2026年6月11日木曜日

数学リテラシー2(第5回)

  [場所:2H101(火曜日15:15〜16:30, 16:45〜18:00)](2025年度)



今回は $\epsilon$-$\delta$ 論法の復習をしました。

まず定義ですが、
$\epsilon$-$N$論法で数列 $a_n$ の収束は、

$n\to \infty \Rightarrow a_n\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists N \in {\mathbb N}$ に対して、
$$\forall n>N\Rightarrow |a_n-\alpha|<\epsilon $$ 
ことである。

として定義しました。
そこで、これを変形して、

$\frac{1}{n}\to 0\Rightarrow a_n\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists N \in {\mathbb N}$ に対して、
$$\forall n,  0<\frac{1}{n}<\frac{1}{N}\Rightarrow |a_n-\alpha|<\epsilon $$ 
を満たすことである。

このことを関数の極限に応用してみます。
すると、次のように書き変わるでしょう。

$x\to a\Rightarrow f(x)\to \alpha$ であること、
つまり、
$x-a\to 0\Rightarrow f(x)\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists\delta>0$ に対して、
$$\forall x,  0<|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\epsilon $$ 
を満たすことである。

ここで、$1/n$ によって0に近づいているとき
正の数からしか近づきませんが、一般に、$0$ に近づくのは正負の両方から近づくので
絶対値をつけて近づける範囲を両側にしています。また、
近づく範囲を指定するのに、$1/N$ として $n$ の範囲の限界を指定しましたが、
$1/N$ ではなくて実数でいいので、
$1/N$ の代わりに $\delta$ に変えています。

これで$\epsilon$-$N$ 論法を関数の極限値の収束の状況に当てはめることができました。

よって、関数 $f(x)$ が $x\to a$ によって、$\alpha$ に収束することを、
次のように定義します。

定義(関数がある極限値に収束すること)
関数 $f(x)$ がある領域 $I$ で定義された関数であるとする。
$x\in I$ が $a$ に近づくとき $f(x)$ が $\alpha$ に収束する
つまり $x\to a$ のとき $f(x)\to \alpha$ であることを
$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists\delta>0$ を用いて、
$$0<|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\epsilon $$ 
を満たすこととして定義する。
これを、$\lim_{x\to a}f(x)=\alpha$ とかく。


この定義は $a$ が $f(x)$ の定義域 $I$ に入っていない場合も有効であることが
わかります。
例えば、$I=(0,1)$ の場合に、$f(x)=\frac{\sin x}{x}$ の場合が考えられます。
この場合、$x=0$ では定義されていませんが、極限は存在します。

しかし、$a\in I$ である場合、関数 $f(x)$ が $I$ で連続である定義をすることができます。
つまり、

定義(関数の連続性)
$I$ 上で定義された関数 $f(x)$ が $a\in I$ で連続であるとは、
$\lim_{x\to a}f(x)=f(a)$ を満たすこととして定義する。 


上の極限値の収束の定義に基づいた極限値の値の計算は、こちら
にもありますが、今回は、授業で用いたものをここで証明をしてみることにします。

とりあえず関数のある極限値へ収束することの否定文もこちらで作っておきます。

定義(関数がある極限値に収束しないこと)
関数 $f(x)$ がある領域 $I$ で定義された関数であるとする。
$x\in I$ が $a$ に近づくとき $f(x)$ が $\alpha$ に収束しない
つまり $x\to a$ のとき $f(x)\not\to \alpha$ であることを
$\exists \epsilon>0$ に対して、$\forall\delta>0$ を用いて、
$$\exists x,0<|x-a|<\delta\text{かつ}|f(x)-\alpha|\ge \epsilon $$ 
を満たすこととして定義する。


個々の多項式については上のリンクを見てもらうことにして、まずは

例1:任意の多項式は連続関数である。

を示します。

任意の多項式関数 $f(x)$ を $f(x)=a_0+a_1x+\cdots+a_nx^n$
と書きます。
この多項式関数が $x=a$ で連続であることを示します。
そのために、準備をしておきます。
因数定理を用いることで、
$$f(x)-f(a)=(x-a)(d_1+d_2(x-a)+\cdots+d_n(x-a)^{n-1})$$
とかけます。ここで、$d_i$ は関数$f(x) $と$ a$にしか依存しない定数で、
$$d=\max_{i=1,\cdots,n}\{|d_i|\}$$
もそうです。
ここまでが準備です。

ここで、$\forall \epsilon>0$ に対して、$0<\delta<\min\{1,\frac{\epsilon}{nd}\}$ となる
実数として定めておきます。このような実数が存在するのは、
$\epsilon$ に依存しない $n,d$ が定数だからです。
また、どうしてこのように $\delta$ を定めておくといいのかは後で
判明します。

このとき、
そのような $\delta$ に対して、$|x-a|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、三角不等式と
上の仮定を用いることで、
$$|f(x)-f(a)|=| (x-a)(d_1+d_2(x-a)+\cdots+d_n(x-a)^{n-1})|$$
$$=|x-a|\cdot | d_1+d_2(x-a)+\cdots+d_n(x-a)^{n-1} |$$
$$\le \delta(|d_1|+|d_2|\cdot|x-a|+|d_3|\cdot |x-a|^2+\cdots+|d_n|\cdot |x-a|^{n-1})$$
$$\le \delta(|d_1|+|d_2|\cdot \delta +|d_3|\cdot \delta ^2+\cdots+|d_n|\cdot \delta^{n-1})$$
$$\le \delta(|d_1|+|d_2|+\cdots+|d_n|)$$
$$\le \delta \cdot nd< \epsilon$$

となり、確かに$x=a$ で関数が連続であることがわかります。

次の例にいきます。

例2 関数 $f(x)=\sin \frac{1}{x}$ は $x=0$ において極限値を持たない。
これもこちらで証明はしているのですが、授業中でもやった方法で証明してみます。

(証明)
$f(x)$ が$\alpha$ に収束しないことを示します。
$f(x)$ は定数関数ではないので、
$\sin \frac{1}{x_\alpha}\neq \alpha$ となるような $x_\alpha>0$ が存在します。

ここで、$\epsilon=\frac{1}{2}|\sin\frac{1}{x_\alpha}-\alpha|$ とする。
どうしてこのように定義すればいいのか後で判明します。

ここで、$\forall \delta>0$ をとります。このとき、
$0<|x|<\delta$ において $|\sin \frac{1}{x}-\alpha|$ が $\epsilon$ より大きくなる
$x$ を取ればいいのですが、
上のような任意の$\delta$ に対して、
$\frac{x_\alpha}{2n\pi x_\alpha+1}<\delta$ となる
自然数 $n$ が存在します。分母が限りなく大きくなるのでそうですが、
アルキメデスの原理を用いるなら、$\frac{1}{2\pi x_\alpha}(\frac{x_\alpha}{\delta}-1)<n$
となる自然数 $n$ が存在するからです。

ここで、$x_{\alpha,n}= \frac{x_\alpha}{2n\pi x_\alpha+1}$ とおくと、
$0<|x_{\alpha,n}|<\delta$ を満たし、かつ
$|\sin\frac{1}{x_{\alpha,n}}-\alpha|=|\sin(\frac{1}{x_\alpha}+2n\pi)-\alpha|=|\sin\frac{1}{x_\alpha}-\alpha|=2\epsilon\ge \epsilon$
これにより、$\sin\frac{1}{x}$ は $x\to 0$ のとき、$\alpha$ に近づかない
つまり、$\lim_{x\to a}f(x)\neq \alpha$ となります。

任意の $\alpha$ に近づかないのだから、 $f(x)$ は極限値を持たないことになります。

次の例を示します。

例3:$y=\sin x$ は連続関数である。

これも、$\epsilon$-$\delta$ 論法を用いて示してみます。
まず、次を$\epsilon$-$\delta$ 論法を用いて示しておきます。

補題
$\lim_{X\to 0}\frac{\sin X}{X}=1$である。

(証明)
三角関数の定義から次の不等式が成り立つ。
$0<X<\pi/2$ のとき、
$0<\sin X<X<\tan X$
であり、
$-\pi/2<X<0$ のとき、
$\tan X<X<\sin X<0$
となります。
よって、どちらにしても、
$$0<1-\frac{\sin X}{X}<1-\cos X$$
が成り立ちます。
よって、今、
$\forall \epsilon>0$ に対して、 $0<\delta=\sqrt{2\epsilon}$ として取ると、

$0<|X|<\delta$ となる任意の実数 $X$ に対して、
$|\frac{\sin X}{X}-1|<|1-\cos X|=2\sin^2\frac{X}{2}< 2(\frac{X}{2})^2<\frac{\delta^2}{2}=\epsilon$

よって、$\lim_{X\to 0}\frac{\sin X}{X}=1$ を満たします。$\Box$


上の例に戻ります。
$x=a> 0$ での連続性を示します。$a$ が負の場合は同じなのでここでは $a>0$ としています。
そこで、$\forall \epsilon>0$ をとります。
このとき、$0<\delta<\min\{a,2,\frac{2\epsilon}{3}\}$ をとります。
(なぜこのように$\delta$ を取ればいいのか後で判明します。)

そこで、$0<|x-a|<\delta$ を満たす任意の $x$ をとります。

このとき、上の補題の証明での $\epsilon=\frac{1}{2}$ の場合を考え、$X=\frac{x-a}{2}$ と代入すると、
$0<|X|=|\frac{x-a}{2}|<1$ の場合、
$|\frac{\sin\frac{x-a}{2}}{\frac{x-a}{2}}-1|<\frac{1}{2}$ が成り立ち、つまりこのとき
$$\frac{1}{2}<\frac{\sin \frac{x-a}{2}}{\frac{x-a}{2}}<\frac{3}{2}$$
が成り立ちます。

和積公式を用いて、
$|\sin x-\sin a|=2|\sin\frac{x-a}{2}\cos\frac{x+a}{2}|\le |x-a|\cdot |\frac{\sin \frac{x-a}{2}}{\frac{x-a}{2}}|\le \delta \frac{3}{2}<\epsilon$

となります。
これで、なぜ $\delta$ を上のように取るべきかわかりましたね?
これにより、$\sin x$ が$x=a>0$ で連続であることがわかりました。

$x<0$ の場合も同様ですが、$x=0$ の場合が残りました。
このとき、
$\forall \epsilon>0$ に対して $0<\delta <\epsilon$ となる実数をとれば、
$0<|x|<\delta$ のとき、補題の証明から
$$|\sin x|=|x|\cdot |\frac{\sin x}{x}|\le |x|<\delta<\epsilon$$
であるからこの場合も、$x=0$ にて$\sin x$ が連続であることがわかります。$\Box$


他に、$y=|x|$ の$x=0$ で微分不可能な例なども考えてみます。

例4:$y=|x|$ は $x=0$ で連続である。

$\forall \epsilon>0$ に対して、$\delta=\epsilon$ とすると、
$0<|x|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、
$||x|-0|=|x|<\delta=\epsilon$ 
であるから $x=0$ 連続である。