2変数関数の臨界点 ( f_x(a,b)=f_y(a,b)=0 なる点 (a,b) )において、
グラフの局所的な振る舞いを描いておきます.
授業では適当にしか描けませんでしたので.
この図でイメージを膨らませてください.
解説は
微積分II演習第4回
を見てください.
f_x(a,b)=f_y(a,b)=0 となる臨界点 (a,b) での近くの f(x,y) の様子です.
まず、関数は2階微分くらいはしますので、少なくとも C^2 級くらい仮定しましょう.
そのとき、臨界点 (a,b) の近くで、関数 f(x,y) は以下のようにテイラー展開できます.
f(x,y)=f(a,b)+\frac{f_{xx}(a,b)}{2}h^2+f_{xy}(a,b)hk+\frac{f_{yy}(a,b)}{2}k^2+o(r^2)
h=x-a,\ k=y-b
r=\sqrt{h^2+k^2}
テイラー展開とは、関数のその点での主要な項を順番にならべたもので、
人は、その項を、0次、1次、2次と順番に理解していくことになりますが、
前の項が消えていなければ、その項で理解出来ますので、次の項の役目はありません.
つまり、2次が消えていなければ、3次の項が関数に理解に役立つことはありません.
ただし、2次の項が消えているときは、3次の項が一時的にむき出しになり、その役目を
問うことになるのです.
0次の項はその点での値を意味しますから、曲がり方には関係ありません.
曲がり方における主要項は2次の項で、それが消えていなければ、
その項をみます.
ここで、ヘッセ行列を H とします.(微積分II演習第4回 参照)
まずは、\det(H)\neq 0 となる状況(非退化といい、そうでないとき、退化といいます)を仮定します.
非退化のとき、臨界点が極値であるか、そうでないかはっきりとわかるようになります.
非退化であるということは、関数が定義域の (x,y) 平面においてあらゆる方向において
2次の項が消えていないということです.なので、どの方向にも
3次の項は2次の項に隠れて見えなくなります.
行列そのものではなく、行列式を見るのは、全ての方向で
2次の項が消えていないようにしたいからです.
H が正定値 \Leftrightarrow\det(H(a,b))>0,\ f_{xx}(a,b)>0 \Leftrightarrow Hの固有値が両方正
このとき (a,b) は極小点になります
H が負定値 \Leftrightarrow\det(H(a,b))>0,\ f_{xx}(a,b)<0\Leftrightarrow Hの固有値が両方負
このとき、(a,b) は極大点になります.
H が不定値 \Leftrightarrow\det(H(a,b))<0\Leftrightarrow Hの固有値が正と負
このとき、(a,b) は極点ではありません.
馬の鞍(背中)と言っているのはこのような形状のことです.
H は実固有値を2つ持ちますが、その2つの固有値は何を意味しているかというと、
曲面の曲がり方(曲率)です.
正確に言えば、ある直線に沿った曲面の曲がり具合です.
その2つの固有値は、あらゆる方向を向いたときに、その方向(固有ベクトル)において
最大の曲率と最小の曲率を与えているのです.
最後の絵ではこの矢印のA方向が最大の正の方向、Bの方向が最小の負の方向です.
曲率の定義は2年生の授業で習いますが、曲率(の絶対値)が大きいと曲がり方が急になり、
小さいと、曲がり方が緩やかになります.ここでは、その方向での関数の
2階偏微分と思っても問題ありません.
上の馬の鞍においては、A 方向と B 方向での2階偏微分です.
それぞれ、正の数、負の数なので、
(正の固有値)\times (負の固有値)=(負のヘッシアン)
となるわけです.
次に退化している状況を考えます.
要するに \det(H(a,b))=0 となる状況です.
ヘッセ行列の固有値でいえば、最大、または最小に曲がっている曲率が 0 のときです.
これは、極値かどうか判定するのは微妙な問題です.
例えば、
\det(H)=0 かつ、\text{rank}(H)=1 のときを考えます.
これは、或る方向は2次近似は消えていないが、他の方向において、2次近似が消えてしまって、
3次の項が見えている状況です.
関数を2次近似してみていくと
局所的には(2次近似までは)下のようになりますが....
(ちなみに、このグラフ上の真ん中の点を中心にぐるっと一周してみると、2方向においてフラットで、
それ以外では曲がり方は全て正の方向です.)
これは、f(x,y)=f(a,b)+c(ax+by)^2+o(r^2) のような関数なわけですが、凸として曲がっている
成分が一方向あり、その補空間の方向では2次近似においては曲がっていません.
一定です.
上の式で言えばax+by=0 の方向で、2次近似がきえています.
このとき f(x,y) がどう曲がっているかは
3次近似以降にゆだねられます.
ここでは、上向きに曲がっているのか、下向きに曲がっているのか分かりません.
もしかしたら極値ではないかもしれません.
例えば、
f(x,y)=x^2+y^4 極小値.
f(x,y)=x^2-y^4 馬の鞍状態.(極値ではありません.)
f(x,y)=x^2+y^3 極値ではない.(馬の鞍でもない.)
な感じです.もちろんこれはもっとも分かりやすい状況で臨界点の様子はもっと複雑になります.
\text{rank}(H)=0 の場合では、曲がり方全ての方向で、3次以降に全て委ねられます.
これは1年生の微積分の範囲を大幅に超えてしまいますのでストップです.
まずは、3次形式を学ぶ必要があります.
そのとき、標準形がどのような関数になるのか私は知りません.
しかし、一般に、ヘッセ行列が退化している場合の極値問題は、
ニュートン図形など用いると判定が出来る場合があります.
もし、ニュートン図形について知りたければ、下のレファレンスにある岩崎克則先生の
「極値問題とニュートン図形」
(2変数多項式関数を使って極値なるための必要条件、および十分条件を例を使って分かりやすく解説している.)
もしくは、1. の文献が引用しているヴァシリエフの論文がよいようです.
このような話題は微積分の発展問題として勉強したり、問題を見つけるのは面白いと思います.
グラフの局所的な振る舞いを描いておきます.
授業では適当にしか描けませんでしたので.
この図でイメージを膨らませてください.
解説は
微積分II演習第4回
を見てください.
f_x(a,b)=f_y(a,b)=0 となる臨界点 (a,b) での近くの f(x,y) の様子です.
まず、関数は2階微分くらいはしますので、少なくとも C^2 級くらい仮定しましょう.
そのとき、臨界点 (a,b) の近くで、関数 f(x,y) は以下のようにテイラー展開できます.
f(x,y)=f(a,b)+\frac{f_{xx}(a,b)}{2}h^2+f_{xy}(a,b)hk+\frac{f_{yy}(a,b)}{2}k^2+o(r^2)
h=x-a,\ k=y-b
r=\sqrt{h^2+k^2}
テイラー展開とは、関数のその点での主要な項を順番にならべたもので、
人は、その項を、0次、1次、2次と順番に理解していくことになりますが、
前の項が消えていなければ、その項で理解出来ますので、次の項の役目はありません.
つまり、2次が消えていなければ、3次の項が関数に理解に役立つことはありません.
ただし、2次の項が消えているときは、3次の項が一時的にむき出しになり、その役目を
問うことになるのです.
0次の項はその点での値を意味しますから、曲がり方には関係ありません.
曲がり方における主要項は2次の項で、それが消えていなければ、
その項をみます.
ここで、ヘッセ行列を H とします.(微積分II演習第4回 参照)
まずは、\det(H)\neq 0 となる状況(非退化といい、そうでないとき、退化といいます)を仮定します.
非退化のとき、臨界点が極値であるか、そうでないかはっきりとわかるようになります.
非退化であるということは、関数が定義域の (x,y) 平面においてあらゆる方向において
2次の項が消えていないということです.なので、どの方向にも
3次の項は2次の項に隠れて見えなくなります.
行列そのものではなく、行列式を見るのは、全ての方向で
2次の項が消えていないようにしたいからです.
H が正定値 \Leftrightarrow\det(H(a,b))>0,\ f_{xx}(a,b)>0 \Leftrightarrow Hの固有値が両方正
このとき (a,b) は極小点になります
H が負定値 \Leftrightarrow\det(H(a,b))>0,\ f_{xx}(a,b)<0\Leftrightarrow Hの固有値が両方負
このとき、(a,b) は極大点になります.
H が不定値 \Leftrightarrow\det(H(a,b))<0\Leftrightarrow Hの固有値が正と負
このとき、(a,b) は極点ではありません.
H は実固有値を2つ持ちますが、その2つの固有値は何を意味しているかというと、
曲面の曲がり方(曲率)です.
正確に言えば、ある直線に沿った曲面の曲がり具合です.
その2つの固有値は、あらゆる方向を向いたときに、その方向(固有ベクトル)において
最大の曲率と最小の曲率を与えているのです.
最後の絵ではこの矢印のA方向が最大の正の方向、Bの方向が最小の負の方向です.
曲率の定義は2年生の授業で習いますが、曲率(の絶対値)が大きいと曲がり方が急になり、
小さいと、曲がり方が緩やかになります.ここでは、その方向での関数の
2階偏微分と思っても問題ありません.
上の馬の鞍においては、A 方向と B 方向での2階偏微分です.
それぞれ、正の数、負の数なので、
(正の固有値)\times (負の固有値)=(負のヘッシアン)
となるわけです.
次に退化している状況を考えます.
要するに \det(H(a,b))=0 となる状況です.
ヘッセ行列の固有値でいえば、最大、または最小に曲がっている曲率が 0 のときです.
これは、極値かどうか判定するのは微妙な問題です.
例えば、
\det(H)=0 かつ、\text{rank}(H)=1 のときを考えます.
これは、或る方向は2次近似は消えていないが、他の方向において、2次近似が消えてしまって、
3次の項が見えている状況です.
関数を2次近似してみていくと
局所的には(2次近似までは)下のようになりますが....
(ちなみに、このグラフ上の真ん中の点を中心にぐるっと一周してみると、2方向においてフラットで、
それ以外では曲がり方は全て正の方向です.)
これは、f(x,y)=f(a,b)+c(ax+by)^2+o(r^2) のような関数なわけですが、凸として曲がっている
成分が一方向あり、その補空間の方向では2次近似においては曲がっていません.
一定です.
上の式で言えばax+by=0 の方向で、2次近似がきえています.
このとき f(x,y) がどう曲がっているかは
3次近似以降にゆだねられます.
ここでは、上向きに曲がっているのか、下向きに曲がっているのか分かりません.
もしかしたら極値ではないかもしれません.
例えば、
f(x,y)=x^2+y^4 極小値.
f(x,y)=x^2-y^4 馬の鞍状態.(極値ではありません.)
f(x,y)=x^2+y^3 極値ではない.(馬の鞍でもない.)
な感じです.もちろんこれはもっとも分かりやすい状況で臨界点の様子はもっと複雑になります.
\text{rank}(H)=0 の場合では、曲がり方全ての方向で、3次以降に全て委ねられます.
これは1年生の微積分の範囲を大幅に超えてしまいますのでストップです.
まずは、3次形式を学ぶ必要があります.
そのとき、標準形がどのような関数になるのか私は知りません.
しかし、一般に、ヘッセ行列が退化している場合の極値問題は、
ニュートン図形など用いると判定が出来る場合があります.
もし、ニュートン図形について知りたければ、下のレファレンスにある岩崎克則先生の
「極値問題とニュートン図形」
(2変数多項式関数を使って極値なるための必要条件、および十分条件を例を使って分かりやすく解説している.)
もしくは、1. の文献が引用しているヴァシリエフの論文がよいようです.
このような話題は微積分の発展問題として勉強したり、問題を見つけるのは面白いと思います.
- 岩崎克則、極値問題とニュートン図形、50回OR学会シンポジウム2003年9月31-55
- Vassiliev,Asymptotoic exponential integrals, Newton's diagram and classification of minimal points, Funct. Anal. Appl. 11(3) 1977,163-172
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