[場所1E101(水曜日4限)]
$\epsilon-\delta$ 論法(つづき)
前回は $\epsilon-N$ 論法の演習はしましたが、$\epsilon-\delta$ 論法の演習までする時間がありませんでしたので、その続きから行いました.
$\epsilon-\delta$ 論法を使った関数の連続を示しました.
今日は多項式について証明して見せました.
以前のブログ(リンク)にも似たような証明を書きましたのでそれはここでは省略します.
ここでは、授業中にやろうとしていた、指数関数の連続性について書きます.
$e^x$ の $x=0$ での連続性
について、ここで証明します.
任意の正の実数 $\epsilon\ge1$ とします.
このとき、$0<\delta<\log(1+\epsilon)$ なる $\delta$ に対して、
$|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$e^x<e^\delta<1+\epsilon$
$e^x>e^{-\delta}>\frac{1}{1+\epsilon}>1-\epsilon$
となり、$|e^x-1|<\epsilon$ が成り立つ.
$0<\epsilon<1$ とします.
このとき、$0<\delta<\min\{\log(1+\epsilon),\log\frac{1}{1-\epsilon}\}$ なる $\delta$ に対して、
$|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$e^x<e^\delta<1+\epsilon$
$e^x>e^{-\delta}>1-\epsilon$
となり、$|e^x-1|<\epsilon$ が成り立つ.
第4回の授業です.来週(5/18)は休講にしますので気をつけてください.
今日は、
- $\epsilon-\delta$ 論法の続きと
- 微分の定義
- 対数微分
- 交代級数
でした.
前回は $\epsilon-N$ 論法の演習はしましたが、$\epsilon-\delta$ 論法の演習までする時間がありませんでしたので、その続きから行いました.
$\epsilon-\delta$ 論法を使った関数の連続を示しました.
今日は多項式について証明して見せました.
以前のブログ(リンク)にも似たような証明を書きましたのでそれはここでは省略します.
ここでは、授業中にやろうとしていた、指数関数の連続性について書きます.
$e^x$ の $x=0$ での連続性
について、ここで証明します.
任意の正の実数 $\epsilon\ge1$ とします.
このとき、$0<\delta<\log(1+\epsilon)$ なる $\delta$ に対して、
$|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$e^x<e^\delta<1+\epsilon$
$e^x>e^{-\delta}>\frac{1}{1+\epsilon}>1-\epsilon$
となり、$|e^x-1|<\epsilon$ が成り立つ.
$0<\epsilon<1$ とします.
このとき、$0<\delta<\min\{\log(1+\epsilon),\log\frac{1}{1-\epsilon}\}$ なる $\delta$ に対して、
$|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$e^x<e^\delta<1+\epsilon$
$e^x>e^{-\delta}>1-\epsilon$
となり、$|e^x-1|<\epsilon$ が成り立つ.
よって、どちらの場合も、$\epsilon-\delta$ 論法により、$e^x$ が $0$ で連続であることがわかります.
そのほかの点での連続性は、スカラー倍などで結局 $x=0$ の場合に帰着すると思います.
今日発表が残った人は、その辺をやってください.
微分可能の定義
極限が存在するときとは、この極限が収束することをいいます.
また、実数全体で定義されていなくても、$a$ が $f$ の定義域に含まれており、その十分近くの点も含まれていれば(例えば、区間 $[0,1]$ などの任意の点なら)大丈夫です.
この値のことを $f'(a)$ とかいて、微分係数といいます.
また、各点 $x=a$ において微分係数をとったものを導関数といいます.
微分は、定義から、平均変化量の極限だから、その点での接線の傾きを表すということは直感的に分かると思いますが、実は、傾きを計算するということは関数のその点での一次近似を与えていると言い換えることができます.
つまり、関数が微分可能であるとは、次のように言い換えることができます.
一次近似であることの意味は再来週以降となります.また、再来週は微分からはじめますので、今日のプリントの問題を解いた人は授業が始まる前に黒板に書いておいてください.
対数微分法
対数微分法とは、対数をとってから微分をする方法で、微分法ではよく使われます.
要するに、
$$(\log f(x))'=\frac{f'(x)}{f(x)}$$
となります.
よって、$f(x)$ を掛けることで、
となります.
今日は $f(x)=x^x$ を対数微分法を用いて計算しました.計算結果は
$$(x^x)'=x^x(x\log x)'=x^x(\log x+1)$$
となります.
交代級数
交代級数とは、正項級数 $a_n$ に対して、
$$a_1-a_2+a_3-a_4+a_5+\cdots$$
となる級数のことですが、ここでは、さらに、次の性質をもつとします.
$a_n$ は単調減少で、$a_n\to 0$に収束する.
このとき、この交代級数は必ず、収束します.その説明は授業でしたとおりですので
ここではしません.あの説明は黒板かホワイトボードでするのが一番だと思います.
つまり、$a_n\to 0$ であれば、$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が収束しなくてもかまいません.
実際、収束しない級数 $\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$ を使っています.
(レポートをみると、この級数が収束すると勘違いしている人がいました。)
少なくとも、数学科に入って一年微積分を学習したときに、証明込みでこの級数が発散することは常識になるようにしてください.
このような級数が収束することはよいのですが、$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$ が発散することは少し面白い(というか驚くべき)性質につながります.それが、宿題4-4です.
授業中には話しました.
まず、交代級数の符合を全てそろえた級数
$$\sum_{n=1}^\infty a_n $$
が収束する場合、この交代級数は絶対収束するといいいます.
そうでない場合、条件収束するといいます.
注意すべきことは、
絶対収束する場合は、実は、交代級数をいくら並び替えても収束値は変わりませんが、条件収束する場合は、変わる場合があります.
もちろん有限個替えただけでは変わりませんが、無限個を一気に替えた場合、値が変わることがあります.
上の例では、
$$1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdots\hspace{1cm}(\ast)$$
は収束して $\log 2$ となります.(この $\log 2$ の値の計算の仕方も前期のうちにどこかでできるようになるはずです.)
しかし、($\ast$) の和の順番を無限個一気に並び替えたとき、例えば、
$$\left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots \right)-\left(\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\cdots \right)$$
は収束しません.正確には不定形かもしれませんが、全部の和を最初から計算して行っても途中で発散してしまいます.
自然数の逆数の和は収束しませんが、偶数の逆数の和も収束しませんし、奇数の逆数の和も収束しません.とくに
、
$$1+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots>\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\cdots $$
なる不等式を使えばすぐわかると思います.
実は、宿題4-4が主張しているように、実数のどんな値にも収束させられるように並び替えることができます.これはちょっとショッキングなことではないでしょうか?
最後に、上の数列 ($\ast$) を並び替えて、無限大に発散させるような級数を作ってみます.証明はしません.無限大に収束するかどうかは自分で考えてください.
$$\left(1+\frac{1}{3}-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\frac{1}{9}+\frac{1}{11}-\frac{1}{4}\right)+\left(\frac{1}{13}+\frac{1}{15}+\frac{1}{17}+\frac{1}{19}+\frac{1}{21}+\frac{1}{23}-\frac{1}{6}\right)+\cdots$$
です.
この括弧は規則を分かり易くするためにつけたものです.
つまり、
$$\sum_{
n=1}^\infty \left(\sum_{k=n(n-1)}^{n(n+1)-1}\frac{1}{2k+1}-\frac{1}{2n}\right)$$
という発散級数です.
この発散級数は大分ゆっくり発散するようで、100項目くらいまで足してもまだ3くらいにしかなりません.
そのほかの点での連続性は、スカラー倍などで結局 $x=0$ の場合に帰着すると思います.
今日発表が残った人は、その辺をやってください.
微分可能の定義
連続な関数がいつでも微分できるとは限りません.
微分可能であることの定義は以下のようになります.
今日は最後、この定義を述べて少し計算して終わってしまいました.
微分可能であることの定義は以下のようになります.
今日は最後、この定義を述べて少し計算して終わってしまいました.
定義12(微分可能I)
実数上で定義された関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で微分可能であるとは、
$$\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$$
の極限が存在するときに言う.
実数上で定義された関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で微分可能であるとは、
$$\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$$
の極限が存在するときに言う.
また、実数全体で定義されていなくても、$a$ が $f$ の定義域に含まれており、その十分近くの点も含まれていれば(例えば、区間 $[0,1]$ などの任意の点なら)大丈夫です.
この値のことを $f'(a)$ とかいて、微分係数といいます.
また、各点 $x=a$ において微分係数をとったものを導関数といいます.
微分は、定義から、平均変化量の極限だから、その点での接線の傾きを表すということは直感的に分かると思いますが、実は、傾きを計算するということは関数のその点での一次近似を与えていると言い換えることができます.
つまり、関数が微分可能であるとは、次のように言い換えることができます.
定義13(微分可能性II)
関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で微分可能であるとは、ある実数 $A$ と関数 $\varphi(x)$ が存在して、
$$f(x)=f(a)+A(x-a)+\varphi(x)$$
と書けることである.ここで、$\varphi(x)$ は、$\lim_{x\to a}\frac{\varphi(x)}{x-a}=0$ を満たすある関数.
関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で微分可能であるとは、ある実数 $A$ と関数 $\varphi(x)$ が存在して、
$$f(x)=f(a)+A(x-a)+\varphi(x)$$
と書けることである.ここで、$\varphi(x)$ は、$\lim_{x\to a}\frac{\varphi(x)}{x-a}=0$ を満たすある関数.
一次近似であることの意味は再来週以降となります.また、再来週は微分からはじめますので、今日のプリントの問題を解いた人は授業が始まる前に黒板に書いておいてください.
対数微分法
対数微分法とは、対数をとってから微分をする方法で、微分法ではよく使われます.
要するに、
$$(\log f(x))'=\frac{f'(x)}{f(x)}$$
となります.
よって、$f(x)$ を掛けることで、
公式14(対数微分法)
$$f'(x)=f(x)(\log f(x))'$$
$$f'(x)=f(x)(\log f(x))'$$
となります.
今日は $f(x)=x^x$ を対数微分法を用いて計算しました.計算結果は
$$(x^x)'=x^x(x\log x)'=x^x(\log x+1)$$
となります.
交代級数
交代級数とは、正項級数 $a_n$ に対して、
$$a_1-a_2+a_3-a_4+a_5+\cdots$$
となる級数のことですが、ここでは、さらに、次の性質をもつとします.
$a_n$ は単調減少で、$a_n\to 0$に収束する.
このとき、この交代級数は必ず、収束します.その説明は授業でしたとおりですので
ここではしません.あの説明は黒板かホワイトボードでするのが一番だと思います.
つまり、$a_n\to 0$ であれば、$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が収束しなくてもかまいません.
実際、収束しない級数 $\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$ を使っています.
(レポートをみると、この級数が収束すると勘違いしている人がいました。)
少なくとも、数学科に入って一年微積分を学習したときに、証明込みでこの級数が発散することは常識になるようにしてください.
このような級数が収束することはよいのですが、$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$ が発散することは少し面白い(というか驚くべき)性質につながります.それが、宿題4-4です.
授業中には話しました.
まず、交代級数の符合を全てそろえた級数
$$\sum_{n=1}^\infty a_n $$
が収束する場合、この交代級数は絶対収束するといいいます.
そうでない場合、条件収束するといいます.
注意すべきことは、
絶対収束する場合は、実は、交代級数をいくら並び替えても収束値は変わりませんが、条件収束する場合は、変わる場合があります.
もちろん有限個替えただけでは変わりませんが、無限個を一気に替えた場合、値が変わることがあります.
上の例では、
$$1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdots\hspace{1cm}(\ast)$$
は収束して $\log 2$ となります.(この $\log 2$ の値の計算の仕方も前期のうちにどこかでできるようになるはずです.)
しかし、($\ast$) の和の順番を無限個一気に並び替えたとき、例えば、
$$\left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots \right)-\left(\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\cdots \right)$$
は収束しません.正確には不定形かもしれませんが、全部の和を最初から計算して行っても途中で発散してしまいます.
自然数の逆数の和は収束しませんが、偶数の逆数の和も収束しませんし、奇数の逆数の和も収束しません.とくに
、
$$1+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots>\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\cdots $$
なる不等式を使えばすぐわかると思います.
実は、宿題4-4が主張しているように、実数のどんな値にも収束させられるように並び替えることができます.これはちょっとショッキングなことではないでしょうか?
最後に、上の数列 ($\ast$) を並び替えて、無限大に発散させるような級数を作ってみます.証明はしません.無限大に収束するかどうかは自分で考えてください.
$$\left(1+\frac{1}{3}-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\frac{1}{9}+\frac{1}{11}-\frac{1}{4}\right)+\left(\frac{1}{13}+\frac{1}{15}+\frac{1}{17}+\frac{1}{19}+\frac{1}{21}+\frac{1}{23}-\frac{1}{6}\right)+\cdots$$
です.
この括弧は規則を分かり易くするためにつけたものです.
つまり、
$$\sum_{
n=1}^\infty \left(\sum_{k=n(n-1)}^{n(n+1)-1}\frac{1}{2k+1}-\frac{1}{2n}\right)$$
という発散級数です.
この発散級数は大分ゆっくり発散するようで、100項目くらいまで足してもまだ3くらいにしかなりません.
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