2014年10月11日土曜日

線形代数II演習(第2回)

[物理2 クラス対象(金曜日4限)]

第2回プリント
HPに行く.

今日の授業は、基底でした.

基底というのは、ベクトル空間 $V$ の中の $\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\}$ が
以下の性質を満たすものです.

(i) $\{{\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n\}$ は一次独立である.
(ii) $V$の任意の元 ${\bf v}$ があるスカラー$a_1,\cdots,a_n$ を用いて、
  ${\bf v}= a_1{\bf v}_1+a_2{\bf v}_2+\cdots+a_n{\bf v}_n$
  とかけることである.

一次独立性については多くの人が理解していたようでしたが、
(ii) の一次結合性(一般にそう呼ばれているわけではないですが、ここではそう書くことにします)
についての方は理解することは難しかったようです.

一応復習しておくと、${\bf v}_1,{\bf v}_2,\cdots,{\bf v}_n$が
一次独立であることは、$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+\cdots+c_n{\bf v}_n={\bf  0}$
となる $c_1,c_2,\cdots,c_n$ が自明なもの$(0,0,\cdots,0)$ しかないことを証明すればよく、
これは、連立一次方程式を解けばいいわけです.

今日何人かの人がやってくれたと思います.

しかし、一結合性の方は何をすればよいのか、なかなか分からなかったと思います.

もう一度書くと、
任意の${\bf v}\in V$の元に対して、あるスカラー$a_1,a_2,\cdots,a_n\in {\Bbb K}$が
存在して、${\bf v}=a_1{\bf v}_1+a_2{\bf v}_2+\cdots+a_n{\bf v}_n$が成り立つことです.

まず問題となるのは、任意の元 ${\bf v}$ をどうやって与えればよいかということですが、
これは場合により異なります.

例えば、多項式全体 ${\Bbb K}[X]$ や $P({\Bbb K})$ の場合を考えます.
このとき、任意の多項式の与え方は、$a_i\in {\Bbb K}$ を用いて
$a_0+a_1X+a_2X^2+\cdots+a_nX^n$
と書くことになります.

他の例でいえば、${\Bbb C}^n$ の任意のベクトルは、スカラー $a_i\in {\Bbb C}$ を用いて
$\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\\vdots\\a_n\end{pmatrix}$
と与えることができます.

さらに他の例でいえば、閉区間 $[0,1]$ 上連続関数全体 $C([0,1])$ のベクトルであれば
単に $f\in C([0,1])$ と書くしかありません.
ただし、任意の $x=a\in [0,1]$ において $f(x)$ は連続です.

次なる問題は、いつこれがそのベクトルたちの一次結合でかけるかという問題ですが、
式を立ててしまって、その式の解の存在条件を探ればよいことになります.


例として、B-2-2の(1) をもう一回やっておくと、

(i)   $f_1,f_2,f_3$の線形独立性については、
$c_1f_1+c_2f_2+c_3f_3=0$ という式を立てます.

そうすると、$(c_1+c_2+c_3)+(c_2+c_3)X+c_3X^2=0$
ですが、係数を比較することで、
$\begin{cases}c_1+c_2+c_3=0\\c_2+c_3=0\\c_3=0\end{cases}$
が成り立ちます.

(どうして係数比較すればよいかということは授業中に話しましたので省略します.
ポイントは、右辺の $0$ が多項式として $0$ ということです.
説明がほしい人はコメント欄にでも何か書いてください.)

この連立一次方程式をとくことで、$c_1=c_2=c_3=0$ が成り立ちます.

次に

(ii) 一次結合性ですが、
任意の$P({\Bbb R})_2$ の元 ${\bf v}$ は、あるスカラー $a_0,a_1,a_2$ を用いて、
${\bf v}=a_0+a_1X+a_2X^2$ とかけます.
この${\bf v}$ が $\{1,1+X,1+X+X^2\}$ の一次結合で書けるかという問題ですが、
問題は、任意の $a_0+a_1X+a_2X^2$ が $c_0+c_1(1+X)+c_2(1+X+X^2)$
となるのは$a_0,a_1,a_2$がどのような状況か?
$a_0,a_1,a_2$ のとりかたによらずに(無条件に)成り立てば一次結合性成立です.
この式もやはり係数比較をすると、
$$\begin{pmatrix}1&1&1\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_0\\c_1\\c_2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a_0\\a_1\\a_2\end{pmatrix}\hspace{2cm}(\star)$$

となりますから、この行列を基本変形して、
$\begin{pmatrix}1&1&1\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix}\rightarrow \cdots\rightarrow \begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&1\end{pmatrix}$
となります.
つまり、この行列の rank が full rank つまり、$3$ですので、
この方程式$(\star)$には必ず解が存在することになります.
このとき、 $\{a_0,a_1,a_2\}$ の値によっていません.

この、rank を調べれば解が存在するか分かるという事実は、
教科書の P53 の定理2.15のことです.
もしくは、春学期のノートを復習するとよいでしょう.


また、
B-2-4(2) は途中まででしたので、最後までやっておきます.
$x_1-x_2-x_3=0$ を満たす ${\Bbb C}^3$ の解はある、$c,d\in {\Bbb C}$ を用いて、
$\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}+d\begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix}$
となります.
$V$ の基底は $\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix}$
なのですが、

(i)  一次独立性ですが、
$c_1\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}+c_2\begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix}={\bf 0}$
となる$c_1,c_2$をみつければよいですが、$x_2,x_3$の変数のところをみれば分かる通り、
すぐさま$c_1=c_2=0$ がいえます.

(ii) 一次結合性ですが、
上に書いてある通り、解空間 $V$ を解いたときに、任意の${}^t(x_1,x_2,x_3)$ は
$\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}+d\begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix}$
とかけるわけですから、それらの一次結合でかけているわけですね.
このことをコメントすれば、明らかです.

解をあのように、パラメータと定数 $c,d$ の一次結合の形に書いた意味はここにあったわけです.


これで、おそらく、C問の C-2-1,C-2-3
は解けるでしょう.

ただ、C問の C-2-2 はおそらく少し変わった問題ですので、
もしかしたら苦労する人もいるかもしれません.

どうしてもわからなければメールをするか、コメントを書いてください.

0 件のコメント:

コメントを投稿