2017年7月14日金曜日

微積分I演習(物理学類)(第12回)

[場所1E103(金曜日5限)]

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今回は、
  • 広義積分の収束
をやりました。
前回に引き続き、広義積分の収束についての問題を解きました。


比較関数の極限による収束判定法
優関数法とは、ある関数 $f(x)$ を他の関数 $g(x)$ によって
各点において絶対値をとって $|f(x)|\le g(x)$ のように抑えられるときに、

$\int_a^bg(x)dx$ の収束性から $\int_a^bf(x)dx$ がいえるという方法でした。

ここでは、2つの関数の極限によって収束判定する定理を紹介しておきます。

定理
$f(x),g(x)$ が両方正の関数で、$f(x)/g(x)\to k\neq 0,\infty$ を満たすとする。
このとき、

$\int_a^bf(x)dx$ が収束する $\iff$ $\int_a^bg(x)dx$ が収束する
$\int_a^bf(x)dx$ が発散する $\iff$ $\int_a^bg(x)dx$ が発散する

こうすると、次の広義積分が収束するかどうかが簡単にわかります。


例1
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{x-\sin x}{x^4}dx$$
について考えます。

$x=0$ において被積分関数がどのような値になるか求めます。
$$\lim_{x\to 0}\frac{x-\sin x}{x^3}=\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos x}{3x^2}=\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{6x}=\frac{1}{6}$$
よって、
$$\lim_{x\to 0}\frac{x-\sin x}{x^3}\frac{1}{x}=\infty$$
よって、$x=0$ において上の積分が広義積分だということがわかります。

また、$\lim_{x\to 0}\frac{\frac{x-\sin x}{x^4}}{\frac{1}{x}}=\lim_{x\to \infty}\frac{x-\sin x}{x^3}=\frac{1}{6}$
であるから、上の定理から、
$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{x-\sin x}{x^3}dx$ が収束するかどうかは、
$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{1}{x}dx$ が収束するかどうかに関わりますが、

$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{1}{x}dx$ は発散しますから、
結局
$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{x-\sin x}{x^4}dx$ は発散します。

テイラー展開を用いた広義積分の収束判定

テイラー展開を用いて広義積分の収束判定を行う方法を学びます。

ある点の周りのテイラー展開とは、その関数のその値の近くで主要となっている
項(関数)と残りの項(剰余項関数)に分ける考え方です。
広義積分としてみてみれば、テイラー展開をその広義積分の収束発散に関わる部分と
そうでない部分に分けて考えることができて、本質的な部分の収束発散に
元の広義積分の収束発散が帰着されます。


例2
まず、$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log\sin xdx$ 積分可能性について
考えます。

これは、
$$\log x+\log\frac{\sin x}{x}$$
としておくと、$\log\frac{\sin x}{x}$ は、$x=0$ の近くでは無限大に発散しませんので、
$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log\frac{\sin x}{x}dx$ は有限な値です。

また、残された $\log x$ ですが、部分積分により、
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log xdx=\left[x\log x\right]_0^{\frac{\pi}{2}}-\int_0^{\frac{\pi}{2}}dx=\frac{\pi}{2}\log\frac{\pi}{2}-\left[x\right]_0^{\frac{\pi}{2}}=\frac{\pi}{2}\log\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{2}$$

となり収束します。
ちなみに、ロピタルの定理から、$\lim_{x\to 0}x\log x=\lim_{x\to 0}\frac{\log x}{\frac{1}{x}}=\lim_{x\to 0}\frac{x}{\frac1{-x^2}}=\lim_{x\to 0}(-x)=0$
がわかります。

ゆえに、$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log xdx$ は全体として収束するということに
なります。

つまり、広義積分可能となる部分と普通の定積分の部分に分けて考えることで
全体として広義積分可能と結論づけられました。



例3
次に、$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{x}{x-\sin x}dx$ の広義積分について考えてみます。
上の方法を用いれば、比較する関数との比の極限を計算してすぐ
発散することはわかると思いますが、ここではテイラー展開を使います。

$x-\sin x=\frac{x^3}{3!}-R_{4}(x)$
のようにかけます。ここで、$R_4(x)$ は $\sin x$ の $x=0$ でのテイラー展開の剰余項で
$R_4(x)=\frac{\sin c}{4!}x^4$ と書けます。
ここで、$c$ は $0<c<x<\frac{\pi}{2}$ となる実数です。

注意したいのは、$c$ は定数ではなく、 $x$ の関数になっているという点です。
$c$ は定数ではないので、何か他の定数で評価しておく必要があります。

$$\frac{x}{\frac{x^3}{3!}-\frac{\sin c}{4!}x^4}=\frac{1}{x^2}\frac{1}{\frac{1}{3!}-\frac{\sin c}{4!}x}$$
と変形できて、
$0<c<x<\frac{\pi}{2}$ において、$0<\frac{\sin c}{4!}x<\frac{\pi}{2\cdot 4!}<\frac{1}{3!}$ なので
$$\frac{1}{\frac{1}{3!}-\frac{\sin c}{4!}x}> \frac{1}{\frac{1}{3!}}>3!$$
と有限な値で下から抑えられるので、

$$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{x}{x-\sin x}dx>3!\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{1}{x^2}dx$$
が言えて、広義積分 $\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{1}{x^2}dx$ は $x=0$ で無限に発散するので、
ゆえに、$\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{x}{x-\sin x}dx$ も発散する。

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