2014年10月4日土曜日

微積分II演習(第1回)

[数学1クラス対象(金曜日5限)] 



このページは筑波大学で行われている数学1クラス対象の微積分II演習に
関するブログのページです.

微積分II演習が始まりました.
このページには、演習の内容や、授業中伝わりきれなかったところを補足
したいと思います。

線形代数の方のページにも書きましたが、
数学手習い塾についてここで宣伝しておきます.


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筑波大学の学期中に毎週水曜日5,6限を使って、1E403に設けられた
学類生を対象とした数学質問コーナーです。
いつも、何人かの院生が待機しており、その時間にいつでも
数学の質問を受け付けることができます。
数学の内容の質問はもちろんのこと、数学の院生の生活やその実態
院試の難しさなど質問してもよいのではないでしょうか?
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今日やったことは、
  • 春学期の復習(連続性、微分法、マクローリン展開、広義積分をちょっと)
  • 多変数関数の連続性はどうやって定義するか
  • 内点、外点、境界点、開集合、閉集合

でした.
春学期の復習を一気にやったので、めまぐるしかったかもしれません.

連続性について
 
連続性は$\epsilon-\delta$ 論法で普通定義されます.
つまり、$f(x)$ が $x=a$ で連続であるとは、

任意の$\epsilon>0$に対して、ある$\delta>0$ があって、
$|x-a|<\delta$ なら、$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ がなりたつ.

ですが、点列を使って連続性を定義することができます.
つまり、関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で連続であることは、

点 $a$ に収束する任意の点列 $a_n$に対して、$f(a_n)$ が $f(a)$ に収束する.

ということができます.これは多変数関数でも同じ定義です.

実は、これは点列連続といわれる定義で、上の定義とは厳密には違うものですが、
${\Bbb R}^n$ 上の連続関数である場合はこれらは同値です.

この事実は証明が必要ですが、解析学では普通は認めて先に進みます.
講義の方ではもしかしたら証明したかもしれませんが.

多変数関数では$\epsilon-\delta$論法で行うより、
点列連続で行う方が何かと便利なので、
点列連続で、連続性を示すことがあります.

しかし、$\epsilon-\delta$論法を学習することは、将来位相を学ぶ観点からも、
論理を身につけることや、大学数学的思考力を身につける点からも
意味があります.

点列連続を使うときにポイントとなるのは、$a$ に収束する任意の点列をもってくることです.

宿題では、$(0,0)$ に収束する任意の点列の表し方をやってもらうことにしました.

微分法について
 秋学期で習う微積分は多変数ですが、春学期に習った
積の微分、合成関数の微分、逆関数の微分などは使う予定です.


マクローリン展開について
 $x=0$ でのテイラー展開のことですが、一般の関数を多項式で近似するための
展開方法です.一般公式は、

$$f(x)=f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f'''(0)}{3!}x^3+\cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n+\cdots$$

となります.
複雑な関数では一般項が簡単に求まらないことも多いです.

展開として必須なのは、指数、対数、三角関数、などのマクローリン展開ですが、
公式はたいていの教科書にあるのでここでは省きます.
こちら(wiki)にたくさん展開式が載っています.

ここでは、べき関数の展開だけもう一度書きます.

$$(1+x)^\alpha=\sum_{n=0}^\infty \binom{\alpha}{n}x^n$$
で、この2項係数は
$$\binom{\alpha}{n}=\frac{\alpha(\alpha-1)(\alpha-2)\cdots(\alpha-n+1)}{n!}$$
と定義されます.

例えば、 $(1-x)^{-\frac{1}{2}}$ は、
$$\binom{-\frac{1}{2}}{n}=(-1)^n\frac{\frac12\frac32\cdots\frac{2n-1}{2}}{n!}=(-1)^n\frac{(2n-1)!!}{2^nn!}=(-1)^n\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}$$
$$(1-x)^{-\frac{1}{2}}=\sum_{n=0}^\infty (-1)^n\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}(-x)^n=\sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}x^n$$
ゆえに、$\text{Arcsin}(0)=0$ であることから、
$$\text{Arcsin}(x)=\int_0^x\frac{1}{\sqrt{1-t^2}}dt=\int_0^x\sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}t^{2n}dt=\sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{(2n)!!(2n+1)}x^{2n+1}$$

最後は項別積分をしていますが、中の級数が一様収束している必要が
あります.

広義積分の収束について
  
   広義積分は無限区間での積分や、関数の値が発散点を含む区間上の積分のことです.
つまり、$\int_1^\infty e^{-t}dt$ や、$\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{x}}$ の積分の
ことです.

この積分はどちらも無限区間やある値で関数が発散する状況での積分になっています.
これらの積分が収束するかは、

$\lim_{M\to\infty}\int_0^Me^{-t}dt=\lim_{M\to \infty}[-e^{-t}]_0^M=\lim_{M\to \infty}(-e^{-M}+1)$ が
収束するかどうかということになります.

広義積分の収束の判定問題は、簡単に積分できないような関数の収束の場合、
もしくは収束の判定だけが問題となる場合において現れます.


  広義積分の収束性の判定には、収束性のよくわかっている関数を用いて行います.
つまり、例として、$\int_1^\infty f(x)dx$ が収束することをいうには、
$x\to \infty $ において、$f(x)$ 上の広義積分より収束性がよくわかっている
$g(x)$ で、$|f(x)|<g(x)$ となっている状況を設定します.

もし、広義積分 $\int^\infty_1 g(x)dx$が収束するなら、
広義積分 $\int^\infty_1 f(x)dx$ は収束します.
この収束は絶対収束(優関数法)といわれており、よく使われる判定法です.
例えば、授業でもあったとおり、ガンマ関数
$\Gamma(x)=\int^\infty_1 t^{x-1}e^{-t}dt$ の収束を示すには、
$x+1<n$となる自然数をとり、
$t\to \infty $のとき、
$t^{x-1}e^{-t}t^2=t^{x+1}e^{-t}<\frac{t^n}{e^t}<\frac{t^n}{\frac{t^n}{n!}}<n!$
よって、$t\to \infty $において、
$t^{x-1}e^{-t}<\frac{n!}{t^2}$
が言えます.
$\frac{n!}{t^2}$が$\infty $において広義積分が収束します.
$\int_1^\infty \frac{n!}{t^2}dt=\lim_{M\to \infty}\int_1^M\frac{n!}{t^2}dt=\lim_{M\to \infty }[-\frac{n!}{t}]_1^M=\lim_{M\to \infty}(-\frac{n!}{M}+n!)=n!$
よって、$\int_1^\infty t^{x-1}e^{-t}dt$も収束します.
$t=0$ での収束も同じように上から収束する関数でおさえることで行います。
逆に、 $\int_1^\infty f(x)dx$ が発散することをいうには、
$0<g(x)<f(x)$ なる関数 $g(x)$ で、発散する広義積分
$\int_1^\infty g(x)dx$ をもつもので評価すればよいことになります.
例えば $\int_1^\infty \frac{1}{x}dx$ など
でおさえることで、証明します.
演習問題:
広義積分 $\int_1^\infty\frac{dx}{x+\sqrt{x}}$ が発散することを示せ.
プリントにも書いたように、この判定に使われる関数 $g(x)$ は、
$\frac{1}{x^s}$ なる関数が使われることが多いです.
注1ちなみに、$x=\infty$での広義積分 $\int^\infty f(x)dx$ の収束を言うためには、
少なくとも、$\lim_{x\to \infty}f(x)=0$ が言えていないといけません.
注2:また有界の$x=a$についての広義積分 $\int_a^bf(x)dx$ は
$\lim_{x\to a}f(x)$が発散していないと普通の積分に戻ります.
${\Bbb R}^n$上の集合について
内点
外点
境界点
開集合
閉集合
について例を用いて学習しました.定義は教科書に載っているし、
プリントにも書いたのでここでは省きます.

どれも、その点における$\epsilon$-近傍を用いて定義することができます.
$\epsilon$-近傍というのは、その点から距離$\epsilon$ 以内に
存在する点全体のことで、解析や距離空間などよく出てくる用語です.
今日は復習が中心でしたが、来週からはどんどん新しいことが出てきます.
  

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