2016年7月27日水曜日

微積分I演習(第13回)

[場所1E101(水曜日4限)]
HPに行く.

今日は

  • パラメータをを含む関数の積分を
やりました.微分と積分の順序の交換です.
ただ、それを使って解いてくれる人はあまりいませんでしたね.

パラメータを含む関数の積分

パラメータ $t$ のある関数とは、$f_t(x)$ という実数 $t$ に対して一変数関数が決まる
ものですが、これは、単に二変数関数 $f(x,t)$ ということと同じです.
2変数関数は習っていませんが、パラメータ付きの関数を $f(x,t)$ と書くことにします.

また、途中で出てくる偏微分も習っていませんが、ここで簡単に
説明をします.
偏微分 $\frac{\partial f(x,t)}{\partial t}$  とは、2変数関数 $f(x,t)$ のうち、
変数 $x$ を定数だと思うと、$f(x,t)$ は、$t$ に関する一変数関数となります.その
関数を一変数関数として、普通に微分したものです.

例えば、
$f(x,t)=tx$ なら、$\frac{\partial f(x,t)}{\partial t}=x$
$f(x,t)=e^{tx}$ なら、$\frac{\partial f(x,t)}{\partial t}=xe^{tx}$
$f(x,t)=\frac{t}{x^2+t^2}$ なら、$\frac{\partial f(x,t)}{\partial t}=-\frac{t^2-x^2}{(x^2+t^2)^2}$

このとき、次の定理が成り立ちます


定義25(パラメータを含む関数の積分)
(1) $f(x,t)$ が連続で、
(2) 偏微分 $\frac{f(x,t)}{\partial t}$ が存在し、連続であり、
(3) $\frac{\partial f}{\partial t}$ が $t$ によらず、ある(広義積分可能な)関数 $\varphi(x)$ によって$\Big|\frac{\partial f}{\partial t}\Big|\le \varphi(x)$となるなら、$F(t)=\int_a^bf(x,t)dx$ とおくと、
$$F'(t)=\int_a^b\frac{\partial f}{\partial t}dx$$
が成り立ち、$F'(t)$ も連続である.


(1,2) の条件は、2変数関数としての連続性であり、まだ習っていませんので
それに関してはここではやりません.
でてくる関数が連続性や、偏微分可能性は十分に成り立つと仮定しているとします.

この最後の条件 (3) は、広義積分でなければ(閉区間上の積分であれば)、広義積分可能なは入らずいつでも成り立ちます.なので、(3) は広義積分のときに必要な条件です.


授業中にやっていた例をここでもやってみます.
$$\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}dx$$
の積分を計算します.そのために、
$$F(t)=\int_{0}^\infty e^{-tx}\frac{\sin x}x\,dx$$
を一度考えます.この被積分関数は、連続であり、偏微分可能です.一度 $t$ で偏微分すると、
$-e^{-tx}\sin x$ となります.
今、$t\ge t_0$ のとき、$|e^{-tx}\sin x|\le e^{-tx}\le e^{-t_0x}$ なので、このとき、$t$ によらず、有界です.

よって、上の定理25を使うことができて、$F'(t)=-\int_0^\infty e^{-tx}\sin xdx$ が成り立ち、実際、これを計算すると、
$F'(t)=-\frac{1}{t^2+1}$ となります.
ゆえに、これを積分することで、$F(t)=C-\text{arctan}(t)$ となります.
ここで、$C$ は積分定数です.

$t\to \infty $ なる極限を考えることで、$C$ を決定します.そのためには、
$\lim_{t\to \infty}\int_0^\infty e^{-tx}\frac{\sin x}{x}dx$ の極限を積分の中に入れる必要があります.

極限と積分の順序を交換することができるための条件もあります.

定義26(極限と積分の順序交換)
十分大きい任意の $t$ に対して、$f(x,t)$ が $t$ によらないある関数 $\varphi(x)$ によって$|f(x,t)|\le \varphi(x)$となり、$\int_a^b \varphi(x)dx<\infty$ であるなら
$$\lim_{t\to c}\int_a^bf(x,t)dx=\int_a^b\lim_{t\to c}f(x,t)\,dx$$
が成りたつ.

今、$\Big|e^{-tx}\frac{\sin x}{x}\Big|\le \frac{e^{-t_0x}}{x}$ このとき、この関数は $x\to \infty $ で広義積分可能となります.
また、$\Big|e^{-tx}\frac{\sin x}{x}\Big|\le e^{-tx}\le 1$ となり $x\to 0$ においても積分可能となります.

よって、$\lim_{t\to \infty}F(t)=\int_0^\infty \lim_{t\to \infty}e^{-tx}\frac{\sin x}{x}dx=0$
一方、$\lim_{t\to \infty}F(t)=\lim_{t\to \infty}(C-\text{arctan}(t))=C-\frac{\pi}{2}$
より、$C=\frac{\pi}2$ となり、

$\int_0^\infty e^{-tx}\frac{\sin x}{x}dx=\frac{\pi}{2}-\text{arctan}(t)=\text{arctan}(\frac{1}{t})$
が成り立ちます.

ここまでの証明だと、$F(t)$ は $t>0$ でしか、収束が示されませんが、
本当は、部分積分などをすることで、$t\ge 0$ でもこの広義積分が収束することが
示せます.そこで、

$$F(0)=\lim_{t\to 0}\int_0^\infty e^{-tx}\frac{\sin x}{x}dx=\int_0^\infty\lim_{t\to \infty}e^{-tx}\frac{\sin x}{x}dx=\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}dx$$

一方、$F(0)=\frac{\pi}{2}$ なので、
$$\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}dx=\frac{\pi}{2}$$
がわかります.

級数の収束について

この前のプリントで13-Bの問題は、すべて有理数の数列を用いて作れという問題がありましたが、

多くの人は、テイラー展開を使って作ると思うのですが、テイラー展開には、収束半径
というものがあります.
テイラー展開
$$a_0+a_1(x-a)+a_1(x-a)^2+a_2(x-a)^2+\cdots$$
のような級数を整級数、もしくは、べき級数と言います.
$x=a$ のことを、この整級数展開の中心ということにします.

例えば、一番簡単な整級数として、

$$\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+x^3+\cdots$$
があります.

これは、左辺の関数を $0$ を中心とした整級数としてテイラー展開したもので、剰余項は収束しています.
このイコールは恒等式という意味ですが、少し偏っています.左辺には、$x$ に代入できる実数は、$x\neq 1$ ですが、右辺に代入できる実数は、$|x|<1$ と限られているからです.
なので、恒等式というと少し語弊があるかも知れません.

見方としては、左辺の関数を、$x=0$ の周りで詳しく観察したものが右辺ということです.
なので、左辺は、値はわかりますが、右辺でその値の詳しい成り立ちがわかります.
例えば、近似計算などがわかったり、接線の式がわかったりします.
そして、詳しいことがわかる代わりに、わかる範囲が決められているのです.

ちょうど、関数を顕微鏡で覗いているようなもので、その詳しい様子を調べることができる代わりに、視野は狭まっているというわけです.その視野の半径のことを収束半径
と言います.下でちゃんと定義をします.
中心を少しずつ変えて展開をしてやれば、どの点でも関数を詳しく見ることができます.

収束半径

$|x|<1$ であれば、上の関数 $\frac{1}{1-x}$ 絶対収束します.

級数 $\sum_{n=0}^\infty a_n$ が絶対収束というのは、$\sum_{n=0}^\infty |a_n|$ が収束することを言います.

今の例で言えば、$|x|<1$ であるとき、$|x|=r$ とすると、

$\sum_{n=0}^\infty |x^n|=\sum_{n=0}^\infty r^n=\frac{1}{1-r}$ となり、
$\sum_{n=0}^\infty |x^n|$ は収束します.(単調増加な有界数列は収束する.)
よって、$\sum_{n=0}^\infty x^n$ は、$|x|<1$ で絶対収束します.

整級数
$$\sum_{n=0}^\infty a_n(x-a)^n$$
収束半径とは、級数が絶対収束するための、展開の中心からの距離の上限
と定義します.記号で書けば、

$$\sup\left\{r\in{\mathbb R}||x-a|<r\text{ で$\sum_{n=0}^\infty a_n(x-a)^n$ が絶対収束する.}\right\}$$

となります.

上の例では、$|x|<1$ では、いつでも絶対収束しますので
収束半径を $R$ とすると、$R\ge 1$ です.しかし、$x=1$を代入すると、
$$1+1+1+\cdots$$
と右辺は発散し、もちろん、絶対収束しません.

よって、$R\le 1$ が成り立ちます.

なので、級数
$$\sum_{n=0}^\infty x^n$$

の収束半径は、 $R=1$ とわかります.

収束半径を計算する一つの方法として、展開の中心を $a$ とし、 $r=|x-a|$ としたとき、$r<R$ においては、いつでも絶対収束し、$r=R$ のときに、発散する点(もしくは一般に絶対収束しない点)を見つけられれば、$R$ が収束半径ということになります.

他の例として、

$$\frac{1}{1+x^2}=1-x^2+x^4-x^6\cdots$$

は、$|x|<1$ で、絶対収束しますが、$x=\pm1$ を入れると、右辺の級数は、
$1-1+1-1+1-\cdots$ と収束しません.またこの級数は、絶対収束しません.
実際、各項に絶対値をつけた作った数列は、$1+1+1+\cdots$ です.

なので、この収束半径も $R=1$ となります.
この関数の場合、左辺に、$\pm1$ を入れた場合、$\frac{1}{1+1}=\frac{1}{2}$ となり、
有限な値になります.つまり、左辺にはどこにも発散する点がないにも関わらず、この等式
$$\frac{1}{1+x^2}=1-x^2+x^4-x^6+\cdots$$
も、$|x|<1$ でしか成り立ちません.
(収束半径とは一体なんなのか?ということは、関数の定義域を複素数にまで広げると
分かるようになります.もう少し先で習う関数論で答えが出ます.
実は、この関数は、複素数にまで範囲を広げると、$x=\pm i$ において発散する点を見つけることができます.)


13-Bの問題で、$\log 5$ を有理数の数列で作りなさいという問題がありますが、

多くの間違った解答は次のようになります.
$\log(x+1)$ は $x$ が $0$ の近くで、

$$\log (x+1)=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}-\cdots $$

となりますが、この式に、$x=4$ を入れてしまうというものです.

そうすると、

$$\log 5=4-\frac{4^2}{2}+\frac{4^3}{3}-\frac{4^4}{4}+\cdots$$

となりますが、$\log (x+1)$ という関数の、$x=0$ を中心としたテイラー展開で
意味があるのは、収束半径内の $|x|<1$ のときのみです.
それに、有効ではない値 $4$ を入れてしまっています.
もちろん、この右辺は、収束しませんのでこの等式には意味はありません.

$\pi$ を作る数列を作りなさいという解答も
$\arctan(x)$ の展開で作るというのが一般的であるかもしれませんが、

積分して、$\pi$ になるような関数を持ってきて、それを展開をしても良いでしょう.
例えば、すぐ思いつくものとして、

$$\int_0^1\sqrt{1-x^2}\,dx=\frac{\pi}{4}$$
として、左辺は、
$$\int_0^1\sum_{n=0}^\infty \binom{\frac{1}{2}}{n}(-x^2)^ndx$$
となります.この級数の収束半径は、1です.
なので、$|x|<1$ でこの級数は、絶対収束します.
なので、項別微分ができて(収束半径内であれば、項別微積分ができる)、
それぞれの項を積分する形にすることができます.
ただ、$x=1$ では、収束半径内ではありませんが、交代級数ですので、収束が示せます.



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