2014年11月16日日曜日

線形代数II演習(第6回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

HPに行く.

今日は来週行われる講義の方の試験の試験対策でした.
なので演習の方で進めた内容は有りませんでした.
下に解説を書いておきますので、分かっている問題でも、
自分で、なっとくのいく答案を作成してみてください.
答案では、相手に分かってもらえるような、良識のある文章を書いてくさい.
また、ポイント(その問題で重要なところ)が押さえていないと、
なんとなく合っていそうな答えを書いてもバツがつくことがあります.

採点者(数学者)が一番嫌うのは、
答えの値が多少違ったりすることではなく、

論理展開が無茶苦茶だったり(例えば示すべき結果が仮定されていたり)、
用語の意味がわかっていない、意味不明な文章、
示してほしいところが明らかとして書いており、視点がずれているもの
また、最終的に何が示されたのかはっきりしないものです.


授業では、ブログで答えを書くと言いましたが、もしものことに備えて、
どんなことを書けば丸がつくのか解説を書くことにしました.

C-5-2

(1) 要するに奇関数全体と偶関数全体が部分空間であるかという問題ですが、
示すべきことは、$f,g\in X$ かつ、$\alpha \in{\Bbb R}$ なら、
$f+g\in W$ かつ、$\alpha\cdot f\in W$ となることを示すわけですが、
それは、$f(x)=f(-x)$ かつ、$g(x)=g(-x)$ ならば、$f(x)+g(x)=f(-x)+g(-x)$
を示すわけですが、これは辺同士を足せばできますね.
スカラー倍の方も同じようにやってください.
$Y$の方も同じように行います.

(2) 直和であることの条件は $W=X+Y$ かつ $X\cap Y=\{{\bf 0}\}$
を示す必要があります.
ここで、${\bf 0}$ は全ての値が $0$ となる関数です.
前者は$W$ の定義から当たり前すが、後者は示す必要があります.
$X\cap Y$ なる関数 $f(x)$ は任意の$x$ に対して、
$f(x)=f(-x)=-f(x)$ を満たしますが、この式から、任意の $x$ に対して
$f(x)=0$ が成り立つか示して下さい.

(3) 任意の $f\in C({\Bbb R})$ に対して、$f=h_0+h_1$
$h_0\in X,\ h_1\in Y$ を満たすか示して下さい.
つまり、任意の連続関数が奇関数と偶関数の和として書くことができるかということです.
これがわからなければ、多項式で考えてみれば、
$f(-x)=-f(x)$ となる奇関数は、$x,x^3,x^5$ などですが、部分空間ですから、
それらの和も入っています.
つまり、$a_1x+a_3x^3+\cdots+a_{2n+1}x^{2n+1}$
なども奇関数です.ならば、偶関数は、偶数べきの関数の和となり、
$a_0+a_2x^2+\cdots+a_{2n}x^{2n}$となります.
なので、$f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots+a_nx^n$
とすれば、
$f(x)=(a_0+a_2x^2+\cdots a_{2m}x^{2m})+(a_1x+a_3x^3+\cdots+a_{2k+1}x^{2k+
1})$
と分解出来ることになります.
これは、感覚をつかむためにやっていることなので、多項式でやればよい
というわけではありません.
和で分解できるか示すためには、$f(x)$から偶関数の部分だけ、もしくは奇関数の部分
だけをどのように取りだせばよいかいうことです.

そこで、
$f(-x)=(a_0+a_2x^2+\cdots a_{2m}x^{2m})-(a_1x+a_3x^3+\cdots+a_{2k+1}x^{2k+
1})$
となります.
一般に、$f(x)=h_0(x)+h_1(x)$ ($h_0$は偶関数、$h_1$ は奇関数)
と書けるとすると、
やはり、$f(-x)=h_0(x)-h_1(x)$ となります.
この2つの式から $h_0(x)$ と $h_1(x)$ を求めればよいことになります.
関数の中から偶数べきの多項式、もしくは奇数べきの多項式だけ
消すことを考えればよいでしょう.

何度もいいますがここまでの操作は頭の中でやるか、答案の片隅で行うべきでしょう.

一般に、$f(x)=h_0(x)+h_1(x)$ ($h_0$は偶関数、$h_1$ は奇関数)
と書けるとすると...
などと書くと、書けることを最初から仮定していると思われて採点者の
格好の餌食になってしまいます.こういうところではバツにしたくなります.
そう思っていなくても、採点者はそのように受け取ります.

なので、$f(x)=h_0(x)+h_1(x)$と$f(-x)=h_0(x)-h_1(x)$とから
$h_0(x), h_1(x)$ を求めると書くのではなく、$f(x)$ から偶関数、奇関数に
あたる式を$f$ を使っていきなり書いてしまって、それらが偶関数、奇関数で
あることを証明する流れです.
その偶関数と奇関数が何か分からない人はいつでもメールをください.

C-5-3
(1) $\dim({\Bbb C}^2)$ の中から実ベクトル空間としての4つの基底を探してください.
${\Bbb C}^2$ は $(a+ib,c+id)$ ですから、4次元ありそうですね.
基底にあたるものはすぐ見つかると思いますが、それらが基底であることを示す必要があります.

(2) ${\Bbb R}^2\subset {\Bbb C}^2$ は$(a,c)$ からなる集合ということですが、
その補空間に当たる部分$W$ はそれ以外の部分ですね.

D-5-1
${\bf x}=\sum_{i=1}^4a_i{\bf x}_i=({\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_3,{\bf x}_4)\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\\a_4\end{pmatrix}$
となりますから、アバターとは、基底を定めたときの行列表示のことと思えばよいでしょう.
物理1クラスの学生も言っていましたが、「座標」というのも間違いではないでしょう.

このとき、基底を ${\bf x}_3,{\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_4$ としておくと
行列表示(アバター、座標)が実数ベクトルとして異なるもの ${\bf z}$ になります.
この ${\bf y}$ と ${\bf z}$ の間にある関係を行列 $A$ を使って表せばよいことになります.
$A$ は ${\bf z}=A{\bf y}$ なるものです.
この行列 $A$ はいわゆる基底の変換行列です.

基底が ${\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_3,{\bf x}_4$ から ${\bf x}_3,{\bf x}_1,{\bf x}_2,{\bf x}_4$
に置換されているのでこのような行列 $A$ は置換行列と呼ばれることもあります.
もし分からなければ置換行列でネットで検索すれば出てきます.

D-5-2
授業でやりましたので省略します.

D-5-3
基底の延長の問題ですが、これは授業で基底の延長の仕方を教えましたので
それを応用するだけで証明できます。
この問題は授業でも大分教えましたね.

基底の延長とは、一次独立なベクトル ${\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_k$ にいくつかベクトルを
付け加えて基底にするのですが、
そのために、そもそも基底 ${\bf x}_1,{\bf x}_2,\cdots,{\bf x}_n$ が分かっている
とします.

以前やったときは数ベクトル空間において、一次独立なベクトル
${\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_k$ があったときに基底を拡張する問題を解いていたと思います.
そのとき、$A=({\bf v}_1\cdots{\bf v}_k)$ として、後ろに標準基底を付け加えて
$(AE)$ のように $n\times(n+k)$ 行列を使って一次独立なベクトルを最大数
見つけることになります.
この場合は rank$(AE)=n$ なので $n$ 個見つけることができます.
この行列を簡約化すると、その簡約行列の列の中に、$n$ 個の標準基底
が見つかりますが、最初の $k$ 個目までは一次独立なのでそれらが全て標準基底となります.
残りの $n-k$ 個の標準基底は後ろの $n\times n$ 行列の中から見つかることに
なります.
つまり、${\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_n$ の中から $\langle {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_k\rangle$
の補空間の基底を $n-k$ 個探すことができます.

基底 ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_n$ を使って ${\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_k$ を行列表示し、
それを $A$ とすると ${\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_k$ を $A$ の縦ベクトルと思って
上の数ベクトルの時の方法と同じように行います.

つまり、この行列 $(AE)$ を簡約化します.
ちなみに $E$ の縦ベクトルは、基底 ${\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_n$ に対応します.

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