2019年11月22日金曜日

微積分演習F(第2回)

[場所1E102(水曜日5限)]


今回はガンマ関数とベータ関数についてやりました。

ガンマ関数とベータ関数の定義
$s>0$を満たす実数とし、$p,q>0$を満たす実数とします。
このとき、ガンマ関数とベータ関数を広義積分
$$\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}dx$$
$$B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$
として定義します。

まず、この広義積分ですが、条件 $s>0$ $p,q>0$ において
これらの広義積分は収束します。

まずガンマ関数の方からいきます。
$x=\infty$ で広義積分を考えます。
$\int_1^\infty e^{-x}x^{s-1}dx$ が収束するかどうか考えます。

$s+1<n$ となる自然数 $n$ を取ります。
そのとき、指数関数のテイラー展開から、$e^x\ge \frac{x^{n}}{n!}$
が成り立つので、
$|e^{-x}x^{s+1}|\le |e^{-x}x^n|\le \frac{x^n}{\frac{x^{n}}{n!}}\le n!$
が成り立ちます。
よって、$|e^{-x}x^{s-1}|\le \frac{n!}{x^2}$
であり、広義積分 $\int_1^{\infty}\frac{n!}{x^2}dx$ は収束するので、
優関数法から $\int_1^\infty e^{-x}x^{s-1}dx$ は収束します。

$x=0$ での広義積分を考えます。
$\int_0^1e^{-x}x^{s-1}dx$ を考えますが、
$s\ge 1$ であれば、$e^{-x}x^{s-1}$ は有限な値ですから広義積分ではなく
通常の積分となり、値は求まります。
$0<s<1$ の場合は $|e^{-x}x^{s-1}|\le \frac{1}{x^{1-s}}$
であり、広義積分 $\int_0^1\frac{1}{x^{1-s}}dx$ は収束するので
やはりこのときも広義積分は収束します。

ベータ関数についてもやってみます。
$p,q\ge 1$ であれば、
$$\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$
の被積分関数は $x=0,1$ でも有限な値を持つので、
広義積分ではありません。
つまり、通常の積分として求めることができます。
よって、$0<p,q<1$ であると仮定しておきます。
例えば、$t= 0$ のときの広義積分を考えましょう。
$\int_0^{\frac{1}{2}}t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$
を考えますと、$|\frac{1}{t^{1-p}}(1-t)^{q-1}|\le \frac{1}{2^{q-1}t^{1-p}}$
となり、この積分
$$\int_0^{\frac{1}{2}}\frac{1}{2^{q-1}t^{1-p}}dt=\frac{1}{2^{q-1}}\int_0^{\frac{1}{2}}\frac{1}{t^{1-p}}dt$$
は前回書いたように収束する広義積分でした。
よって、広義積分 $\int_0^{\frac{1}{2}}t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$ も収束することがわかります。

この関数 $\Gamma(s)$ や $B(p,q)$ を用いて多くの積分を書いていきましょう。
まず、この関数の性質を調べてみると、
以下のことが知られています。

$$B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$$
$$\Gamma(a+1)=a\Gamma (a)\ \ (a>0)$$
$$\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi},\ \ \Gamma(1)=1$$
とくに、$n$ が自然数のときに、
$$\Gamma(n)=(n-1)!$$
となります。
この中で比較的わかりやすいのは、$\Gamma(1)$ であり、
$$\Gamma(1)=\int_0^\infty e^{-x}dx=\left[-e^{-t}\right]_0^\infty=1$$
として直接計算できます。
また、$\Gamma(a+1)=a\Gamma(a)$ も、
$$\Gamma(a+1)=\int_0^\infty x^{a}t^{-x}dx=\left[-x^{a}e^{-x}\right]_0^\infty+a\int_0^\infty x^{a-1}t^{-x}dx=a\Gamma(a)$$
として部分積分だけで求められます。
ここで、$\lim_{x\to \infty }x^{a}e^{-x}=0$
なる極限を使いましたが、これは、$a<n$ となる自然数を取っておいて
$$|x^{a}e^{-x}|=\frac{x^n}{e^x}<\frac{x^n}{\frac{x^{n+1}}{(n+1)!}}\le\frac{(n+1)!}{x}\to 0\ \ (x\to \infty)$$
となるので、挟み撃ちの原理により
$x\to \infty$ において
$$x^ae^{-x}\to 0$$
となることがわかります。
その他の公式についてはここでは詳しくできませんが、この演習の中で
そのうちでてくる方法を用いれば証明をすることができます。
注意してほしいことは、$\Gamma(0)$ の値は求まらないことです。
今のところ、ガンマ関数 $\Gamma(s)$ は $s>0$ だけです。
上の公式を用いると、
$$\Gamma(s)=\frac{\Gamma(s+1)}{s}$$
ですが、$s\to 0$  とすると、右辺の分子は $1$  の有限の値に
収束しますが、分母は $0$  に近づいてしまうので、
結局、$\lim_{s\to 0}\Gamma(s)=\infty$ となってしまいます。

ガンマ関数やベータ関数の公式を用いて積分を計算する
実際、これらの公式を用いていろいろな積分を求めてみます。
授業中やった計算をもう一度してみます。
$\sin^2x=t$ とおきます。すると、$dt=2\sin x\cos x=2\sqrt{t(1-t)}dx$ ですから、
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2n}xdx=\int_0^1t^{n}\frac{dt}{2\sqrt{t(1-t)}}=\frac{1}{2}\int_0^1t^{n-\frac{1}{2}}(1-t)^{-\frac{1}{2}}dt$$
$$=\frac{1}{2}B\left(n+\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right)=\frac{\Gamma\left(n+\frac{1}{2}\right)\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)}{2\Gamma\left(n+1\right)}=\frac{(n-\frac{1}{2})(n-\frac{3}{2})\cdots \frac{1}{2}\Gamma(\frac{1}{2})\Gamma(\frac{1}{2})}{2(n!)}$$
$$=\frac{(2n-1)!!}{2^{n+1}n!}\pi=\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}\frac{\pi}{2}$$
となります。ここで、二重階乗は
$(2n-1)!!=(2n-1)(2n-3)\cdots 3\cdot 1$
$(2n)!!=(2n)(2n-2)\cdots 4\cdot 2$
を表します。

また、$\int_0^\infty e^{-x^2}dx$ も、$x^2=t$ とすると、
$dt=2xdx$
$$\int_0^\infty e^{-x^2}dx=\int_0^\infty e^{-t}\frac{1}{2\sqrt{t}}dt=\frac{1}{2}\int_0^\infty t^{-\frac{1}{2}}e^{-t}dt=\frac{\sqrt{\pi}}{2}$$
となります。

また $\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{1-x^3}}$ は、$x^3=t$ とすることで、$dt=3x^2dx$ であり、
$$\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{1-x^3}}=\int_0^1\frac{1}{3\sqrt[3]{t^2}}(1-t)^{-\frac{1}{2}}dt$$
$$=\frac{1}{3}B(\frac{1}{3},\frac{1}{2})=\frac{\Gamma(\frac{1}{3})\Gamma(\frac{1}{2})}{3\Gamma(\frac{5}{6})}=\frac{\Gamma(\frac{1}{3})}{\Gamma(\frac{5}{6})}\frac{\sqrt{\pi}}{3}$$
となります。

曲線の長さ
次に、曲線の長さについての演習を行いました。
平面上に $(x(t),y(t))$ のパラメータをもつ曲線 $C$ の $a\le t\le b$ のときの長さ $l(C)$ を
$$l(C)=\int_a^b\sqrt{(x'(t))^2+(y'(t))^2}dt$$
として計算できます。

授業中に最後まで計算できなかった計算をしておきます。
(すいません、三角関数で置換し、計算を間違えました。)

以下もう一度計算しなおしました。
$(t,t^2)$ として定義できる2次関数のグラフの
 $0\le t\le 1$ の部分 $C$ の長さ $l(C)$ は
$l(C)=\int_0^1\sqrt{1+4t^2}dt$ のように計算できます。
また、$2t=\sinh \theta$ とおくと、$2dt=\cosh \theta d\theta$ であり、
$2=\sinh \theta$ となるとき、
$4=e^{\theta}-e^{-\theta}\Leftrightarrow e^{2\theta}-4e^\theta-1=0\Leftrightarrow e^\theta=2+\sqrt{5}\Leftrightarrow \theta=\log (2+\sqrt{5})$
なので、$\text{Arcsinh}(2)=\log(2+\sqrt{5})$ となります。
ここで、$\text{Arsinh}(x)$ は $\sinh(x)$ の逆関数を表すことにします。

また、$\sinh(2z)=2\sinh(z)\cosh(z)$ や、$\cosh^2(z)-\sinh^2(z)=1$ であることを用いると、
$$l(C)=\int_0^{\text{Arsinh}(2)}\frac{\cosh^2\theta}{2} d\theta=\frac{1}{2}\int_0^{\text{Arsinh}(2)}\frac{1+\cosh (2\theta)}{2}d\theta $$
$$=\frac{1}{2}\left[\frac{\theta}{2}+\frac{2\sinh(\theta)\cosh(\theta)}{4}\right]_0^{\text{Arsinh}(2)}=\frac{\log(2+\sqrt{5})}{4}+\frac{4\sqrt{1+4}}{8}$$
$$=\frac{\log(2+\sqrt{5})}{4}+\frac{\sqrt{5}}{2}$$
となります。

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