2025年10月31日金曜日

トポロジーB(第4回)

 今回は単体写像がホモロジーに準同型写像を誘導すること
またへびの補題などを行いました。

HPはこちらになります。



単体写像がホモロジーに写像を誘導すること


単体写像 $f:K\to L$ とは、$K$ の頂点の集合を $S_0$、$L$ の頂点の集合を

$T_0$ とすると、$f_0:S_0\to T_0$ がまず定義されていて、

各 $n$単体 $\langle v_0v_1,\cdots,v_n\rangle\in K$に対して、頂点の集合 $\{f_0(v_0),\cdots,f_0(v_n)\rangle\}$ が

$L$ の何かしらの単体の頂点に"ちょうど"なっているものを言いました。

この時 $f(\sigma)$ をその $L$ の単体とします。一般には $f_0$ は単射とは

限らないので、この単体の次元(この頂点の集合の濃度$-1$)は $n$ 以下であり、ちょうど $n$ になるとは限りません。


まず、単体複体 $K,L$ の実現を $|K|,|L|$ とかくと、単体写像 $f$ から連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を得ることができます。


補題

単体写像 $K\to L$ に対して、連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ が誘導できる。


(証明)

$K,L$ が ${\mathbb R}^N$ および ${\mathbb R}^M$ の部分集合として実現されているとして、以下のように連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を定めます。


$\sigma\in K$ に対して、


$|f|_\sigma:|\sigma|\to |f(\sigma)|$ を $x=\sum_{i=0}^nt_iv_i$ としたときに、

$$|f|_\sigma(x)=\sum_{i=0}^nt_if(v_i)$$

として定めます。この写像は一次関数なのでもちろん連続です。


このように $|f|_\sigma$ は $K$ の各単体で定義されますが、$\sigma_1\cap\sigma_2\neq\emptyset$ の時に、各 $\sigma_i$ で定義された連続写像が$\sigma_1\cup\sigma_2$ に拡張することができるのかについて検証します。


$\sigma_1\cap \sigma_2=\sigma_3$ であり、$\sigma_3$ も単体になります

$\sigma_1=\langle v_0\cdots v_n\rangle $

$\sigma_2=\langle v_0\cdots v_kv_{n+1}\cdots v_{n+m}\rangle $

$\sigma_3=\langle v_0\cdots v_k\rangle $


としておきます。ここで $k\le n$ です。


$|f|_{\sigma_1}(x)=\sum_{i=0}^nt_if(v_i)$ 

$|f|_{\sigma_2}(x)=\sum_{i=0}^kt_if(v_i)+\sum_{i=n+1}^{n+m}t_if(v_i)$

$|f|_{\sigma_3}(x)=\sum_{i=0}^kt_if(v_i)$ 

であるから、$|f|_{\sigma_3}$ はそれぞれの連続写像 $|f|_{\sigma_1}$ と $|f|_{\sigma_2}$ を制限して得られており、同値なことに $|f|_{\sigma_3}$ は $|f|_{\sigma_1}$ と $|f|_{\sigma_2}$ に連続に拡張しています。


同様に単体複体 $|K'|$ に定義された 連続関数が単体 $\sigma$ が面 $\tau\prec \sigma$

を共有するとして $|f|_{K'}:|K|\to |L|$ と $|f|_\sigma:|\sigma|\to |L|$ において 

連続であり、面 $\tau$ において、ちょうど制限になるように定義されており、

一意的に $|K'|\cup|\sigma|$ からの連続写像として拡張することができます。


また、同様に $|\sigma|$ の複数の面が $|K|$ と共有している場合も拡張ができます。

ですので、$|K|$ がいくつかの単体を貼り付けてえられていることから、

この拡張を $K$ 全体に広げることで $|K$ 上で連続関数が定義されます。  $\Box$


よって単体写像 $f:K\to L$ はある連続写像 $|f|:|K|\to |L|$ を定義しています。

また、単体写像は チェイン複体に写像を定義しているが、

それはチェイン写像となる。チェイン写像の定義をここでしておく。


定義(チェイン写像)

チェイン複体 $(C_n,\partial_n), (D_n,\partial’_n)$ に対して準同型写像

$f_n:C_n\to D_n$ が任意の $n$ において $\partial’_n\circ f_n=f_{n-1}\circ \partial_n$ を満たすとき、

$\{f_n\}$ をチェイン写像という。


チェイン写像 $\varphi:C_n\to D_n$ に対して、

ホモロジー上に準同型写像 $\varphi_\ast:H_n(C)\to H_n(D)$ が誘導させることができます。

というのも、


補題

$\varphi$ に対して $\varphi_\ast:H_n(|K|\to H_n(|L|)$ を $\varphi_\ast([x])=[\varphi (x)]$ と

なる定義はwell-definedである。


(証明)

この写像がwell-definedであることは、

$[x]=[x’]$ であるとき、$x-x’\in B_n(C)$ が成り立ち、

$x-x’=\partial_{n+1}\alpha$ となります。

$\varphi(x)-\varphi(x’)=f(\partial_{n+1}\alpha)=\partial’_n\circ f(\alpha)$

となるので、$\varphi(x)-\varphi(x’)\in B_n(D)$ が成り立ちます。

つまり、$[\varphi(x)]=[\varphi’(x)]$ in  $H_n(D)$ が成り立つので

$\varphi_\ast$ がホモロジー上の写像としてwell-definedに定義できたことに

なります。$\Box$ 


ここで単体写像 $f:K\to L$ に対してホモロジー上に、


$$f_\ast(\sigma)=\begin{cases}f(\sigma)&  f(\sigma)\text{ が }n\text{単体}\\0&   f(\sigma)\text{ が }n\text{単体ではない}\end{cases}$$


のように定義して、この写像を線形に拡張することで準同型写像

 $C_n(K)\to C_n(D)$ を得る。


$\sigma=\langle v_0\cdots v_n\rangle \in K$ を $n$単体とするとき、

$f(\sigma)$ が $n$単体であるとき、

$$f\circ \partial_n(\sigma)=f( \sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0\cdots \hat{v_i}\cdots v_n\rangle)$$

$$=\sum_{i=0}^n(-1)^n\langle f(v_0)\cdots \widehat{f(v_i)}\cdots f(v_n)\rangle\cdots(\ast)$$

となります。ここでハットはその項を除くことを意味しています。

ここで、$f(\sigma)=\langle f(v_0)\cdots f(v_n)\rangle$ であるから、

$$(\ast)=\partial_n’\circ f(\sigma)$$

となります。


$f(\sigma)$ が $n$単体ではないとき、

$i\neq j$ に対して$f(v_i)=f(v_j)$ が成り立つとします。

$$f\circ \partial_n(\sigma)=f( \sum_{i=0}^n(-1)^i\langle v_0\cdots \hat{v_i}\cdots v_n\rangle)$$

$$=(-1)^i\langle f(v_0)\cdots \widehat{f(v_i)}\cdots f(v_j)\cdots f(v_n)\rangle $$

$$+ (-1)^j\langle f(v_0)\cdots f(v_i)\cdots \widehat{f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$

ここで第1項目の $f(v_j)$ をハットのついた$f(v_i)$ の位置まで持っていくと、

符号が $(-1)^{j-i-1}$だけ変化するから、

$$=(-1)^{j-1}\langle f(v_0)\cdots f(v_j)\cdots \widehat{ f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$

$$+ (-1)^j\langle f(v_0)\cdots f(v_i)\cdots \widehat{f(v_j)}\cdots f(v_n)\rangle $$

となります。よってこの値が0になります。

つまり $\partial_n’\circ f(\sigma)=0$ と同じになるので、

確かにこの場合もチェイン写像の条件を満たします。 


よって単体写像 $f:K\to L$ からホモロジー群への準同型写像

$$f_\ast:H_n(K)\to H_n(L)$$    

が誘導されます。


ヘビ🐍の補題


ヘビといえば、🐍ですが、実際英語でもsnake lemmaと言われます。


補題(ヘビの補題)

任意の $n$ に対して短完全系列

$$\begin{CD}0@>>> A_n@>f_n>> B_n@> g_n >> C_n @>>>0\end{CD}$$

がチェイン複体の間のチェイン写像である場合、

任意の $n$ に対してある準同型写像 $\partial_\ast:H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ が存在して、

長完全系列

$$\begin{CD}@>>>H_{n+1}(C)@>\partial_\ast>> H_n(A)@>f_{n\ast}>> H_n(B)@>g_{n\ast}>> H_n(C) @>\partial_\ast>>H_{n-1}(A)@>>>\end{CD}$$

が存在する。

この $\partial_\ast$ は連結準同型といます。連結準同型は $C_n\to A_{n-1}$に
well-defined な写像が定義できるのではなく、あくまでホモロジー群の間で初めて
well-definedになる写像となります。

(証明)
この補題を全て証明するのは大変なので、取り合えず $\partial_\ast$ が存在することを
示しておきます。その他にも、
$H_n(A), H_n(B), H_n(C)$ の各場所で完全であることを示す必要があります。

ここで $[c]\in H_n(C)$ をとります。
このとき、$\partial_n^C(c)=0$ が成り立つことと $g_n$ が全射であることから、
$g_n(b)=c$ となる $b\in B_n$ が存在して、$\partial_n^Cg_n(b)=0$ が成り立つので、
可換性から $g_{n-1}\partial^B_n(b)=0$ が成り立ちます。
よって完全性から、$\partial_n^B(b)=f_n(a)$ となる $a\in A_{n-1}$ が存在します。
図式としては次のようになります。

$$\begin{CD}0@>>> A_n@>f_n>> B_n@> g_n >> C_n @>>>0\\ @.@VV \partial^A_{n}V @VV \partial^B_{n}V @VV \partial^C_{n} V \\ 0@>>> A_{n-1}@>f_n>> B_{n-1}@> g_{n-1} >> C_{n-1} @>>>0\end{CD}$$

element chasingにいてはこの可換図式を用いて目で追ってみてください。

そうすると、$[c]$ に対して $a\in A_{n-1}$ を対応させることができました。
このとき、$a\in Z_{n-1}(A)$ である必要がありますが、
実際、$f_{n-1}(a)=\partial^B_n(b)$ であり、この両辺に $\partial_{n-1}^B$ を作用させると、
$\partial^B_{n-1}(f_{n-1}(a))=\partial_{n-1}^B(\partial^B_n(b))=0$ となり、左辺は
$f_{n-2}(\partial^A_{n-1}(a))$であるから、$f_{n-2}(\partial^A_{n-1}(a))=0$ となります。
$f_{n-2}$ は単射であるから、$\partial^A_{n-1}(a)=0$ となって、$a\in Z_{n-1}(A)$
が成り立つことがわかりました。

また、$[c]\mapsto [a]$ がwell-defined であるためには $c$ から $b$をとるときに
一意ではなかったのでそこでとり方によらないことを示す必要があります。

つまり、 $g_n(b)=g_n(b’)=c$ となる $b’\in B_n$を取ったときに、
$f_{n-1}(a’)=\partial_n^B(b’)$ となる $a\in A_{n-1}$ をとり、
$[a]=[a’]$ であることを示せば良いことになります。
このとき、$g_{n}(b-b’)=c-c=0$ であるから、
完全性から $b-b’=f_{n}(\alpha)$ となる $\alpha\in A_n$ が存在します。
ここで、$f_{n-1}(\partial^A_n(\alpha))=\partial_n^B\circ f_n(\alpha)=\partial^B_n(b-b')=f_{n-1}(a-a')$
$f_{n-1}$ は単射であるから、
$\partial^A_n(\alpha)=a-a'$ であるから、
$a-a'\in B_{n-1}(A)$ であるから、よって $[a]=[a']$ となります。

よって $[c]\mapsto [a]$ は $H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ の写像が定義できることがわかりました。準同型であることを示すのは易しいので省略します。 

よって、$H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ は準同型であることがわかります。

結局のところ連結準同型は $\partial_\ast[c]=[f^{-1}_{n-1}(\partial^B_n(b))]$ として
定義される。ここで $c$ に対して $b$ は $g_n(b)=c$ となる $b$ であれば
どの元でも構わないことになります。

この列が長完全系列であることを示すには、$H_n(A)$, $H_n(B)$, $H_n(C)$ の前後で
$\text{Im}=\text{Ker}$ を示す必要があります。

とりあえず $H_n(A)$ での完全性を示します。
$[c]\in H_{n+1}(C)$ に対して、$f_{n\ast}(\partial_\ast([c]))=f_{n\ast}([f^{-1}_{n}(\partial^B_{n+1}(b))])=[f_nf_n^{-1}(\partial^B_{n+1}(b))]=[\partial^B_{n+1}(b)]=0$
となります。 
また、$f_{n\ast}([a])=0$ とします。この時、$f_n(a)\in \partial^B_n$ であるので、
$f_n(a)=\partial^B_{n+1}(b)$ となる$b\in B_{n+1}$ が存在します。
よって、$a=f^{-1}_n\partial^B_{n+1}(b)$ であるから、
$g_n(b)=c$ とすることで、$[a]=\partial_\ast([c])$ となります。
つまり、$\text{Im}(\partial_\ast)=\text{Ker}(f_\ast)$ となることがわかりました。

とりあえずここまでにしておきます。

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