[場所1E303,203(月曜日3,4限)]
今学期からトポロジー入門の授業をもつことになりました。
教科書は今のところ数理科学で連載している
「例題形式で探求する集合・位相」(第6章~)
です。
距離空間
今回は距離空間から始めました。
「例題形式で探求する集合・位相」でいえば、第6章の内容にあたります。
その前に集合の復習をしたのですが、それはここでは省略します。
定義[距離空間]
集合 $X$ に対して、関数 $d:X\times X\to {\mathbb R}$ が以下を満たすとき、
$d$ を距離関数という。
任意の$x,y,z\in X$ に対して
(1) $d(x,y)=0 \Leftrightarrow x=y$
(2) $d(x,y)=d(y,x)$
(3) $d(x,y)+d(y,z)\ge d(x,z)$
である。
距離関数 $d$ をもつ集合 $(X,d)$ を距離空間という。
(3)の不等式を三角不等式といいます。
数理科学では、
(1) $\forall x,y\in X(d(x,y)\ge 0\land d(x,y)\to x=y)$
と書いていますが、
この定義は間違っています。
この定義であると、$d(x,x)=0$ であることが示せません。
また、上の定義では $d(x,y)\ge 0$ であることは、
仮定されていませんが、
(2),(3)と、$d(x,x)=0$ であることから、
$d(x,y)+d(y,x)=2d(x,y)\ge d(x,x)=0$ であることから $d(x,y)\ge 0$
であることが示されます。
このことは数理科学のサポート情報にも載せました。
たまに、間違いを犯しているのでもしおかしいなと思ったら
このサポート情報をみてください。
また、サポート情報にもない場合は下のコメント欄やメールにて情報を
お寄せください。
開集合・閉集合
まず、開球体を定義します。
定義[開球体]
$(X,d)$ を距離空間とする。
$x\in X$ に対して、実数 $r>0$ に対して、$r$-開球体
$B_d(x,r)=\{y\in X|d(x,y)<r\}$ と定義する。
つぎに、以下を定義します。
定義[開集合・閉集合]
$(X,d)$ を距離空間とする。
$U\subset X$ が開集合であるとは、
$\forall x\in U\exists \epsilon >0(B_d(x,\epsilon)\subset U)$ である。
$F\subset X$ が閉集合であるとは、
$F^c$ が開集合であることである。
その距離 $d$ に依存し、集合だけに依存しません。
距離空間の例を与えておきます。
例1、
${\mathbb R}^n$ にの2つ元
${\bf x}=(x_1,x_2,\cdots, x_n), {\bf y}=(y_1,y_2,\cdots y_n)$
に対して $d^n({\bf x},{\bf y})=\sqrt{\sum_{i=1}^n(x_i-y_i)^2}$
と定義すると、距離関数 $d:X\times X\to {\mathbb R}$
が与えられます。この距離関数によって与えられる距離空間を
ユークリッド空間 $({\mathbb R}^n,d^n)$ といいます。
例2
集合 $X$ に対して、$d:X\times X\to {\mathbb R}$ を
$$d(x,y)=\begin{cases}1&x\neq y\\0&x=y\end{cases}$$
と定義したとき、$d$ は $X$ 上の距離関数となり、
$(X,d)$ を離散距離空間いいます。
これらが距離空間であることは、上の距離空間であるための条件を
確かめればよいですが、ここでは省略します。
証明は例えば数理科学の「例題形式で...」の記事を見てください。
例2では、任意の1点集合 $\{x\}$ は $B_d(x,\frac{1}{2})$
ですので開集合ですが、例1ではどんな1点集合も開集合にはなりません。
というのも、実数空間 $({\mathbb R},d^1)$ において、$\forall x\in {\mathbb R}$ に
対して、 $B_d(x,\epsilon)\subset \{x\}$ である $\epsilon$ が
存在したとすると、$x+\frac{\epsilon}{2}\in B_d(x,\epsilon)$
であり、$x+\frac{\epsilon}{2}\not\in \{x\}$ ですから、
$B_d(x,\epsilon)\not\subset \{x\}$ となり矛盾します。
よって $\{x\}$ は開集合ではありません。
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