[場所1E103(水曜日4限)]
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今回は
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今回は
- マクローリン展開を用いた不定形の極限
- 商のマクローリン展開
です。
マクローリン展開を用いて不定形の極限を求める方法
この方法は、不定形の極限を求める時、一番直接的で確実な方法です。
実は、問題を作るときは、いつものこの方法で、関数を展開してみて
からやっています。
もちろん、1,2回のロピタルの方法で求められる場合は、その方が便利な場合もあります。
まず、$f(x),g(x)\to 0 (x\to 0)$ であるとします。
また、$f(x),g(x)$はある程度微分可能であるとします。
このとき、$f(x),g(x)$ は $x=0$ でマクローリン展開可能で、
$f(x)=a_nx^n+a_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)$
かつ
$g(x)=b_mx^m+b_{m+1}x^{m+1}+\cdots +o(x^k)$
であるとします。ただし、$a_n\neq 0$ かつ $b_m\neq 0$ であるとします。
このとき、最初の $f(x), g(x)$ の条件から、$n,m>0$ となります。
このとき、もし、$n=m$ であれば、
$$\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{a_n}{b_n}$$
が成り立ちます。
というのも、
$$\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to 0}\frac{a_nx^n+a_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)}{b_nx^n+b_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)}=\lim_{x\to 0}\frac{a_n+a_{n+1}x+\cdots +o(x^{k-n})}{b_n+b_{n+1}x+\cdots+o(x^{k-n})}=\frac{a_n}{b_n}$$
となるからです。
最後の等式は、$a_{n+1}$ や $b_{n+1}$ 以降の項に $x\to 0$ とすれば、
すべて $0$ に収束するので成り立ちます。
つまり、この場合、トップの項以外は計算する必要はありません。
$n<m$ であるとすると、極限は、
$$\lim_{x\to }\frac{a_n+a_{n+1}x+\cdots +o(x^{k-n})}{b_mx^{m-n}+b_{m+1}x^{m-n+1}+\cdots +o(x^{k-n})}$$
であるので、分母が $0$ に向かい、分子が有限の値に向かうので、この不定形の極限は $\infty$ ということになります。
逆に、$m<n$ であるとすると、極限は、
$$\lim_{x\to }\frac{a_nx^{n-m}+a_{n+1}x^{n-m}+\cdots +o(x^{k-m})}{b_m+b_{m+1}x+\cdots +o(x^{k-m})}$$
であるので、分子が $0$ に向かい、分母が有限の値に向かうので、
この不定形の極限は $0$ に収束します。
例えば、
$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x-\tan x}{(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)}$ を求めるとすると、
ロピタルの定理を用いると、まぁまぁめんどくさそうです。
しかし、関数のそれぞれの展開を知っていれば、
$\sin x=x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)$ 、$\tan x=x+\frac{x^3}{3}+o(x^3)$ 、
$$(1-e^x)^2=(x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+(x^3))^2=(x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6})^2+o(x^3)$$
$$=x^2+x^3+o(x^3)$$
$$\text{arcsin}(x)=x+\frac{x^3}{6}+o(x^3)$$
となるので、
$$\sin x-\tan x=-\frac{1}{2}x^3+o(x^3)$$
$$(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)=(x^2+x^3+o(x^3))\left(x+\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)=x^3+o(x^3)$$
よって、
$$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x-\tan x}{(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)}=\lim_{x\to 0}\frac{-\frac{1}{2}x^3+o(x^3)}{x^3+o(x^3)}=-\frac{1}{2}$$
だとわかります。
この場合、ロピタルを使うと、だいたい3回くらいは微分をしないと
求められないです(一回微分すると次数が一つ落ちるので)。
そういうわけで、意地が悪い問題(ロピタルの定理を何回か適用しないと求められない問題)
を作ろうとすれば、分母分子の展開の非ゼロ係数の次数が高いものを
分母と分子に選んでもってこればよいということになります。
商のマクローリン展開について
マクローリン展開したものをかけたものの求め方はよくやっているので
どこかで、割ったものはどうするのか?についてやろうと思っていました。
今回の授業のように、$\frac{f(x)}{g(x)}$ のマクローリン展開を求めるのに、
ただひたすら商の微分法を用いて展開している人がいました。
もちろんそれでも求まりますが、商の微分法をあまり使いたくありません。
それに、基本的な公式さえ押さえていれば、微分も使わななくても
マクローリン展開を求めることだってできます。
いくつかのマクローリン展開を組み合わせればよいということです。
例えば、高校の頃にならった等比級数の和の公式は、今や、関数 $\frac{1}{1-x}$ の
マクローリン展開だと思えます。
$$\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots+x^n+o(x^n)$$
この公式を使えば、分母の $1+x$ は下に降りて分数関数ではなくなっています。
そうすると、例えば、
$\frac{\cos x}{1-\sin x}$ などの展開は、
$$\cos x(1+\sin x+\sin^2x+\cdots \sin^nx+o((\sin x)^n))$$
となり、$\cos x=1-\frac{x^2}{2}+o(x^3)$ や $\sin x=x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)$ などを代入すれば、
$$\left(1-\frac{x^2}{2}+o(x^3)\right)\left(1+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^2+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^3+o(x^3)\right)$$
これを展開して整理すれば、
$$1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+o(x^3)$$
と計算できます。
さらに、$o((\sin x)^n)=o(x^n)$ を示す必要がありますが、
$f(x)=o((\sin x)^n)$ である関数を任意に $f(x)$ とおくと、
$$\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{x^n}=\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{\sin^n x}\frac{\sin^nx}{x^n}=0$$
となるので、$f(x)=o(x^n)$ が成り立ち、$o((\sin x)^n)=o(x^n)$ が成り立ちます。
また、プリントにも書きましたが、
$\log(1+f(x))$ のマクローリン展開についても同じようできます。
これは、そもそも、一回微分して、$\frac{f’(x)}{1+f(x)}$ としてから今の商のマクローリン展開の方法を用い、もう一度積分して元に戻すということでも求められます。
同じ考えのもと、直接 $\log(1+x)$ のマクローリン展開
$$\log(1+x)=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}3+\cdots +(-1)^{n-1}\frac{x^n}{n}+o(x^n)$$
を用いて、
$$\log(1+f(x))=f(x)-\frac{f(x)^2}{2}+\frac{f(x)^3}3+\cdots +(-1)^{n-1}\frac{f(x)^n}{n}+o(f(x)^n)$$
としても構いません。
また、$f(0)=0$ である関数であれば、上と同じように、$o(f(x)^n)=o(x^n)$
と直せることがわかります。
今回の宿題では、
$f(x)=o(1)$ なる関数の
$$\sqrt{1+f(x)}$$ の展開についての問題を出しました。
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