[物理2 クラス対象(金曜日4限)]
第3回プリント
HPに行く.
今日の授業は以下の通りでした。
をやりました.
まず、
基底というのは、一次独立性と一次結合性の2つの性質をもつものをいいますが、
ベクトル空間に対して、一意的に(すぐに)きまるものではありません.
数ベクトル空間 {\Bbb R}^n や {\Bbb C}^n に対しては、
標準基底{\bf e}_1,{\bf e}_2,\cdots,{\bf e}_n がありますが、それは
数ベクトル空間特有の現象です.
一般には、基底をとることには任意性があります.
基底を一つ決めてしまえば、全てのベクトルの表示の仕方は一意的です.
今日出したC-3-3の問題です.
C-3-1, C-3-2 についてはまた、要望がありましたら書きます.
さて、今日やったことをもう一度説明していきます。
基底の変換行列
基底が2通り \mathcal{V}=\{{\bf v}_1\cdots,{\bf v}_n\}, \mathcal{W}=\{{\bf w}_1\cdots,{\bf w}_n\}
とあったときに、\mathcal{V} から \mathcal{W} へ変換する基底の変換行列とは、
({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_n)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)\begin{pmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots & a_{1n}\\ a_{21}&a_{22}&\cdots & a_{2n}\\ \cdots&\cdots&\cdots&\cdots\\ a_{n1}&a_{n2}&\cdots & a_{nn}\\ \end{pmatrix}\hspace{1cm}(*)
と書いた時の後ろの n\times n行列 (a_{ij}) のことです.
この式は、
例えば、一つ目のベクトル {\bf w}_1 を基底 \{{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n\} の
一次結合で書いて、
{\bf w}_1=a_{11}{\bf v}_1+a_{21}{\bf v}_2+\cdots+a_{n1}{\bf v}_n
とします.
そうすると、
{\bf w}_1=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)\begin{pmatrix}a_{11}\\a_{12}\\\vdots\\ a_{n1}\end{pmatrix}=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)\cdot{\bf a}_1
とかけます.
同じ事を {\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_n に対して行って、
({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_n)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)({\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n)
と並べることで、(*) の式が出来上がっているのです.
注意すべきことは、かならずこの形 (*) に書くことです.
ベクトルの元を縦に書いたり、行列を左から書けるような形にすると、
基底の変換行列が違うものになります.
正確に言えばそれらを行うと行列が転置されます.
授業でも言いましたが、
基底を表示するとき使っている中カッコ、\mathcal{V}=\{\cdots\} は
集合を表示するときの記号と同じです.
\mathcal{V}=\{\cdots\} はベクトルの集合の意味もありますが、さらに順番も気にしています.
基底の変換行列を考えるときは {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n の順番に基底を並べたときの
基底の変換行列を計算してください.
好きに並べ替えてから行列を計算すると、違う行列になってしまいます.
正確にいえば列を並び変えたものになります.
ベクトルの行列表示
次は基底とは限らないいくつかのベクトル \mathcal{X}=\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\}
があったときに、それを同じように基底 \mathcal{V} の一次結合で書く方法です.
つまり、
({\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A
です.この行列 A は n\times m 行列です.
この式をベクトル \mathcal{X} の基底 \mathcal{V} による行列表示ということにします.
また、行列表示によって現れたこの行列 A のことを、
ベクトル \mathcal{X} の基底 \mathcal{V} による表示行列 ということにします.
行列表示や表示行列は教科書の言葉でも、講義での言葉でもないですが、
便利なのでこのまま使っていこうと思います.
当然のことながら、 \{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} が基底であれば、
表示行列は基底の変換行列と同じものになります.
計算方法は、基底の変換行列と同じです.
\mathcal{X} が基底であるための必要十分条件は
表示行列 A が正則行列であることです.
これは、講義の方の授業でもやったとおり定理6.4と同じ主張です.
一次関係が同じということ
いくつかのベクトル \{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} が用意されているとします.
そのとき、そのベクトルたちがどのような関係を持つのかということが気になります.
たとえば、一次独立か一次従属か、一次従属とすればどのような関係があるか?
\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} と \{{\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_m\} の一次関係が同じである
とは、そのような関係が同じであるということで、式で書けば、
スカラーc_1,c_2,\cdots,c_m が
c_1{\bf x}_1+\cdots+c_m{\bf x}_m={\bf 0}
を満たす
\Leftrightarrow
スカラーc_1,c_2,\cdots,c_m が
c_1{\bf y}_1+\cdots+c_m{\bf y}_m={\bf 0}
を満たす.
と書くことができます.
そこで、さきほどの行列表示の話に戻りますが、
任意のベクトル \{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} を基底によって
({\bf x}_1\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A
と表示したとし、行列 A を A=({\bf a}_1\cdots {\bf a}_m) とたてベクトルを
並べたものとして書いておきます.
このとき、実は
\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} と
\{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} の一次関係は同じになります.
これは、何がしたいのかというと、
\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} は一般のベクトル空間の元であり、
その一次関係を探すことは(場合にも依りますが)結構大変です.
しかし \{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} は数ベクトル空間の元であり、
少なくとも数字の列で書かれている以上もう少し分かりやすい対象です.
これにより、抽象的なベクトルを具体的な数ベクトルで置き直して考えることが
できるようになったわけです.
しかし、数ベクトルにしたからといって、一次関係が分かるようになるわけではありません。
それをどうするかが次の話題です.
基本変形と一次関係
行列の基本変形とは、行列のランクを求めたり、連立一次方程式を求めたりするため
手段ですが、ここではもう一つ使用法があります.
それは数ベクトルの一次関係を探すことです.
A=({\bf a}_1\cdots{\bf a}_m) の一次関係を探したいとします.
例えば、どのベクトルとどのベクトルが一次独立だとか
どのような一次関係があるかとか.
そこで、
基本変形をおさらいをすると、行列を(行で)基本変形をすることは、
(左から)ある正則行列をかけることに対応します.
つまり、n\times m 行列 A に行の基本変形をして n\times m 簡約(階段)行列 B にすることは、左から
ある n\times n 正則行列 P をかけて、
B=PA\hspace{1cm}(**)
とすることに対応します.
このとき、P は正則行列ですので、P=({\bf p}_1\cdots{\bf p}_n) と書いたときに
\{{\bf p}_1,\cdots,{\bf p}_n\} は{\Bbb C}^n 上の基底となります.
また、B=({\bf b}_1\cdots {\bf b}_m) 、A=({\bf a}_1\cdots {\bf a}_m) と書いておけば、
(**) は
({\bf b}_1\cdots {\bf b}_m)=({\bf p}_1\cdots {\bf p}_n)({\bf a}_1\cdots {\bf a}_m)
と書くことができます.
この式 (**) は上の書き方と通じますよね?
つまり、ひとつ上で言ったことを加味すれば、
\{{\bf b}_1,\cdots,{\bf b}_m\} と
\{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} の一次関係は同じなのです.
もともと \{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} の一次関係が調べたかったわけですが、
その一次関係は \{{\bf b}_1\cdots {\bf b}_m\} の一次関係を調べればよい
ということになります.
数ベクトル空間の \{{\bf a}_1,\cdots, {\bf a}_m\} の一次関係が難しくても
簡約化された \{{\bf b}_1,\cdots, {\bf b}_m\} の一次関係なら
誰でも、一目でそれらの一次関係が分かるようになります.
どういうことでしょうか?
このことの演習は次回以降に回しましょう.
今回は、いくつかのベクトルを基底の一次結合で書き、
それを行列で表すことの練習です.
ポイントは、いつでも
({\bf x}_1,\cdots, {\bf x}_m)=({\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n)A
の形に書くことです.
対称式
長くなりすぎるのでまた別なところでまた書くことにします.
HPに行く.
今日の授業は以下の通りでした。
- 基底の変換行列.(今日の必須事項)
- いくつかのベクトルの行列表示.(今日の必須事項)
- 同値な一次関係
- 基本変形と一次関係
- 対称式
をやりました.
まず、
基底というのは、一次独立性と一次結合性の2つの性質をもつものをいいますが、
ベクトル空間に対して、一意的に(すぐに)きまるものではありません.
数ベクトル空間 {\Bbb R}^n や {\Bbb C}^n に対しては、
標準基底{\bf e}_1,{\bf e}_2,\cdots,{\bf e}_n がありますが、それは
数ベクトル空間特有の現象です.
一般には、基底をとることには任意性があります.
基底を一つ決めてしまえば、全てのベクトルの表示の仕方は一意的です.
今日出したC-3-3の問題です.
C-3-1, C-3-2 についてはまた、要望がありましたら書きます.
さて、今日やったことをもう一度説明していきます。
基底の変換行列
基底が2通り \mathcal{V}=\{{\bf v}_1\cdots,{\bf v}_n\}, \mathcal{W}=\{{\bf w}_1\cdots,{\bf w}_n\}
とあったときに、\mathcal{V} から \mathcal{W} へ変換する基底の変換行列とは、
({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_n)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)\begin{pmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots & a_{1n}\\ a_{21}&a_{22}&\cdots & a_{2n}\\ \cdots&\cdots&\cdots&\cdots\\ a_{n1}&a_{n2}&\cdots & a_{nn}\\ \end{pmatrix}\hspace{1cm}(*)
と書いた時の後ろの n\times n行列 (a_{ij}) のことです.
この式は、
例えば、一つ目のベクトル {\bf w}_1 を基底 \{{\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n\} の
一次結合で書いて、
{\bf w}_1=a_{11}{\bf v}_1+a_{21}{\bf v}_2+\cdots+a_{n1}{\bf v}_n
とします.
そうすると、
{\bf w}_1=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)\begin{pmatrix}a_{11}\\a_{12}\\\vdots\\ a_{n1}\end{pmatrix}=({\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n)\cdot{\bf a}_1
とかけます.
同じ事を {\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_n に対して行って、
({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_n)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)({\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n)
と並べることで、(*) の式が出来上がっているのです.
注意すべきことは、かならずこの形 (*) に書くことです.
ベクトルの元を縦に書いたり、行列を左から書けるような形にすると、
基底の変換行列が違うものになります.
正確に言えばそれらを行うと行列が転置されます.
授業でも言いましたが、
基底を表示するとき使っている中カッコ、\mathcal{V}=\{\cdots\} は
集合を表示するときの記号と同じです.
\mathcal{V}=\{\cdots\} はベクトルの集合の意味もありますが、さらに順番も気にしています.
基底の変換行列を考えるときは {\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n の順番に基底を並べたときの
基底の変換行列を計算してください.
好きに並べ替えてから行列を計算すると、違う行列になってしまいます.
正確にいえば列を並び変えたものになります.
ベクトルの行列表示
次は基底とは限らないいくつかのベクトル \mathcal{X}=\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\}
があったときに、それを同じように基底 \mathcal{V} の一次結合で書く方法です.
つまり、
({\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A
です.この行列 A は n\times m 行列です.
この式をベクトル \mathcal{X} の基底 \mathcal{V} による行列表示ということにします.
また、行列表示によって現れたこの行列 A のことを、
ベクトル \mathcal{X} の基底 \mathcal{V} による表示行列 ということにします.
行列表示や表示行列は教科書の言葉でも、講義での言葉でもないですが、
便利なのでこのまま使っていこうと思います.
当然のことながら、 \{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} が基底であれば、
表示行列は基底の変換行列と同じものになります.
計算方法は、基底の変換行列と同じです.
\mathcal{X} が基底であるための必要十分条件は
表示行列 A が正則行列であることです.
これは、講義の方の授業でもやったとおり定理6.4と同じ主張です.
一次関係が同じということ
いくつかのベクトル \{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} が用意されているとします.
そのとき、そのベクトルたちがどのような関係を持つのかということが気になります.
たとえば、一次独立か一次従属か、一次従属とすればどのような関係があるか?
\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} と \{{\bf y}_1,\cdots,{\bf y}_m\} の一次関係が同じである
とは、そのような関係が同じであるということで、式で書けば、
スカラーc_1,c_2,\cdots,c_m が
c_1{\bf x}_1+\cdots+c_m{\bf x}_m={\bf 0}
を満たす
\Leftrightarrow
スカラーc_1,c_2,\cdots,c_m が
c_1{\bf y}_1+\cdots+c_m{\bf y}_m={\bf 0}
を満たす.
と書くことができます.
そこで、さきほどの行列表示の話に戻りますが、
任意のベクトル \{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} を基底によって
({\bf x}_1\cdots,{\bf x}_m)=({\bf v}_1,\cdots,{\bf v}_n)A
と表示したとし、行列 A を A=({\bf a}_1\cdots {\bf a}_m) とたてベクトルを
並べたものとして書いておきます.
このとき、実は
\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} と
\{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} の一次関係は同じになります.
これは、何がしたいのかというと、
\{{\bf x}_1,\cdots,{\bf x}_m\} は一般のベクトル空間の元であり、
その一次関係を探すことは(場合にも依りますが)結構大変です.
しかし \{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} は数ベクトル空間の元であり、
少なくとも数字の列で書かれている以上もう少し分かりやすい対象です.
これにより、抽象的なベクトルを具体的な数ベクトルで置き直して考えることが
できるようになったわけです.
しかし、数ベクトルにしたからといって、一次関係が分かるようになるわけではありません。
それをどうするかが次の話題です.
基本変形と一次関係
行列の基本変形とは、行列のランクを求めたり、連立一次方程式を求めたりするため
手段ですが、ここではもう一つ使用法があります.
それは数ベクトルの一次関係を探すことです.
A=({\bf a}_1\cdots{\bf a}_m) の一次関係を探したいとします.
例えば、どのベクトルとどのベクトルが一次独立だとか
どのような一次関係があるかとか.
そこで、
基本変形をおさらいをすると、行列を(行で)基本変形をすることは、
(左から)ある正則行列をかけることに対応します.
つまり、n\times m 行列 A に行の基本変形をして n\times m 簡約(階段)行列 B にすることは、左から
ある n\times n 正則行列 P をかけて、
B=PA\hspace{1cm}(**)
とすることに対応します.
このとき、P は正則行列ですので、P=({\bf p}_1\cdots{\bf p}_n) と書いたときに
\{{\bf p}_1,\cdots,{\bf p}_n\} は{\Bbb C}^n 上の基底となります.
また、B=({\bf b}_1\cdots {\bf b}_m) 、A=({\bf a}_1\cdots {\bf a}_m) と書いておけば、
(**) は
({\bf b}_1\cdots {\bf b}_m)=({\bf p}_1\cdots {\bf p}_n)({\bf a}_1\cdots {\bf a}_m)
と書くことができます.
この式 (**) は上の書き方と通じますよね?
つまり、ひとつ上で言ったことを加味すれば、
\{{\bf b}_1,\cdots,{\bf b}_m\} と
\{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} の一次関係は同じなのです.
もともと \{{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_m\} の一次関係が調べたかったわけですが、
その一次関係は \{{\bf b}_1\cdots {\bf b}_m\} の一次関係を調べればよい
ということになります.
数ベクトル空間の \{{\bf a}_1,\cdots, {\bf a}_m\} の一次関係が難しくても
簡約化された \{{\bf b}_1,\cdots, {\bf b}_m\} の一次関係なら
誰でも、一目でそれらの一次関係が分かるようになります.
どういうことでしょうか?
このことの演習は次回以降に回しましょう.
今回は、いくつかのベクトルを基底の一次結合で書き、
それを行列で表すことの練習です.
ポイントは、いつでも
({\bf x}_1,\cdots, {\bf x}_m)=({\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n)A
の形に書くことです.
対称式
長くなりすぎるのでまた別なところでまた書くことにします.
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