[数学1 クラス対象(金曜日5限)]
HPに行く.
今日は以下のような内容でした.
ラグランジュの未定乗数法
この方法は、g_i(x_1,\cdots,x_n)=0\ \ (i=1,\cdots,m) となる条件の下、関数 f(x_1,\cdots,x_n) の臨界点(および極値)の満たす条件を求める方法です.
この条件の下、関数がそこで、微分が消えている必要があります.ただし、この微分の方向は、
条件に沿っていないといけません.
\lambda_i を実数の変数として、
H(x_1,\cdots,x_n,\lambda_1,\cdots,\lambda_m)=f(x_1,\cdots,x_n)-\sum_{i=1}^m\lambda_ig_i(x_1,\cdots,x_n)
とおくと、条件によって制限された関数の臨界点(および極点) (a_1,\cdots,a_n) は
H_{x_i}(a_1,\cdots,a_n,b_1,\cdots,b_m)=0\ \ (i=1,\cdots,n)
H_{\lambda_i}(a_1,\cdots,a_n,b_1,\cdots,b_m)=0\ \ (i=1,\cdots,m)
を満たす.
これがラグランジュの未定乗数法です.
後半の式は条件式そのものですので、本質的に加わるのは前半のn この式です.
このとき、付随的に (b_1,\cdots,b_m) も求まります.
n=2,m=1 の場合にどうしてこのようなことが成り立つのか、f,g の
勾配ベクトルを使って授業では説明しました.
grad(f) と grad(g) が条件付き極値の周辺では平行になることがキーポイントでした.
変数をもう一つずつ上げて、n=3,m=2 の場合にもう一度考えましょう.
g_1(x,y,z)=g_2(x,y,z)=0 なる条件をもつ集合において、関数 f(x,y,z) の
極値を求めましょう.
grad(g_1)=(g_{1,x},g_{1,y},g_{1,z}) と grad(g_2)=(g_{2,x},g_{2,y},g_{2,z})となります.
g_{i,x} などは偏微分 \frac{\partial g_1}{\partial x} を表すことにします.
\begin{pmatrix}g_{1,x}&g_{1,y}&g_{1,z}\\g_{2,x}&g_{2,y}&g_{2,z}\end{pmatrix}
のランクが 2 であるとします.
つまり、grad(g_1) と grad(g_2) が平行ではないことと同値です.
このとき、そのような点では g_1(x,y,z)=g_2(x,y,z)=0 は空間上の曲線になります.
grad(g_1), grad(g_2) はその曲線に直交する2つのベクトルです.
下のような図になります.
となるのです.
だから、上で H=f-\lambda_1g_1-\lambda_2g_2 としたときに、(\ast) を成分ごと見れば H_x=H_y=H_z=0 が成り立つのです.
\lambda_i での微分は単なる制約条件を意味します.
条件付き関数の極値
条件付き関数の臨界点を求めることはラグランジュの未定乗数法でできますが、極値は少しめんどくさいです.
ラグランジュの未定乗数法は(陰関数定理)+(臨界点問題)を合わせたものとみなすこともできますので、極値を求める際には、(陰関数定理)+(極値問題)を合わせることになります.
例 x^2+y^2=2 の条件の下、 関数 f(x,y)=y-x の極大、極小を求めよ.
授業でやりましたが、極値の計算をもう少し効率よくやります.
ラグランジュの未定乗数法の結果、
H=y-x-\lambda(x^2+y^2-2) とおいて、臨界点を求めると、
H_x=-1-2\lambda x=0,\ \ H_y=1-2\lambda y=0,\ \ H_\lambda=-x^2-y^2+2=0 より、
(x,y)=(1,-1),(-1,1) となり、この点が極値かどうかを判定します.
g(x,y)=x^2+y^2-2 とすると、
(x,y)=(1,-1) 、のとき、 g_y(1,-1)=-2\neq 0 であるから、陰関数定理より陰関数 y=\varphi_1(x) が存在してg(x,\varphi_1(x))=0 が成り立ちます.
(x,y)=(-1,1) の場合も同じで陰関数 y=\varphi_2(x) が存在します.
ゆえに、g(x,\varphi_i(x))=0 を微分することで、
\varphi_i'(x)=-\frac{g_x(x,\varphi_i)}{g_y(x,\varphi_i)}=-\frac{x}{y}=-\frac{x}{\varphi_i(x)}
より、
\varphi_1'(1)=\varphi_2'(-1)=1
\varphi_i''(x)=(-\frac{x}{\varphi_i(x)})'=-\frac{\varphi_i(x)-x\varphi_i'(x)}{\varphi_i^2(x)}
より、
\varphi_1''(1)=-\frac{-1-1\cdot 1}{(-1)^2}=2
\varphi_2''(-1)=-\frac{1-(-1)\cdot 1}{1^2}=-2
(式の形から、\varphi_1''(1),\varphi_2''(-1) の値を出すところを少し効率よくしました.)
G(x)=f(x,\varphi_i(x))=x-\varphi_i(x) とすると、
G'(x)=1-\varphi_i'(x)
G''(x)=-\varphi_i''(x) なので
G''(1)=-2<0
G''(-1)=2>0
ゆえに、(x,y)=(1,-1) のとき、極大値 f(1,-1)=2 をとり、
(x,y)=(-1,1) のとき、極小値 f(-1,1)=-2 をとります.
円盤上の関数の最大最小問題
円盤 D=\{(x,y)\in{\Bbb R}^2|x^2+y^2\le 1\} において関数の最大最小を探す問題を考えます.円盤 D は有界閉集合ですから連続関数であれば、D に最大最小は存在します.それらは、D の境界か、内部かどちらかで取るわけですから、それぞれで、最大最小を考えればよいことになります.ある点が最大最小であれば、その点で(広義な意味で)極値になっていないといけません.
例:f(x,y)=xy、のとき、D で最大最小を求めよ.
内部において f_x=f_y=0 となる点は (x,y)=(0,0) しかありません.
(もちろん境界にもそのような点はありません.)
しかし、原点でのヘッシアンは、\det(H)=-1 となり、内部には極値はありません.なので、内部で最大最小は取ることはできないことになります.
(この関数は何回も出てきましたね.)
よって、境界においてこの関数は最大最小をとることになるのです.なので境界に制限してみても大丈夫です.
H=xy-\lambda(x^2+y^2-1) とすると、
H_x=y-2\lambda x=0
H_y=x-2\lambda y=0
H_\lambda=-x^2-y^2+1=0
より、\begin{pmatrix}-2\lambda&1\\1&-2\lambda\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\end{pmatrix}
となり、x,y はどちらも 0 ではありませんので、この行列の行列式は 0 にならなければ なりません.
つまり、\lambda=\pm\frac{1}{2} となります.x,y も決定すれば、
(x,y,\lambda)=(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{2}),(\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{2}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{2}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{2})
となります.
このとき、xy=\pm\frac{1}{2} となりますので、
(x,y)=(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}})
で最大 \frac{1}{2} をとり、
(x,y)=\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}})
で最小 -\frac{1}{2} をとります.
今日は以下のような内容でした.
- ラグランジュの未定乗数法
- 特に、条件 g(x,y)=0 における関数 f(x,y) の臨界点.
- 条件付き関数の極値の判定
- 円盤上の関数の最大最小問題
ラグランジュの未定乗数法
この方法は、g_i(x_1,\cdots,x_n)=0\ \ (i=1,\cdots,m) となる条件の下、関数 f(x_1,\cdots,x_n) の臨界点(および極値)の満たす条件を求める方法です.
この条件の下、関数がそこで、微分が消えている必要があります.ただし、この微分の方向は、
条件に沿っていないといけません.
\lambda_i を実数の変数として、
H(x_1,\cdots,x_n,\lambda_1,\cdots,\lambda_m)=f(x_1,\cdots,x_n)-\sum_{i=1}^m\lambda_ig_i(x_1,\cdots,x_n)
とおくと、条件によって制限された関数の臨界点(および極点) (a_1,\cdots,a_n) は
H_{x_i}(a_1,\cdots,a_n,b_1,\cdots,b_m)=0\ \ (i=1,\cdots,n)
H_{\lambda_i}(a_1,\cdots,a_n,b_1,\cdots,b_m)=0\ \ (i=1,\cdots,m)
を満たす.
これがラグランジュの未定乗数法です.
後半の式は条件式そのものですので、本質的に加わるのは前半のn この式です.
このとき、付随的に (b_1,\cdots,b_m) も求まります.
n=2,m=1 の場合にどうしてこのようなことが成り立つのか、f,g の
勾配ベクトルを使って授業では説明しました.
grad(f) と grad(g) が条件付き極値の周辺では平行になることがキーポイントでした.
変数をもう一つずつ上げて、n=3,m=2 の場合にもう一度考えましょう.
g_1(x,y,z)=g_2(x,y,z)=0 なる条件をもつ集合において、関数 f(x,y,z) の
極値を求めましょう.
grad(g_1)=(g_{1,x},g_{1,y},g_{1,z}) と grad(g_2)=(g_{2,x},g_{2,y},g_{2,z})となります.
g_{i,x} などは偏微分 \frac{\partial g_1}{\partial x} を表すことにします.
\begin{pmatrix}g_{1,x}&g_{1,y}&g_{1,z}\\g_{2,x}&g_{2,y}&g_{2,z}\end{pmatrix}
のランクが 2 であるとします.
つまり、grad(g_1) と grad(g_2) が平行ではないことと同値です.
このとき、そのような点では g_1(x,y,z)=g_2(x,y,z)=0 は空間上の曲線になります.
grad(g_1), grad(g_2) はその曲線に直交する2つのベクトルです.
下のような図になります.
接線の方向に垂直な方向(つまりこの円盤に含まれる方向)は法方向と呼ぶことにします.特にこの2つのベクトル grad(g_1), grad(g_2) もこの曲線の法方向です.さらにその2つのベクトルの任意の一次結合 \alpha grad(g_1)+\beta grad(g_2) も法方向です.逆に法方向はこの2つのベクトルの一次結合になります.
この円い円盤はこの曲線に直交する平面を表しています.
この曲線に f(x,y,z) の等高面を書き加えていくと、下のようになります.
ちょうど、f=c_3 が曲線と接しているときに、この曲線上関数 f は極値の様相を呈していることがわかると思います.分からなければ、この図の意味を考えながらよく見てみましょう.
この絵のように等高面 f=c_1,f=c_2,f=c_3 とこの曲線 g_1=g_2=0 の交わりを接点の近くで見てください.(例えば c_1<c_2<c_3 のようにして追いかけていくと、この点で、極大点のようになっていることがわかるはずです.)
黒い点で書いているところは、曲面と曲線が交わったところです.
f=c_3 での接平面と直線との交点を p とすると、f=c_3 の p での接平面に、曲線の接線が含まれているような状況になります.下の図を見てください.
描かれている平面は、曲面 f=c_3 での接平面であり、その上に乗っている直線は直線の接線です.
特に、grad(f) は曲線の法方向を向いています.
なので、ある実数 \lambda_1,\lambda_2 が存在して、
grad(f)=\lambda_1grad(g_1)+\lambda_2grad(g_2)\hspace{1cm}(\ast)となるのです.
だから、上で H=f-\lambda_1g_1-\lambda_2g_2 としたときに、(\ast) を成分ごと見れば H_x=H_y=H_z=0 が成り立つのです.
\lambda_i での微分は単なる制約条件を意味します.
条件付き関数の極値
条件付き関数の臨界点を求めることはラグランジュの未定乗数法でできますが、極値は少しめんどくさいです.
ラグランジュの未定乗数法は(陰関数定理)+(臨界点問題)を合わせたものとみなすこともできますので、極値を求める際には、(陰関数定理)+(極値問題)を合わせることになります.
例 x^2+y^2=2 の条件の下、 関数 f(x,y)=y-x の極大、極小を求めよ.
授業でやりましたが、極値の計算をもう少し効率よくやります.
ラグランジュの未定乗数法の結果、
H=y-x-\lambda(x^2+y^2-2) とおいて、臨界点を求めると、
H_x=-1-2\lambda x=0,\ \ H_y=1-2\lambda y=0,\ \ H_\lambda=-x^2-y^2+2=0 より、
(x,y)=(1,-1),(-1,1) となり、この点が極値かどうかを判定します.
g(x,y)=x^2+y^2-2 とすると、
(x,y)=(1,-1) 、のとき、 g_y(1,-1)=-2\neq 0 であるから、陰関数定理より陰関数 y=\varphi_1(x) が存在してg(x,\varphi_1(x))=0 が成り立ちます.
(x,y)=(-1,1) の場合も同じで陰関数 y=\varphi_2(x) が存在します.
ゆえに、g(x,\varphi_i(x))=0 を微分することで、
\varphi_i'(x)=-\frac{g_x(x,\varphi_i)}{g_y(x,\varphi_i)}=-\frac{x}{y}=-\frac{x}{\varphi_i(x)}
より、
\varphi_1'(1)=\varphi_2'(-1)=1
\varphi_i''(x)=(-\frac{x}{\varphi_i(x)})'=-\frac{\varphi_i(x)-x\varphi_i'(x)}{\varphi_i^2(x)}
より、
\varphi_1''(1)=-\frac{-1-1\cdot 1}{(-1)^2}=2
\varphi_2''(-1)=-\frac{1-(-1)\cdot 1}{1^2}=-2
(式の形から、\varphi_1''(1),\varphi_2''(-1) の値を出すところを少し効率よくしました.)
G(x)=f(x,\varphi_i(x))=x-\varphi_i(x) とすると、
G'(x)=1-\varphi_i'(x)
G''(x)=-\varphi_i''(x) なので
G''(1)=-2<0
G''(-1)=2>0
ゆえに、(x,y)=(1,-1) のとき、極大値 f(1,-1)=2 をとり、
(x,y)=(-1,1) のとき、極小値 f(-1,1)=-2 をとります.
円盤上の関数の最大最小問題
円盤 D=\{(x,y)\in{\Bbb R}^2|x^2+y^2\le 1\} において関数の最大最小を探す問題を考えます.円盤 D は有界閉集合ですから連続関数であれば、D に最大最小は存在します.それらは、D の境界か、内部かどちらかで取るわけですから、それぞれで、最大最小を考えればよいことになります.ある点が最大最小であれば、その点で(広義な意味で)極値になっていないといけません.
例:f(x,y)=xy、のとき、D で最大最小を求めよ.
内部において f_x=f_y=0 となる点は (x,y)=(0,0) しかありません.
(もちろん境界にもそのような点はありません.)
しかし、原点でのヘッシアンは、\det(H)=-1 となり、内部には極値はありません.なので、内部で最大最小は取ることはできないことになります.
(この関数は何回も出てきましたね.)
よって、境界においてこの関数は最大最小をとることになるのです.なので境界に制限してみても大丈夫です.
H=xy-\lambda(x^2+y^2-1) とすると、
H_x=y-2\lambda x=0
H_y=x-2\lambda y=0
H_\lambda=-x^2-y^2+1=0
より、\begin{pmatrix}-2\lambda&1\\1&-2\lambda\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\end{pmatrix}
となり、x,y はどちらも 0 ではありませんので、この行列の行列式は 0 にならなければ なりません.
つまり、\lambda=\pm\frac{1}{2} となります.x,y も決定すれば、
(x,y,\lambda)=(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{2}),(\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{2}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{2}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{2})
となります.
このとき、xy=\pm\frac{1}{2} となりますので、
(x,y)=(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}})
で最大 \frac{1}{2} をとり、
(x,y)=\frac{1}{\sqrt{2}},-\frac{1}{\sqrt{2}}),(-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}})
で最小 -\frac{1}{2} をとります.
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