2022年2月11日金曜日

トポロジー入門(第14回)

  [場所:オンライン(月曜日3限)]



今回は、コンパクト空間についての後半部分をやりました。
コンパクト空間の前半はこちらを見てください。

コンパクト空間
まず、次の定理を示しました。

定理14.1(チコノフの定理)
$X,Y$ をコンパクト空間であれば、
$X\times Y$ もコンパクト空間

証明
$\mathcal{U}$ を $X\times Y$ の開被覆とします。
このとき、$(x,y)\in X\times Y$ に対して、$U_{(x,y)}\in \mathcal{U}$ 
を選んでおきます。
また、$U_{(x,y)}$ に対して、$A_y(x)\times B_x(y)\subset U_{(x,y)}$
となる$x$ の開近傍 $A_y(x)$ と $y$ の開近傍 $B_x(y)$ が存在します。
この時、$\{B_x(y)|y\in Y\}$ は $Y$ の開被覆であり、コンパクト性から、
$B_x(y_1^x),\cdots, B_x(y_{n_x}^x)$
が存在して、それらは$Y$ の被覆になります。
ここで、$x\in X$ を固定して、$\{A_{y_j^x}(x)\times B_x(y_j^x)|j=1,\cdots, n_x\}$
は $\{y\}\times Y$ の被覆になっていて、
$V(x)=\cap_{i=1}^{n_x}A_{y_j^x}(x)$
は有限個の共通部分なので、$x$ の開近傍になります。
また、$V(x)\times Y\subset \cup_{j=1}^{n_x}A_{y_j^x}(x)\times B_x(y_j^x)$
となります。

ここで、$\{V(x)|x\in X\}$ は $X$ の開被覆なので、$X$ のコンパクト性から
$x_1,\cdots, x_s$ が存在して、
$\{V(x_1),\cdots,V(x_s)\}$ は $X$ の開被覆となります。

今、$\mathcal{V}=\{U_{(x_i,y_j^{x_i})}|1\le i\le s,1\le j\le n_{x_i}\}$ 
が $X\times Y$ の有限被覆であることを示します。

$(x,y)\in X\times Y$ に対して、
$x\in V(x_i)$ となる $x_i$ が存在して、
$y\in B_{x_i}(y_j^{x_i})$ となる $1\le j\le n_{x_i}$ が存在して、
$(x,y)\in V(x_i)\times B_{x_i}(y_j^{x_i})$ となります。
つまり、$V(x_i)\times B_{x_i}(y_j^{x_i})\subset A_{y_j^{x_i}}(x_i)\times B_{x_i}(y_j^{x_i})\subset U_{(x_i,y_j^{x_i})}$ がなりたつので、
$\mathcal{V}$ は有限開被覆になり、$\mathcal{V}\subset\mathcal{U}$ であるから、
$X$ はコンパクトになります。$\Box$

このことから、このチコノフの定理を有限回繰り返すことで、
各 $X_i$ がコンパクトであるとき、有限直積位相 $X_i\times X_2\times \cdots\times X_n$ 
もまたコンパクトであることがわかります。

例として、区間の直積 $(I^1,\mathcal{O}_{d_1})$ や $(I^n,\mathcal{O}_{d_n})$ はコンパクトであることがわかります。

実は、このチコノフの定理は、
有限だけではなく、任意個の直積に対しても、
同じ主張が成り立ちます。
ここでは証明はしません。

定理14.2(チコノフの定理)
$X_\lambda$ ($\lambda\in \Lambda$)$ がコンパクト空間である時、
$$\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$$
もコンパクト空間。

このことから、

$(I^{\mathbb N},\mathcal{O}_{d_1}^{\mathbb N})$ がコンパクトとなります。
この空間は、
$d_{\infty}((x_n),(y_n))=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{2^n}|x_n-y_n|$
を距離関数として距離空間になり、その時、
$\mathcal{O}_{d_1}^{\mathbb N}=\mathcal{O}_{d_\infty}$ が成り立ちます。

また、直積空間 $\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda$ がコンパクトであれば、
標準射影 $\text{pr}_\lambda$ が全射連続であることから、因子空間
$\text{pr}_{\lambda}(\prod_{\lambda\in \Lambda}X_\lambda)=X_\lambda$ 
もコンパクトであることがわかります。


これ以降、コンパクト空間の性質についてまとめておきます。

まず、次の定理は今後よく使います。

定理14.3
コンパクト空間の閉集合はコンパクト。

(証明) $(X,\mathcal{O})$ をコンパクト空間とします。
$A\subset X$ を閉集合として、$A$ の開被覆を $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ とします。
この時、$\mathcal{U}\cup\{A^c\}$ は $X$ の開被覆であるから、
$\mathcal{U}$ の有限部分集合 $\mathcal{V}$ が存在して、$\mathcal{V}\cup\{A^c\}$ は
$X$ の被覆になります。

このとき、$\mathcal{V}$ は $A$ の被覆になっていますので、
$A$ の任意の開被覆に対して、有限部分被覆が存在したことになります。
これは、$A$ がコンパクトであることを意味します。$\Box$

次の定理を示しました。

定理14.4
$X$ をハウスドルフ空間とする。
$A\subset X$ をコンパクト集合とし、
$x\in X$ で、$x\not\in A$ となる $x$ に対してある開集合 $U,V$ が存在して、
$x\in U$ かつ $A\subset V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ を満たす。
つまり、$x,A$ は開集合で分離できる。

(証明) $\forall p\in A$ をとります。
$x,p$ を分離する開集合 $U_p,V_p$ をとり、
$x\in U_p, p\in V_p$ かつ $U_p\cap V_p=\emptyset$
を満たします。 
この時、$\mathcal{V}=\{V_p|p\in A\}$ は $A$ の開被覆となります。

よって、$p_1,\cdots ,p_n\in A$ が存在して、$\{V_{p_1},V_{p_2},\cdots,V_{p_n}\}$
は $A$ は開被覆となります。
つまり、$A\subset \cup_{i=1}^{n}V_{p_i}=:V$ とする。
$\cap_{i=1}^nU_{p_i}=:U\in \mathcal{O}$ とおくことで、
$x\in U$ かつ、$U\cap V=\emptyset$ となります。
もし、$U\cap V\neq \emptyset$ となるとすると、
$y\in U\cap V$ に対して、 ある $i$ が存在して、$y\in U_{p_i}\cap V_{p_i}$
となるので、これは、一般に、$U_p, V_p$ が共通部分を持たないことに反します。

これにより、$U,V$ は、$x,A$ を分離する開集合となります。$\Box$

さらに、この定理を使って、次の定理を示すことができます。

定理14.5
$X$ をハウスドルフ空間とする。
互いに交わらないコンパクト集合 $A,B\subset X$ は
開集合によって分離できる。

(証明) $A,B\subset X$ を互いに交わらないコンパクト集合とします。
この時、定理14.4に対して、$x\in A$ と $B$ に対して、交わらない開集合 $U_x,V_x$
が存在して、
$x\in U_x, B\subset V_x, U_x\cap V_x=\emptyset$ 
となります。
ここで、$\{U_x|x\in A\}$ は $A$ の開被覆であり、
$A$ はコンパクトであるから、$x_1,x_2,\cdots,x_m\in A$ が存在して
$\{U_{x_i}|i=1,\cdots, m\}$ が $A$ の有限開被覆となります。
ここで、$B\subset \cap \{V_{x_i}|i=1,\cdots, m\}\in \mathcal{O}$ 
となるので、
$$U=\cup\{U_{x_i}|i=1,\cdots, m\}$$
$$V=\cap\{V_{x_i}|i=1,\cdots, m\}$$
 
とすることで、$U,V$ は前と同じ議論により、$U,V $は $A,B$ を分離する
開被覆となります。$\Box$

この定理を用いると、
コンパクトハウスドルフ空間は、正規空間であることがわかります。
なぜなら、コンパクトハウスドルフ空間の任意の閉集合は定理14.3からコンパクトになり、
それらは開集合によって分離できるからです。

次の定理を示しました。

定理14.6
$X$ をハウスドルフ空間とする。
この時、任意のコンパクト集合 $A\subset X$ は閉集合となる。

(証明) $A$ をコンパクト集合します。
$x\not\in A$ となる $x$ に対して、
$x\in U, A\subset V, U\cap V=\emptyset$ 
となる開集合 $U,V$ が存在します。
特に、$x\in U\in A^c$ となり、 $x$ は $A^c$ の内点であることが
わかります。
よって、$A$ は閉集合であることがわかります。$\Box$

距離空間はハウスドルフ空間なので、
距離空間のコンパクト集合は閉集合であることがわかりました。

次に位相空間論で必ず習う次の定理を紹介しておきます。

定理14.7
コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像は閉写像となる。

(証明). $f:X\to Y$ をコンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像
とします。この時、$F\subset X$ を閉集合とします。
$X$ はコンパクトであるから、$F$ はコンパクト集合になります。
よって、コンパクト集合の連続像はコンパクトであるから、
$f(F)$ はコンパクトとなります。
定理14.6からハウスドルフ空間の中のコンパクト集合は閉集合であったから、
$f(F)$ は閉集合となります。$\Box$

この定理を用いると、次を証明することができます。
・コンパクト空間からハウスドルフ空間への全射連続写像は商写像となる。
・コンパクト空間からハウスドルフ空間への全単射連続写像は同相写像となる。

ここで、コンパクト空間を少し一般化しておきます。

定理14.1
位相空間 $X$ の任意の開被覆は高々可算個の部分被覆をもつとき、
$X$ はリンデレフ空間という。


この時、リンデレフ空間の例を与えます。

定理14.8
位相空間は第2可算公理を満たすならリンデレフ空間である。

(証明) $(X,\mathcal{O})$ を $X$ の可算開基とします。
この時、$\mathcal{U}$ を任意の
開被覆とします。この時、$\forall U\in \mathcal{U}$ に対して、
$\exists \mathcal{B}_U\subset \mathcal{B}(U=\cup\mathcal{B}_U)$
となります。
$$\mathcal{V}=\{B\in \mathcal{B}_U|U\in \mathcal{U}\}$$
と置きます。このとき、$\mathcal{V}$ は $X$ の高々可算被覆となります。
このとき、$B\in \mathcal{V}$ に対して、$B\subset U_B\in \mathcal{U}$
をとると、
$$X=\cup_{B\in \mathcal{V}}B\subset \cup_{B\in \mathcal{V}}U_B=X$$
であるから、 
$\{U_B\in\mathcal{U}|B\in \mathcal{V}\}$ は $\mathcal{U}$ の可算部分被覆。

例14.5
コンパクト空間は任意の
開被覆は高々可算被覆をもつから、リンデレフ空間の例になります。
また、可分距離空間は第2可算公理を満たしますので、リンでレフの例になります。

リンデレフ空間の閉集合もリンデレフ(定理14.3と同様に証明できる)になります。
 
また、次の定理が成り立ちます。

定理14.9
第2可算公理を満たすコンパクトハウスドルフ空間は距離空間となる。

(証明) $X$ を第2可算公理を満たすコンパクトハウスドルフ空間とすると、
先ほど書いたことから、正規空間となります。
第2可算公理を満たし、正規空間であるなら、ウリゾーンの距離化定理から、
$X$ は距離空間になります。$\Box$


コンパクト距離空間
距離空間のコンパクト集合についての性質について
考えます。

すぐわかることは、以下の定理です。

定理14.10
コンパクト距離空間は有界

$(X,d)$ をコンパクトな距離空間とします。
このとき、$x\in X$ をとると、$\cup_{n=1}^\infty B_d(x,n)=X$ 
であるから、コンパクト性より、
$\cup_{n=1}^mB_d(x,n)=B_d(x,m)=X$ であるから、
$\text{diam}(X)=\sup\{d(x,y)|x,y\in X\}\le 2m$

となり、$X$ が有界であることがわかります。

また、コンパクト性は、有界より強い性質を持ちます。
まず、以下の定義をしておきます。

定義14.2 
距離空間 $(X,d)$ は、任意の $\epsilon>0$ に対して、ある有限集合
$\{x_1,\cdots,x_n\}\subset X$ が存在して、
$$X=\cup_{i=1}^nB_d(x_i,\epsilon)$$
を満たすとき、$(X,d)$ は全有界と言う。

実は次の定理が成り立ちます。

定理14.11
コンパクト距離空間は全有界である。

(証明) $(X,d)$ をコンパクト距離空間とします。
この時、$\epsilon>0$ に対して、
$\mathcal{U}=\{B_d(x,\epsilon)|x\in X\}$ は $X$ の開被覆であるから、
有限部分集合 $\{B_d(x_i,\epsilon)|i=1,\cdots, n\}$ が $X$ の被覆となります。
よって、これは $X$ が全有界であることを意味しています。

実際、全有界であることと、有界であることは違っていて、
一般に、全有界なら有界ですが、逆は成り立ちません。

(全有界 $\Rightarrow$ 有界)
全有界性から、$\forall \epsilon>0$ より、
$X=\cup_{i=1}^nB_d(x_i,\epsilon)$ が成り立ちます。
ここで、$\epsilon$ を固定しておきます。
このとき、$\{x_1,\cdots, x_n\}$ は $\{d(x_i,x_j)|i,j=1\cdots, n\}$ が最大値を持つので、
有界です。それを $K$ としておきます。このとき、$\epsilon$ は固定された
実数なので $K$ も固定された実数です。
このとき、$p,q\in X$ に対して、
$p\in B_d(x_i,\epsilon), q\in B_d(x_j,\epsilon)$ となる $x_i,x_j$ が存在するから、
$d(p,q)\le d(p,x_i)+d(x_i,x_j)+d(x_j,q)\le \epsilon +K+\epsilon=K+2\epsilon$ が成り立つから
$X$ は有界となります。 

また全有界性は位相的性質ではありません。
$(0,1)$ は全有界ですが、それと同相な ${\mathbb R}$ は全有界ではありません。

よって距離空間において、コンパクト集合は全有界閉集合ということになります。
もちろん全有界閉集合は有界閉集合になります。
${\mathbb R}$ ではこの逆が成り立ちます。

それを示していきます。それをハイネボレルの被覆定理と言います。

定理14.12(ハイネボレルの被覆定理)
${\mathbb R}$ において $A\subset {\mathbb R}$ がコンパクトであることと
有界閉集合であることは同値である。

(証明) ${\mathbb R}$ において、コンパクトなら有界閉集合であることは
これまで示していました。なので、今回は逆の、
有界閉集合ならコンパクトであることを示していきます。

$A\subset {\mathbb R}$ が有界閉集合であるとします。
このとき、$\exists M>0(A\subset[-M,M])$ となります。

$[-M,M]$ は ${\mathbb R}$ においてコンパクトであるから、
$A$ はコンパクトかつ閉集合であるから、
定理14.3 から $A$ はコンパクトであることがわかりました。$\Box$ 

この証明は、${\mathbb R}^n$ においても同様にすることができるので、この定理を
一般化して、以下のようにいうことができます。

定理14.13(ハイネボレルの被覆定理)
${\mathbb R}^n$ において $A\subset {\mathbb R}^n$ がコンパクトであることと、
有界閉集合であることは同値である。

一般の距離空間の場合には、この同値性は成り立ちません。
つまり、コンパクトではないが、有界閉集合のものは存在します。

例14.8
$({\mathbb R},d)$ を通常のユークリッド距離位相空間ではなく、離散距離位相空間とします。
つまり、
$$d(x,y)=\begin{cases}1&x\neq y\\0&x=y\end{cases}$$
となる距離を入れておきます。

このとき、
${\mathbb R}$ の全ての部分集合が閉集合であり、
さらに、全てのことなる点の距離は1なので、${\mathbb R}$ の直径は1です。 
${\mathbb N}\subset{\mathbb R}$ をとれば、${\mathbb N}$ も有界で、
閉集合となります。
一方、$\{\{n\}|n\in {\mathbb N}\}$ は ${\mathbb N}$ の開被覆ですが、
どの有限部分集合も被覆にはなりません。

よって、この距離空間において、コンパクトではないが、有界閉集合になっています。 

次に、全有界である距離位相空間の性質を述べておきます。

定理14.14
全有界な距離空間は可分である。

(証明) $(X,d)$ を全有界であるとします。この時、$n\in {\mathbb N}$ に対して、
$$X=\underset{k=1,\cdots,n}{\cup }B_d\left(x_k^n,\frac{1}{n}\right)$$ 
となり、$D=\{x^n_k|n\in {\mathbb N},1\le k\le m_n\}$
とおくことで、$D$ が $X$ の可算稠密集合になっています。
まず、可算であることはすぐわかります。
稠密であることを以下示します。

$\forall x\in X$ を取ります。この時、任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に
対して、$B_d(x,\frac{1}{n})\subset V$ となる $n\in {\mathbb N}$ が存在します。
上記の被覆性から、
$x\in B_d(x^n_k,\frac{1}{n})$ となる $x^n_k$ が存在します。
また、$x^n_k\in B_d(x,\frac{1}{n})$ であることから、
$x^n_k\in V\cap D$ であることから、$V\cap D=\emptyset$ であることがわかります。
よって、$D$ は稠密集合であることがわかります。$\Box$

定理14.15
コンパクト距離位相空間は第2可算公理を満たす。

(証明) コンパクト距離空間であれば、可分であり、
可分距離空間ならば第2可算公理を満たします。$\Box$

最後に以下を示して終わりました。

定理14.16
次は同値になります。
コンパクト距離空間であること
$I^{\mathbb N}$ の閉集合であること

(証明) $X$ がコンパクト距離空間であるとします。このとき、
第2可算公理を満たす正規空間であるから、ウリゾーンの距離化定理により
$I^{\mathbb N}$ に埋め込み可能になります。
よって、$I^{\mathbb N}$ のコンパクト集合なので、閉集合なります。

逆に、$I^{\mathbb N}$ の閉集合とすると、$I^{\mathbb N}$ は距離空間であるから
その部分集合も距離化可能であり、コンパクト空間の中の閉集合だから
コンパクト集合になります。$\Box$

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