[場所1E303,203(月曜日3,4限)]
前回は距離空間の内点、内部、触点、閉包についてやりました。
その続きと、距離空間の連続性について行いました。
前回に引き続き $X$ とすると、適当な距離 $d$ を持つ距離空間とします。
命題
$A\subset X$ に対して、
$(\bar{A})^c=(A^c)^\circ$ が成り立つ。
(証明) $\forall x\in (\bar{A})^c\Leftrightarrow x\not\in \bar{A}$
$\Leftrightarrow \exists\epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\cap A=\emptyset)\Leftrightarrow \exists\epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\subset A^c)$
$\Leftrightarrow x\in (A^c)^\circ$
となるため、$(\bar{A})^c=(A^c)^\circ$ が成り立ちます。
前回、
$D=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2< 1\}$ と定義したときに、
$D'=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2\ge 1\}\subset\bar{D}$
であることを示したので、今日は、その逆
$\bar{D}\subset D'$
を示しました。
上の例題を用いれば、
$(D')^c\subset (\bar{D})^c=(D^c)^\circ$ であることを示せば十分です。
${\bf x}\in (D')^c=\{{\bf x}\in {\mathbb R}^2|d^2({\bf x},{\bf 0})>1\}$とし、
$\epsilon=d^2({\bf x},{\bf 0})-1$ とします。
このとき、$d^2({\bf x},{\bf 0})\le d^2({\bf x},{\bf y})+d^2({\bf y},{\bf 0})$
であり、
$d^2({\bf y},{\bf 0})\ge d^2({\bf x},{\bf 0})-d^2({\bf x},{\bf y})>d^2({\bf x},{\bf 0})-\epsilon=1$
であるから、${\bf y}\in D^c$ となります。
よって、$B_d({\bf x},\epsilon)\subset D^c$ であるから、
${\bf x}\in (D^c)^\circ$ が成り立ちます。
よって、$D'\subset (D^c)^\circ=(\bar{D})^c$ となります。
つまり、$D'=\bar{D}$ であることがわかりました。
ここで、$A\subset X$ に対して、$\bar{A}\setminus A^\circ$ を$\partial A$ とかき、
境界、また$\partial A$ の点を境界点といいます。
よって今の場合、$\partial D=\bar{D}\setminus D^\circ=\{(x,y)\in {\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\}$
となり、直感でいうところの"境界"の概念と一致します。
次の定理を示しました。
定理
$A\subset X$ とする。
$A^\circ$ は $A$ に包まれる最大の開集合である。
$\bar{A}$は $A$ を包む最小の閉集合である。
(証明)$A^\circ \subset A'\subset A$ となる開集合 $A'$ をとります。
$x\in A'$ とすると、開集合であることから、$\exists\epsilon>0(B_d(x,\epsilon)\subset A')$
を満たします。$A'\subset A$ であるから、$x$ は $A$ の内点です。
よって$x\in A^\circ$ となります。つまり、$A^\circ =A'$ となります。
故に、$A^\circ$ は $A$ に包まれる最大の開集合です。
同じように、
$A\subset A''\subset \bar{A}$ を満たす閉集合 $A''$ を取ります。
この補空間をとることで、
$(\bar{A})^c\subset (A'')^c\subset A^c$ となります。
特に、$(A'')^c$ は開集合になります。
命題から $(\bar{A})^c=(A^c)^\circ$ であり、$(A^c)^\circ$ は$A^c$ に包まれる最大の開集合であったから、$(A'')^c=(A^c)^\circ$ となります。よって、$A''=\bar{A}$ であることがわかります。
距離空間の連続性
$X,Y$ を距離空間として、 $f:X\to Y$ を写像とします。
$X,Y$ の距離を $d_X,d_Y$ としておきます。
$X,Y$ の距離を $d_X,d_Y$ としておきます。
このとき、$f$ の連続性について考えます。
連続性とは、直感的には「$a\in X$ に近い点は、$Y$ の $f(a)$ の近い点に写っている」
ということなのですが、近い点という言葉を明確にする必要あります。
最初の近い点は、2つ目の近い点とどのような関係になっているのか?
どれほど近いのなら繋がっていると言えるのか?
などすぐに答えにくいことがわかります。
よって、連続性を扱うのを一度放棄して、非連続性について考えるとすっきりします。
つまり、非連続性とは、
$a$ のどんなに近くにも、$f$ で写したときに、$f(a)$ から遠く離れた点のままになっている点があるということです。
遠く離れた点のままになっていることは、$a$ の近より方に寄らずに決める必要がありますから、
最初に遠くの距離 $E>0$ がとれて、そのときに、
$a$ のどんな近くにも点 $x$ が存在して、$f(x)$ が、$f(a)$ から $E$ より近くにいない。
式で言えば、
$\exists E>0 \forall \Delta>0(f(B_{d_X}(a,\Delta))\cap B_{d_Y}(f(a),E)^c\neq \emptyset)$
となります。
この命題を否定すれば連続性が得られるはずです。
よって、否定命題を書き記すと、
$\forall E>0\exists \Delta>0(f(B_{d_X}(a,\Delta))\cap B_{d_Y}(f(a),E)^c= \emptyset)$
$\equiv \forall \epsilon>0\exists \delta>0(f(B_{d_X}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
$\equiv \forall \epsilon>0\exists \delta>0\forall x\in X(x\in B_{d_X}(a,\delta)\to f(x)\in B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
となります。
ここで連続性について定義しておきます。
定義3.1
$(X,d_X),(Y,d_Y)$ を距離空間とする。
写像 $f:X\to Y$ が $a\in X$ で連続であることを、
$\forall \epsilon>0$ に対して、ある$\delta>0$ が存在して、
$$f(B_{d_{X}}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon)$$
を満たすことをいう。
任意の $a\in X$ に対して $f$ が連続であるとき、$f$ は
連続であるという。
定義の中の $f(B_{d_{X}}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon)$ という条件は、
$f^{-1}$ を取って $B_{d_{X}}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
としても同じことです。
$(X,d_X)=(Y,d_Y)=({\mathbb R},d_1)$ であるとき、
$f$ は実数上の関数となりますが、
これが、連続であるとは、
$ \forall \epsilon>0\exists \delta>0\forall x\in X(x\in B_{d_1}(a,\delta)\to f(x)\in B_{d_1}(f(a),\epsilon))$
となりますが、$(x\in B_{d_1}(a,\delta)$ は言い換えれば、$|x-a|<\delta$ と書き直せますから、
$ \forall \epsilon>0\exists \delta>0\forall x\in X(|x-a|<\delta \to |f(x)-f(a)|<\epsilon)$
となります。この定義は微積分の授業ででてきた関数の連続性のことを言っています。
次の定理を示しておきます。
定理3.2
$f:(X,d_X)\to (Y,d_Y)$ が連続であるとは、
$\forall U\in \mathcal{O}_Y$ ならば、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
をみたすことと同値である。
ここで、$\mathcal{O}_d$ は距離 $d$ による開集合全体(開集合系)
を表します。また、$\mathcal{O}_{d_X}=\mathcal{O}_X$ と略記しています。
(証明)
$f$ が連続であると仮定します。
$\forall U\in \mathcal{O}_{X}$ とし、$\forall a\in f^{-1}(U)$ とすると、
$f(a)\in U$ であり、$U$ が開集合であるから、$\epsilon>0$ が存在して、
$B_{d_Y}(f(a),\epsilon)\subset U$ を満たし、
$f$ の連続性からある$\delta>0$ が存在して、
$B_{d_X}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))\subset f^{-1}(U)$ となります。
よって、$f^{-1}(U)$ が開集合ということになります。
逆に $\forall U\in \mathcal{O}_Y\Rightarrow f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
が成り立つとします。
$a\in X$ に対して、
$\forall \epsilon>0$ に対して、
$B_{d_X}(a,\epsilon)$ は開集合であるから、
$f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$ は開集合ですから、
$a\in f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$ に対してある $\delta>0$ が存在して。
$B_{d_X}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
が成り立つので、$f$ の $a$ での連続性が成り立ちます。
よって $f$ が連続となります。
$d(x,A)=\inf\{d(x,a)|a\in A\}$
とします。
このとき、
$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$ を
$\varphi_A(x)=d(x,A)$ と定義します。
このとき、最後に次の定理を示しました。
定理3.3
$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$
は連続である。
(証明)
$\forall x,y\in X(\varphi_A(x)-\varphi_A(y)\le d(x,y))$
が成り立つことを示します。
$\forall z\in A$ に対して $d(x,A)\le d(x,z)\le d(x,y)+d(y,z)$ が成り立ち、
$d(x,A)-d(y,z)\le d(x,y)$ であり、$d(x,y)$ は $\{d(x,A)-d(y,z)|z\in A\}$ の上界であるから、
$d(x,A)-d(y,A)\le d(x,y)$ が成り立ちます。
$x,y$ を入れ替えれば、
$-d(x,y)\le d(x,A)-d(y,A)$ も成り立つので、
$|\varphi_A(x)-\varphi_A(y)|\le d(x,y)$ が成り立ちます。
ここで、$\epsilon>0$ に対して、$\delta=\epsilon$ としておけば、
$d(x,a)\le \delta$ となる任意の $x$ に対して、
$|\varphi_A(x)-\varphi_A(y)|\le d(x,a)\le \epsilon$ であるから、
$\varphi_A(x)$ は $x=a$ で連続である。
よって、$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$ は連続写像であることがわかりました。
距離空間 $(X,d)$ において、$A=\{a\}$ と $r>0$ に対して、
$\varphi_A^{-1}((-\infty,r))=B_d(a,r)$ となります。
$(-\infty ,r)$ は開集合であるから、$B_d(a,r)$ が開集合であることが
確認できます。
(ただ、$B_d(a,r)$ はすでに開集合であることは定義からわかるので
証明というわけではありません)
一般に、$\varphi_A^{-1}((-\infty,r))=\cup_{a\in A}B_d(a,\epsilon)$
であることがわかります。
この右辺も開集合であることが確認できます。
これも任意個の和集合が開集合であることが示されていた
ことでした。
$(X,d_X),(Y,d_Y)$ を距離空間とする。
写像 $f:X\to Y$ が $a\in X$ で連続であることを、
$\forall \epsilon>0$ に対して、ある$\delta>0$ が存在して、
$$f(B_{d_{X}}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon)$$
を満たすことをいう。
任意の $a\in X$ に対して $f$ が連続であるとき、$f$ は
連続であるという。
定義の中の $f(B_{d_{X}}(a,\delta))\subset B_{d_Y}(f(a),\epsilon)$ という条件は、
$f^{-1}$ を取って $B_{d_{X}}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
としても同じことです。
$(X,d_X)=(Y,d_Y)=({\mathbb R},d_1)$ であるとき、
$f$ は実数上の関数となりますが、
これが、連続であるとは、
$ \forall \epsilon>0\exists \delta>0\forall x\in X(x\in B_{d_1}(a,\delta)\to f(x)\in B_{d_1}(f(a),\epsilon))$
となりますが、$(x\in B_{d_1}(a,\delta)$ は言い換えれば、$|x-a|<\delta$ と書き直せますから、
$ \forall \epsilon>0\exists \delta>0\forall x\in X(|x-a|<\delta \to |f(x)-f(a)|<\epsilon)$
となります。この定義は微積分の授業ででてきた関数の連続性のことを言っています。
次の定理を示しておきます。
定理3.2
$f:(X,d_X)\to (Y,d_Y)$ が連続であるとは、
$\forall U\in \mathcal{O}_Y$ ならば、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
をみたすことと同値である。
ここで、$\mathcal{O}_d$ は距離 $d$ による開集合全体(開集合系)
を表します。また、$\mathcal{O}_{d_X}=\mathcal{O}_X$ と略記しています。
(証明)
$f$ が連続であると仮定します。
$\forall U\in \mathcal{O}_{X}$ とし、$\forall a\in f^{-1}(U)$ とすると、
$f(a)\in U$ であり、$U$ が開集合であるから、$\epsilon>0$ が存在して、
$B_{d_Y}(f(a),\epsilon)\subset U$ を満たし、
$f$ の連続性からある$\delta>0$ が存在して、
$B_{d_X}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))\subset f^{-1}(U)$ となります。
よって、$f^{-1}(U)$ が開集合ということになります。
逆に $\forall U\in \mathcal{O}_Y\Rightarrow f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$
が成り立つとします。
$a\in X$ に対して、
$\forall \epsilon>0$ に対して、
$B_{d_X}(a,\epsilon)$ は開集合であるから、
$f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$ は開集合ですから、
$a\in f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$ に対してある $\delta>0$ が存在して。
$B_{d_X}(a,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_Y}(f(a),\epsilon))$
が成り立つので、$f$ の $a$ での連続性が成り立ちます。
よって $f$ が連続となります。
$d(x,A)=\inf\{d(x,a)|a\in A\}$
とします。
このとき、
$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$ を
$\varphi_A(x)=d(x,A)$ と定義します。
このとき、最後に次の定理を示しました。
定理3.3
$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$
は連続である。
(証明)
$\forall x,y\in X(\varphi_A(x)-\varphi_A(y)\le d(x,y))$
が成り立つことを示します。
$\forall z\in A$ に対して $d(x,A)\le d(x,z)\le d(x,y)+d(y,z)$ が成り立ち、
$d(x,A)-d(y,z)\le d(x,y)$ であり、$d(x,y)$ は $\{d(x,A)-d(y,z)|z\in A\}$ の上界であるから、
$d(x,A)-d(y,A)\le d(x,y)$ が成り立ちます。
$x,y$ を入れ替えれば、
$-d(x,y)\le d(x,A)-d(y,A)$ も成り立つので、
$|\varphi_A(x)-\varphi_A(y)|\le d(x,y)$ が成り立ちます。
ここで、$\epsilon>0$ に対して、$\delta=\epsilon$ としておけば、
$d(x,a)\le \delta$ となる任意の $x$ に対して、
$|\varphi_A(x)-\varphi_A(y)|\le d(x,a)\le \epsilon$ であるから、
$\varphi_A(x)$ は $x=a$ で連続である。
よって、$\varphi_A:X\to {\mathbb R}$ は連続写像であることがわかりました。
距離空間 $(X,d)$ において、$A=\{a\}$ と $r>0$ に対して、
$\varphi_A^{-1}((-\infty,r))=B_d(a,r)$ となります。
$(-\infty ,r)$ は開集合であるから、$B_d(a,r)$ が開集合であることが
確認できます。
(ただ、$B_d(a,r)$ はすでに開集合であることは定義からわかるので
証明というわけではありません)
一般に、$\varphi_A^{-1}((-\infty,r))=\cup_{a\in A}B_d(a,\epsilon)$
であることがわかります。
この右辺も開集合であることが確認できます。
これも任意個の和集合が開集合であることが示されていた
ことでした。
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