[数学1 クラス対象(金曜日5限)]
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第12回の後半です.
一様収束しない関数項級数の例、杉浦光夫著の解析入門I(p306の例6)の例だと、
$$f(x)=\sum_{n=0}^\infty\frac{x^2}{(1+x^2)^n}$$
のように簡単に(別に病的な例ではない)作ることができます.
これは、$x\neq 0$ であるとすると、等比級数の和の公式から、
$f(x)=\frac{x^2}{1-\frac{1}{x^2+1}}$
となり、$f(x)=1+x^2$ となります.$x=0$ であれば、定義から $0$ です.
よって、
$$f(x)=\begin{cases}0&x=0\\1+x^2&x\neq 0\end{cases}$$
となり、$x=0$ で不連続であることがわかります.
もし一様収束するなら連続関数列は連続関数に移るはずですから、これは一様収束ではないということがわかります.
絶対収束
級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ が絶対収束するとは、$\sum_{n=1}^\infty |a_n|$ が収束するということです.絶対値をとらないもとの級数が収束することを条件収束と言います.
条件収束するが、絶対収束しない例としてはすぐ挙げられるのは、
$\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n}$ です.
実際、この値は $\log(2)$ ($\log(1+z)$ の級数展開を使え)ですが、絶対値をとった収束は調和級数ですから収束しません.
べき級数
関数項級数の中で、もっとも初等的でよくつかわれるのがべき級数
$$\sum_{n=1}^\infty a_nz^n$$
です.$z$ は複素数で考えられるのでこの場合はそうすることにします.最初の問題はこの級数はいつ収束するのかということです.それを保証しているのが収束半径というやつです.収束半径とは、$|z|<R$ となる $z$ ではいつでもべき級数が絶対収束するような $R$ の上限として定義します.数学の言葉で書けば、
$$R=\sup\left\{r||z|<r\Rightarrow \sum_{n=0}^\infty a_nz^n\text{は絶対収束する}\right\}$$
となります.
また、アダマールの公式は、収束半径は
$$\frac{1}{R}=\overline{\lim}_{n\to \infty }\sqrt[n]{a_n}$$
のように計算されます.
例えば、定数でも多項式でもない一番簡単なべき級数は $\sum_{n=0}^\infty z^n$ だと思いますが、
$a_n=1$ ですので、この計算方法によって、収束半径 $R$ は$1$ となります.
また、$\overline{\lim}$ をとっているから、ところどころ係数に $0$ が有ってもよいことになります.
なので、
$\sum_{n=1}^\infty z^{n^2}$ や $\sum_{n=1}^\infty z^{n!}$ なども
収束半径が $1$ です.
ここで少し脱線します.
また、$e^z$ の級数展開は $\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}$ となりますが、このとき、各点 $z$ でこの級数は収束しますので、収束半径は $\infty$ となります.つまり計算公式からは、
$\lim_{n\to \infty}\sqrt[n]{\frac{1}{n!}}=0$ となります.
これは特に、$\lim_{n\to \infty}\frac{n}{\sqrt[n]{n!}}=e$ となるのです.
なので、$\frac{1}{\sqrt[n]{n!}}\sim\frac{e}{n}$ となります.
$\frac{1}{\sqrt[n]{n!}}$ は漸近的に $\frac{e}{n}$ と同等ということです.
なので、級数にしたものも発散します.
つまり、$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{\sqrt[n]{n!}}=\infty$.
です.
これを $n$ 乗してやったものは、$\frac{n^n}{n!}\sim e^n$ とは違います.
数列の $n$ 乗に関する話はこちらの中に書きましたのでそちらも参照ください.
数列の $n$ 乗の漸近的極限はその数列に依存します.
この数列 $\frac{n^n}{n!}$ を見積もる公式としてスターリングの公式があります.
それによると、
$$n!\sim\sqrt{2\pi n}\left(\frac{n}{e}\right)^n$$
となりますので
$$\frac{n^n}{n!}\sim\frac{e^n}{\sqrt{2\pi n}}$$
どこからともなく、$\frac{1}{\sqrt{2\pi n}}$ が出てきました.$e^n$ より若干小さいということがわかりました.
脱線したので、話を元に戻します.収束半径の内側(境界は含めない)では、各 $z$ に対してべき級数は絶対収束しますので、べき級数はその範囲内で一様収束します.
というか、正確には、広義一様収束です.例えば、
$$1+z+z^2+\cdots$$
なる関数項級数 $s_n(z)=\sum_{k=0}^{n-1}z^k$ は、収束半径内 $|z|<1$ においては $s(z)=\frac{1}{1-z}$ に(各点において)絶対収束します.
つまり、$|s_n(z)-s(z)|=|\frac{z^n}{1-z}|$ は$|z|<1$ で $0$ に収束します.しかし、$|z|<1$ で一様収束していません.例えば $z=1-\frac{1}{n}$ をとると、無限大に発散することができるからです.
このように開区間などでの一様収束性をいうのに、広義一様収束があります.
定義(広義一様収束)
ある領域 $B$ において関数列 $f_n(x)$ が広義一様収束するとは、$B$ 内の任意の有界閉集合(実数の場合は任意の閉区間)において、一様収束することをいいます.
広義一様収束は $[0,1)$ などの閉区領域でない場合に適用されますが、今の等比級数の例の場合、$|z|<1$ において各点において絶対収束していましたが、一様収束しませんでした.
しかし、広義一様収束はしています.
実際、$|z|<1$ の任意の有界閉集合 $S$ はある実数 $0<\rho<1$ が存在して、
$S\subset \{z||z|<\rho\}=:B(\rho)$とすることができます.そうすると、
$|s_n(z)-s(z)|\le \frac{\rho^n}{|1-|z||}\le \frac{\rho^n}{1-\rho}$
が成り立ち、この右辺は$z$ の値に依らずに収束しますので、そのような $S$ において一様収束したことになります.つまり、$1+z+z^2+\cdots$ は $|z|<1$ において広義一様収束しているのです.
広義一様収束をする関数列において以下が言えます.
定理(広義一様収束する関数列の極限の連続性)
ある連続関数列 $f_n(z)$ がある領域において $f(z)$ に広義一様収束する時、$f(z)$ はその領域で連続である.
まとめると、
べき級数
$$\sum_{n=0}^\infty a_nz^n$$
はその収束半径内 $|z|<R$ においてある関数 $f(z)$ に広義一様収束しており、連続である.
さらに、級数が広義一様収束しているとすると、収束半径内において項別微積分を行うことができます.特に、収束半径内においてこのことから、収束半径内のべき級数は $C^\infty$級関数であるといえます.
第12回の後半です.
一様収束しない関数項級数の例、杉浦光夫著の解析入門I(p306の例6)の例だと、
$$f(x)=\sum_{n=0}^\infty\frac{x^2}{(1+x^2)^n}$$
のように簡単に(別に病的な例ではない)作ることができます.
これは、$x\neq 0$ であるとすると、等比級数の和の公式から、
$f(x)=\frac{x^2}{1-\frac{1}{x^2+1}}$
となり、$f(x)=1+x^2$ となります.$x=0$ であれば、定義から $0$ です.
よって、
$$f(x)=\begin{cases}0&x=0\\1+x^2&x\neq 0\end{cases}$$
となり、$x=0$ で不連続であることがわかります.
もし一様収束するなら連続関数列は連続関数に移るはずですから、これは一様収束ではないということがわかります.
絶対収束
級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ が絶対収束するとは、$\sum_{n=1}^\infty |a_n|$ が収束するということです.絶対値をとらないもとの級数が収束することを条件収束と言います.
条件収束するが、絶対収束しない例としてはすぐ挙げられるのは、
$\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n}$ です.
実際、この値は $\log(2)$ ($\log(1+z)$ の級数展開を使え)ですが、絶対値をとった収束は調和級数ですから収束しません.
べき級数
関数項級数の中で、もっとも初等的でよくつかわれるのがべき級数
$$\sum_{n=1}^\infty a_nz^n$$
です.$z$ は複素数で考えられるのでこの場合はそうすることにします.最初の問題はこの級数はいつ収束するのかということです.それを保証しているのが収束半径というやつです.収束半径とは、$|z|<R$ となる $z$ ではいつでもべき級数が絶対収束するような $R$ の上限として定義します.数学の言葉で書けば、
$$R=\sup\left\{r||z|<r\Rightarrow \sum_{n=0}^\infty a_nz^n\text{は絶対収束する}\right\}$$
となります.
また、アダマールの公式は、収束半径は
$$\frac{1}{R}=\overline{\lim}_{n\to \infty }\sqrt[n]{a_n}$$
のように計算されます.
例えば、定数でも多項式でもない一番簡単なべき級数は $\sum_{n=0}^\infty z^n$ だと思いますが、
$a_n=1$ ですので、この計算方法によって、収束半径 $R$ は$1$ となります.
また、$\overline{\lim}$ をとっているから、ところどころ係数に $0$ が有ってもよいことになります.
なので、
$\sum_{n=1}^\infty z^{n^2}$ や $\sum_{n=1}^\infty z^{n!}$ なども
収束半径が $1$ です.
ここで少し脱線します.
また、$e^z$ の級数展開は $\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}$ となりますが、このとき、各点 $z$ でこの級数は収束しますので、収束半径は $\infty$ となります.つまり計算公式からは、
$\lim_{n\to \infty}\sqrt[n]{\frac{1}{n!}}=0$ となります.
これは特に、$\lim_{n\to \infty}\frac{n}{\sqrt[n]{n!}}=e$ となるのです.
なので、$\frac{1}{\sqrt[n]{n!}}\sim\frac{e}{n}$ となります.
$\frac{1}{\sqrt[n]{n!}}$ は漸近的に $\frac{e}{n}$ と同等ということです.
なので、級数にしたものも発散します.
つまり、$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{\sqrt[n]{n!}}=\infty$.
です.
これを $n$ 乗してやったものは、$\frac{n^n}{n!}\sim e^n$ とは違います.
数列の $n$ 乗に関する話はこちらの中に書きましたのでそちらも参照ください.
数列の $n$ 乗の漸近的極限はその数列に依存します.
この数列 $\frac{n^n}{n!}$ を見積もる公式としてスターリングの公式があります.
それによると、
$$n!\sim\sqrt{2\pi n}\left(\frac{n}{e}\right)^n$$
となりますので
$$\frac{n^n}{n!}\sim\frac{e^n}{\sqrt{2\pi n}}$$
どこからともなく、$\frac{1}{\sqrt{2\pi n}}$ が出てきました.$e^n$ より若干小さいということがわかりました.
脱線したので、話を元に戻します.収束半径の内側(境界は含めない)では、各 $z$ に対してべき級数は絶対収束しますので、べき級数はその範囲内で一様収束します.
というか、正確には、広義一様収束です.例えば、
$$1+z+z^2+\cdots$$
なる関数項級数 $s_n(z)=\sum_{k=0}^{n-1}z^k$ は、収束半径内 $|z|<1$ においては $s(z)=\frac{1}{1-z}$ に(各点において)絶対収束します.
つまり、$|s_n(z)-s(z)|=|\frac{z^n}{1-z}|$ は$|z|<1$ で $0$ に収束します.しかし、$|z|<1$ で一様収束していません.例えば $z=1-\frac{1}{n}$ をとると、無限大に発散することができるからです.
このように開区間などでの一様収束性をいうのに、広義一様収束があります.
定義(広義一様収束)
ある領域 $B$ において関数列 $f_n(x)$ が広義一様収束するとは、$B$ 内の任意の有界閉集合(実数の場合は任意の閉区間)において、一様収束することをいいます.
広義一様収束は $[0,1)$ などの閉区領域でない場合に適用されますが、今の等比級数の例の場合、$|z|<1$ において各点において絶対収束していましたが、一様収束しませんでした.
しかし、広義一様収束はしています.
実際、$|z|<1$ の任意の有界閉集合 $S$ はある実数 $0<\rho<1$ が存在して、
$S\subset \{z||z|<\rho\}=:B(\rho)$とすることができます.そうすると、
$|s_n(z)-s(z)|\le \frac{\rho^n}{|1-|z||}\le \frac{\rho^n}{1-\rho}$
が成り立ち、この右辺は$z$ の値に依らずに収束しますので、そのような $S$ において一様収束したことになります.つまり、$1+z+z^2+\cdots$ は $|z|<1$ において広義一様収束しているのです.
広義一様収束をする関数列において以下が言えます.
定理(広義一様収束する関数列の極限の連続性)
ある連続関数列 $f_n(z)$ がある領域において $f(z)$ に広義一様収束する時、$f(z)$ はその領域で連続である.
まとめると、
べき級数
$$\sum_{n=0}^\infty a_nz^n$$
はその収束半径内 $|z|<R$ においてある関数 $f(z)$ に広義一様収束しており、連続である.
さらに、級数が広義一様収束しているとすると、収束半径内において項別微積分を行うことができます.特に、収束半径内においてこのことから、収束半径内のべき級数は $C^\infty$級関数であるといえます.
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