2016年5月31日火曜日

線形代数続論演習(第5回)つづき

[場所1E103(金曜日3限)]


HPに行く.


エルミート内積空間

内積空間(計量空間)とは、計量 $(\cdot ,\cdot )$ の入ったベクトル空間のことを言います.

まず、(半線形)双線型性というのは、 $(\cdot ,\cdot ):V\times V\to {\mathbb C}$ が次のように2重に線型性を満たすものを言います.ここでは、内積を考えるため、第二成分への線型性は、反線形(つまり、スカラー倍が複素共役として形式の外に出るようにしたもの)となります.

(a) 第一成分の線型性

  • $({\bf v}_1,{\bf v}_2+{\bf v}_3)=({\bf v}_1,{\bf v}_2)+({\bf v}_1,{\bf v}_3)$
  • $(\lambda{\bf v},{\bf w})=\lambda({\bf v},{\bf w})$

(b) 第二成分の線型性

  • $({\bf v}_1+{\bf v}_2,{\bf v}_3)=({\bf v}_1,{\bf v}_3)+({\bf v}_2,{\bf v}_3)$
  • $({\bf v},\lambda{\bf w})=\bar{\lambda}({\bf v},{\bf w})$

計量とは、この双線型性と、

(c) 対称性
  • $({\bf v},{\bf w})=\overline{({\bf w},{\bf v})}$
と、

(d) 正定値性
  • ${\bf v}\neq 0$ ならば、$({\bf v},{\bf v})$  は正の実数
が成り立つものです.

このような (a,b,c,d)$ が成り立った空間をエルミート内積(計量)空間と言います.

実数をスカラーとする内積空間の場合は、このエルミート性は、普通の線型性(第二成分のスカラー倍が普通に外に出る.また、$({\bf v},{\bf w})=({\bf w},{\bf v})$ 成り立つ.)

$({\bf v},{\bf v})$ は 0 以上の実数ということになりますが、その平方根をノルムといい、
$||{\bf v}||$ と書きます.
正定値性は、ノルムを使って、

$$||{\bf v}||=0\text{ ならば }{\bf v}=0$$
を言います.

このようにすると、ベクトル同士の距離を測ることができるようになります.

つまり、${\bf v}$ と ${\bf w}$ に対して、
$d({\bf v},{\bf w})=||{\bf v}-{\bf w}||$
としてやると、距離の公理、
  1. $d({\bf v},{\bf w})=0$ ならば、${\bf v}={\bf w}$
  2. $||{\bf v}+{\bf w}||\le ||{\bf v}||+||{\bf w}||$ (三角不等式)
が成り立ちます.
つまり、距離の入ったベクトル空間と言えます.



もっとも単純な例は、${\mathbb C}^n$ 上の標準内積です.
$({\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n)$
$({\bf b}_1,\cdots,{\bf b}_n)$
に対して、
$({\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n, {\bf b}_1,\cdots,{\bf b}_n)=\sum_{i=1}^na_i\bar{b_i}$ 
とします.
この時、${\mathbb C}^n,(\cdot,\cdot))$ はエルミート内積空間となります.

ここで、上の定義で複素共役をとった意味がわかったと思います.


内積空間の標準化

実は、次の定理が成り立ちます.


定理
$(V,(\cdot,\cdot))$ を $n$ 次元複素エルミート内積空間とします.この時、
$V$ は、 ${\mathbb C}^n$ 上の標準エルミート内積空間に計量同型である.

一般に、2つの内積空間 $V,W$ が計量同型であるとはどういうことかというと、

$F:V\to W$ なる線型同型写像があって、
任意の ${\bf v},{\bf w}\in V$ に対して、

$(F({\bf v}),F({\bf w}))=({\bf v},{\bf w})$

が成り立つということです.

この定理は、あらゆる複素エルミート内積空間は、ある同型写像を使って全て同じと見なせるということです.ただし、ある同型写像を使って座標変換をしなければなりません.

次元が同じベクトル空間があれば、同型写像が作れることは、以前にやりましたが、計量こみでも同じように同型写像が作れることになるのです.

別の言葉で言えば、内積空間は計量同型を除いてただ一つしかない、ともなります.

実内積空間でも同じことが成り立ちます.

直交補空間の求めかた

直交補空間 $W'$ とは、部分ベクトル空間 $W\subset V$ の補空間であり、$W$ のベクトルとは全て直交している空間のことです.



例として、前回のブログ(リンク)で行ったものを用います.



$V={\mathbb C}^3$ とし、$W= \left\langle \begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}\right\rangle$
として、$W$ の直交補空間を求めてみます.

$$V=W\oplus \left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$$

だったので
$ \left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$

は$W$ の補空間となります.しかし、直交補空間ではありません.
補空間として直交するものを取るためには、$W$ の全ての元と直交する必要があります.
方針は、この補空間を直して、直交補空間にする方法です.

しかし、$W$ の基底の場合にやれば済むので、
それぞれの基底 $\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}$ を
$\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$ と直交させればよいことになります.

これには、シュミットの直交化を用います.ここでは、${\mathbb C}^3$ に標準内積を入れておきます.

$$\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}-\frac{(\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix})}{||\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}||^2}\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}-\frac{1}{6}\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}=\frac{1}{6}\begin{pmatrix}5\\-2\\1\end{pmatrix}$$

同じように、もう一つのベクトルについてもやると、

$$\frac{1}{3}\begin{pmatrix}-1\\1\\1\end{pmatrix}$$

となります.よって、

$W$ の直交補空間 $W^\perp$ は
$$\langle\begin{pmatrix}5\\-2\\1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}-1\\1\\1\end{pmatrix} \rangle$$

となります.このように、$W$ の成分をそれぞれ、引けばよいのですが、$W$ の基底が複数ある場合も成分として複数回成分を引けばよいことになります.

無限次元の場合

無限次元空間上に入れた内積空間はヒルベルト空間ということもあります.
無限次元ヒルベルト空間は、上のような距離の概念に加えて、完備化という操作が加わります.完備化というのは、コーシー列の収束先を全て付け加えて得られる空間のことです.

コーシー列というのは、
無限列 ${\bf v}_n\in V$ であり、任意の $\epsilon>0$ に対して、ある自然数 $N$ があって、$n,m\ge N$ なる任意の $n,m$ に対して、 $||{\bf v}_n-{\bf v}_m||<\epsilon$ を満たす.

ということです.

一年生の微積分の授業で出てきたと思います.

有限ベクトル空間の場合には、コーシー列というのは、必ずある値(もしくはベクトル)があって、その値(もしくはベクトル)に収束しましたが、無限次元空間の場合には、そのようなことは起こらないことがあります.

上の例において、${\mathbb R}^\infty$ にその収束先がないことがあります.
ちなみに、実無限次元ベクトル空間 ${\mathbb R}^\infty$ という場合は、
${\mathbb R}^\infty$ の中の有限個の成分を除いて全て $0$ でないといけません.
(勿論定義によりますが、今はこのような定義を用いて ${\mathbb R}^\infty$ を定めています.)

例えば、
$$(1,0,0,0,\cdots),(1,\frac{1}{2},0,0,\cdots),(1,\frac{1}{2},\frac{1}{3},0,\cdots)$$
なる数列は、コーシー列ですが、その収束先は、${\mathbb R}^\infty$ には入りません.
ここで、内積を $||(a_1,a_2,\cdots)||=\sqrt{a_1^2+a_2^2+\cdots}$
と定めます.
(実は、ノルムを定めておけば、一般の内積 $(\cdot,\cdot)$ も定義できます.)

この列がコーシー列であることは、省略します.また、その収束先は全ての成分で $0$ でない値のベクトルになることはすぐわかると思います.
つまり、${\mathbb R}^\infty$ をはみ出してしまいます.

しかし、このようにコーシー列であって収束先が存在しないとなると、いろいろと不便なことが多いです.関数解析や微分方程式などの観点から無限次元ベクトル空間を扱う場合などです.
また、面白いベクトルを全て排除していることにもなります.

例えば、多項式の空間 ${\mathbb R}[x]$ は、代数としては面白い対象ですが、この空間を自然に実数上の関数空間として埋め込んだ時、関数空間という広い世界では、もの足りない存在に落ちます.例えば、指数関数や対数関数、三角関数という自然な関数が含まれないからです.このような空間を含むようにするには、やはり、ベクトル空間を完備化して、そのような関数も仲間に入れる必要があります.

さらに、そのような関数たちの列の収束先たちも全て加えていくことで、
その中での任意のコーシー列が全て含まれるようにした空間が必要となるのです.
そのような付け加え全て行うことを完備化といい、
そのようにして作られた内積空間をヒルベルト空間と言います.



この完備化という操作は、無限次元空間ならではであり、有限次元ヒルベルト空間というのは、単なる有限次元内積空間ということと同じです.


多項式からなるベクトル空間からなるベクトル空間は、$[0,1]$ 区間上の関数空間の空間に内積を $(f(x),g(x))=\int_0^1f(x)g(x)dx$ 
として埋め込むことができます.その完備化には、指数関数や、対数関数、
などよく知られた関数も含まれますが、一般に、$[0,1]$ 上で、各点でいくらでも微分できる関数も全て含まれています.また、各点で微分できないような関数も含まれています.

できた空間は $L^2([0,1])$ と書きます.二乗可積分空間といいます.
これ以上の話は関数解析の話ですので、ここでやめておきます.

2016年5月29日日曜日

線形代数続論演習(第5回)

[場所1E103(金曜日3限)]


HPに行く.

今日は、
  • 商空間について
  • 商空間の基底を求める問題の復習
  • 直交補空間の求めかた
  • エルミート計量空間
についてやりました。
実際、計量空間についてはほとんどできませんでしたが、直交補空間の求め方については少しだけやりました.

商空間

商空間とは、ざっくり言えば、ベクトル空間 $V$ の部分ベクトル空間 $W$ の方向を潰してできるベクトル空間です.

$V/W$ の元を $[{\bf v}]$ という書き方をしますが、これは、${\bf v}$ を通る $W$ の方向を全てを表します.任意の ${\bf w}$ に対して、${\bf v}+{\bf w}$ なる元を全て $[{\bf v}]$ という元にするということです.
$V/W$ の一点は $[{\bf v}]$ です.$V$ では、${\bf v}$ を通る空間に対応します.
集合としては、 ${\bf v}+{\bf w}$ という形の元全て、つまり、${\bf v}+W$ となります.
そういうわけで、商空間の元は ${\bf v}+W$ と表すこともあります.

商空間のイコール

商空間において等しいことを $=_{V/W}$ と書くことにします.
商空間において、
$$[{\bf v}_1]=_{V/W}[{\bf v}_2]$$
であるということは、
$${\bf v}_1-{\bf v}_2\in W$$
であると定義されます.


商空間のゼロ元

ゼロ元とは、抽象ベクトル空間において、任意の元にゼロ元を足しても変わらないという性質があります.
つまり、
$${\bf x}+0_V=_{V}{\bf x}$$

ということです.ここで、$0_V$ と書いたのは、$V$ の中で、ゼロ元を意味しています.
イコールの下に $V$ が書かれているのは、等式が $V$ のものであるということです.

商空間のゼロ元もこのような性質を持つ元のことを指します.
それは、カッコを使った書き方だと、$[0]\in V/W$ となり、
集合としては、$0+W$ となる元で、つまり、$W$ と書いても同じものです
つまり、$0_{V/W}=[0]$ となるのです.
集合のような書き方とすると、$0_{V/W}=0+W$ となります.

この元が $V/W$ のゼロ元であることを示しましょう.

$V/W$ の任意の元は、ある ${\bf v}\in V$ に対して、$[{\bf v}]$ と書かれます.
なので、

$[0]+[{\bf v}]=_{V/W}[0+{\bf v}]=_{V/W}[{\bf v}]$

となります.また、ゼロ元は ${\bf w}\in W$ に対して、$[{\bf w}]$ と書かれますので
この場合もやってみると、

$[{\bf w}]+[{\bf v}]=_{V/W}[{\bf w}+{\bf v}]$

となり、${\bf w}+{\bf v}-{\bf v}={\bf w}\in W$ なので、商空間のイコールとして、

$[{\bf w}+{\bf v}]=[{\bf v}]$ と書かれることがわかります.

よって、$[{\bf w}]+[{\bf v}]=_{V/W}[{\bf w}+{\bf v}]=_{V/W}[{\bf v}]$

となるので、$[{\bf w}]$ もゼロ元の性質を満たしています.
よって、ゼロ元であることは、代表元の取り方によらず決まる、つまりwell-definedであることが
わかりました.

つまり、${\bf w}\in W$ のとき、$0_{V/W}=_{V/W}[0]=_{V/W}[{\bf w}]$
となります.

記号の濫用

$V$ でのゼロ元は $0_V$ のことであり、
$V/W$ でのゼロ元は $0_{V/W}$ のことであり、それ以外
には存在しないので、
これ以降ゼロ元はどこでも $0$ とかき、 イコールはどの場合も $=$ と書くことにします.
これを記号の濫用と言います.

どの場合のイコールなのか、($V$ なのか $V/W$ なのか)自分でよく見極めてください.


商空間の和

$[{\bf v}_1]$ と $[{\bf v}_2]$ の和の定義は、
$[{\bf v}_1+{\bf v}_2]$
となります.

また、スカラー倍は $\lambda[{\bf v}]=[\lambda{\bf v}]$ と定義します.



商空間の基底を求めること

商空間の基底を求めるには、補空間の基底を求めることで行いました.
補空間の基底を求めれば、商空間の基底が誘導されるということを
証明してくれた人もおり、これは、有限次元のベクトル空間の場合には一般に成り立ちます.
つまり、

定理
${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_k$ がベクトル空間 $V$ の部分ベクトル空間 $W$ の補空間の基底であるとする.このとき、$[{\bf v}_1],\cdots, [{\bf v}_k]$ は $V/W$ の基底となる.


ここで、補空間は単なる補空間で構わなく、直交補空間である必要はありません.



$V={\mathbb C}^3$ とし、$W= \left\langle \begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}\right\rangle$

とします.このとき、$V/W$ の基底を求めます.

まず、$W$ の補空間の基底を求めます.
そのために、このベクトル $\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$ のベクトルの基底の延長をします.そのとき、標準基底を並べて簡約化をしましたが、このやり方に慣れてきたら、

$$\begin{pmatrix}1&1&0\\2&0&1\\-1&0&0\end{pmatrix}$$

という正方行列を作り、その行列式を計算します.
このとき、 この行列を $A$ とすると、$\det(A)=-\det\begin{pmatrix}1&1\\-1&0\end{pmatrix}=-1\neq 0$ ですので、

$$\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}$$

は $V$ の基底であることになります.


(これがどうして基底であるかについて)
行列 $A$ の行列式が 0 でないことから、その縦ベクトルは、一次独立である.
一次独立であるベクトルが、その次元分(つまり3つ)だけ存在したので、
その3つのベクトルは基底であることになります.
つまり、これは、部分ベクトル $W\subset V$ が $\dim W=\dim V$ ならば、$W=V$ であるということに基づきます.これは、背理法により簡単に証明可能です.



話を元に戻します.

というわけで、
$$V=W\oplus \left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$$

となります.
よって、$\left\langle \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right\rangle$

は $W$ の補空間ということになり、この2つのベクトルは補空間の基底であることが
わかりました.


次に、$V/W$ において、
$\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right], \left[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right]$

が $V/W$ の基底であることを示します.
上の定理に書いてあることはそいうことです.補空間の基底にカッコをつけたベクトルたちは、$V/W$ において、基底になるのです.

定理で書いていあることを実際確かめてみます.
ただし、ここでは、イコールやゼロ元がどこの空間の元でのイコールのなのか?
自分で考えてください.

一次独立性

$c_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+c_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]=[0]$ とします.

商空間の和とスカラー倍の定義から、

$c_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+c_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]=\left[\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}\right]=[0]$ とします.

このとき、$V/W$ のイコールであるとは、$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}\in W$ となります.

よって、$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\0\end{pmatrix}=c_3\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$
となり、整理することで、
$\begin{pmatrix}1&0&-1\\0&1&-2\\0&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$

となります.この $3\times 3$ 行列の行列式の計算は、上三角行列なので、対角成分の積となり、$ \det=1$ となる.

よって、ゼロでないので、$c_1=c_2=c_3=0$ となります.特に、



$\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right], \left[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}\right]$

は一次独立であることがわかりました.


$V/W$ の元を生成すること

$V/W$ の任意の元は、 ある ${\bf v}\in V$ の元を使って、$[{\bf v}]$ と書くことができます.
これは、$p:V\to V/W$ という写像が全射があることです.
$$p({\bf v})=[{\bf v}]$$

という写像です.この写像は全射準同型です.これを自然な準同型といいます.

自然な写像が線型であることは、
$p({\bf v}_1+{\bf v}_2)=[{\bf v}_1+{\bf v}_2]=[{\bf v}_1]+[{\bf v}_2]=p({\bf v}_1)+p({\bf v}_2)$
$p(\lambda{\bf v})=[\lambda{\bf v}]=\lambda[{\bf v}]=\lambda p({\bf v})$

となり、 わかります.
よって、任意の $V/W$ の元 $[{\bf v}]$ は、

${\bf v}=a_1\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_2\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_3\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}$

と書けるので、この式全体にカッコをつけると、

$[{\bf v}]=\left[a_1\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_2\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+a_3\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}\right]=a_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+a_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+a_3\left[\begin{pmatrix}1\\2\\-1\end{pmatrix}\right]=a_1\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]+a_2\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]$

よって、任意の $V/W$ の元 $[{\bf v}]$ が

$\left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right], \left[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}\right]$

の一次結合で書くことができました.

2016年5月26日木曜日

微積分I演習(第5回)

[場所1E101(水曜日4限)]


今日は微分を使った次の話をしました.

  • ロピタルの定理
  • ランダウの記号
ロピタルの定理

ロピタルの定理は講義では扱わないようですので、演習で扱うことにしました.
不定形の極限の求め方です.

定理15(ロピタル)
関数 $f(x)$ と $g(x)$ が $x\to a$ で微分可能で、$0$ とする.$f(x),g(x)$ が $x=a$ で、微分可能で、$\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}$ が存在するとき、
$$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}$$
となる.

ロピタルの定理を使うと、いろいろなことがわかります.後でやったランダウの記号についてもその応用と考えられます.
定理15は2つの関数がどちらも $0$ に収束するような場合にのみ書いてありますが、
どちらも $\pm\infty$ に行く場合も同じような定理が存在します.

ロピタルの定理を使うとこんな感じになります.



$\lim_{x\to0}\frac{\sin^3x-x^2\sin x}{x^5}$

を求めるとき、分母分子の微分を計算して、その極限を計算します.
そうすると、

$\frac{-x^2\cos x -2x\sin x+3\cos x\sin^2x}{5x^4}$

となります.この形も $x\to 0$ で不定形となりますので、
もう一度、分母分子を微分すると、

$\frac{-4x\cos x-2\sin x+x^2\sin x+6\cos^2x\sin x-3\sin^3x}{20x^3}$

これも、不定形ですので、さらにさらに分母分子を微分をして、

$\frac{-6\cos x+x^2\cos x+6\cos^3x+6x\sin x-21\cos x\sin^2x}{60x^2}$

これも、やはり不定形ですね.

分母分子をまた微分して、

$\frac{8x\cos x+12\sin x-x^2\sin x-60\cos^2x\sin x+21\sin^3x}{120x}$

さらにやると、

$\frac{20\cos x-x^2\cos x-60\cos^3x-10x\sin x+183\cos x\sin^2x}{120}$

となります.このとき、極限は不定形でないので、ここで初めて $x\to 0$ とできるので、

$\lim_{x\to 0}\frac{20\cos x-x^2\cos x-6-\cos^3x-10x\sin x+183\cos x\sin^2x}{120}=-\frac{1}{3}$

となります.ゆえに、

$\lim_{x\to 0}\frac{\sin^3x-x^2\sin x}{x^5}=-\frac{1}{3}$

となりました.
このようにして、不定形の極限を求めるときには、分母分子を微分しながら、不定形でない形にまで持っていけばよいというのがロピタルの定理だとも言えます.


また、極限の性質を使うともう少し効率よくすることができます.

$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}\frac{\sin^2x-x^2}{x^4}$ の極限と同じなので、

$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=\lim_{x\to 0}\frac{\cos x}{1}=1$ となり、

$\frac{\sin^2-x^2}{x^4}$ の方にさらにロピタルの定理を用いて、

一回目 $\frac{2\sin x\cos x-2x}{4x^3}=\frac{\sin x\cos x-x}{2x^3}$
二回目 $\frac{\cos^2x-\sin^2x-1}{6x^2}$
三回目 $\frac{-2\cos x\sin x-2\sin x\cos x}{12x}=-\frac{\sin x}{x}\frac{\cos x}{3}$

となり、$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}$ は $1$ だから、三回目の極限は、
$\lim_{x\to 0}\left(-\frac{\sin x}{x}\frac{\cos x}{3}\right)=-\frac{1}{3}$

となります.

よって、$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}\frac{\sin^2x-x^2}{x^4}=-\frac{1}{3}$

となるのです.五回も微分しなくても、三回で済みました.


このように極限の計算において使える式は以下です.
上でも下の定理16の公式を使いました.

定理16
$\lim_{x\to a}f(x)$ と $\lim_{x\to a}g(x)$ が存在して、それぞれ、$\alpha,\beta$とするとき、以下が成り立つ.
ただし、$c,d$ は定数とする.
(1) $\lim_{x\to a}(cf(x)+dg(x))=c\alpha+d\beta$
(2) $\lim_{x\to a}f(x)g(x)=\alpha\beta$
(3) $\beta\neq 0$ ならば、$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{\alpha}{\beta}$

もちろん、定理 16 は、 $\epsilon-\delta$ 論法を使って証明可能です.


ランダウの記号

ランダウの記号について説明をしました.ランダウの記号については、
このブログ内(リンク)にも書いてあります.
ここでは、ランダウの記号のうちスモールオー $o$ の方だけやります.

未だランダウの記号どういうことなのかよくわからないという人も多いかと思います.
まず、定義を書いておくと、

定義17
$$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{(x-a)^n}=0$$
である事を、
$$f(x)=o((x-a)^n)\ \ (x\to a)$$
と定義します.

また、移項した形で、
$$\lim_{x\to a}\frac{f(x)-h(x)}{(x-a)^n}=0$$
である事を、
$$f(x)=h(x)+o((x-a)^n)\ \ (x\to a)$$
と定義します.

定義としては、これだけです.後ろの $(x\to a)$ が文脈からわかる場合は、省略する事があります. $x\to \infty$ を取ってもかまいません.

$o$ の中身の関数は、 べき関数 $(x-a)^n$ のような物以外に、$x\to a$ に行った時に、 $0$ に収束するような関数になっている場合もあります.
例えば、 $o(\log(x))\ \ (x\to 1)$ などでも良いですが、これは、よく考えればわかると思いますが、
$o((x-1))\ \ (x\to 1)$ と同じです.

たまに、 $o(1)$ という事もあり、これも文字通りの定義で言えば、
$f(x)=o(1)\ \ (x\to a)$ と書いたら、$f(x)$ が $x=a$ で連続であり、 $f(a)=0$ である事を表します.
($\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{1}=0$ だからです.)



ランダウの記号の意味(一つ目の使い方)


この記号の意味は、$f(x)$ という関数の $x\to a$ で $0$ になる速さが、
$o(\cdot)$ の中の関数、例えば、$o((x-a)^n)$ なら $(x-a)^n$ の関数よりも真に速いということを表しています.

それを確かめるために、ロピタルの定理が役に立ちます.



$f(x)=\sin^2 x$ の $x=0$ で $0$ になる速さを見てやると、

$\lim_{x\to 0}\frac{\sin^2x}{x}=\lim_{x\to 0}\frac{2\sin x\cos x}{1}=0$

となり、 $x$ より、 $0$ になるスピードが真に速いことがわかったので、

$\sin^2x=o(x)$ だということが分かりました.

もう一つ次数を上げてやると、

$\frac{\sin^2x}{x^2}\to 1$ となるので、 $\sin^2x$ は $o(x^2)$ とは書けないことが分かります.

よって、 $\sin^2x=o(x)$ はスモールオーを用いた最良の書き方となります.
(この際、最良かどうかはあまり問題ではありませんが。それに、$\sin^2x=o(x^{\frac{3}{2}})$ のような書き方もあります.)



ランダウの記号の意味(二つ目の使い方)

スモールオーの2番目の書き方ですが、関数 $f(x)$ を分解するという方法です.

ここで、$a=0$ と制限しましょう.また、$o$ の中の関数を $x^n$ とします.

つまり、$\frac{f(x)-h(x)}{x^n}\to 0$ であるとき、

$f(x)=h(x)+o(x^n)$ となります.

授業でも言った通り、これは、関数 $f(x)$ を2つのパートに分解していると思いましょう.つまり、

$f(x)$ のうち、 関数 $h(x)$ が $f(x)$ の主要項となります.

主要項の性質は、$h(x)$ が $f(x)$ とかなり近いということです.まず、 $f(0)=h(0)$ です.
さらに、$n\ge 1$ であれば、$f'(0)=h'(0)$ です.同じように、 $n$ が十分高いと、
$f$ の $x=0$ での微分係数と $h(x)$ の $x=0$ での微分係数はある程度一致します.

つまり、 $h(x)$ は $f(x)$ の近似関数といえるでしょう.

一方、 $o(x^n)$ の方は、それ以外の、かなり小さくなるパートです.
どれくらい小さいかというと、$x^n$ の $x=0$ の付近での小ささより小さいものだということです.

つまり、$f(x)=h(x)+k(x)$ と関数で書いたとき、 $k(x)$ は $\lim_{x\to 0}\frac{k(x)}{x^n}=0$ となるくらい小さい関数なのです.( $x=0$ の近くでは.)

$f(x)$ の成分の中では、 $h(x)$ に比べると、 $k(x)$ はゴミのようなものと言えます.
ただ、ゴミだからといって、捨ててはいけません.関数として成立するには、この成分がないと、 $x$ が大きくなったときに、無視できなくなるようになります.相対的に小さいというだけです.


ランダウの記号で注意するところ

上のように $k(x)$ とわざわざ書かずに、そんな関数ということで、まとめて、$o(x^n)$ と書いているところです.この辺に個性を無視したようなゴミと思わせる部分があるかもしれません.


例えば、ランダウの記号を使ったときに、

$\sin^2x=x^2-\frac{x^4}{3}+o(x^4)$

とかけますが、同じように、

$\tan^2x-x^4=x^2-\frac{x^4}{3}+o(x^4)$

ともかけます.右辺は同じですね.
だからと言って、

$$\sin^2x\neq \tan^2x-x^4$$

であることは明らかですね.つまり、$o(x^3)$ という書き方には、そのような性質を持つある関数が当てはまるだけなので、それが一致するとは限りません.
ただ、2つの関数は似通っている(近いと言うこと)とは言えます.

上の例なら、

$\sin^2x=x^2-\frac{x^4}{3}+\frac{2x^6}{45}+o(x^6)$

$\tan^2x-x^4=x^2-\frac{x^4}{3}+\frac{17x^6}{45}+o(x^6)$

となり、それぞれの、 $o(x^4)$ に含まれていた関数の主要項が
それぞれ、

$\frac{2x^6}{45}$

$\frac{17x^6}{45}$

と違いますね.

なので、小さくなる部分をさらに解析して調べることによって、その関数の違いがわかるようになるのです.

なので、関数全体を
 $$\mod\text{$o(x^n)$ に入るような関数全体}$$

として見ていると考えてよいのです.
線形代数で出てくる、商空間(一年生の後期と2年生で出てくる)の概念によっても理解することができます.

今後ランダウの記号を用いた演習を重ねますので、そのうち慣れていきましょう.

来週はいよいよ、テイラー展開です.

2016年5月23日月曜日

お風呂で2人の子供と考えた自乗の計算の話

この前、小学生の息子たちとのお風呂で、算数をしました。

下の息子(以下、弟)は2年生で、九九はまだ習っていません。
でも、掛け算はどんなものかは知っています。

上の息子(以下、兄)は4年生ですので九九はもう知っています。

私「自乗というのは、同じ数をかけることを言うんだよ。2×2 は 4 とか 3×3 は 9 とか。」

弟は2を2回足して4、3を3回足して9を確認して、

弟「ふーん。」

私「じゃあ、6の自乗は何になる?」

そしてすぐに、
弟「 36。」

私「あれ?早いなぁ。どうやってやった?」

弟「だって、18+18 をしたんだよ。」

なるほど。6を3回足したものが18だということはすぐにできたか、知っていたか。
最近は足し算の筆算も習ってきているので、頭の中で、くり上がりも込めて計算したようです。

私もすぐに答えられてしまっては面白くないので、

私「じゃあ、7の自乗はいくつ?8の場合は?」
と矢継ぎ早に聞いてみたところ、一生懸命計算していましたが、
すぐには答えられないようすでした。

そのうち兄もお風呂に入ってきて、

兄「8の自乗は簡単だよ。2×2=4, 4×2=8, 8×2=16, 16×2=32, 32×2=64 だから...」
といいました。
兄は 2のn乗の数を計算するのが好きで、$2^{25}$ くらいまでの数なら覚えていて、スラスラということができます.

でも、弟にそれを教えるのは大変そうでした。

私もこの話の終着点を気にしつつ、 $(a+1)^2=a^2+2a+1$ の公式を思い描きながら、

私「7の自乗から8の自乗を作ることができるよ。」

と言ってみました。

兄「7の自乗は49だから、36に13を足せばいいんだ。」

兄は他にも何か、わかったようで何か言っていましたが、私には理解できませんでした。

私「じゃあ、13ってなに?」

兄の方法もよくわからないので、私が思いついた(かつわかってもらえそうな)方法はこうです。
曇ったお風呂の鏡に四角形を書きながら、

私「2×2=4 は 2 が2つあるから 4 だよね。(2×2 の正方形を描く。)

もう一つ2を足したら、2×3=6 になるよね。(もう一列増やして、2×3 の四角形を描く。)

これは、3が2つあることになるね。

で、今度は、縦に一列増やすよ。(縦に一列増やして、$3\times 3=9$ の四角形を描く。)

6 に3を足したから、9になるよね。

これで、3の自乗ができたね。」

兄「あー、わかった。」

私「だから、3の自乗を計算するときは、2の自乗に2と3を足せばいいんだよ。」
私「36の答えも、5×5=25に $5+6$ をたして、25+11=36 にすれば計算できる。」

36の2つめの計算方法を教えました。

兄も、さっきの、49と36の差の13の秘密が6+7 だということがわかったようでした。
弟は自分で確かめないと気がすまないタチで、49のときも確かめていました。

私「これで、8の自乗も計算してごらん。」

というと、弟は、

弟「7のジジョウが49だから、7と8を足して.......64か。」

たまに、繰り上がりをするのを忘れる弟ですが、見事に計算することができました。


さらに、


私「これでわかったよね?どんな数の自乗も、一つ前の自乗がわかれば、足し算2つで計算できるね。」


私「11の自乗は?12の自乗は?」

100+10+11 をして、
兄「121 !」

121+11+12をして、

兄「144 !」

さらにさらに、

私「1から順番に奇数だけ足すと、いつでも自乗の数になるんだよ。」

私「1から9まで奇数だけ足すとなんになる?」

(私はすぐに問題を作って出題するのが好きなようです。)
だんだんと兄の独壇場になってきました。

兄「36 !」

私「じゃあ、1から101まで奇数だけ足すと何の自乗?」
これもすぐに、

兄「51 !」

適当に計算したのか、ちゃんとわかっていたのかよくわかりませんがそう答えました。

私「ええと、最後の奇数に1を足して2で割った数の自乗になるなのかな?」

これで、兄の頭に、新しい公式を宿らせることに成功しました。

弟も負けてはいません。

弟「29のジジョウもわかるよ、600ひく59っていくつ?」

29の自乗は30の自乗から順に引けばできるということがわかっていたようです。
でも、30× 30 を間違えてしまいました.

でも、兄は

兄「900から59をひけばいいんでしょ。」
弟「あ、そうか。900だった。」

兄らしく正しい答えを導こうとしており、一枚上手のようでした。

兄弟「29の自乗は841だ。」

兄、弟たちは、自乗の計算の仕方がわかったようでした。
あと、1から奇数だけ順に足すとどんな数になるのかも。

2016年5月20日金曜日

線形代数続論演習(第4回)

[場所1E103(金曜日3限)]


HPに行く.

今日は、

  • 同値関係と同値類
  • 商空間
を行いました。

関係、同値関係、商ベクトル空間について、(リンク)に書きました.そちらを見て下さい.
今日の A-4-1 はそちらのページに書きました.

A-4-2 について、
${\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3$ を一次独立であるとし、
$V=\langle {\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3\rangle$ とします.
$V/\langle {\bf v}_3\rangle$ から $\langle {\bf v}_1,{\bf v}_2\rangle$ への同型写像を作ります.

$$\varphi:  \langle {\bf v}_1,{\bf v}_2\rangle\to V/\langle {\bf v}_3\rangle$$
を $\varphi({\bf v}_1)=[{\bf v}_1]$, $\varphi({\bf v}_2)=[{\bf v}_2]$ とします.
基底の行き先を決めたので、線形写像が一つ定まります.
つまり、一般に、$\varphi(a{\bf v}_1+b{\bf v}_2)=a[{\bf v}_1]+b[{\bf v}_2]=[a{\bf v}_1+b{\bf v}_2]$ となります.

この写像 $\varphi$ が同型であることを示します.
線形であることは示されていますので、あとは全単射であることを示せば
よいことになります.

(単射性)
線形写像の場合、単射性は $\text{Ker}(\varphi)=0$ と同値です.
$\varphi(a{\bf v}_1+b{\bf v}_2)=a[{\bf v}_1]+b[{\bf v}_2]=[a{\bf v}_1+b{\bf v}_2]=[0]$
とします.(この等式は$V/\langle {\bf v}_3\rangle$ での等式です.)
最後の等式は
$a{\bf v}_1+b{\bf v}_2\in W$ と同値です.
よって、$a{\bf v}_1+b{\bf v}_2=c{\bf v}_3$ が成り立ちます.(この等式は$V$ でのベクトルとしての等式です.)

つまり、$a{\bf v}_1+b{\bf v}_2-c{\bf v}_3=0$ ですが、
一次独立性から、$a=b=c=0$ となります.つまり、$\text{Ker}(\varphi)=0$ であることがわかったので、$\varphi$ は単射となります.

(全射性)
$V\to V/\langle {\bf v}_3\rangle$ は全射ですから、
任意の ${\bf v}\in  V/\langle {\bf v}_3\rangle$ は、$[a{\bf v}_1+b{\bf  v}_2+c{\bf v}_3]$ とかけます.このベクトルは、${\bf v}_3$ の成分を忘れてもよいので、
$[a{\bf v}_1+b{\bf  v}_2+c{\bf v}_3]=[a{\bf v}_1+b{\bf  v}_2]$ となり、
これは、上で書いたように、
$\varphi(a{\bf v}_1+b{\bf  v}_2)=[a{\bf v}_1+b{\bf  v}_2]={\bf v}$ となり、全射性がいえました.$\Box$


商空間の基底

商空間 $V/W$ の基底を求める問題をやりました.
商空間の基底を求めるには、増岡先生の講義にもあったように、補空間を求める
ことが標準的です.

つまり、


定理
$W\subset V$ を部分空間とし、$W'$ を $W$ の補空間とする.
$W'$ の基底 ${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots, {\bf w}_k$ とすると、$[{\bf w}_1], [{\bf w}_2],\cdots, [{\bf w}_k]$ は $V/W$ の基底になる.



実際、$W$ を $\begin{cases}2x_1+3x_3=0\\x_1-x_2=0\end{cases}$ なる連立一次方程式によって定められる ${\mathbb C}^3$ の部分空間とします.

このとき、$W=\langle \begin{pmatrix}3\\3\\2\end{pmatrix}\rangle$ と解かれます.
つまり、$W$ の基底は $\begin{pmatrix}3\\3\\2\end{pmatrix}$ です.
ここで、補空間の基底がどうなるか?ということですが、基底の拡張のときに、それを求める方法は学習していました.

一番標準的なものを付け加えれば十分です.

$\begin{pmatrix}3\\3\\2\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}$

この中で、一次独立なものを探せばよいことになります.そのためには、

$\begin{pmatrix}3&1&0&0\\2&0&1&0\\2&0&0&1\end{pmatrix}$

を簡約化すればよいことになります.

やってみると、
$\begin{pmatrix}3&1&0&0\\2&0&1&0\\2&0&0&1\end{pmatrix}\to \begin{pmatrix}1&0&0&\frac{1}{2}\\0&1&0&-\frac{3}{2}\\0&0&1&-1\end{pmatrix}$

となり、最初の3つまでが一次独立なベクトルでそれが最大ということになります.

よって、

$\begin{pmatrix}3\\3\\2\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}$

が $V$ の全体の基底ということなので、拡張した分、

$\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}$

が補空間 $W'$ の基底ということになります.
よって、 $[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}],[ \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]$ が $V/W$ の基底ということになります.

実際、これが基底であることを確かめます.

$a[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}]+b[ \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]=[0]$

とします.そうすると、
$[a\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+b \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]=[\begin{pmatrix}a\\b\\0\end{pmatrix}]=[0]$

となり、これは、$\begin{pmatrix}a\\b\\0\end{pmatrix}\in W$ であることと同値です.

つまり、$\begin{pmatrix}a\\b\\0\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}3\\3\\2\end{pmatrix}$
がいえるので、これは方程式
$$\begin{pmatrix}1&0&-3\\0&1&-3\\0&0&-2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}$$
と一致しますが、この左辺の行列は正則ですので、逆行列をかけてやって、$(a,b,c)=(0,0,0)$ がいえます.

よって、

 $[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}],[ \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]$ が 一次独立であることがわかりました.

また、$V/W$ の任意の元がこれらの元の一次結合でかけるかどうかということは、$V/W$ の任意の元は、$V$ の基底を使って、

$[a\begin{pmatrix}3\\3\\2\end{pmatrix}+b\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+c\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]$
と書き表され、これは、$V/W$ において、

$[b\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+c\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]=[b\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}]+c[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]$

となります.
よって、任意の $V/W$ の元は
 $[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}],[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]$ の一次結合で表されることがわかりました.

よって、

 $[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}],[\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}]$

が $V/W$ の基底であることがわかりました.
これは、上の定理を確認したことになります.

宿題について

宿題-C-4-2についてですが、$V/W$ の基底として、$[{\bf v}_{k+1}],\cdots,[{\bf v}_n]$
がとれることを示してください.

その基底による、$f$ の表現行列が $C$ になることを示してください.

という問題のつもりです.


宿題-C-4-3

ですが、$V={\mathbb R}[x]$ の扱いに慣れていない人がいるかもしれません.
このベクトル空間は無限次元(有限生成ではない)であり、多項式の空間です.
$V$ の全ての元は、ある $n\in{\mathbb Z}_{\ge 0}$ が存在して、
$$a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots+a_nx^n$$
と書き表されます.
無限和
$$a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots$$
はこの $V$ の中には含まれません.

係数をとることで、数列の集合と対応はありますが、対応するのは、数列全体ではなく、その中の部分空間

$$\{(a_n)\in s({\mathbb R})|a_n=0\text{ 十分大きい任意の $n$ に対して}\}$$

です.無限和を許してしまうと、$e^x$ のような式も $V$ に入ってしまって、
これは明らかに多項式ではありません.

また、$(x^2+1)V$ という書き方も新しい書き方ですが、
これは、$V$ の部分ベクトル空間であり、ある多項式 $f(x)\in V$ を使って、

$$(x^2+1)f(x)$$
と表される多項式全体のことです.
つまり、多項式のうち、$x^2+1$ を因数としてもつような多項式全体の空間ということになります.

また、自然に同型写像を構成することで、最後の式も満たすようにすることができるはずです.



2016年5月15日日曜日

関係、同値関係、同値類、商ベクトル空間

ここでは、関係や、同値関係、同値類、商ベクトル空間について説明します.

同値関係

集合 $S$ に関係をいれるというのは、直積集合 $S\times S=\{(a,b)|a,b\in S\}$ の部分集合 $A$ を決めることです.つまり、$a$ と $b$ に関係があるということを、$(a,b)\in A$ と定義しておくのです.

このとき、$S$ の関係が同値関係であるということを、次の条件を満たすこととして定義します.

$a,b,c\in S$に対して、
(1) $(a,a)\in A$ である.(反射律)
(2) $(a,b)\in A$ ならば $(b,a)\in A$ である.(対称律)
(3) $(a,b)\in A$ かつ $(b,c)\in A$ ならば、$(a,c)\in A$ である.(推移律)
また、$A\subset S$が同値関係の条件を満たすとき、$(a,b)\in A$ であることを $a\sim b$ とかくことにします.
また、集合 $S$ に上のような $A$ を決めることを、$S$に同値関係を入れるといいます.

$C(x):=\{y\in S|x\sim y\}$ として、$S$ の $x$ を含むクラス(同値類)といいます.

同値類の集合を
$S/\sim:=\{C(x)|x\in S\}$ と書きます.

集合 $S$ 上に同値関係が入ったとき、大事なことは、$S$ のどの元もただ一つのクラスに入るということです.

つまり、小学校に入学した小学生は必ずどこかのクラスに一つだけ入るのであって、ある子供が1組と2組の両方に属することはありません.

数学の言葉でいえば、
$$S=\coprod_{x\in S/\sim}C(x)$$
となります.$\coprod$ という記号は $S$ たちが、$C(x)$ と $C(y)$ の互いに交わらない集合たちの和集合であることを意味しています.

条件で書けば、$C(x),C(y) \in S/\sim$ に対して、$C(x)\neq C(y)$ ならば、$C(x)\cap C(y)= \emptyset$ となります.

同値類の集合がここで一番理解しにくいものだと思いますが、要するに、
クラスの集合と思えばよいでしょう.

つまり、ある小学校の一年生は3クラスまでなら、$\{1,2,3\}$ が同値類の集合です.
ある小学校の小学生一年生全体 $S$ にクラスが同じという同値関係を入れることで、その同値類集合というクラス全体からなる有限集合が決まります.

このとき、写像 $S\to S/\sim$ を $x\in S$ に対して、$x$ が属するクラスを対応させるもの.つまり、
$$S\ni x\mapsto C(x)\in  S/\sim$$
を定義することができます.これを自然な写像といいます.

また、$C(x)$ に対して選んだ $x$ のことを集合 $C(x)$ の代表元といいます.
代表という言葉が表すとおり、クラスの中から代表を選んだことになります.
クラスのでいえば学級委員のようなものでしょうか?




同値関係や同値類の例として最初に出てくるものがベクトル空間の商空間です.

ベクトル空間$V$とその部分空間$W\subset V$に関して$V$に同値関係をいれます.
${\bf v},{\bf w}\in V$に対して、
$${\bf v}\sim {\bf w}\Leftrightarrow {\bf v}-{\bf w}\in W \ \ \ \ (\ast)$$
と定義する.
この関係によって構成される同値類全体を$V/W$とかくことで、$V/W$ は自然にベクトル空間となります.このベクトル空間のことを商空間といいます.商空間については(リンク)にも書きました.

ベクトル空間の商空間が同値関係に基づいていることの証明

この $(\ast)$ の関係が本当に同値関係であることの確認をします.

これは、上記の (1),(2),(3) を満たすことを示します.
$V$ を同値関係を入れるベクトル空間とし、商空間の関係に相当する集合を $A=\{({\bf v},{\bf w})\in V\times V|{\bf v}-{\bf w}\in W\}$ とします

(1) ${\bf v}-{\bf v}=0\in W$ なので、$({\bf v},{\bf v})\in A$ を意味します.
(2) ${\bf v}-{\bf w}\in W$ ならば、$W$ が $V$ の部分ベクトル空間であるから、$-1$ 倍も$W$ に入るので、$-{\bf v}+{\bf w}\in W$ がいえる.これは、$({\bf w},{\bf v})\in A$ を意味します.
(3) ${\bf v}-{\bf w}\in W$ かつ、${\bf w}-{\bf u}\in W$ ならば、$W$ は$V$ の部分集合だから、${\bf v}-{\bf w}+{\bf w}-{\bf u}={\bf v}-{\bf u}\in W$ がいえて、これは、$({\bf v},{\bf u})\in A$ を意味します.

よって、商空間が定義する関係は確かに同値関係であることがわかりました.


商空間の表し方

(リンク)でも書きましたが、$V/W$ の元の書き方は2種類ありました。

$${\bf v}+W$$
として同値類の集合をそのまま書く方法と
$$[{\bf v}]$$
と代表元だけ記述する方法です.
${\bf v}+W$ は $\{{\bf v}+{\bf w}|{\bf w}\in W\}$ のことを意味しますので、同一視される(同じ同値類に属するベクトル全体の)集合そのものを書いています.

つまり、最初の方は同値類が集合であることがイメージしやすくなっています.

しかし、この方法に頼ると、同値類上での計算がややこしくなります.例えば、
${\bf v}+W$ と ${\bf w}+W$ の足し算は、
${\bf v}+W+{\bf w}+W$ ですが、2つの項の足し算なのに、項がやたらと多いですね.
そもそも
$({\bf v}+W)+({\bf w}+W)$
と書いたほうがよいものです.$+$ の意味がそれぞれ異なります.

この結果は、もちろん ${\bf v}+{\bf w}+2W$ ではなく、
$$({\bf v}+W)+({\bf w}+W)={\bf v}+{\bf w}+W$$
であって、最初の $2W$ は全く意味がありません.

なので、${\bf v}+W$ のように集合そのままで書くのではなく、ここでイッパツ、抽象化の階段を上ってください.

同値類の元を集合だと思うのではなく、一つのとしてみるのです.
それが、$[{\bf v}]$ という記述法です.これは、同じ ${\bf v}+W$ のことを表しています.

この記法は、集合という面影がなくなり、一つの点と思えます.ただし、その代償もあって、$[{\bf v}]$ の表し方が一意ではなくなります.

${\bf v}-{\bf w}\in W$ である ${\bf w}$ なら全て、同じ点であり、$[{\bf v}]=[{\bf w}]$ となります.もちろんこのイコールは $V/W$ の点でのイコールであり、$V$ でのイコールではありません.

こうすると、ベクトルの足し算も $[{\bf v}]+[{\bf w}]=[{\bf v}+{\bf w}]$ となり、なんだかすっきりします.スカラー倍も
$$\alpha[{\bf v}]=[\alpha\cdot {\bf v}]$$
となります.
 

2016年5月12日木曜日

微積分I演習(第4回)

[場所1E101(水曜日4限)]
第4回の授業です.来週(5/18)は休講にしますので気をつけてください.
今日は、
  • $\epsilon-\delta$ 論法の続きと
  • 微分の定義
  • 対数微分
  • 交代級数
でした.
$\epsilon-\delta$ 論法(つづき)

前回は $\epsilon-N$ 論法の演習はしましたが、$\epsilon-\delta$ 論法の演習までする時間がありませんでしたので、その続きから行いました.

$\epsilon-\delta$ 論法を使った関数の連続を示しました.
今日は多項式について証明して見せました.
以前のブログ(リンク)にも似たような証明を書きましたのでそれはここでは省略します.


ここでは、授業中にやろうとしていた、指数関数の連続性について書きます.

$e^x$ の $x=0$ での連続性
について、ここで証明します.

任意の正の実数 $\epsilon\ge1$ とします.
このとき、$0<\delta<\log(1+\epsilon)$ なる $\delta$ に対して、

$|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$e^x<e^\delta<1+\epsilon$
$e^x>e^{-\delta}>\frac{1}{1+\epsilon}>1-\epsilon$
となり、$|e^x-1|<\epsilon$ が成り立つ.

$0<\epsilon<1$ とします.
このとき、$0<\delta<\min\{\log(1+\epsilon),\log\frac{1}{1-\epsilon}\}$ なる $\delta$ に対して、

$|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$e^x<e^\delta<1+\epsilon$
$e^x>e^{-\delta}>1-\epsilon$
となり、$|e^x-1|<\epsilon$ が成り立つ.

よって、どちらの場合も、$\epsilon-\delta$ 論法により、$e^x$ が $0$ で連続であることがわかります.

そのほかの点での連続性は、スカラー倍などで結局 $x=0$ の場合に帰着すると思います.
今日発表が残った人は、その辺をやってください.

微分可能の定義

連続な関数がいつでも微分できるとは限りません.
微分可能であることの定義は以下のようになります.
今日は最後、この定義を述べて少し計算して終わってしまいました.
 

定義12(微分可能I)
実数上で定義された関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で微分可能であるとは、
$$\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}$$
の極限が存在するときに言う.
極限が存在するときとは、この極限が収束することをいいます.
また、実数全体で定義されていなくても、$a$ が $f$ の定義域に含まれており、その十分近くの点も含まれていれば(例えば、区間 $[0,1]$ などの任意の点なら)大丈夫です.

この値のことを $f'(a)$ とかいて、微分係数といいます.
また、各点 $x=a$ において微分係数をとったものを導関数といいます.

微分は、定義から、平均変化量の極限だから、その点での接線の傾きを表すということは直感的に分かると思いますが、実は、傾きを計算するということは関数のその点での一次近似を与えていると言い換えることができます.

つまり、関数が微分可能であるとは、次のように言い換えることができます.

定義13(微分可能性II)
関数 $y=f(x)$ が $x=a$ で微分可能であるとは、ある実数 $A$ と関数 $\varphi(x)$ が存在して、
$$f(x)=f(a)+A(x-a)+\varphi(x)$$
と書けることである.ここで、$\varphi(x)$ は、$\lim_{x\to a}\frac{\varphi(x)}{x-a}=0$ を満たすある関数.

一次近似であることの意味は再来週以降となります.また、再来週は微分からはじめますので、今日のプリントの問題を解いた人は授業が始まる前に黒板に書いておいてください.


 対数微分法

対数微分法とは、対数をとってから微分をする方法で、微分法ではよく使われます.
要するに、
$$(\log f(x))'=\frac{f'(x)}{f(x)}$$
となります.

よって、$f(x)$ を掛けることで、

公式14(対数微分法)
$$f'(x)=f(x)(\log f(x))'$$

となります.
今日は $f(x)=x^x$ を対数微分法を用いて計算しました.計算結果は

$$(x^x)'=x^x(x\log x)'=x^x(\log x+1)$$
となります.

交代級数

交代級数とは、正項級数 $a_n$ に対して、
$$a_1-a_2+a_3-a_4+a_5+\cdots$$
となる級数のことですが、ここでは、さらに、次の性質をもつとします.

$a_n$ は単調減少で、$a_n\to 0$に収束する.

このとき、この交代級数は必ず、収束します.その説明は授業でしたとおりですので
ここではしません.あの説明は黒板かホワイトボードでするのが一番だと思います.

つまり、$a_n\to 0$ であれば、$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が収束しなくてもかまいません.
実際、収束しない級数 $\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$ を使っています.
(レポートをみると、この級数が収束すると勘違いしている人がいました。)
少なくとも、数学科に入って一年微積分を学習したときに、証明込みでこの級数が発散することは常識になるようにしてください.

このような級数が収束することはよいのですが、$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$ が発散することは少し面白い(というか驚くべき)性質につながります.それが、宿題4-4です.
授業中には話しました.

まず、交代級数の符合を全てそろえた級数
$$\sum_{n=1}^\infty a_n $$
が収束する場合、この交代級数は絶対収束するといいいます.
そうでない場合、条件収束するといいます.

注意すべきことは、
絶対収束する場合は、実は、交代級数をいくら並び替えても収束値は変わりませんが、条件収束する場合は、変わる場合があります.

もちろん有限個替えただけでは変わりませんが、無限個を一気に替えた場合、値が変わることがあります.

上の例では、

$$1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdots\hspace{1cm}(\ast)$$

は収束して $\log 2$ となります.(この $\log 2$ の値の計算の仕方も前期のうちにどこかでできるようになるはずです.)
しかし、($\ast$) の和の順番を無限個一気に並び替えたとき、例えば、

$$\left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots \right)-\left(\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\cdots \right)$$
は収束しません.正確には不定形かもしれませんが、全部の和を最初から計算して行っても途中で発散してしまいます.

自然数の逆数の和は収束しませんが、偶数の逆数の和も収束しませんし、奇数の逆数の和も収束しません.とくに 

$$1+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots>\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\cdots $$
なる不等式を使えばすぐわかると思います.

実は、宿題4-4が主張しているように、実数のどんな値にも収束させられるように並び替えることができます.これはちょっとショッキングなことではないでしょうか?


最後に、上の数列 ($\ast$) を並び替えて、無限大に発散させるような級数を作ってみます.証明はしません.無限大に収束するかどうかは自分で考えてください.

$$\left(1+\frac{1}{3}-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\frac{1}{9}+\frac{1}{11}-\frac{1}{4}\right)+\left(\frac{1}{13}+\frac{1}{15}+\frac{1}{17}+\frac{1}{19}+\frac{1}{21}+\frac{1}{23}-\frac{1}{6}\right)+\cdots$$
です.
この括弧は規則を分かり易くするためにつけたものです.

つまり、
$$\sum_{
n=1}^\infty \left(\sum_{k=n(n-1)}^{n(n+1)-1}\frac{1}{2k+1}-\frac{1}{2n}\right)$$
という発散級数です.
この発散級数は大分ゆっくり発散するようで、100項目くらいまで足してもまだ3くらいにしかなりません.

2016年5月7日土曜日

線形代数続論演習(第3回)

[場所1E103(金曜日3限)]


HPに行く.

今日は、

  • $f$-不変部分空間の説明.
  • $f$-不変部分空間は商空間上に誘導する線形変換.
  • 基底の延長の仕方(復習)
  • 同型写像の作り方
などをやりました.

$f$-不変部分空間

$f:V\to V$ を線形変換とします.$W\subset V$ を部分空間とします.このとき、$f$ を $W$ に制限して得られる線形写像を同じ $f$ で書くことにすると、$f:W\to V$ が得られるが、


像 $f(W)$ が再び、$W$ の部分空間であるとき、$W$ を $f$-不変部分空間といいます.

つまり、任意の ${\bf w}\in W$ に対して、$f({\bf w})\in W$ が成り立つような部分空間です.

$W$ を $f$-不変部分空間であるとします.$W$ の基底を $\{{\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_k\}$ とし、その延長として、$V$ の基底を
$$\{{\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_k,{\bf v}_{k+1},\cdots,{\bf v}_n\}$$
ととったとします.このとき、この基底に関する $f$ の表現行列を $A$ とすると、
$$A=\begin{pmatrix}A_1&B\\O&C\end{pmatrix}$$
となります.$A_1$ は $k$ 次正方行列です.また、左下の行列は零行列になります.

これは、以下のようにしてわかります.$W$ が$f$-不変部分空間であるので、
$$(f({\bf w}_1),\cdots, f({\bf w}_k))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_k)A_1$$
です.また、


$$(f({\bf w}_1),\cdots, f({\bf w}_k))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_k,{\bf v}_{k+1},\cdots,{\bf v}_n)\begin{pmatrix}A_1\\O\end{pmatrix}$$

が成り立ちます.また、

$$(f({\bf v}_{k+1}),\cdots, f({\bf v}_n))=({\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_k,{\bf v}_{k+1},\cdots,{\bf v}_n)\begin{pmatrix}B\\C\end{pmatrix}$$
としておけば、この2つのならべることで、上のような表現行列となります.

逆に、上のように $\begin{pmatrix}A_1&B\\O&C\end{pmatrix}$ がなりたつとすると、基底の前半部分により、不変部分空間が作れていることになります.

$f$-不変部分空間による商空間上に誘導する線形変換

授業中は少しややこしい話をしてしまいましたが、ここでまとめておきます.
主張は以下です.


定理
$f:V\to V$ を線形変換とします.このとき、$W$ が $f$-不変部分空間とします.
このとき、$f$ が $V/W$ 上の線形変換に誘導される為の必要十分条件は、$W$ が $f$-不変部分空間であることである.


$f$ が $V/W$ 上の線形変換に誘導されるとは、$V/W$ 上の線形変換 $\tilde{f}$ が存在して、
$$\tilde{f}([v])=[f(v)]$$
となることです.ここで、$[v]$ などの商空間の書き方は、リンク1リンク2を見てください.
$[v]$ と書くことで、$v$ が代表する同値類と考えるわけです.ただ、$V/W$ の元 $[v]$ の表し方は一通りではなく、$[v]=[w]$ のように別の元 $w$ をもって同じ元を表すことがあります.ただし、その2元の間には、$v-w\in W$ が成り立ちます.
つまり、
$$[v]=[w]\Leftrightarrow v-w\in W\hspace{2cm}(\ast)$$
です.これは商ベクトル空間 $V/W$ の定義です.

誘導することができる為にはというのは、$\tilde{f}$ が定義できる為にはという意味です.
つまり、Well-definedかということで、それを確かめる方法は、ある元の写した先がただ一通りか?ということです.つまり、多くの場所に写ることができるようになっていないか?ということです.これは一言で言えば、写像になっているかということです.

写像 $\mathcal{F}:V\to W$ とは、集合 $V$ の全ての元をただ一つの $W$ の元に写す対応のことです.どの元もただ一つの $W$ の元に写すということが写像の特徴です.

上のように自然に定めているのだからただ一つの元に移っているのは当たり前だと思っては間違いです.自然性 $\tilde{f}([v])=[f(v)]$ は、$x=[v]$ という $V/W$ の元の表し方に依存した書き方をしているからです.表し方、$[v]$ のように、$x$ をある代表元 $v$ を選び、その $v$ 使っているので、もしかしたら、表し方を変えたら違う元に写る可能性も否定はできません.


なので、別の表し方を使っても、やはり同じところに写ることを言わないといけません.これを Well-defined性といいます.証明をしてみると、

$\forall x$ に対して $x=[v]=[w]$ のように、同じ元 $x$ を違うあらわしかたをしておきます.


このとき、自然性から、$\tilde{f}([v])=[f(v)]$ となります.同じように、$\tilde{f}([w])=[f(w)]$ となります.両者は同じ元なので、$[f(v)]=[f(w)]$ がなりたたないといけません.

しかし、$V/W$ として、$[f(v)]=[f(w)]$ が成り立つ為には、上の $(\ast)$ のとおり、$f(v)-f(w)\in W$ が成り立っていなければなりません.

このとき、$W$ は $f$-不変部分空間であることを使います.いま、$[v]=[w]$ であったのだから、$v-w\in W$ が成り立ちます.よって、$f$-不変性から、$f(v-w)=f(v)-f(w)\in W$ が成り立ちます.よって示されました.


また、$\tilde{f}$ が線形写像であるから、$V/W$ の零元が零元に写るという性質を示せばよく、その為に $W$ が $f$-不変部分空間であることからわかるとしてもよいでしょう.

逆($V/W$ 上の線形変換ならば $W$ は $f$-不変部分空間である)も示す必要がありますが、ここでは省略.


基底の延長(拡張)の仕方(復習)

部分ベクトル空間 $W\subset V$ の基底 ${\bf w}_1,\cdots,{\bf w}_k$ を延長(拡張)して、$V$ の基底を作ります.これは、一次独立なベクトルを延長(拡張)して基底を作ることは、(リンク(一昨年))や(リンク(去年))で行いました.これは補空間の基底を作っていることと同じです.
そこのリンクで計算の仕方は上げていると思うので、ここでは抽象的な話だけにします.

つまり

  • 一次独立なベクトル ${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_k$ があり、そのベクトルを延長して $V$ の基底を作ること.
  • 部分ベクトル空間 $W\subset V$ の補空間 $W'$ の基底を求めること.
  • 部分ベクトル空間 $W\subset V$ の基底 ${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots,{\bf w}_k$ を延長して $V$ の基底を作ること.
なる問題は全て同じ答えでまかなえます.
$W'$ が $W\subset V$ の補空間であるとは、$V=W\oplus W'$ なる $V$ の部分空間のことです.

数ベクトル空間の場合にやります.そうでない場合も、$V$ の適当な基底を用意することで、同じように補空間を求めることができます.

$n\times (n+k)$ 行列として、$({\bf w}_1,\cdots {\bf w}_k,{\bf e}_1,\cdots, {\bf e}_n)$
を考えます.${\bf e}_1,\cdots, {\bf e}_n$ として、とりあえず、標準基底 ${\bf e}_1,\cdots,{\bf e}_n$ を持ってきます.基底であればなんでも構いません.

このとき、この $n\times (n+k)$ 行列を眺めていてもどこに一次独立なベクトルがあるかわかりません.

ですので、この行列を簡約化します.そうすると、

$({\bf w}_1,\cdots, {\bf w}_k,{\bf e}_1,\cdots, {\bf e}_n)\to \cdots\to ({\bf e}_1,\cdots ,{\bf e}_k,{\bf u}_1,\cdots {\bf u}_{n})$

となります.これはどうしてかというと、${\bf w}_1,\cdots, {\bf w}_k$ は一次独立であり、(行の)基本変形をしてもこの関係は変わらないからです.つまり、簡約化した後、一次独立になっていないといけませんので、特に標準基底 ${\bf e}_1,\cdots, {\bf e}_k$ が最初の $k$ 列までに出てこないといけません.

後半の ${\bf u}_1,\cdots {\bf u}_{n}$ は、一次独立ではありません.
しかし、簡約化していることと、この $n\times (n+k)$ 行列の rank は $n$ であることから、この 縦ベクトルの中に、${\bf e}_{k+1},{\bf e}_{k+2},\cdots, {\bf e}_n$ も含まれています.
それを順番に ${\bf u}_{n_1},\cdots, {\bf u}_{n_{n-k}}$ とします.


このとき、線形関係式の同値性から、${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots, {\bf w}_k$ に延長(拡張)して
${\bf w}_1,{\bf w}_2,\cdots, {\bf w}_k, {\bf e}_{n_1},{\bf e}_{n_2},\cdots, {\bf e}_{n_{n-k}}$
が拡張して $V$ の基底が得られたということになります.

$W\subset V$ の補空間 $W'$ の基底は、${\bf e}_{n_1},{\bf e}_{n_2},\cdots, {\bf e}_{n_{n-k}}$ ということになります.


同型写像の作り方

まず、線形写像の作り方です.その前に写像 $f:V\to W$ の作り方ですが、それは、
任意の ${\bf v}\in V$ に対して、$f({\bf v})$ を決めればよいことになります.
しかし、$V$ がベクトル空間である場合、${\bf v}$ は
${\bf v}=a_1{\bf v}_1+\cdots +a_n{\bf v}_n$ と書けます.
さらに、$f$ が線形写像である場合は、$f({\bf v})=a_1f({\bf v}_1)+\cdots+a_nf({\bf v})$
となり、これは基底の行き先
$$f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n)$$
を決めておけば、${\bf v}$ の値も自動的に決まるということを意味しています.

つまり、基底の行き先を一つ一つ決めておけば、線形写像が決まったことになります.

また、線形同型写像を作る方法は、$f$ が全単射にしておくことが条件です.

この条件を言い換えれば、$f$ によって移した先の $f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n)$が再び基底になっていることです.つまり、


定理
$f:V\to W$ が同型写像であることの必要十分条件は、基底 ${\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n$ に対して、その像 $f({\bf v}_1),\cdots, f({\bf v}_n)$ も基底になることである.


が成り立ちます.
(証明)
$f$ が単射であることは、$\text{Ker}(f)$ が $0$ ベクトル空間であることが必要十分.
$a_1f({\bf v}_1)+\cdots+a_n f({\bf v}_n)=0$ ならば、$a_1{\bf v}_1+\cdots +a_n{\bf v}_n=0$ でなければなりませんが、これらのベクトル ${\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n$ が基底であることから、この条件は $a_1=a_2=\cdots=a_n=0$ と同値です.
つまり、$f$ の単射性と $f({\bf v}_1), \cdots, f({\bf v}_n)$ の一次独立性は同値がわかりました.

同じように、 $f$ が全射であるなら、任意の ${\bf w}\in W$ に対して、${\bf w}=f(a_1{\bf v}_1+\cdots+a_n {\bf v}_n)=a_1f({\bf v}_1)+\cdots+a_n f({\bf v}_n)$ が成り立つことになります.これは基底の2番目の性質(任意のベクトルがそれらの一次結合でかける)そのものということになります.よってこの性質は全射性と同値となります.

2016年5月6日金曜日

微積分I演習(第3回)つづき

[場所1E101(水曜日4限)]


微積分I演習(第3回)(リンク)の続きです.


宿題について解説です.3-1と3-3は問題としておかしかったので直しました.

3-1
(1)
問題文において、$k$ が $n$ になっていましたので修正しました.
$N$ 項目までをまとめておいて、あとは、$\epsilon-N$ 論法を使ってください.

答えには、$\epsilon-N$ 論法を使ってください.

(2)

数列 $a_n$ が(どこかの値に)収束することを以下のように定義します.

定義10(数列 $a_n$ が(どこかの値に)収束すること(コーシー列であること))
任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $N$ が存在して、$n,m>N$ なる任意の自然数 $n,m$ に対して、
$$|a_n-a_m|<\epsilon$$
がなりたつ.

 上のような性質をもつ数列のことをコーシー列といいます.また、実は、コーシー列は、実数上ではどこかの値に収束することが知られているので、この定義10は意味としては、どこかの値に収束する定義だと思っても差し支えありません.

数列 $a_n$ がどこかの値に収束する(定義10) $\Rightarrow$ ある $a$ があって $a_n$ は $a$ に収束する.

つまり、

数列 $a_n$ が $a$ に収束する.(定義4(リンク)の意味で)

ということがわかります.(一応要証明だが、ここでは省略)

宿題3-1(2)は、逆に、定義4 の意味で数列 $a_n$ が $a$ に収束するとすると、
定義10の意味で $a_n$ はどこかの値に収束する(もちろんそれは $a$ なのだが...)ということを示せという問題です.

3-2

まず、関数 $f(x)$ が連続であることの定義をしておきます.


定義11(関数 $y=f(x)$ が連続であること)
実数上の関数 $y=f(x)$ が連続であるとは、任意の実数 $x$ において $f(x)$ が連続であることである.

問題に戻ります.

問題は、収束する数列の像としての数列 $f(a_n)$ が $f(a)$ に収束することを示せばよいです

まず、仮定を書きます.

$a_n$ が収束することから、任意の $\epsilon_1>0$ に対して、
ある $N_1\in {\mathbb N}$ が存在して、$n_1\ge N_1$ なる自然数 $n_1$ に対して、$|a_{n_1}-a|<\epsilon_1$ が成り立ちます.

また、$f$ が連続であることから、任意の $a$ に対して、任意の $\epsilon_2>0$ に対して、ある $\delta_1>0$ が存在して、$|x-a|<\delta_1$ ならば、$|f(x)-f(a)|<\epsilon_2$ が成り立ちます.



数列 $f(a_n)$ が $f(a)$ に収束することを示すには、まず、任意の $\epsilon_3>0$ を用意します.

そして、$f$ が $x=a$ で連続であることから、$\delta_2>0$ が存在して、$|x-a|<\delta_2$ ならば、$|f(x)-f(a)|<\epsilon_3$ を満たすことがわかります.

あとは、$a_n$ が $a$ に収束することから、$\delta_2$ を上の $\epsilon_1$ だと思えば、$N_2\in {\mathbb N}$ が存在して、$n_2\ge N_2$ なる任意の $n_2$ に対して、$|a_{n_2}-a|<\delta_2$ となりますね.

ほとんどここに書きましたので、あとはわかるのではないかと思いますので自力で証明をつけてください.


3-3

最後の結論の部分が言葉足りませんでした.ミスプリントです.
最後の結論は関数 $g\circ f(x)$ は $x=a$ で連続であることを示せという問題です.


3-2は数列の収束と、関数の連続性の"合成"だと思えましたが、今回は関数と関数の合成です.

3-2と理屈は同じで、仮定も定義に戻って書けば、
任意の $\epsilon_1>0$ に対して、ある $\delta_1>0$ が存在して、$|x-a|<\delta_1$ なる任意の $x$ に対して、$|f(x)-f(a)|<\epsilon_1$ が成り立ちます.

また、$g(x)$ が $f(a)$ で連続であるから、任意の $\epsilon_2>0$ に対して、ある $\delta_2>0$ が存在して、$|x-f(a)|<\delta_2$ が成り立つならば、$|g(x)-g(f(a))|<\epsilon_2$ が成り立ちます.

結論をいうには、以下のことを示せばよいです.

任意の$\epsilon_3>0$ に対して、ある $\delta_3$ が存在して、$|x-a|<\delta_3$ ならば、$|g\circ f(x)-g\circ f(a)|<\epsilon_3$ が成り立つ.

このような $\delta_3$ がなぜ取れるのかを証明して下さい.
最初の仮定からそのような $\delta_3$ が取れることはすぐわかると思いますが...