今回は単体写像がホモロジーに準同型写像を誘導すること
またへびの補題などを行いました。
HPはこちらになります。
単体写像がホモロジーに写像を誘導すること
単体写像 $f:K\to L$ とは、$K$ の頂点の集合を $S_0$、$L$ の頂点の集合を
$T_0$ とすると、$f_0:S_0\to T_0$ がまず定義されていて、
各 $n$単体 $\langle v_0v_1,\cdots,v_n\rangle\in K$に対して、頂点の集合 $\{f_0(v_0),\cdots,f_0(v_n)\rangle\}$ が
$L$ の何かしらの単体の頂点に"ちょうど"なっているものを言いました。
この時 $f(\sigma)$ をその $L$ の単体とします。一般には $f_0$ は単射とは
限らないので、この単体の次元(この頂点の集合の濃度$-1$)は $n$ 以下であり、ちょうど $n$ になるとは限りません。
まず、単体複体 $K,L$ の実現を $|K|,|L|$ とかくと、単体写像 $f$ から連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を得ることができます。
補題
単体写像 $K\to L$ に対して、連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ が誘導できる。
(証明)
$K,L$ が ${\mathbb R}^N$ および ${\mathbb R}^M$ の部分集合として実現されているとして、以下のように連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を定めます。
$\sigma\in K$ に対して、
$|f|_\sigma:|\sigma|\to |f(\sigma)|$ を $x=\sum_{i=0}^nt_iv_i$ としたときに、
$$|f|_\sigma(x)=\sum_{i=0}^nt_if(v_i)$$
として定めます。この写像は一次関数なのでもちろん連続です。
このように $|f|_\sigma$ は $K$ の各単体で定義されますが、$\sigma_1\cap\sigma_2\neq\emptyset$ の時に、各 $\sigma_i$ で定義された連続写像が$\sigma_1\cup\sigma_2$ に拡張することができるのかについて検証します。
$\sigma_1\cap \sigma_2=\sigma_3$ であり、$\sigma_3$ も単体になります
$\sigma_1=\langle v_0\cdots v_n\rangle $
$\sigma_2=\langle v_0\cdots v_kv_{n+1}\cdots v_{n+m}\rangle $
$\sigma_3=\langle v_0\cdots v_k\rangle $
としておきます。ここで $k\le n$ です。
$|f|_{\sigma_1}(x)=\sum_{i=0}^nt_if(v_i)$
$|f|_{\sigma_2}(x)=\sum_{i=0}^kt_if(v_i)+\sum_{i=n+1}^{n+m}t_if(v_i)$
$|f|_{\sigma_3}(x)=\sum_{i=0}^kt_if(v_i)$
であるから、$|f|_{\sigma_3}$ はそれぞれの連続写像 $|f|_{\sigma_1}$ と $|f|_{\sigma_2}$ を制限して得られており、同値なことに $|f|_{\sigma_3}$ は $|f|_{\sigma_1}$ と $|f|_{\sigma_2}$ に連続に拡張しています。
同様に単体複体 $|K'|$ に定義された 連続関数が単体 $\sigma$ が面 $\tau\prec \sigma$
を共有するとして $|f|_{K'}:|K|\to |L|$ と $|f|_\sigma:|\sigma|\to |L|$ において
連続であり、面 $\tau$ において、ちょうど制限になるように定義されており、
一意的に $|K'|\cup|\sigma|$ からの連続写像として拡張することができます。
また、同様に $|\sigma|$ の複数の面が $|K|$ と共有している場合も拡張ができます。
ですので、$|K|$ がいくつかの単体を貼り付けてえられていることから、
この拡張を $K$ 全体に広げることで $|K$ 上で連続関数が定義されます。 $\Box$
よって単体写像 $f:K\to L$ はある連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を定義しています。
また、単体写像は チェイン複体に写像を定義しているが、
それはチェイン写像となる。チェイン写像の定義をここでしておく。
定義(チェイン写像)
チェイン複体 $(C_n,\partial_n), (D_n,\partial’_n)$ に対して準同型写像
$f_n:C_n\to D_n$ が任意の $n$ において $\partial’_n\circ f_n=f_{n-1}\circ \partial_n$ を満たすとき、
$\{f_n\}$ をチェイン写像という。
チェイン写像 $\varphi:C_n\to D_n$ に対して、
ホモロジー上に準同型写像 $\varphi_\ast:H_n(C)\to H_n(D)$ が誘導させることができます。
というのも、
補題
$\varphi$ に対して $\varphi_\ast:H_n(|K|\to H_n(|L|)$ を $\varphi_\ast([x])=[\varphi (x)]$ と
なる定義はwell-definedである。
(証明)
この写像がwell-definedであることは、
$[x]=[x’]$ であるとき、$x-x’\in B_n(C)$ が成り立ち、
$x-x’=\partial_{n+1}\alpha$ となります。
$\varphi(x)-\varphi(x’)=f(\partial_{n+1}\alpha)=\partial’_n\circ f(\alpha)$
となるので、$\varphi(x)-\varphi(x’)\in B_n(D)$ が成り立ちます。
つまり、$[\varphi(x)]=[\varphi’(x)]$ in $H_n(D)$ が成り立つので
$\varphi_\ast$ がホモロジー上の写像としてwell-definedに定義できたことに
なります。$\Box$
ここで単体写像 $f:K\to L$ に対してホモロジー上に、
$$f_\ast(\sigma)=\begin{cases}f(\sigma)& f(\sigma)\text{ が }n\text{単体}\\0& f(\sigma)\text{ が }n\text{単体ではない}\end{cases}$$
のように定義して、この写像を線形に拡張することで準同型写像
$C_n(K)\to C_n(D)$ を得る。
$\sigma=\langle v_0\cdots v_n\rangle \in K$ を $n$単体とするとき、
$f(\sigma)$ が $n$単体であるとき、
$$f\circ \partial_n(\sigma)=f( \sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0\cdots \hat{v_i}\cdots v_n\rangle)$$
$$=\sum_{i=0}^n(-1)^n\langle f(v_0)\cdots \widehat{f(v_i)}\cdots f(v_n)\rangle\cdots(\ast)$$
となります。ここでハットはその項を除くことを意味しています。
ここで、$f(\sigma)=\langle f(v_0)\cdots f(v_n)\rangle$ であるから、
$$(\ast)=\partial_n’\circ f(\sigma)$$
となります。
$f(\sigma)$ が $n$単体ではないとき、
$i\neq j$ に対して$f(v_i)=f(v_j)$ が成り立つとします。
$$f\circ \partial_n(\sigma)=f( \sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0\cdots \hat{v_i}\cdots v_n\rangle)$$
$$=(-1)^i\langle f(v_0)\cdots \widehat{f(v_i)}\cdots f(v_j)\cdots f(v_n)\rangle $$
$$+ (-1)^j\langle f(v_0)\cdots f(v_i)\cdots \widehat{f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$
ここで第1項目の $f(v_j)$ をハットのついた$f(v_i)$ の位置まで持っていくと、
符号が $(-1)^{j-i-1}$だけ変化するから、
$$=(-1)^{j-1}\langle f(v_0)\cdots f(v_j)\cdots \widehat{ f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$
$$+ (-1)^j\langle f(v_0)\cdots f(v_i)\cdots \widehat{f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$
となります。よってこの値が0になります。
つまり $\partial_n’\circ f(\sigma)=0$ と同じになるので、
確かにこの場合もチェイン写像の条件を満たします。
よって単体写像 $f:K\to L$ からホモロジー群への準同型写像
$$f_\ast:H_n(K)\to H_n(L)$$
が誘導されます。
ヘビ🐍の補題
ヘビといえば、🐍ですが、実際英語でもsnake lemmaと言われます。
補題(ヘビの補題)
任意の $n$ に対して短完全系列
$$\begin{CD}0@>>> A_n@>f_n>> B_n@> g_n >> C_n @>>>0\end{CD}$$
がチェイン複体の間のチェイン写像である場合、
任意の $n$ に対してある準同型写像 $\partial_\ast:H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ が存在して、
長完全系列
$$\begin{CD}@>>>H_{n+1}(C)@>\partial_\ast>> H_n(A)@>f_{n\ast}>> H_n(B)@>g_{n\ast}>> H_n(C) @>\partial_\ast>>H_{n-1}(A)@>>>\end{CD}$$
$$\begin{CD}0@>>> A_n@>f_n>> B_n@> g_n >> C_n @>>>0\\ @.@VV \partial^A_{n}V @VV \partial^B_{n}V @VV \partial^C_{n} V \\ 0@>>> A_{n-1}@>f_n>> B_{n-1}@> g_{n-1} >> C_{n-1} @>>>0\end{CD}$$
 
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