[物理2 クラス対象(金曜日4限)]
今日やったことは線形写像でした.
- 線形写像であることを示す方法
- 核Kerを求める方法
- 線形写像の作り方
- 直和
線形写像
線形写像は、ベクトル空間 V,W の間の写像 f:V\to W で、以下の
性質を満たすものです.
任意の {\bf v}_i,{\bf v}\in V,\alpha\in {\Bbb K}(スカラー) に対して
f({\bf v}_1+{\bf v}_2)=f({\bf v}_1)+f({\bf v}_2)
f(\alpha{\bf v})=\alpha f({\bf v})
となる.
(写像とはV の任意の元に対して唯一つの W の元を対応させることをいいます.)
直和
直和というのは以前習いましたが、それは、V の部分空間の直和に関してでした.
その部分空間の和が V と一致するための条件など習ったわけですが、
今日習ったのは部分空間とは限らず、とにかく2つベクトル空間を持ってきて
それらの直和を定義しました.
V,W を集合とし、V\times W を ({\bf v},{\bf w})\ \ {\bf v}\in V,{\bf w}\in W という形の2つのペア全体にわたる集合のことを表し、2つの集合の直積集合といいます.
とくに、V,W がベクトル空間の場合は、この直積集合上にもう一度ベクトル空間の構造を下のように入れることができます.{\bf v},{\bf v}'\in V,{\bf w},{\bf w}'\in W,\alpha\in {\Bbb K} とすると、
({\bf v},{\bf w})+({\bf v}',{\bf w}')=({\bf v}+{\bf v}',{\bf w}+{\bf w}')
\alpha({\bf v},{\bf w})=(\alpha{\bf v},\alpha{\bf w})
がなりたちます.
例えばV,W を実数の空間としたときに{\Bbb R}\times {\Bbb R} が実数と実数の直積空間ですが、その上に上のように入れたベクトル空間の構造は平面のベクトル空間の構造と同じです.
なので、{\Bbb R}\times {\Bbb R}={\Bbb R}^2 ということになります.
このように、直積集合に入ったベクトル空間を V と W の直和ということがあります.
同じように V\oplus W と書きます.
元の書き方は授業では {\bf v}\oplus {\bf w} を採用していましたが、教科書でも他の本でもそのような書き方はあまりしていないようでした.なので、単に、({\bf v},{\bf w}) として書こうと思います.
結局、V\times W と書いても和が定義されていれば V\oplus W でも同じものということにはなります.この辺はこれ以上あまり突っ込まずにいきます.
(もう少し一般には、直積と直和は少し違うのですが、今は次元が有限なので、
どちらも結局同じものになってしまいます.)
B-7-1(2)
F:V\oplus V\to V を F({\bf v},{\bf w})={\bf v}+{\bf w}
F が線形写像であるためには、任意の {\bf x}_1,{\bf x}_2\in V\oplus V に対して
F({\bf x}_1+{\bf x}_2)=F({\bf x}_1)+F({\bf x}_2) を満たすことを言えばよいのですが、
任意の {\bf x}_1,{\bf x}_2 は {\bf x}_1=({\bf v}_1,{\bf w}_1),\ \ {\bf x}_2=({\bf v}_2,{\bf w}_2)
と書くことができますので、
F({\bf x}_1+{\bf x}_2)=F(({\bf v}_1,{\bf w}_1)+({\bf v}_2,{\bf w}_2))=F(({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf w}_1+{\bf w}_2))
={\bf v}_1+{\bf v}_2+{\bf w}_1+{\bf w}_2={\bf v}_1+{\bf w}_1+{\bf v}_2+{\bf w}_2
=F(({\bf v}_1,{\bf w}_1))+F(({\bf v}_2,{\bf w}_2))=F({\bf x}_1)+F({\bf x}_2)
のようになりますが、これはそれぞれの式の意味が明らかになるように提示したものですのでここまで丁寧に書かなくてもいいですが、一つ一つやるとこんな感じになります.
F(\alpha({\bf v},{\bf w}))=\alpha F({\bf v},{\bf w})
の場合もやってみてください.
B-7-1(3)
F:V\to V,\ \ F({\bf x})={\bf x}+{\bf x}_0
線形写像ならば、F({\bf 0})={\bf 0} が成り立ちます.
F({\bf 0})=F({\bf 0}+{\bf 0})=F({\bf 0})+F({\bf 0})
より、移項して、F({\bf 0})={\bf 0} が成り立つわけです.
ゆえに、 F({\bf 0})={\bf x}_0\neq {\bf 0}
となり、線形写像でないことがわかります.
B-7-1(5,6)
が線形写像であるための性質としては、定義の各係数が
一次式(定数がなし)でなければなりません.
しかし、ちゃんと式で証明が必要です.
{\bf x}=a_0+a_1X+a_2X^2+a_3X^3と
{\bf y}=b_0+b_1X+b_2X^2+b_3X^3
を使ってF({\bf x}+{\bf y})=F({\bf x})+F({\bf y})
を示しましょう.スカラー倍の方も同じです.
(6)の場合は2次以上の式や定数が含まれている多項式ですので、
線形性を満たさないベクトルを探しましょう.
B-7-1(7)
F:P({\Bbb R})_2\to P({\Bbb R})_4 の F(f)(x) の書きかたですが
F は関数から関数への写像ですから、 F(f) はまた関数になります.
つまり、 F(f):{\Bbb R}\to {\Bbb R} です.
なので、 F(f)(x)=(f(x))^2 はその関数の値が (f(x))^2 になるという意味です .
これも線形写像では有りませんが、そうならないベクトルを見つけるのはたやすいと
思います.
線形写像の作り方
線形写像を作るには、上のような性質を満たす写像をベクトル空間の間に作る必要があります.そのような写像 f:V\to W を作る方法は、基底の行き先を定めることです.
定めておけば、線形写像が全ての V の元に対して作ることができます。
{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n を V の基底とし、 f({\bf v}_i)={\bf w}_i\in W として定めておくと、
任意の {\bf v}\in V は {\bf v}=c_1{\bf v}_1+\cdots c_n{\bf v}_n と一次結合で書くことができますので、f が線形であるためには、{\bf v} の行き先は
f({\bf v})=c_1f({\bf v}_1)+c_2f({\bf v}_2)+\cdots+c_nf({\bf v}_n)=c_1{\bf w}_1+c_2{\bf w}_2+\cdots+c_n{\bf w}_n\in W とならなければなりません.
よって、写像として f が一つ定まったことになります.このようにして作った f はさらに線形写像になります.やってみれば、
{\bf v}=c_1{\bf v}_1+\cdots+c_n{\bf v}_n,
{\bf v}'=d_1{\bf v}_1+\cdots+d_n{\bf v}_n
とすると、
f({\bf v}+{\bf v}')=f((c_1+d_1){\bf v}_1+\cdots+(c_n+d_n){\bf v}_n)
=(c_1+d_1){\bf w}_1+(c_2+d_2){\bf w}_2+\cdots+(c_n+d_n){\bf w}_n
=c_1{\bf w}_1+\cdots+c_n{\bf w}_n+d_1{\bf w}_1+\cdots+d_n{\bf w}_n
=f(c_1{\bf v}_1+\cdots+c_n{\bf v}_n)+f(d_1{\bf v}_1+\cdots+d_n{\bf v}_n)
=f({\bf v})+f({\bf v}')
となり、スカラー倍の方も同じようにやれば、線形性が成り立ちます.
つまり、線形写像を作るには基底の行き先を指定してやれば自動的に作れることがわかりました.
逆に線形写像が作られていれば、基底の行き先も定まっているわけですから
\text{線形写像を定めること}\Leftrightarrow \text{基底の行き先を決めること}
となるわけです.
B-7-3
の問題は、
f\text{が同型写像である}\Leftrightarrow \text{基底の $f$ の行き先が再び基底となること}
です.
V の基底を \{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\} とすると、
「f:V\to W が同型写像であること」
と、
「\{f({\bf v}_1),f({\bf v}_2),\cdots,f({\bf v}_n)\} が W の基底であること」
は
同値という意味です.
ちなみに、(線形)同型写像とは線形写像 f:V\to W が全単射であることです.
授業では、\{f({\bf v}_1),f({\bf v}_2),\cdots,f({\bf v}_n)\} が W の基底であるなら
f が同型写像であることを示しました.
逆は問題として残しておきます.誰か発表してください.
C-7-3
Im(F) とはいっても {\Bbb C}^3 と同じですから i は同型写像になっています.
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