[物理2 クラス対象(金曜日4限)]
今日は表現行列についてやりました.
- 表現行列の求め方
- 基底の変換行列と表現行列の関係
表現行列
表現行列を求めることは、抽象的なベクトル空間の間の線形写像を具体的な行列データとして取り出すことです.
求め方は前やった表示行列と同じです.
f:V\to W を線形写像とし、V,W の基底を{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n、{\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m とすると、
(f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)A
と書いた時のm\times n 行列 A をf の基底 {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n と {\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m に関する表現行列といいます.
つまり、表現行列は、(f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n)) の、基底 ({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m) による表示行列ということです.
何を表現しているかというと、線形写像 f:V\to W を行列によって表現しているということです.
基底の変換行列との関係
基底の変換行列との関係を述べます.これは授業で公式だけ述べました.
基底の変換行列は
({\bf v}'_1,\cdots,{\bf v}'_n)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)P
({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)Q
となります.
さらに、表現行列はそれぞれ、定義から、
(f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)A
(f({\bf v}'_1),\cdots, f({\bf v}'_n))=({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)B
ですが、これらを使って証明してみます.
{\bf v}'_i=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n){\bf p}_i となります.つまり、 P=({\bf p}_1\cdots{\bf p}_n)
です.
線形性から、
f({\bf v}'_i)=(f({\bf v}_1),\cdots,f({\bf v}_n)){\bf p}_i
となりますので、上の式を用いて
(f({\bf v}'_1),\cdots, f({\bf v}'_n))=(f({\bf v}_1),\cdots,f({\bf v}_n))P=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)AP
となります.
上の Q のある式に右からQ^{-1} をかけて、
({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)Q^{-1}=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_m)
となるので、
(f({\bf v}'_1),\cdots, f({\bf v}'_n))=({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)Q^{-1}AP
が成り立ちます.よって、等式で結べば、
({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)Q^{-1}AP=({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m)B
となり、({\bf w}'_1,\cdots,{\bf w}'_m) は一次独立ですので、Q^{-1}AP=B という
等式が成り立つことになります.
特に、V=W のとき、同じ基底をとれば、基底の変換行列も当然 P=Q となりますので、
B=P^{-1}AP が成り立ちます.
なので、ベクトル空間の基底を取り換えれば、表現行列が
A\to Q^{-1}AP
のように変わっていきます.
表現行列を取り換えると \text{Ker}(f) や \text{Im}(f) がわかる
ベクトル空間の間の線形写像
f:V\to W
に対して基底を選ぶことで表現行列 A を得ましたが、A から、 f がどのような線形写像であるか理解するためには、A がなるべく簡単な方がよいです.
そのためには、基底はそのためによいものを選ぶ必要があります.
他の例で言えば、行列のランクがわかるためには行列を簡約階段行列にし変形しておかないといけません.簡約階段行列がランクを求める上ではよい行列ということです.
線形写像がわかるとは、ほぼ、\text{Ker}(f) や \text{Im}(f) がわかることと言ってもよいです.ベクトル空間の基底をいろいろと取り換えて、表現行列を簡単なものにすることで \text{Ker}(f) や \text{Im}(f) の基底がわかるようになります.
A を Q^{-1}AP と変形することは行および列で基本変形を繰り返していることになります.
Q^{-1} の積は、行の基本変形、P の積は列の基本変形.
ですから、Q^{-1}AP=\begin{pmatrix}E_r&O_{r,n}\\O_{m,r}&O_{m,n}\end{pmatrix}
のような行列に変形することができます.ここで、E_r はr 次の単位行列、O_{k,l} はk\times l 次のゼロ行列.
このときの基底をそれぞれ、{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_{r+n}、{\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_{r+m} とすると、
(f({\bf v}_1),\cdots,f({\bf v}_{r+n}))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_{r+m})Q^{-1}AP=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_{r+m})\begin{pmatrix}E_r&O_{r,n}\\O_{m,r}&O_{m,n}\end{pmatrix}
となります.
{\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_r が \text{Im}(f) の基底となり、{\bf v}_{r+1}\cdots{\bf v}_{r+n} が
\text{Ker}(f) の基底となります.
また、\langle{\bf v}_{1}\cdots{\bf v}_{r}\rangle はf によって W の中に同型に写されます.
f:V\to V に対して、共通の基底 {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n に対して表現行列を考える場合には、A\to P^{-1}AP なる変形を考えてA を簡単なものにする必要があります.
これは、ジョルダン標準形が有ります.任意の線形写像、f:V\to V に対してそれがどのような線形写像であるかはその行列に付随するジョルダン標準形によって区別されます.
2年生以降でこれらは習います.
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