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2017年7月11日火曜日

数学外書輪講I(第10回)

[場所1E501(月曜日5限)]

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今回は、

  • フィボナッチ数列(Matousek Miniature 2)
  • 線形代数(Lang)
について発表してもらいました。

フィボナッチ数列
フィボナッチ数列は、
F_0=0,F_1=1 かつ、F_{n+2}=F_{n+1}+F_n (n\ge 1) を満たす数列
のことをいいます。
昨日、手習い塾に行ったら、同じ問題をまさに解いている人がしました。

このような数列を考えるときに、
まず、初項と第二項の数はとりあえず忘れて、F_{n+2}=F_{n+1}+F_n を満たす数列
全てについて考えます。

そうするといいことがあります。

何かというと、

その数列全体は、ベクトル空間になる

ということです。つまり、
V=\{(a_n)|a_{n+2}=a_{n+1}+a_n\ (\forall n\ge 0)\}
とおくと、この集合 V は、ベクトル空間の構造をもちます。

もう少し詳しく書いておくと、V の一つの元(要素)は (a_0,a_1,a_2,....) なる
一つの数列のこととなります。

つまり、一つの数列をベクトルとするベクトル空間なのです。
足し算は成分ごとに、
(a_0,a_1,a_2,....)+(b_0,b_1,b_2,....)=(a_0+b_0,a_1+b_1,a_2+b_2,....)
とし、スカラー倍は
c\in {\mathbb K} をスカラーとすると、
c(a_0,a_1,a_2,...)=(ca_0,ca_1,ca_2,...)
となります。
このようにすると、V がベクトル空間の構造をもちます。

このベクトル空間を用いることで、フィボナッチ数列 (F_n)
一般項を求めることができます。
まず、V の次元は2次元です。
それは、初項と第二項を決めるとフィボナッチ数列が一つ決定することからも
わかりますが、以下のように具体的な2つの基底をとることもできます。

まず、\alpha,\beta をフィボナッチ数列の特性方程式、
x^2=x+1 の2つの解とします。
具体的には、\alpha=\frac{1+ \sqrt{5}}{2},\beta=\frac{1-\sqrt{5}}{2} です。

ここで、
{\bf a}=(\alpha^0,\alpha^1,\alpha^2,...,)
{\bf b}=(\beta^0,\beta^1,\beta^2,...,)
とすると、これらは、一次独立となります。
なぜなら、c_1{\bf a}+c_2{\bf b}={\bf 0} とすると、

初項と第二項を比べることで、c_1+c_2=0 かつ c_1\alpha+c_2\beta=0 となり、
この連立一次方程式を解くことで、c_1=c_2=0 が成り立ちます。

よって、\dim V=2 となります。

実は、次元が2であることは、(1,0,1,1,2,...)(0,1,1,2,3...) が基底になっていること
がすぐわかります。

また、{\bf a},{\bf b} が一次独立で、W:=\langle{\bf a},{\bf b}\rangle\subset V
部分ベクトル空間であるので、\dim(W)=2 がわかり、W=V がいえます。
この論理展開もラングの教科書の方にもありましたね。


V の構造がわかったところで、F_0=0, F_1=1 に話を戻してやります。
そうすると、(F_n)\in V であるから、この数列も、
{\bf a}, {\bf b} の一次結合で書けるはずです。
つまり、
(F_n)=c_1(\alpha^n)+c_2(\beta^n)
となる係数を c_1, c_2 が存在します。
成分を見比べて、c_1+c_2=0 であり、c_1\alpha+c_2\beta=1 となりますが、c_1(\alpha-\beta)=1 であることから、c_1=\frac{1}{\sqrt{5}} となります。

つまり、c_2=\frac{-1}{\sqrt{5}} となり、結局、

F_n=\frac{1}{\sqrt{5}}\left(\left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n-\left(\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)^n\right)

が成り立ちます。
フィボナッチ数列の漸化式と、初項と第二項からは想像がつかないほど
複雑な数列になりました。


まとめれば、

フィボナッチ数列の一般項を求めるということの裏には、
ある線形代数が隠れていたといえます。

何か計算したい対象があったときに、その対象を
少し広げてやる(一般化してやる)と、その対象がもつ、
基本的な構造が現れることがあります。
今ではベクトル空間だったりしましたが。。。

そうすると、その構造のもつ一般論を用いることで、その対象が
もつ性質や、基本的な記述方法が明らかになり、それを用いて、
再び考察しなおしてみることで、計算しようとしている対象
がより洗練されて求められるということがあります。

今の場合、3項間漸化式をもつ数列とベクトル空間の間に
隠れていたベクトル空間の構造がフィボナッチ数列の記述に
大いに役立つということがわかりました。


練習問題
a_{n+3}=2a_{n+2}-a_{n+1}+2a_n
a_0=0,\ a_1=1,\ a_2=2
となる数列の一般項は、
\frac{1}{10}\left((-2+i)(-i)^n-(2+i)i^n+2^{n+2}\right)\hspace{1cm}(\ast)
のように書ける。


(略々解)
これも同じように、4項間漸化式から特性方程式
x^3=2x^2-x+2
を作り、その解 x=\pm i,2 から係数を決めて行くことで同じように、
上の公式(\ast)を導くことができます。

線形代数
ラングの線形代数では、以下の定理を示してもらいました。

定理
V を体上の有限次元ベクトル空間で、n 個の基底からなるものとする。
WV の部分空間で、空ではないとする。このとき、W も基底をもち、
その次元は n 以下である。

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