2019年10月11日金曜日

数学外書輪講I(第9回)

[場所1E501(月曜日5限)]


これは6月17日の分の内容です。

ユークリッド空間の中の n 点の集合
今回は、ユークリッド空間 ${\mathbb R}^n$ の中の $n+1$ 点は
その間の距離をどのように決めたときに、その点達
は実際存在しうるか?

という問題です。
Miniature 6 では ${\mathbb R}^2$ の中の4点が存在するか?
という問題でしたから、今回の話とは独立です
問題意識は似ていますが、本質的に違った証明になります。

$n+1$ 点は重複があっても良いですが、そのとき、
もし${\mathbb R}^n$ 上に乗っているとすると、すでに${\mathbb R}^n$
のなかの $n-1$ 次元アフィン空間 ${\mathbb R}^{n-1}$ と同じもの
に乗っていなければならず、次元が落ちた状況で考えることになります。

平面では、三角不等式を満たす3点は必ず3点として存在します。
三角不等式は必要条件でもあるので、三角不等式は平面上に3点が存在するための
必要十分条件ということになります。

今回は一般にどうか?ということです。つまり高次元化されています。
${\mathbb R}^n$ の中の $n+1$ 点の場合に、そのうちの任意の3点が三角不等式を満たす
ということも必要な条件なのですが、実はそれだけではないというのが
この問題の主題です。

定理は、実際以下のようになります。

定理
$m_{ij}$ を$i,j=0,1,\cdots, n$ とし、非負実数とし、$m_{ij}=m_{ji}$
とし、$m_{ii}=0$ とします。
このとき、ある${\bf p}_0,{\bf p}_1\cdots {\bf p}_n\in {\mathbb R}^{n}$ が存在して、
$m_{ij}=||{\bf p}_i-{\bf p}_j||$ であるための必要十分条件は、
$g_{ij}=\frac{1}{2}(m_{0i}^2+m_{0j}-m_{ij}^2)$ として $n\times n$ 行列 $G=(g_{ij})$ 
を構成したときに、$G$ が半正定値であることと同値である。


行列は半正定値であるとは、その固有値が全て0以上の実数で
あることです。
この定理は、$n+1$ 点の任意の3点に対して三角不等式を満たす
という条件より本質的に強い条件になっています。

$G=(g_{ij})$ が半正定値
であることは、$G$ が対称行列であることもあり、
$G=XX^t$ となる正方実行列 $X$ が存在することと同値です。

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