[場所1E103(金曜日3限)]
HPに行く.
今日は、
つまり、その部分空間 $W$ 上のベクトルは、そのままであり、それに直交するベクトルは、すべて0 ベクトルにするということなので、$W$ への直交射影だと思えば良いでしょう.
よって、あらゆる ${\bf v}\in V$ に対して
HPに行く.
今日は、
- 正規行列とその対角化
- 射影子
- 符号
についてやリました.
正規行列
正規行列とは、
$$A^\ast A=AA^\ast$$
が成り立つ行列のことです.
随伴行列 $A^\ast$ は、${}^t\bar{A}$ のことで、実行列の場合は、転置行列と同じです.
正規行列の例としては、
実対称行列 ${}^tA=A$
エルミート行列 $A^\ast=A$
直交行列 ${}^tAA=E$
ユニタリー行列 $A^\ast A=E$
実交代行列 ${}^tA=-A$
歪エルミート行列 $A^\ast=-A$
などがそうです.2次の場合は、実正規行列は、対称か交代ですが、3次以上では、
対称でも交代でも直交でもない実正規行列が存在します.
どのような時に正規行列になるかというと、次のような定理が成り立ちます.
定理
$A$ が正規行列であることはあるユニタリー行列によって、対角化されることと同値である.
ユニタリー行列とは、その縦ベクトルが正規直交行列になることと同値ですので、
この正規行列の条件は、${\mathbb C}^n$ の固有ベクトルとしての基底として、正規直交基底が取れるということです.言い換えれば、固有ベクトル同士が直交しているということで、次のように言い換えることもできます.
定理
$A$ が正規行列であることは、$A$ が対角化可能であり、固有空間 $V_\lambda$ と $V_\mu$ は、$\lambda\neq \mu$ ならば、$V_\lambda\perp V_\mu$ となることと同値である.
よって、実に限れば、次のように言い換えることができます.
定理
$A$ が実固有値を持つ実正規行列であるとは、$A$ が直交行列によって、対角化されることと同値である.
実固有値を持つための十分条件は以下が一般的です.
定理
エルミート行列(もしくは、実対称行列)は実固有値を持つ.
正規行列のユニタリー行列による対角化は、固有空間同士の直交性は保証されているので、空間の中のベクトルを正規直交化すると良いです.
例えば、$A=\begin{pmatrix}1&1&1\\1&1&1\\1&1&1\end{pmatrix}$
とすると、固有値は、$0,3$ で、その固有空間は、
$V_0=\langle\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}\rangle$
$V_3=\langle\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}\rangle$
となります.$V_0$ と $V_3$ 同士は直交していますね.
また、$V_0$ の基底は、直交していませんので、直交化すると、
$V_0$ の基底として、さらに正規化してやると、
$\left\{\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix},\frac{1}{\sqrt{6}}\begin{pmatrix}-1\\2\\-1\end{pmatrix}\right\}$
となります.よって、
$U=\begin{pmatrix}\frac{1}{\sqrt{3}}&-\frac{1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}\\\frac{1}{\sqrt{3}}&0&\frac{2}{\sqrt{6}}\\\frac{1}{\sqrt{3}}&\frac{1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{6}}\end{pmatrix}$
としておけば、$U$ はユニタリー行列であり、$U^{-1}AU$ は$\text{diag}(3,0,0)$ の対角行列となる.
射影子
射影子とそのスペクトル分解は、正規行列の応用の話です.
射影子とは、$P^2=P$ かつ、$P^\ast=P$ を満たす行列のことです.
ある部分ベクトル空間 $W\subset V$ とその直交補空間 $W^{\perp}$ に対して、
$V=W\oplus W^{\perp}\to V$ を、
$x_1\in W$ で、$x_2\in W^{\perp}$ とすると、
$x_1+x_2\mapsto x_1$ となるような線形写像の行列表現 $P$ は、射影子となります.
つまり、その部分空間 $W$ 上のベクトルは、そのままであり、それに直交するベクトルは、すべて0 ベクトルにするということなので、$W$ への直交射影だと思えば良いでしょう.
明らかに、$P^2=P$ が成り立ちます.
また、${\bf x}_1,{\bf y}_1\in W$ ${\bf x}_2,{\bf y}_2\in W^{\perp}$ に対して、
また、${\bf x}_1,{\bf y}_1\in W$ ${\bf x}_2,{\bf y}_2\in W^{\perp}$ に対して、
$(P({\bf x}_1+{\bf x}_2),{\bf y}_1+{\bf y}_2)=({\bf x}_1,{\bf y}_1+{\bf y}_2)=({\bf x}_1,{\bf y_1})$
$(P^\ast({\bf x}_1+{\bf x}_2),{\bf y}_1+{\bf y}_2)=({\bf x}_1+{\bf x}_2,P({\bf y}_1+{\bf y}_2))=({\bf x}_1,P{\bf y}_1)=({\bf x}_1,{\bf y}_1)$
$(P^\ast({\bf x}_1+{\bf x}_2),{\bf y}_1+{\bf y}_2)=({\bf x}_1+{\bf x}_2,P({\bf y}_1+{\bf y}_2))=({\bf x}_1,P{\bf y}_1)=({\bf x}_1,{\bf y}_1)$
よって、あらゆる ${\bf v}\in V$ に対して
$(P{\bf v},{\bf w})=(P^\ast{\bf v},{\bf w})$
がなりたつので、これは、$P=P^\ast$ を意味します.
宿題の第1問は難しいかもしれませんが、
要するに、部分空間同士が直交していることと、射影子同士の積が $0$ であることは同値であるということです.
つまり、$W\perp W'$ であるなら、その射影子 $P,P'$ に対して、
$V$ の任意の元を ${\bf v}={\bf x}_1+{\bf x}_2$ のように分けておいて、
$PP'{\bf v}=P{\bf x}_2=0$ となります.
逆も行います.
$A$ が正規行列であることから、あるユニタリー行列 $U$ によって、$U^{-1}AU$ が対角行列であることがわかります.このことを用いると、任意の正規行列は、
$$A=\lambda_1P_1+\cdots+\lambda_rP_r$$
要するに、部分空間同士が直交していることと、射影子同士の積が $0$ であることは同値であるということです.
つまり、$W\perp W'$ であるなら、その射影子 $P,P'$ に対して、
$V$ の任意の元を ${\bf v}={\bf x}_1+{\bf x}_2$ のように分けておいて、
$PP'{\bf v}=P{\bf x}_2=0$ となります.
逆も行います.
$A$ が正規行列であることから、あるユニタリー行列 $U$ によって、$U^{-1}AU$ が対角行列であることがわかります.このことを用いると、任意の正規行列は、
$$A=\lambda_1P_1+\cdots+\lambda_rP_r$$
と変形できます.
ヒントは、対角行列 $D$ を固有値ごとの和に分けられるよう工夫をしてください.
この和の式の意味は、$P_i$ は、ある固有値に付随する固有空間の成分を取り出す操作であり、その固有空間において $\lambda_i$ が $A$ の作用であるということになるのです.
成分を取り出して、再び和を取れば、元のベクトルにもどりますからそれを表した式が、
射影子の和が単位行列であるという
$$E=P_1+\cdots+P_r$$
となります.この式も、上の分解において、$\lambda_i=1$ とおいてやる式を考えれば、自然と出て来ます.
また、この射影子を使ってやると、行列の $n$ 乗や、指数関数など簡単に計算をすることができます.
符号
最後に行列の符号について行いました.
これは定義のみです.
$A$ を実対称行列とします.この時、上で書いたように、$A$ の固有値は全て実数です.ですので、固有値は、正の数か負の数か、$0$ です.その時、
$p$ を正の固有値の固有空間の次元の和(ここでは、固有多項式の正の根の重複度こみの和と一致)とし、
$q$ を負の固有値の固有空間の次元の和(同じように、固有多項式の負の根の重複度こみの和と一致)とします.
この時、$A$ の符号を
$(p,q)$ と書きます.$\text{sgn}(A)$ と書いたりします.
$0$ の固有値の数はここでは数えません.
$A$ が $n\times n$ 行列である時、
$\text{sgn}(A)=(n,0)$ のとき、行列 $A$ は正定値であるといい、$\text{sgn}(A)=(0,n)$ である時、行列 $A$ は負定値であるといいます.
また、$p-q$ のことを、符号数ということもあります.
ヒントは、対角行列 $D$ を固有値ごとの和に分けられるよう工夫をしてください.
この和の式の意味は、$P_i$ は、ある固有値に付随する固有空間の成分を取り出す操作であり、その固有空間において $\lambda_i$ が $A$ の作用であるということになるのです.
成分を取り出して、再び和を取れば、元のベクトルにもどりますからそれを表した式が、
射影子の和が単位行列であるという
$$E=P_1+\cdots+P_r$$
となります.この式も、上の分解において、$\lambda_i=1$ とおいてやる式を考えれば、自然と出て来ます.
また、この射影子を使ってやると、行列の $n$ 乗や、指数関数など簡単に計算をすることができます.
符号
最後に行列の符号について行いました.
これは定義のみです.
$A$ を実対称行列とします.この時、上で書いたように、$A$ の固有値は全て実数です.ですので、固有値は、正の数か負の数か、$0$ です.その時、
$p$ を正の固有値の固有空間の次元の和(ここでは、固有多項式の正の根の重複度こみの和と一致)とし、
$q$ を負の固有値の固有空間の次元の和(同じように、固有多項式の負の根の重複度こみの和と一致)とします.
この時、$A$ の符号を
$(p,q)$ と書きます.$\text{sgn}(A)$ と書いたりします.
$0$ の固有値の数はここでは数えません.
$A$ が $n\times n$ 行列である時、
$\text{sgn}(A)=(n,0)$ のとき、行列 $A$ は正定値であるといい、$\text{sgn}(A)=(0,n)$ である時、行列 $A$ は負定値であるといいます.
また、$p-q$ のことを、符号数ということもあります.
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