2015年1月7日水曜日

線形代数II演習(第10回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

今日は、シュミットの直交化について行いました.
  • 正射影ベクトルの作り方.
  • シュミットの直交化
の2本立てでした.
正射影ベクトル
 ベクトル ${\bf v}\in V$ のベクトル ${\bf w}\neq {\bf  0}$ への正射影ベクトル ${\bf a}$ とは、${\bf w}$ に平行で、${\bf v}-{\bf a}$ が ${\bf w}$ に直交するものをいいます.
そのようなベクトルはただ一つ定まります.
正射影

 つまり、${\bf v}={\bf a}+({\bf  v}-{\bf a})$ と分解すると、
${\bf a}$ は ${\bf w}$ に平行な成分、${\bf v}-{\bf a}$ は ${\bf w}$ に直交する成分です.
なのでこの分解は、ベクトル ${\bf v}$ を、あるベクトル ${\bf w}$ とそのベクトルに直交する成分に分けたものということになります.${\bf a}$ はどのように求めるかというと、
まず、${\bf w}$ に平行ですから、${\bf a}=k{\bf w}$ と書けます.
そして、直交条件から、$({\bf v}-k{\bf w},{\bf w})=0$ です.
つまり、内積の線形性から、 $({\bf v},{\bf w})=k\cdot({\bf w},{\bf w})$ となり、
$$k=\frac{({\bf v},{\bf w})}{({\bf w},{\bf w})}=\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}$$
となります.
よって、ベクトル空間 $V$ を直交直和分解として、$V=\langle {\bf w}\rangle\oplus \langle {\bf w}\rangle^{\perp}$
と分解したときのそれぞれの成分が ${\bf a}$ と ${\bf v}-{\bf a}$ となるわけです.
まとめれば、${\bf v}$ の ${\bf w}$ への正射影は $\frac{({\bf v},{\bf w})}{||{\bf w}||^2}{\bf w}$ となります. 
シュミットの直交化
 正射影を用いてシュミットの直交化を行います.シュミットの直交化はある一次独立なベクトル
$${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots, {\bf v}_n$$
に対して、ある、互いに直交化されたベクトル
$${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots, {\bf w}_n$$
を作ることです.互いに直交化されたベクトルとは、$i\neq j$ に対して $({\bf w}_i,{\bf w}_j)=0$
となることです.
さらに直交されたベクトルはその長さで割ることで、
$${\bf e}_1,{\bf e}_2,\cdots,{\bf e}_n$$
となります.つまり、${\bf e}_i=\frac{{\bf w}_i}{||{\bf w}_i||}$ です.
また、この直交化は、その性質から
$$\langle {\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\rangle=\langle {\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_n\rangle$$
$$=\langle {\bf e}_1,{\bf e}_2,\cdots,{\bf e}_n\rangle$$
を満たします.
もとの ${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n$ が基底であるなら、
${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_n$ は直交基底となり、
${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n$ は正規直交基底となります.
この直交化は以下のようにして行います.
特徴として、${\bf w}_i$ は ${\bf v}_i$ を修正する形で行います.
  1. ${\bf w}_1={\bf v}_1$
  2. ${\bf w}_2={\bf v}_2-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}{\bf w}_1$. つまり、 ${\bf v}_2$ の成分のうち ${\bf w}_1$ に直交する成分だけ取り出しているのです.それ以外の ${\bf w}_1$ に平行な成分は正射影です.
    よって、$({\bf w}_2,{\bf w}_1)=({\bf v}_2-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}{\bf w}_1,{\bf w}_1)=({\bf v}_2,{\bf w}_1)-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}({\bf w}_1,{\bf w}_1)=0$
    が成り立ちます.
  3. ${\bf w}_3={\bf v}_3-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}{\bf w}_1-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_2)}{||{\bf w}_2||^2}{\bf w}_2$ です.これは、 ${\bf w}_1$ に平行な成分の他に ${\bf w}_2$ に平行な成分も抜いたものです. 実際、
    $({\bf w}_3,{\bf w}_1)=({\bf v}_3-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}{\bf w}_1-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_2)}{||{\bf w}_2||^2}{\bf w}_2,{\bf w}_1)=({\bf v}_3,{\bf w}_1)-\frac{({\bf v}_3,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}({\bf w}_1,{\bf w}_1)=0$
    かつ、
    $({\bf w}_3,{\bf w}_2)=({\bf v}_3-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}{\bf w}_1-\frac{({\bf v}_2,{\bf w}_2)}{||{\bf w}_2||^2}{\bf w}_2,{\bf w}_2)=({\bf v}_3,{\bf w}_2)-\frac{({\bf v}_3,{\bf w}_2)}{||{\bf w}_2||^2}({\bf w}_2,{\bf w}_2)=0$
  4. これを繰り返して、
    ${\bf w}_i={\bf v}_i-\frac{({\bf v}_i,{\bf w}_1)}{||{\bf w}_1||^2}{\bf w}_1-\cdots-\frac{({\bf v}_{i-1},{\bf w}_{i-1})}{||{\bf w}_{i-1}||^2}{\bf w}_{i-1}$
    とすると、同じように $({\bf w}_i,{\bf w}_j)=0\ \ (j<i)$ がなりたちます. 
シュミットの直交化の図形的な意味については下に書いた絵を見てください.



$v_2$ から $w_1$ に平行な成分(正射影ベクトルの分)を抜いて$w_2$ にしたところ.
${\bf v}_2$ と ${\bf w}_1$ は最初の段階では直交していませんが、正射影ベクトルの成分の分だけ引いてやって ${\bf w}_2$ を作ってやると、 ${\bf w}_1$ と ${\bf w}_2$ は直交しています.
要は、適当な(直交しているとは限らない)ベクトルに対して、次々と、${\bf v}_i$ を直して${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_{i-1}$ に直交するようにベクトルを直して(立てて)いく操作がシュミットの直交化ということになります.
例については宿題にも出しましたのでここでは省略します.宿題が解けないという人がいましたらここで少し書きます.

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