2016年7月19日火曜日

線形代数続論演習(第12回)続き

[場所1E103(金曜日3限)]


HPに行く.

第12回(リンク)の続きです.

群の表現

群の表現とは、群 $G$ に対して、ベクトル空間 $V$ の線形変換全体への群としての準同型写像(群準同型という)
$$G\to GL(V)$$
のことを言います.
同値なことですが、$G$のベクトル空間 $V$ への線形な $G$-作用のことです.

例えば、$n\times n$ 行列全体は群ではありませんが、正方行列の可逆元全体(正則行列)は群となります.
なので、線形変換全体への準同型というより、正則行列全体への群準同型写像です.
正則変換全体は、群をなします.

$V$ 上の正則写像を一般線形群といい、$GL(V)$ とかきます.数ベクトル空間の場合は、
$GL(n,{\mathbb K})$ と書きます.

$V$ を数ベクトル空間とすれば、$n\times n$ 正則行列全体への準同型写像となります.

群の表現とは、群の元をある線形写像とみなす方法のことですので、線形表現ということもありますが、この線形を略して、単に表現と言ったりします.

群の線形表現があると、$g\in G$ に対して、
$\varphi_g: V\to V$ なる線形変換、つまり $v\mapsto \varphi_g(v)=g\cdot v$ と定義される線形変換が
得られます.

また、表現 $G\to GL(V)$ が単射な群準同型であるとき、この表現を忠実表現といいます.
群の元が非自明な元なのに線形変換として、自明に作用する(動かさない)ことがないという意味で、忠実というわけです.

例えば、正則行列 $A\in M(n,{\mathbb C})$ をとります.
このとき、$v\in {\mathbb C}^n$ に対して、行列の左からの掛け算
$$v\mapsto A\cdot v$$
として、線形変換 $V\to V$ が定義できます.

$G(A)=\{A^n |n\in {\mathbb Z}\}$ とおくと、この集合は群となります.

命題
$G(A)$ は、${\mathbb Z}$, ${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ もしくは、ただ一つの元からなる群 $\{e\}$ と同型.


${\mathbb Z}$ は整数のなす群で、足し算を群の積として考えます.
${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ は、$\{0,1,2,\cdots,n-1\}$ からなる群で、足し算を群の
積とし、$n-1$ を超えたときは、$n$ を幾つか引くことで、$\{0,1,2,\cdots, n-1\}$ の元とすることができます.このような演算は群の定義を満たしています.


例えば、${\mathbb Z}/7{\mathbb Z}$ は、群の演算として、
$1+3=4$、$3+4=0$, $2+6=1$ などのような式が成り立ちます.


上の命題を証明してみます.
$\varphi:n\mapsto A^n$ なる群の準同型写像 ${\mathbb Z}\to G(A)$
があります.これは、全射な群準同型であることは、すぐわかります.

その核 $\text{Ker}(\varphi)=\{n\in{\mathbb Z}|\varphi(n)=E\}$ は、${\mathbb Z}$ の部分群となるのですが、${\mathbb Z}$ の中の部分群は、$n{\mathbb Z}$ つまり、$n$ で割り切れる整数全体と一致します.
その証明は(簡単なので)ここでは省略しますが、それを認め、群準同型定理

定理(準同型定理)
$f:G \to H$ が全射準同型であるとする.
このとき、群準同型
$$G/\text{Ker}(f)\cong H$$
が成り立つ.

を使います.

この、$G/\text{Ker}(f)$ は、群による類別による同値類の集合です.
ベクトル空間の商空間と同じようにして、部分群 $\text{Ker}(f)\subset G$ に対して、
$g\cdot \text{Ker}(f)$ の形の $G$ の部分集合によって $G$ の元を全て類別します.
このとき、実は、この類別は、群を定義することができます.
それを商空間と同じようにして、商群と言います.
商群の群の積は、$(g\cdot \text{Ker}(f))\cdot (h\cdot \text{Ker}(f))=gh\cdot \text{Ker}(f)$
と定義します.

(実は商群を定義するには、ただの部分群だけではダメで、正規部分群
($\iff$ $gHg^{-1}=H$ なる部分群 $H\subset G$)ではないけません.ただ、ここまで来ると
ちゃんと群論の話をしないといけないのでこれ以上は立ち入りません.
群論の本格的な勉強は後期になると思います.私は担当ではありませんが.
ちなみに、群準同型の核となるような部分群はいつも、正規部分群となります.)

この定理を使うと、$G(A)\cong {\mathbb Z}/\text{Ker}(\varphi)$
となります.よって、$n=0$ であれば、左辺は、${\mathbb Z}$ となりますが、
$n=1$ とすると、$A=E$ であり、この群はただ一つからなる群(単位元だけからなる単位群
また、$n>1$ のときは、${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ と同型となります.

よって、この写像

$$\varphi:G(A)\to GL(n,{\mathbb C})$$
は ${\mathbb Z}, {\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ , $\{e\}$ のどれかの群の表現となります.
例えば、$A=\begin{pmatrix}0&1&0\\0&0&1\\1&0&0\end{pmatrix}$ とすると、$\varphi$ は、$A^3=E$ となり、$A\neq E$ ですので、$G(A)\cong {\mathbb Z}/3{\mathbb Z}$ の群の表現となります.
これらの群の表現は、真面目に、核を潰しているので、すべて忠実な作用です.


既約表現・可約表現

線形表現 $\varphi:G\to GL(V)$ があるとします.
そのとき、部分空間 $W\subset V$ にその作用が閉じているとします.
つまり、任意の $W$ の元 $w$ に対して $G$ の作用 $\varphi_g(w)$ が再び、$W$ の
元となるようなとき、$W$ のことを$G$-不変部分空間と言います.
つまり、任意の $g\in G$ に対して、線形写像
$$\varphi_g:W\to W$$
が定義できることになります.


そのような$G$-不変部分空間 $W$ が存在するとき、表現 $G\to GL(V)$ が可約と言います.
存在しないとき、そのような表現を既約といいます.

例えば、有限次元ベクトル空間への表現だとしましょう.
このとき、可約ということは、$V$ のある基底が存在して、任意の元 $g\in G$ において、その
基底に関する表現行列が、
$$\begin{pmatrix}A(g)&B(g)\\O&D(g)\end{pmatrix}$$
のようなブロック行列の形となるということです.

このような基底は、群の元 $g$ によらないものを取ります.
もし、さらに基底を取り替えて、$B(g)$ の位置の行列もゼロ行列として取れるとき、
表現 $G\to GL(V)$ は、

$G\to GL(V_1)$ と $G\to GL(V_2)$ という表現の直和になります.
$V_1$ 上の表現は $g\mapsto A(g)$ となり、$V_2$ の表現行列は $g\mapsto D(g)$ です.

そのとき、表現の直和もベクトル空間の直和同じ記号 $\oplus$ を用いて、
$$V_1\oplus V_2$$
と書かれます.

このような表現は直可約といいます.

$G\to GL(V_1)$ のことを、表現 $G\to GL(V)$ の直和因子と言います.
可約だとしても、直可約かどうかわかりません.




例えば、有名な例として、表現
$$\varphi:{\mathbb Z}\to GL(2,{\mathbb C})$$
として
$\varphi(n)=\begin{pmatrix}1&n\\0&1\end{pmatrix}$とします.
これは、${\mathbb Z}$ の ${\mathbb C}^2$ への忠実作用であるが、
${}^t(1,0)$ なるベクトルは、この作用で閉じており、$\langle{}^t(1,0)\rangle$
は${\mathbb C}^2$ の不変部分空間となるので、既約表現ではありません.

しかし、どんなに基底を取り替えても、その表現行列を対角的にすることはできません.

というのも、基底を取り替えることは、基底の変換行列 $P$ を使って、表現行列が、$A$ から $P^{-1}AP$ に移るということであり、

例えば、$1$ の行き先である、$\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ は、
ジョルダンブロックのヤング図形が 横並び □□
となるような標準化しかもちません.対角化不可能なのです.
もし、1次元の直和因子があるとすると、表現行列は対角的になるはずです.

どのような基底を取っても、直和因子を持ち得ません.
よって、直可約ではないことになります.

ここで、次のような定義をしておきます.

定義(完全可約表現)
群の表現 $G\to GL(V)$ が、幾つかの既約表現の直和となるような表現のことを
完全可約表現という.

つまり、ある群の表現 $G\to GL(V)$ が、可約であるとすると、それは完全可約であるということです.
なので、上のような例 $\varphi:n\mapsto \begin{pmatrix}1&n\\0&1\end{pmatrix}$
は $G$-不変部分空間は存在するが、それが直和因子とならないので、完全可約
とはなりません.かといって、内部に $G$-不変部分空間が存在しないわけ
ではありませんので、既約でもありません.

ただし、表現の直和成分を含まないので、このような表現のことを、
直既約表現と言います.

ここでもう一つ、非自明な有名事実を述べておきます.


定理(有限群の表現の完全可約性)
有限群の線形表現はすべて完全可約である.

これ以上やると、線形代数を逸脱しますので、有限群の表現論は
古典的な内容で、後期の代数学の授業で色々と勉強してみてください.

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