2017年7月11日火曜日

微積分I演習(数学類)(第11回)

[場所1E103(水曜日4限)]

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今回は、

  • 広義積分の収束判定
についてやりました。
広義積分の収束については今年の物理学類のページも参照しておきます。
2017年微積分I演習第11回(物理学類)(リンク)

広義積分の収束判定

広義積分とは、関数が $[a,b)$ 上定義されたもので、$x=b$ において
関数の値が定まらないようなものにおける積分
$$\int_a^bf(x)dx$$
のことです。このような積分のことを広義積分といいます。
この値は、

$$\lim_{c\to b}\int_a^cf(x)dx$$
の極限として定義されます。

この極限が収束するとき、この広義積分は収束するといいます

ただ、$[a,b)$ の内部の任意の閉区間での積分値はいつでも定まっていると
しておきます。

例えば、$b=\infty$ であるような場合、

$$\int_0^\infty\frac{1}{x^2+1}dx$$
は広義積分であり、かつ、この広義積分は収束します。

なぜなら、
$$\lim_{c\to \infty}\int_0^c\frac{1}{x^2+1}dx=\lim_{c\to \infty}\text{Arctan}(c)=\frac{\pi}{2}$$
となるからです。

もちろん値が求められれば収束することはわかりますが、
値がうまく求められないが、収束するかどうかを判定したい場合もあります。
例えば、

$$\int_1^\infty\frac{1}{\sqrt{\log x}}dx$$

を定義から求めようとすると、$\frac{1}{\sqrt{\log x}}$ の不定積分がわからないので
よく分かりません。

このとき、収束性をいう方法はないか?ということです。

ちなみに、この積分の場合、$x=1$ においても、$\log x\to 0\ \ (x\to 1)$ ですので、
両側とも広義積分になっており、$x\to 1$ においては広義積分は収束します。

優関数法

広義積分の収束発散でよく使われるのが、優関数法です。
広義積分 $\int_a^bf(x)dx$ を調べるのに、
$|f(x)|\le g(x)$ を作っておいて、$g(x)$ の広義積分の収束に帰着させるものです。
正しく書けば、

優関数法(収束することの証明)
$[a,b)$ において、$|f(x)|\le g(x)$ を満たすとする。
もし、広義積分 $\int_a^bg(x)dx$ が収束するなら、
広義積分 $\int_a^bf(x)dx$ も収束する。


優関数法(発散することの証明)
$[a,b)$ において、$0\le g(x)\le f(x)$ を満たすとする。
もし、広義積分 $\int_a^bg(x)dx$ が発散するなら、
広義積分 $\int_a^bf(x)dx$ も発散する。




例えば、上の例の $\frac{1}{x^2+1}$ も、$|\frac{1}{x^2+1}|\le x^{-2}$ であり、
$$\int_1^\infty\frac{1}{x^2}dx=\lim_{c\to \infty}\int_1^c\frac{1}{x^2}dx=\lim_{c\to \infty}\left[-x^{-1}\right]_1^c=1$$
であることから、優関数法から、

$$\int_1^\infty\frac{1}{x^2+1}dx$$
も収束し、$[0,1]$ の積分値を加えれば、
$\int_0^\infty\frac{1}{x^2+1}dx$ の広義積分が収束する
ことがわかります。


このように、$g(x)$ として、べき関数などの収束発散のはっきりわかっている
関数に帰着させることが常套手段となります。

上に書いた、$\int_1^\infty\frac{1}{\sqrt{\log x}}dx$ の収束発散を調べておきます。
$x\to 1$ においての収束を示します。
$\int_1^e\frac{1}{\sqrt{\log x}}dx$ の広義積分に対して、
$t=\log x$ と置換すると、$\int_0^1\frac{e^tdt}{\sqrt{t}}$ となります。
$0\le t\le 1$ において
$|\frac{e^t}{\sqrt{t}}|\le |\frac{e}{\sqrt{t}}|$ なので、$\frac{1}{\sqrt{t}}$ の積分の収束発散を調べます。そうすると、
$$\int_0^1\frac{1}{\sqrt{t}}dt=\lim_{a\to 0}\int_a^1\frac{1}{\sqrt{t}}dt=\lim_{a\to 0}\left[2\sqrt{t}\right]_a^1$$
$$=\lim_{a\to 0}(2-2\sqrt{a})=2$$
となり、広義積分 $\int_0^1\frac{1}{\sqrt{t}}dt$ が収束し、
$$\int_1^e\frac{1}{\sqrt{\log x}}dx$$
も収束することがわかります。

一方、$x\to \infty$ における収束性は、

$\sqrt{\log x}\le \sqrt{x}$ であるから、
$$0< \frac{1}{\sqrt{x}}\le \frac{1}{\sqrt{\log x}}$$
であり、
$$\int_e^\infty \frac{1}{\sqrt{x}}dx=\lim_{b\to \infty}\int_e^b\frac{1}{\sqrt{x}}dx=\lim_{b\to \infty}\left[2\sqrt{x}\right]_e^b=\infty$$
となり、広義積分 $\int_\frac{1}{\sqrt{x}}dx$ が収束しないので
発散する方の優関数法により、

$$\int_e^\infty\frac{dx}{\sqrt{\log x}}$$
も収束しません。

べき関数の広義積分
べき関数 $\frac{1}{x^s}$ の広義積分の収束発散をまとめておきます。


$s$を正の実数とする。このとき、以下が成り立つ。

$\int_1^\infty\frac{1}{x^s}dx$ が収束することと、$s> 1$ であることは同値。

$\int_0^1\frac{1}{x^s}dx$ が収束することと、$0<s<1$ であることは同値。

関数の極限を用いた収束発散の判定

授業では、他に、関数の極限の振る舞いからその広義積分の収束判定を
行う定理を紹介しました。


定理
関数  $f(x), g(x)>0$ であり、
$$\lim_{c\to b}\frac{f(x)}{g(x)}=k\neq 0,\infty$$
であるとする。
このとき、
$\int_a^bf(x)dx$ が収束する $\iff$ $\int_a^bg(x)dx$ が収束する
$\int_a^bf(x)dx$ が発散する $\iff$ $\int_a^bg(x)dx$ が発散する
がいえる。

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