[場所:2H101(火曜日15:15〜16:30, 16:45〜18:00)](2025年度)
第3回に引き続き数学リテラシー2の第4回目を行いました。
4回目は $\epsilon$-$\delta$ 論法を用いた関数の連続性の定義を行いました。
まず、関数 $f(x)$ の $x=a$ での極限についての定義をしておきます。
関数 $y=f(x)$ が$x\to a$ において限りなく $\alpha$ に近づくことを
定義します。つまり、$x=a$ の周りで、$x$ がどのように $a$ に近づいても
$f(x)$ が $\alpha$ に近づくことを定義をします。
それをどのように定義したら良いか?
まずは、それを否定してみます。
近づくことを数列を用いて表すことができます。
つまり、それは
ある数列 $a_n$ があって、それが $a$ に収束するが、$f(a_n)$ が $\alpha$ に
収束しない
ことであることになります。
つまり、$x=a$ にどのように近づく数列があっても $f(a_n)$ が $\alpha$ に近づく
の否定です。ある近づく数列 $a_n$ があって、$f(a_n)$ が $\alpha$ に近づかない。
前回までで、 $\epsilon$-$N$ 論法をやりましたから、それを用いて考えていきます。
もう一度言うと、数列 $a_n$ が存在して、
$a_n\to a$ ・・・①
だが、
$f(a_n)\not\to \alpha$ ・・・②
であることになります。
これを、$\epsilon$-$N$ 論法で言い換えると
① から、$a_n$ が $a$ に近づくことは、$\forall \delta>0$ に対して、$\exists N\in {\mathbb N}$ に対して
$\forall n>N$ に対して $|a_n-a|<\delta$ となります。
②から、$\exists \epsilon>0$ に対して $\forall N’\in {\mathbb N}$ に対して、$\exists n>N’$ に対して、$|f(a_n)-\alpha|\ge \epsilon$ となります。
このことを用いて、以下の命題を示すことができます。
命題
以下の1. と2. は同値である。
(1) 数列 $a_n$ が存在して、 $a_n\to a$ かつ $f(a_n)\not\to \alpha$ となる。
(2) $\exists \epsilon>0$ と $\forall \delta>0$ に対して、$|x-a|<\delta$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ を満たす $x$ が存在する。
証明
(1) が成り立つことを書き下すと次のようになります。
$\forall \delta>0$ に対して $\exists N\in {\mathbb N}$ に対して $\forall n>N$ に対して$|a_n-a|<\delta$ を満たし、
かつ
$\exists \epsilon>0$ に対して $\forall N’\in {\mathbb N}$ に対して$\exists n’>N’$ に対して$|f(a_{n’})-\alpha|\ge \epsilon$
を満たします。
ただし、①と②は別々の命題なので、$\epsilon>0$ と $\delta$ は独立に選びます。
お互いに依存しません。
ただ、$N$ は$\delta$ に依存して決まります。
なので、
$\exists\epsilon>0$ と $\forall \delta>0$ に対して、1つ目の条件から、$N\in {\mathbb N}$ が存在して、$ n>N$ に対して $|a_n-a|<\delta$ が成り立ちます。
ここで $\exists \epsilon>0$を先に書いた理由は、$\forall \delta>0$ $\exists \epsilon>0$ なら
$\epsilon>0$ が $\delta$ に依存する形になるからです。
また、2つ目の条件から、
$N’=n$ とすれば、$n’>N’$ なる $n’$ を取り直して、$|f(a_{n’})-\alpha|\ge \epsilon$ が成り立つようにできます。
このとき、$n>N$ となる任意の $n$ に対して $|a_n-a|<\delta$ が成り立ちますので、$|a_{n’}-a|<\delta$
も成り立ち続けます。
よって、$a_{n’}=x$ とおけば、
$\forall \epsilon>0$ と $\exists\delta>0$ に対して、$|x-a|<\delta$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $x$ が
存在したことになります。
よって(2) がいえました。
また、(2) を仮定します。
このとき、数列 $a_n$ を作っていきます。
$\exists \epsilon>0$ をとり、$\delta=1$ とするとことで、
$|x-a|<1$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $x$ が存在します。
それを $a_1$ とおきます。
また、同様に、
$\exists \epsilon>0$ をとり、$\delta=\frac{1}{2}$ とするとことで、
$|x-a|<1$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $x$ が存在します。
それを $a_2$ とおきます。
これを繰り返すことで、
$\exists \epsilon>0$ をとり、 $\delta=\frac{1}{n}$ とすることで、
$|a_n-a|<\frac{1}{n}$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $a_n$ をとることができます。
このとき、
$|a_n-a|<\frac{1}{n}$ であるから、挟み撃ちの原理から $a_n\to a$ であることがわかり、
$\exists \epsilon>0$ に対して、$|f(a_n)-\alpha|\ge \epsilon$ であることから
特に、$f(a_n)\not\to \alpha$ であることがわかります。
よって、(1) がいえました。$\Box$
この
(2) $\exists \epsilon>0$ と $\forall \delta>0$ に対して、$|x-a|<\delta$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ を満たす $x$ が存在する。
を否定してやったものを考えれば、
$f(x)$ が $x\to a$ ならば $f(x)\to \alpha$ になることを定義できます。
つまり次の定義をすれば良いことになります。
定義
$f(x)$ が $x\to a$ での極限が $\alpha$ であるとは、
任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$0<|x-a|<\delta$ となる任意の $x$ に対して $|f(x)-\alpha|<\epsilon$
が成り立つことを言い、このとき、$\lim_{x\to a}f(x)=\alpha$ とかく。
この3行目の文章は、簡潔に
$0<|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\epsilon$
とかくこともできます。
この定義は、$x=a$ の値 $f(a)$ が定められていなくても$x=a$ に近づく数列を取ることが
できれば定義できます。
$f(x)$ が $x\to a$ であるときに$f(x)$ が$\alpha$ に近づくことが定義されました。
この定義を使って、
$x=a$ での値 $f(a)$ が存在するとき、 $f(x)$ の $x=a$ での連続性を以下のように
定義することができます。
定義
$f(x)$ が $x=a$ で連続であるとは、$\lim_{x\to a}f(x)=f(a)$ であることである。
つまり、書き下すと、
$\forall \epsilon>0$ と $\exists\delta>0$ に対して、$0<|x-a|<\delta$
なら、$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ が成り立つ。
となります。
このように、$\epsilon$ を $\delta$ を用いて関数の連続性を定義して、
それらを用いて関数の連続性や不連続性を示す方法を
$\epsilon$-$\delta$ 論法と言います。
この定義を使って以下、いくつかの例で $\epsilon$-$\delta$ 論法を実践してみましょう。
例1
関数 $f(x)=x$ が $x\to 0$ のとき $0$ に近づく。
つまり、$f(x)=x$ が $x=0$ において連続であることです。
任意の $\epsilon>0$ に対して、
$0<|x|<\delta$ に対して、$|x|<\epsilon$ となるような $\delta$ を探せば良いことになります。
この場合、$\delta=\epsilon$ として取れば良いことになります。
なぜなら、$0<|x|<\delta$ ならば、$0<|x|<\epsilon$ が成り立ち、$|x|<\epsilon$ が成り立つからです。
後半は自明なことを言っています。
同じように以下を示しましょう。
例2
$f(x)=x^2$ が $x=1$ で連続である。
$\forall \epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$|x-1|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、$|x^2-1|<\epsilon$ が成り立つ
ように$\delta$ を定められるかどうかですが、
$|x^2-1|=|x-1|\cdot|x+1|<\delta(|x-1+2|)<\delta(\delta+2)<\epsilon$ となり、
この2次不等式を解けば目標の $\delta$ を得られますが、
2次不等式を厳密に解かなくても、条件を満たす $\delta$ が存在することを
示すだけでいいです。つまり $\delta$ を十分小さく取れば良いのだから
例えば、$\delta<1$ くらい仮定しておきます。
このくらい小さくとっても $\delta>0$ を満たす $\delta$ はたくさんありますので問題はありません。
ただ、この不等式を使って、$\delta(\delta+2)<1\cdot (1+2)=3$とすると、任意にとった
$\epsilon$ より小さくは取れませんので、中途半端に
$\delta(\delta+2)<\delta(1+2)=3\delta$ と $\delta$ の部分を残しておきます。
そうすると、$\delta<1$ だけではなく、$\delta<\frac{\epsilon}{3}$ と取ることで、
$\delta(\delta+2)<\epsilon$ となり、$\epsilon>0$ より小さくすることができます。
$\delta<\frac{\epsilon}{3}$ となる$\delta$ も十分小さく$\delta$ を取ることでそのような
$\delta$ は存在しますので、
合わせて、
任意の $\epsilon>0$ に対して、$0<\delta<\min\{1,\frac{\epsilon}{3}\}$ のように $\delta$ を取ることで、
$|x-1|<\delta\Rightarrow |x^2-1|<\epsilon$ を満たすようにができました。
よって、$y=x^2$は $x=1$ で連続であることわかります。
次に、極限値が存在しない例を扱います。
例3
$f(x)=\sin\frac{1}{x}$ が $x\to 0$ で、極限 $\alpha$ を持たない。
$\alpha\neq 1$ であるとします。
このとき、ある数列 $a_n$ で、$a_n\to 0$ が成り立つが、
$f(a_n)\not\to \alpha$ になることを示します。
$a_n=\frac{1}{(2n+\frac{1}{2})\pi}$ とおくと、
$a_n\to 0$ であり、
$f(a_n)=\sin((2n+\frac{1}{2})\pi)=\sin\frac{\pi}{2}=1$ が成り立ち、
$f(a_n)\to 1$ であるから、$f(a_n)\not\to\alpha$ となります。
つまり、
$f(x)$ $x\to 0$ で $\alpha$ に極限値を持ちません。
$\alpha=1$ としても、
$a_n=\frac{1}{2n\pi}$ とおくと、$a_n\to 0$ ですが、
$f(a_n)=\sin 2n\pi=0$ となるので、
$f(a_n)\to 0$ となります。
よって $f(a_n)\not\to 1$ となります。
よって、$f(x)=\sin\frac{1}{x}$ は $x\to 0$ においてどの値にも極限値になりません。
つまり $\lim_{x\to 0}\sin \frac{1}{x}$ は存在しません。
なので、実数関数 $y=f(x)$ を
$$f(x)=\begin{cases}\sin\frac{1}{x}&x\neq 0\\0&x=0\end{cases}$$
としても、$f(x)$ は $x=0$ で連続ではありません。
もちろん $x=0$ での値をどのように定めても連続にはなりません。
他にもやっておきます。
例4
$y=e^x$ が $x=x_0$ で連続である。
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\delta=\log(1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}})$ とします。
$0<|x-x_0|<\delta$ が成り立つとします。
仮に、
$0<x-x_0<\delta$ とします。このとき
$|f(x)-f(x_0)|=e^x-e^{x_0}=e^{x_0}(e^{x-x_0}-1)<e^x_0(e^\delta-1)=e^{x_0}(e^{\log (1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}})}-1)=e^{x_0}(1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}}-1)=\epsilon$
が成り立ちます。
また、
$0<x_0-x<\delta$ とします。このとき、
$|f(x)-f(x_0)|=e^{x_0}-e^{x}=e^{x_0}(1-e^{x-x_0})<e^{x_0}(1-e^{-\delta})$
$=e^{x_0}(1-e^{-\log(1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}})})= e^{x_0}(1-\frac{1}{1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}}})$
$= e^{x_0}(1-\frac{e^{x_0}}{e^{x_0}+\epsilon})=e^{x_0}\frac{\epsilon}{e^{x_0}+\epsilon}<\epsilon$
が成り立ちます。
よって、どちらにしても、つまり$|x-x_0|<\delta$ ならば、
$|f(x)-f(x_0)|<\epsilon$ が成り立ちます。
よって、$f(x)=e^x$ は各点で連続であることがわかります。
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