[場所1E101(水曜日4限)]
この定理は、任意の n回微分可能間関数が、ある多項式と、o((x-a)^n) (授業では、すごく小さくなる部分とした)に分解できることを示しています.
ランダウの記号のところを
もう一度説明すると、
o((x-a)^n) は、x=a において(絶対値)が小さくなる関数であるが、 その小さくなり方が、(x-a)^n よりも小さくなるということです.式で書けば、o((x-a)^n) の部分を g(x)でかけば、
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots \frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n}+g(x)
であり、
\lim_{x\to a}\frac{g(x)}{(x-a)^n}=0
となります.
また、o((x-a)^n) の部分は剰余項とよばれ、f(x) の式できちんと書くこともできます.
剰余項の以外の多項式の部分をここでは主要項と呼ぶことにします.
演習でもやりましたが、主要項を求めるとき、ランダウの記号の以下の性質を使うと便利です.
e^x\sin x の5 次までの主要項を求めるには、
また、e^{\cos x} のように他の関数の合成になっている場合も、
4次の項くらいまで求めるとすると、
f(x)=e^x として、f^{(n)}(1)=eなので、
e^x=e+e(x-1)+\frac{e(x-1)^2}{2!}+o((x-1)^2)\ \ (x\to 1)
と、
\cos x=1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}+o(x^4)
と展開しておいて、代入して、x\to 1 を x\to 0 に直すと、
e^{\cos x}=e+e(\cos x-1)+\frac{e(\cos x-1)^2}{2}+o((\cos x-1)^2)\ \ (x\to 0)
\frac{o((\cos x-1)^2)}{x^4}=\frac{o((\cos x-1)^2)}{(\cos x-1)^2}\frac{(\cos x-1)^2}{x^4}
となりますが、\frac{(\cos x-1)^2}{x^4}=\left(\frac{\cos x-1}{x^2}\right)^2 なので、
\lim_{x\to 0}\frac{\cos x -1}{x^2}=\lim_{x\to 0}\frac{-\sin x}{2x}=-\frac{1}{2}
より、
\lim_{x\to 0}\frac{(\cos x-1)^2}{x^4}=\left(-\frac{1}{2}\right)^2=\frac{1}{4}
よって、
\frac{o((\cos x-1)^2)}{x^4}=0\cdot \frac{1}{4}=0
となり、
o((\cos x-1)^2)=o(x^4) となります.
このことから、
他に知っておくべく展開は、(1+x)^{\alpha} の展開です..
この展開も、n 回微分を計算すればよいですが、以下のようになります.
(1+x)^\alpha=\sum_{k=0}^n\binom{\alpha}{k}x^k+o(x^n)
ここで、\binom{\alpha}{n}=\frac{\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)}{n!}
と定義します.
\alpha が自然数のときは、普通の2項定理ですが、
そうでないときも、この式は有効です.
例3
\alpha=-1 の場合、
\binom{-1}{n}=\frac{(-1)(-2)\cdots(-n)}{n!}=\frac{(-1)^nn!}{n!}=(-1)^n
となります.
例4
\alpha=\frac{1}{2} の場合、
\binom{\frac{1}{2}}{n}=\frac{(\frac{1}{2})(-\frac{1}{2})\cdots(-\frac{2n-3}{2})}{n!}=\frac{(-1)^{n-1}(2n-3)!!}{2^nn!}=(-1)^{n-1}\frac{(2n-3)!!}{(2n)!!}
剰余項とは、テイラー展開をしたときの、主要項を除いた余りの部分、つまり、o((x-a)^n) の
とかけます.
ここで、\theta は 0<\theta<1 なる実数であり、定数ですが、n,x,a に依存した定数ということに注意しておきます.
今日は、
- テイラー展開と
- ランダウの記号の演習を行いました。
テイラー展開
定理18(テイラー)
n 回微分可能関数 f(x) は、x=a において、
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}+o((x-a)^{n})
となる.
n 回微分可能関数 f(x) は、x=a において、
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}+o((x-a)^{n})
となる.
この定理は、任意の n回微分可能間関数が、ある多項式と、o((x-a)^n) (授業では、すごく小さくなる部分とした)に分解できることを示しています.
ランダウの記号のところを
もう一度説明すると、
o((x-a)^n) は、x=a において(絶対値)が小さくなる関数であるが、 その小さくなり方が、(x-a)^n よりも小さくなるということです.式で書けば、o((x-a)^n) の部分を g(x)でかけば、
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots \frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n}+g(x)
であり、
\lim_{x\to a}\frac{g(x)}{(x-a)^n}=0
となります.
また、o((x-a)^n) の部分は剰余項とよばれ、f(x) の式できちんと書くこともできます.
剰余項の以外の多項式の部分をここでは主要項と呼ぶことにします.
演習でもやりましたが、主要項を求めるとき、ランダウの記号の以下の性質を使うと便利です.
- \alpha\neq 0なる実数の時、\alpha o(x^n)=o(x^n)
- x^mo(x^n)=o(x^{n+m}) (n\ge 0, -n<m)
- o(x^m)o(x^n)=o(x^{n+m}) (n,m\ge 0)
- m\le nならば、o(x^m)+o(x^n)=o(x^m)
e^x\sin x の5 次までの主要項を求めるには、
e^x=1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+o(x^4)
と、
\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+o(x^5) を使って、
e^x\sin x=\left(1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+o(x^4)\right)\left(x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+o(x^5)\right)
となり、これを展開します.
ここで、
o(x^4) に x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+o(x^5) を掛けたものは
上の公式から、全て o(x^5) にまとめられます.
なぜなら、x^m で、m\ge 1 であるとすると、x^mo(x^4)=o(x^{m+4}) であり、(上の
公式の2つ目の式から)それらの和を取ると、その指数の最小でまとめられるので、
o(x^5) になるからです.
同様に、
o(x^5) に 1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+o(x^4) を掛けたものは、
o(x^5) に全てまとめられます.
よって、この積は、
e^x\sin x=\left(1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}\right)\left(x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}\right)+o(x^5)
となります.この中で、x^6 以上の項を全て o(x^5) に吸収させてやると(式としては、そのまま消してやればよい)、
e^x\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+x^2-\frac{x^4}{3!}+\frac{x^3}{2}-\frac{x^5}{2\cdot 3!}+\frac{x^4}{3!}+o(x^5)
=x+x^2+\frac{x^3}{3}-\frac{x^5}{30}+o(x^5)
例2
また、e^{\cos x} のように他の関数の合成になっている場合も、
4次の項くらいまで求めるとすると、
f(x)=e^x として、f^{(n)}(1)=eなので、
e^x=e+e(x-1)+\frac{e(x-1)^2}{2!}+o((x-1)^2)\ \ (x\to 1)
と、
\cos x=1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}+o(x^4)
と展開しておいて、代入して、x\to 1 を x\to 0 に直すと、
e^{\cos x}=e+e(\cos x-1)+\frac{e(\cos x-1)^2}{2}+o((\cos x-1)^2)\ \ (x\to 0)
\frac{o((\cos x-1)^2)}{x^4}=\frac{o((\cos x-1)^2)}{(\cos x-1)^2}\frac{(\cos x-1)^2}{x^4}
となりますが、\frac{(\cos x-1)^2}{x^4}=\left(\frac{\cos x-1}{x^2}\right)^2 なので、
\lim_{x\to 0}\frac{\cos x -1}{x^2}=\lim_{x\to 0}\frac{-\sin x}{2x}=-\frac{1}{2}
より、
\lim_{x\to 0}\frac{(\cos x-1)^2}{x^4}=\left(-\frac{1}{2}\right)^2=\frac{1}{4}
よって、
\frac{o((\cos x-1)^2)}{x^4}=0\cdot \frac{1}{4}=0
となり、
o((\cos x-1)^2)=o(x^4) となります.
このことから、
e^{\cos x}=e+e(-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}+o(x^4))+\frac{e}{2}\left(-\frac{x^2}{2!}+o(x^4)\right)^2+\frac{x^4}{4!}+o(x^4)\ \ (x\to 0)
=e-\frac{e}{2}x^2+\frac{e}{6}x^4+o(x^4)
と計算できます.
べき関数のテイラー展開
=e-\frac{e}{2}x^2+\frac{e}{6}x^4+o(x^4)
と計算できます.
べき関数のテイラー展開
他に知っておくべく展開は、(1+x)^{\alpha} の展開です..
この展開も、n 回微分を計算すればよいですが、以下のようになります.
(1+x)^\alpha=\sum_{k=0}^n\binom{\alpha}{k}x^k+o(x^n)
ここで、\binom{\alpha}{n}=\frac{\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)}{n!}
と定義します.
\alpha が自然数のときは、普通の2項定理ですが、
そうでないときも、この式は有効です.
例3
\alpha=-1 の場合、
\binom{-1}{n}=\frac{(-1)(-2)\cdots(-n)}{n!}=\frac{(-1)^nn!}{n!}=(-1)^n
となり、
(1+x)^{-1}=\sum_{k=0}^n(-1)^kx^k+o(x^n)=\sum_{k=0}^n(-x)^k+o(x^n)
となります.
例4
\alpha=\frac{1}{2} の場合、
\binom{\frac{1}{2}}{n}=\frac{(\frac{1}{2})(-\frac{1}{2})\cdots(-\frac{2n-3}{2})}{n!}=\frac{(-1)^{n-1}(2n-3)!!}{2^nn!}=(-1)^{n-1}\frac{(2n-3)!!}{(2n)!!}
となります.この2重階乗の意味は授業で話したとおり.
よって、
よって、
(1+x)^{\frac{1}{2}}=\sum_{k=0}^n(-1)^{k-1}\frac{(2k-3)!!}{(2k)!!}x^k+o(x^n)
となります.
ここで、2重階乗の定義から、n\cdot (n-2)!!=n!! なので、
2\cdot 0!!=2!!=2 より、0!!=1
1\cdot (-1)!!=1!!=1 より、(-1)!!=1
(-1)\cdot (-3)!!=(-1)!!=1 より、(-3)!!=-1
となります.よって、\sqrt{1+x} の主要項は、
1+\frac{1}{2}x-\frac{x^3}{8}+\frac{x^3}{16}+o(x^3)
となります.
剰余項
剰余項とは、テイラー展開をしたときの、主要項を除いた余りの部分、つまり、o((x-a)^n) の
部分のことをいいます.
その部分を R_{n+1}(x) とすると、$R_{n+1}(x)$ は、
f が n+1 回微分可能であれば、
R_{n+1}(x)=\frac{f^{(n+1)}(a+\theta(x-a))}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}
ここで、\theta は 0<\theta<1 なる実数であり、定数ですが、n,x,a に依存した定数ということに注意しておきます.
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