[場所1E103(金曜日3限)]
HPに行く.
商空間
商空間とは、ざっくり言えば、ベクトル空間 $V$ の部分ベクトル空間 $W$ の方向を潰してできるベクトル空間です.
$V/W$ の元を $[{\bf v}]$ という書き方をしますが、これは、${\bf v}$ を通る $W$ の方向を全てを表します.任意の ${\bf w}$ に対して、${\bf v}+{\bf w}$ なる元を全て $[{\bf v}]$ という元にするということです.
$V/W$ の一点は $[{\bf v}]$ です.$V$ では、${\bf v}$ を通る空間に対応します.
集合としては、 ${\bf v}+{\bf w}$ という形の元全て、つまり、${\bf v}+W$ となります.
そういうわけで、商空間の元は ${\bf v}+W$ と表すこともあります.
商空間のイコール
商空間において等しいことを $=_{V/W}$ と書くことにします.
商空間において、
$$[{\bf v}_1]=_{V/W}[{\bf v}_2]$$
であるということは、
$${\bf v}_1-{\bf v}_2\in W$$
であると定義されます.
商空間のゼロ元
ゼロ元とは、抽象ベクトル空間において、任意の元にゼロ元を足しても変わらないという性質があります.
つまり、
$${\bf x}+0_V=_{V}{\bf x}$$
ということです.ここで、$0_V$ と書いたのは、$V$ の中で、ゼロ元を意味しています.
商空間のゼロ元もこのような性質を持つ元のことを指します.
それは、カッコを使った書き方だと、$[0]\in V/W$ となり、
集合としては、$0+W$ となる元で、つまり、$W$ と書いても同じものです
この元が $V/W$ のゼロ元であることを示しましょう.
$V/W$ の任意の元は、ある ${\bf v}\in V$ に対して、$[{\bf v}]$ と書かれます.
なので、
$[0]+[{\bf v}]=_{V/W}[0+{\bf v}]=_{V/W}[{\bf v}]$
となります.また、ゼロ元は ${\bf w}\in W$ に対して、$[{\bf w}]$ と書かれますので
この場合もやってみると、
$[{\bf w}]+[{\bf v}]=_{V/W}[{\bf w}+{\bf v}]$
商空間の和
$[{\bf v}_1]$ と $[{\bf v}_2]$ の和の定義は、
$[{\bf v}_1+{\bf v}_2]$
となります.
また、スカラー倍は $\lambda[{\bf v}]=[\lambda{\bf v}]$ と定義します.
商空間の基底を求めること
HPに行く.
今日は、
- 商空間について
- 商空間の基底を求める問題の復習
- 直交補空間の求めかた
- エルミート計量空間
実際、計量空間についてはほとんどできませんでしたが、直交補空間の求め方については少しだけやりました.
商空間
商空間とは、ざっくり言えば、ベクトル空間 $V$ の部分ベクトル空間 $W$ の方向を潰してできるベクトル空間です.
$V/W$ の元を $[{\bf v}]$ という書き方をしますが、これは、${\bf v}$ を通る $W$ の方向を全てを表します.任意の ${\bf w}$ に対して、${\bf v}+{\bf w}$ なる元を全て $[{\bf v}]$ という元にするということです.
$V/W$ の一点は $[{\bf v}]$ です.$V$ では、${\bf v}$ を通る空間に対応します.
集合としては、 ${\bf v}+{\bf w}$ という形の元全て、つまり、${\bf v}+W$ となります.
そういうわけで、商空間の元は ${\bf v}+W$ と表すこともあります.
商空間のイコール
商空間において等しいことを $=_{V/W}$ と書くことにします.
商空間において、
$$[{\bf v}_1]=_{V/W}[{\bf v}_2]$$
であるということは、
$${\bf v}_1-{\bf v}_2\in W$$
であると定義されます.
商空間のゼロ元
ゼロ元とは、抽象ベクトル空間において、任意の元にゼロ元を足しても変わらないという性質があります.
つまり、
$${\bf x}+0_V=_{V}{\bf x}$$
ということです.ここで、$0_V$ と書いたのは、$V$ の中で、ゼロ元を意味しています.
イコールの下に $V$ が書かれているのは、等式が $V$ のものであるということです.
それは、カッコを使った書き方だと、$[0]\in V/W$ となり、
集合としては、$0+W$ となる元で、つまり、$W$ と書いても同じものです
つまり、$0_{V/W}=[0]$ となるのです.
集合のような書き方とすると、$0_{V/W}=0+W$ となります.
この元が $V/W$ のゼロ元であることを示しましょう.
$V/W$ の任意の元は、ある ${\bf v}\in V$ に対して、$[{\bf v}]$ と書かれます.
なので、
$[0]+[{\bf v}]=_{V/W}[0+{\bf v}]=_{V/W}[{\bf v}]$
となります.また、ゼロ元は ${\bf w}\in W$ に対して、$[{\bf w}]$ と書かれますので
この場合もやってみると、
$[{\bf w}]+[{\bf v}]=_{V/W}[{\bf w}+{\bf v}]$
となり、${\bf w}+{\bf v}-{\bf v}={\bf w}\in W$ なので、商空間のイコールとして、
$[{\bf w}+{\bf v}]=[{\bf v}]$ と書かれることがわかります.
よって、$[{\bf w}]+[{\bf v}]=_{V/W}[{\bf w}+{\bf v}]=_{V/W}[{\bf v}]$
となるので、$[{\bf w}]$ もゼロ元の性質を満たしています.
よって、ゼロ元であることは、代表元の取り方によらず決まる、つまりwell-definedであることが
わかりました.
つまり、${\bf w}\in W$ のとき、$0_{V/W}=_{V/W}[0]=_{V/W}[{\bf w}]$
となります.
となるので、$[{\bf w}]$ もゼロ元の性質を満たしています.
よって、ゼロ元であることは、代表元の取り方によらず決まる、つまりwell-definedであることが
わかりました.
つまり、${\bf w}\in W$ のとき、$0_{V/W}=_{V/W}[0]=_{V/W}[{\bf w}]$
となります.
記号の濫用
$V$ でのゼロ元は $0_V$ のことであり、
$V/W$ でのゼロ元は $0_{V/W}$ のことであり、それ以外
には存在しないので、
これ以降ゼロ元はどこでも $0$ とかき、 イコールはどの場合も $=$ と書くことにします.
これを記号の濫用と言います.
どの場合のイコールなのか、($V$ なのか $V/W$ なのか)自分でよく見極めてください.
$V$ でのゼロ元は $0_V$ のことであり、
$V/W$ でのゼロ元は $0_{V/W}$ のことであり、それ以外
には存在しないので、
これ以降ゼロ元はどこでも $0$ とかき、 イコールはどの場合も $=$ と書くことにします.
これを記号の濫用と言います.
どの場合のイコールなのか、($V$ なのか $V/W$ なのか)自分でよく見極めてください.
商空間の和
$[{\bf v}_1]$ と $[{\bf v}_2]$ の和の定義は、
$[{\bf v}_1+{\bf v}_2]$
となります.
また、スカラー倍は $\lambda[{\bf v}]=[\lambda{\bf v}]$ と定義します.
商空間の基底を求めること
商空間の基底を求めるには、補空間の基底を求めることで行いました.
補空間の基底を求めれば、商空間の基底が誘導されるということを
証明してくれた人もおり、これは、有限次元のベクトル空間の場合には一般に成り立ちます.
つまり、
定理
${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_k$ がベクトル空間 $V$ の部分ベクトル空間 $W$ の補空間の基底であるとする.このとき、$[{\bf v}_1],\cdots, [{\bf v}_k]$ は $V/W$ の基底となる.
ここで、補空間は単なる補空間で構わなく、直交補空間である必要はありません.
例
$V={\mathbb C}^3$ とし、$W= \left\langle \begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}\right\rangle$
とします.このとき、$V/W$ の基底を求めます.
まず、$W$ の補空間の基底を求めます.
そのために、このベクトル $\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$ のベクトルの基底の延長をします.そのとき、標準基底を並べて簡約化をしましたが、このやり方に慣れてきたら、
$$\begin{pmatrix}1&1&0\\2&0&1\\-1&0&0\end{pmatrix}$$
という正方行列を作り、その行列式を計算します.
このとき、 この行列を $A$ とすると、$\det(A)=-\det\begin{pmatrix}1&1\\-1&0\end{pmatrix}=-1\neq 0$ ですので、
$$\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}$$
は $V$ の基底であることになります.
(これがどうして基底であるかについて)
行列 $A$ の行列式が 0 でないことから、その縦ベクトルは、一次独立である.
一次独立であるベクトルが、その次元分(つまり3つ)だけ存在したので、
その3つのベクトルは基底であることになります.
つまり、これは、部分ベクトル $W\subset V$ が $\dim W=\dim V$ ならば、$W=V$ であるということに基づきます.これは、背理法により簡単に証明可能です.
その3つのベクトルは基底であることになります.
つまり、これは、部分ベクトル $W\subset V$ が $\dim W=\dim V$ ならば、$W=V$ であるということに基づきます.これは、背理法により簡単に証明可能です.
話を元に戻します.
というわけで、
$$V=W\oplus \left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$$
となります.
よって、$\left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$
は $W$ の補空間ということになり、この2つのベクトルは補空間の基底であることが
わかりました.
次に、$V/W$ において、
$\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right], \left[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right]$
というわけで、
$$V=W\oplus \left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$$
となります.
よって、$\left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$
は $W$ の補空間ということになり、この2つのベクトルは補空間の基底であることが
わかりました.
次に、$V/W$ において、
$\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right], \left[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right]$
が $V/W$ の基底であることを示します.
上の定理に書いてあることはそいうことです.補空間の基底にカッコをつけたベクトルたちは、$V/W$ において、基底になるのです.
定理で書いていあることを実際確かめてみます.
ただし、ここでは、イコールやゼロ元がどこの空間の元でのイコールのなのか?
自分で考えてください.
自分で考えてください.
一次独立性
$c_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+c_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]=[0]$ とします.
商空間の和とスカラー倍の定義から、
商空間の和とスカラー倍の定義から、
$c_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+c_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]=\left[\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}\right]=[0]$ とします.
このとき、$V/W$ のイコールであるとは、$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}\in W$ となります.
よって、$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}=c_3\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$
となり、整理することで、
$\begin{pmatrix}1&0&-1\\0&1&-2\\0&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$
となります.この $3\times 3$ 行列の行列式の計算は、上三角行列なので、対角成分の積となり、$ \det=1$ となる.
よって、ゼロでないので、$c_1=c_2=c_3=0$ となります.特に、
$[{\bf v}]=\left[a_1\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_2\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_3\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}\right]=a_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+a_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+a_3\left[\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}\right]=a_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+a_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]$
よって、任意の $V/W$ の元 $[{\bf v}]$ が
このとき、$V/W$ のイコールであるとは、$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}\in W$ となります.
よって、$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}=c_3\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$
となり、整理することで、
$\begin{pmatrix}1&0&-1\\0&1&-2\\0&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$
となります.この $3\times 3$ 行列の行列式の計算は、上三角行列なので、対角成分の積となり、$ \det=1$ となる.
よって、ゼロでないので、$c_1=c_2=c_3=0$ となります.特に、
$\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right], \left[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right]$
は一次独立であることがわかりました.
$V/W$ の元を生成すること
$V/W$ の任意の元は、 ある ${\bf v}\in V$ の元を使って、$[{\bf v}]$ と書くことができます.
これは、$p:V\to V/W$ という写像が全射があることです.
$$p({\bf v})=[{\bf v}]$$
という写像です.この写像は全射準同型です.これを自然な準同型といいます.
自然な写像が線型であることは、
$p({\bf v}_1+{\bf v}_2)=[{\bf v}_1+{\bf v}_2]=[{\bf v}_1]+[{\bf v}_2]=p({\bf v}_1)+p({\bf v}_2)$
$p(\lambda{\bf v})=[\lambda{\bf v}]=\lambda[{\bf v}]=\lambda p({\bf v})$
となり、 わかります.
よって、任意の $V/W$ の元 $[{\bf v}]$ は、
${\bf v}=a_1\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_2\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_3\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$
と書けるので、この式全体にカッコをつけると、
よって、任意の $V/W$ の元 $[{\bf v}]$ が
$\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right], \left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]$
の一次結合で書くことができました.
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