2026年6月12日金曜日

数学リテラシー2(第6回)

 [場所:2H101(火曜日15:15〜16:30, 16:45〜18:00)](2026年度)



第6回の授業について書いておきます。

数学リテラシー2の後半は空間図形になります。


内積と外積
空間というのは ${\mathbb R}^3$ のことであり、これは、$\begin{pmatrix}a_1\\a_2\\a_3\end{pmatrix}$ のような
3つの実数の組みのことでありそれ全体が空間を成しています。
数学リテラシー1でやったように、縦ベクトルで表しておきます。

そこで、
$\overrightarrow{u}=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}$, $\overrightarrow{v}=\begin{pmatrix}y_1\\y_2\\y_3\end{pmatrix}$ 
のように書き、そのベクトルの長さを
$|\overrightarrow{u}|=\sqrt{x_1^2+x_2^2+x_3^2}$ とします。
同様に
$|\overrightarrow{v}|=\sqrt{y_1^2+y_2^2+y_3^2}$ となります。

内積とその性質
また、内積を

$\overrightarrow{u}\cdot\overrightarrow{v}=x_1y_1+x_2y_2+x_3y_3$ と定義します。
そうすると、次の性質
  1. $\overrightarrow{u}\cdot\overrightarrow{u}=|\overrightarrow{u}|^2$
  2. $(a\overrightarrow{u})\cdot \vec{v}=a(\overrightarrow{u}\cdot\overrightarrow{v})$
  3. $(\overrightarrow{u}_1+\overrightarrow{u}_2)\cdot \overrightarrow{v}=\overrightarrow{u}_1\cdot \overrightarrow{v}+\overrightarrow{u}_2\cdot \overrightarrow{v}$
  4. $\overrightarrow{u}\cdot \overrightarrow{v}=\overrightarrow{v}\cdot\overrightarrow{u}$ 
が導かれます。
内積とは、長さの2乗の概念を2つのベクトル上の関数として拡張したものと
考えるものということになります。
つまり、写像の言葉では
$${\mathbb R}^3\times {\mathbb R}^3\to {\mathbb R},\ \ \  (\overrightarrow{u},\overrightarrow{v})\mapsto \overrightarrow{u}\cdot\overrightarrow{v}$$
と表すことができます。ここで、${\mathbb R}^3\times {\mathbb R}^3$ は2つの ${\mathbb R}^3$ のペアの集合を表しています。
つまり、$\{(\overrightarrow{u},\overrightarrow{v})|\overrightarrow{u},\overrightarrow{v}\in {\mathbb R}^3\}$ ということです。

上の条件2,3,4から、内積は、2つのベクトルのそれぞれに対して線形性をもちます。
これを双線形性といいます。
かつ、4から入れ替えても変わりません。これを対称性といいます。
後半のベクトル空間についての線形性
$$\overrightarrow{u}\cdot(\overrightarrow{v}_1+\overrightarrow{v}_2)=\overrightarrow{u}\cdot \overrightarrow{v}_1+\overrightarrow{u}\cdot \overrightarrow{v}_2$$
の条件がないと思うかもしれませんが、4の対称性があるので
この性質も自然に導かれます。
また、1 の条件は、$\overrightarrow{u}\neq \overrightarrow{0}$ ならば、
$\overrightarrow{u}\cdot\overrightarrow{u}>0$ であり、このことを
正定値であると言います。

このような、正定値で、双線形性と対称性をもつ写像${\mathbb R}^3\times {\mathbb R}^3\to {\mathbb R}$
を正定値対称双線形形式といいます。
つまり、内積は、正定値対称双線型形式のことを言います。

また、内積の性質として、
$$\overrightarrow{u}\cdot \overrightarrow{v}=|\overrightarrow{u}|\cdot |\overrightarrow{v}|\cos\theta$$
があります。ここで、$\theta$ は $\overrightarrow{u}$ と $\overrightarrow{v}$ の間の角度です。
この性質は、高校の頃にすでにやっていると思われますので省略します。

外積とその性質
次に外積を考えましょう。
$\overrightarrow{u}=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}$, $\overrightarrow{v}=\begin{pmatrix}y_1\\y_2\\y_3\end{pmatrix}$ 
に対して、

$$\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v}={}^t\left(\det\begin{pmatrix}x_2&x_3\\y_2 &y_3\end{pmatrix},\det\begin{pmatrix}x_3&x_1\\y_3 &y_1\end{pmatrix},\det\begin{pmatrix}x_1&x_2\\y_1 &y_2\end{pmatrix}\right)$$

として定義します。
このとき、外積は、内積と違って

$${\mathbb R}^3\times {\mathbb R}^3\to {\mathbb R}^3,\ \ \  (\overrightarrow{u},\overrightarrow{v})\mapsto \overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v}$$

2つのベクトルに対して、1つのベクトルを対応させていることに注意します。

内積同様に、外積の性質を見てみると、
  1. $\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{u}=0$
  2. $(a\overrightarrow{u})\times\vec{v}=a(\overrightarrow{u}\cdot\overrightarrow{v})$
  3. $(\overrightarrow{u}_1+\overrightarrow{u}_2)\cdot \overrightarrow{v}=\overrightarrow{u}_1\times \overrightarrow{v}+\overrightarrow{u}_2\times \overrightarrow{v}$
  4. $\overrightarrow{u}\times \overrightarrow{v}=-\overrightarrow{v}\times\overrightarrow{u}$ 
が成り立ちます。
1. に関しては、行列式は、平行なベクトル同士では0になることから来ています。
また、2,3に関しては、行列式が双線形形式であること、つまり、
$$\det\begin{pmatrix}a_1+a_1'&a_2+a_2'\\b_1&b_2\end{pmatrix}=\det\begin{pmatrix}a_1&a_2\\b_1&b_2\end{pmatrix}+\det\begin{pmatrix}a_1'&a_2'\\b_1&b_2\end{pmatrix}$$
であること、
$$\det\begin{pmatrix}aa_1&aa_2\\b_1&b_2\end{pmatrix}=a\det\begin{pmatrix}a_1&a_2\\b_1&b_2\end{pmatrix}$$
であることからきます。
また、4は
$$\det\begin{pmatrix}a_1&a_2\\b_1&b_2\end{pmatrix}=-\det\begin{pmatrix}b_1&b_2\\a_1&a_2\end{pmatrix}$$
であることからわかります。これらは $2\times 2$ 行列の行列式の定義から直接導かれます。
4の性質は反対称性といいます。ですので外積は
反対称双線形写像ということができます。


次に外積の性質を見ていきます。
$\overrightarrow{u}=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}$, $\overrightarrow{v}=\begin{pmatrix}y_1\\y_2\\y_3\end{pmatrix}$ 
に対して、外積と内積を組み合わせて、
次の計算をします。
$$(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{u}=x_1\det\begin{pmatrix}x_2&x_3\\y_2 &y_3\end{pmatrix}+x_2\det\begin{pmatrix}x_3&x_1\\y_3 &y_1\end{pmatrix}+x_3\det\begin{pmatrix}x_1&x_2\\y_1 &y_2\end{pmatrix}$$
$$=x_1(x_2y_3-x_3y_2)+x_2(x_3y_1-x_1y_3)+x_3(x_1y_2-x_2y_1)=0$$

となります。同様に、
$$(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{v}=0$$
が成り立ちます。
すなわち、外積 $\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v}$ は $\overrightarrow{u}$ と $\overrightarrow{v}$ の両方に直交するベクトルを与えていることになります。

また、外積の絶対値 $|\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v}|$ が何かを求めます。
最初に答えを言っておくと、この値は $\overrightarrow{u}$ と $\overrightarrow{v}$ で作られる平行四辺形の面積になります。

まず、そのような平行四辺形の面積 $S$ は
$$S=|\overrightarrow{u}||\overrightarrow{v}||\sin\theta|$$
として与えられることが簡単にわかります。
ここで $\theta$ は同様にそれらのベクトルのなす角を表します。

そこで、この式を変形していきましょう。
$$|\overrightarrow{u}||\overrightarrow{v}||\sin\theta|=|\overrightarrow{u}||\overrightarrow{v}|\sqrt{1-\cos^2\theta}$$
$$=\sqrt{|\overrightarrow{u}|^2|\overrightarrow{v}|^2-|\overrightarrow{u}|^2|\overrightarrow{v}|^2\cos^2\theta}$$
$$=\sqrt{|\overrightarrow{u}|^2|\overrightarrow{v}|^2-(\overrightarrow{u}\cdot \overrightarrow{v})^2}$$
$$=\sqrt{(x_1^2+x_2^2+x_3^2)(y_1^2+y_2^2+y_3^2)-(x_1y_1+x_2y_2+x_3y_3)^2}$$
$$=\sqrt{x_1^2(y_2^2+y_3^2)+x_2^2(y_1^2+y_3^2)+x_3^2(y_1^2+y_2^2)-2(x_1x_2y_1y_2+x_1x_3y_1y_3+x_2x_3y_2y_3)}$$
$$=\sqrt{(x_1y_2-x_2y_1)^2+(x_1y_3-x_3y_1)^2+(x_2y_3-x_3y_2)^2}$$
$$=|\overrightarrow{u}\times \overrightarrow{v}|$$
となり、確かに主張 $S=|\overrightarrow{u}\times \overrightarrow{v}|$ が成り立ちます。

つまり、上で与えた外積 $\overrightarrow{u}\times \overrightarrow{v}$とは、長さが
$\overrightarrow{u}$ と $\overrightarrow{v}$ で作られる平行四辺形の面積をもち、
$\overrightarrow{u}$ と $\overrightarrow{v}$ のどちらにも直交するベクトルであるということになります。

例1:$\overrightarrow{e}_1=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}$, $\overrightarrow{e}_2=\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix}$, $\overrightarrow{e}_3=\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}$ とすると、計算により
$\overrightarrow{e}_1\times \overrightarrow{e}_2=\overrightarrow{e}_3$ となります。

いくつかの体積への応用

平行六面体の体積
ベクトル $\overrightarrow{u}, \overrightarrow{v}, \overrightarrow{w}$ で作られる
$(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{w}$を考えます。
これをスカラー三重積といいますが、この値の絶対値は実は
これらの3つで作られる平行六面体の体積になります。 
ここで、平行六面体とは、
$$\{r\overrightarrow{u}+t\overrightarrow{v}+s\overrightarrow{w}\in {\mathbb R}^3|0\le r,s,t\le 1\}$$
を満たす集合(またはそれを平行移動したもの)のことです。

平行六面体の底面を $\overrightarrow{u}$ と $\overrightarrow{v}$ で構成できる平行四辺形とすると、
その平行六面体の高さを $h$ とすると、$\overrightarrow{w}$ の $\overrightarrow{u}\times \overrightarrow{v}$ への正射影の長さであるから、
その間の角度を $\theta$ とすると、$h=|\overrightarrow{w}|\cdot|\cos\theta|$ になります。
よって、
$$V=Sh=|\overrightarrow{u}\times \overrightarrow{v}|\cdot |\overrightarrow{w}||\cos\theta|=|(\overrightarrow{u}\cdot \overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{w} | $$

となります。
特に、$\overrightarrow{w}$ が $\overrightarrow{u}$ と $\overrightarrow{v}$ と同じ平面上の
ベクトルつまり、$\overrightarrow{w}=a\overrightarrow{u}+b\overrightarrow{v}$ である場合、
$\overrightarrow{u}, \overrightarrow{v}, \overrightarrow{w}$ で作られる平行六面体の
高さは0の平行六面体であるから、
$(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{w}=0$
となります。

四面体の体積
3つのベクトル $\overrightarrow{u}, \overrightarrow{v}, \overrightarrow{w}$
において、そのベクトルの終点と原点で四面体が作られます。

例2:この体積は
$$\frac{1}{6}|(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{w})|$$
として計算できます。

平行六面体の体積は
$|(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{w})|$
であった。
求める体積の四面体は、その底面の平行四辺形を半分にして得られる
三角形上の三角錐であるから、
平行六面体の
$$\frac{1}{2}\times\frac{1}{3}$$
倍であることがわかります。
故に、求める四面体の体積は $\frac{1}{6} |(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot \overrightarrow{w}|$
であることがわかります。

例3:一辺が1の正四面体の体積をスカラー三重積を用いて求めてみます。
そのような四面体は、
$$\overrightarrow{u}=\begin{pmatrix}\frac{1}{\sqrt{2}}\\ \frac{1}{\sqrt{2}}\\0\end{pmatrix},\overrightarrow{v}=\begin{pmatrix} \frac{1}{\sqrt{2}}\\0\\ \frac{1}{\sqrt{2}}\end{pmatrix},\overrightarrow{w}=\begin{pmatrix} 0\\\frac{1}{\sqrt{2}}\\ \frac{1}{\sqrt{2}}\end{pmatrix}$$
として実現できます。全て長さが1で、内積が全て$\frac{1}{2}$ であることを確認
してください。
このとき、スカラー三重積を取ると、
$\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v}=\begin{pmatrix}\frac{1}{2}\\-\frac{1}{2}\\-\frac{1}{2}\end{pmatrix}$ であり、
$|(\overrightarrow{u}\times\overrightarrow{v})\cdot\overrightarrow{w}|=\frac{1}{\sqrt{2}}$ 
と計算できます。よって上の公式から、
そのような正四面体の体積は、
$$\frac{1}{6}\frac{1}{\sqrt{2}}=\frac{\sqrt{2}}{12}$$
となります。

2026年6月11日木曜日

数学リテラシー2(第5回)

  [場所:2H101(火曜日15:15〜16:30, 16:45〜18:00)](2026年度)



今回は $\epsilon$-$\delta$ 論法の復習をしました。

まず定義ですが、
$\epsilon$-$N$論法で数列 $a_n$ の収束は、

$n\to \infty \Rightarrow a_n\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists N \in {\mathbb N}$ に対して、
$$\forall n>N\Rightarrow |a_n-\alpha|<\epsilon $$ 
ことである。

として定義しました。
そこで、これを変形して、

$\frac{1}{n}\to 0\Rightarrow a_n\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists N \in {\mathbb N}$ に対して、
$$\forall n,  0<\frac{1}{n}<\frac{1}{N}\Rightarrow |a_n-\alpha|<\epsilon $$ 
を満たすことである。

このことを関数の極限に応用してみます。
すると、次のように書き変わるでしょう。

$x\to a\Rightarrow f(x)\to \alpha$ であること、
つまり、
$x-a\to 0\Rightarrow f(x)\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists\delta>0$ に対して、
$$\forall x,  0<|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\epsilon $$ 
を満たすことである。

ここで、$1/n$ によって0に近づいているとき
正の数からしか近づきませんが、一般に、$0$ に近づくのは正負の両方から近づくので
絶対値をつけて近づける範囲を両側にしています。また、
近づく範囲を指定するのに、$1/N$ として $n$ の範囲の限界を指定しましたが、
$1/N$ ではなくて実数でいいので、
$1/N$ の代わりに $\delta$ に変えています。

これで$\epsilon$-$N$ 論法を関数の極限値の収束の状況に当てはめることができました。

よって、関数 $f(x)$ が $x\to a$ によって、$\alpha$ に収束することを、
次のように定義します。

定義(関数がある極限値に収束すること)
関数 $f(x)$ がある領域 $I$ で定義された関数であるとする。
$x\in I$ が $a$ に近づくとき $f(x)$ が $\alpha$ に収束する
つまり $x\to a$ のとき $f(x)\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists\delta>0$ を用いて、
$$0<|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\epsilon $$ 
を満たすこととして定義する。
これを、$\lim_{x\to a}f(x)=\alpha$ とかく。


この定義は $a$ が $f(x)$ の定義域 $I$ に入っていない場合も有効であることが
わかります。
例えば、$I=(0,1)$ の場合に、$f(x)=\frac{\sin x}{x}$ の場合が考えられます。
この場合、$x=0$ では定義されていませんが、極限は存在します。

しかし、$a\in I$ である場合、関数 $f(x)$ が $I$ で連続である定義をすることができます。
つまり、

定義(関数の連続性)
$I$ 上で定義された関数 $f(x)$ が $a\in I$ で連続であるとは、
$\lim_{x\to a}f(x)=f(a)$ を満たすこととして定義する。 


上の極限値の収束の定義に基づいた極限値の値の計算は、こちら
にもありますが、今回は、授業で用いたものをここで証明をしてみることにします。

とりあえず関数のある極限値へ収束することの否定文もこちらで作っておきます。

定義(関数がある極限値に収束しないこと)
関数 $f(x)$ がある領域 $I$ で定義された関数であるとする。
$x\in I$ が $a$ に近づくとき $f(x)$ が $\alpha$ に収束しない
つまり $x\to a$ のとき $f(x)\not\to \alpha$ であることを
$\exists \epsilon>0$ に対して、$\forall\delta>0$ を用いて、
$$\exists x,0<|x-a|<\delta\text{かつ}|f(x)-\alpha|\ge \epsilon $$ 
を満たすこととして定義する。


個々の多項式については上のリンクを見てもらうことにして、まずは

例1:任意の多項式は連続関数である。

を示します。

任意の多項式関数 $f(x)$ を $f(x)=a_0+a_1x+\cdots+a_nx^n$
と書きます。
この多項式関数が $x=a$ で連続であることを示します。
そのために、準備をしておきます。
因数定理を用いることで、
$$f(x)-f(a)=(x-a)(d_1+d_2(x-a)+\cdots+d_n(x-a)^{n-1})$$
とかけます。ここで、$d_i$ は関数$f(x) $と$ a$にしか依存しない定数で、
$$d=\max_{i=1,\cdots,n}\{|d_i|\}$$
もそうです。
ここまでが準備です。

ここで、$\forall \epsilon>0$ に対して、$0<\delta<\min\{1,\frac{\epsilon}{nd}\}$ となる
実数として定めておきます。このような実数が存在するのは、
$\epsilon$ に依存しない $n,d$ が定数だからです。
また、どうしてこのように $\delta$ を定めておくといいのかは後で
判明します。

このとき、
そのような $\delta$ に対して、$|x-a|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、三角不等式と
上の仮定を用いることで、
$$|f(x)-f(a)|=| (x-a)(d_1+d_2(x-a)+\cdots+d_n(x-a)^{n-1})|$$
$$=|x-a|\cdot | d_1+d_2(x-a)+\cdots+d_n(x-a)^{n-1} |$$
$$\le \delta(|d_1|+|d_2|\cdot|x-a|+|d_3|\cdot |x-a|^2+\cdots+|d_n|\cdot |x-a|^{n-1})$$
$$\le \delta(|d_1|+|d_2|\cdot \delta +|d_3|\cdot \delta ^2+\cdots+|d_n|\cdot \delta^{n-1})$$
$$\le \delta(|d_1|+|d_2|+\cdots+|d_n|)$$
$$\le \delta \cdot nd< \epsilon$$

となり、確かに$x=a$ で関数が連続であることがわかります。

次の例にいきます。

例2 関数 $f(x)=\sin \frac{1}{x}$ は $x=0$ において極限値を持たない。
これもこちらで証明はしているのですが、授業中でもやった方法で証明してみます。

(証明)
$f(x)$ が$\alpha$ に収束しないことを示します。
$f(x)$ は定数関数ではないので、
$\sin \frac{1}{x_\alpha}\neq \alpha$ となるような $x_\alpha>0$ が存在します。

ここで、$\epsilon=\frac{1}{2}|\sin\frac{1}{x_\alpha}-\alpha|$ とする。
どうしてこのように定義すればいいのか後で判明します。

ここで、$\forall \delta>0$ をとります。このとき、
$0<|x|<\delta$ において $|\sin \frac{1}{x}-\alpha|$ が $\epsilon$ より大きくなる
$x$ を取ればいいのですが、
上のような任意の$\delta$ に対して、
$\frac{x_\alpha}{2n\pi x_\alpha+1}<\delta$ となる
自然数 $n$ が存在します。分母が限りなく大きくなるのでそうですが、
アルキメデスの原理を用いるなら、$\frac{1}{2\pi x_\alpha}(\frac{x_\alpha}{\delta}-1)<n$
となる自然数 $n$ が存在するからです。

ここで、$x_{\alpha,n}= \frac{x_\alpha}{2n\pi x_\alpha+1}$ とおくと、
$0<|x_{\alpha,n}|<\delta$ を満たし、かつ
$|\sin\frac{1}{x_{\alpha,n}}-\alpha|=|\sin(\frac{1}{x_\alpha}+2n\pi)-\alpha|=|\sin\frac{1}{x_\alpha}-\alpha|=2\epsilon\ge \epsilon$
これにより、$\sin\frac{1}{x}$ は $x\to 0$ のとき、$\alpha$ に近づかない
つまり、$\lim_{x\to a}f(x)\neq \alpha$ となります。

任意の $\alpha$ に近づかないのだから、 $f(x)$ は極限値を持たないことになります。

次の例を示します。

例3:$y=\sin x$ は連続関数である。

これも、$\epsilon$-$\delta$ 論法を用いて示してみます。
まず、次を$\epsilon$-$\delta$ 論法を用いて示しておきます。

補題
$\lim_{X\to 0}\frac{\sin X}{X}=1$である。

(証明)
三角関数の定義から次の不等式が成り立つ。
$0<X<\pi/2$ のとき、
$0<\sin X<X<\tan X$
であり、
$-\pi/2<X<0$ のとき、
$\tan X<X<\sin X<0$
となります。
よって、どちらにしても、
$$0<1-\frac{\sin X}{X}<1-\cos X$$
が成り立ちます。
よって、今、
$\forall \epsilon>0$ に対して、 $0<\delta=\sqrt{2\epsilon}$ として取ると、

$0<|X|<\delta$ となる任意の実数 $X$ に対して、
$|\frac{\sin X}{X}-1|<|1-\cos X|=2\sin^2\frac{X}{2}< 2(\frac{X}{2})^2<\frac{\delta^2}{2}=\epsilon$

よって、$\lim_{X\to 0}\frac{\sin X}{X}=1$ を満たします。$\Box$


上の例に戻ります。
$x=a> 0$ での連続性を示します。$a$ が負の場合は同じなのでここでは $a>0$ としています。
そこで、$\forall \epsilon>0$ をとります。
このとき、$0<\delta<\min\{a,2,\frac{2\epsilon}{3}\}$ をとります。
(なぜこのように$\delta$ を取ればいいのか後で判明します。)

そこで、$0<|x-a|<\delta$ を満たす任意の $x$ をとります。

このとき、上の補題の証明での $\epsilon=\frac{1}{2}$ の場合を考え、$X=\frac{x-a}{2}$ と代入すると、
$0<|X|=|\frac{x-a}{2}|<1$ の場合、
$|\frac{\sin\frac{x-a}{2}}{\frac{x-a}{2}}-1|<\frac{1}{2}$ が成り立ち、つまりこのとき
$$\frac{1}{2}<\frac{\sin \frac{x-a}{2}}{\frac{x-a}{2}}<\frac{3}{2}$$
が成り立ちます。

和積公式を用いて、
$|\sin x-\sin a|=2|\sin\frac{x-a}{2}\cos\frac{x+a}{2}|\le |x-a|\cdot |\frac{\sin \frac{x-a}{2}}{\frac{x-a}{2}}|\le \delta \frac{3}{2}<\epsilon$

となります。
これで、なぜ $\delta$ を上のように取るべきかわかりましたね?
これにより、$\sin x$ が$x=a>0$ で連続であることがわかりました。

$x<0$ の場合も同様ですが、$x=0$ の場合が残りました。
このとき、
$\forall \epsilon>0$ に対して $0<\delta <\epsilon$ となる実数をとれば、
$0<|x|<\delta$ のとき、補題の証明から
$$|\sin x|=|x|\cdot |\frac{\sin x}{x}|\le |x|<\delta<\epsilon$$
であるからこの場合も、$x=0$ にて$\sin x$ が連続であることがわかります。$\Box$


他に、$y=|x|$ の$x=0$ で微分不可能な例なども考えてみます。

例4:$y=|x|$ は $x=0$ で連続である。

$\forall \epsilon>0$ に対して、$\delta=\epsilon$ とすると、
$0<|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$||x|-0|=|x|<\delta=\epsilon$ 
であるから $x=0$ 連続である。

2025年11月23日日曜日

トポロジーB(第5回)

今回は単体複体のホモロジーの計算の詳細について
少し復習しました。また、後半では胞体複体について行いました。

ホームページ(レジュメあり)はこちらになります。

単体複体のホモロジーの計算の詳細

詳細というか、代数的な計算、特に商群の計算です。

まず、アーベル群についての復習をしておきます。
そもそも群についての基本的な知識はこれまで(群について)に書きましたので
そちらを見て下さい。
アーベル群の基本定理により、任意の有限生成アーベル群 $G$ は
必ず
$$G\cong {\mathbb Z}^r\times ({\mathbb Z}/n_1{\mathbb Z})\times ({\mathbb Z}/n_2{\mathbb Z})\times \cdots\times ({\mathbb Z}/n_s{\mathbb Z})$$
となる同型写像が存在しています。
何倍かして0になるような元のことをねじれ元といい、
またそのような元からなる群のことをねじれ群ともいいます。
この直積因子の2番目から以降は全てねじれ群です。

有限生成アーベル群は自由アーベル群の部分とねじれ群からなる巡回群の直積の部分
に分かれます。そのことを自由部分とねじれ部分ともいいます。
自由部分の $r$ のことを $G$ 有限生成アーベル群のランクといい、$G$ の同型不変量
になります。
ランク以下のねじれ部分の群の同型類も位相不変量ということになります。
巡回群の直和の書き方には一意性はありませんので書き方次第ですが、
条件を絞った書き方をすればその表示も一意にすることができます。
余り細かいことはだいすうのはなしになってしまうので省略します。

先週の授業では、ホモロジー群 $\text {Ker}(\partial_n)/\text{Im}(\partial_{n+1})$ を
計算するのに、$\text{Ker}(\partial_n)\cong{\mathbb Z}^r$ かつ $\text{Im}(\partial_{n+1})\cong {\mathbb Z}^s$ であるから
$\text{Ker}(\partial_n)/\text{Im}(\partial_{n+1})\cong {\mathbb Z}^{r-s}$ みたいに
説明してしまった部分もあったのですが、実際はそうはならないことを注意して下さい。

例えば、$r=s=1$ の場合でも ${\mathbb Z}$ の ${\mathbb Z}$ の入り方がいろいろあるからです。
例えば、${\mathbb Z}\cong n{\mathbb Z}\subset {\mathbb Z}$ のようにすれば、
${\mathbb Z}$ が部分群として自明でなく入っていますね。この場合、
商群は ${\mathbb Z}/n{\mathbb Z}$ となります。もちろんこの群は0ではありません。

実は自由アーベル群のランクだけ見たら、入り方は無視して考えることはできます。
部分群 ${\mathbb Z}^s\overset{f}{\hookrightarrow} {\mathbb Z}^r$ があったとき、その商群
${\mathbb Z}^r/f({\mathbb Z}^s)$ のランクは $r-s$ になります。

一般に商群をどのように書けばよいか考えます。

2単体 $\sigma^2$ の境界 $\partial \sigma^2$ のホモロジーを求めてみます。
$\sigma^2=\langle v_0v_1v_2\rangle$ とします。
単体について、$\langle v_iv_j\rangle=\langle ij\rangle$ と書くことにします。
そうすると、$\partial\sigma^2$ からなる単体複体を $K$ とすると、
$K=\{\langle \langle 0\rangle ,\langle1\rangle,\langle2\rangle, \langle01\rangle, \langle02\rangle,\langle12\rangle\}$ となります。
この時、チェイン複体
$$\begin{CD}0@<\partial_0<<C_0(K)@<\partial_1<<C_1(K)@<<<0\end{CD}$$
は、
$$\begin{CD}0@<\partial_0<<{\mathbb Z}^3@<\partial_1<<{\mathbb Z}^3@<<<0\end{CD}$$
ですが、$\text{Ker}(\partial_1)$ このアーベル群の基底について $\partial_1$ は ${\mathbb Z}$ 係数の $3\times 3$行列で表現できますが、
その行列を $A$ とすると、
$$\partial_1(\langle01\rangle, \langle02\rangle,\langle12\rangle)=( \langle 0\rangle ,\langle1\rangle,\langle2\rangle)\begin{pmatrix}-1&-1&0\\1&0&-1\\0&1&1\end{pmatrix}$$
であり、
$A=\begin{pmatrix}-1&-1&0\\1&0&-1\\0&1&1\end{pmatrix}$ の行の基本変形をすると、
$$\begin{pmatrix}1&0&-1\\0&1&1\\0&0&0\end{pmatrix}$$
となります。よって、$Ax=0$ となる $x={}^t(c_1,c_2,c_3)$ は、
$c_1=c_3, c_2=-c_3$ となるので、
$x=\begin{pmatrix}c_3\\-c_3\\c_3\end{pmatrix}=c_3\begin{pmatrix}1\\-1\\1\end{pmatrix}$ 
となりますので
$\text{Ker}(\partial_1)=\langle\langle 01\rangle-\langle 02\rangle+\langle 12\rangle\rangle$ となります。
つまり、$\text{Ker}(\partial_1)\cong{\mathbb Z}$ となります。
ちなみに、このKerの生成元は、$\langle 01\rangle+\langle 12\rangle+\langle 20\rangle$
となり、$\sigma^2$ の境界の1単体をある方向に回ってできるサイクルからなります。

よって、$H_1(K)=\text{Ker}(\partial_1)\cong{\mathbb Z}$ となります。

$A=\begin{pmatrix}-1&-1&0\\1&0&-1\\0&1&1\end{pmatrix}$ の列の基本変形をすると、
$$\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\-1&-1&0\end{pmatrix}$$
となります。よって、$B_0(K)$ は $\langle 0\rangle-\langle 1\rangle, \langle 1\rangle-\langle 2\rangle$ によって生成される群になります。
$\partial_0=0$ ですので、$\text{Ker}(\partial_0)=C_0\cong{\mathbb Z}^3$ となります。

$H_0(K)=({\mathbb Z}\langle 0\rangle+{\mathbb Z}\langle 1\rangle +{\mathbb Z}\langle 2\rangle)/(\langle 0\rangle-\langle 1\rangle, \langle 1\rangle-\langle 2\rangle)$
となります。つまり、${\mathbb Z}^3/{\mathbb Z}^2$ となりますが、
実際、${\mathbb Z}^{3-2}$ となるとはこのままでは証明できないので、
以下のようにします。

ここで $\varphi:H_0(K)\to {\mathbb Z}\langle 0\rangle$ を $[\langle i\rangle]\mapsto \langle 0\rangle$ として定義すると、
$\varphi$ は全射準同型であることはわかるので、単射性を示します。
$H_0(K)\ni x=[a_0\langle 0\rangle+a_1\langle 1\rangle+a_2\langle 2\rangle]$ が、$x\in \text{Ker}(\varphi)$ であるとします。
$\varphi(x)=(a_0+a_1+a_2)\langle 0\rangle$ であり、$a_0+a_1+a_2=0$ となります。
よって、
$x=[a_0\langle 0\rangle+a_1\langle 1\rangle+a_2\langle 2\rangle]=[a_0\langle 0\rangle+(-a_0-a_2)\langle 1\rangle+a_2\langle 2\rangle]$
$=[a_0(\langle 0\rangle-\langle 1\rangle)-a_2(\langle 1\rangle-\langle 2\rangle)]\in B_0(K)$
よって $x=0$ であるから $\text{Ker}(\varphi)=0$ となるので、
$\varphi$ は同型写像となります。

もしくは、$\varphi':C_0(K)\to {\mathbb Z}\langle 0\rangle$ を$\varphi'(\langle i\rangle)=\langle0\rangle$
とすると、$\varphi'$ は全射準同型であるから同じように、$\text{Ker}(\varphi)=B_0(K)$ 
であり、準同型定理から、$H_0(K)=C_0(K)/B_0(K)\cong {\mathbb Z}\langle 0\rangle\cong{\mathbb Z}$ となります。
このことから、$H_0(K)$ の生成元は$\langle 0\rangle$ からなることがわかります。
$\langle 0\rangle$ はサイクルだが、何か1単体の境界とはならないクラスになります。
また、
$\langle 1\rangle=\langle 0\rangle+(\langle 1\rangle -\langle 0\rangle)$
$\langle 2\rangle=\langle 0\rangle-(\langle 0\rangle -\langle 1\rangle)-(\langle 1\rangle -\langle 2\rangle)$
でとなります。$[\langle i\rangle]$ を $[i]$ という書き方にすると、
$[1]=[0]-[\langle 0\rangle -\langle 1\rangle]=[0]$
$[2]=[0]-[\langle 0\rangle -\langle 1\rangle]-[\langle 1\rangle -\langle 2\rangle]=[0]$
であるから、$H_0(K)$ の生成元は $0,1,2$ を同一視して得られる元 
からなるものになります。それを代表して$[0]$ となります。
つまり、$H_0(K)={\mathbb Z}[0]$ となります。$\Box$

0次のホモロジーは基本的にはその点で生成されるホモロジーで、弧状連結成分の
点は同一視されて成分ごとに1次元になります。
つまり、単体複体の弧状連結成分の個数を $c(K)$ とすると、
$H_0(K)\cong {\mathbb Z}^{c(K)}$ となります。

胞体複体

次に胞体複体についての定義をあたえます。
その前に、空間の接着について定義しようと思います。

定義
$X,Y$ を位相空間とし、空間対 $(X,A)$ に対して、$\varphi:A\to Y$ を連続写像とする。
$\pi:Y\sqcup X\to Y\sqcup X/{\sim}$ を$x\sim\varphi(x)$として得られる同値関係を入れたもの
$Y\sqcup X/{\sim}=Y\cup_\varphi X$ とし、$Y$ に$(X,A)$ を $\varphi$によって
貼り付けて得られる空間という。

このとき、次の定理が成り立ちます。

定理
$X,Y$ をハウスドルフ空間とする。コンパクト空間 $A$ との空間対 $(X,A)$ において、$A$ のレトラクトとなる開集合$A\subset U$ が存在するとする。この時、連続写像 $\varphi:A\to Y$ によって得られる空間 $Z=Y\cup_\varphi X$ もハウスドルフである。

ここで、$U$ が $A\subset U$ においてレトラクトとは、ある連続写像 $r:U\to A$ が存在して、$r|_A=\text{id}_A$ となることをいいます。

証明
$x,y\in X-A$ であるとすると、$X-A$ の開集合は $Y\cup_\varphi X$ でも開集合であるから
$X$ のハウスドルフ性から、$x,y$ を分離する開集合が存在します。

$x,y\in \pi(Y)$ である場合、$Y$ がハウスドルフなので、$Y$ の開集合 $U_1,U_2$ が存在し、
$x\in U_1$ かつ $y\in U_2$ かつ $U_1\cap U_2=\emptyset$ が成り立ちます。
この $U_1, U_2$ は $Y$ の開集合ですが、$Z$ の開集合とはまだいえないので議論が必要です。
そこで、$(\varphi\circ r)^{-1}(U_1), (\varphi\circ r)^{-1}(U_2)\subset X$ は $X$ の開集合で、
$(\varphi\circ r)^{-1}(U_1)\cap(\varphi\circ r)^{-1}(U_2)=\emptyset$ ですので、
$V_1=(\varphi\circ r)^{-1}(U_1)\sqcup U_1, V_2=(\varphi\circ r)^{-1}(U_2)\sqcup U_2\subset X\sqcup Y$ は $X\sqcup Y$ において交わらない開集合になります。
また、任意の$p\in Z$ に対して、$\pi^{-1}(p)$ が $V_1,V_2$ においても包まれるか
共有点を持たないかどちらかなのでファイバーを集めた形、つまり
$\pi^{-1}(A_1),\pi^{-1}(A_2)$ の形をしています。商写像であることから、
$A_1,A_2\subset Z$ は開集合です。
また、$x\in A_1$ かつ $y\in A_2$ かつ $A_1\cap A_2\emptyset$ が成り立つから
この場合$x,y$ を分離する開集合が存在することになります。

次に、$x,y\in Z$ のうち片方だけ $X-A$ にいる場合を考えます。
この場合、 $x\in X-A$ とします。

この時2つの状況(i), (ii)にわけます。

(i) $y\in Y-\pi(A)$ の時、
$\pi(A)$ がコンパクトであり、ハウスドルフ空間 $Y$ の中で $\pi(A)$ は閉集合であるから
$Y-\pi(A)$ は開集合となります。$Y-\pi(A)$ は $Z$ の中でも開集合であるので、
$X-A$ も $Z$ において開集合であるから、$x,y$ を分離する開集合
$Y-\pi(A)$ と$X-A$ が取れます。

(ii) $y\in \pi(A)$ である場合、
$x\in X-A$ であり、$x$ と $A$ はハウスドルフ空間の中の1点とコンパクト集合なので、
開集合で分離できます。(こちらのページの定理14.4)
$A$ と $x$ を分離する開集合を $U_1,U_2$ とし、$A\subset U_1$ かつ $x\in U_2$ かつ $U_1\cap U_2=\emptyset$ とします。
よって、$\pi(Y\cup U_1)$  と $U_2$ は$ Z$ の開集合であり、$x,y$ を分離する開集合となります。

よって、$A$ がコンパクトであり、$U\to A$ となるレトラクトとなる開集合 $U$
が存在する場合、$X,Y$ がハウスドルフなら$Y\cup_\varphi X$ もハウスドルフとなります。 $\Box$

例えば、$(X,A)=(D^n,S^{n-1})$ の場合、そのような条件を満たします。
この時、$S^{n-1}$ は $D^n$ の境界の球面です。
その場合、切除公理から、

$H_n(Y\cup_{\varphi} D^n,Y)\cong H_n(D^n,S^{n-1})$ となります。

胞体分割の定義をここで与えておきます。

定義
$X^{(0)}$ を有限個の点とし、$X^{(0)}$ に有限個の $(D^1,S^0)$ を貼りつける。
それを $(D^1_i,S^0_i)$ $(i=1,\cdots, k_0)$ とし、
その貼り付け写像を $\varphi_i^{(1)}:S^0_i\to X^{(0)}$ とする。この貼り付け写像によって
得られる空間を $X^{(1)}=X^{(0)}\cup_{\sqcup_{i=1}^{k_1} \varphi_i^{(1)}}D^1_i$ とする。
もし$X^{(n-1)}$ が定義されたとすると、$(D^n,S^{n-1})$ に同相な $k_n$ 個のペア
$(D^n_i,S^{n-1}_i)$ $i=1,\cdots, k_n$ に対して、
連続写像 $\varphi^{(n)}_i:S^{n-1}_{i}\to X^{(n-1)}$ に対して、
その写像によって貼り付けて得られる空間 $X^{(n-1)}\cup_{\sqcup_{i=1}^{k_n}\varphi_i^{(n)}}D^n_i$ を $X^{(n)}$ とする。
この$X^{(n)}$ を胞体複体という。
$\mathring{D}^m_i\hookrightarrow X$ は同相
埋め込みになりますが、この像を $e^m_i$ と書き、$m$胞体という。
この時、
$$X=\cup_{i=1}^{k_0}e^0_i\cup_{i=1}^{k_1}e^1_{i}\cup\cdots\cup_{i=1}^{k_n} e^n_{i}$$
のような分割が成り立ちます。これを $X$ の胞体分割という。

ここで、$\mathring{D}^m$ は $m$ 次元円盤 $D^m$ の内部を意味します。
$$X=\cup_{i=1}^{k_0}e^0_i\cup_{i=1}^{k_1}e^1_{i}\cup\cdots\cup_{i=1}^{k_n} e^n_{i}$$
のように書くと貼り付け写像のデータがないのですが、そのデータを省略して
明示的に書く方法になっています。本来は貼り付け写像が決まらないと
この胞体の組み合わせだけでは位相構造は決まりません。

2025年10月31日金曜日

トポロジーB(第4回)

 今回は単体写像がホモロジーに準同型写像を誘導すること
またへびの補題などを行いました。

HPはこちらになります。



単体写像がホモロジーに写像を誘導すること


単体写像 $f:K\to L$ とは、$K$ の頂点の集合を $S_0$、$L$ の頂点の集合を

$T_0$ とすると、$f_0:S_0\to T_0$ がまず定義されていて、

各 $n$単体 $\langle v_0v_1,\cdots,v_n\rangle\in K$に対して、頂点の集合 $\{f_0(v_0),\cdots,f_0(v_n)\rangle\}$ が

$L$ の何かしらの単体の頂点に"ちょうど"なっているものを言いました。

この時 $f(\sigma)$ をその $L$ の単体とします。一般には $f_0$ は単射とは

限らないので、この単体の次元(この頂点の集合の濃度$-1$)は $n$ 以下であり、ちょうど $n$ になるとは限りません。


まず、単体複体 $K,L$ の実現を $|K|,|L|$ とかくと、単体写像 $f$ から連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を得ることができます。


補題

単体写像 $K\to L$ に対して、連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ が誘導できる。


(証明)

$K,L$ が ${\mathbb R}^N$ および ${\mathbb R}^M$ の部分集合として実現されているとして、以下のように連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を定めます。


$\sigma\in K$ に対して、


$|f|_\sigma:|\sigma|\to |f(\sigma)|$ を $x=\sum_{i=0}^nt_iv_i$ としたときに、

$$|f|_\sigma(x)=\sum_{i=0}^nt_if(v_i)$$

として定めます。この写像は一次関数なのでもちろん連続です。


このように $|f|_\sigma$ は $K$ の各単体で定義されますが、$\sigma_1\cap\sigma_2\neq\emptyset$ の時に、各 $\sigma_i$ で定義された連続写像が$\sigma_1\cup\sigma_2$ に拡張することができるのかについて検証します。


$\sigma_1\cap \sigma_2=\sigma_3$ であり、$\sigma_3$ も単体になります

$\sigma_1=\langle v_0\cdots v_n\rangle $

$\sigma_2=\langle v_0\cdots v_kv_{n+1}\cdots v_{n+m}\rangle $

$\sigma_3=\langle v_0\cdots v_k\rangle $


としておきます。ここで $k\le n$ です。


$|f|_{\sigma_1}(x)=\sum_{i=0}^nt_if(v_i)$ 

$|f|_{\sigma_2}(x)=\sum_{i=0}^kt_if(v_i)+\sum_{i=n+1}^{n+m}t_if(v_i)$

$|f|_{\sigma_3}(x)=\sum_{i=0}^kt_if(v_i)$ 

であるから、$|f|_{\sigma_3}$ はそれぞれの連続写像 $|f|_{\sigma_1}$ と $|f|_{\sigma_2}$ を制限して得られており、同値なことに $|f|_{\sigma_3}$ は $|f|_{\sigma_1}$ と $|f|_{\sigma_2}$ に連続に拡張しています。


同様に単体複体 $|K'|$ に定義された 連続関数が単体 $\sigma$ が面 $\tau\prec \sigma$

を共有するとして $|f|_{K'}:|K|\to |L|$ と $|f|_\sigma:|\sigma|\to |L|$ において 

連続であり、面 $\tau$ において、ちょうど制限になるように定義されており、

一意的に $|K'|\cup|\sigma|$ からの連続写像として拡張することができます。


また、同様に $|\sigma|$ の複数の面が $|K|$ と共有している場合も拡張ができます。

ですので、$|K|$ がいくつかの単体を貼り付けてえられていることから、

この拡張を $K$ 全体に広げることで $|K$ 上で連続関数が定義されます。  $\Box$


よって単体写像 $f:K\to L$ はある連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を定義しています。

また、単体写像は チェイン複体に写像を定義しているが、

それはチェイン写像となる。チェイン写像の定義をここでしておく。


定義(チェイン写像)

チェイン複体 $(C_n,\partial_n), (D_n,\partial’_n)$ に対して準同型写像

$f_n:C_n\to D_n$ が任意の $n$ において $\partial’_n\circ f_n=f_{n-1}\circ \partial_n$ を満たすとき、

$\{f_n\}$ をチェイン写像という。


チェイン写像 $\varphi:C_n\to D_n$ に対して、

ホモロジー上に準同型写像 $\varphi_\ast:H_n(C)\to H_n(D)$ が誘導させることができます。

というのも、


補題

$\varphi$ に対して $\varphi_\ast:H_n(|K|\to H_n(|L|)$ を $\varphi_\ast([x])=[\varphi (x)]$ と

なる定義はwell-definedである。


(証明)

この写像がwell-definedであることは、

$[x]=[x’]$ であるとき、$x-x’\in B_n(C)$ が成り立ち、

$x-x’=\partial_{n+1}\alpha$ となります。

$\varphi(x)-\varphi(x’)=f(\partial_{n+1}\alpha)=\partial’_n\circ f(\alpha)$

となるので、$\varphi(x)-\varphi(x’)\in B_n(D)$ が成り立ちます。

つまり、$[\varphi(x)]=[\varphi’(x)]$ in  $H_n(D)$ が成り立つので

$\varphi_\ast$ がホモロジー上の写像としてwell-definedに定義できたことに

なります。$\Box$ 


ここで単体写像 $f:K\to L$ に対してホモロジー上に、


$$f_\ast(\sigma)=\begin{cases}f(\sigma)&  f(\sigma)\text{ が }n\text{単体}\\0&   f(\sigma)\text{ が }n\text{単体ではない}\end{cases}$$


のように定義して、この写像を線形に拡張することで準同型写像

 $C_n(K)\to C_n(D)$ を得る。


$\sigma=\langle v_0\cdots v_n\rangle \in K$ を $n$単体とするとき、

$f(\sigma)$ が $n$単体であるとき、

$$f\circ \partial_n(\sigma)=f( \sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0\cdots \hat{v_i}\cdots v_n\rangle)$$

$$=\sum_{i=0}^n(-1)^n\langle f(v_0)\cdots \widehat{f(v_i)}\cdots f(v_n)\rangle\cdots(\ast)$$

となります。ここでハットはその項を除くことを意味しています。

ここで、$f(\sigma)=\langle f(v_0)\cdots f(v_n)\rangle$ であるから、

$$(\ast)=\partial_n’\circ f(\sigma)$$

となります。


$f(\sigma)$ が $n$単体ではないとき、

$i\neq j$ に対して$f(v_i)=f(v_j)$ が成り立つとします。

$$f\circ \partial_n(\sigma)=f( \sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0\cdots \hat{v_i}\cdots v_n\rangle)$$

$$=(-1)^i\langle f(v_0)\cdots \widehat{f(v_i)}\cdots f(v_j)\cdots f(v_n)\rangle $$

$$+ (-1)^j\langle f(v_0)\cdots f(v_i)\cdots \widehat{f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$

ここで第1項目の $f(v_j)$ をハットのついた$f(v_i)$ の位置まで持っていくと、

符号が $(-1)^{j-i-1}$だけ変化するから、

$$=(-1)^{j-1}\langle f(v_0)\cdots f(v_j)\cdots \widehat{ f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$

$$+ (-1)^j\langle f(v_0)\cdots f(v_i)\cdots \widehat{f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$

となります。よってこの値が0になります。

つまり $\partial_n’\circ f(\sigma)=0$ と同じになるので、

確かにこの場合もチェイン写像の条件を満たします。 


よって単体写像 $f:K\to L$ からホモロジー群への準同型写像

$$f_\ast:H_n(K)\to H_n(L)$$    

が誘導されます。


ヘビ🐍の補題


ヘビといえば、🐍ですが、実際英語でもsnake lemmaと言われます。


補題(ヘビの補題)

任意の $n$ に対して短完全系列

$$\begin{CD}0@>>> A_n@>f_n>> B_n@> g_n >> C_n @>>>0\end{CD}$$

がチェイン複体の間のチェイン写像である場合、

任意の $n$ に対してある準同型写像 $\partial_\ast:H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ が存在して、

長完全系列

$$\begin{CD}@>>>H_{n+1}(C)@>\partial_\ast>> H_n(A)@>f_{n\ast}>> H_n(B)@>g_{n\ast}>> H_n(C) @>\partial_\ast>>H_{n-1}(A)@>>>\end{CD}$$

が存在する。

この $\partial_\ast$ は連結準同型といます。連結準同型は $C_n\to A_{n-1}$に
well-defined な写像が定義できるのではなく、あくまでホモロジー群の間で初めて
well-definedになる写像となります。

(証明)
この補題を全て証明するのは大変なので、取り合えず $\partial_\ast$ が存在することを
示しておきます。その他にも、
$H_n(A), H_n(B), H_n(C)$ の各場所で完全であることを示す必要があります。

ここで $[c]\in H_n(C)$ をとります。
このとき、$\partial_n^C(c)=0$ が成り立つことと $g_n$ が全射であることから、
$g_n(b)=c$ となる $b\in B_n$ が存在して、$\partial_n^Cg_n(b)=0$ が成り立つので、
可換性から $g_{n-1}\partial^B_n(b)=0$ が成り立ちます。
よって完全性から、$\partial_n^B(b)=f_n(a)$ となる $a\in A_{n-1}$ が存在します。
図式としては次のようになります。

$$\begin{CD}0@>>> A_n@>f_n>> B_n@> g_n >> C_n @>>>0\\ @.@VV \partial^A_{n}V @VV \partial^B_{n}V @VV \partial^C_{n} V \\ 0@>>> A_{n-1}@>f_n>> B_{n-1}@> g_{n-1} >> C_{n-1} @>>>0\end{CD}$$

element chasingにいてはこの可換図式を用いて目で追ってみてください。

そうすると、$[c]$ に対して $a\in A_{n-1}$ を対応させることができました。
このとき、$a\in Z_{n-1}(A)$ である必要がありますが、
実際、$f_{n-1}(a)=\partial^B_n(b)$ であり、この両辺に $\partial_{n-1}^B$ を作用させると、
$\partial^B_{n-1}(f_{n-1}(a))=\partial_{n-1}^B(\partial^B_n(b))=0$ となり、左辺は
$f_{n-2}(\partial^A_{n-1}(a))$であるから、$f_{n-2}(\partial^A_{n-1}(a))=0$ となります。
$f_{n-2}$ は単射であるから、$\partial^A_{n-1}(a)=0$ となって、$a\in Z_{n-1}(A)$
が成り立つことがわかりました。

また、$[c]\mapsto [a]$ がwell-defined であるためには $c$ から $b$をとるときに
一意ではなかったのでそこでとり方によらないことを示す必要があります。

つまり、 $g_n(b)=g_n(b’)=c$ となる $b’\in B_n$を取ったときに、
$f_{n-1}(a’)=\partial_n^B(b’)$ となる $a\in A_{n-1}$ をとり、
$[a]=[a’]$ であることを示せば良いことになります。
このとき、$g_{n}(b-b’)=c-c=0$ であるから、
完全性から $b-b’=f_{n}(\alpha)$ となる $\alpha\in A_n$ が存在します。
ここで、$f_{n-1}(\partial^A_n(\alpha))=\partial_n^B\circ f_n(\alpha)=\partial^B_n(b-b')=f_{n-1}(a-a')$
$f_{n-1}$ は単射であるから、
$\partial^A_n(\alpha)=a-a'$ であるから、
$a-a'\in B_{n-1}(A)$ であるから、よって $[a]=[a']$ となります。

よって $[c]\mapsto [a]$ は $H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ の写像が定義できることがわかりました。準同型であることを示すのは易しいので省略します。 

よって、$H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ は準同型であることがわかります。

結局のところ連結準同型は $\partial_\ast[c]=[f^{-1}_{n-1}(\partial^B_n(b))]$ として
定義される。ここで $c$ に対して $b$ は $g_n(b)=c$ となる $b$ であれば
どの元でも構わないことになります。

この列が長完全系列であることを示すには、$H_n(A)$, $H_n(B)$, $H_n(C)$ の前後で
$\text{Im}=\text{Ker}$ を示す必要があります。

とりあえず $H_n(A)$ での完全性を示します。
$[c]\in H_{n+1}(C)$ に対して、$f_{n\ast}(\partial_\ast([c]))=f_{n\ast}([f^{-1}_{n}(\partial^B_{n+1}(b))])=[f_nf_n^{-1}(\partial^B_{n+1}(b))]=[\partial^B_{n+1}(b)]=0$
となります。 
また、$f_{n\ast}([a])=0$ とします。この時、$f_n(a)\in \partial^B_n$ であるので、
$f_n(a)=\partial^B_{n+1}(b)$ となる$b\in B_{n+1}$ が存在します。
よって、$a=f^{-1}_n\partial^B_{n+1}(b)$ であるから、
$g_n(b)=c$ とすることで、$[a]=\partial_\ast([c])$ となります。
つまり、$\text{Im}(\partial_\ast)=\text{Ker}(f_\ast)$ となることがわかりました。

とりあえずここまでにしておきます。

2025年10月26日日曜日

トポロジーB(第3回)

 今回は3回目です。

今回は主に単体複体のホモロジーについて行いました。

HPはこちらになります。


単体複体のホモロジーの前に、単体分割について定義を書いておきます。


定義(位相空間の単体分割)

位相空間 $X$ に対して、ある単体複体 $K$ が存在して、ある

同相写像 $f:|K|\to X$ が存在するとき、$(|K|,f)$ は$X$ の単体分割という。 


単体複体(の実現)の位相はユークリッド空間に埋め込まれた

局所的に線形なアフィン空間の和集合として位相が定義されています。


単体複体のホモロジーについて


単体複体のホモロジーの定義の前にチェイン複体の定義をしておきます。


定義(チェイン複体)

アーベル群の列 $\{C_n\}_{n\in {\mathbb Z}}$ と任意の $n$ に対して

準同型写像 $\partial_n:C_n\to C_{n-1}$ が定義されており、

各 $n$ に対して $\partial_{n}\circ \partial_{n+1}=0$を満たすとき、

その対 $(C_n,\partial_n)$ をチェイン複体という。

この $\partial_n$ を境界準同型という。

また、$Z_n(C)=\text{Ker}(\partial_n)$ として定義し、$n$ 次サイクル(もしくは $n$-サイクル)という。

また、$B_n(C)=\text{Im}(\partial_{n+1})$ として定義し、$n$ 次バウンダリ(もしくは$n$-バウンダリ)という。


$Z_n(C)$ も $B_n(C)$ も $C_n$ の部分群であることに注意しておきます。

$\partial_{n}\circ \partial_{n+1}=0$ という条件は、

$\text{Ker}(\partial_{n})\subset \text{Im}(\partial_{n+1})$ が成り立つことと同値になります。


定義(ホモロジー群)

チェイン複体 $(C_n,\partial_n)$  から、商群を

$H_n(C)= \text{Ker}(\partial_{n})/\text{Im}(\partial_{n+1})$ 

とおき、これをチェイン複体の $n$ 次ホモロジー群といいます。


次に、単体複体 $K$ があったときにチェイン複体を定義します。

それにより、上のチェイン複体からホモロジー群を得る操作を施すことで、

単体複体に対してホモロジーを得ることができます。

これを単体複体のホモロジーといいます。


$K$ を単体複体とし、$C_n(K)$ を $K$ に含まれる $n$単体の集合からなる ${\mathbb Z}$ 自由アーベル群とします。

つまり $n$単体の集合を $S_n=\{\sigma_1,\cdots,\sigma_k\}$ とすると、

$$C_n(K)={\mathbb Z}\sigma_1+\cdots+ {\mathbb Z}\sigma_k$$

となります。

$n$単体の有限集合からなる単なる形式和として考えることもできます。

このことからこの元どうしには関係式がないので、この和は直和にもなります。

ここで、$C_n(K)$ の和は係数をベクトルの足し算の要領で足していくだけです。

言うなれば、$C_n(K)$ の $S_n$ の集合を基底として定義される、係数 ${\mathbb Z}$ を

スカラーとするベクトル空間と考えられます。

実際ベクトル空間は体上ですのでベクトル空間ではないのですが…。

正確にはこちらの記事にもあるように ${\mathbb Z}$ 上の加群である ${\mathbb Z}$ 加群

という言い方をします。


問題は境界準同型写像です。

$\sigma=\langle v_0v_1\cdots v_n\rangle$ とすると、

$$\partial_n \sigma= \sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0v_1\cdots \widehat{v_i}\cdots v_n\rangle$$

ここでハットの意味は、その項を除いて得られる元を意味します。


このようにして境界準同型  $\partial_n$ が定義されます。

この写像が境界準同型であることを証明するには、$\partial_{n-1}\circ \partial_n=0$を確かめる必要があります。


実際、

$$\partial_{n-1}\circ \partial_n(\sigma)=\partial_{n-1}\sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0 v_1\cdots \widehat{v_i}\cdots v_n\rangle$$

$$=\sum_{i=0}^{i-1}\sum_{j=0}^{i-1}(-1)^{i+j}\langle v_0v_1\cdots \widehat{v_j}\cdots\widehat{v_i}\cdots v_n\rangle$$

$$+\sum_{i=0}^{i-1}\sum_{j=i+1}^{n}(-1)^{i+j-1}\langle v_0v_1\cdots \widehat{v_i}\cdots\widehat{v_j}\cdots v_n\rangle$$

$$=\sum_{0\le j<i\le n}(-1)^{i+j}\langle v_0v_1\cdots \widehat{v_j}\cdots\widehat{v_i}\cdots v_n\rangle$$

$$+\sum_{0\le i<j\le n}^{n}(-1)^{i+j-1}\langle v_0v_1\cdots \widehat{v_i}\cdots\widehat{v_j}\cdots v_n\rangle=0$$


よって $(C_n(K),\partial_n)$ はチェイン複体であることがわかりました。

このチェイン複体のホモロジーを取ることで単体複体のホモロジー $H_n(K)$ を

定義することができました。


単体の $-1$ 倍と単体の向き


ここで、単体複体 $K$ の頂点の集合に $\{v_0,\cdots, v_m\}$ のように順番がついていると

します。

そうすることで、$K$ の任意の $k$単体は、$\langle v_0\cdots v_m\rangle$ の面にも

なっていますが、この順番を保ったままそのほかの頂点を除くことで表示

$\langle v_{i_0}v_{i_1}\cdots v_{i_k}\rangle$ と書くことができ、$i_0<i_1<\cdots< i_k$

を満たします。しかし、そのほかの並べ方にも $C_k(K)$ の元として拡張することができます。


どうするかというと、$i_0<i_1<\cdots, i_k$ のほかの並べ方として

$j_0,j_1,\cdots, j_k$ を選んだ時、

$$\langle v_{i_0}v_{i_1}\cdots v_{i_k}\rangle=\text{sgn}\begin{pmatrix}i_0&i_1&\cdots&i_k\\j_0&j_1&\cdots& j_k\end{pmatrix}\langle v_{i_0}v_{i_1}\cdots v_{i_k}\rangle$$

のようにすることで、$-1$ 倍、もしくは $1$ 倍することで拡張します。

ここで$\text{sgn}$ はこの置換による符号になります。

ここで符号の意味としてその$k$単体についている向きと考えることができます。

つまり、$\langle v_0v_1\rangle$ は $v_0$ から $v_1$ へ向かう辺だが、

$\langle v_1v_0\rangle$ のように添え字を逆にしたものは、$v_1$ から $v_0$ へ

向かう辺ということになります。2単体の場合も同様で向きはちょうど2つあるので

$\langle v_0v_1v_2\rangle$ の偶置換の場合にこの単体と同じ向きで、奇置換の場合には

それと反対の向きを持つ 2単体となります。


サイクル $Z_n(K)$ の意味


$Z_n$ の元の意味を考えてみましょう。


$x\in C_1(K)$ に対して、$\sigma_i^1$ を 1単体として、$x=\sum_{i=1}^na_i\sigma_i^1$ とかけるとします。

この和は、いくつかの(向きづけられた)1単体の和と考えられます。

例えば $a_j\sigma_j$ は $a_j>0$ の場合 $\sigma$ の向きの1単体が$|a_j|$ 個ある状態であり、

$a_j<0$ の場合は $-\sigma$ の向きの1単体が $|a_j|$ 個ある状態です。

$\sigma$ と $-\sigma$ の和は相殺して0 になります。

この元がサイクルであるということは $\partial_1x=0$ が成り立つことですが、

$$\partial_1 x=\partial_1\sum_{i=1}^na_i\sigma_i^1= \sum_{i=1}^na_i\partial_1\sigma_i^1 $$

$$=\sum_{i=1}^na_i(v_i-w_i)=0$$

とします。ただし $w_i$ と $v_i$ は 0単体になります。

ここで項 $v_1$ の全ての係数を足して 0 ということは、元 $x$ はある $v_1$ に入ってくる1-単体

と出ていく1-単体の数が等しいということを意味します。

これが各頂点で成り立っていることから、それらを適当につなぎ合わせることで、

端のないいくつかのサイクルを1単体上で作ることができます。

例えば下の図を見てみると、一つの頂点に6つの向きづけられた1単体が

出入りしますが、それらを適当につなぎ合わせることでその頂点の前後で一続きとなるパスが出来上がります。

この操作を下の図でやってみるとこんな感じになります。

ある頂点で6つの辺(1単体)が入ったり出たりしており、出る矢印は3本、

入る矢印も3本です。これらを適当にまとめることで、3本の一続きの矢印になっていますね。この時どの矢印をペアにするかは任意性がありますが、この際どれでもいいです。



これを各頂点で行ってやることで端のない道が出来上がります。辺の総和は有限なので
繋げた道はいつか元の頂点に戻ってきます。
実際は各辺に整数がかけられていてもう少し複雑ですが、その場合も重複した辺を通る
複数の道があると考えることで同じことが成り立ちます。

よって1-サイクル $x$ はいくつかの(一続きの)サイクルの和つまり$x=b_1c_1+b_2c_2+\cdots b_mc_m$ とかけます。ただし $c_i$ は $K$ の 1単体上を進む一続きのサイクルで、$b_i$ はある整数です。
一般に $Z_n(K)$ の任意の $n$-サイクルも $K$ に含まれる $n$単体をつなぎ合わせていって、端のない $n$単体の和からなる $n$ 次元サイクル(一続きのもの)の和として得られています。


例えば2単体 $\langle v_0v_1v_2\rangle$ の境界準同型によって

$$\partial_2 \langle v_0v_1v_2\rangle= \langle v_1v_2\rangle-\langle v_0v_2\rangle+ \langle v_0v_1\rangle$$

$$= \langle v_1v_2\rangle+\langle v_2v_0\rangle+ \langle v_0v_1\rangle $$

そうすると、$v_0,v_1,v_2$を順に向きに沿って一周していることになります。
これは一続きの1-サイクルになります。
しかし、 $\partial_2\langle v_0v_1v_2\rangle$ は1-サイクルのなかでも$\text{Im}(\partial_2)$ のカタチの元であり、つまり1-サイクルが2単体の境界となります。

上で見たように $\partial_n$ は $n$単体(もしくはその和)の境界を取る操作でした。
ですので
$B_1(K)$ の元である1-バウンダリは $n$単体で得られる単体の和の境界ということに
なります。

ここで、ホモロジーを定義するときに、$Z_n(K)/B_n(K)$ としましたが、これは、
$n$-サイクルの元だが、$n$-バウンダリである元の部分を無視するということを意味しています。
ホモロジーの定義は、求めたいのは$n$-サイクルだが、そのうち、
$n$-バウンダリの部分は非本質的だからその部分(部分加群となる)の商加群を
計算しなさいということになっているのです。

上の部分を理解するために以下の例を出しておきます。




この図の(0)を単体複体とします。この三角形の色がついた部分に2単体 $\sigma^2$ が
張っているとします。そのほか4つの0単体に5つの1単体があるとします。
この際、頂点の命名は煩雑になるのでやめておきます。
その代わり、(1)の絵で与えられるサイクルを $c_1$ とし、(2)で与えられるサイクルを
$c_2$ とし、(3) で与えられるサイクルを $c_3$ とします。
この単体複体で与えられるサイクルはこれら $c_1,c_2,c_3$ の一次結合
$a_1c_1+a_2c_2+a_3c_3$ で与えられます。
(どうしてそうなるかについては実際 $\text{Ker}(\partial_1)$ を解かないといけませんが、
ここではこれを認めて進むとします)
ですので、$Z_1(K)={\mathbb Z}c_1+ {\mathbb Z}c_2+ {\mathbb Z}c_3$
となりますが、実は、$c_1=c_2+c_3$ になり関係式があります。
$c_1,c_2,c_3$ の単体を真面目に1単体の和として書くと、左上から右下に走る
対角線のなす1単体が$c_2,c_3$ で向きがちょうど逆なので相殺されて
なくなるからです。
よってこのサイクルは(1) の表すサイクル $c_1$ になるということになります。
よって、上の $Z_1(K)$ を直和の形に書くと、
$$Z_1(K)={\mathbb Z}c_2\oplus {\mathbb Z}c_3$$
となります。

この3つのサイクルのうち、2-単体のバウンダリになっているのは $c_3$ だけです。
この唯一つの2-単体を$\sigma^2$ と書くと $\partial_2\sigma^2=c_3$ となります。
このとき、$c_3$には向きがついているので、この写像を用いて自然に$\sigma^2$
に向きがつけられることにもなることに注意しておきましょう。

結局 $B_1(K)={\mathbb Z}c_3$ ということですが、
$H_1(K)$ は、$Z_1(K)/B_1(K)$ であり、つまり$Z_1(K)\bmod B_1(K)$ を意味しており、
${\mathbb Z}c_2\oplus {\mathbb Z}c_3$ の中で $B_1(K)={\mathbb Z}c_3$ の部分を
moduloして得られるものということで、
$Z_1(K)/B_1(K)\to {\mathbb Z}c_2$ が同型写像になります。
実際、この写像 $\varphi$ は $x=a_2c_2+a_3c_3\mapsto a_2c_2=:\varphi(x)$ であり、明らかに準同型写像ですが、
もし、$a_2c_2=0$ であるとすると、$a_2=0$ となるから、$x=a_2c_2+a_3c_3=a_3c_3\in B_1(K)$ であり、これは $x\in Z_1(K)/B_1(K)$ において 0 元なります。
これは$\varphi$ が単射であることを意味し、全射性については、
任意の $a_2c_2\in{\mathbb Z}c_2$ において $a_2c_2=\varphi(a_2c_2)$ であるから明らかに成り立ちます。
よって、$H_1(K)\cong {\mathbb Z}c_2\cong {\mathbb Z}$ となります。

ここで、この3つのサイクル $c_1,c_2,c_3$ をまとめてみると、
$c_3$ は $H_1(K)$ においてはゼロになってしまっていますが、
そのほかの $c_1, c_2$ が H_1(K)$ においてゼロではない、つまりホモロジーとして本質的に
意味のあるサイクルとなっているわけです。

気分としては、$c_3$ は何かの境界になっているからその分を除きたいのです。
そうすると、$c_1$ と $c_2$ も意味のあるサイクルだが、$c_1=c_2+c_3$であり、
$c_1-c_2=c_3$ であるから、その差は高々バウンダリくらいしかないことになります。
つまり $c_1\equiv c_2\mod c_3$ ということですね。整数のmod計算を思い出してください。$c_3$ の部分を法として剰余を取ることになります。
同じことですが、$c_1$ は $H_1(K)$ の生成元の代表元であるという言い方もできます。
代表元とは商集合におけるその同値類を代表する元のことをいいました。

この$c_1$ と $c_2$ があるバウンダリをmodして同じになることをホモロガスとも言います。
つまり、使い方としては、$c_1$ と $c_2$ はホモロガスといいます。
また、$c_3$ はゼロとホモロガスなので、$c_3$ はヌルホモロガスともいいます。
(ヌルというのはドイツ語でゼロの意味ですが、
ゼロホモロガスといわずヌルホモロガスというあたり、
ホモロジーの定義にはドイツ人が大きく貢献しているのかもしれません。知らんけど。)

よってこの単体において、1-サイクルとして本質的なものを取り出したところ
1次元ホモロジー群は $c_1$ で生成される ${\mathbb Z}$ と同型な群ということになります。
つまりこの単体複体 $K$ は $c_2$ があらわしているような三角形の周の部分
に2単体を貼り付けたものだからその分を除く(もしくはサイクルの1辺に押し付ける)
などしてなくしてしまってもホモロジーには何も影響がないということになります。

なので $K$ のホモロジーはある2単体の境界部分のホモロジーと同型になります。
つまりこれは円周 $S^1$ (例えば${\mathbb R}^2$ の単位円)と同相ですので、円周の1次ホモロジーと同型になります。
もちろんこれは単体複体が両者同じと言っているわけではなく、あくまでホモロジーが
同型と言っているにすぎません。

このようにホモロジー $H_n(K)=Z_n(K)/B_n(K)$ の定義の意味を深く考えてみることで
ホモロジーの理解が深まります。取りえず今日のところはこの辺で終わります。