2015年1月14日水曜日

線形代数II演習(第11回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

今日は
  • 固有値、固有ベクトル、固有空間の計算

を行いました.
これらの計算では以下のように行います.

固有値、固有多項式
 線形変換 $F:V\to V$ に対して、あるゼロではないベクトル ${\bf v}$ が存在して、$F({\bf v})=\lambda{\bf v}$ が成り立つ時、$\lambda$ を固有値と言います.
この固有値を求めるには次のような固有多項式を計算する必要が有ります.

まず、$V$ の基底 ${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n$ をとってきます.その基底に関して、表現行列 $A$ を計算します.つまり $A$ は $F({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)A$ です.

この$A$の固有多項式 $\Phi_A(t)=\det(tE-A)$ を線形変換 $F$ の固有多項式と言います.
線形変換 $F$ の固有値は全て、この多項式 $\Phi_A(t)$ の根、つまり $\Phi_A(t)=0$ の解になっていて、逆にこの解は $F$ の固有値にもなっています.

ここで注意すべきことは、固有値の計算において、$V$ の基底を選んでやって表現行列 $A$ を作りましたが、計算される固有多項式 $\Phi_A(t)$ は基底の取り方に依らないということです.

これにはどんな意味があるかというと、
基底を選んだということは、その空間の座標軸をとったということです.座標軸を導入した理由としては、目盛を入れて数値化して、数として認識することがあげられます.線形写像は、どのような目盛を入れるかによって性質が異なるわけでは有りません.ただし、人為的に入れた目盛による表現行列は変わるかもしれません.固有値も、定義から、その値がどのような目盛をいれるかには関係がないはずですから、固有多項式も入れる基底には依存しないはずなのです.
だから、$\Phi_A(t)$ と書かずに $\Phi_F(t)$ と書いた方がいいくらいです.

もっと言えば、固有値を計算しやすくするためには基底をそれに合わせて変えてやってもいいわけです.そうすると、標準基底がいい基底とは限らなくなってきます.
計算しやすい良い基底は線形写像によって変わってくるのです.


ちょっと脱線したのでまとめると、固有値を求めるためには、適当な基底を選んで、その表現行列の固有多項式を計算する.その多項式 $\Phi_A(t)$ の根が固有値となる.

固有値は基底の取り方に依らない、$F$ 本来の性質に由来するものである.


固有ベクトルと固有空間
 固有ベクトルとは、固有値 $\lambda$ に対して、存在するゼロではないベクトル ${\bf v}$ で、$F({\bf v})=\lambda{\bf v}$ を満たすベクトルのことです.
固有値 $\lambda$ に対して $F({\bf v})=\lambda {\bf v}$ を満たす ${\bf v}$ 全体がどれほどあるか求めなければならないことが有ります.それを固有空間と言います.つまり、$\lambda$ に対して、
$$W_\lambda=\{{\bf v}\in V|F({\bf v})=\lambda{\bf v}\}$$
を $\lambda$ に対する(付随する)固有空間といいます.この集合は $V$ の部分ベクトル空間であり、次元は $1$ 以上あります.これは宿題に出しましたので定義にしたがって解いてください.

固有空間のあたりの演習をすると、必ずレポートに見受けられるのは、固有空間を計算した結果 0 次元ベクトル空間にしてしまうことです.上に書いたように固有空間が0次元ベクトル空間になることはありません.(どこかで計算まちがいなどしているというこですが.)少々の書き間違えや計算ミスをすると、0次元ベクトル空間になってしまいますので、このことは逆に計算のチェックになるかと思います.

普段からレポートを書いたら、計算の見直しなどチェックすることはお勧めしますが.

次元が $1$ 次元以上になることは固有値の定義からすぐわかることですが、そうした確認のために宿題にしました.


授業中にやった例をもう一度やっておきます.
B-11-1(2)

$F:{\Bbb C}^2\to {\Bbb C}^2$ で、標準基底による表現行列 $A=\begin{pmatrix}2&1\\4&-3\end{pmatrix}$ の場合.
固有多項式を計算すると、
$$\det\begin{pmatrix}t-2&-1\\-4&t+3\end{pmatrix}=(t-2)(t+3)-4=t^2+t-10$$
となります.よって、固有値は
$$\frac{-1+\sqrt{41}}2,\frac{-1-\sqrt{41}}2$$
です.これ以降計算はこのままだとややこしいのでそれぞれ順番に $\alpha,\beta$ としておきます.
固有ベクトルを求めるには固有空間を先にもとめるとよいです.

$$W_\alpha=\left\{{\bf v}\in {\Bbb C}^2|\begin{pmatrix}\alpha-2&-1\\-4&\alpha+3\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\right\}$$
$$W_\beta=\left\{{\bf v}\in {\Bbb C}^2|\begin{pmatrix}\beta-2&-1\\-4&\beta+3\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\right\}$$
この行列を簡約化して連立一次方程式を解けばよいです.第1行に $\frac4{\alpha-2}$ をかけて第2行に足します.そうすると、
$\begin{pmatrix}\alpha-2&-1\\-4&\alpha+3\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}\alpha-2&-1\\0&\alpha+3-\frac4{\alpha-2}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\alpha-2&-1\\0&\frac{\alpha^2+\alpha-10}{\alpha-2}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\alpha-2&-1\\0&0\end{pmatrix}$
となり、rank=1 の行列が表れます.

これは、どうしてかというと、$W_\alpha$ は少なくとも1次元以上はあり(今回の宿題)、2次元はありません.
どうして2次元ないかというと、 同じように$W_\beta$ の方も1次元以上ありますか $W_\alpha$ の方で2次元全部場所をとってしまうことはないからです.

正確にいえば、$\lambda,\eta$ が異なる固有値であれば、
$W_\lambda+W_\eta$ は直和として、$W_\lambda\oplus W_{\eta}$ となるのです.
要するに $W_\lambda\cap W_\eta=\{{\bf 0}\}$ となるのです.これは次回のB-問題として出してみようと思います.

元に戻ると、$1\le \dim(W_\alpha)<2$ なので、$\dim(W_\alpha)=1$ が成り立つはずです.
そうすると、次元公式 ($\dim(W)=n-\text{rank}(F)$ )から、$\text{rank}(F)=1$ つまり、$\text{rank}\begin{pmatrix}\alpha-2&-1\\-4&\alpha+3\end{pmatrix}=1$ となるから、
ベクトル $\begin{pmatrix}\alpha-2&-1\end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix}-4&\alpha+3\end{pmatrix}$ は平行でなければならないのです.

このようなちょっとしたテクニックで、
$\begin{pmatrix}\alpha-2&-1\\-4&\alpha+3\end{pmatrix}\to\begin{pmatrix}-4&\alpha+3\\0&0\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&\frac{\alpha+3}{-4}\\0&0\end{pmatrix}$
とすぐさま簡約化ができます.
ゆえに、  $W_\alpha=\langle\begin{pmatrix}\alpha+3\\4\end{pmatrix}\rangle=\langle\begin{pmatrix}5+\sqrt{41}\\8\end{pmatrix}\rangle$
なので、固有ベクトルは、
$\begin{pmatrix}5+\sqrt{41}\\8\end{pmatrix}$
となります.
同じように $W_\beta$ の方も求めることができるでしょう.

B-11-1(6)
この線形写像の固有値、固有空間を求めてみます.
まず、基底 $1,x,x^2$ をとって表現行列を求めてみると、
$F(1)=0-2\cdot 1=-2$, $F(x)=1-2(2x)=1-4x$, $F(x^2)=2x-2(2x)^2=2x-8x^2$ となります.
そうすると、表現行列は
$$F(1,x,x^2)=(1,x,x^2)\begin{pmatrix}-2&1&0\\0&-4&2\\0&0&-8\end{pmatrix}$$
となります.
よって、固有多項式は、$(t+2)(t+4)(t+8)$ となるから、固有値は $-2,-4,-8$ となります.

このように、固有値が3つ現れましたから、上で考慮した固有空間の次元に関することを3次元において考えると、固有空間も1次元ずつあることになります.

$W_{-2}=\left\{{\bf v}|\begin{pmatrix}0&-1&0\\0&2&-2\\0&0&6\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\right\}$
$W_{-4}=\left\{{\bf v}|\begin{pmatrix}-2&-1&0\\0&0&-2\\0&0&4\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\right\}$
$W_{-8}=\left\{{\bf v}|\begin{pmatrix}-6&-1&0\\0&-4&-2\\0&0&0\end{pmatrix}{\bf v}={\bf 0}\right\}$

となり、 $W_{-2},W_{-4},W_{-8}$ の基底を求めることで、固有ベクトルが求まります.
あとは皆さんに任せることにします.

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