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2017年6月14日水曜日

微積分I演習(数学類)(第7回)

[場所1E103(水曜日4限)]

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今回は
  • マクローリン展開を用いた不定形の極限
  • 商のマクローリン展開
です。

マクローリン展開を用いて不定形の極限を求める方法

この方法は、不定形の極限を求める時、一番直接的で確実な方法です。
実は、問題を作るときは、いつものこの方法で、関数を展開してみて
からやっています。

もちろん、1,2回のロピタルの方法で求められる場合は、その方が便利な場合もあります。

まず、f(x),g(x)\to 0 (x\to 0) であるとします。
また、f(x),g(x)はある程度微分可能であるとします。
このとき、f(x),g(x)x=0 でマクローリン展開可能で、
f(x)=a_nx^n+a_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)
かつ
g(x)=b_mx^m+b_{m+1}x^{m+1}+\cdots +o(x^k)
であるとします。ただし、a_n\neq 0 かつ b_m\neq 0 であるとします。
このとき、最初の f(x), g(x) の条件から、n,m>0 となります。

このとき、もし、n=m であれば、
\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{a_n}{b_n}
が成り立ちます。

というのも、
\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to 0}\frac{a_nx^n+a_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)}{b_nx^n+b_{n+1}x^{n+1}+\cdots +o(x^k)}=\lim_{x\to 0}\frac{a_n+a_{n+1}x+\cdots +o(x^{k-n})}{b_n+b_{n+1}x+\cdots+o(x^{k-n})}=\frac{a_n}{b_n}
となるからです。
最後の等式は、a_{n+1}b_{n+1} 以降の項に x\to 0 とすれば、
すべて 0 に収束するので成り立ちます。
つまり、この場合、トップの項以外は計算する必要はありません。

n<m であるとすると、極限は、

\lim_{x\to }\frac{a_n+a_{n+1}x+\cdots +o(x^{k-n})}{b_mx^{m-n}+b_{m+1}x^{m-n+1}+\cdots +o(x^{k-n})}

であるので、分母が 0 に向かい、分子が有限の値に向かうので、この不定形の極限は \infty ということになります。

逆に、m<n であるとすると、極限は、

\lim_{x\to }\frac{a_nx^{n-m}+a_{n+1}x^{n-m}+\cdots +o(x^{k-m})}{b_m+b_{m+1}x+\cdots +o(x^{k-m})}

であるので、分子が 0 に向かい、分母が有限の値に向かうので、
この不定形の極限は 0 に収束します。

例えば、

\lim_{x\to 0}\frac{\sin x-\tan x}{(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)} を求めるとすると、
ロピタルの定理を用いると、まぁまぁめんどくさそうです。

しかし、関数のそれぞれの展開を知っていれば、

\sin x=x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\tan x=x+\frac{x^3}{3}+o(x^3)
(1-e^x)^2=(x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+(x^3))^2=(x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6})^2+o(x^3)
=x^2+x^3+o(x^3)
\text{arcsin}(x)=x+\frac{x^3}{6}+o(x^3)
となるので、
\sin x-\tan x=-\frac{1}{2}x^3+o(x^3)
(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)=(x^2+x^3+o(x^3))\left(x+\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)=x^3+o(x^3)
よって、
\lim_{x\to 0}\frac{\sin x-\tan x}{(1-e^x)^2\text{arcsin}(x)}=\lim_{x\to 0}\frac{-\frac{1}{2}x^3+o(x^3)}{x^3+o(x^3)}=-\frac{1}{2}
だとわかります。

この場合、ロピタルを使うと、だいたい3回くらいは微分をしないと
求められないです(一回微分すると次数が一つ落ちるので)。
そういうわけで、意地が悪い問題(ロピタルの定理を何回か適用しないと求められない問題)
を作ろうとすれば、分母分子の展開の非ゼロ係数の次数が高いものを
分母と分子に選んでもってこればよいということになります。


商のマクローリン展開について

マクローリン展開したものをかけたものの求め方はよくやっているので
どこかで、割ったものはどうするのか?についてやろうと思っていました。

今回の授業のように、\frac{f(x)}{g(x)} のマクローリン展開を求めるのに、
ただひたすら商の微分法を用いて展開している人がいました。

もちろんそれでも求まりますが、商の微分法をあまり使いたくありません。

それに、基本的な公式さえ押さえていれば、微分も使わななくても
マクローリン展開を求めることだってできます。

いくつかのマクローリン展開を組み合わせればよいということです。

例えば、高校の頃にならった等比級数の和の公式は、今や、関数 \frac{1}{1-x}
マクローリン展開だと思えます。

\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots+x^n+o(x^n)

この公式を使えば、分母の 1+x は下に降りて分数関数ではなくなっています。

そうすると、例えば、
\frac{\cos x}{1-\sin x} などの展開は、
\cos x(1+\sin x+\sin^2x+\cdots \sin^nx+o((\sin x)^n))
となり、\cos x=1-\frac{x^2}{2}+o(x^3)\sin x=x-\frac{x^3}{6}+o(x^3) などを代入すれば、
\left(1-\frac{x^2}{2}+o(x^3)\right)\left(1+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^2+\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^3+o(x^3)\right)
これを展開して整理すれば、
1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+o(x^3)
と計算できます。

さらに、o((\sin x)^n)=o(x^n) を示す必要がありますが、
f(x)=o((\sin x)^n) である関数を任意に f(x) とおくと、

\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{x^n}=\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{\sin^n x}\frac{\sin^nx}{x^n}=0
となるので、f(x)=o(x^n) が成り立ち、o((\sin x)^n)=o(x^n) が成り立ちます。

また、プリントにも書きましたが、

\log(1+f(x)) のマクローリン展開についても同じようできます。

これは、そもそも、一回微分して、\frac{f’(x)}{1+f(x)} としてから今の商のマクローリン展開の方法を用い、もう一度積分して元に戻すということでも求められます。

同じ考えのもと、直接 \log(1+x) のマクローリン展開

\log(1+x)=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}3+\cdots +(-1)^{n-1}\frac{x^n}{n}+o(x^n)
を用いて、
\log(1+f(x))=f(x)-\frac{f(x)^2}{2}+\frac{f(x)^3}3+\cdots +(-1)^{n-1}\frac{f(x)^n}{n}+o(f(x)^n)
としても構いません。
また、f(0)=0 である関数であれば、上と同じように、o(f(x)^n)=o(x^n) 
と直せることがわかります。

今回の宿題では、

f(x)=o(1) なる関数の
\sqrt{1+f(x)} の展開についての問題を出しました。

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