Processing math: 100%

2019年12月12日木曜日

トポロジー入門(第7回)

[場所1E303,203(月曜日3,4限)]



前回は開基を定義しました。
開基とは開集合の集合ですが、
任意の開集合が開基に属する開集合を使って覆えるものをいいます。

今回は
可算公理
についてやりました。

定義7.1
(X,\mathcal{O})第2可算公理を満たすとは、
Xのある開基として、可算個のものが取れるときをいう。

定義7.2
(X,\mathcal{O})可分であるとは、ある可算部分集合 D\subset X が存在して、
X=\overline{D} となることをいう。

このような部分集合 \overline{D}=X となる部分集合のことを稠密部分集合といいます。
まず、次の定理を示しました。

定理7.1
(X,\mathcal{O}) が第2可算公理をみたすとき、X
第1可算公理を満たし、可分である。

(証明)
\mathcal{B}X の可算開基とします。
\mathcal{N}^\ast(x)=\{U\in \mathcal{B}|x\in U\} とします。
このとき、\mathcal{N}^\ast(x)x の基本近傍系であることを示します。
\forall U\in \mathcal{N}(x) とします。
このとき、x\in V\subset U となる開集合V が存在して、さらに開基の定義から
x\in W\subset V となる W\in \mathcal{B} がなりたち、
\mathcal{N}^\ast(x) の定義から、W\in \mathcal{N}^\ast(x) が成り立ちます。
ゆえに、\mathcal{N}^\ast(x) は基本近傍系です。
\mathcal{N}^\ast(x) は可算集合の部分集合なので、高々可算集合です。
つまり、X は第1可算公理を満たします。

\forall U\in \mathcal{B} に対して、a_U\in U を選んでおきます。
このとき、D=\{a_U|U\in \mathcal{B}\} とすると、D は可算集合です。
\forall x\in X \forall U\in\mathcal{N}(x) を取ると、x\in V\in \mathcal{B} が存在して、
V\subset U となります。よって、a_V\in V を満たし、\emptyset\neq V\cap D\subset U\cap D ですので、とくにU\cap D\neq \emptyset となります。

よって、DX の稠密部分集合ですので、X は可分空間となります。\Box
さらに次の定理を示します。

定理7.2 距離位相空間 (X,\mathcal{O}_d) は、可分であることと第2可算であることは
同値である。

(証明)定理7.1から可分であるなら、第2可算であることをしめせばよい。
A\subset X を可算稠密集合とします。
\mathcal{B}=\{B_d(x,\frac{1}{n}|x\in A,n\in\mathcal{N}\} 
は可算集合なので、\mathcal{B} が開基であることを示せばよいことになります。
\forall U\in \mathcal{O}\forall x\in U に対して、
B_d(x,\frac{1}{n})\subset U となるようなn\in {\mathbb N} が存在します。
また、A は稠密なので、a\in B_d(x,\frac{1}{2n}) となる a が存在します。
よって、x\in B_d(a,\frac{1}{2n}) がなりたち、
B_d(a,\frac{1}{2n})\subset B_d(x,\frac{1}{n}) がなりたちます。
なぜなら、z\in B_d(a,\frac{1}{2n}) なら、
d(z,x)\le d(z,a)+d(a,x)<\frac{1}{2n}+\frac{1}{2n}=\frac{1}{n} となるからです。
よって、x\in B_d(x,\frac{1}{2n})\subset B_d(x,\frac{1}{n})\subset U となるので
\mathcal{B} が開基であることがわかります。\Box


例を考えましょう。

例1
({\mathbb R},\mathcal{O}_{d^1}) を考えると、距離位相空間なので、{\mathbb Q}
が可算稠密集合なので、可分空間になります。
よって、第2可算公理を満たし、かつ第1可算公理も満たします。
開基として \mathcal{B}=\{B_d(q,\frac{1}{n})|q\in {\mathbb Q},n\in{\mathbb N}\}
とれますが、実際、\{(a,b)|a,b\in {\mathbb R}\}を取っておいても
開基となります。つまり、開区間が開基となる位相空間です。

例2
({\mathbb R},\mathcal{O}_l) を以下のように定義します。
\mathcal{O}_l\mathcal{B}_l=\{[a,b)|a,b\in {\mathbb R}\} を開基とする
位相空間とし、下限位相もしくはゾルゲンフライ直線といいます。
このときも、{\mathbb Q} が可算稠密集合になるので可分な位相空間です。
しかし、第2可算を満たしません。

なぜなら、\mathcal{B} を可算開基として矛盾を導きます。
開集合 [x,x+1) に対して x\in U_x\subset [x,x+1) となる開基 U_x\in \mathcal{B} 
が存在します。よって、\{U_x|x\in{\mathbb R}\}\mathcal{B}
部分集合ですが、可算濃度ではありません。
というのも、x\neq x’ に対して \min(U_x)=x であり、\min(U_{x’})=x’ であり
U_x\neq U_{x’} であるからです。

よって、可分で第2可算公理を満たさないので、({\mathbb R},\mathcal{O}_l) 
は距離化できない位相空間ということになります。

ここで次の定義をします。

定義7.3
X 上の位相 \mathcal{O}_1\mathcal{O}_2
集合として \mathcal{O}_1\subset \mathcal{O}_2 を満たすとき、
\mathcal{O}_2\mathcal{O}_1 より強い位相、また、
\mathcal{O}_1\mathcal{O}_2 より弱い位相といいます。
そのとき、(X,\mathcal{O}_1)\le (X,\mathcal{O}_2) とかいたり、
単に、\mathcal{O}_1\le \mathcal{O}_2 と書いたりします。
\mathcal{O}_1\subset \mathcal{O}_2 かつ \mathcal{O}_1\neq \mathcal{O}_2
が成り立つとき、\mathcal{O}_2\mathcal{O}_1 より真に強い
位相といい、\mathcal{O}_1<\mathcal{O}_2 と書きます。

X 上の位相はこの < および \le によって順序集合となります。
一番強い位相は離散位相空間で、一番弱い位相は、密着位相空間です。

実は、\mathcal{O}_{d^1}<\mathcal{O}_l がなりたちます。
これはレポート問題に出したので解いてみてください。

最後に次の例を挙げて終わります。

例3
(X,\mathcal{O}_{cf})\mathcal{O}_{cf}=\{U\subset X||U^c|<\aleph_0\}
とします。
この位相を補有限位相といいます。
X={\mathbb R} として考えます。
この位相空間 ({\mathbb R},\mathcal{O}_{cf}) は第1可算でないことがわかります。
このとき、\forall x\in {\mathbb R} に対して、基本近傍系 \mathcal{N}^\ast(x) 
が可算集合であるとします。

このとき、
\{x\}=\cap_{U\in \mathcal{N}(x)}U であることを示します。
\subset は明らかです。y\neq x を取ると、
X\setminus\{y\}\in \mathcal{N}(x) であるから、y\not\in \cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U
となります。よって、\supset がなりたちます。

また、\{x\}=\cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U=\cap_{U\in\mathcal{N}^\ast(x)}U 
がなりたちます。最後の等式は \subset であることは、基本近傍系が
近傍系の部分集合であることからわかります。
\supset であることは、y\in \cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U に対して、
\forall U\in \mathcal{N}(x) に対して、ある V\in \mathcal{N}^\ast(x)
存在して、z\in V\subset U であるから、z\in U となります。
つまり、z\in \cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U であることになります。

よって、
\{x\}=\cap_{U\in\mathcal{N}(x)}U=\cap_{U\in\mathcal{N}^\ast(x)}U
であり、この補集合をとると、
\{x\}^c=\cup_{U\in \mathcal{N}(x)}U^c=\cup_{U\in\mathcal{N}^\ast(x)}U^c
となります。ここで、X が実数の場合、最左辺は非可算集合であり、
最右辺は、高々可算集合であり、矛盾します。
よって、({\mathbb R},\mathcal{O}_{cf}) は第1可算ではないということになります。
つまり、距離化可能でもありません。

0 件のコメント:

コメントを投稿