2016年7月5日火曜日

微積分I演習(第10回)

[場所1E101(水曜日4限)]

今日は


  • 有理関数の積分
  • 三角関数の積分
  • 広義積分
などを行いました.

有理関数の積分

有理関数の積分は基本です.どんな場合でもできなければなりません.
プリントに書いた積分は、

$$\int\frac{2x+1}{(x-1)^3}dx=\int\left(\frac{2}{(x-1)^2}+\frac{3}{(x-1)^3}\right)dx=-\frac{2}{x-1}-\frac3{2(x-1)^2}+C$$

となりますが、この部分分数分解は、
一旦 $t=x-1$ とおいて、
$$\int\frac{2(t+1)+1}{t^3}dt=\int(2t^{-2}+3t^{-3})dt=-2t^{-1}-\frac{3}{2}t^{-2}+C$$
と変形したものと同じです.後で、$t=x-1$ を入れます.


有理式の扱いまとめ
実数を係数とする多項式 $g(x)$ は
$g(x)=(x-a_1)^{r_1}\cdots(x-a_n)^{r_n}(x^2+b_1x+c_1)^{s_1}\cdots(x^2+b_sx+c_s)^{s_m}$

として、実数係数を持つ1次式 $x-a_i$ と2次式 $x^2+b_jx+c_j$ に分解することができます.
後者の2次式は虚数根をもつとします.

まず、有理式 $\frac{f(x)}{g(x)}$ は $f(x)$ を $g(x)$ で割ってやることで、$f(x)$ の次数が $g(x)$ の次数を超えないようにしておきます.

そのようなとき、有理式 $\frac{f(x)}{g(x)}$ は、

$$\sum_{i=1}^r\frac{f_i(x)}{(x-a_i)^{r_i}}+\sum_{j=1}^{s}\frac{f_{r+j}(x)}{(x^2+b_jx+c_j)^{s_j}}$$

のように分解することができます.ここで、$\deg(f_i(x))\le r_i-1$ かつ $\deg(g_j(x))\le 2s_j-1$
となります.

さらに、一つの項は
$$\frac{f_i(x)}{(x-a_i)^{r_i}}=\sum_{k=1}^{r_i}\frac{d_k}{(x-a_i)^{k}}$$
ここで、$d_k$ はある実数.
のように分解することができますし、

$$\frac{f_{j+r}(x)}{(x^2+b_jx+c_j)^{s_j}}=\sum_{k=1}^{s_j}\frac{e_kx+f_k}{(x^2+b_jx+c_j)^{k}}$$



のようにさらに分解することができます.あとは、

$$\frac{e_kx+f_k}{(x^2+b_jx+c_j)^{k}}$$
の部分の積分ですが、一旦置換積分をして、
$$\frac{EX+F}{(X^2+1)^k}$$
としておいてから、さらに、

$$\frac{E}{2}\frac{2X}{(X^2+1)^k}+\frac{F}{(X^2+1)^k}$$

と分解します.
そして、それぞれは、 $$\int\frac{2X}{(X^2+1)^k}dX=-\frac{1}{k-1}\frac{1}{(X^2+1)^{k-1}}$$

となり、後半は、$X=\tan t$ とおくことで、

$dX=\frac{1}{\cos^2t}dt$ となり、

とすると、

$$\int\frac{dX}{(X^2+1)^k}=\int\frac{1}{(1+\tan^2t)^k}\frac{1}{\cos^2t}dt=\int\cos^{2k-2}tdt$$
となります.あとは、倍角の公式を使うか、漸化式を使って、計算することができるように
なります.
ちなみに、不定積分 $\int \cos^{2n}tdt$  は、$n<5$ までは、以下のようになります.
$$\int \cos^2tdt=\frac{t}{2}+\frac{1}{4} \sin (2 t)$$ $$\int\cos^4tdt=\frac{3 t}{8}+\frac{1}{4} \sin (2 t)+\frac{1}{32} \sin (4 t)$$\ $$\int\cos^6tdt=\frac{5 t}{16}+\frac{15}{64} \sin (2 t)+\frac{3}{64} \sin (4 t)+\frac{1}{192} \sin (6 t)$$ $$\int\cos^8tdt=\frac{35 t}{128}+\frac{7}{32} \sin (2 t)+\frac{7}{128} \sin (4 t)+\frac{1}{96} \sin (6 t)+\frac{\sin (8 t)}{1024}$$


  三角関数の積分

三角関数の積分ですが、$\frac{f(\sin t,\cos t)}{g(\sin t, \cos t)}$ の形の式の場合の計算は、
必ず良く知っている形に帰着させることができます.
ここで、$f(x,y),g(x,y)$ は $x,y$ の多項式です.

演習でやっていた、
$\int\frac{\sin t}{2+\cos t}dt$ などは、$X=2+\cos t$ などとおいてやることによって、
$\int\frac{1}{X}dX$ に帰着させることができます.

つまり、
$\int\frac{f(\cos t)}{g(\cos t)}\sin tdt$ の形(や $\sin$ と $\cos$ の役割を入れ替えたもの)の積分は、$X=\cos t$ などとおけばよいことになります.

また、$\int \sin^ntdt$ や、先ほどもできた $\int\cos^ndt$ は、漸化式を用いれば計算はすぐにできます.

そうでもないような場合で、手が思いつかないようなときは、
授業中説明をしましたが、

$u=\tan\frac{t}{2}$ とおくというのが常套手段です.

$$du=\frac{dt}{2\cos^2\frac{t}{2}}=\frac{1}{2}\left(1+\tan^2\frac{t}{2}\right)dt=\frac{1}{2}(1+u^2)dt$$
となり、
$$dt=\frac{2du}{1+u^2}$$
が成り立ちます.また、
$$\sin t=2\sin \frac{t}{2}\cos \frac{t}{2}=2\tan\frac{t}{2}\cos^2\frac{t}{2}=\frac{2u}{1+u^2}$$
$$\cos t=2\cos^2 \frac{t}{2}-1=\frac{2}{1+u^2}-1=\frac{1-u^2}{1+u^2}$$

$$\frac{2}{1+u^2}=2\cos^2\frac{t}{2}=1+\cos t$$

のような変換をすることで、有理関数の積分に帰着させることができます.

例(積分定数は省略します)
$$\int\frac{1}{\sin t+\cos t}dt=\int\frac{1}{\frac{2u}{1+u^2}+\frac{1-u^2}{1+u^2}}\frac{2du}{1+u^2}$$
$$=-2\int\frac{1}{u^2-2u-1}du=-2\int\frac{du}{(u-1+\sqrt{2})(u-1-\sqrt{2})}$$
$$=-\frac{1}{\sqrt{2}}\int\left(\frac{1}{u-1-\sqrt{2}}-\frac{1}{u-1+\sqrt{2}}\right)du$$
$$=-\frac{\sqrt{2}}{2}\log\frac{u-1-\sqrt{2}}{u-1+\sqrt{2}}=-\frac{\sqrt{2}}{2}\log\frac{(u-1-\sqrt{2})^2}{u^2-2u-1}$$

$$=-\frac{\sqrt{2}}{2}\log\frac{u^2-2(1+\sqrt{2})u+3+2\sqrt{2}}{u^2-2u-1}$$
$$=-\frac{\sqrt{2}}{2}\log\left(1-\frac{2\sqrt{2}u-4-2\sqrt{2}}{u^2-2u-1}\right)$$
$$=-\frac{\sqrt{2}}{2}\log\left(1-\frac{\sqrt{2}\frac{2u}{1+u^2}-(2+\sqrt{2})\frac{2}{1+u^2}}{-\frac{1-u^2}{1+u^2}-\frac{2u}{1+u^2}}\right)$$
$$=-\frac{\sqrt{2}}{2}\log\left(1+\frac{\sqrt{2}\sin t-(2+\sqrt{2})(1+\cos t)}{\sin t+\cos t}\right)$$

$$=-\frac{\sqrt{2}}{2}\log\left(1+\sqrt{2}-\frac{2(1+\sqrt{2})\cos t+2+\sqrt{2}}{\sin t +\cos t}\right)$$

広義積分

広義積分は、無限区間の積分や開区間上の積分です.定義は、閉区間上の積分の
極限として計算しましょう.

例えば、

$$\int_a^\infty f(x)dx=\lim_{b\to \infty}\int_a^bf(x)dx$$
や、

$$\int_a^bf(x)dx=\lim_{c\to b-0}\int_a^cf(x)dx$$

のように定義します.後者は $f(x)$ が $x=b$ では定義されていないことが前提です.
このとき、閉区間 $[a,c]$ 上の積分を近づけて $[a,b)$ 上の積分にします.

気をつけることは、定義されている部分から近づくことです.
区間の端に正の意味で近づくのか、負の意味で近づくのか明確にしないと、
値が違ってくることがあります.

次回に広義積分の演習を本格的にやることになります.

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