2014年12月26日金曜日

微積分II演習(第9回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

今日は広義重積分と、パラメータを含む関数の積分の微分を行いました.
  • 広義重積分
  • パラメータを含む関数の積分の微分

広義重積分
 広義重積分で重要なのはその積分が収束するかどうかということですが、収束するかどうかは検証する必要があります.

 まず、広義積分可能であるとは領域 $D$ の任意の有界閉集合の増大列
$$D_1\subset D_2\subset D_3\cdots$$
が存在して、$D=\cup_{n=1}^\infty D_n$ が成り立つとします.関数 $f(x,y)$ が各 $D_n$において積分可能とするとき、
$$\lim_{n\to\infty}\int\int_{D_n }f(x,y)dxdy$$
が収束するとき、$\int\int_Df(x,y)dxdy$ は収束するといいます.

問題は任意の増大列をとって収束するかどうかをチェックする必要があるということです.
しかし、$g(x,y)\ge 0$ であれば、収束する増大列が一つ存在すれば十分です.

また、絶対収束という立場で、$|f(x,y)|\le g(x,y)$が成り立ち、$\int\int_Dg(x,y)dxdy$が収束すれば、$\int\int_Df(x,y)dxdy$も収束します.
条件収束の形の問題は収束を示すのが困難です.

一変数の広義積分では、例えば、$[1,\infty)$の区間での広義積分は、
$|f(x)|$ を $\frac{1}{x^s}$ のようなべき関数で比較して、$|f(x)|\le \frac{1}{x^s}\ \ (s>1)$ であれば収束し、
$|f(x)|\ge \frac{1}{x^s}\ \ (s\le 1)$ であれば、発散します.
$\int_1^{\infty}f(x)dx\le \int_1^{\infty}\frac{dx}{x^2}<\infty $
と比べることで、広義積分の収束を議論しました.
つまり、$|f(x)x^s|,\ \ (s>1)$が$x\to \infty$ で有界であればよいことになります.
これはランダウの記号でかけば、$f(x)=O(\frac{1}{x^s})\ \ (x\to \infty)$ です.
要するに $\frac{1}{x}$ が収束発散の境目あたりということになります.

例えば$\int_1^\infty\frac{dx}{\sqrt{x^4+1}}$ の収束や$\int_1^\infty\frac1{\sqrt{x^3+x^2}}$
は収束しますが、
$\int_0^\infty\frac{xdx}{x^2+x+1}$ などは収束しません.

また、上の判定法が万能というわけではなく、 $\int_2^\infty\frac{dx}{x\log x}$ などは上の判定からはわかりませんが収束しません.
$\int \frac{dx}{x\log x}=\log\log x$ であることを使うか、変数変換をして、
$\int_{\log 2}^\infty\frac{dy}{y}$ として上記の判定法に帰着させるかです.
つまり、$\int_2^\infty\frac{dx}{x(\log x)^s}$ は、$s>1$ であるなら収束はします.
このような関数もべき関数の次に判定として使える関数であることがわかりますね.
$\int_2^\infty\frac{\sin \frac{1}{x}(\log x+1)dx}{(\log x)^2(\log x+2x)}$ なども
適当に作った積分ですが、収束するということでしょうか.

2変数では、広義積分可能であるためには比べる関数は $\frac{1}{x}$ や $\frac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}$ が境目というわけではありません.
重積分は一変数の積分を2回することになるのでこれでは収束に足りないでしょう.
つまり、$\frac{1}{(x^2+y^2)^{\frac{s}{2}}}$ としたときに、$s>2$であれば、収束します.

無限大に発散する領域上の積分においては、いつもの優級数法などで収束を示す場合、
$f(x,y)\le \frac{C}{(x^2+y^2)^{\frac{s}{2}}}$ ただし、$s>2$ なる状況を作っておいて
無限大の方向に右辺が収束するから $\int\int_Df(x,y)dxdy$ の収束する
などとやるとよいでしょう.

実際、$D=\{(x,y)|1\le x^2+y^2\}$ において、
$\int\int_D\frac{dxdy}{(x^2+y^2)^{\frac{s}{2}}}=\int_0^{2\pi}\int_1^\infty\frac{drd\theta}{r^{s-1}}$ となりますので
$s>2$ であれば収束します.


授業で取り上げなかった問題をやってみます.

例題9-1(5)
極座標で変換してやると $D_n=\{(x,y)|x^2+y^2\le n^2\}$ として、
$\int\int_{D_n}\frac{dxdy}{(x^2+y^2+1)^2}=\int_0^{2\pi}\int_0^n\frac{rdrd\theta}{(r^2+1)^2}=2\pi\int_0^{n}\frac{rdr}{(r^2+1)^2}=\pi\int_1^{n^2+1}\frac{ds}{s^2},\ \ (s=r^2+1)$
$=\pi\left[-\frac{1}{s}\right]_1^{n^2+1}=\pi(1-\frac{1}{n^2+1})\to \pi\ \ \ (n\to \infty)$
故に、広義積分は収束し値は $\pi$になる.

パラメータのある関数の積分

 パラメータのある関数とは $f(x,y)$ のうち $y$ の方をパラメータと考えて
$\int_a^bf(x,y)dx$ とする積分のことですが、これは$y$の関数になっており、
それを $F(y)$ とするとき、$F(y)$ の微分可能性については、$f(x,y)$が$y$について
偏微分可能であり、 $f_y(x,y)$ が両方の成分に関して連続.つまり $f_y(x,y)$ が
2変数関数として連続であれば $y$ について微分でき、
$$\frac{d}{dy}F(y)=\int_a^bf_y(x,y)dx$$
となります.
つまり微分と積分を順番を入れ替えてもよいことになります.
ただし、$a,b$ は$y$ に依らない定数とします.
積分が広義積分である場合は$\int_a^bf_y(x,y)dx$ の広義積分が収束する
必要があります.

演習で途中までになってしまったものを最後までやっておきます.
$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log(a^2\cos^2x+b^2\sin^2x)dx=F(a,b)$ とすると、
被積分関数の $a$ での微分は
$\frac{2a\cos^2x}{a^2\cos^2x+b^2\sin^2x}=\frac{2a}{a^2+b^2\tan^2x}$ ですが、
$0<x<\frac{\pi}{2}$, $0<a<\infty$ において明かに連続です.

$$F_a(a,b)=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{2a}{a^2+b^2\tan^2x}dx=2a\int_a^{\infty}\frac{1}{a^2+b^2t^2}\frac{dt}{1+t^2}$$
$$=\frac{2a}{b^2-a^2}\int_0^{\infty}\left(\frac{b^2}{a^2+b^2t^2}-\frac{1}{1+t^2}\right)dt$$
$$=\frac{2a}{b^2-a^2}\left(\frac{b}{a}-1\right)\int_0^{\infty}\frac{dt}{1+t^2}=\frac{2}{a+b}\lim_{\theta\to \infty}\text{Arctan}\theta$$
$$=\frac{\pi}{a+b}$$
ゆえに、$F(a,b)=\pi\log(a+b)+C(b)$ となる.
$F(0,b)=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log(b^2\sin^2x)dx=\pi\int_0^{\frac{\pi}{2}}(\log b)dx+2\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log\sin xdx=\pi\log b+\pi(-\log2)$
つまり、$C(b)=-\pi\log2$ よって、
$$F(a,b)=\pi\log\frac{a+b}{2}$$
となる.


2014年12月21日日曜日

線形代数II演習(第9回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]



今日は計量ベクトル空間をやりました。
  • 計量ベクトル空間の定義
  • 直交補空間の求め方.
計量ベクトル空間とは内積の入ったベクトル空間のことです.
内積と計量は言葉は違いますが同じものです.

高校のころに登場した内積を一般のベクトル空間に入れたいわけです.
目的は、ベクトルの長さを計ったり、直交性を調べたりすることです.

内積の出所はやはりピタゴラスの定理です.

直角三角形の3辺には、
$$a^2+b^2=c^2$$
なる関係があります.つまり、直線の長さはその座標のある2次式として記述できるというのです.

実際に 4次元空間において、2点の長さの距離を測った人はいませんが、1辺が1の正方形の対角線の長さが $\sqrt{2}$ や1辺が1の立方体の対角線の長さが $\sqrt{3}$ であることから
容易に想像がつきます.

4次元においては、3次元にもう一つ直交座標を加えて、1辺が1の超立方体の対角線の長さを測ると、3次元の立方体の対角線ともう一つの直交座標を加えてピタゴラスの定理を用いれば、
$r^2=(\sqrt{3})^2+1^2=4$ より、$r=\sqrt{4}=2$ となるのです.

このように、ピタゴラスの定理を繰り返し用いることで、原点から $(x_1,x_2,\cdots,x_n)\in {\Bbb R}^n$ までの距離 $r$ は
$$x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2=r^2$$
として計算できるのです.


また、2次元のベクトル ${\bf u}=(x_1,y_1),{\bf v}=(x_2,y_2)$ に対して、その2次式
$x_1y_1+x_2y_2$ は、その2つのベクトルの間の角度に関するになっています.
ベクトル ${\bf u}$ を$c$倍してやると、このも$c$倍になりますし、
${\bf v}$ を $c$ 倍してやってもこのは$c$ 倍になります.
なので、${\bf u}$ と ${\bf v}$ の両方のベクトルを長さ1にしてやります.
このを何を意味するのか?

2点 $(x_1,x_2),(y_1,y_2)$ の間の長さはピタゴラスの定理から $(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2=x_1^2+y_1^2+x_2^2+y_2^2-2x_1y_1-2x_2y_2$
がわかりますが、それぞれの点は原点からの長さは $1$ なので、
$(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2=2-2x_1y_1-2x_2y_2$
となります.
なので、$(0,0),(x_1,x_2),(y_1,y_2)$ で作られる三角形(3辺の長さが $a,b,c$ )に対して余弦定理を使うと、
$$\cos\theta=\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}=\frac{1+1-(2-2x_1y_1-2x_2y_2)}{2\cdot 1\cdot1}=x_1y_1+x_2y_2$$
となります.
つまり、共に長さが $1$ のベクトル $(x_1,x_2),(y_1,y_2)$ に対して、
量 $x_1y_1+x_2y_2$ はその間の角度 $\theta$ の $\cos\theta$ を与えることになるのです.

また、$(x_1,x_2)=(y_1,y_2)$ としておけば、上の量は、$x_1^2+x_1^2$ を表します.
角度が$0$ であり、ピタゴラスの定理から、この点までの長さの2乗を表します.
この積 $x_1y_1+x_2y_2$ を内積ということにすれば、内積はピタゴラスの定理を含んでいることになります.

こうして、この式には単なる式ではなく、その幾何的意味を与えることができたのです.
$$x_1y_1+x_2y_2\Leftrightarrow\text{長さや角度を与える}$$

数式にこめられた意味を用いて数学者は多くの議論が出来るともいえます.

次なる課題は、一般のベクトル空間に対して、例えば多項式同士の間の距離や連続関数の間の角度や距離をどのように与えればよいのか?ということです.

つまり一般のベクトル空間においても同じように距離を考えられないか?
$x_1x_2+y_1y_2$ なる式はないのか?しかし、多項式にどのように距離をいれてよいか普通分かりません.距離が自然に考えられないものに無理やりいれているわけですから.

そんなとき、どのようなものが距離や角度になったか、もう一度考え直してみます.
ベクトルの間の角度を測るような $x_1x_2+y_1y_2$ のような式があれば、距離も自然にできるわけですから、2つのベクトル ${\bf u}, {\bf v}$ の間に何か実数を与えるものがあればよい
それを、
$$({\bf u}, {\bf v})\in {\Bbb R}$$
としたのです.
そして、単なる2ベクトルから実数へのベクトルではなくて、${\bf u}$ と ${\bf v}$ に対して一次式になっている.つまり、2つで2次式になっていることがピタゴラスの定理から誘導されていたので、
$$(i)\ \ \ \ ({\bf u}+{\bf u}',{\bf v})=({\bf u},{\bf v})+({\bf u}',{\bf v})$$
$$(ii)\ \ \ \ (c{\bf u},{\bf v})=c({\bf u},{\bf v})$$
などを満たすこと.

を計量の定義に入れたのです.さらにこの内積からピタゴラスの定理のようなものを得たいとすれば、$({\bf u},{\bf u})$ は ${\bf u}$ の"長さ"の2乗になるようにするのです.
それで、$(iv)\ \ \ \ {\bf u}\neq {\bf 0}$ であれば、$({\bf u},{\bf u})>0$ となるようにする必要があります.

このような $(\cdot,\cdot)$ が与えられれば、これを一般のベクトルにおける距離を与える内積と呼ぼうということです.
自然なものがなければ、内積の性質だけ抜き出して、その性質をもつものは何でも"内積"としましょうとい考え方なのです.
また、$x_1y_1+x_2y_2$ には対称性がありますので、$(iii)\ \ \ \ \ ({\bf u},{\bf v})=({\bf v},{\bf u})$ という
性質が含まれています.
$x_1y_1+x_2y_2$ や一般に、$x_1y_1+x_2y_2+\cdots+x_ny_n$ などは ${\Bbb R}^2$ や ${\Bbb R}^n$ 上の標準内積と呼ばれます.
授業中でやった
$({\bf u},{\bf v})=2u_1v_1+u_1v_2+u_2v_1+2u_2v_2$ は標準的な内積では有りませんが、
内積の性質を持っていました.
この式の謎は、実は
$$({\bf u},{\bf v})=\begin{pmatrix}u_1&u_2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}2&1\\1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}v_1\\v_2\end{pmatrix}$$
と書けることです.つまり、一般に、数ベクトル ${\bf u},{\bf v}$ とある対称行列 $A$ があって、
$({\bf u},{\bf v})={}^t{\bf u}A{\bf v}$ とかけるとすると、上の性質 $(i),(ii),(iii)$ までは成り立ちます.
残りの、ピタゴラスの定理が復活するという $(iv)$ という性質は、この行列 $A$ の性質ということですが、これは、全ての $(x_1,x_2)\neq(0,0)$ に対して、 $({\bf u},{\bf u})$ が成り立つ必要があります.これは $A$ が正定値という性質です.
このような性質をもつ行列は、例えば、2次元の場合では、$\det(A)>0$ かつ、対角成分が正の数であることです.一般の場合には、固有値が全て正の数ということで片づけられますが、
固有値についてはこれまであまりやっていないので、この辺で終わることにします.
最後に、
授業中にしゃべっていた、
$$({\bf u},{\bf v})=\begin{pmatrix}u_1&u_2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}v_1\\v_2\end{pmatrix}$$
に相当する式は、内積を与えていないことがもうわかりますよね?
この行列 $A$ が正定値でないからです.$\det(A)=0$ になってしまいますよね?
もっといえば、${\bf u}=\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}$ とすると、
この式で内積を入れてしまえば、
$$({\bf u},{\bf u})=\begin{pmatrix}1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}=0$$
となり、非ゼロベクトルの内積が ゼロになってしまいます.

2014年12月17日水曜日

微積分II演習(第8回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]


今日は積分に入りました.
  • (ジョルダン)可測集合
  • 外測度ゼロ集合
  • 重積分を累次積分として計算できること.
  • 変数変換の公式を使うこと.
  • 積分範囲を理解して積分の順序を変えること.(アフィン変換など)

ジョルダン可測集合

有界なジョルダン可測な集合 $D$ 上で積分
$$\int_Df(x,y)dxdy$$
が定義されます.

まず、ジョルダン可測集合とは、その集合 $D$ 上で、定義関数 $\chi_D(x,y)$ を
$$\chi_D(x,y)=\begin{cases}1&(x,y)\in D\\0&(x,y)\not\in D\end{cases}$$
としたときに、$\chi_D$ が $D$ を含む任意の有界閉区間で積分可能であることとして定義されます.有界閉区間上での積分可能については、教科書を見てください.その積分値をジョルダン可測集合の面積といい、$\mu(D)$ と書きます.

そのようなジョルダン可測集合上で積分が定義されます.
ここで、平面上の有界閉区間とは、$[a,b]\times [c,d]=\{(x,y)|a\le x\le b,c\le y\le d\}$ を意味しています.

そして、有界なジョルダン可測集合 $D$上の関数 $f(x,y)$ が積分可能とは、$f(x,y)$ を$D$ を含む有界閉集合 $I$ 上に $f(x,y)$ をゼロ拡張をしておいて、 その拡張された関数が $I$ で積分可能であることです.

これで、ジョルダン可測集合と、その上の積分可能関数の定義が出来たことになります.


外測度ゼロ集合

集合 $D$ が外測度がゼロであるとは、$D$ を覆う 正方形の有限個の集合 $\{L_j\}$
$$D\subset L_1\cup L_2\cup\cdots\cup L_n$$
として、そのような $\{L_j\}$ の測度の下限をとることで、外測度が定義されます.
つまり、
$$\overline{\mu}(D)=\inf\left\{\sum_{j=1}^n\mu(L_j)|D\subset \cup_{j=1}^nL_j\right\}$$
ここで、$\mu(L_j)$ は四角形の面積です.



その集合 $D$ が外測度がゼロであれば、$D$ はジョルダン可測であり、面積 $0$
つまり、$\mu(D)=0$ となります.
また、面積ゼロ集合上の任意の有界な関数は積分可能で、$\int\int_Df(x,y)dxdy=0$ となります.

なので、外測度がゼロな集合は無視しても積分には関係がありません.


累次積分と重積分の計算

 $I=[a,b]\times [c,d]$ を有界閉区間とします.$f(x,y)$ が $I$ 上で積分可能であれば、
$$\int\int_If(x,y)dxdy=\int_c^d\int_a^bf(x,y)dxdy$$
と、累次積分を実行できます.

計算例は授業で何回かやって見せたので省略します.

変数変換の公式

$D$ を可測集合とし、一対一写像
$\varphi:D\to \varphi(D)\subset {\Bbb R}^2$
があるとします.
$(x,y)=(\varphi_1(u,v),\varphi_2(u,v))$ とします.
このとき、
$$\int\int_{\varphi(D)}f(x,y)dxdy=\int\int_Df(\varphi_1(u,v),\varphi_2(u,v))|\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}|dudv$$
が成り立ちます.
これを変数変換の公式といいます.


授業ではこのような領域で積分を実行しました.
行列 $\begin{pmatrix}1&1\\-1&1\end{pmatrix}$ を左から掛ける線形写像によって、
閉区間 $[0,1]\times [0,1]$ の積分に直すことができます.
ヤコビアンもこの行列式に等しいので、2となります.
この領域を $D$ とすると、$x=\varphi_1(u,v)=u+v,y=\varphi_2(u,v)=-u+v$ なので、
$$\int\int_D(x-y)e^{x+y}dxdy=\int\int_{[0,1]\times[0,1]}2ue^{2v}2dudv$$
$$=4\int_0^1\int_0^1ue^{2v}dudv=4\int_0^1udu\int_0^1e^{2v}dv=2(e^2-1)$$

となります.

外測度$0$上の積分はいつでも$0$ ですから、外測度が$0$ の集合で、写像が一対一にになっていなくても、この変数変換の公式は成り立ちます.

2014年12月16日火曜日

線形代数II演習(第8回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

今日は表現行列についてやりました.
  • 表現行列の求め方
  • 基底の変換行列と表現行列の関係

表現行列

表現行列を求めることは、抽象的なベクトル空間の間の線形写像を具体的な行列データとして取り出すことです.

求め方は前やった表示行列と同じです.
$f:V\to W$ を線形写像とし、$V,W$ の基底を${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$、${\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m$ とすると、
$$(f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)A$$
と書いた時の$m\times n$ 行列 $A$ を$f$ の基底 ${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ と ${\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m$ に関する表現行列といいます.

つまり、表現行列は、$(f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n))$ の、基底 $({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)$ による表示行列ということです.

何を表現しているかというと、線形写像 $f:V\to W$ を行列によって表現しているということです.

基底の変換行列との関係

基底の変換行列との関係を述べます.これは授業で公式だけ述べました.

基底の変換行列は
$$({\bf v}'_1,\cdots,{\bf v}'_n)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)P$$
$$({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)Q$$
となります.
さらに、表現行列はそれぞれ、定義から、
$$(f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)A$$
$$(f({\bf v}'_1),\cdots, f({\bf v}'_n))=({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)B$$
ですが、これらを使って証明してみます.

${\bf v}'_i=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n){\bf p}_i$ となります.つまり、 $P=({\bf p}_1\cdots{\bf p}_n)$

です.
線形性から、
$f({\bf v}'_i)=(f({\bf v}_1),\cdots,f({\bf v}_n)){\bf p}_i$
となりますので、上の式を用いて

$(f({\bf v}'_1),\cdots, f({\bf v}'_n))=(f({\bf v}_1),\cdots,f({\bf v}_n))P=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)AP$
となります.
上の $Q$ のある式に右から$Q^{-1}$ をかけて、
$({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)Q^{-1}=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)$
となるので、
$(f({\bf v}'_1),\cdots, f({\bf v}'_n))=({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)Q^{-1}AP$
が成り立ちます.よって、等式で結べば、

$({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)Q^{-1}AP=({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)B$
となり、$({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)$ は一次独立ですので、$Q^{-1}AP=B$ という
等式が成り立つことになります.

特に、$V=W$ のとき、同じ基底をとれば、基底の変換行列も当然 $P=Q$ となりますので、
$B=P^{-1}AP$ が成り立ちます.

なので、ベクトル空間の基底を取り換えれば、表現行列が

$$A\to Q^{-1}AP$$

のように変わっていきます.


表現行列を取り換えると $\text{Ker}(f)$ や $\text{Im}(f)$ がわかる

ベクトル空間の間の線形写像
$$f:V\to W$$
に対して基底を選ぶことで表現行列 $A$ を得ましたが、$A$ から、 $f$ がどのような線形写像であるか理解するためには、$A$ がなるべく簡単な方がよいです.
そのためには、基底はそのためによいものを選ぶ必要があります.
他の例で言えば、行列のランクがわかるためには行列を簡約階段行列にし変形しておかないといけません.簡約階段行列がランクを求める上ではよい行列ということです.

線形写像がわかるとは、ほぼ、$\text{Ker}(f)$ や $\text{Im}(f)$ がわかることと言ってもよいです.ベクトル空間の基底をいろいろと取り換えて、表現行列を簡単なものにすることで $\text{Ker}(f)$ や $\text{Im}(f)$ の基底がわかるようになります.
$A$ を $Q^{-1}AP$ と変形することは行および列で基本変形を繰り返していることになります.
$Q^{-1}$ の積は、行の基本変形、$P$ の積は列の基本変形.

ですから、$Q^{-1}AP=\begin{pmatrix}E_r&O_{r,n}\\O_{m,r}&O_{m,n}\end{pmatrix}$
のような行列に変形することができます.ここで、$E_r$ は$r$ 次の単位行列、$O_{k,l}$ は$k\times l$ 次のゼロ行列.

このときの基底をそれぞれ、${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_{r+n}$、${\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_{r+m}$ とすると、
$(f({\bf v}_1),\cdots,f({\bf v}_{r+n}))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_{r+m})Q^{-1}AP=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_{r+m})\begin{pmatrix}E_r&O_{r,n}\\O_{m,r}&O_{m,n}\end{pmatrix}$
となります.
${\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_r$ が $\text{Im}(f)$ の基底となり、${\bf v}_{r+1}\cdots{\bf v}_{r+n}$ が
$\text{Ker}(f)$ の基底となります.
また、$\langle{\bf v}_{1}\cdots{\bf v}_{r}\rangle$ は$f$ によって $W$ の中に同型に写されます.


$f:V\to V$ に対して、共通の基底 ${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ に対して表現行列を考える場合には、$A\to P^{-1}AP$ なる変形を考えて$A$ を簡単なものにする必要があります.
これは、ジョルダン標準形が有ります.任意の線形写像、$f:V\to V$ に対してそれがどのような線形写像であるかはその行列に付随するジョルダン標準形によって区別されます.
2年生以降でこれらは習います.

2014年12月11日木曜日

線形代数II演習第6回レポートについて

線形代数II演習のレポートの解答について、

学生のレポートをみていて気になった箇所について書きます.

数学の解答は自分だけのものではなく、誰かに読んでもらうことを念頭に置いて書いてください.

数学に限らず、人に読んで理解してもらえる文章をこころがけましょう.

  • 自分だけがわかる記号などはやめること.その記号が何なのか定義がないと読めません.
  • 定義されていない(もしくはできないような)書き方は避けること、以下に書くように、行列$A$ として、$\dim (A)$ やベクトル空間を $V$ として $Ker(V)$ など、自分が書いた数式に本当に意味があるかどうか見直してみることも大事です.そうすると、自分が何をしているのかはっきりしてきます.
  • 国語として主語と目的語が何かいちいち自分に問いかけてください.必要だと思えばそれらは補って書いた方が誤解が少ないです.それらを省略する場合はいかにも分かっており回りくどいと思われるときだけです.読んでもらう人には、自分にとってはほとんど当たり前と思えるようなレベルで書いていくとよいのです.
  • 相手は何も分からない小学生だと思って、「いい?わかる?だって○○でしょ、だからこうなるよね?で、こうなって....こうしたんだよ.だから証明できたでしょ.」などと思いながら丁寧にやると丁度よいくらいです.

大変多かったのは、

$a_0E+a_1A+\cdots+a_mA^m=\begin{pmatrix}a_0&0&\cdots&\cdots\\0&a_0&\cdots&\\0&\cdots\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}a_1\lambda_1&0&\cdots&\cdots\\0&a_1\lambda_2&\cdots&\\0&\cdots\end{pmatrix}+\cdots\begin{pmatrix}a_{n-1}\lambda_1^{n-1}&0&\cdots&\cdots\\0&a_{m-1}\lambda_2^{m-1}&\cdots&\\0&\cdots\end{pmatrix}=(a_0+a_1\lambda_1+\cdots+a_m\lambda_{m-1})\begin{pmatrix}1\\0\\\vdots\\0\end{pmatrix}+\cdots$
などと途中まで$n\times n$行列で書いているのに最後になぜか$n$次元ベクトルになっている.

今回のレポートに限らず集合とその元を混同しているもの.

${\Bbb C}[A]=a_0E+a_1A+\cdots+a_mA^m$

と書いている人も少なからずいます.さらにこの式を変形している人もいますが、

この等式?は左辺は$A$ の多項式全体の集合なのに、右辺はその多項式を書いています.

${\Bbb R}=3$ のように書いているのと同じですが、普通このように書きませんよね?
実数$=3$は誰だっておかしいと思います.

書くなら
${\Bbb C}[A]\ni a_0E+a_1A+\cdots+a_mA^m$ や
${\Bbb R}\ni 3$
と書くべきです.


C-6-1(2)
$\begin{cases}
a_0+a_1\lambda_1+a_2\lambda_1+\cdots+a_{n-1}\lambda_1^{n-1}=0\\
\cdots\\
a_0+a_1\lambda_{n}+a_2\lambda_n+\cdots+a_{n-1}\lambda_n^{n-1}=0
\end{cases}$
となっており、$\lambda_1\cdots,\lambda_n$
が相異なるので$a_0=a_1=\cdots=a_{n-1}=0$ となると
単に書いてある答案が多かったです.
なぜこの式から全て $0$ がいえるでしょうか?

線形代数を習っているのだから、一次式の連立方程式が出てきたら
線形代数を是非とも使ってください.
$$\begin{pmatrix}1&\lambda_1&\lambda_1^2&\cdots\\1&\lambda_2&\lambda_2^2&\cdots\\\cdots\\1&\lambda_n&\lambda_n^2&\cdots\\\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a_0\\a_1\\\vdots\\a_{n-1}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\\vdots\\0\end{pmatrix}$$
この行列が逆行列をもつかどうかが $\{E,A,\cdots,A^m\}$ が一次独立かどうかに依存することになります.
こうするとファンデルモンテの行列式が出ますね?

$\lambda_i\neq \lambda_j\ \ (i\neq j)$ が本質的にどこで用いたのか分からない解答もちらほらありました.
使っていない条件があれば、どこで使うのか考えてみてください。


詰将棋で、使っていない手持ち駒があったら変だと思うのと同じ感覚です.


以下意味不明な文章
  • $\lambda_1,\cdots,\lambda_n$ が線形独立である.
線形独立であるのはベクトルに用いる言葉です.スカラーには意味が有りません.
  • $\dim(A^i)$ を計算しているもの.
行列に対する次元の定義は有りません.
$\dim(V)$ において意味が有るのは$V$がベクトル空間などの場合です.

同じように、$Ker(F)$ や $Im(F)$ も $F$ が線形写像など写像でないと少なくとも意味が通りません. $V$ をベクトル空間なのに $Ker(V)$ や$Ker(7)$ などの定義は意味が有りません.

C-6-2
有理数$=\sqrt{2}$ となることを使って矛盾を導くことがでいればよかったのですが、
背理法をうまく使うことができていない答案が多かったです.

3つのときも、単に、そのような有理数がないとなっている答案もありました。
どうしてそうなのか?要証明です.

2014年12月9日火曜日

微積分II演習(第7回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

HPに行く.

今日は以下のような内容でした.
  • ラグランジュの未定乗数法
  • 特に、条件 $g(x,y)=0$ における関数 $f(x,y)$ の臨界点.
  • 条件付き関数の極値の判定
  • 円盤上の関数の最大最小問題

ラグランジュの未定乗数法
 この方法は、$g_i(x_1,\cdots,x_n)=0\ \  (i=1,\cdots,m)$ となる条件の下、関数 $f(x_1,\cdots,x_n)$ の臨界点(および極値)の満たす条件を求める方法です.

 この条件の下、関数がそこで、微分が消えている必要があります.ただし、この微分の方向は、
条件に沿っていないといけません.

$\lambda_i$ を実数の変数として、
$$H(x_1,\cdots,x_n,\lambda_1,\cdots,\lambda_m)=f(x_1,\cdots,x_n)-\sum_{i=1}^m\lambda_ig_i(x_1,\cdots,x_n)$$
とおくと、条件によって制限された関数の臨界点(および極点) $(a_1,\cdots,a_n)$ は
$H_{x_i}(a_1,\cdots,a_n,b_1,\cdots,b_m)=0\ \ (i=1,\cdots,n)$
$H_{\lambda_i}(a_1,\cdots,a_n,b_1,\cdots,b_m)=0\ \ (i=1,\cdots,m)$
を満たす.

これがラグランジュの未定乗数法です.
後半の式は条件式そのものですので、本質的に加わるのは前半の$n$ この式です.
このとき、付随的に $(b_1,\cdots,b_m)$ も求まります.

$n=2,m=1$ の場合にどうしてこのようなことが成り立つのか、$f,g$ の
勾配ベクトルを使って授業では説明しました.
$grad(f)$ と $grad(g)$ が条件付き極値の周辺では平行になることがキーポイントでした.

変数をもう一つずつ上げて、$n=3,m=2$ の場合にもう一度考えましょう.
$g_1(x,y,z)=g_2(x,y,z)=0$ なる条件をもつ集合において、関数 $f(x,y,z)$ の
極値を求めましょう.

$grad(g_1)=(g_{1,x},g_{1,y},g_{1,z})$ と $grad(g_2)=(g_{2,x},g_{2,y},g_{2,z})$となります.
$g_{i,x}$ などは偏微分 $\frac{\partial g_1}{\partial x}$ を表すことにします.
$$\begin{pmatrix}g_{1,x}&g_{1,y}&g_{1,z}\\g_{2,x}&g_{2,y}&g_{2,z}\end{pmatrix}$$
のランクが $2$ であるとします.
つまり、$grad(g_1)$ と $grad(g_2)$ が平行ではないことと同値です.

このとき、そのような点では $g_1(x,y,z)=g_2(x,y,z)=0$ は空間上の曲線になります.
$grad(g_1), grad(g_2)$ はその曲線に直交する2つのベクトルです.
下のような図になります.



接線の方向に垂直な方向(つまりこの円盤に含まれる方向)は法方向と呼ぶことにします.特にこの2つのベクトル $grad(g_1), grad(g_2)$ もこの曲線の法方向です.さらにその2つのベクトルの任意の一次結合 $\alpha grad(g_1)+\beta grad(g_2)$ も法方向です.逆に法方向はこの2つのベクトルの一次結合になります.

 この円い円盤はこの曲線に直交する平面を表しています.
この曲線に $f(x,y,z)$ の等高面を書き加えていくと、下のようになります.





ちょうど、$f=c_3$ が曲線と接しているときに、この曲線上関数 $f$ は極値の様相を呈していることがわかると思います.分からなければ、この図の意味を考えながらよく見てみましょう.
この絵のように等高面 $f=c_1,f=c_2,f=c_3$ とこの曲線 $g_1=g_2=0$ の交わりを接点の近くで見てください.(例えば $c_1<c_2<c_3$ のようにして追いかけていくと、この点で、極大点のようになっていることがわかるはずです.)
黒い点で書いているところは、曲面と曲線が交わったところです.

$f=c_3$ での接平面と直線との交点を $p$ とすると、$f=c_3$ の $p$ での接平面に、曲線の接線が含まれているような状況になります.下の図を見てください.


描かれている平面は、曲面 $f=c_3$ での接平面であり、その上に乗っている直線は直線の接線です.

特に、$grad(f)$ は曲線の法方向を向いています.
なので、ある実数 $\lambda_1,\lambda_2$ が存在して、
$$grad(f)=\lambda_1grad(g_1)+\lambda_2grad(g_2)\hspace{1cm}(\ast)$$
となるのです.

だから、上で $H=f-\lambda_1g_1-\lambda_2g_2$ としたときに、$(\ast)$ を成分ごと見れば $H_x=H_y=H_z=0$ が成り立つのです.
$\lambda_i$ での微分は単なる制約条件を意味します.


条件付き関数の極値
 条件付き関数の臨界点を求めることはラグランジュの未定乗数法でできますが、極値は少しめんどくさいです.
ラグランジュの未定乗数法は(陰関数定理)+(臨界点問題)を合わせたものとみなすこともできますので、極値を求める際には、(陰関数定理)+(極値問題)を合わせることになります.

例 $x^2+y^2=2$ の条件の下、 関数 $f(x,y)=y-x$ の極大、極小を求めよ.
授業でやりましたが、極値の計算をもう少し効率よくやります.

ラグランジュの未定乗数法の結果、
$H=y-x-\lambda(x^2+y^2-2)$ とおいて、臨界点を求めると、
$H_x=-1-2\lambda x=0,\ \  H_y=1-2\lambda y=0,\ \  H_\lambda=-x^2-y^2+2=0$ より、
$(x,y)=(1,-1),(-1,1)$ となり、この点が極値かどうかを判定します.
$g(x,y)=x^2+y^2-2$ とすると、
$(x,y)=(1,-1)$ 、のとき、 $g_y(1,-1)=-2\neq 0$ であるから、陰関数定理より陰関数 $y=\varphi_1(x)$ が存在して$g(x,\varphi_1(x))=0$ が成り立ちます.
$(x,y)=(-1,1)$ の場合も同じで陰関数 $y=\varphi_2(x)$ が存在します.

ゆえに、$g(x,\varphi_i(x))=0$ を微分することで、
$\varphi_i'(x)=-\frac{g_x(x,\varphi_i)}{g_y(x,\varphi_i)}=-\frac{x}{y}=-\frac{x}{\varphi_i(x)}$
より、
$\varphi_1'(1)=\varphi_2'(-1)=1$

$\varphi_i''(x)=(-\frac{x}{\varphi_i(x)})'=-\frac{\varphi_i(x)-x\varphi_i'(x)}{\varphi_i^2(x)}$
より、
$\varphi_1''(1)=-\frac{-1-1\cdot 1}{(-1)^2}=2$
$\varphi_2''(-1)=-\frac{1-(-1)\cdot 1}{1^2}=-2$

(式の形から、$\varphi_1''(1),\varphi_2''(-1)$ の値を出すところを少し効率よくしました.)

$G(x)=f(x,\varphi_i(x))=x-\varphi_i(x)$ とすると、
$G'(x)=1-\varphi_i'(x)$
$G''(x)=-\varphi_i''(x)$ なので
$G''(1)=-2<0$
$G''(-1)=2>0$
ゆえに、$(x,y)=(1,-1)$ のとき、極大値 $f(1,-1)=2$ をとり、
$(x,y)=(-1,1)$ のとき、極小値 $f(-1,1)=-2$ をとります.


円盤上の関数の最大最小問題
 円盤 $D=\{(x,y)\in{\Bbb R}^2|x^2+y^2\le 1\}$ において関数の最大最小を探す問題を考えます.円盤 $D$ は有界閉集合ですから連続関数であれば、$D$ に最大最小は存在します.それらは、$D$ の境界か、内部かどちらかで取るわけですから、それぞれで、最大最小を考えればよいことになります.ある点が最大最小であれば、その点で(広義な意味で)極値になっていないといけません.

例:$f(x,y)=xy$、のとき、$D$ で最大最小を求めよ.
内部において $f_x=f_y=0$ となる点は $(x,y)=(0,0)$ しかありません.
(もちろん境界にもそのような点はありません.)
しかし、原点でのヘッシアンは、$\det(H)=-1$ となり、内部には極値はありません.なので、内部で最大最小は取ることはできないことになります.
(この関数は何回も出てきましたね.)

よって、境界においてこの関数は最大最小をとることになるのです.なので境界に制限してみても大丈夫です.
$H=xy-\lambda(x^2+y^2-1)$ とすると、
$H_x=y-2\lambda x=0$
$H_y=x-2\lambda y=0$
$H_\lambda=-x^2-y^2+1=0$
より、$\begin{pmatrix}-2\lambda&1\\1&-2\lambda\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\end{pmatrix}$
となり、$x,y$ はどちらも $0$ ではありませんので、この行列の行列式は $0$ にならなければ なりません.
つまり、$\lambda=\pm\frac{1}{2}$ となります.$x,y$ も決定すれば、
$(x,y,\lambda)=(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{2}),(\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{2}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{2}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{2})$
となります.
このとき、$xy=\pm\frac{1}{2}$ となりますので、
$(x,y)=(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}})$
で最大 $\frac{1}{2}$ をとり、
$(x,y)=\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}})$
で最小 $-\frac{1}{2}$ をとります.

線形代数II演習(第7回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

今日やったことは線形写像でした.
  • 線形写像であることを示す方法
  • 核Kerを求める方法
  • 線形写像の作り方
  • 直和


線形写像

線形写像は、ベクトル空間 $V,W$ の間の写像 $f:V\to W$ で、以下の
性質を満たすものです.
任意の ${\bf v}_i,{\bf v}\in V,\alpha\in {\Bbb K}$(スカラー) に対して
$$f({\bf v}_1+{\bf v}_2)=f({\bf v}_1)+f({\bf v}_2)$$
$$f(\alpha{\bf v})=\alpha f({\bf v})$$
となる.

(写像とは$V$ の任意の元に対して唯一つの $W$ の元を対応させることをいいます.)

直和

直和というのは以前習いましたが、それは、$V$ の部分空間の直和に関してでした.
その部分空間の和が $V$ と一致するための条件など習ったわけですが、
今日習ったのは部分空間とは限らず、とにかく2つベクトル空間を持ってきて
それらの直和を定義しました.

$V,W$ を集合とし、$V\times W$ を $({\bf v},{\bf w})\ \ {\bf v}\in V,{\bf w}\in W$ という形の2つのペア全体にわたる集合のことを表し、2つの集合の直積集合といいます.

とくに、$V,W$ がベクトル空間の場合は、この直積集合上にもう一度ベクトル空間の構造を下のように入れることができます.${\bf v},{\bf v}'\in V,{\bf w},{\bf w}'\in W,\alpha\in {\Bbb K}$ とすると、
$$({\bf v},{\bf w})+({\bf v}',{\bf w}')=({\bf v}+{\bf v}',{\bf w}+{\bf w}')$$
$$\alpha({\bf v},{\bf w})=(\alpha{\bf v},\alpha{\bf w})$$
がなりたちます.

例えば$V,W$ を実数の空間としたときに${\Bbb R}\times {\Bbb R}$ が実数と実数の直積空間ですが、その上に上のように入れたベクトル空間の構造は平面のベクトル空間の構造と同じです.
なので、${\Bbb R}\times {\Bbb R}={\Bbb R}^2$ ということになります.
このように、直積集合に入ったベクトル空間を $V$ と $W$ の直和ということがあります.
同じように $V\oplus W$ と書きます.

元の書き方は授業では ${\bf v}\oplus {\bf w}$ を採用していましたが、教科書でも他の本でもそのような書き方はあまりしていないようでした.なので、単に、$({\bf v},{\bf w})$ として書こうと思います.

結局、$V\times W$ と書いても和が定義されていれば $V\oplus W$ でも同じものということにはなります.この辺はこれ以上あまり突っ込まずにいきます.

(もう少し一般には、直積と直和は少し違うのですが、今は次元が有限なので、
どちらも結局同じものになってしまいます.)

B-7-1(2)
$F:V\oplus V\to V$ を $F({\bf v},{\bf w})={\bf v}+{\bf w}$
$F$ が線形写像であるためには、任意の ${\bf x}_1,{\bf x}_2\in V\oplus V$ に対して
$F({\bf x}_1+{\bf x}_2)=F({\bf x}_1)+F({\bf x}_2)$ を満たすことを言えばよいのですが、

任意の ${\bf x}_1,{\bf x}_2$ は ${\bf x}_1=({\bf v}_1,{\bf w}_1),\ \ {\bf x}_2=({\bf v}_2,{\bf w}_2)$
と書くことができますので、
$F({\bf x}_1+{\bf x}_2)=F(({\bf v}_1,{\bf w}_1)+({\bf v}_2,{\bf w}_2))=F(({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w}_1+{\bf w}_2))$
$={\bf v}_1+{\bf  v}_2+{\bf w}_1+{\bf w}_2={\bf v}_1+{\bf w}_1+{\bf v}_2+{\bf w}_2$
$=F(({\bf v}_1,{\bf w}_1))+F(({\bf v}_2,{\bf w}_2))=F({\bf x}_1)+F({\bf x}_2)$
のようになりますが、これはそれぞれの式の意味が明らかになるように提示したものですのでここまで丁寧に書かなくてもいいですが、一つ一つやるとこんな感じになります.

$F(\alpha({\bf v},{\bf w}))=\alpha F({\bf v},{\bf w})$
の場合もやってみてください.

B-7-1(3)
$F:V\to V,\ \ F({\bf x})={\bf x}+{\bf x}_0$
線形写像ならば、$F({\bf 0})={\bf  0}$ が成り立ちます.
$F({\bf 0})=F({\bf 0}+{\bf 0})=F({\bf 0})+F({\bf 0})$
より、移項して、$F({\bf 0})={\bf 0}$ が成り立つわけです.
ゆえに、 $F({\bf 0})={\bf x}_0\neq {\bf 0}$
となり、線形写像でないことがわかります.

B-7-1(5,6)
が線形写像であるための性質としては、定義の各係数が
一次式(定数がなし)でなければなりません.
しかし、ちゃんと式で証明が必要です.
${\bf x}=a_0+a_1X+a_2X^2+a_3X^3$と
${\bf y}=b_0+b_1X+b_2X^2+b_3X^3$
を使って$F({\bf x}+{\bf y})=F({\bf x})+F({\bf y})$
を示しましょう.スカラー倍の方も同じです.
(6)の場合は2次以上の式や定数が含まれている多項式ですので、
線形性を満たさないベクトルを探しましょう.

B-7-1(7)
$F:P({\Bbb R})_2\to P({\Bbb R})_4$ の $F(f)(x)$ の書きかたですが
$F$ は関数から関数への写像ですから、 $F(f)$ はまた関数になります.
つまり、 $F(f):{\Bbb R}\to {\Bbb R}$ です.
なので、 $F(f)(x)=(f(x))^2$ はその関数の値が $(f(x))^2$ になるという意味です .
これも線形写像では有りませんが、そうならないベクトルを見つけるのはたやすいと
思います.

線形写像の作り方
 線形写像を作るには、上のような性質を満たす写像をベクトル空間の間に作る必要があります.そのような写像 $f:V\to W$ を作る方法は、基底の行き先を定めることです.
定めておけば、線形写像が全ての $V$ の元に対して作ることができます。

${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ を $V$ の基底とし、 $f({\bf v}_i)={\bf w}_i\in W$ として定めておくと、
任意の ${\bf v}\in V$ は ${\bf v}=c_1{\bf v}_1+\cdots c_n{\bf v}_n$ と一次結合で書くことができますので、$f$ が線形であるためには、${\bf v}$ の行き先は
$f({\bf v})=c_1f({\bf v}_1)+c_2f({\bf v}_2)+\cdots+c_nf({\bf v}_n)=c_1{\bf w}_1+c_2{\bf w}_2+\cdots+c_n{\bf w}_n\in W$ とならなければなりません.
よって、写像として $f$ が一つ定まったことになります.このようにして作った $f$ はさらに線形写像になります.やってみれば、
${\bf v}=c_1{\bf v}_1+\cdots+c_n{\bf v}_n$,
${\bf v}'=d_1{\bf v}_1+\cdots+d_n{\bf v}_n$
とすると、
$f({\bf v}+{\bf v}')=f((c_1+d_1){\bf v}_1+\cdots+(c_n+d_n){\bf v}_n)$
$=(c_1+d_1){\bf w}_1+(c_2+d_2){\bf w}_2+\cdots+(c_n+d_n){\bf w}_n$
$=c_1{\bf w}_1+\cdots+c_n{\bf w}_n+d_1{\bf w}_1+\cdots+d_n{\bf w}_n$
$=f(c_1{\bf v}_1+\cdots+c_n{\bf v}_n)+f(d_1{\bf v}_1+\cdots+d_n{\bf v}_n)$
$=f({\bf v})+f({\bf v}')$
となり、スカラー倍の方も同じようにやれば、線形性が成り立ちます.

つまり、線形写像を作るには基底の行き先を指定してやれば自動的に作れることがわかりました.
逆に線形写像が作られていれば、基底の行き先も定まっているわけですから
$$\text{線形写像を定めること}\Leftrightarrow \text{基底の行き先を決めること}$$
となるわけです.

B-7-3
の問題は、
$$f\text{が同型写像である}\Leftrightarrow \text{基底の $f$ の行き先が再び基底となること}$$
です.
$V$ の基底を $\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\}$ とすると、

「$f:V\to W$ が同型写像であること」
と、
「$\{f({\bf v}_1),f({\bf v}_2),\cdots,f({\bf v}_n)\}$ が $W$ の基底であること」

同値という意味です.

ちなみに、(線形)同型写像とは線形写像 $f:V\to W$ が全単射であることです.
授業では、$\{f({\bf v}_1),f({\bf v}_2),\cdots,f({\bf v}_n)\}$ が $W$ の基底であるなら
$f$ が同型写像であることを示しました.

逆は問題として残しておきます.誰か発表してください.

C-7-3
$Im(F)$ とはいっても ${\Bbb C}^3$ と同じですから $i$ は同型写像になっています.

2014年11月25日火曜日

微積分II演習(第6回)後半

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

HPに行く.

第6回の続きです。

陰関数定理II は第5回で説明したので、そちらを見てください.

陰関数定理III

 $F(x,y,z)=G(x,y,z)=0$ となる空間の内の曲線 $L$ が$x$ からの関数のグラフとして書けるかどうかという問題がこの場合の陰関数定理です.
$L$ の各点において、曲線が2つの曲面 $S_1=\{(x,y,z)|F(x,y,z)=0\}$, $S_2=\{(x,y,z)|G(x,y,z)=0\}$ の交差によって得られているとします.
また、$S_1,S_2$ は各点において接平面が存在するとしましょう.
つまり、関数 $w=F(x,y,z),w=G(x,y,z)$ の勾配ベクトルに対して $(F_x,F_y,F_z)\neq (0,0,0)$ かつ $(G_x,G_y,G_z)\neq (0,0,0)$ が成り立ちます.

$L$ の接方向 ${\bf v}$ が $x$-方向と直交しなければ $L$ が $x$- 軸からのグラフとしてかくことができます.
つまり、$x$-軸からみて、傾き無限大の関数のような形になっていなければいいのです.

勾配ベクトル $(F_x,F_y,F_z)$ $(G_x,G_y,G_z)$ は$S_1,S_2$ の垂直方向(法線方向)でもありますので、

$L$ の接線方向ベクトル ${\bf v}$ は
$${\bf v}\cdot(F_x,F_y,F_z)=0$$
$${\bf v}\cdot(G_x,G_y,G_z)=0$$
を満たします.

つまり、${\bf v}$ は $(F_x,F_y,F_z)$ と$(G_x,G_y,G_z)$ の外積と平行です.

3次元ベクトル ${\bf x}$ と${\bf y}$ に対して外積 ${\bf x}\times {\bf y}$ はある3次元ベクトルを
以下のように対応させます.
その外積ベクトル ${\bf x}\times {\bf y}$ は、${\bf x},{\bf y}$ に両方直交するベクトルであって、
その長さが ${\bf x}$ と ${\bf y}$ で作られる平行四辺形の面積に等しいものです.

よって、${\bf v}$ はある実数 $k$ を使って ${\bf v}=k\cdot(F_x,F_y,F_z)\times (G_x,G_y,G_z)$、
と書けます.

$L$ が $x$-軸からの関数にならないとすると、${\bf v}$ は $x$-軸方向 ${\bf e}_1=(1,0,0)$ と直交します.つまり、内積でいえば、
${\bf v}\cdot {\bf e}_1=0$
${\bf e}_1\cdot((F_x,F_y,F_z)\times (G_x,G_y,G_z))=0$
この左辺は
$\det\begin{pmatrix}1&0&0\\F_x&F_y&F_z\\G_x&G_y&G_z\end{pmatrix}$
なので、結局、
$\det\begin{pmatrix}1&0&0\\F_x&F_y&F_z\\G_x&G_y&G_z\end{pmatrix}=\det\begin{pmatrix}F_y&F_z\\G_y&G_z\end{pmatrix}\neq 0$ が成り立てば、 $L=S_1\cap S_2$ が$x$-軸からのグラフとしてかけることになります.

ここで使われた ${\bf x}\cdot ({\bf y}\times {\bf z})$ がその3つのベクトルを並べた $3\times 3$ 行列の行列式であるということは線形代数の知識です.教科書を見ましょう.

またその曲線 $L$ の速度ベクトル を求めると、陰関数 $y=f(x), z=g(x)$ として、
$F(x,f(x),g(x))$ を微分して、
$F_x+F_y\cdot f'+F_z\cdot g'=0$
$G_x+G_y\cdot f'+G_z\cdot g'=0$
 として、これを$f',g'$ の連立方程式と思って、
$\begin{pmatrix}F_y&F_z\\G_y&G_z\end{pmatrix}\begin{pmatrix}f'\\g'\end{pmatrix}=-\begin{pmatrix}F_x\\G_x\end{pmatrix}\Leftrightarrow \frac{\partial(F,G)}{\partial(y,z)}\begin{pmatrix}f'\\g'\end{pmatrix}=-\begin{pmatrix}G_z&-F_z\\-G_y&F_y\end{pmatrix}\begin{pmatrix}F_x\\G_x\end{pmatrix}$
ゆえに、
$\frac{\partial(F,G)}{\partial(y,z)}\begin{pmatrix}f'\\g'\end{pmatrix}=-\begin{pmatrix}F_xG_z-F_zG_x\\F_yG_x-F_xG_y\end{pmatrix}=-\begin{pmatrix}\frac{\partial(F,G)}{\partial(x,z)}\\\frac{\partial(F,G)}{\partial(y,x)}\end{pmatrix}$

よって$\frac{\partial(F,G)}{\partial(y,z)}$ を割ってやって、$f',g'$ がそれぞれプリントの式として求まります.

例1

簡単な例ですが、円柱を斜めに平面で切ったときにできる空中の楕円について考えます.

円柱 $F=(x-a)^2+(y-b)^2-1=0$ と、平面 $G=z-cy=0$
の満たす曲線斜めの楕円が $x$-軸からのグラフとして書けるためには、
$\det\begin{pmatrix}2(y-b)&0\\-c&1\end{pmatrix}=2(y-b)\neq 0$
であればよい.
よって $y=b$ つまり、 $(x,y,z)=(a\pm1,b,cb)$ のとき、以外では
曲線がグラフとしてかけます.
そのときの$x$ 座標としての速度ベクトルは、
$(1,-\frac{x-a}{y-b}, -\frac{c(x-a)}{y-b})$
となります.

例2

他の例では、
$F(x,y,z)=x^3+y^3+z^3, G(x,y,z)=x^2+y^2+z^2-1$
とすると、
$\frac{\partial(F,G)}{\partial(y,z)}=6yz(y-z)$
であり、$y\neq 0, z\neq 0, y\neq z$ のとき$x$ からの関数になっています.
具体的に求めると、
$(x,y.z)=(\pm\frac{1}{\sqrt{2}},0,\mp\frac{1}{\sqrt{2}}),\ (\pm\frac{1}{\sqrt{2}},\mp\frac{1}{\sqrt{2}},0),\ (\pm\frac{\sqrt{3}\sqrt[3]{2}}{3},\pm\frac{\sqrt{3}}{3},\pm\frac{\sqrt{3}}{3})$
の6点になります.

この6点では、曲線上を動いたとき、$x$ 軸から垂直になっています.
言い換えれば、この曲線を $x$-軸に射影してできる曲線上の関数の臨界点が
この6点ということです.

また$x$-軸からの写像としての速度ベクトルは、
$$(1,-\frac{x(x-z)}{y(y-z)},-\frac{x(y-x)}{z(y-z)})$$
となり、分母を払ってやれば、接線方向のベクトルは、
$$(yz(y-z),-xz(x-z),-xy(y-x))$$
となります.

2014年11月18日火曜日

線形代数II演習第5回宿題の間違い解答例

線形代数II演習レポート

を採点していて、以下の解答にバツもしくは三角がつきました.


5-2(1,2,3)
  • $C({\Bbb R})$ を多項式の集合と間違えているもの.
    $X=\sum_{k=0}^na_kx^k$ などと$X$ の意味を完全に取り違えているもの
  • 奇関数かつ偶関数の関数は $0$ のみと単に書いてあるもの.
  • $X=\langle f(x)\rangle, Y=\langle g(x)\rangle$や$f(x)\in g(x)$ など意味不明なもの.
  • 偶関数の和が偶関数、奇関数の和が奇関数とだけ書いてあるもの.むしろそれを証明する問題です.
  • $f_1(x)\in X,f_2(x)\in Y$ として取っているのに、$f_1(x)+f_2(x)$ など計算しており、意味がない.$X\cap Y$ の元として $f(x)\in X$ かつ $f(x)\in Y$ をとるべき.
  • $X$ の元が $ax+b$ と一次式で書けると書いてあるもの.$X$ は一次式の空間ではございません.連続関数全体の中の偶関数の空間です.
  • $f(x)=\frac{f(x)+f(-x)}{2}+\frac{f(x)-f(-x)}{2}$ と書けると書いてあり、これらが偶関数、奇関数であることを示していないものがありましたが、これは百歩譲ってマルにしました.
5-3(1)
  • $1,i$ を使った基底が4つ存在するとだけ書いてあるだけのもの
  • 基底らしきものを並べて、これらは基底となるから.とだけ書いています.
    それらが基底であることを証明しないと次元が4とはなりません.
  • $a+bi=a\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}+b\begin{pmatrix}0\\i\end{pmatrix}$ など複素数とベクトルを混同しているもの.
  • 基底であることを示す問題なのに基底であることをちゃんと示していないもの.
    もしくは、これこれは基底であるとかいてあるだけのもの.
  • ${\Bbb C}^2$ の集合の元がいつのまにか4つの成分で書かれているもの.
  • ${\Bbb C}^2$ の元 $\begin{pmatrix}a+bi\\c+di\end{pmatrix}$ を断りなしに
    $\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ などと行列に直して議論しているもの.
5-3(2)
  • $W$ が何としたのか書かれていないもの.
  • $W$ は$X$ と $Y$ の直和なので、と書いてあるもの.
  • すでに、${\Bbb C}^2=W\oplus {\Bbb R}^2$ と書いてあり直和になることが示されていないもの.
$C({\Bbb R})$ は多項式の空間ではないとコメントしたはずなのに
多項式を使って書いている人は複数見られて残念です.
前のブログを見てください.
$C({\Bbb R})$ は連続関数全体の空間です.

${\Bbb C}^2$ の中の実の基底は、
$(1,0),(i,0),(0,1),(0,i) $です.
任意の$(z_1,z_2)\in {\Bbb C}^2$は

と$z_j=a_j+ib_j$ と書いたとすると
$${\bf x}=(z_1,z_2)=(a_1+b_1i,a_2,b_2i)=a_1(1,0)+b_1(0,i)+a_2(1,0)+b_2(0,i)$$
のように4つのベクトルで書けますよね?
それぞれ、順番に ${\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3,{\bf v}_4$ と書くと、
$${\bf x}=a_1{\bf v}_1+b_1{\bf v}_2+a_2{\bf v}_3+b_2{\bf v}_4$$
と書けますね.

これは数ベクトルのような形をしていますが数ベクトルではございません.
立派な抽象実ベクトル空間です.2次元の ${\Bbb C}^2$に惑わされて
書いてあるものは三角もしくはバツです.

$X$ が部分空間であることの示し方.
$f,g\in X$ とする.
このとき、$f+g\in X$ であることを示す.
$f(-x)=f(x)$, $g(-x)=g(x)$ であるので、辺々足して、
$f(x)+g(x)=f(-x)+g(-x)$ となり、$f+g\in X$ となります.

$Y$ の方も同様.


そういうわけでレポートは結構、惨憺たるものでした.
試験は明日なのでまだ間に合います!!
勉強しましょう.
レポートは返せますので、もし返して欲しい人がいましたら
数学事務に預けておきますので今日の午後2時以降 D705に取りにいってください.

微積分II演習(第6回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

今日は以下の演習を行いました.
  • 特異点
  • 勾配ベクトル
  • 陰関数定理II ($F(x_1,x_2,\cdots,x_n)=0$ の形)
  • 陰関数定理III ($F(x,y,z)=G(x,y,z)=0$ の形)

以下、余計なことを書きすぎたので最後の2つについては書けませんでした。
またどこかでかきます.
次回はラグランジュの未定乗数法です.

特異点

ある方程式 $F(x_1,x_2,\cdots,x_n)=0$ を満たす点 $(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ の中で、
$$\begin{cases}F_{x_1}(a_1,a_2,\cdots,a_n)=0\\F_{x_2}(a_1,a_2,\cdots,a_n)=0\\\cdots\\F_{x_n}(a_1,a_2,\cdots,a_n)=0\end{cases}$$
を満たす点のことを特異点といいました.


勾配ベクトル

勾配ベクトルは以前やりましたが、ここでは
関数 $F(x,y)$ $F(x,y,z)$ に対してその役割と性質をまとめておきます.
関数 $z=F(x,y)$ $w=F(x,y,z)$ があったときにその勾配ベクトルとは
$\text{grad}(F)(x,y)=(F_x(x,y),F_y(x,y))$,
$\text{grad}(F)(x,y,z)=(F_x(x,y,z),F_y(x,y,z),F_z(x,y,z))$
などとなり、それぞれ、2次元上のベクトルと3次元上のベクトルになります.
これを勾配ベクトルといいます.

また、このとき、このベクトルたちは各点に与えられているので、
そのような状況をベクトル場、この場合は関数の勾配を与えているので
勾配ベクトル場とよばれます.
この場という言葉は物理(ヒッグズ場とか重力場とか)でも出てきますが、
この場合と同じような意味合いです.
空間の上の各点に一斉に与えられる一つの状態を表しています.


例えば $f(x,y)=x^2+y^2$ の場合の $\text{grac}(f)(x,y)=(2x,2y)$ の
様子は授業でもやりましたが、以下のようになります.

放射状になっているのは、各点において関数 $f(x,y)=x^2+y^2$ が増える方向が外向きであるからです.
もう一次元落として考えれば、$f(x)=x^2$ も、導関数 $f'(x)=2x$ であり、絶対値が大きくなる
に従って2倍のスピードでその傾きが増えています.
関数の接平面の傾きがだんだんと急になっていることを表しています.

また、同心円はこれらのベクトルに一斉に直交しますがその円は $f(x,y)$ を
一定とする集合 $V_c=\{(x,y)|x^2+y^2=c\}$ となる等高線を意味します.


皆さんにやってもらったのは $f(x,y)=xy$ でしたが、
その時は以下のようになりました.
矢印をつなげて書けば


$y=-x$ の近くの点から矢印をたどっていくと、

まず、原点方向に向かって流れ、向きを変えて
今度は $y=x$ の近くの点を通って無限大に流れていきます.
これは、馬の鞍の腹の方から登っていき、背中を通って馬の頭(もしくは尻)の方を
だどって登っていくことに対応しています.

ちなみに原点では矢印が有りませんからどこにも向かいません.
止まったままです.
このような点は$F_x(a,b)=F_y(a,b)=0$ ですから、関数 $z=F(x,y)$ の
臨界点であることに注意しましょう.


授業中に等高線も描きましたね.自分でももう一度やってみてください.

関数 $w=F(x,y,z)$ においても勾配ベクトル場があります.
関数のグラフは4次元 $(x,y,z,w)$ の中に入っている3次元の物体なので見えませんが、
その等高面 $F(x,y,z)=c$ は3次元の中の曲面として見ることができます.
それは等高面なのでそれと垂直な方向に勾配ベクトルが向いています.

例えば、$F(x,y,z)=x^2+y^2+z^2$ のときは、等高面 $x^2+y^2+z^2=c$ は同心球
のことで、勾配ベクトル場は $\text{grad}(F)(x,y,z)=(2x,2y,2z)$ ですので、
上と同様一点から矢印が湧き出しています.


一般の関数 $z=F(x,y)$ や $w=F(x,y,z)$ は臨界点が複数入り乱れ、その周りで
$\text{grad}(F)$ が動き回っていることになります.


$z=F(x,y)$ において、非退化な(ヘッシアンが消えてない)臨界点の周りでの
$\text{grad}(F)$ の"様子"は上の、 $x^2+y^2$(湧き出し)もしくは、
$xy$ (馬の鞍)もしくは、$-x^2-y^2$ (吸い込み) のどれかに実はなっています.

退化した臨界点に関する臨界点では、状況は複雑で、ベクトル場を自分で
描いてみるとよくわかると思います.


以下、実際の具体例について、授業で取り上げた関数についての話です.


関数 $F(x,y)=x^3+y^3-3xy$ の話

例題6-1(1)
$F(x,y)=x^3+y^3-3xy=0$
は、デカルトの正葉線と呼ばれます.

のような集合ですが、$F_x(x,y)=3x^2-3y=0$ かつ $F_y(x,y)=3y^2-3x=0$
は、$(x,y)=(0,0)$ のみです.この点において接線が存在しないことになります.
これは、$z=F(x,y)$ の関数の $z=0$ での等高線とも考えられます.

前回の陰関数定理を用いれば $F_y=3y^2-3x\neq 0$ のとき、
つまり、$(x,y)=(0,0)$ もしくは $(\sqrt[3]{4},\sqrt[3]{2})$
以外では、各点は、その点の十分小さい周りにおいて、$x$-軸から関数の形をしている
ことがわかりました.
これは、$y$ に関する3次方程式 $y^3-3xy+x^3=0$ の解として、
この集合をみると分かるように、$x<0$ もしくは $x>\sqrt[3]{4}$ のとき、
この3次方程式は1つの実数解があり、$0<x<\sqrt[3]{4}$ のとき
3つの異なる実数解があります.
これは $x,y$ の変数を入れ替えてもおなじことです.

また、例題6-5(1) でも同じ式からなる集合
の陰関数を $y=\varphi(x)$ とし、$b=\varphi(a)$ において、
$\varphi'(a)=-\frac{F_x(a,b)}{F_y(a,b)}=-\frac{a^2-b}{b^2-a}$
であり、$\varphi'(a)=0$ となるような点は $a^2-b=0$ となり、
そのような点は $(a,b)=(0,0)$ もしくは $(\sqrt[3]{2},\sqrt[3]{4})$
となる.

例題6-4から
陰関数の臨界点での2階微分は以下のようになります.
授業では最後の方の計算を間違えていました.
$\varphi''(a)=-\frac{F_{xx}(a,b)}{F_y(a,b)}$ であるから、
$F_{xx}(x,y)=6x$より
$\varphi''(\sqrt[3]{2})=-\frac{6\sqrt[3]{2}}{3\sqrt[3]{4^2}-\sqrt[3]{2}}=-\frac{6\sqrt[3]{2}}{5\sqrt[3]{2}}=-\frac{6}{5}<0$

となりますので、$(\sqrt[3]{2},\sqrt[3]{4})$ では $x$-軸から見て極大になっている
ことがわかります.

また、この関数を $z=F(x,y)$ なる関数として、グラフを作ってみると下のようになります.

なんとなく人間工学に基づいて設計された椅子のような形をしていますね.
この椅子、この絵からはよくわかりませんが、臨界点は $(0,0)$ と $(1,1)$ あります.
$(1,1)$ では極小値ですが、 $(0,0)$ ではいわゆる馬の鞍になっています.
座り心地がよさそうですね.3Dプリンターで作ってみたいくらいです.
もし家具屋でこのような曲面に出会ったら触って臨界点の位置を実感してください.


馬の鞍というのは、授業でもやりましたが、局所的に$z=xy$ となっている点です.
$z=x^2-y^2$としても定義域の座標変換で同じ形の臨界点が表れます.
そのような関数のグラフの $z=0$ での切り口は$x=0$ もしくは$y=0$ となる2つの直線です.

$F(x,y)=x^3+y^3-3xy$ の例では、$(0,0)$ の付近ではこの関数の高次の項 $x^3+y^3$ を
無視して考えます.
すると、主要項は $-3xy$ であり、大体馬の鞍だというわけです.
それが、$F(x,y)=0$ が原点で周りでクルンとなっている理由なわけです.

いまは $z=-3xy$ とは違い、3次の項のせいで、原点から遠くの方で2つの線はつながっています.


ちなみに $F(x,y)=x^3+y^3-3xy$ の勾配ベクトル場を描いて、矢印を
滑らかに繋いでやると下のようになります.


$(1,1)$ において、矢印がわき水のように湧き出していますね.
原点では局所的にさっきの $xy$ ベクトル場と同じような状況になっています.

デカルトの正葉線は関数 $z=F(x,y)$ の $z=0$ での等高線なわけですが、
この、ボールペンの試し書きのような曲線は、
他の高さではどうなっているでしょうか?
($z$ 座標は高さととらえることもできますが、時間と考えても面白いです.)
$V_c=\{(x,y)\in{\Bbb R}^2|F(x,y)=c\}$ として、$V_c$ の絵を
追いかけていきましょう.

$V_0$ は上のボールペンの試し書きでした.

$V_1$ は下のような曲線です.

交差が外れていますね.

$V_{-0.5}$ のときは下のようになります.

卵が出てきましたね.
そして $z$ をさらに下げていくと、この卵は $(1,1)$ に向かって小さくなって、
$z=-1$のときに一点になります.$F(1,1)=-1$なので、丁度極小値の時なわけです.
これは、$x^3+y^3-3xy+1=(x+y+1)(x^2+y^2-xy-y-x+1)$ のように因数分解されて、
もう一つの等高線の成分は直線になります.
$x^2+y^2-xy-y-x+1=0$ の方は、$(2x-y-1)^2+3(y-1)^2=0$ と書き直せるので、
実数の範囲では$(x,y)=(1,1)$ しかありません.

しかし、複素数まで範囲を広げるとその実態が明らかになります.
下に書きましたが微積の範囲を超えるので読みたい人だけ読んでください.

この、卵が生まれる瞬間($z=0$) ではその前後でどのようなことが起こっているでしょうか?
これは前々回の授業の中でコメントしました.
$V_c$ は $c<-1$ や、$c>0$ では、一筋の曲線だけになります.


楕円曲線(wikipedia)
も参考にしてください. 横の絵の $y^2=x^3-x+b$ の絵と対応しています.

この曲線のムーヴィーを頭の中で動かしてみてください.
そして関数の形がイメージ出来たでしょうか?

ここまでが微積の内容です.
少し書きすぎたので陰関数定理はまたどこかで書きます.


複素数に拡張する話と代数幾何の入り口
 $x^2+y^2-3xy=c$ なる曲線を複素数上の方程式と思うこともできます.
つまり、$x,y\in{\Bbb C}$ として、$V^{{\Bbb C}}_c=\{(x,y)\in{\Bbb C}^2|F(x,y)=c\}$
を考えるのです.
この集合 $V^{\Bbb C}_c$ は、${\Bbb C}^2$ の中の2次元の物体
(多項式の零点集合、広くは代数多様体)です.
4次元の中の2次元ですから、よくわからないですが、実は、
この物体は4次元の中でドーナツの"表面"のような形をしています.



正確には、無限遠点に伸びていますので、ドーナツの表面の一点を
抜いたような形状をしています.

ドーナツとはこのようなリング状の甘いお菓子の総称ですから、
ドーナツではまずくって、このような形状のことを数学ではトーラスといいます.

このとき、 さっきと比較すると、 $V_c\subset V^{\Bbb C}_c$ となり、あのデカルトの正葉線は
このトーラスの一部に描かれていることになります.
つまり、トーラスを ${\Bbb R}^2\subset {\Bbb C}^2$ なる部分空間で切った切り口と
考えてもいいでしょう.

複素数で考える利点は、実数の時は特異点としてぐちゃぐちゃしていたものが
複素数で考えるとすっきりすることがあります.

ただし、今回は、複素数として拡張してトーラスとした時も、
$c=0,-1$ のときに特異点を持っています.

$c=-1$ のときは、$x^3+y^3-3xy+1$ を複素の範囲で1次の積に分解して、
トーラスが3つの平面に分解されます.
なんとなくしたのような絵でしょうか


$c=-1$ に近づいたときにトーラスが変形して3つの成分に分かれる図


3つの平面なのに、3つの球面のように書かれているのは、さきほど無限遠点のために一点
除いたのと同じ理由で、3つの球面にそれぞれ3つ穴を開けてみれば、球面はそれぞれ
平面と同じようなもので出来ています.

$c=0$ では、一点で特異点(トーラスのどこかでとんがっている)です.
詳しくはどう見るんでしょうか?($c=0$で1点でつぶれるようなサイクルを
見つかるのだと思いますが、よくわかりません.
これは専門家にとってはそれほど難しいことではないはずですが深入りは避けます.)

さて、
$z=1,0,-0.5,1 $はトーラス、もしくは3つの球面、特異点のあるトーラスのどこを切ったのでしょうか?

$V_c$ は平面上の曲線でたまに変な特異点が表れていましたが、

また、この切り口 ${\Bbb R}^2$ は固定されているので、、$c$ が移り変わると、
このトーラスが ${\Bbb C}^2$ の中で動いていることにもなります.
つまり、$V_c^{{\Bbb C}}$ のムーヴィーです.


最後に、このような代数多様体は、普通はコンパクトな複素射影平面
${\Bbb C}P^2$ のような ${\Bbb C}^2$ を拡張した空間に埋め込んで見るのが
自然です.そうすると、上のような点を抜いて考えなくてもよくなる.
実特異点を単なる切り口として理解できる(場合がある)、
空間はコンパクトになるなどさまざまな利点があります.

そのような空間でさっきのトーラスを動かして見る(Lefschetz pencil)など、
このあたりで盛んに研究している人たちもいます.

このあたりのこと、複素射影平面などにについては、代数の先生に聞くか、
授業で学んでください.
これは微積分のブログですので、この辺にとどめておきます.

2014年11月16日日曜日

線形代数II演習(第6回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

HPに行く.

今日は来週行われる講義の方の試験の試験対策でした.
なので演習の方で進めた内容は有りませんでした.
下に解説を書いておきますので、分かっている問題でも、
自分で、なっとくのいく答案を作成してみてください.
答案では、相手に分かってもらえるような、良識のある文章を書いてくさい.
また、ポイント(その問題で重要なところ)が押さえていないと、
なんとなく合っていそうな答えを書いてもバツがつくことがあります.

採点者(数学者)が一番嫌うのは、
答えの値が多少違ったりすることではなく、

論理展開が無茶苦茶だったり(例えば示すべき結果が仮定されていたり)、
用語の意味がわかっていない、意味不明な文章、
示してほしいところが明らかとして書いており、視点がずれているもの
また、最終的に何が示されたのかはっきりしないものです.


授業では、ブログで答えを書くと言いましたが、もしものことに備えて、
どんなことを書けば丸がつくのか解説を書くことにしました.

C-5-2

(1) 要するに奇関数全体と偶関数全体が部分空間であるかという問題ですが、
示すべきことは、$f,g\in X$ かつ、$\alpha \in{\Bbb R}$ なら、
$f+g\in W$ かつ、$\alpha\cdot f\in W$ となることを示すわけですが、
それは、$f(x)=f(-x)$ かつ、$g(x)=g(-x)$ ならば、$f(x)+g(x)=f(-x)+g(-x)$
を示すわけですが、これは辺同士を足せばできますね.
スカラー倍の方も同じようにやってください.
$Y$の方も同じように行います.

(2) 直和であることの条件は $W=X+Y$ かつ $X\cap Y=\{{\bf 0}\}$
を示す必要があります.
ここで、${\bf 0}$ は全ての値が $0$ となる関数です.
前者は$W$ の定義から当たり前すが、後者は示す必要があります.
$X\cap Y$ なる関数 $f(x)$ は任意の$x$ に対して、
$f(x)=f(-x)=-f(x)$ を満たしますが、この式から、任意の $x$ に対して
$f(x)=0$ が成り立つか示して下さい.

(3) 任意の $f\in C({\Bbb R})$ に対して、$f=h_0+h_1$
$h_0\in X,\ h_1\in Y$ を満たすか示して下さい.
つまり、任意の連続関数が奇関数と偶関数の和として書くことができるかということです.
これがわからなければ、多項式で考えてみれば、
$f(-x)=-f(x)$ となる奇関数は、$x,x^3,x^5$ などですが、部分空間ですから、
それらの和も入っています.
つまり、$a_1x+a_3x^3+\cdots+a_{2n+1}x^{2n+1}$
なども奇関数です.ならば、偶関数は、偶数べきの関数の和となり、
$a_0+a_2x^2+\cdots+a_{2n}x^{2n}$となります.
なので、$f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots+a_nx^n$
とすれば、
$f(x)=(a_0+a_2x^2+\cdots a_{2m}x^{2m})+(a_1x+a_3x^3+\cdots+a_{2k+1}x^{2k+
1})$
と分解出来ることになります.
これは、感覚をつかむためにやっていることなので、多項式でやればよい
というわけではありません.
和で分解できるか示すためには、$f(x)$から偶関数の部分だけ、もしくは奇関数の部分
だけをどのように取りだせばよいかいうことです.

そこで、
$f(-x)=(a_0+a_2x^2+\cdots a_{2m}x^{2m})-(a_1x+a_3x^3+\cdots+a_{2k+1}x^{2k+
1})$
となります.
一般に、$f(x)=h_0(x)+h_1(x)$ ($h_0$は偶関数、$h_1$ は奇関数)
と書けるとすると、
やはり、$f(-x)=h_0(x)-h_1(x)$ となります.
この2つの式から $h_0(x)$ と $h_1(x)$ を求めればよいことになります.
関数の中から偶数べきの多項式、もしくは奇数べきの多項式だけ
消すことを考えればよいでしょう.

何度もいいますがここまでの操作は頭の中でやるか、答案の片隅で行うべきでしょう.

一般に、$f(x)=h_0(x)+h_1(x)$ ($h_0$は偶関数、$h_1$ は奇関数)
と書けるとすると...
などと書くと、書けることを最初から仮定していると思われて採点者の
格好の餌食になってしまいます.こういうところではバツにしたくなります.
そう思っていなくても、採点者はそのように受け取ります.

なので、$f(x)=h_0(x)+h_1(x)$と$f(-x)=h_0(x)-h_1(x)$とから
$h_0(x), h_1(x)$ を求めると書くのではなく、$f(x)$ から偶関数、奇関数に
あたる式を$f$ を使っていきなり書いてしまって、それらが偶関数、奇関数で
あることを証明する流れです.
その偶関数と奇関数が何か分からない人はいつでもメールをください.

C-5-3
(1) $\dim({\Bbb C}^2)$ の中から実ベクトル空間としての4つの基底を探してください.
${\Bbb C}^2$ は $(a+ib,c+id)$ ですから、4次元ありそうですね.
基底にあたるものはすぐ見つかると思いますが、それらが基底であることを示す必要があります.

(2) ${\Bbb R}^2\subset {\Bbb C}^2$ は$(a,c)$ からなる集合ということですが、
その補空間に当たる部分$W$ はそれ以外の部分ですね.

D-5-1
${\bf x}=\sum_{i=1}^4a_i{\bf x}_i=({\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_3,{\bf x}_4)\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\\a_4\end{pmatrix}$
となりますから、アバターとは、基底を定めたときの行列表示のことと思えばよいでしょう.
物理1クラスの学生も言っていましたが、「座標」というのも間違いではないでしょう.

このとき、基底を ${\bf x}_3,{\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_4$ としておくと
行列表示(アバター、座標)が実数ベクトルとして異なるもの ${\bf z}$ になります.
この ${\bf y}$ と ${\bf z}$ の間にある関係を行列 $A$ を使って表せばよいことになります.
$A$ は ${\bf z}=A{\bf y}$ なるものです.
この行列 $A$ はいわゆる基底の変換行列です.

基底が ${\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_3,{\bf x}_4$ から ${\bf x}_3,{\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_4$
に置換されているのでこのような行列 $A$ は置換行列と呼ばれることもあります.
もし分からなければ置換行列でネットで検索すれば出てきます.

D-5-2
授業でやりましたので省略します.

D-5-3
基底の延長の問題ですが、これは授業で基底の延長の仕方を教えましたので
それを応用するだけで証明できます。
この問題は授業でも大分教えましたね.

基底の延長とは、一次独立なベクトル ${\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_k$ にいくつかベクトルを
付け加えて基底にするのですが、
そのために、そもそも基底 ${\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_n$ が分かっている
とします.

以前やったときは数ベクトル空間において、一次独立なベクトル
${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_k$ があったときに基底を拡張する問題を解いていたと思います.
そのとき、$A=({\bf v}_1\cdots{\bf v}_k)$ として、後ろに標準基底を付け加えて
$(AE)$ のように $n\times(n+k)$ 行列を使って一次独立なベクトルを最大数
見つけることになります.
この場合は rank$(AE)=n$ なので $n$ 個見つけることができます.
この行列を簡約化すると、その簡約行列の列の中に、$n$ 個の標準基底
が見つかりますが、最初の $k$ 個目までは一次独立なのでそれらが全て標準基底となります.
残りの $n-k$ 個の標準基底は後ろの $n\times n$ 行列の中から見つかることに
なります.
つまり、${\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_n$ の中から $\langle {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_k\rangle$
の補空間の基底を $n-k$ 個探すことができます.

基底 ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_n$ を使って ${\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_k$ を行列表示し、
それを $A$ とすると ${\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_k$ を $A$ の縦ベクトルと思って
上の数ベクトルの時の方法と同じように行います.

つまり、この行列 $(AE)$ を簡約化します.
ちなみに $E$ の縦ベクトルは、基底 ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_n$ に対応します.

2014年11月10日月曜日

線形代数II演習第5回プリント補足

第5回のプリントについて補足しておきます.

C-5-1
$V_1,V_2\subset V$ が直和であるための次の2つの条件を満たすかどうかをチェックすること.
$V=V_1+V_2$
かつ
$V_1\cap V_2=\{{\bf 0}\}$
であれば、直和です.

C-5-2
$C({\Bbb R})$ は実数上の連続関数全体を指します.

1. は $X,Y$ がそれぞれ、 $C({\Bbb R})$ 内の実部分ベクトル空間であることを示してください.

2. は $X,Y$ のベクトル空間の和 $X+Y$ を $W$ とかくとき、それが直和になるかということです.
つまり、$X\cap Y=\{{\bf 0}\}$ になるかどうかを証明すればよいことになります.
$X,Y$ は変数ではなく、$C({\Bbb R})$ の内の部分空間であることに注意してください.

3. は $W=X+Y\subset C({\Bbb R})$ は部分空間であるが、任意の連続関数 $f\in C({\Bbb R})$
が $X+Y$ の元として書けるか、証明してください.もし書けないならどのような関数がその
2つの和として書けないかを示してください.

C-5-3  (これは塩谷先生の試験対策問題です.)
${\Bbb C}^2$ はもちろん $\{(x,y)|x,y\in {\Bbb C}\}$ を示しています.

1. この次元は実ベクトルとしての次元です.

2. この直和で書かれている部分ベクトル空間 ${\Bbb R}^2\subset {\Bbb C}^2$ は、
$\{(x,y)\in {\Bbb C}^2|x,y\in {\Bbb R}\}$ を表しています.
つまり、複素数ベクトル空間 ${\Bbb C}^2$ の中の成分がどちらも実数となるもの全体です.

D-5-1
続きの問題としているのは、C-3-3ではなく、C-5-3の続きの問題です.誤植です.
アバター(wkipedia)というのは大体分身とか化身という意味らしいですね.
一般的にどういうふうに用いられるんでしょうか.
もちろんこれは数学用語ではなく、この問題だけの用語です.

D-5-2
来週授業において皆さんに解いてもらうか、発表してもらおうと思います.


5回のプリントの補足はこれ以外にあればこのページに書き足していきます.

微積分II演習(第5回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

今日は、以下の演習を行いました.
  • テイラー展開
  • 陰関数定理
  • 陰関数の微分法

テイラー展開
 前回のページにも書きましたので省略です.

今回の宿題では3次の項まで計算するので、3次の項までのテイラー展開を書いておきます.

$d^3=\sum_{r=0}^3\binom{3}{r}h^rk^{3-r}\frac{\partial^3}{\partial x^r\partial y^{r-3}}=h^3\frac{\partial^3}{\partial x^3}+3h^3k\frac{\partial^3}{\partial x^2\partial y}+3hk^2\frac{\partial^3}{\partial x\partial y^2}+k^3\frac{\partial^3}{\partial y^3}$

ちなみに $f(x,y)$ が $C^3$ であるなら、$f_{xxy}=f_{xyx}=f_{yxx}$ など
3回までの微分において微分の順番に依りません.

$f(x,y)=f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k+\frac{1}{2!}(f_x(a,b)h^2+2f_x(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)+\frac{1}{3!}(f_{xxx}(a,b)h^3+f_{xxy}(a,b)h^2k+3f_{xyy}(a,b)hk^2+f_{yyy}(a,b)k^3)+o(r^3)$
と展開できる.

授業中やっていた計算の続きをします.

$f(x,y)=\frac{1}{1-x^2y}$ とすると、
$f_{xxx}(x,y)=\frac{24xy^2(1+x^2y)}{(1-x^2y)^4},\ \ f_{xxy}(x,y)=\frac{2(1+8x^2y+3x^4y^2)}{(1-x^2y)^4}$
$f_{xyy}(x,y)=\frac{4x^3(2+x^2y)}{(1-x^2y)^4},\ f_{yyy}(x,y)=\frac{6x^6}{(1-x^2y)^4}$
よって、$f_{xxx}(0,0)=f_{xyy}(0,0)=f_{yyy}(0,0)=0, f_{xxy}(0,0)=2$

よって、3次までのテイラー展開は、
$\frac{1}{1-x^2y}=1+\frac{1}{6}(3\cdot 2x^2y)+o(r^3)\ \ (r\to 0)$
$=1+x^2y+o(r^3)$
となる.

陰関数定理
 これは、多様体論の基礎になる定理であり、解析や幾何などにとっては重要な定理です.
また、大域解析学においても、非線形微分方程式など無限次元の状況でもこのような考え方は
重要です.

陰関数定理はいろいろな形がありますが、授業では2変数で行いました.
ここではとりあえず $n$ 変数で書いておきます.

式 $F(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ に対して
$V=\{(x_1,x_2, \cdots,x_n)|F(x_1,x_2,\cdots,x_n)=0\}$ とします.


$F(x_1,\cdots,x_n)$ を $C^1$級関数とする. $(a_1,a_2,\cdots,a_n)$ を $F(a_1,\cdots,a_n)=0$ なる点とする.もし、$F_{x_n}(a_1,\cdots,a_n)\neq 0$ であるなら、この点の十分近くにおいて、 $V$ は、ある$C^1$ 級関数$\varphi$ を使って $x_n=\varphi(x_1,\cdots x_{n-1})$ なるグラフとして解くことができる.


この定理は $V$ がどのような構造をもつか知りたいときに用いられます.
つまり、集合を定めている関数 $F$ の偏微分を計算すれば
点 $(a_1,\cdots,a_n)\in V$ がその近くでどのような構造をもつ集合であるかを
理解することができます.

もし陰関数定理の仮定が成り立てば、$F(x_1,x_2,\cdots, x_n)=0$ なる集合 $V$ は
$(a_1,a_2,\cdots,a_n)$ の周辺において、 $(x_1,x_2,\cdots,x_{n-1})$
からのグラフのようになっていることになります.その定義域は $\epsilon$ 
を十分小さくとることで、 $(a_1,a_2,\cdots,a_{n-1})$ の $\epsilon$ 近傍とすることができます.
さらにその関数 $\varphi(x_1,\cdots,x_{n-1})$ は、$C^1$ 級関数になります.

その関数の傾き(偏微分)は、
$\frac{\partial \varphi}{\partial x_i}=-\frac{F_{x_i}(x_1,\cdots,x_n)}{F_{x_n}(x_1,\cdots,x_n)}$
と計算できます.

なので、接線や、接平面の方程式がすぐに導かれます.

例1
たとえば、授業中にやった例 $F(x,y)=x^2+y^2-1$ は $y= 0$ では
円の接線が傾きが無限大になって、$V$ は $x$ からの関数を作ることができません.
それ以外の場所では例えば点 $(a,\sqrt{1-a^2})$ の小さい近傍において円の一部を
$x$ からの関数として、数直線の一部 $\epsilon$-近傍です
開区間 $(a-\epsilon,a+\epsilon)$ と同一視することができます.

ただし、区間の幅を決めている $\epsilon$ は点 $a$ に応じて十分小さく取らなければ
なりません.

少なくとも $(a,\sqrt{1-a^2})$ の周辺の $V$ の集合の様子はユークリッド空間の
区間と同じものと言えます.
一般に、陰関数定理の仮定が満たされれば、$V$ が局所的に、$(x_1,x_2,\cdots,x_{n-1})$
と座標付けられたユークリッド空間の$\epsilon$ 近傍の関数のグラフとみなすできるのです.
さらにいえば、そのような関数は $C^1$ 級関数とすることができます

局所的な構造でいえば、$y=0$ の付近においても、上の例では、$F_x(x,y)\neq 0$ ですから、
$y$ を変数としてはグラフの形をしています.
このように変数を変えれば局所的に $\epsilon$ 近傍と同じとみなすことができます.

例2
$F(x,y)=x^3-y^2$ とするとき、$F(x,y)=0$ なる集合 $V$ は、下のようになります.



関数としては、$F_x(x,y)=3x^2, F_y(x,y)=-2y$



ですから、$(x,y)=(0,0)$ ではその近傍では、$x,y$ のどちらの変数としても
陰関数の定理は成り立ちません.つまり、$x$軸からも $y$ 軸からも関数の
グラフのような形をしていないことになります.
この集合は $y$ 軸の方からグラフのようになっているように見えますが、
連続的にはグラフですが、原点の付近で傾きが$y$ 軸の方からみて無限大に
なってしまっています. $x=y^{\frac{2}{3}}$ を $y$ で微分してみてください.
$y=0$ での微係数は無限大です.


つまり、この集合は原点の近くで $C^1$級関数を介してユークリッド空間の区間とは
同じとはみなせないことになります.
このようなヘンな点のことを特異点といい、このような点をどのように
理解すればよいか、難しい問題です.

このような理論は特異点論と呼ばれ、昔から、さらに今でも、
さまざまな分野において研究がなされている話題です.

結局、陰関数定理は、集合 $V=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\Bbb R}^n|F(x_1,\cdots,x_n)=0\}$
が局所的にどのような集合(局所的にユークリッド空間の$\epsilon$近傍であるような集合)
かを保証してくれることになります.

一点の近傍があるユークリッド空間の開集合のグラフになっていることは重要な性質で
そのような集合を多様体といわれています.


例題5-2-3
練習問題が途中になりましたので最後まで書いておくと、
$f(x,y)=x^3+2xy^2+2x^2y^2$
$f_x(x,y)=3x^2+2y^2+4xy^2$
$f_y(x,y)=4xy+4x^2y$
$f_{xx}(x,y)=6x+4y^2$
$f_{xy}(x,y)=4y+8xy$
$f_{yy}(x,y)=4x+4x^2$
$\begin{cases}3x^2+2y^2+4xy^2=0\\4xy+4x^2y=0\end{cases}$
をとくと、$(x,y)=(0,0),(-1,\pm\sqrt{\frac{3}{2}})$ ですが、

授業でやったとおり、
$(-1,\pm\sqrt{\frac{3}{2}})$ のときは $\det(H)<0$ となってしまい、
極値ではありません.

$(0,0)$ の場合は、$\det(H)=0$ となってしまし、ヘッセ行列からは判定ができません.
$f(x,y)$ の $(0,0)$ でのテイラー展開はたしかに、もっとも小さい次数は $x^3+2xy^2$ ですから
3次から始まっています.それ以外の項は4次の項 $2x^2y^2$ です

この3次というのが重要で、これが、偶数次から始まっていれば、極値になります.
3次で始まっていれば極値でないかどうか確かめるには、
$y=0$ として、$f(x,y)$ を原点に近づいてみると、
$f(x,0)=x^3$ となり、$x>0$ では、正の数であり、
$x<0$ であれば、負の数です.
よって、原点(臨界点)のいくらでも近くに、 $f(x,y)$ の値として正の数も負の数も現れ、
極値とは言えなくなります.

2014年11月8日土曜日

線形代数II演習(第5回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]


来週の授業は、19に塩谷先生の試験が有りますので、その試験対策の予定です.
今日配ったD問題あたりを解いていきます.
予習してきてください.
また、来週は発表する時間や質問を積極的に受け付ける時間を作ろうと思います.

ちなみに21は休講する予定です.


今日やったことは直和でした.
と言っても、二つのベクトル空間の和であることを確かめることと、
部分ベクトル空間の共通部分のベクトル空間の求め方に終始しました.

ちなみに、プリントは

A:前回の復習
B:授業中で行うもの
C:今回の宿題(一部塩谷先生の練習問題)
D:塩谷先生の問題と試験対策
E:前回の宿題の答え

で構成されています.
直和であることを確認するために、
ベクトル空間 $V$ が
  • $V=V_1+V_2$ とかけていることを確かめるための方法.
  • ベクトル空間 $V_1\cap V_2$ を求める方法.
をそれぞれやりました.

授業でやった計算をまとめておきます.

$V=V_1+V_2$ であること.
 $V_1,V_2$ が連立一次方程式で書かれている場合.

B-5-1をもう一度やります.
$V_1=\{{\bf v}\in{\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}2&3&1\\1&1&1\end{pmatrix}{\bf v}=0\}$
$V_2=\{{\bf v}\in{\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}1&0&1\end{pmatrix}{\bf v}=0\}$
とすると、${}^t(a_1,a_2,a_3)\in V_1$ かつ、${}^t(b_1,b_2,b_3)\in V_2$
として、任意のベクトルがこの和になっているかどうかを示す方針でもできると
思いますが、変数が6個もあって大変です.

なので、授業では、一度方程式を解くことで変数を減らしたのです.
ここで、連立一次方程式の解き方も兼ねて(授業中に質問が出たのもありましたし)
やっておきます.

$\begin{pmatrix}2&3&1\\1&1&1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&1&1\\0&1&-1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&2\\0&1&-1\end{pmatrix}$
と簡約化できます.
このとき、変数は全て先頭列である$x_1,x_2$ と非先頭列である $x_3$ にわけられます.
先頭列を左辺に、非先頭列を右辺に持っていけば、
この方程式は、$x_1=-2x_3,\ x_2=x_3$ とかけます.
ここで、非先頭列の $x_3=c$ と任意定数を置けば、全ての変数は、
$\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-2c\\c\\c\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}-2\\1\\1\end{pmatrix}$ と書けることになります.
つまり、$V_1=\langle{}^t(-2,1,1)\rangle$

同じように $V_2$ の連立一次方程式の係数行列は $(1,0,1)$ であり、すでに簡約化されており、
$x_1$ が先頭列であり、 $x_2,x_3$ が非先頭列である.$x_2=c,x_3=d$ とおくと、
$x_1=-d,x_2=c,x_3=d$ より、
$\begin{pmatrix}-d\\c\\d\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}+d\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}$
つまり、$V_2=\langle {}^t(0,1,0),\ {}^t(-1,0,1)\rangle$ となる.

$\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix}\in V_1+V_2$ は、
$\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix}=c_1\begin{pmatrix}-2\\1\\1\end{pmatrix}+c_2\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}+c_3\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-2&0&-1\\1&1&0\\1&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}$
となるスカラー$c_1,c_2,c_3$ が存在するような元です.

任意の $\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix}$ に対して、解 $\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}$ を持つかどうかの条件は、
$\begin{pmatrix}-2&0&-1\\1&1&0\\1&0&1\end{pmatrix}$ の rank が $3$ であること
が必要十分である.
今の場合、正方行列であるから、行列式が $0$ でないことが必要十分であるが、
$\det=-1\neq 0$ であるから、この方程式には解が存在する.

つまり、$V=V_1+V_2$ と2つの和に分けられることがわかる.

B-5-1(3)
次に、$V_1,V_2$ がベクトルで生成する形で書かれている場合.
$V_1=\langle{}^t(1,2,-1),{}^t(0,1,1) \rangle,\ V_2=\langle{}^t(1,1,-2)\rangle$
同じように縦ベクトルとして、行列を作れば、任意の${}^t(a_1,a_2,a_3)$ において、
$\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0&1\\2&1&1\\-1&1&-2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}$
とできるための必要十分条件は、$\det\neq 0$ であるが、実際、
$\det\begin{pmatrix}1&0&1\\2&1&1\\-1&1&-2\end{pmatrix}=0$ となってしまい、
任意の ${}^t(a_1,.a_2,a_3)$ が $V_1+V_2$ に属するとは限らない.

$V_1+V_2$ に属さないベクトルを求めるには、補空間の基底を求めればよい.

表せないベクトルを探すのは授業中ではやりませんでしたのでここで
書いておきます.
補空間の基底を求める方法と同じです.

3つの縦ベクトルは一次従属で、前の2つのベクトルは明らかに平行では
ありませんのでこの2つは$V_1+V_2$ の基底となります.

つまり、以下のような基本変形をすることで、
$\begin{pmatrix}1&0&1&1&0&0\\2&1&1&0&1&0\\-1&1&-2&0&0&1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&1&1&0&0\\0&1&-1&-2&1&0\\0&1&-1&1&0&1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&1&1&0&0\\0&1&-1&-2&1&0\\0&0&0&3&-1&1\end{pmatrix}$

ここまでやれば、1番目、2番目、4番目が一次独立であることが分かるはずです.

でも、これはやりすぎで、(単なる、基底の延長の復習ですが。)
平行でない2つ目までの縦ベクトと、適当に標準ベクトル
${}^t(1,0,0)$ を並べて$\begin{pmatrix}1&0&1\\2&1&0\\-1&1&0\end{pmatrix}$ の行列式が
非ゼロであること示すことで、補空間の基底として ${}^t(1,0,0)$ があると主張することができますので
やることはこれで十分です.

つまり、$\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}$ は
$\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix}$ の一次結合つまり、$V_1+V_2$ として書けません.

一般のベクトル空間の場合は
ベクトル $\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\}$ を基底を使っていつものように
$({\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_n)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A$
と行列表示してから上のことを行いましょう.(B-5-1(2))
B-5-1(2) は授業でもやりましたね.

$V_1\cap V_2$ を求めること.
 
 B-5-2(1) は授業でやりました.

$V_1=\{{\bf v}_1\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}0&-1&-1\\2&3&1\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\}$
$V_2=\{{\bf v}_1\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}-1&-1&0\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\}$
とすると、
$V_1\cap V_2=\{{\bf v}_1\in {\Bbb C}^3|\begin{pmatrix}0&-1&-1\\2&3&1\\-1&-1&0\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\}$
ですので、上の連立一次方程式の解き方に習って解きましょう.
もし、 $V_1\cap V_2=\{{\bf 0\}}$ でなければ直和になりません.

$V_1=\langle\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}\rangle$
$V_2=\langle\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}\rangle$
です.これは授業でやったとおり $V_1\cap V_2\neq\{{\bf 0}\}$
だったはずですので、$V_1+V_2$は直和にはなりません.

最後に、 $V_1,V_2$ がベクトルで生成される形で書かれている場合ですが、

B-5-2(2)
$V_1=\langle{}^t(1,2,-1),{}^t(0,1,1)\rangle, V_2=\langle{}^t(1,1,-2)\rangle$
ですが、$V_1\cap V_2\ni \begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix}$ とおいて
$\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix}=c_1\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}+c_2\begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix}=c_3\begin{pmatrix}1\\1\\-2\end{pmatrix}$
となるような$c_1,c_2,c_3$が存在するかどうかを考えます.
移項してまとめると
$\begin{pmatrix}1&0&-1\\2&1&-1\\-1&1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$
となる解$(c_1,c_2,c_3)$ が$V_1\cap V_2$ を定めています.
結局ここでも連立一次方程式を解くことに帰着します.

この解 $\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}$
が存在して、$c$ は任意定数ですから、
$V_1\cap V_2=\langle\begin{pmatrix}1\\1\\-2\end{pmatrix}\rangle$
となります.
この場合、$V_1\cap V_2\subset V_2$ となっていもいますね.

よって、$V_1+V_2=V_1$ ですからこの2つでも直和になりません.

B-5-3(1) 以降は授業ではやりませんでしたが、
今の手法を使って $V=V_1+V_2$ かつ $V_1\cap V_2=\{{\bf 0}\}$
となるかどうか確かめればよいことになります.


また、授業中にやっていた定理は次のようなものです.
この定理の意味は抽象ベクトル空間の議論を
数ベクトル空間の議論に落とすときに用いられます.

$\{{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n\}$ が一次独立であるなら、行列表示
$({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A=(0,\cdots,0)$
が成り立つなら、$A=O$つまり、$A$ はゼロ行列です.
つまり、
行列表示が一意、つまり
$({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)B$
ならば $A=B$ であることと同じです.
後者は移項して、前者を示すことができます.
前者は後者から明らかです.

((証明をしておきます.
$({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)({\bf a}_1\cdots{\bf a}_n)$
と$A$ を縦ベクトルでおけば、
任意の $i$ に対して、
$a_{i1}{\bf v}_1+\cdots+a_{in}{\bf v}_n={\bf 0}$
となります. $A=(a_{ij})$ で、各 $a_{ij}$ はスカラーです.
今、${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n$ は一次独立ですので、 このスカラーは
$a_{i1}=a_{i2}=\cdots =0$ でなければなりません.
ゆえに、$A=O$ がいえます.
))

そういうわけで、抽象ベクトル空間の関係式があれば、
数ベクトル空間の関係式に落として考えることができます.
また、数ベクトル空間で議論した結果は
再び同じ基底を使って抽象ベクトル空間の言葉に直す必要があります.


プリントの他の問題について、もし、やってほしい要望がありましたらここでも書きます.
知らせてください.
宿題も分からないところがありましたらメールで知らせてください.

来週は塩谷先生の試験対策をする予定で、授業自体は進みませんが

塩谷先生からもらった問題をやる.
今までの残っている問題の発表.
質問うけつけなどしようと思います.