当たり前に使えておく必要があります.

今日は、逆三角関数さんに登場してもらって逆関数の微分法の復習をしました.

テイラー(マクローリン)展開の方法

テイラー展開とは関数をべき級数の無限和を使って書くことですが、

$f(x)=\frac{1}{1-x}$ などの関数は、$n$回微分を計算し、マクローリン展開の
公式に当てはめればよいでしょう.
マクローリン展開は $x=0$ でのテイラー展開のことです.

実際、$f(x)$ がマクローリン展開できるとすると、その形は、任意の $n$ に対して、

$f(x)=\sum_{k=0}^n\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k+O(x^{n+1})$ となります.
スモールオーを使って書けば、
$f(x)=\sum_{k=0}^n\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k+o(x^{n})$ となります.

ラージオーの意味は、$O(h(x))$ は、$h(x)$ と同程度の速さで収束(or発散)する関数のことです.
スモールオーの方は、$O(h(x))$ は、$h(x)$ より速い速さで収束(or発散)する関数のことです.

このラージオーやスモールオーはランダウの記号と呼ばれ、
私がちょうど一年前に書いた、
こちらや、こちらにかきました.

広義積分

広義積分とは、範囲に無限大を含むような積分や、関数が発散するような点を含むような
範囲での積分のことです.
通常の積分に極限操作を込みで行ったものと考えれば考えやすいかもしれません.

たとえば、

$\int_0^\infty e^{-x}dx$ などですが、考えるときは、$\lim_{a\to \infty}\int_0^ae^{-x}dx$
などと極限操作を切り離して、
$\lim_{a\to\infty}[-e^{-x}]_0^a=\lim_{a\to\infty}(-e^{-a}+1)=1$
となるわけです.


広義積分の収束について

広義積分はむやみに設定しても収束しないことがあることはわかると思います.
収束発散を示す方法は今日説明しました.

$\int_1^\infty\frac{dx}{x^s}$ や$\int_0^1\frac{dx}{x^s}$ の収束発散を使うのでした.

つまり、この収束発散の様子を使って、応用するのです.
最後に残ってしまった問題をやります.

$\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{x+1}-1}$ でした.
$\frac{1}{x}$ との大小を比較すると、実は、

$\frac{1}{\sqrt{1+x}-1}>\frac{1}{x}\Leftrightarrow x>\sqrt{1+x}-1\Leftrightarrow \sqrt{1+x}>1$
となり、この不等式が成り立つのです.

この両方に積分をしてやることで、

$\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{1+x}-1}>\int_0^1\frac{dx}{x}=\lim_{a\to 0}[\log x]_a^1$
となりますが、右辺は発散するので、当然左辺も発散します.

よって、広義積分 $\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{1+x}-1}$ は発散します.


面積について

面積についてやろうと思っていたのですが、時間がありませんでした.

宿題の2番目についてですが、アステロイドで囲まれる面積を求める問題で、
アステロイドをパラメータ表示してやればできると思います.


来週やる小テストは、宿題の類題(教科書にあるもの)の中から
出す予定です.