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2016年7月12日火曜日

微積分I演習(第11回)

[場所1E101(水曜日4限)]

今日は
  • 広義積分の収束判定
についてやりました.
授業で話した内容に訂正があります.配付プリントは訂正してあります.

広義積分の収束について

広義積分とは、
\lim_{c\to b}\int_a^cf(x)dx
であり、この積分が収束するかどうかが問題です.
よく使う方法は、


定理19(広義積分の判定法)
任意のx に対して、|f(x)|\le g(x) であり、広義積分 \int_a^bg(x)dx が収束するなら
\int_a^bf(x)dx も広義積分可能.

この積分判定法は広く使われています.
また、発散の判定法として、次のものもあげておきます.

定理20(広義積分の判定法)
任意の x に対して、|f(x)|\ge g(x) であり、広義積分 \int_a^bg(x)dx が発散するなら
\int_a^bf(x)dx は広義積分は不可能.

例1

\int_0^\infty\frac{dx}{1+x^2}
の広義積分の収束を調べるとします.
そのとき、\frac{1}{1+x^2}\le \frac{1}{x^2} であり、\int_1^c\frac{1}{x^2}dx=[-\frac{1}{x}]_1^c=-\frac{1}{c}+1\to 1
となります.よって、
\int_0^\infty \frac{dx}{1+x^2}=\int_0^1\frac{dx}{1+x^2}+\int_1^\infty\frac{dx}{1+x^2}
収束します.

例2

広義積分 \int_0^\infty\frac{dx}{\log (x+1)} の収束について考えます.
x\to \inftyx\to 0 の両方の広義積分を考える必要あります.

まず、x\ge 0 において、不等式|\log (x+1)|\le x が成り立ちます.
(\because f(x)=x-\log (x+1) とすると、f'(x)=1-\frac{1}{x+1}=0 ならば、x=0 であり、そのとき、最小.f(1)=0-\log 1=0)

なので、
\frac{1}{|\log (x+1)|}\ge  \frac{1}{x}
となり、広義積分 \int_1^c\frac{dx}{|\log (x+1)|}\ge \int_1^c \frac{dx}{x}\to\infty\ \ (c\to \infty)

よって、無限区間での積分 \int_1^\infty\frac{dx}{\log x} は広義積分可能ではありません.
また、x\to 0 での積分可能性についてですが、

x>0 において、
\frac{1}{|\log (x+1)|}>\frac{1}{x} ですので 、
\int_c^1\frac{dx}{|\log (x+1)|}\ge \int_c^1\frac{dx}{x}=[\log x]_{c}^1
c\to 0 のとき、この積分は収束しません.

よって、
\int_0^\infty \frac{dx}{\log (x+1)}
どちらの極限においても収束しません.


べき関数の広義積分収束性
多くの場合、このような、積分しやすいべき関数の積分に帰着させる場合が多いです.
べき関数の積分の収束を書いておくと、

\int_1^\infty\frac{dx}{x^s}=\begin{cases}\text{広義積分可能:}&s>1\\\text{広義積分不可能:}&s\le 1\end{cases}

となり、有限区間であれば、

\int_0^1\frac{dx}{x^s}=\begin{cases}\text{広義積分可能:}&s<1\\\text{広義積分不可能:}&s\ge 1\end{cases}

となります.特に、\frac{1}{x} という関数は、無限大にでも、x=0 の付近でも、
広義積分は収束しません.

下に描いた関数は、青い線はy=1/xで、この線を境に、この線の下側は、無限区間でも x=0 の近くでも収束していません.y=x において、この関数が対称であることからもわかると思いますが.
一方、この関数より少しでも下側にあるようなべき関数、例えば、橙色の線は、y=1/x^2 ですが、
この関数は、無限区間で広義積分可能で、x=1 から \infty では、全部の面積の和は 1 になります.しかし、0<x<1 では、y=1/x より、上側にあるような関数になってしまっていますので、もちろん、広義積分可能ではありません.

また、緑の関数は、y=1/\sqrt{x} ですが、反対に無限区間では、y=1/x より、上に来ているので、[1,\infty) では、広義積分可能ではありません.また、0<x<1 となる範囲では、y=1/x より下に来ているべき関数なので、積分可能です.




ちなみに、y=1/x より、下に位置する(べき関数とは限らない)関数だからといって積分できるわけではありません.例えば、代表的な関数

y=\frac{1}{x\log (x+1)}

は、xe-1 より大きくなると、明らかに、1/x よりは小さくなりますが、広義積分可能ではありません.

証明は簡単です.

t=\log (x+1) とおくと、
\int_1^c\frac{dx}{x\log (x+1)}=\int_{\log 2}^{\log (c+1)}\frac{e^t}{(e^t-1)t}dt
となりますから、
これらの関数が正の関数であることを考慮すると、

\int_1^c\frac{dx}{x\log (x+1)}=\int_{\log 2}^{\log (c+1)}\frac{e^t}{(e^t-1)t}dt>\int_{\log 2}^{\log (c+1)}\frac{dt}{t}\to \infty
となります.

よってこの積分は収束しません.
ちなみに、この関数は、 Mathematicaに入れてみると、収束判定はしてくれませんね.



授業中で学生の解答を見ていた時、

\int_0^1\frac{dx}{x(1-x)}
の収束判定について、TAは収束すると言っていましたが、
この広義積分は x=0,1 の両方に置いて収束しません.

x=0 においてやると、0<x<1 において、
\frac{1}{|x(1-x)|}=\frac{1}{|x|(1-|x|)}>\frac{1}{|x|}
となり、\frac{1}{|x|}x=0 での広義積分 \int_0^{b}\frac{dx}{x(1-x)} は収束しません.

よって、x=1 においても広義積分はもちろん収束しません.



関数のオーダー(ラージオー)と広義積分の収束について 

関数のオーダー(スモールオー)について、以前やりました.

この授業内の話であれば、こちら(リンク)です.
一般的な話については、こちら(リンク)です.

この前の授業では、ラージオーと広義積分の収束についての関係の話を少しだけしました.
ラージオーは、この授業では初めてで、このブログ内でしたら、こちら(リンク)に
書きました.定義が知りたい人は、上のリンクから辿って定義を確認してください.

しかし、新しい話ではなく、上で書いた話をまとめただけです.
また、授業で行ったことに少し訂正がありますので、それについても書きます.

上の広義積分の収束判定をラージオーを用いて書くと、

定理21(広義積分の判定法)
関数 f(x)f(x)=O(x^{-s})\ \ (x\to \infty) かつ、s>1 であるなら、
\int_a^\infty f(x)dx
広義積分は可能.

となります.授業中の話で訂正すべきところは、この逆は成り立たないということです.

f(x)=O(x^{-s})\ (x\to \infty) で、s\le 1 であっても、収束しないとは限らないということです.

当たり前な例として、

f(x)=1/x^2 としてやると、x\to \infty において、
\frac{1/x^2}{1/x}=\frac{1}{x}\to 0\ \ (x\to \infty) なので、
\frac{1}{x^2}=O(\frac{1}{x})
ですが、上で書いたように、\int_1^\infty\frac{dx}{x^2} は収束します.

もう一つの収束判定法を書いておくと、

定理22(広義積分の判定法)
関数 f(x)(a,b] で定義される関数で、f(x)=O((x-a)^{-s})\ \ (x\to a) かつ、s<1 であるなら、
\int_a^bf(x)dx
広義積分は可能.

ですが、この逆も成り立ちません.


このように、関数本体がどのような関数で抑えられるかわからなくても、関数のオーダーだけで、広義積分の収束を言うことができます.この方法もすっきりしていますが、
結局、不等式を使って関数を作るので、上で書いたこととほとんど同じような手間と思います.

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