2014年11月10日月曜日

微積分II演習(第5回)

[数学1 クラス対象(金曜日5限)]

今日は、以下の演習を行いました.
  • テイラー展開
  • 陰関数定理
  • 陰関数の微分法

テイラー展開
 前回のページにも書きましたので省略です.

今回の宿題では3次の項まで計算するので、3次の項までのテイラー展開を書いておきます.

$d^3=\sum_{r=0}^3\binom{3}{r}h^rk^{3-r}\frac{\partial^3}{\partial x^r\partial y^{r-3}}=h^3\frac{\partial^3}{\partial x^3}+3h^3k\frac{\partial^3}{\partial x^2\partial y}+3hk^2\frac{\partial^3}{\partial x\partial y^2}+k^3\frac{\partial^3}{\partial y^3}$

ちなみに $f(x,y)$ が $C^3$ であるなら、$f_{xxy}=f_{xyx}=f_{yxx}$ など
3回までの微分において微分の順番に依りません.

$f(x,y)=f(a,b)+f_x(a,b)h+f_y(a,b)k+\frac{1}{2!}(f_x(a,b)h^2+2f_x(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2)+\frac{1}{3!}(f_{xxx}(a,b)h^3+f_{xxy}(a,b)h^2k+3f_{xyy}(a,b)hk^2+f_{yyy}(a,b)k^3)+o(r^3)$
と展開できる.

授業中やっていた計算の続きをします.

$f(x,y)=\frac{1}{1-x^2y}$ とすると、
$f_{xxx}(x,y)=\frac{24xy^2(1+x^2y)}{(1-x^2y)^4},\ \ f_{xxy}(x,y)=\frac{2(1+8x^2y+3x^4y^2)}{(1-x^2y)^4}$
$f_{xyy}(x,y)=\frac{4x^3(2+x^2y)}{(1-x^2y)^4},\ f_{yyy}(x,y)=\frac{6x^6}{(1-x^2y)^4}$
よって、$f_{xxx}(0,0)=f_{xyy}(0,0)=f_{yyy}(0,0)=0, f_{xxy}(0,0)=2$

よって、3次までのテイラー展開は、
$\frac{1}{1-x^2y}=1+\frac{1}{6}(3\cdot 2x^2y)+o(r^3)\ \ (r\to 0)$
$=1+x^2y+o(r^3)$
となる.

陰関数定理
 これは、多様体論の基礎になる定理であり、解析や幾何などにとっては重要な定理です.
また、大域解析学においても、非線形微分方程式など無限次元の状況でもこのような考え方は
重要です.

陰関数定理はいろいろな形がありますが、授業では2変数で行いました.
ここではとりあえず $n$ 変数で書いておきます.

式 $F(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ に対して
$V=\{(x_1,x_2, \cdots,x_n)|F(x_1,x_2,\cdots,x_n)=0\}$ とします.


$F(x_1,\cdots,x_n)$ を $C^1$級関数とする. $(a_1,a_2,\cdots,a_n)$ を $F(a_1,\cdots,a_n)=0$ なる点とする.もし、$F_{x_n}(a_1,\cdots,a_n)\neq 0$ であるなら、この点の十分近くにおいて、 $V$ は、ある$C^1$ 級関数$\varphi$ を使って $x_n=\varphi(x_1,\cdots x_{n-1})$ なるグラフとして解くことができる.


この定理は $V$ がどのような構造をもつか知りたいときに用いられます.
つまり、集合を定めている関数 $F$ の偏微分を計算すれば
点 $(a_1,\cdots,a_n)\in V$ がその近くでどのような構造をもつ集合であるかを
理解することができます.

もし陰関数定理の仮定が成り立てば、$F(x_1,x_2,\cdots, x_n)=0$ なる集合 $V$ は
$(a_1,a_2,\cdots,a_n)$ の周辺において、 $(x_1,x_2,\cdots,x_{n-1})$
からのグラフのようになっていることになります.その定義域は $\epsilon$ 
を十分小さくとることで、 $(a_1,a_2,\cdots,a_{n-1})$ の $\epsilon$ 近傍とすることができます.
さらにその関数 $\varphi(x_1,\cdots,x_{n-1})$ は、$C^1$ 級関数になります.

その関数の傾き(偏微分)は、
$\frac{\partial \varphi}{\partial x_i}=-\frac{F_{x_i}(x_1,\cdots,x_n)}{F_{x_n}(x_1,\cdots,x_n)}$
と計算できます.

なので、接線や、接平面の方程式がすぐに導かれます.

例1
たとえば、授業中にやった例 $F(x,y)=x^2+y^2-1$ は $y= 0$ では
円の接線が傾きが無限大になって、$V$ は $x$ からの関数を作ることができません.
それ以外の場所では例えば点 $(a,\sqrt{1-a^2})$ の小さい近傍において円の一部を
$x$ からの関数として、数直線の一部 $\epsilon$-近傍です
開区間 $(a-\epsilon,a+\epsilon)$ と同一視することができます.

ただし、区間の幅を決めている $\epsilon$ は点 $a$ に応じて十分小さく取らなければ
なりません.

少なくとも $(a,\sqrt{1-a^2})$ の周辺の $V$ の集合の様子はユークリッド空間の
区間と同じものと言えます.
一般に、陰関数定理の仮定が満たされれば、$V$ が局所的に、$(x_1,x_2,\cdots,x_{n-1})$
と座標付けられたユークリッド空間の$\epsilon$ 近傍の関数のグラフとみなすできるのです.
さらにいえば、そのような関数は $C^1$ 級関数とすることができます

局所的な構造でいえば、$y=0$ の付近においても、上の例では、$F_x(x,y)\neq 0$ ですから、
$y$ を変数としてはグラフの形をしています.
このように変数を変えれば局所的に $\epsilon$ 近傍と同じとみなすことができます.

例2
$F(x,y)=x^3-y^2$ とするとき、$F(x,y)=0$ なる集合 $V$ は、下のようになります.



関数としては、$F_x(x,y)=3x^2, F_y(x,y)=-2y$



ですから、$(x,y)=(0,0)$ ではその近傍では、$x,y$ のどちらの変数としても
陰関数の定理は成り立ちません.つまり、$x$軸からも $y$ 軸からも関数の
グラフのような形をしていないことになります.
この集合は $y$ 軸の方からグラフのようになっているように見えますが、
連続的にはグラフですが、原点の付近で傾きが$y$ 軸の方からみて無限大に
なってしまっています. $x=y^{\frac{2}{3}}$ を $y$ で微分してみてください.
$y=0$ での微係数は無限大です.


つまり、この集合は原点の近くで $C^1$級関数を介してユークリッド空間の区間とは
同じとはみなせないことになります.
このようなヘンな点のことを特異点といい、このような点をどのように
理解すればよいか、難しい問題です.

このような理論は特異点論と呼ばれ、昔から、さらに今でも、
さまざまな分野において研究がなされている話題です.

結局、陰関数定理は、集合 $V=\{(x_1,\cdots,x_n)\in {\Bbb R}^n|F(x_1,\cdots,x_n)=0\}$
が局所的にどのような集合(局所的にユークリッド空間の$\epsilon$近傍であるような集合)
かを保証してくれることになります.

一点の近傍があるユークリッド空間の開集合のグラフになっていることは重要な性質で
そのような集合を多様体といわれています.


例題5-2-3
練習問題が途中になりましたので最後まで書いておくと、
$f(x,y)=x^3+2xy^2+2x^2y^2$
$f_x(x,y)=3x^2+2y^2+4xy^2$
$f_y(x,y)=4xy+4x^2y$
$f_{xx}(x,y)=6x+4y^2$
$f_{xy}(x,y)=4y+8xy$
$f_{yy}(x,y)=4x+4x^2$
$\begin{cases}3x^2+2y^2+4xy^2=0\\4xy+4x^2y=0\end{cases}$
をとくと、$(x,y)=(0,0),(-1,\pm\sqrt{\frac{3}{2}})$ ですが、

授業でやったとおり、
$(-1,\pm\sqrt{\frac{3}{2}})$ のときは $\det(H)<0$ となってしまい、
極値ではありません.

$(0,0)$ の場合は、$\det(H)=0$ となってしまし、ヘッセ行列からは判定ができません.
$f(x,y)$ の $(0,0)$ でのテイラー展開はたしかに、もっとも小さい次数は $x^3+2xy^2$ ですから
3次から始まっています.それ以外の項は4次の項 $2x^2y^2$ です

この3次というのが重要で、これが、偶数次から始まっていれば、極値になります.
3次で始まっていれば極値でないかどうか確かめるには、
$y=0$ として、$f(x,y)$ を原点に近づいてみると、
$f(x,0)=x^3$ となり、$x>0$ では、正の数であり、
$x<0$ であれば、負の数です.
よって、原点(臨界点)のいくらでも近くに、 $f(x,y)$ の値として正の数も負の数も現れ、
極値とは言えなくなります.

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